【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 試験施工1 2014年7月8日〜11日 香川県高松市香川町川東上にて試験施工 刊行物発表1 2014年7月28日 日本水道新聞社 日本水道新聞 第4面 刊行物発表2 2014年8月7日 水道産業新聞社 水道産業新聞 第2面 試験施工2 2014年8月27日 大阪府豊中市新千里南町3丁目にて試験施工
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管は、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入することにより互いに接合される管であり、前記検査機器により管の接合状態が検査される請求項1から6の何れかに記載の管検査装置。
管の布設位置を検出するGPSセンサ、管の布設溝の深さを検出する深さセンサ、前記検査機器による検査情報を含む取得情報を外部に送信する通信機器の少なくとも一つが設けられている請求項1から8の何れかに記載の管検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示すように、このようなプッシュオンタイプの継手構造の鉄管は、一方の管2の受口2Aに他方の管3の挿口を預けて、受口2A近傍で受口側の管2にスリングベルトやチェーンで構成される接合器具100を巻き付けるとともに、挿口近傍で挿口側の管3に同じく接合器具101を巻き付け、管2,3の両側で接合器具間に夫々レバーホイスト102,103を装着して手動操作で巻き上げるような作業を経て接合される。
【0007】
そして、接合作業の後に、上述した薄板ゲージや接合チェッカ等の機械式の計測機器を操作してゴム輪が適正に位置決めされているか否かを確認し、その結果を施工管理情報の一部として竣工図等に記録していた。
【0008】
しかし、ゴム輪が適正に位置決めされているか否かを確認するために、管の接合部の周囲に沿って複数個所で計測して、後に竣工図に記録するためにその場でメモ用紙に仮記録する必要があり、この計測作業や記録作業が非常に煩雑であるという問題があった。特に溝の底部に相対する部位を計測する際には、身体を屈めて作業を行なう必要があるため、多大な労力が必要であった。
【0009】
そして、上記鉄管以外でも、様々なタイプの管は一般的にパイプスペースなどの狭い場所に配置されることが多く、管の外周に沿って施工状態や損傷状態等を検査する必要がある様々な管の検査作業も同様の問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、作業者が窮屈な姿勢で計測作業を行なう必要が無く、さらには一度の計測作業で複数の情報を取得可能な管検査装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による管検査装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、
一方の管の受口にシール部材を介して他方の管の挿口を挿入する管継手の接合状態を検査する管検査装置であって、
前記挿口側の管の軸心に沿う少なくとも一つの揺動軸心周りに、前記挿口側の管の外径より狭い縮径姿勢と前記挿口側の管の外径以上に広がる拡径姿勢とに姿勢変更可能な開放端部を備え、前記挿口側の管の周囲を囲むように環状に配置可能に構成された環状部材と、前記環状部材に取り付けられ、前記環状部材が前記挿口側の管の周囲を囲むように環状に配置された状態で、前記挿口側の管の軸心方向に沿う方向から前記接合状態を非接触で検査する検査機器と、を備えている点にある。
【0012】
環状部材を
挿口側の管の軸心に沿う揺動軸心周りに揺動させることにより、環状部材の開放端部が
挿口側の管の外径より狭い縮径姿勢から管の外径以上に広がる拡径姿勢に、或いは管の外径以上に広がる拡径姿勢から
挿口側の管の外径より狭い縮径姿勢に姿勢変更可能になる。そこで、
挿口側の管の外周から管の周囲を囲むように近づけて、開放端部を拡径姿勢に姿勢変更し、さらに可動機構によって開放端部を縮径姿勢に姿勢変更することにより、
