(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376948
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】光伝送体及び照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 8/00 20060101AFI20180813BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20180813BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20180813BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180813BHJP
【FI】
F21V8/00 200
G02B6/00 326
G02B6/02 Z
F21V8/00 355
F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-226215(P2014-226215)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-91852(P2016-91852A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真悠
(72)【発明者】
【氏名】藤森 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英治
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−317844(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0187277(US,A1)
【文献】
特開2009−237276(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0245741(US,A1)
【文献】
特開2007−298698(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/147886(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0050925(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0247901(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102161501(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 8/00
G02B 6/00
G02B 6/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に微粒子が分散されている光伝送体において、上記微粒子が、六角板状の酸化亜鉛であることを特徴とする光伝送体。
【請求項2】
上記光伝送体が、チューブ状クラッド材と、該クラッド材に収容され該クラッド材よりも屈折率の高いコア材とからなり、上記クラッド材に上記微粒子が分散されていることを特徴とする請求項1記載の光伝送体。
【請求項3】
光源と、請求項1又は請求項2記載の光伝送体とからなる照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話、カーオーディオ、パチンコ台、スロット台、車両室内、犬の首輪、キッチンの足元、交通標識、洗面台、シャワー、浴槽の湯温表示機、OA機器のバックライト等の照明用として好適な光伝送体とそれを用いた照明装置に係り、均一な発光が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コア及びクラッドからなり、長さ方向の少なくとも一端から入射された光を周方向(側面)から出射させる光伝送体が種々提案されている。関連する技術として、例えば、特許文献1〜4や特許文献5,6などが挙げられる。また、参考技術として、特許文献7が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3974112号公報:クラベ
【特許文献2】特開2004−333539公報:クラベ
【特許文献3】特許第4194099号公報:クラベ
【特許文献4】特許第4928760号公報:クラベ
【特許文献5】特開2006−317844公報:スリーエム
【特許文献6】特許第5341391号公報:スリーエム
【特許文献7】国際公開2012/147886号公報:堺化学工業
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜4に記載された光伝送体は、既に当該出願人により実用化されており、市場からは一定の評価を得ている。しかし、昨今においては、市場から更なる要求として、より均一な発光が求められている。具体的には、光源からの距離による輝度変化を小さくし、どの位置から見ても均一な発光が得られる光伝送体が求められている。更には、特定方向への発光を抑え、どの角度から見ても均一な発光が得られる光伝送体が求められている。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、均一な発光が可能な光伝送体と、それを用いた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく、本発明による光伝送体は、少なくとも一部に微粒子が分散されている光伝送体において、上記微粒子が、六角板状の酸化亜鉛であることを特徴とするものである。
また、上記光伝送体が、チューブ状クラッド材と、該クラッド材に収容され該クラッド材よりも屈折率の高いコア材とからなり、上記クラッド材に上記微粒子が分散されていることが考えられる。
