(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂と、(B)カルボキシル基不含のエポキシ化合物と、(C)有機フィラーと、(D)カーボンブラックとを含有する黒色熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(C)有機フィラーが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂をあらかじめ架橋させた構造を有し、
前記(D)カーボンブラックが、ファーネス法により製造されたファーネスブラックであり、
前記(D)カーボンブラックの含有量が、前記(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対し50質量部以上200質量部以下であり、かつ、
前記(D)カーボンブラックのpH値が2.0〜3.5の範囲であることを特徴とする黒色熱硬化性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載するために使用され、そのはんだ付けランドを除く回路部分は永久保護被膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、導体回路が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
【0003】
また、近年、電子機器の小型化、内部構造の複雑化等が進んだことから、柔軟性のある構造を有するフレキシブルプリント配線板にソルダーレジスト膜が使用されている。この場合、フレキシブルプリント配線板に柔軟性を与えるために、ソルダーレジスト膜には、耐屈曲性(柔軟性)が求められる。
【0004】
そこで、耐屈曲性に優れる硬化塗膜を提供するために、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物、(E)1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエン及び(F)ポリウレタン微粒子を含有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、回路パターンに含まれる機密情報を保護すべく、フレキシブル配線板の保護膜には、優れた耐屈曲性だけでなく、フレキシブル配線板に対する隠蔽性も要求されており、その手段として、ソルダーレジストを黒色に着色して隠蔽性を付与する試みがなされている。そこで、ソルダーレジスト膜に隠蔽力を付与させるため、黒色顔料として、硬化性樹脂組成物にアセチレンブラック等のカーボンブラックの使用が提案されている(特許文献2)。
【0006】
一方、近年のフレキシブル基板上の表面塗膜は、より薄膜化させる傾向にあり、また、意匠性の観点から、色ムラのない表面塗膜の形成も要求されている。そのため、耐屈曲性及び耐熱性等の特性を有しつつ、かつ色ムラがほとんどない、隠蔽性に優れた表面塗膜を形成するがことが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、耐屈曲性及び耐熱性が良好であり、かつ、色ムラがほとんどなく、隠蔽性に優れた硬化塗膜を形成できる黒色熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを硬化した皮膜を有するフレキシブル基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂と、(B)カルボキシル基不含のエポキシ化合物と、(C)有機フィラーと、(D)カーボンブラックとを含有する黒色熱硬化性樹脂組成物であって、前記(D)カーボンブラックが、ファーネス法により製造されたファーネスブラックであることを特徴とする黒色熱硬化性樹脂組成物である。
【0010】
上記態様では、黒色硬化性樹脂組成物の(D)カーボンブラックとして、ファーネス法により製造されたファーネスブラックを使用することで、耐屈曲性及び耐熱性を損なうことなく、ほとんど色ムラのない、優れた隠蔽性を有する硬化塗膜を形成できる黒色硬化性樹脂組成物を得ることができる。したがって、フレキシブル基板上に、当該黒色硬化性樹脂組成物を塗布することにより、耐屈曲性及び耐熱性が良好であり、かつ、色ムラがほとんどなく、隠蔽性に優れた硬化塗膜が付与される。
【0011】
本発明の態様は、前記(D)カーボンブラックの含有量が、前記(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対し50質量部以上200質量部以下である黒色熱硬化性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の態様は、前記(D)カーボンブラックの平均一次粒子径が、20nm〜80nmである黒色熱硬化性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、前記(D)カーボンブラックのpH値が2.0〜8.0の範囲であるとの特性を有する黒色熱硬化性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の態様は、上記黒色熱硬化性樹脂組成物を硬化させた皮膜を有するフレキシブル基板である。このようなフレキシブル基板として、例えば、基板の上に導体回路がパターン化されたフレキシブルプリント配線板等が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、黒色硬化性樹脂組成物の(D)カーボンブラックとして、ファーネス法により製造されたファーネスブラックを使用することで、フレキシブル基板上に、耐屈曲性及び耐熱性を損なうことなく、ほとんど色ムラのない、優れた隠蔽性を有する硬化塗膜を形成することができる。したがって、例えば、本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物をフレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト膜として用いると、耐屈曲性及び耐熱性が良好であり、配線板上に付与されている配線パターンを隠蔽しつつ、かつ意匠性にも優れた保護膜を得ることができる。
【0016】
本発明の態様によれば、前記(D)カーボンブラックの含有量が、前記(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対し50質量部以上200質量部以下であることから、フレキシブル基板上に薄い膜厚を有する表面塗膜を形成しても、耐屈曲性の低下を防止しつつ、隠蔽性の高い表面塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物は、(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂と、(B)カルボキシル基不含のエポキシ化合物と、(C)有機フィラーと、(D)カーボンブラックとを含有する黒色熱硬化性樹脂組成物であって、前記(D)カーボンブラックが、ファーネス法により製造されたファーネスブラックである。
