特許第6376816号(P6376816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376816
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/04 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   E04F15/04 601B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-82260(P2014-82260)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-203202(P2015-203202A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 寛一
(72)【発明者】
【氏名】高野 純一
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−026472(JP,U)
【文献】 特開2011−190672(JP,A)
【文献】 特開2000−136579(JP,A)
【文献】 特開2011−190673(JP,A)
【文献】 特開平09−096094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0056237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/04
E04F 15/02
E04F 15/18
E04F 15/22
B32B 21/00−21/14
B32B 27/12
B32B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から第一基材、第二基材緩衝材および木質基板が順次に積層されてなり、木質基板の厚さ範囲内で釘打ちにより木製床下地に固定される床材であって、第一基材は厚さが1.0〜3.0mmであって曲げヤング係数が2500〜6000N/mmの木質材であり、第二基材は厚さが0.5〜3.0mmであって曲げヤング係数が500〜4000N/mmのプラスチック材であり、かつ、第一基材および第二基材からなる複合基材としての曲げヤング係数が1500〜5500N/mmであり、木質基板には雄実および雌実が形成され、JIS A 6519の測定方法により測定されるG値が100以下の衝撃吸収性能を有することを特徴とする床材。
【請求項2】
緩衝材は厚さが1.5〜4.0mmであってアスカーC硬度が20〜70度であることを特徴とする請求項1記載の床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材に関し、特に衝撃吸収性能に優れた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床材が敷設された室内で高齢者や障害者などが転倒したときに床材からの衝撃で怪我をする事故が頻発しており、骨折などの重傷を負うケースも多い。このため、転倒の際に床材からの衝撃を小さくするような機能すなわち衝撃吸収性能を持った床材の開発が望まれている。日本建築学会床工事WGの報告によれば、JIS A 6519の測定方法により測定した最大加速度の値が100G以下であれば、人間が転倒して頭などを床にぶつけた際であっても怪我を負いにくいものとされている。
【0003】
このような背景から、出願人は、表面側から第一基材A、第一緩衝材B、第二基材C、第二緩衝材Dの順に積層されてなる床材において、各積層材の厚さおよび/またはアスカーC硬度を特定の範囲に限定することにより、上記測定による最大加速度100G以下の衝撃吸収性能を与えることができることを知見し、特許出願を行うに至った。これらが下記特許文献1〜4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−36654号公報
【特許文献2】特開2012−41675号公報
【特許文献3】特開2012−41742号公報
【特許文献4】特開2012−46899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に開示された従来技術による木質床材は、高齢者施設において、コンクリートスラブ上に接着剤や両面テープなどで固定して衝撃吸収フロアとして使用するのは好適なものであるが、最裏層に緩衝材(第二緩衝材D)が用いられるため、木質の床下地Eに対して釘固定することができない。釘Fで固定すると、第二緩衝材Dが圧縮されてしまい、本来の衝撃吸収性能を発揮することができなくなる(図4)。このため、これら従来技術による木質床材は、木造住宅において木製床下地上に貼着して使用することができなかった。
【0006】