挿口側の管の周囲を囲むように環状部材を配置することができ、当該環状部材に取り付けられた検査機器により、
挿口側の管の軸心方向に沿う方向から接合状態を非接触で検査することが可能になる。このような管検査装置を用いることで、例えば作業者が身体を屈めて狭い領域で計測するような作業から開放されるようになる。
【0013】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記環状部材は、前記開放端部で管の外周壁を押圧することにより姿勢変更させる作動機構を備えている点にある。
【0014】
作動機構が管の外周壁を押圧すると、その反力を受けた作動機構によって環状部材の開放端部が姿勢変更される。従って、例えば作業者が作動機構を管の外周壁に押し付けるように管検査装置を操作するだけで、容易く環状部材を管の周囲を囲む姿勢で設置することができるようになる。
【0015】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記環状部材は、前記開放端部を縮径姿勢に付勢する弾性部材を備えている点にある。
【0016】
環状部材の開放端部が縮径姿勢から拡径姿勢に姿勢変更された場合であっても、弾性部材による弾性復元力で開放端部が拡径姿勢から縮径姿勢に自動復帰するため、開放端部を拡径姿勢から縮径姿勢に姿勢変更させるための別途の操作を行なう必要が無い。
【0017】
同第
四の特徴構成は、同請求項
4に記載した通り、上述の第一から
第三の何れかの特徴構成に加えて、前記検査機器は、前記環状部材の周方向に分散して複数配置されている点にある。
【0018】
環状部材に複数の検査機器を分散して取り付けることで一度の計測作業で複数個所の計測が可能になり、また検査対象部位が狭い空間にある場合でも、作業者が無理な姿勢で検査対象部位に近接する必要もなくなる。
【0019】
同第
五の特徴構成は、同請求項
5に記載した通り、上述の
第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記検査機器は、撮像装置で構成され
ている点にある。
【0020】
上述の構成によれば、
撮像装置を用いて非接触で管継手の接合部を撮影して得られた画像に基づいて接合状態の良否を判断することができる。
【0021】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五の特徴構成に加えて、前記検査機器は、管の外周全周を同時に撮像可能に配置されている点にある。
【0022】
上述の構成によれば、撮像装置
を用いた一度の計測作業で管の外周全周を撮像することができるようになる。
【0023】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記管は、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入することにより互いに接合される管であり、前記検査機器により管の接合状態が検査される点にある。
【0024】
挿口側の管が受口に適正に挿入された接合状態が適正な状態であるか否かが検査機器によって検査及び確認することができるようになる。例えば、挿口側と受口側の管がシール部材を介して接合されるような構成で、検査機器として撮像装置を用いる場合には、シール部材が適正な状態であるか否かを撮像された画像に基づいて容易に判別できるようになる。
【0025】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七の特徴構成に加えて、受口側の管端面と前記検査機器との離隔距離を規定する測距竿が設けられている点にある。
【0026】
検査機器の特性上、精度等が受口側の管端面と検査機器との位置関係に影響を受けるような場合でも、管の周囲を囲むように環状部材を設置する際に測距竿によって適正な離隔距離を判別できるので、別途離隔距離を測定するような煩雑な作業が不要になる。