また、本発明による照明装置は、光源と、上記の光伝送体とからなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微粒子が六角板状の酸化亜鉛であるため、光源近くのみならず光源から離れた位置でも充分な輝度が得られ、光源からの距離による輝度変化が小さくなる。特に、微粒子の平均粒径が、可視光領域の波長の範囲内であれば、光源からの光の入射方向だけでなく入射方向と逆の方向への発光もなされる。これらにより、どの位置、どの角度から見ても均一な発光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例による光伝送体を示す一部切欠側面図である。
【
図2】本実施例で使用した微粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図3】光透過性樹脂被覆を形成した光伝送体を示す一部切欠側面図である。
【
図4】角度による光学特性の試験方法を示す概略図である。
【
図5】本実施例と比較例における長さ方向の光学特性を示すグラフである。
【
図6】本実施例における長さ方向の光学特性を示すグラフである。
【
図7】本実施例と比較例における角度による光学特性を示すグラフである。
【
図8】本実施例における角度による光学特性を示すグラフである。
【0009】
本発明における光伝送体は、透明高分子材料の少なくとも一部に微粒子が分散されたものである。微粒子は、透明高分子材料の一部に分散されていても良いし、全部に分散されていても良い。透明高分子材料の構成材料としては、プラスチックやエラストマーなど何でも良く特に限定されない。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、変成アクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、天然ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン(PFA)、ポリクロルトリフルオロエチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンプロピレンゴム、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、ポリパーフルオロブテニルビニルエーテル、TFE−パーフルオロジメチルジオキソラン共重合体、フッ素化アルキルメタクリレート系共重合体、フッ素系熱可塑性エラストマーなどのフッ素系ポリマーが挙げられる。これらは、単独、又は、2種以上をブレンドして用いることができる。また、無色透明だけでなく、使用用途によっては有色透明のものであってもよい。
【0010】
本発明における光伝送体としては、特に、クラッド材と、上記クラッド材内に収容されクラッド材よりも屈折率の高いコア材とからなることが好ましい。このような光伝送体であれば、クラッド材とコア材の界面において光の全反射が起こりやすくなり、光源から相当に離れた位置であっても輝度を十分なものとすることができる。また、コア材が非晶質であれば、透明度をより向上させることができるため、光伝送損失を低減させることが可能となる。また、上記クラッド材の外周に光透過性樹脂被覆を形成することも考えられる。
【0011】
クラッド材の構成材料としては、プラスチックやエラストマーなどのように可とう性があり、成形が容易なものであれば何でも良く特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、天然ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン(PFA)、ポリクロルトリフルオロエチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンプロピレンゴム、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、ポリパーフルオロブテニルビニルエーテル、TFE−パーフルオロジメチルジオキソラン共重合体、フッ素化アルキルメタクリレート系共重合体、フッ素系熱可塑性エラストマーなどのフッ素系ポリマーが挙げられる。これらは、単独、又は、2種以上をブレンドして用いることができる。
【0012】
上記したクラッド材を構成する材料の中でも、例えば、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、エチレン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体などが、透明性と機械的特性に優れることから好ましい。特に、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)は、柔軟であることから好ましい。また、コア材や光透過性樹脂被覆との密着性をより向上させることができるため、曲げ半径を小さくして光伝送体を曲げたときや光伝送体に繰返しの屈曲を加えたときに、部分的にコア材とクラッド材が剥離したり、光透過性樹脂被覆とクラッド材が剥離したりすることを防止できることから好ましい。
【0013】
コア材の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明グレードなど、光透過性材料として使用されるものを選択することができる。このような材料の中でも、柔軟性と高温高湿下での経時特性の点から、ポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物の重合体が構成成分の一つとして使用されたものであることが好ましい。
【0014】
ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレンポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、シリコーン変性ポリエーテルポリオール等の変性ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、又は、これらの共重合体又は混合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシプロピレンポリオールは、高温高湿度の条件や温水中でも優れた出射特性を示すことから好ましい。
【0015】
