(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記履き口保形部に設けられ、それぞれの基点から、前記かかと保形部との境界付近まで縦断する一対の山折線が、横側縁に向けて突型に湾曲することを特徴とする請求項1または2に記載の履物用保形具。
【背景技術】
【0002】
従来、履物の形状を保形しておくための保形具として、ボール紙や合成樹脂製薄板などを立体的に折り曲げて成形する技術が多数知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかし、これら特許文献に記載の保形具では、挿入時や挿入している間(例えば、保管時、運送時、ディスプレイ時など)に、履き口保形部の下端が、中敷(インナーソール)や中底(インソール)に接して、押し跡が付いたり、傷が発生しやすく、商品である履物自体の品質が低下してしまう問題があった。
【0003】
上記のような問題を解決するために、本発明者は、先に、履き口保形部を履物の履き口周りに沿った形状とし、かかと内壁面に当接する下端部分は切除した保形具を提案している(特許文献3参照)。
しかし、この先提案の保形具は、かかとのない履物(サンダルなど)には非常に適しているものの、かかとのある靴を保形するには履き口保形部の強度が弱く、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような現状を考慮し、履き口保形部の強度が高く、かかとがある履物であっても型崩れを十分抑制でき、しかも、履物の中敷・中底(以下、これらを纏めて「中底面」と称することがある)に押し跡や傷が残らない、履物用保形具を提供することを課題とする。
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、
履物の履き口部を保形する履き口保形部を、履き口を縦断するように保持する山型の形状とし、さらに、
このような履き口保形部に、かかと内壁面に当接する“かかと保形部”を連接すれば、
当該履き口保形部の下端を、履物の中底面からほぼ浮いた状態とすることができ、履物の履き口の保形性を強めつつ、中底面に押し跡や傷が付くことのない履物用保形具が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
湾曲可能な平板から成形され且つ履物内部に挿入される履物用保形具であって、
(i)履物の前部を保形する前部保形部と、(ii)履物の履き口部を保形する履き口保形部と、(iii)かかと内壁面に当設するかかと保形部とを備え、
(i)前部保形部には、幅方向に横断する直線状の谷折線と、
当該谷折線よりも後方側には、幅方向に横断し且つ後方に向けて突型に湾曲する山折線と、
前記谷折線を起点とし、つま先側に向けて縦断する、少なくとも2本の直線状の山折線とが設けられており、
(ii)履き口保形部は、前記前部保形部との境界付近に、縦方向の中心線に対称に一対の基点と、これら基点間を繋ぐ山折線とを有し、
それぞれの基点から横側縁まで該中心線に対称な2対の直線状の折り目を設け、このうち前方側の一対の折り目を山折線、後方側の一対の折り目を谷折線とし、さらに、
それぞれの基点から、前記かかと保形部との境界付近まで縦断する一対の山折線が設けられており、
(iii)かかと保形部は、前記履き口保形部と、幅方向に横断する直線状の山折線を介して連接され、当該山折線の両側には、切込み線が設けられ
、
組み立てた際に、かかと保形部(iii)の縦方向の長さが、履き口保形部(ii)の側面の縦方向の長さ以上であって、前記履き口保形部(ii)の下端及び前記かかと保形部(iii)の後端が、履物の中底面に付かないことを特徴とする。
このとき、(ii)履き口保形部における一対の基点に、孔を設けてもよいし、また、それぞれの基点から前記かかと保形部との境界付近まで縦断する一対の山折線を、横側縁に向けて突型に湾曲させてもよい。
さらに、(iii)かかと保形部における前記山折線(履き口保形部との境界線)を起点とし、後端側に向けて縦断する、一対の山折線を有することも可能である。
加えて、かかと保形部(iii)の後端の形状が半楕円形状であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の履物用保形具によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)かかとのある履物であっても、履き口などの型崩れを確実に防止できるので、商品である履物自体の品質を良好に保持できる。
(2)保形具本体の組み立てが容易で、しかも、履物への挿入も行いやすいので、生産ラインでの作業性向上が期待できる。さらに、履き口保形部の一対の基点に孔を設ければ、折り曲げ時の基点の切れなどの破損を抑制できるうえ、組み立て作業もより一層容易となる。
