特許第6376802号(P6376802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6376802-金属接合材料 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376802
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】金属接合材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20060101AFI20180813BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20180813BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20180813BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20180813BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20180813BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20180813BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B22F1/00 K
   B22F9/00 B
   H01B1/00 K
   H01B1/22 A
   H01L33/62
   H01L21/52 E
   H05K3/32 C
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-71190(P2014-71190)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193865(P2015-193865A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正人
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 貴則
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕樹
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−110391(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/038331(WO,A1)
【文献】 特開2011−240406(JP,A)
【文献】 特開2010−265420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−1/02,9/00,
H01B 1/00,1/22,
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属粒子と、(B)有機溶媒からなる溶媒と、(C)フッ素系分散剤と、を含有する金属接合材料であって、
前記(A)金属粒子が、(A1)平均一次粒子径の粒度分布が100nm〜6000nmの範囲にある第1の金属粒子と(A2)平均一次粒子径の粒度分布が0.5μm〜10μmの範囲にある第2の金属粒子とからなり、
前記(B)有機溶媒からなる溶媒が、沸点が243℃〜275℃及び25℃の蒸気圧が0.010Pa〜4.0Paである有機溶媒を含む金属接合材料。
【請求項2】
前記(C)フッ素系分散剤が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ、独立に、F、CF、CF=CF−CF、Cを表す。)で表される化合物、前記一般式(I)で表される化合物のオリゴマー、または前記一般式(I)で表される化合物のオリゴマーを主骨格とする化合物である請求項1に記載の金属接合材料。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物が、ヘキサフルオロプロペンまたはヘキサフルオロプロペントリマーである請求項2に記載の金属接合材料。
【請求項4】
ディスペンサー用である請求項1に記載の金属接合材料。
【請求項5】
前記(A1)第1の金属粒子及び前記(A2)第2の金属粒子が、銀、銀合金、または銀若しくは銀合金で被覆された銅である請求項1に記載の金属接合材料。
【請求項6】
前記(A1)第1の金属粒子の質量:前記(A2)第2の金属粒子の質量が、3:7〜7:3である請求項1または5に記載の金属接合材料。
【請求項7】
基板上の電子部品を接合する位置に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金属接合材料を所定量塗布し、塗布した前記金属接合材料の上に前記電子部品を載置後、焼成処理して前記基板に前記電子部品を実装することを特徴とする電子部品接合体の製造方法
【請求項8】