しかしながら、高齢者の転倒による死亡事故は、高齢者が居住する自宅(木造家屋)で多発しているのが実情であり、これを未然に防止するべく、木造家屋において木製床下地に施工しても十分な衝撃吸収性能を発揮する床材の開発が望まれるが、現在までのところ、有効な解決策が見出せていない。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、木造家屋において木製床下地に釘打ち固定しても十分な衝撃吸収性能を発揮する床材を提供し、木造家屋における高齢者の転倒事故を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、表面側から第一基材、第二基材緩衝材および木質基板が順次に積層されてなり、木質基板の厚さ範囲内で釘打ちにより木製床下地に固定される床材であって、第一基材は厚さが1.0〜3.0mmであって曲げヤング係数が2500〜6000N/mmの木質材であり、第二基材は厚さが0.5〜3.0mmであって曲げヤング係数が500〜4000N/mmのプラスチック材であり、かつ、第一基材および第二基材からなる複合基材としての曲げヤング係数が1500〜5500N/mmであり、木質基板には雄実および雌実が形成され、JIS A 6519の測定方法により測定されるG値が100以下の衝撃吸収性能を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の床材において、緩衝材は厚さが1.5〜4.0mmであってアスカーC硬度が20〜70度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、請求項1に記載されるように、表面側から第一基材/第二基材/緩衝材/木質基板の積層構成を有する床材において、第一基材および第二基材のそれぞれについて材質、厚さおよび曲げヤング係数を限定することによって床材表面が受ける衝撃を大きく吸収する効果を発揮する。
【0013】
より詳しくは、本発明の床材において、第一基材として厚さが1.0〜3.0mmであって曲げヤング係数が2500〜6000N/mmである木質材を使用すると共に、第二基材として厚さが0.5〜3.0mmであって曲げヤング係数が500〜4000N/mmであるプラスチック材を使用することにより、床材表面が衝撃を受けたときにこれらが一体となって撓んで緩衝材に適度な沈み込みを生じさせるので、緩衝材本来の性能が発揮され、衝撃吸収性能に優れた床材とすることができる。
【0014】
また、基材が第一基材と第二基材とからなる複合基材として構成されるので、第一基材と第二基材とに異なる材料を用いることができる。すなわち、上記厚さおよび曲げヤング係数を有する材料として、第一基材には木質材、第二基材にはプラスチック材を用いた床材として構成することができる。
【0015】
上記の作用効果は、木質材からなる第一基材およびプラスチック材からなる第二基材からなる複合基材としての曲げヤング係数を1500〜5500N/mmとすることによって、または、厚さが1.5〜4.0mmであってアスカーC硬度が20〜70度である緩衝材を用いることによって、より顕著に発揮させることができる。
【0016】
本発明の床材は、第一基材/第二基材/緩衝材の3層で優れた衝撃吸収性能を与えるので、最裏面側にさらに木質基板を積層した積層構成を採用することにより、衝撃吸収性能を何ら損なうことなく、この木質基板の厚さ範囲内において釘打ちして木製床下地に固定することができる。すなわち、本発明による床材は、木造家屋において木製床下地に施工しても十分な衝撃吸収性能を発揮することができ、木造家屋における高齢者の転倒事故防止に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1参考例による床材の構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態による床材の構成を示す断面図である。
図3図2の床材を木製床下地に釘固定した状態を示す断面図である。
図4】従来技術による床材を木製床下地に釘固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照しながら参考例による床材の構成について説明する。この床材1は、図1に示すように、表面側から第一基材2/第二基材3/緩衝材4の順に積層された積層構成を有する
【0019】
第一基材2は、厚さが1.0〜3.0mmであって曲げヤング係数が2500〜6000N/mmであることを必須条件とし、この条件を満たすものとして、たとえばMDF、HDFなどの木質繊維板、合板、無垢材、積層板、集成材などの木質材であって、その表面に任意に化粧紙、突板、オレフィンシートなどの合成樹脂シートなどによる化粧シートが貼着されたものが用いられる。また、第一基材2の表面、または該表面に貼着された化粧シートの表面に任意塗装が施されたものを用いても良い。塗装は、防滑性能を有する防滑性塗料を用いて行うことが好ましい。
【0020】
第二基材3は、厚さが0.5〜3.0mmであって曲げヤング係数が500〜4000N/mmであることを必須条件とし、この条件を満たすものとして、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、PET、ABSなどの硬質プラスチックや低発泡プラスチックが用いられる。
【0021】
緩衝材4は、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレン(PE)などの合成樹脂発泡体や、合成ゴム、天然ゴムなどのゴム発泡体からなり、アスカーC硬度が20〜70度のものが使用される。アスカーC硬度が20度未満であると、柔らかすぎて歩行時の沈み込みが大きくなり、不快感を与える。また、人が転倒した場合に第一基材2から受ける衝撃を十分に緩衝することができず、転倒した人の頭などがその下層の第二基材3に強く打ち付けられる危険性がある。一方、アスカーC硬度が70度より大きくなると、緩衝材として硬すぎるものとなって衝撃吸収作用を十分に発揮することができない。これらの要因から、第一緩衝材3のアスカーC硬度範囲は20〜70度であり、好ましくは25〜60度である。