(3)前部保形部は、足の甲の立体形状を忠実に再現しているので、履物の形状に合わせた保形の実現が可能である。
(4)保形具挿入時ないし挿入後、履物の中底面に押し跡や傷が付くことなく保形できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の履物用保形具は、湾曲可能な平板から成形され且つ履物内部に挿入される。
湾曲可能な平板としては、厚紙やプラスチックなど、可撓性がある材質であれば、特に制限されないが、例えば、厚さ0.5〜1.5mm程度のボール紙を型抜きしたものなどから成形すればよい。
また、挿入される履物の種類についても、特に制限はないが、履き口保形部の強度が高いことなどから、かかとがある靴(シューズ)、特に、ビジネスシューズ、スニーカー、運動靴、パンプスなどのトップラインがくるぶしより下にあるシューズなどに最適である。
【0011】
図1は、本発明の履物用保形具の一実施形態における、組み立てる前の状態を示す展開図である。
本発明の履物用保形具10は、
図1に示すように、履物の前部を保形する前部保形部(i)と、履物の履き口部を保形する履き口保形部(ii)と、かかと内壁面に当設するかかと保形部(iii)とを備えている。
図1中、山折線は、点線で、谷折線は、一点鎖線で、切込み線は二重線で示す。
【0012】
前部保形部(i)には、幅方向(履物の横幅方向、以下同じ。)に横断する直線状の谷折線2と、
谷折線2よりも後方(履物のかかとの方、以下同じ。)側には、幅方向に横断し且つ後方に向けて突型に湾曲する山折線3と、
谷折線2を起点とし、つま先側に向けて縦断する、少なくとも2本の直線状の山折線4,4とが設けられている。
【0013】
前部保形部(i)の先端(つま先側)の形状は、半楕円形状でも、方形状でも構わないが、
図1に例示するように、半楕円形状の方が、履物への挿入が行いやすく、履物の内側に傷が付きにくいので好ましい。
【0014】
本実施形態では、谷折線2や山折線3を折り曲げる際の目安と折り曲げの容易化を図るとともに、履物の内側に傷が付くのを防止するために、山折線3の両端側部分は、切除部5として部分的に切除しているが、この切除部5は必須のものではない。
なお、切除部5は、
図1に示すように、外周縁部が丸みを帯びるように切除する方が、傷付き防止の点から、より好ましい。
また、谷折線2と山折線3は、折り曲げの容易化を図るために、例えば、ミシン目状などのスリット(切込み)を入れることもできるし、あるいは、谷折線2を、完全な直線とせず、左右の横側縁近傍がつま先側に向かうよう若干湾曲させてもよい。
【0015】
図2は、
図1に示した履物用保形具10を組み立てた状態を説明する図であり、(A)が側面上方から見た図、(B)が正面上方から見た図である。
前部保形部(i)の谷折線2を谷折りに、山折線3を山折りに折り曲げることによって、
図2(A)に示すように、自然に前部保形部(i)の先端が上方に突出するように湾曲すると同時に、前部保形部(i)の後方側(すなわち、履き口保形部(ii)と連接している側)が、山折線3を境に、上向きに角度が付いた状態で組み立てられるので、足の甲部分の立体形状を忠実に再現でき、履物の前部の保形に最適な前部保形部(i)が得られる。
【0016】
このとき、山折線3の後方への湾曲度を調節する(曲率半径を大きく、または小さくする)ことで、前部保形部(i)の後方側の折り曲げ角度を、履物の種類によって適宜設定することもできる。
また、谷折線2を谷折りに、山折線3を山折りに折り曲げた際に、山折線3が、足の骨格における趾骨と中足骨との境目付近に位置するように設けておけば、足の甲部分の立体形状をより忠実に再現しやすい。足の骨格は、一般に、趾骨と中足骨の境目付近で骨の太さが大きく変化し、足の高さが高くなっているからである。
【0017】
さらに、このような前部保形部(i)に、谷折線2を起点とし、つま先側に向けて縦断する、少なくとも2本の直線状の山折線4,4を設けることで、
図2(B)に示すように、これら山折線4,4が、履物への挿入時に靴爪先部の形状に合わせて自然と山折りに折れ曲がり、谷折線2や山折線3の折り曲げの容易化が促進されるばかりか、保形具10の履物への挿入もより一層容易となる。
なお、本実施形態では、2本の山折線4,4を、保形具10の縦方向の中心線に対称に設けているが、上記効果の支障とならない範囲であれば、本数や設ける位置について、特に制限はない。
【0018】
本発明の履物用保形具10において、履き口保形部(ii)は、履物の履き口部を保形する。
この履き口保形部(ii)は、
図1に示すように、前部保形部(i)との境界付近に、縦方向の中心線に対称に一対の基点6,6と、これら基点6,6間を繋ぐ山折線80とを有し、
それぞれの基点6,6から横側縁まで該中心線に対称な2対の直線状の折り目を設け、このうち前方(履物のつま先の方、以下同じ。)側の一対の折り目を山折線81,81、後方側の一対の折り目を谷折線82,82とし、さらに、