前記電子部品が、LED素子またはパワーデバイスであることを特徴とする請求項7に記載の電子部品接合体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子と有機溶媒を含有した金属接合材料、より詳細には、基板へのスクリーン印刷法やインクジェット印刷法などの公知の印刷方法や、ディスペンサー法など、公知の吐出方法を用いた塗布により、低温(例えば、200℃程度)の熱処理にて、前記基板上に電子部品を接合できる金属接合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装する分野において、電気的接合は、鉛フリーはんだ、例えば、スズ‐銀系、スズ‐銅系、スズ-銀-銅系のはんだが主流となっている(特許文献1)。しかし、鉛フリーはんだは高融点であり、実装温度が250℃以上と高くなる。よって、電子部品や基板が熱損傷を起こすことがあり、全ての電子部品や基板に対応できるものではない。そこで、PETなど耐熱性に劣った基板を用いる場合やモジュールの耐熱性の問題等で低温にて接合せざるを得ない場合には、比較的低温で電気的接合が可能なビスマスやインジウム系合金を使用していた。しかし、ビスマスは接合強度や合金の脆さに問題があり、インジウム系合金は高価という問題がある。
【0003】
一方で、耐熱性の点ではんだ付けに不向きな電子部品の実装やモジュールの組み立てには、比較的低温で電気的接合が可能な銀ペーストが用いられ、導通抵抗の上昇を防止するために、銀ペーストに低融点金属や導電フィラー、金属ナノ粒子を添加することが行なわれている。金属ナノ粒子は、比表面積が大きく反応活性が高いので、金属バルクと比較して、低温で融着する低温焼結という特性を有する。例えば、銀ナノ粒子の場合、本来の融点964℃より格段に低い200℃程度の加熱処理で融着接合現象が起こり、金属バルクと同等程度の導通性を示すことが知られている。しかし、導電性、接合強度が不十分であるという問題がある。
【0004】
また、近年、電子部品のさらなる小型化と電子部品が発する熱による熱損傷に対応するために、金属接合材料を200℃程度の加熱処理で焼結(以下、「低温焼結」ということがある。)するだけではなく、高放熱性を有する接合材料が求められている。また、高放熱性のためには、塗布の際に金属接合材料の厚みを薄く制御することも要求されており、従って、供給量を制限した塗布、例えば、ディスペンサーによる微少量の吐出への対応も要求されている。微少量の吐出(塗布)にあたって、金属接合材料中における金属粒子の分散性が低いと、シリンジ内で固液分離が生じて、シリンジのノズル口での詰まりや金属接合材料の供給量の不安定化等、吐出(塗布)不良が生じやすいという問題があった。特に、金属接合材料の供給量過多は、電子部品の側面に金属接合材料がはみ出し、短絡が生じる場合がある。
【0005】
そこで、少量の吐出(塗布)時に固液分離が生じるのを防止するために、高放熱材料である銀粒子等の金属粒子にアクリル系のコポリマーである分散剤を添加した金属接合材料を用いて、基板に電子部品を実装することも行われている。
【0006】
しかし、上記金属接合材料でも、依然として、固液分離が生じる傾向にあり、シリンジのノズル口での詰まり防止や金属接合材料の供給量の安定化等が不十分であった。また、上記分散剤は加熱処理時における融着接合現象を阻害して、十分な接合強度も得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−258399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、接合部の導電性と焼結後の接合強度に優れ、さらに、固液分離が生じるのを防止して少量の吐出(塗布)時であっても吐出(塗布)不良を抑制できる金属接合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、(A)金属粒子と、(B)有機溶媒からなる溶媒と、(C)フッ素系分散剤と、を含有する金属接合材料である。
【0010】
本発明の態様は、前記(C)フッ素系分散剤が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ、独立に、F、CFCF=CF−CF、Cを表す。)で表される化合物、前記一般式(I)で表される化合物のオリゴマー、または前記一般式(I)で表される化合物のオリゴマーを主骨格とする化合物である金属接合材料である。上記「一般式(I)で表される化合物オリゴマー」とは、一般式(I)で表される化合物が2〜100個結合した重合体を意味する。
【0011】
本発明の態様は、前記一般式(I)で表される化合物が、ヘキサフルオロプロペンまたはヘキサフルオロプロペントリマーである金属接合材料である。
【0012】
本発明の態様は、前記(A)金属粒子が、(A1)平均一次粒子径の粒度分布が100nm〜6000nmの範囲にある第1の金属粒子と(A2)平均一次粒子径の粒度分布が0.5μm〜10μmの範囲にある第2の金属粒子とからなる金属接合材料である。
【0013】
本発明の態様は、前記(A1)第1の金属粒子及び前記(A2)第2の金属粒子が、銀、銀合金、または銀若しくは銀合金で被覆された銅である金属接合材料である。
【0014】
本発明の態様は、前記(A1)第1の金属粒子の質量:前記(A2)第2の金属粒子の質量が、3:7〜7:3である金属接合材料である。
【0015】
本発明の態様は、上記金属接合材料を用いて、基板に電子部品を実装した電子部品接合体である。
【0016】
本発明の態様は、前記電子部品が、LED素子またはパワーデバイスである電子部品接合体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、フッ素系分散剤を配合することにより、導電性と接合強度に優れるだけでなく、さらに、固液分離が生じるのを防止して少量の吐出(塗布)時であっても吐出(塗布)不良を抑制できる。
【0018】
本発明の態様によれば、上記一般式(I)のフッ素系分散剤により、固液分離、特に、微細なシリンジ内でも固液分離が生じるのを確実に防止できる。
【0019】