【0018】
(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂
本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜のための主成分として、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂を含有する。当該酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂は、例えば、分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させることで得ることができる。
【0019】
前記多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能であり、エポキシ当量の制限は特にないが、通常1000以下、好ましくは100〜500のものを用いる。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものも使用可能である。これらのうち耐屈曲性と耐熱性とのバランスの観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などを挙げることができ、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。(メタ)アクリル酸をエポキシ樹脂に反応させたものがエポキシ(メタ)アクリレート樹脂である。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法に特に制限は無く、例えば、エポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。
【0021】
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせるものである。使用する多塩基酸又はその無水物としては、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0022】
酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂の酸価は、特に制限されるものではないが、30〜200mgKOH/gが好ましく、40〜150mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0023】
また、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂の質量平均分子量は、硬化塗膜の強靭性及び指触乾燥性の点から3000〜200000が好ましく、5000〜50000であることが特に好ましい。これらは分子量の異なる樹脂を2種以上組み合わせて使用することも可能である。
【0024】
酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂として市販されているものには、例えば、ZAR−2000、ZAR−1035、ZFR−1122、ZCR−1642(以上、日本化薬(株)製)、リポキシSP−4621(昭和高分子(株)製)等を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
(B)カルボキシル基不含のエポキシ化合物
カルボキシル基不含のエポキシ化合物は、硬化物の架橋密度を上げて、十分な機械的強度を有する硬化塗膜を得るためのものである。当該カルボキシル基不含のエポキシ化合物として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。当該カルボキシル基不含のエポキシ化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、硬化後に十分な機械的強度の塗膜を得る点から、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、20〜40質量部が特に好ましい。
【0026】
(C)有機フィラー
有機フィラーは、耐熱性や柔軟性を向上させるために添加する。有機フィラーとしては、ウレタン系、アクリル系、シリコーン系等の樹脂をあらかじめ架橋させた構造を有した、単一組成のもの、またはコアとシェルとでその成分が異なるコアシェル型等の多層構造を有するものから適宣選択可能である。有機フィラーとしては、折り曲げ性と耐薬品性の点から柔軟性に優れたウレタン系やシリコーン系が特に好ましい。上記有機フィラーのうち、例えば、ウレタン系の樹脂として市販されているものとして、大日精化(株)社製の「RHC−730」、根上工業(株)社製の「アートパールC−300」、「アートパールC−400」、「アートパールC−800」、「アートパールP−800T」、「アートパールU−600T」、「アートパールCF−600T」、「アートパールJB−400T」、「アートパールJB−800T」、「アートパールCE−400T」、「アートパールCE−800T」、「アートパールMM−120TW」、「アートパールC−400R」、「アートパールJB−8000」等の粉末ウレタン樹脂が挙げられる。有機フィラーの配合量は、適宜選択可能であるが、耐屈曲性が低下する傾向を防止する点から、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対して、10〜300質量部が好ましく、30〜100質量部が特に好ましい。
【0027】
(D)カーボンブラック
黒色着色剤であるカーボンブラックは、硬化塗膜に隠蔽性を付与するものであり、本発明では、カーボンブラック系の黒色着色剤として、ファーネス法により製造されたファーネスブラックを配合する。
【0028】
ファーネスブラックの配合量は、特に限定されるものではないが、硬化塗膜に確実に黒色の着色を付与する点から、ファーネスブラックの配合量の下限値は、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対し、50質量部以上であることが好ましく、より高い隠蔽性を付与する点から、70質量部以上であることが特に好ましい。一方、ファーネスブラックの配合量の上限値は、硬化塗膜の耐屈曲性の低下を防止する点から、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対し、200質量部以下であることが好ましく、黒色熱硬化性組成物中でのファーネスブラックの分散性の低下を抑制する点から、150質量部以下であることがより好ましい。このような配合量でファーネスブラックが含まれている黒色熱硬化性樹脂組成物を使用することで、薄い膜厚、例えば、30μm以下、特に10μm以下の薄い膜厚の表面塗膜をフレキシブル基板上に形成した場合であっても、高い隠蔽性及び良好な耐屈曲性が付与された硬化塗膜を得ることができる。