【0027】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、管の布設位置を検出するGPSセンサ、管の布設溝の深さを検出する深さセンサ、前記検査機器による検査情報を含む取得情報を外部に送信する通信機器の少なくとも一つが設けられている点にある。
【0028】
管検査装置にGPSセンサが設けられていれば、測量作業を要せずに管の接合部の位置情報が得られ、管検査装置に深さセンサが設けられていれば管の布設溝の深さ情報が得られ、管検査装置に通信機器が設けられていれば、検査機器による検査情報を含む取得情報、つまり画像情報、位置情報、深さ情報等が外部に送信されるので、そのような検査結果や測定結果を保存するためのメモ作成やメモリ記憶等の別途の操作が不要になる。
【0029】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記環状部材は、管の軸心に沿う揺動軸心周りに揺動する揺動部材と、前記揺動部材の揺動に連動して前記開放端部を姿勢変更させるリンク部材と、を備えて構成され、前記揺動部材と前記リンク部材により前記作動機構が構成されている点にある。
【0030】
揺動部材が管の外周壁に押圧されると、その反力を受けて当該揺動部材が管の軸心に沿う揺動軸心周りに揺動し、当該揺動部材の揺動に連動するリンク部材によって環状部材の開放端部が縮径姿勢から拡径姿勢に姿勢変更されるようになる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、作業者が窮屈な姿勢で計測作業を行なう必要が無く、さらには一度の計測作業で複数の情報を取得可能な管検査装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、ダクタイル鋳鉄管(以下、「鉄管」と記す。)を用いた上水道管の管接合部を検査する場合を例に、本発明による管検査装置を説明する。
【0034】
図1に示すように、鉄管を接合する際には、一方の管2の受口2Aに他方の管3の挿口を預けて、受口2A近傍で受口側の管2にスリングベルトやチェーンで構成される接合器具100を巻き付けるとともに、挿口近傍で挿口側の管3に同じく接合器具101を巻き付け、管2,3の両側で接合器具間に夫々レバーホイスト102,103を装着して手動操作で巻き上げる、という接合作業が行なわれる。
【0035】
図2(a)には、配管の接合部に用いられるゴム製のシール部材4が示されている。当該シール部材4は、受口の内周に形成された溝に嵌込み固定されるヒール部4aと、受口側の管内壁と挿口側の管外壁との間で圧接されるバルブ部4bを備えて構成され、ヒール部4aのうち受口側の管端側を臨む立上り面に着色マーカ部材4cが設けられている。
【0036】
図2(b),(c)には、管2,3の接合部の要部断面が示されている。一方の管2の端部に形成された受口2Aの内部に他方の管3の端部に形成された挿口3Aが挿入され、受口2Aの内周面と挿口3Aの外周面との間でシール部材4が圧縮されるように介装され、ロックリング5aと挿口3Aに形成された突部3aが係合して抜止めされる。図中、5bはロックリング心出し用部材である。
【0037】
図2(b)はシール部材4が適正に装着された例であり、受口2A内周部に形成されたシール部材収容凹部2Bにヒール部4aが嵌め込まれ、シール部材収容凹部2Bに連接されたシール部材圧縮凸部2Cと挿口側の管3の外周面との間でバルブ部4bが圧縮されている。
【0038】
図2(c)はシール部材4が不適正に装着された例であり、バルブ部4bが管3によって奥側に引き込まれ、ヒール部4aがシール部材収容凹部2Bから離脱した状態が示されている。このような不適切な接合状態ではシール機能が損なわれるため、再度接合作業を行なう必要がある。
【0039】
図3には、シール部材4の装着状態が適正であるか否かを検査する本発明による管検査装置10が示されている。当該管検査装置10は、挿口側の管3の周囲を囲むように環状に配置された環状部材11と、環状部材11に取り付けられた検査機器12と、環状部材11に取り付けられた把持部13と、測距竿14とを備えて構成されている。
【0040】