本発明の態様によれば、(A)金属粒子が、(A1)平均一次粒子径の粒度分布が100nm〜6000nmの範囲にある第1の金属粒子と(A2)平均一次粒子径の粒度分布が0.5μm〜10μmの範囲にある第2の金属粒子とからなることにより、確実に、機械的接合強度を有しつつ、200℃程度の加熱処理で融着接合現象が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】試験片である基板表面の温度プロファイルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の金属接合材料について説明する。本発明の金属接合材料は、(A)金属粒子と、(B)有機溶剤からなる溶媒と、(C)フッ素系分散剤と、を含有する。
【0022】
(A)金属粒子
金属粒子は、導電性を有する粉末状のものであれば、種類、粒子径とも、特に限定されない。金属種としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ビスマス、鉛、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、アルミニウム及びアンチモンなど、はんだに使用される金属単体や上記金属種を含有する金属合金を挙げることができる。上記金属種のうち、導電性と高い放熱性の点から、銀、銀合金、または銀若しくは銀合金で被覆された銅が好ましい。上記金属は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
金属粒子の粒子径としては、例えば、平均一次粒子径10nm〜10μmであり、比表面積が大きく粒子表面の反応活性が高くなることから金属本来の融点よりもはるかに低い加熱温度で電子部品を基板に電気的に接合できる点から、ナノオーダーの平均一次粒子径(すなわち、平均一次粒子径10nm以上1000μm未満)の金属粒子を含むことが好ましく、ボイドの発生を抑制して良好な機械的接合強度を得る点から、(A1)平均一次粒子径の粒度分布が100nm〜6000nmの範囲にある第1の金属粒子と(A2)平均一次粒子径の粒度分布が0.5μm〜10μmの範囲にある第2の金属粒子とからなる金属粒子が特に好ましい。
【0024】
また、(A1)第1の金属粒子と(A2)第2の金属粒子の、それぞれの最大ピーク一次粒子径は、特に限定されないが、ボイドの発生を確実に防止して、機械的接合強度に優れた金属接合部を得る点から、(A1)第1の金属粒子の、最大ピーク一次粒子径は、200nm〜800nmが好ましく、(A2)第2の金属粒子の、最大ピーク一次粒子径は、500nm〜2200nmが好ましい。さらに、(A1)第1の金属粒子の質量:(A2)第2の金属粒子の質量は、特に限定されないが、粒度分布を広範囲とすることで高密度の接合を形成する点から3:7〜7:3が好ましい。
【0025】
また、(A)成分である金属粒子の配合割合は、適宜選択可能であるが、例えば、その下限値は、良好な導電性を有する接合部を得る点から、金属接合材料中に80質量%含まれるのが好ましく、90質量%が特に好ましい。一方、前記配合割合の上限値は、(B)成分である有機溶剤の配合の点から96質量%が好ましく、95質量%が特に好ましい。
【0026】
(B)有機溶媒
有機溶媒を配合することで、金属接合材料の粘度を調整して、例えばペースト状とすることで、金属接合材料の塗布性を向上させることができる。また、有機溶媒は、焼結時に金属粒子が導電性材料ペースト中を移動する際の潤滑剤としても機能する。
【0027】
有機溶媒は特に限定されず、例えば、デカン、テトラデカン、オクタデカン、ナフテン等の飽和または不飽和脂肪族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;ノナン-1-オール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、テルピネオール、ターピネオール等のアルコール類等を挙げることができる。
【0028】
これらのうち、本発明の金属接合材料を金属間の接合に使用するにあたり、接合強度に優れ、さらに、接合部の厚みを薄く制御することができる点から、沸点が243℃〜275℃及び25℃の蒸気圧が0.010Pa〜4.0Paである有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒は、室温で揮発しにくいので、室温で行われる基板等への金属接合材料の塗布後、金属接合材料は室温にて長時間にわたりペースト状を維持でき、ひいては、電子部品等を基板に搭載する際に所定の荷重をかけることで塗布した金属接合材料を所望の厚さに調整できるためと考えられる。また、接合強度に優れるのは、電子部品等と基板とを接合する際に、金属接合材料がペースト状に維持された状態にて加熱処理(例えば、200℃程度)を行うと、上記有機溶媒が円滑に揮発するためと考えられる。
【0029】
沸点が243℃〜275℃及び25℃の蒸気圧が0.010Pa〜4.0Paである有機溶媒としては、例えば、水酸基、エステル結合及び/またはエーテル構造を有する化合物が挙げられ、具体的な例としては、水酸基を有する化合物として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル等のC〜C14のグリコールエーテル類、ノナン-1-オール、ドデカン-1-オール、テトラデカン-1-オール等のC〜C14の非環式の脂肪族モノアルコール類、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及びヘプタンジオール等のC〜Cの直鎖脂肪族ジアルコール類、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール等の分岐鎖を有する非環式のC〜C脂肪族ジアルコール類が挙げられる。また、水酸基を有さない化合物としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等、上記グリコールエーテル類とアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルなどのエステル類を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