上記ヒドロキシ基反応性多官能化合物としては、N−カルボニルラクタム基を持つ化合物、ハロゲン化物、イソシアネート基を持つ化合物、イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物などが挙げられる。イソシアネート基を持つ化合物としては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネートなどが挙げられる。イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物としては、例えば、イソシアネートをラクタム等公知の方法でブロックしたブロックイソシアネート、イソシアネート基を公知の方法で多量化したイソシアヌレートを持つ化合物などが挙げられる。これらは、単独、又は、2種以上をブレンドして用いることができる。これらの中でも、イソシアネート基を持つ化合物、又は、イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物は、高温高湿の条件下や温水中でも優れた側面出射特性を示すことから好ましい。イソシアネート基を持つ化合物の中でも脂環族ポリイソシアネートは更に好ましい。イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物の中でもイソシアヌレート結合を有するものは更に好ましい。
【0016】
上記クラッド材の外周には、光透過性樹脂被覆が形成されていてもよい。光透過性樹脂被覆の構成材料としては、例えば、柔軟性メタクリル樹脂が使用されることが好ましい。柔軟性メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体を基本とした構成のものである。これに、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−エチルマレイミド、N− シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のマレイミド化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物を適宜重合したものも考えられる。また、柔軟性メタクリル樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含有していても良い。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸亜鉛共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の加水分解物などのエチレン系重合体;ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体などのプロピレン系重合体;ブタジエン重合体、イソプレン重合体などの共役ジエン重合体;ブタジエン重合体の水素添加物、イソプレン重合体の水素添加物などの共役ジエン重合体水素添加物などが挙げられる。また、必要に応じて他の重合体や添加剤を含有してもよい。含有し得る添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性等の向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維または有機繊維;熱安定剤;酸化防止剤;光安定 剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤などを挙げることができる。これらの添加量については、必要とする特性に応じて適宜設定すればよい。また、充分な出射光量が得られる範囲で、各種の染料、顔料又は蛍光剤等を配合し、光伝送体の発光色を特定色にすることも考えられる。以上の添加剤の添加量について、柔軟性メタクリル樹脂の厚さ0.25mmにおける可視光領域の光線透過率が80%以上となるようにすることが好ましい。こうすることにより、光透過性樹脂被覆内部での光の散乱や吸収を抑えることができるため、伝送損失を少なくすることができるとともに、特定色の光源により有色光を発光させる際に、設計で意図した色の光を鮮明な色彩で放つことが可能となる。尚、可視光領域の光線透過率はJIS−K7105(1981)に準拠して測定される。勿論、柔軟性メタクリル樹脂の他にも、透明なものであれば、上記したような高分子材料を使用することができる。
【0017】
上記光透過性樹脂被覆は、断面の形状が円形形状のみならず異形形状となっていてもよく、異形形状としては、平面等に配設する際に、容易且つ確実に固定が行える形状が好ましく選択される。例えば、被配設部と光伝送体との接触面積が増加する形状、被配設部に光伝送体を引っ掛けて固定することができる形状などが考えられ、具体的には、三角形、四角形、五角形、六角形などの形状や、
図3に示す形状などが挙げられる。(図中において、1は光伝送体、2はクラッド材、3はコア材、4は光透過性樹脂被覆を示す。)
【0018】
上記コア材、クラッド材及び光透過性樹脂被覆の何れか又は全てに微粒子を分散させることにより、光散乱機能を付与し、入射された光を周方向(側面)から出射させる側面出射型光伝送体とすることができる。特に、クラッド材に微粒子を分散させることが、発光の均一性の観点から好ましい。
【0019】
本発明においては、微粒子として、六角板状の酸化亜鉛が使用される。通常の酸化亜鉛微粒子は、粉砕工程や焼成工程を経て製造されるため、不規則な無定形である。ここで、酸化亜鉛の結晶構造は、亜鉛の六方最密充填格子と、そこから垂直方向に8分の3だけ移動した酸素原子の六方最密充填格子とを重ね合わせた六方ウルツ鉱型の結晶構造である。そのため、例えば上記特許文献7に記載されたような、酸化亜鉛の超微粒子を亜鉛塩水溶液中で熟成させたものは、特定の六角板状の形状に結晶成長する。このような形状の酸化亜鉛が分散されていることで、微粒子表面で光の吸収が起こりにくく、光源からの距離が離れても輝度の低下が起こりにくくなり、どの位置で見ても均一な発光が得られることになる。
【0020】