【0029】
ファーネスブラックの種類は、特に限定されないが、ファーネスブラック粒子間の凝集力の向上による再凝集を防止する点から、ファーネスブラックの平均一次粒子径の下限値は、20nm以上であることが好ましく、隠蔽性をより向上させる点から、35nm以上であることが特に好ましい。一方、ファーネスブラックの平均一次粒子径の上限値は、ファーネスブラックを充分に高濃度で黒色熱硬化性組成物中に分散させるため、80nm以下であることが好ましく、隠蔽性をより向上させる点から、75nm以下であることが特に好ましい。このうち、隠蔽性が顕著に優れた硬化塗膜を形成するために、ファーネスブラックの平均一次粒子径は、50〜60nmの範囲であることが最も好ましい。なお、上記平均一次粒子径は、ファーネスブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を示している。
【0030】
また、耐薬品性の点から、ファーネスブラックが有するpH値の下限値は、2.0以上であることが好ましい。一方、色ムラ特性を改善させる点から、ファーネスブラックが有するpH値の上限値は、8.0以下であることが好ましく、色ムラ特性をさらに向上させる点から、ファーネスブラックが有するpH値の上限値は、6.0以下であること、すなわち、pHが酸性側であるファーネスブラックがより好ましく、より色ムラ特性をさらに向上させる点から、ファーネスブラックが有するpH値の上限値は、3.5以下であることが特に好ましい。なお、上記pH値は、ファーネスブラックと蒸留水の混合液をガラス電極pHメーターで測定した値を示している。
【0031】
上記ファーネスブラックの平均一次粒子径及びpH値の観点から、ファーネスブラックの平均一次粒子径が35〜75nmであり、かつpHが酸性側であるとの特性を有するファーネスブラックを使用することで、色ムラ特性及び隠蔽性共により向上した硬化塗膜を形成することができる。特に、ファーネスブラックの平均一次粒子径が50〜60nmであり、かつpH値が2.0〜3.5の範囲のファーネスブラック粒子を使用すると、色ムラがなく、隠蔽性が顕著に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0032】
ファーネスブラックとして市販されているものには、例えば、MA11、MA14、MA77、MA100S、MA220、MA230、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#52(以上、三菱化学(株)製)等を挙げることができる。これらのファーネスブラックは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
また、上記したカーボンブラックに加えて、色ムラ特性、隠蔽性、耐屈曲性及び耐熱性に不利な影響を与えない範囲であれば、必要に応じて、さらに、チタンブラック、アゾ系ブラック、黒鉛系等、公知の黒色着色剤を配合してもよい。
【0034】
さらに、本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物には、上記成分の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、消泡剤、増粘剤、有機溶剤、各種添加剤などを適宜配合することができる。
【0035】
消泡剤には、公知のものを使用することができ、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができ、増粘剤には、有機ベントナイト等を挙げることができる。
【0036】
有機溶剤は、黒色熱硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するために使用するものである。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。有機溶媒を用いる場合の配合量は、特に限定されるものではないが、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂100質量部に対して、40〜500質量部が好ましい。
【0037】
各種添加剤には、例えば、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤といった分散剤、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の潜在性硬化剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、イミダゾリウム塩並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤を挙げることができる。
【0038】
上記した本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0039】
次に、上記した本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物の塗工方法について説明する。ここでは、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブルプリント配線板上に、本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物を塗工して、ソルダーレジスト膜を形成する方法を例にとって説明する。
【0040】
上記のように製造した黒色熱硬化性樹脂組成物を、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブルプリント配線板上に、バーコーター、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布し、黒色熱硬化性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行い、黒色熱硬化性樹脂組成物から溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより熱硬化させ、フレキシブルプリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0041】
このようにして得られたソルダーレジスト膜にて被覆されたフレキシブルプリント配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。
【0042】