【0022】
緩衝材4の厚さは1.5〜4.0mmであることが好ましい。緩衝材4の厚さが1.5mm未満では衝撃吸収性能が不十分となり、床の硬さ試験において100G以下の値を得ることが困難になる。4.0mmより厚くなると、第一基材2が衝撃を受けた際に第一基材2の撓みが大きくなり、第一基材2が割れてしまうおそれがある。
【0023】
図2は本発明の実施形態による床材1を示す。この床材1は、図1の床材1の緩衝材4の裏面側に木質基板5を積層させたものであって、表面側から第一基材2/第二基材3/緩衝材4/木質基板5の順に積層された積層構成を有する。木質基板5は、第一基材2と同様の、たとえばMDF、HDFなどの木質繊維板、合板(針葉樹合板、広葉樹合板)、無垢材、積層板、集成材などの木質材からなる。
【0024】
木質基板5には、施工時に隣接する床材と嵌合する実(雄実6、雌実7)を四周木口面に形成するために厚さを大きく取る必要があり、たとえば5.0〜10.0mmの厚さとする。厚さが5.0mm未満ではこの厚さ範囲に実を形成することが困難となる。10.0mmより厚くなると、床材1の全体厚が大きくなりすぎてしまい、衝撃吸収性能を必要としない部屋との床施工高さに段差が生じやすくなる。
【0025】
図3は、図2の床材1を木製床下地8に対して釘9で固定した施工状態を示す。この床材1は最裏面が木質基板5で構成され、従来技術による床材(図4)のように緩衝材(第二緩衝材D)を有していないので、釘固定しても緩衝材の圧縮による衝撃吸収性能の低下を招くことがない。
【0026】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明することにより、本発明の構成および作用効果をより具体的に実証する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって定義される発明の範囲内において様々な変形・変更が許容されることは言うまでもない。
【0027】
図1に示す第一基材2/第二基材3/緩衝材4の積層構成を有する床材1において、第一基材2として厚さ1mm、曲げヤング係数3000N/mmであるMDFを用い、第二基材3として厚さ2mm、曲げヤング係数2000N/mmであるポリプロピレン樹脂板を用い(これらの複合基材としての曲げヤング係数は2500N/mmであった)、緩衝材4として厚さ2.5mm、アスカーC硬度50度であるポリエチレン10倍発泡体を用いたものを実施例1とし、第一基材2として厚さ1mm、曲げヤング係数3000N/mmであるMDFを用いると共に第二基材3として厚さ3mm、曲げヤング係数3000N/mmであるMDFを用いたほかは実施例1と同様にしたものを実施例2とし、緩衝材として厚さ2.5mm、アスカーC硬度15度であるポリウレタン20倍発泡体を用いたほかは実施例1と同様にしたものを実施例3とし、緩衝材として厚さ2.5mm、アスカーC硬度5度であるポリウレタン30倍発泡体を用いたほかは実施例1と同様にしたものを比較例1とし、実施例1から第二基材3を省略したものを比較例2として、これらについてJIS A 6519の測定方法により最大加速度Gを測定して衝撃吸収性能を評価した。この結果が表1に示されており、比較例1,2に比べて実施例1,2は100以下のG値を有し、実施例3もほぼ同等のG値を有するものであって、いずれも優れた衝撃吸収性能を発揮することが確認された。
【0028】
【表1】
【0029】
表2は、図2に示す第一基材2/第二基材3/緩衝材4/木質基板5の積層構成を有する床材1において、第一基材2として厚さ1mm、曲げヤング係数3000N/mmであるMDFを用い、第二基材3として厚さ2mm、曲げヤング係数2000N/mmであるポリプロピレン樹脂板を用い(これらの複合基材としての曲げヤング係数は2500N/mmであった)、緩衝材4として厚さ2.5mm、アスカーC硬度50度であるポリエチレン10倍発泡体を用い、木質基板5として厚さ7.5mmの針葉樹合板を用いたものを実施例4とし、第一基材2として厚さ1mm、曲げヤング係数3000N/mmであるMDFを用いると共に第二基材3として厚さ3mm、曲げヤング係数3000N/mmであるMDFを用いたほかは実施例4と同様にしたものを実施例5とし、緩衝材として厚さ2.5mm、アスカーC硬度15度であるポリウレタン20倍発泡体を用いたほかは実施例4と同様にしたものを実施例6とし、緩衝材として厚さ2.5mm、アスカーC硬度5度であるポリウレタン30倍発泡体を用いたほかは実施例4と同様にしたものを比較例3とし、実施例4から第二基材3を省略したものを比較例4として、これらについてJIS A 6519の測定方法により最大加速度Gを測定して衝撃吸収性能を評価した。この結果が表2に示されており、比較例3,4に比べて実施例4,5は100以下のG値を有し、実施例6もほぼ同等のG値を有するものであって、いずれも優れた衝撃吸収性能を発揮することが確認された。
【0030】
【表2】
【符号の説明】
【0031】
1 床材
2 第一基材
3 第二基材
4 緩衝材
5 木質基板
6 雄実
7 雌実
8 木製床下地
9 釘
図1
図2
図3
図4