微粒子の粒径としては、平均粒径が、可視光線から近赤外線の波長の範囲内であることが好ましい。本発明における可視光線から近赤外線の波長とは、360〜2500nmの範囲のものを示す(JIS−K0210(2007年)及びJIS−Z8120(2001年)参照)。特に、平均粒径が、可視光線の波長の範囲内であることが好ましい。本発明における可視光線の波長とは、360〜830nmの範囲のものを示す(JIS−Z8120(2001年)参照)。微粒子の粒径が可視光線の波長程度以上の大きさであると、光の散乱はミー散乱の領域となる。ミー散乱の強度は、粒径と波長がほぼ等しいときに最大となるため、微粒子の平均粒径が、可視光領域の波長に近いほど、最も輝度が高くなり好ましい。また、ミー散乱においては、粒径が大きくなるに連れて光の入射方向への指向性が強くなり、側方及び後方へはあまり散乱しなくなる。そのため、微粒子の平均粒径を近赤外線の波長内に止めることで、特に、可視光線の波長の範囲を超えないことで、側方及び後方へも充分に光が散乱するようになり、どの角度から見ても均一な発光が得られることになる。また、微粒子の平均粒径が可視光線の波長に満たない場合、レイリー散乱の影響が現れ、発光が青み掛かって見えるようになるため、あまり好ましくない。また、粒径が小さくなり過ぎると、均一な分散が困難になるという問題も生じる。尚、平均粒径は、電子顕微鏡等で拡大した画像において、充分な数(例えば、250個以上)の微粒子の定方向径を測定し、その累積分布の平均値を求めることで測定できる。特に、上記したような結晶成長によって得られた六角板状の酸化亜鉛微粒子は、粒径の揃ったものを得ることができるため、このような実測的な粒径測定でも充分に正確な値を得ることができる。
【0021】
また、光伝送体における微粒子が分散されている部分においては、微粒子が、0.10〜0.20vol%の割合で分散されていることが好ましい。0.10vol%に満たない場合は、充分な光の散乱が起こらず、全体としての輝度が低下してしまう傾向にある。また、0.20vol%を超えた場合は、光源近傍で光の散乱が多くなされ、光源から離れた位置で十分な輝度が得られなくなることがある。
【0022】
本発明における光伝送体は、上記の構成材料を使用して、例えば、以下に示すような方法によって製造する。まず、上記のクラッド材を構成する材料について、公知の押出成形等の手法により長尺で管状の形状にクラッド材を成形する。クラッド材に微粒子を分散させる場合は、クラッド材を構成する材料と微粒子を混練した後に押出成形することが考えられる。このクラッド材をボビン等に巻回した状態で、クラッド材の内部に流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物を少なくとも充填する。ここで「少なくとも」とは、ポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物の重合体を構成成分として有しているものであれば良く、その他の第三成分を含む場合も当然のことながら想定されるものである。また、このときに合わせて微粒子を混合して充填することも考えられる。更に、ポリマーポリオールとヒドロキシ基多官能化合物を、例えば、加熱などにより反応させ非流動化処理を施す。上記の方法によれば、コア材が、光透過性樹脂を押出被覆する際の熱に晒されて変質することがなく、光伝送体としたときにその特性を劣化させることがないので好ましい。ここで、流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物(場合により微粒子を含む)の混合物を、クラッド材の内部に充填する前に、ポリマーポリオールとヒドロキシ基多官能化合物に加熱などの前処理を行い、粘度を高めておくことも考えられる。こうすることにより、非流動化処理の時間を短縮できるとともに、側面出射型光伝送体とする場合は、微粒子の分散状態をより均一なものとすることが可能である。
【0023】
流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物と、微粒子の混合物をクラッド材の内部に充填する方法としては、例えば、真空ポンプやチューブポンプを使用する方法や、加圧充填する方法が挙げられる。又、別の方法として、例えば、クラッド材を押出成形法によりチューブ状に成形する際に、同時に流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基多官能性化合物(場合により微粒子を含む)の混合物を充填する方法も考えられる。こうすることにより、長尺の光伝送体を連続して製造することが可能である。
【0024】
光透過性樹脂被覆の形成に当たっては、例えば、チューブ状に成形したクラッド材の外周に、目的とする断面形状となるように設計した押出金型を用いて、光透過性樹脂を押出被覆した後に、流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物等を充填し、非流動化処理をしても良いし、先にクラッド材内に流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物等を充填し、非流動化処理をして、その後に、光透過性樹脂被覆を押出被覆により形成することも考えられる。但し、後から光透過性樹脂被覆を形成する場合には、押出被覆の熱によってコア材が変質しないように注意をする必要がある。光透過性樹脂被覆を後から形成する場合、コア材の非流動化処理の際に曲げグセが付いてしまっていても直線状に矯正することができる。
【0025】
コア材の形成方法に関して、コア材の材料種類によっては、単にコア材の材料を押出成形することのみによって形成することもできる。その場合、コア材を押出成形した後に、このコア材の外周にクラッド材、光透過性樹脂被覆を順次押出成形する方法、コア材、クラッド材及び光透過性樹脂被覆を任意の組合せで同時押出成形する方法、など、種々の方法をとることができる。
【0026】
又、光透過性樹脂被覆の形成方法としては、クラッド材の外周に押出被覆により形成する方法の他に、予めチューブ状に成形した光透過性樹脂被覆をクラッド材の外周に被せる方法などが挙げられる。但し、この場合には、クラッド材と光透過性樹脂被覆をしっかりと密着させ、剥離部分がないようにする必要がある。
【0027】
又、コア材とクラッド材とからなる構造でないような、任意の形状の光伝送体の場合は、高分子材料を適宜押出成形や射出成形等の手法によって目的の形状に成形すればよい。
【0028】
本発明においては、上記の光伝送体の少なくとも一端に光源を配設し、照明装置とすることも考えられる。光源としては、従来公知の発光素子、例えば、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)などが使用可能である。又、光源の発光色や設置個数については、特に限定されることはなく、例えば、発光色が赤、青、緑、黄、橙、白等のLEDから適宜選択したり、複数個のLEDを組合せたりすることにより、様々な発色を得ることや、光量を増大させることができる。