本発明の黒色熱硬化性樹脂組成物は、ソルダーレジストとしてプリント配線板に塗工する用途の他に、適宜の塗工方法にて、街灯用バックライト、美感を重視した太陽電池用バックシート表面、LEDのバックシート表面等にも利用可能である。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1〜
3、比較例
1〜3
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜
3、比較例
1〜3にて使用する黒色熱硬化性樹脂組成物を調製した。そして、調製した黒色熱硬化性樹脂組成物を後述する試験片作製工程を用いて基板上に塗工し、試験片を作成した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に言及されない限り質量部を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂
・ZAR−2000:日本化薬(株)製、酸変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂
(B)カルボキシル基不含のエポキシ化合物
・EPICLON 850−S:DIC(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(C)有機フィラー
・RHC−730:大日精化工業(株)製、ウレタン系フィラー
(D)カーボンブラック
・MA77(平均一次粒子径 23nm、pH値 2.5):三菱化学(株)製、ファーネスブラック
・MA14(平均一次粒子径 40nm、pH値 3.0):三菱化学(株)製、ファーネスブラック
・MA220(平均一次粒子径 55nm、pH値 3.0):三菱化学(株)製、ファーネスブラック
・#45(平均一次粒子径 24nm、pH値 8.0):三菱化学(株)製、ファーネスブラック
・#10(平均一次粒子径 75nm、pH値 7.0):三菱化学(株)製、ファーネスブラック
・デンカブラック(平均一次粒子径 35nm):電気化学工業(株)製、アセチレンブラック
【0047】
試験片作製工程
厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(デュポン(株)製、「カプトン50H」)に銅箔の回路パターンを設けたフレキシブル基板を、3%硫酸水溶液で表面処理した後、バーコーターを用いて、当該基板上に実施例1〜
3及び比較例
1〜3のように調製した黒色熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ塗布し、次いで、BOX炉内にて、80℃で20分(BOX炉内25分)の予備乾燥を行った。予備乾燥後、BOX炉内にて、150℃で60分(BOX炉内70分)のポストキュアを行って熱硬化させることにより、回路パターン形成したフレキシブル基板上に黒色熱硬化性樹脂組成物の硬化塗膜を形成し、試験片を作成した。硬化塗膜の膜厚は10μmであった。
【0048】
評価
(1)色ムラ
得られた硬化塗膜の状態を目視により観察して色ムラの程度を評価した。評価は下記3段階で行なった。
「◎」:色ムラが認められない。
「○」:色ムラがほとんど認められない。
「×」:色ムラが認められる。
(2)隠蔽性
色差計SE2000(日本電色工業(株))による明度(L*値)で測定した。L*値が低いほど、隠蔽性が優れていることを示す。
(3)耐屈曲性(柔軟性)
硬化塗膜が形成された試験片を、円筒形マンドレル法(JIS K−5600−5−1)の試験方法に従い、10〜2mmの折り曲げ直径にて180°折り曲げた後の硬化塗膜のクラック発生状況を、目視及び×200の光学顕微鏡で観察し、クラックの発生の有無を評価した。評価は下記2段階で行なった。
「○」:クラックの発生有り。
「×」:クラックの発生無し。
(4)耐熱性
硬化塗膜が形成された試験片にロジン系フラックスを塗布し、次いで260℃のはんだ槽に30秒間浸漬した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルで試験片を洗浄し、硬化塗膜の変色の状態を目視により観察した。評価は下記2段階で行なった。
「○」:変色なし。
「×」:変色あり。
【0049】
実施例1〜
3及び比較例1〜
3の評価結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、カーボンブラックとして、ファーネス法により製造されたファーネスブラックが添加された実施例1〜
3では、回路パターン形成したフレキシブル基板上の硬化塗膜は、色ムラ特性が「○」以上、L*値が30以下であり、耐屈曲性及び耐熱性も双方「○」であった。したがって、実施例1〜
3では、フレキシブル基板上に、耐屈曲性及び耐熱性の双方の特性が良好であり、かつ、ほとんど色ムラのない、優れた隠蔽性を有する硬化塗膜を形成することができた。また、(D)成分であるカーボンブラックとしてのファーネスブラックは、黒色熱硬化性樹脂組成物中、酸変性されたカルボキシル基含有エポキシ樹脂である(A)成分100質量部に対し、80質量部含まれていることにより、10μmの薄い膜厚を有する表面塗膜においても、良好な耐屈曲性を維持しつつ、高い隠蔽性を付与することができた。
【0052】
さらに、実施例1〜3と
比較例2、3とから、実施例1〜3では、色ムラ特性が「◎」であることから、pH値が2.5〜3.0の酸性側のpHである特性を有するファーネスブラックが添加された黒色熱硬化性樹脂組成物を使用することで、硬化塗膜の色ムラ特性をより改善することができた。
【0053】
また、実施例
2、3と実施例
1、比較例2とから、実施例
2、3では、実施例
1、比較例2よりもL*値が低いことから、平均一次粒子径が40〜75nmであるファーネスブラック粒子が添加された黒色熱硬化組成物を使用することで、硬化塗膜の隠蔽性がより向上し、特に、平均一次粒子径が55nmのファーネスブラック粒子が使用されている実施例3においては、隠蔽性が顕著に優れた硬化塗膜を形成することができた。
【0054】
さらに、実施例2、3と実施例1、
比較例2、3とから、実施例2、3では、色ムラ特性が「◎」であり、かつ実施例1、
比較例2よりもL*値が低いことから、pH値が2.5〜3.0の酸性側のpHである特性を有し、かつ平均一次粒子径が40〜55nmであるファーネスブラックが添加された黒色熱硬化組成物を使用することで、硬化塗膜の色ムラ特性がより改善し、かつ隠蔽性もより向上させることができた。特に、pH値が3.0であるとの特性を有し、かつ平均一次粒子径が55nmであるファーネスブラックが添加された実施例3においては、色ムラがなく、かつ隠蔽性が顕著に優れた硬化塗膜を形成することができた。
【0055】
一方、カーボンブラックとして、アセチレンブラックが添加された比較例1では、回路パターン形成したフレキシブル基板上の硬化塗膜は、耐屈曲性及び耐熱性は双方「○」であったものの、色ムラ特性は「×」であり、L*値も40以上であることから、形成された硬化塗膜には色ムラがみられ、実施例1〜
3と比較して隠蔽性も劣っていた。