検査機器12は、環状部材11の周囲に分散配置された4台の撮像装置12(図中、2台が描かれ、管3を挟んで反対側に他の2台が配置されている。)で構成され、各撮像装置12により管2,3の接合部が周方向に領域分割して撮影される。
【0041】
測距竿14は、受口2A側の管端面と撮像装置12との離隔距離を規定する部材で、管2,3の軸心P1に沿う姿勢で環状部材11に取り付けられている。受口2A側の管端面と撮像装置12との間隔が測距竿14で規定される距離になるように管検査装置10を配置することにより、各撮像装置12により管2,3の接合部が適切に撮影されるようになる。つまり、予め調整された各撮像装置12の光軸が接合部を向き、接合部のほぼ全域が画角に入るようになる。
【0042】
図2(d),(e)には、このようにして各撮像装置12により撮影された画像を合成処理した画像が示されている。それぞれの撮像装置12により正面視で管端部の約1/4の領域が撮影され、各画像を合成することにより管端部のほぼ全周の画像が得られる。図中、一点鎖線で示される領域は4台の撮像装置12で撮影された範囲が示されている。それぞれ隣接する撮影範囲が一部重複するように設定されていると、全領域を確実に評価できるようになるのでより好ましい。
【0043】
図2(d)は、シール部材4が適正に装着された状態が示され、受口2Aの内周にヒール部4aが一様に撮影されている。
図2(e)は、シール部材4が不適正に装着された状態が示され、受口2Aの内周にヒール部4aのみならずマーカ部材4cに対応する画像が現れている。
【0044】
マーカ部材4cがシール部材4の色とは異なる着色部材で構成されているので、撮像装置12で撮影された画像に着色部材を示す画素領域が認められると、接合状態が不適正であると判断できる。撮像装置12には光軸に沿って照明光を照射する光源が配置され、接合部のような暗部でも適正な照度で撮影可能になる。
【0045】
尚、マーカ部材4cは着色部材となる塗膜に限らず、検査機器12により非接触状態で検知可能な素材で構成されていればよい。例えば、紫外線を照射することにより蛍光を発する蛍光部材でマーカ部材4cが構成されていてもよい。この場合、検査機器12から照明光として紫外線を照射し、マーカ部材4cから発せられた蛍光が検査機器12(この場合も撮像装置を用いることができる)で検知できるか否かで接合状態の可否を判別することができる。つまり、検査機器12が非接触式センサで構成され、マーカ部材が非接触式センサで検知可能な素材で構成されていればよい。
【0046】
以下、管検査装置10を詳しく説明する。
図3、
図4(a),(b)及び
図5に示すように、環状部材11は、管3の周囲を囲むように環状に配置された7つの環状片11a,11b,11c,11d,11e,11f,11gが連結されて構成され、環状片11f,11gの開放端部11Aで開放されている。
【0047】
水平姿勢の環状片11aに対して環状片11b,11cの一端が、軸心P1方向視で、約45度の傾斜角度で固定され、環状片11b,11cの他端が連結部材11hを介して環状片11d,11eの一端とそれぞれ連結され、環状片11d,11eの他端が連結部材11iを介して環状片11f,11gの一端とそれぞれ連結されている。環状片11a,11b,11cが固定環状部材となり、環状片11d,11e,11f,11gが可動環状部材となる。
【0048】
環状片11d,11eは、環状片11b,11cに対して管3の軸心P1に沿う揺動軸心P2,P4周りにそれぞれ揺動可能に軸支され、環状片11f,11gは、環状片11d,11eに対して管3の軸心P1に沿う揺動軸心P3,P5周りにそれぞれ揺動可能に軸支されている。
【0049】
各揺動軸心P2,P3,P4,P5周りに揺動可能に環状片を連結支持する支持部によって、環状部材11の開放端部11Aを管3の外径より狭い縮径姿勢と管3の外径以上に広がる拡径姿勢とに姿勢変更可能な可動機構15が構成されている。
【0050】