それぞれの基点6,6から、かかと保形部(iii)との境界付近まで縦断する一対の山折線7,7が設けられている。
【0019】
一対の基点6,6には、孔を設けてもよい。孔の大きさとしては、保形具10の大きさや厚みなどによるが、直径2〜8mm程度とすればよい。
このような孔を設けることで、折り曲げ時の基点の切れなどの破損を抑制でき、組み立て(山折線81,81や谷折線82,82、山折線7,7の折り曲げ)作業がより一層容易になる。
また、基点6,6間を繋ぐ山折線80は、前方に向けて若干突型となるように湾曲させた方が、山折線80が自然に折り曲がりやすく好ましい。
【0020】
図3は、
図1に示した履物用保形具10を組み立てた状態を説明する図であり、(A)が上面から見た図、(B)が背面上方から見た図である。
また、
図4(A),(B)に、履物1の内部で、
図1に示した履物用保形具10を組み立てた状態の一例を示す。
図1〜4中の斜線部は、一対の山折線7,7の内側部分を示し、以下「背部7'」と称する。
【0021】
履き口保形部(ii)の3対の折り目(すなわち、2対の山折線81,81と7,7、および、1対の谷折線82,82)を、それぞれ、山折線は山折りに、谷折線は谷折りに折り曲げることによって、
図2(A),
図3(A)などに示すように、履き口保形部(ii)が、山折線80から前部保形部(i)に対してやや下向きに自然に折り曲がると同時に、上記背部7'を天面とした山型が立体的に形成される。
本発明では、このように山型に組み立てられた履き口保形部(ii)によって、
図4(A)などに示すように、履物1の履き口Hが、背部7'が縦断するように保持されるので、履き口保形部の強度は飛躍的に向上し、かかとのある靴であっても型崩れを十分に抑制できる。
【0022】
このとき、1対の谷折線82,82については、折り曲げの容易化を図るために、例えば、ミシン目状のスリット(切込み)を入れてもよいが、当該谷折線82,82を、完全な切込み線としてしまうと、履き口保形部の強度が保ちにくくなるので好ましくない。
また、一対の山折線7,7は、直線とせず、横側縁に向けて突型に湾曲させてもよい。湾曲させることで、背部7’の見栄えがよくなる。
【0023】
本発明の履物用保形具10において、かかと保形部(iii)は、履物1のかかと内壁面Kに当接する。
かかと保形部(iii)は、
図1に示すように、履き口保形部(ii)と、幅方向に横断する直線状の山折線9を介して連接される。
このとき、山折線9を起点とし、後端側に向けて縦断する一対の直線状の山折線79,79を有することが好ましい。なお、山折線79,79は曲線状としてもよい。
【0024】
かかと保形部(iii)の後端(かかと側)の形状は、履物の中底面との接触をできるだけ避けるためには、
図1に例示するように、半楕円形状が好ましい。
また、一対の山折線79,79の間隔は、山折線9の長さと略同一に設ければよいが、
図1に例示するように、後端側が若干幅広になるように設けることもできる。
【0025】
かかと保形部(iii)の縦方向の長さとしては、履き口保形部(ii)の側面(山折線7,7の外側部分)の幅方向の長さ以上とすればよいが、組み立てた際に、かかと保形部(iii)の後端が、履物1の中底面に付かない程度とすることがより好ましい。
【0026】
図4(B)に、
図4(A)の説明図を上方から見た状態を示す。
図2(A),3(A)(B)などに示すように、かかと保形部(iii)の山折線9をほぼ直角に折り曲げ、さらに、山折線79,79をそれら外側部分(
図1〜3中の格子部79')が履き口保形部(ii)の後方部分を覆うように折り曲げることによって、
図4(B)などに示すように、一対の山折線79,79の内側部分が、履物1のかかと内壁面Kに当接する結果、履き口保形部(ii)の下端(
図1においては、横側縁)が履物1の中底面からほぼ浮いた状態が得られる。
このとき、かかと保形部(iii)の後端(下端)は、履物1の中底面とは接触していないか、もしくは、例え接触していても、中底面のヘリ(後端縁)なので、中底面に押し跡や傷が付くことのない履物用保形具10が実現できる。
【0027】
このようなかかと保形部(iii)を得るためには、山折線9の長さと、履き口保形部(ii)における一対の山折線7,7の間隔とが、ほぼ一致するように、山折線9の両側には、切込み線90,90が設けられている。
本実施形態では、山折線9の折り曲げの容易化を図るとともに、履物の内側に傷が付くのを防止するために、切込み線90,90の各両端縁を、切除部55として部分的に切除しているが、この切除部55は必須のものではない。
【0028】
なお、切除部55は、
図1に示すように、外周縁部が丸みを帯びるように切除する方が、傷付き防止の点から、より好ましい。
また、山折線9や山折線79,79については、これら折れ部分9,79,79の強度を保つためには、ミシン目状などのスリット(切込み)は入れない方がよい。