【0029】
尚、光伝送体として、入射された光を周方向(側面)から出射させる側面出射型光伝送体を使用した場合、光源を光伝送体の片端だけでなく、両端に配設することも考えられる。こうすることにより、より高輝度な発光を得ることが可能となるとともに、夫々の端で異なる発光色の光源を用いることによって、照明装置の長さ方向で徐々に変色しながら発光させることもでき、多彩な装飾表現が可能となる。
【実施例】
【0030】
以下に、
図1を参照して本発明の光伝送体に関する実施例、比較例及び参考例を併せて説明する。
【0031】
(実施例1)
コア材3を構成する材料としては、ポリマーポリオールとしてポリオキシプロピレントリオールとポリオキシプロピレンジオールを使用し、ヒドロキシ基反応性多官能化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートを使用する。又、クラッド材2を構成する材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体を使用する。又、微粒子としては、平均粒径500nmの六角板状の酸化亜鉛を使用する。上記のクラッド材2の材料に、0.16vol%となるように上記微粒子を混練した後に押出成形をし、φ5.0mmのチューブ形状のクラッド材2を得る。このクラッド材2をφ300mmのボビンに巻回した状態で、クラッド材2内に上記コア材3を構成する材料を混合して充填し、100℃で加熱してコア材3に非流動化処理を施す。このようにして、内側からコア材3、クラッド材2が形成されるので、この両端を切断して光伝送体1を得た。
【0032】
(実施例2)
上記微粒子について、平均粒径1000nmの六角板状の酸化亜鉛を使用した他は、上記実施例1と同様にして光伝送体1を得た。
【0033】
(実施例3)
上記微粒子について、0.036
vol%とした他は、上記実施例1と同様にして光伝送体1を得た。
【0034】
(実施例4)
上記微粒子について、平均粒径300nmの六角板状の酸化亜鉛を使用した他は、上記実施例3と同様にして光伝送体1を得た。
【0035】
(比較例1)
上記微粒子について、平均粒径260nmの不定形の酸化亜鉛を使用した他は、上記実施例1と同様にして光伝送体1を得た。
【0036】
(比較例2)
上記微粒子について、使用しなかった他は、上記実施例1と同様にして光伝送体1を得た。
【0037】
上記実施例2による光伝送体1のクラッド材2部分について、特に微粒子が存在している部分について電子顕微鏡にて12000倍の撮影を行った。その画像を
図2に示す。画像中央付近に見られる六角形状のものが、本実施例で使用した微粒子(六角板状の酸化亜鉛)である。
【0038】
ここで、本実施例による端面出射型光伝送体の特性を評価するために、以下に示すような試験を実施した。
【0039】
(長さ方向の光学特性)
各試料1000mmを直線状態に配設して側面における輝度の測定を行った。光源としての白色LEDを原点とし、そこから所定の位置での側面輝度を照度計で測定して比較検証をした。実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の結果については
図5に、実施例3及び実施例4の結果については
図6に示す。
(角度による光学特性)
各試料1000mmを直線状態に配設して所定の角度での輝度の測定を行った。
図3に示すように、光源5としての白色LEDを原点とし、そこから100mmの位置及び400mmの位置における光伝送体1の断面中心部を測定点とし、原点と測定点を結ぶ線から30度、60度、90度、120度及び150度の角度への放射光を分光放射計で測定した。本試験の結果については、各試料の90度における輝度を基準とし、30度、60度、120度及び150度の輝度について、この90度での輝度の値で割って、各角度における輝度変化率を求めて比較検証をした。本試験は、実施例1、比較例1及び比較例2について行い、原点から100mmの位置における試験結果については
図7に、原点から400mmの位置における試験結果については
図8に示す。
【0040】
これらの試験結果から次のことが判明した。まず、本実施例による光伝送体は、光源近くのみならず光源から離れた位置でも充分な輝度が得られ、光源からの距離による輝度変化が小さいことが確認された。また、光源からの光の入射方向だけでなく入射方向と逆の方向への発光もなされていることが確認された。即ち、本実施例による光伝送体は、どの位置、どの角度から見ても均一な発光を得ることができるものであった。
【0041】
これに対し、不定形の酸化亜鉛微粒子を使用した比較例1については、絶対的な輝度は得られていたものの、光源近傍で強く光ってしまい、光源から離れるに従って暗くなっていくことが明らかであり、光源からの距離による輝度変化が小さいとはいえなかった。微粒子が分散されていない比較例2については、全体として輝度が小さく、且つ、光源から離れるに従って更に暗くなっており、光源からの距離による輝度変化が小さいとはいえなかった。
【0042】
また、実施例3,4を比較すると、粒径が300nmの実施例4は、光源からの距離による輝度変化は小さかったものの、粒径が500nmの実施例3に比べて、全体的な輝度が低いという傾向にあった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上詳述したように本発明の光伝送体によれば、どの位置、どの角度から見ても均一な発光を得ることができる。そのため、この光伝送体は、携帯電話・デジカメ・腕時計・カーオーディオ・カーナビ・パチンコ台・スロット台・自動販売機・車両室内外・犬の首輪・装飾具・キッチン・交通標識・洗面台・シャワー・浴槽の湯温表示機・OA機器・家庭用電気製品・光学機器・各種建材・階段・手すり・電車のホーム・屋外看板等のイルミネーションや照明、液晶表示部のバックライト等として好適に使用することができる。また、この光伝送体に光源を組合せて、照明装置として各種のイルミネーションや照明設備に使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 光伝送体
2 クラッド材
3 コア材
4 光透過性樹脂被覆
5 光源