環状片11b,11cとそれぞれ連結される環状片11d,11eとの間、及び環状片11f,11gとそれぞれ連結される環状片11d,11eとの間には弾性部材である圧縮コイルばねSが取り付けられ、圧縮コイルばねSによる弾性復元力によって各揺動軸心P2,P3,P4,P5周りに管3を抱込む方向に、つまり開放端部11Aの離隔距離が短くなるように環状片11d,11e,11f,11gが付勢されている。
【0051】
さらに、環状片11b,11c及び環状片11f,11gには、断面「L字」状の取付部材12bを介して検査機器12である4台の撮像装置12が取り付けられ、環状部材11が管3を囲んだ状態で各撮像装置12が管の外周に均等に分散するように、つまり管中心に対する角度がそれぞれ約45度になるように配置されている。
【0052】
可動機構15を構成する4つの支持部は、管3の外周壁を押圧することにより環状部材11の開放端部11Aを姿勢変更させる作動機構16を備えている。
【0053】
図4(c)に示すように、環状部材11には、さらに管3の軸心P1に沿う揺動軸心P6,P7周りに揺動する揺動部材16a,16bと、揺動部材16a,16bの揺動に連動して開放端部11Aを姿勢変更させるリンク部材16c,16dと、を備えている。揺動軸心P6,P7となる揺動軸は環状片11aの上面に支持されている。当該揺動部材16a,16bとリンク部材16c,16dとで上述した作動機構16が構成されている。
【0054】
図4(c)中、リンク部材16c,16dに備えた符号16e,16fで示される部材は、リンク部材16c,16dの長さを調整可能な長さ調整機構を備えた連結部材であり、連結部材によりリンク部材16c,16dの長さを調整することで、開放端部11Aの縮径姿勢時の間隙を調整することができるように構成されている。
【0055】
揺動部材16a,16bは、管3を抱込むような形状に屈曲形成され、先端側に遊転ローラRが取り付けられた第1揺動竿と、揺動軸心P6,P7を挟んで第1揺動竿と「く」の字型を形成するように延出する第2揺動竿とが一体に形成されている。
【0056】
第2揺動竿の先端にリンク部材16c,16dの一端が固定され、リンク部材16c,16dの他端が環状片11f,11gに固着された取付部11j(
図4(b)参照)に取り付けられている。
【0057】
図6には、環状部材11に作動機構16が取り付けられた管検査装置10の全体構造が示されている。初期状態では圧縮コイルばねSによる付勢力で一対の開放端部11Aの離隔距離が管3の外径φ1よりも短い縮径姿勢となっている。
【0058】
図6及び
図7(a),(b)に示すように、圧縮コイルばねSによる付勢力で一対の開放端部11Aの離隔距離が管3の外径よりも短い縮径姿勢となっているときに、揺動部材16a,16bを管3の外周壁に押し付けると(
図7(a)参照)、管3の外周壁に当接した遊転ローラRが互いに離隔するように第1揺動竿が揺動軸心P6,P7周りに揺動し(
図7(b)参照)、第1揺動竿に連動して揺動する第2揺動竿及びリンク部材16c,16dが同方向に揺動し、環状片11f,11gに固着された取付部11jが引き上げられる。
【0059】
その結果、開放端部11Aの離隔距離が管3の外径以上の拡径姿勢になり、環状部材11が管3の外周を囲むように進出し、その後圧縮コイルばねSによる弾性復元力によって各揺動軸心P2,P3,P4,P5周りに管3を抱込む方向に、つまり開放端部11Aの離隔距離が短くなるように付勢される。このとき、圧縮コイルばねSの弾性復元力により、揺動部材16a,16bの揺動姿勢も元の姿勢に復帰される。
【0060】
図6には、環状片11aに把持部13が取り付けられた状態が示されている。通常、作業者は当該把持部13を把持して、管検査装置10を管3に対して上方から略垂直下方に押し付け操作することにより、環状部材11が管3の外周に沿う抱込み姿勢に姿勢調整し、その後、各撮像装置により接合部を撮影する。
【0061】
図8(a),(b),(c)には、このときの環状片11c,11e,11gの姿勢変化の様子が詳しく示されている。尚、この図では、環状片11c,11e,11gの姿勢を判り易くするために、揺動部材及びリンク部材は省略されている。また、以下の説明では、右側の環状片11c,11e,11gについて説明するが、左側の環状片11b,11d,11fについても同様である。