沸点が243℃〜275℃及び25℃の蒸気圧が0.010Pa〜4.0Paである有機溶媒の配合割合は、適宜選択可能であるが、例えば、その下限値は、良好なペースト性状を得る点から、金属接合材料中に4.0質量%含まれるのが好ましく、5.0質量%が特に好ましい。一方、前記配合割合の上限値は、良好なディスペンス性を確保する点から10質量%が好ましく、8.0質量%が特に好ましい。
【0031】
(C)フッ素系分散剤
フッ素系分散剤を配合することで、低温焼結性を損なうことなく、金属接合材料中における金属粒子と有機溶媒との分離を防止できるので、塗布装置の吐出口における金属接合材料の詰まりや塗布量の不均一化を抑制できる。
【0032】
フッ素系分散剤であれば、特に限定されないが、金属粒子と有機溶媒との分離を確実に防止して、ディスペンサーなどのノズル口径100〜200μmと微細な吐出装置でも、ノズル内の詰まりを防止し、かつ微少な供給量でも金属粒子の塗布量を均一化できる点から、下記一般式(I)
【0033】
【化1】
【0034】
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ、独立に、F、CFCF=CF−CF、Cを表す。)で表される化合物、前記一般式(I)で表される化合物のオリゴマー、または前記一般式(I)で表される化合物のオリゴマーを主骨格とする化合物が好ましく、前記一般式(I)で表される化合物は、ヘキサフルオロプロペンまたはヘキサフルオロプロペントリマーが特に好ましい。なお、上記「一般式(I)で表される化合物オリゴマー」とは、一般式(I)で表される化合物が2〜100個結合した重合体を意味する。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
分散剤の配合割合は、適宜選択可能であるが、例えば、その下限値は、金属接合材料の詰まりや塗布量の不均一化を抑制する点から、金属接合材料中に0.3質量%含まれるのが好ましく、0.4質量%が特に好ましい。一方、前記配合割合の上限値は、分散剤過多による特性の低下を防止する点から2.0質量%が好ましく、1.0質量%が特に好ましい。
【0036】
本発明の金属接合材料には、用途に応じて、適宜、慣用の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、光沢付与剤、金属腐食防止剤、安定剤、流動性向上剤、増粘剤、粘度調整剤、保湿剤、消泡剤、殺菌剤、充填材などを挙げることができる。これらの添加剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
次に、本発明の金属接合材料の製造方法について説明する。本発明の金属接合材料の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記(A)〜(C)成分、および必要に応じてその他の成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。
【0038】
次に、本発明の金属接合材料の用途例について説明する。本発明の金属接合材料は、部品間を金属接合するための材料として広汎に使用することができ、例えば、200℃以下の低温で実装かつ微細な接合が要求される高輝度LEDを基板に搭載するための材料、またはパワーデバイスを基板に接合するための材料等、配線板に電子部品を電気的かつ物理的に接合する導電性の接合材料として使用できる。
【0039】
次に、本発明の金属接合材料の使用例について説明する。本発明の金属接合材料を導電性の接合材料として使用する場合、例えば、基板上の電子部品(半導体等)を接合する位置に、本発明の金属接合材料を所定量塗布し、塗布した金属接合材料の上に電子部品を載置後、焼成処理して、基板上に電子部品を接合する。金属接合材料の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、ディスペンサー法、インクジェット法などが挙げられる。金属接合材料の塗布量は、適宜選択可能であり、例えば、1〜20μmの厚さ、幅100〜1000μmにて塗布する。焼成温度は、金属粒子が相互に融着して焼結する温度であれば、特に限定されず、例えば、金属粒子が、ナノオーダーの平均一次粒子径を有する金属粒子を含み、金属種が銅または銀の場合、180〜230℃であり、好ましくは190〜210℃である。また、焼成時間は、適宜選択可能であり、例えば、30〜120分である。
【実施例】
【0040】
次に、実施例を用いて本発明の金属接合材料をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の金属接合材料は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではない。
【0041】
実施例1〜5、比較例1〜6
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールにて混合分散させて、実施例1〜5、比較例1〜6にて使用するペースト状の金属接合材料を調製した。そして、調製した金属接合材料を以下のように基板に塗布して試験片を作製した。なお、表1中の配合割合の数値は質量部を示し、配合割合の「−」部は0質量部を意味する。