【0062】
図8(a)は、一対の開放端部11Aの離隔距離が管3の外径φ1よりも短い縮径姿勢となっている管検査装置10の作動機構(揺動部材(図示せず)))を管3の外周面に押し付ける前の初期状態が示されている。圧縮コイルばねSの弾性復元力によって環状片11c,11e,11gが内側に揺動付勢され、環状片11c及び環状片11eの成す角度と、環状片11e及び環状片11gの成す角度が等しく135度に設定されている。
【0063】
図8(b),(c)は、ともに作動機構(揺動部材及びリンク部材)によって開放端部11Aが拡径姿勢に姿勢変更された状態が示されている。
図8(b)は、環状片11eと環状片11gの成す角度を維持した状態で、環状片11eが軸心P4周りに揺動して環状片11cと環状片11eとの成す角度のみが大きくなった場合であり、
図8(c)は、環状片11gが軸心P5周りに揺動して環状片11eと環状片11gとの成す角度が大きくなるとともに、環状片11eも軸心P4周りに揺動して環状片11cと環状片11eとの成す角度も大きくなった場合である。
【0064】
拡径姿勢となったときの管検査装置10の最大横幅は、
図8(b)の場合にはW1となり、
図8(c)の場合にはW(W<W1)となる。つまり、単一の軸心P4周りに揺動する場合よりも、複数の軸心P4,P5周りに揺動した方が管検査装置10の最大横幅が狭くなるので、管を埋設する掘削溝の溝幅が狭い場合に適した構成となる。
【0065】
本実施形態では、管検査装置10の開放端部11Aが拡径姿勢に姿勢変更されたときの最大横幅が最少となるように、環状片11cと連結される環状片11eとの間に取り付けた圧縮コイルばねSと、環状片11gと環状片11eとの間に取り付けた圧縮コイルばねSの弾性復元力のバランスを調整され、その結果、作動機構による付勢力で発生する軸心P4周りのトルクと軸心P5周りのトルクが適正に設定されている。
【0066】
尚、作動機構による付勢力で発生する軸心P4周りのトルクよりも軸心P5周りのトルクが大きくなるように各圧縮コイルばねSの弾性復元力を設定するとともに、軸心P5周りに揺動する環状片11gの揺動角度の上限を規制するストッパ部材を環状片11gと環状片11eとの間に設けて、先ず、軸心P5周りに環状片11gを揺動させてストッパ部材で揺動が停止した後に、軸心P4周りに環状片11eが揺動するように構成してもよい。
【0067】
即ち、管検査装置10は左右対称に構成され、左右それぞれ可動環状部材が互いに回動可能な複数の可動環状片で構成されるとともに、開放端部が縮径方向に与勢されるように可動環状片同士が弾性部材で連結され、揺動部材の一方向への揺動に連動して各可動環状片が各回動軸心周りに回動するように構成されていればよく、開放端部が拡径姿勢に姿勢変更されたときの最大横幅が最少となるように、弾性部材が調整されていることが好ましい。
【0068】
作動機構16によって環状部材11の開放端部11Aが拡径姿勢に姿勢変更される際に、開放端部11A側が管の外壁に接触したり、掘削溝の側壁に接触したりして、管検査装置10が破損する虞がある。
【0069】
そこで、
図9(a)に示すように、環状部材11の開放端部11Aが管3の外周壁と当接したときに反力で開放端部11Aを拡径姿勢側または縮径姿勢側に与勢する板状の内側案内部材11Bが開放端部11Aに設けられている。当該内側案内部材11Bに作用する反力で環状片11gが揺動軸心P5周りに揺動して開放端部11Aが拡径姿勢側または縮径姿勢側に姿勢変更され、検査機器12の破損が免れるように構成されている。
【0070】
また、
図9(b)に示すように、環状部材11の開放端部11Aが管3の近傍の掘削溝の内壁部20と当接したときに反力で開放端部11Aを縮径姿勢側または拡径姿勢側に与勢する外側案内部材11Cが設けられている。当該内側案内部材11Cに作用する反力で環状片11gが揺動軸心P5周りに揺動して開放端部11Aが縮径姿勢側または拡径姿勢側に姿勢変更され、検査機器12の破損が免れるように構成されている。
【0071】
環状部材11または把持部13等管検査装置10の何れかの部位に、管の位置を検出するGPSセンサ、管の布設溝の深さを検出する深さセンサ、検査機器12による検査情報を含む取得情報を外部に送信する通信機器の少なくとも一つが設けられていることが好ましい。
【0072】
管検査装置にGPSセンサが設けられていれば、測量作業を要せずに管の接合部の位置情報が得られ、管検査装置に深さセンサが設けられていれば管の布設溝の深さ情報が得られ、管検査装置に通信機器が設けられていれば、検査機器による検査情報を含む取得情報、つまり画像情報、位置情報、深さ情報等が外部に送信されるので、そのような検査結果や測定結果を保存するためのメモ作成やメモリ記憶等の別途の操作が不要になる。
【0073】
上述の実施形態では、揺動部材16a,16bが管の軸心P1に沿う揺動軸心P6,P7周りに夫々揺動するように構成された例を説明したが、1本の揺動軸心周りに揺動部材16a,16bが揺動可能に構成されていてもよい。
【0074】
上述した実施形態では、左右対称に構成され、それぞれ可動環状部材が互いに回動可能な複数の可動環状片で構成されるとともに、開放端部が縮径方向に与勢されるように可動環状片同士が弾性部材で連結され、揺動部材の一方向への揺動に連動して各可動環状片が各回動軸心周りに回動するように構成された管検査装置10を説明したが、可動環状部材が単一の可動環状片で構成されるとともに、開放端部が縮径方向に与勢されるように可動環状片と固定環状片が弾性部材で連結され、揺動部材の一方向への揺動に連動して可動環状片が固定環状片に対して回動軸心周りに回動するように構成されていてもよい。
【0075】
また、管検査装置10は必ずしも左右対称に構成される必要はなく、左右の片方のみに可動環状片及び弾性部材を備えていてもよい。この場合、作動機構16も片方に備えた可動環状片を作動させることができるように構成されていればよい。
【0076】
上述した実施形態では、
図4(c)に示したように、管の軸心に沿う搖動軸心P6,P7周りに搖動する揺動部材16a,16bと、揺動部材16a,16bの揺動に連動して開放端部11を姿勢変更させるリンク部材16c,16dと、を備えた作動機構により環状部材11を姿勢変更する構成を説明したが、本発明よる管検査装置10は、
図10(a)に示すように、揺動部材16a,16b及びリンク部材16c,16dを用いることなく、環状部材11の開放端部11Aを管の外径より狭い縮径姿勢と管の外径以上に広がる拡径姿勢とに姿勢変更可能となる管の軸心に沿う揺動軸心P6を少なくとも1つ備えて、開放端部で管の外周壁を押圧することにより当該揺動軸心周りに開放端部11Aが姿勢変更可能に構成されていればよい。
【0077】
このように、開放端部11Aで管の外周壁を押圧することにより揺動軸心周りに開放端部11Aが姿勢変更可能に構成されていれば、揺動軸心を配置する部位及び数は特に限定されるものではなく、例えば
図10(b)に示すように、環状片11d,11eと環状片11f,11gの連結部に2つの揺動軸心P3,P4を配置するような構成であってもよい。
【0078】
上述した実施形態では、作業者が、管を手動で接合し、さらに管検査装置10を手動操作してその接合部近傍の管の外周囲に抱き込ませて検査する例を説明したが、本発明による管検査装置10の把持部を管を自動的に接合する接合装置に取り付けて、管の接合とともに接合部近傍の管の外周囲に抱き込ませて自動検査するように構成してもよい。
【0079】
尚、本発明による管検査装置は、上水道管以外に下水管に対する配管施工等にも広く適用可能である。また、鉄管以外に樹脂製の管の接合部の検査等にも使用することができる。さらには、石油化学プラントの配管の検査等にも使用することができる。
【0080】
以上説明した管検査装置は本発明の一具体例に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、管検査装置の各部の具体的な形状、サイズ、材料等は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。