【0042】
焼成条件
焼成:200℃、60min、昇温速度0.8℃/min
山陽精工製リフローシミュレーター「SMT Scope SK-5000」にて基板表面温度が図1に示すプロファイルの温度条件で焼成した。
【0043】
評価
(1)体積抵抗率
スライドガラス上に、上記のように調製した金属接合材料のペーストを、50μm厚メタルマスクを用いて5cm×1cmの面積にスクリーン印刷により薄膜状に塗布し、上記の焼成条件にて薄膜を焼成し、得られた焼成薄膜に対して、JIS K 7194に準じた四探針法により、(株)三菱化学アナリテック製「ロレスターGP」により、体積抵抗(比抵抗)率を測定した。
【0044】
(2)接合剪断強度
酢酸エチルで脱脂した10mm×10mm×厚さ1mmのAu/NiメッキCu基板にNordson EFD製ディスペンサー装置「DISPENSER ULTIMUS V 100PSI」を用いて、直径がφ150〜250μm、質量が8〜12μgになるように金属接合材料を塗布(吐出)し、YAMAHA製チップマウンタ「YV100Xg」を用いて1mm×1mmのAu/NiメッキSiダミーチップを搭載した。次に、上記の焼成条件にて焼成後、Nordson DAGE製ボンドテスタ「DAGE4000」を用いて83.3μm/sec(5mm/min)の速度で剪断強度を測定した。
結果は、○:チップの剪断強度が40MPa以上、△:チップの剪断強度が20MPa以上40MPa未満、×:チップの剪断強度が20MPa未満の3段階で評価した。
【0045】
(3)大気中放置後の接合剪断強度(乾燥性)
上記(2)における金属接合材料の塗布(吐出)後であってダミーチップを搭載する前に、25℃、湿度55%の環境下で1時間放置し、その後、上記(2)と同様の工程で、ダミーチップを搭載し、焼成をしたものについて、上記(2)と同様にして、剪断強度を測定した。
結果は、○:チップの剪断強度が40MPa以上、△:チップの剪断強度が20MPa以上40MPa未満、×:チップの剪断強度が20MPa未満の3段階で評価した。
【0046】
(4)分離性
10ccのガラス瓶に約2gの金属接合材料を測り採り、2000rpm、1minの条件で遠心分離を行い、固液分離が生じているかどうかを目視で確認した。
結果は、○:液体の浮きが見られず、分離が起こっていない状態、△:表面に液体が浮き出ている状態、×:傾けると浮き出た液体が流動するくらいに分離している状態の3段階で評価した。
【0047】
(5)連続吐出性 (ドット数)
Nordson EFD社製Airディスペンサー「ULTIMUS」にて、φ0.15mmの精密ノズルを装着した10ccシリンジで平坦なスライドガラスに連続的に金属接合材料の吐出を行い、詰まりが発生する直前までの点数を計測した。
【0048】
(6)連続吐出時の固液分離
上記(5)の試験中に、前記10ccシリンジ内で金属接合材料の固液分離が確認されるかどうかを目視で確認した。
結果は、○:固液分離が観察されない、×:固液分離ありの2段階で評価した。
【0049】
実施例1〜5、比較例1〜6についての各評価結果を下記表1に示す。なお、参考として、実施例にて使用した有機溶媒の沸点と25℃の蒸気圧を下記表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1、2に示すように、フッ素系分散剤を使用した実施例1〜5では、体積抵抗率の値を5.0Ω・cm以下に低減、つまり、導電性を損なうことなく、連続吐出時における固液分離を抑制でき、厳しい遠心分離条件であっても金属接合材料に固液分離が発生するのを防止できた。また、フッ素系分散剤を使用した実施例1〜5では、0.15mmと微少なノズル径にて、連続して吐出しても、10000点までノズル内の詰まりが発生せず、ノズル内の詰まり発生を抑制できた。さらに、固液分離を抑制できた実施例1〜5では、接合剪断強度と大気中放置後の接合剪断強度ともに40MPa以上と良好であり、塗布後すぐの焼成でも、塗布後時間の経過した焼成でも、いずれも、機械的強度に優れた接合部を形成できた。
【0053】
実施例1と実施例3から、有機溶媒として沸点が243℃〜272℃及び25℃の蒸気圧が0.013Pa〜3.9Paの範囲内にあるであるグリコールエーテル系を使用すると、導電性がより向上する傾向があった。
【0054】
一方、比較例1〜5から、フッ素系分散剤以外の分散剤を使用または分散剤を使用しないと、連続吐出時における金属接合材料の固液分離を抑制できず、遠心分離条件でも金属接合材料に固液分離が発生した。また、比較例1〜5では、0.15mmと微少なノズル径にて、連続して吐出すると、6000点以下でノズル内の詰まりが発生してしまった。また、比較例6からソルビトール系分散剤を使用すると、連続吐出時でも遠心分離条件でも固液分離が発生するのを防止でき、0.15mmと微少なノズル径にて連続して吐出しても10000点までノズル内の詰まりが発生しなかったが、接合剪断強度と大気中放置後の接合剪断強度ともに20MPa未満に低下し、接合強度が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の金属接合材料は、接合部の導電性と焼結後の接合強度に優れので、金属間接合の接合剤として広汎に、例えば、LED素子やパワーデバイス等といった半導体部品の基板への搭載の分野で利用でき、また、本発明の金属接合材料は、固液分離が生じるのを防止して少量の吐出時であっても吐出不良を抑制できるので、微細な接合部による基板への実装が要求される高輝度LED素子の分野で利用できる。
図1