特許第6376950号(P6376950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376950
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20180813BHJP
   A01G 22/35 20180101ALI20180813BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A01G31/00 612
   A01G1/00 301G
   A01G7/00 601Z
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-227112(P2014-227112)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-86768(P2016-86768A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302068449
【氏名又は名称】鈴木産業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 富夫
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−207144(JP,U)
【文献】 特開昭60−207517(JP,A)
【文献】 特開昭50−099824(JP,A)
【文献】 実開平03−058939(JP,U)
【文献】 特開2015−139411(JP,A)
【文献】 特開平05−304830(JP,A)
【文献】 特開2000−023558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 − 31/06
A01G 7/00
A01G 22/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を定植する定植パネルと、前記定植パネルを上方から覆って栽培室を構成する覆い部と、前記栽培室に粒子体を供給する粒子体供給手段と、前記栽培室内の粒子体を回収する粒子体回収手段と、前記定植パネルに定植された植物に液肥を供給する液肥供給手段とを有し、前記粒子体供給手段によって前記栽培室へ粒子体を供給して、定植パネルに定植された植物の一部を被覆することを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載した水耕栽培装置において、粒子体供給手段はエアによって粒子体を栽培室へ供給するものであり、粒子回収手段は粒子体をエアと共に吸引して回収するものであることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した水耕栽培装置において、前記栽培室へ供給される粒子体を均一な厚さに堆積させる粒子体均一化手段を具備したことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項4】
請求項3に記載した水耕栽培装置において、粒子均一化手段は栽培室内に備えられ、定植パネルの上方に設けられ、且つ定植パネルの略全体に対向して粒子体の供給口に接続されたフードと、前記フードに設けられたファン装置であることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した水耕栽培装置において、粒子体は合成樹脂によって構成されていることを特徴とする水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水耕栽培装置に係り、特に白ネギ等の栽培に適した水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では特許文献1に示すような水耕栽培装置が広く用いられ、土を用いないで作物等の栽培が盛んに行われている。この水耕栽培装置では、多孔性材料(スポンジ)からなる円筒状の床に作物を定着させ、円筒床ごと、定植パネルの貫通孔に収める。
ところで、白ネギやホワイトアスパラは栽培途中で土寄せを行い、土に覆われた部分に光を当てないようにすることで軟白化させている。この土寄せの作業はかなりの重労働であるばかりか、白ネギ等の成長に合わせて何回も行う必要があり手間がかかる。また、大部分が土に埋まっている白ネギ等を掘り出して収穫する作業もかなり大変であり、作業者は手間がかかる重労働を強いられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−45669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の水耕栽培装置では、定植パネルに定着させた状態で作物を栽培するので土寄せを行うことは不可能であり、作物の一部分を被覆して光を当てないようにする白ネギ等の栽培を行うことはできないという問題がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、水耕栽培において土寄せと同様に植物の一部分を被覆することを可能として、白ネギ等の栽培ができるようになり、しかも収穫時においても大部分が土に埋まっている白ネギ等を掘り出す作業を行う必要がなく、作業者を手間のかかる重労働から解放することが可能な水耕栽培装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、植物を定植する定植パネルと、前記定植パネルを上方から覆って栽培室を構成する覆い部と、前記栽培室に粒子体を供給する粒子体供給手段と、前記栽培室内の粒子体を回収する粒子体回収手段と、前記定植パネルに定植された植物に液肥を供給する液肥供給手段とを有し、前記粒子体供給手段によって前記栽培室へ粒子体を供給して、定植パネルに定植された植物の一部を被覆することを特徴とする水耕栽培装置である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した水耕栽培装置において、粒子体供給手段はエアによって粒子体を栽培室へ供給するものであり、粒子回収手段は粒子体をエアと共に吸引して回収するものであることを特徴とする水耕栽培装置である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した水耕栽培装置において、前記栽培室へ供給される粒子体を均一な厚さに堆積させる粒子体均一化手段を具備したことを特徴とする水耕栽培装置である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載した水耕栽培装置において、粒子均一化手段は栽培室内に備えられ、定植パネルの上方に設けられ、且つ定植パネルの略全体に対向して粒子体の供給口に接続されたフードと、前記フードに設けられたファン装置であることを特徴とする水耕栽培装置である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した水耕栽培装置において、粒子体は合成樹脂によって構成されていることを特徴とする水耕栽培装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水耕栽培装置によれば、水耕栽培において土寄せと同様に植物の一部分を被覆することが可能となって、白ネギ等の栽培ができるようになる。しかも収穫時においても大部分が土に埋まっている白ネギ等を掘り出す作業を行う必要がなくなる。従って、作業者を手間のかかる重労働から解放することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る水耕栽培装置の構成を示す図である。
図2図1の水耕栽培装置を用いて白ネギを栽培する工程を説明するための図である。
図3図1の水耕栽培装置を用いて白ネギを栽培する工程を説明するための図である。
図4図1の水耕栽培装置を用いて白ネギを栽培する工程を説明するための図である。
図5図1の水耕栽培装置を用いて白ネギを栽培する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る水耕栽培装置1を図面にしたがって説明する。
符号3は定植パネルを示し、この定植パネル3は発泡スチロール等の合成樹脂によって構成され、所定間隔で孔(図示せず)が形成されている。吸水可能なブロックに植物としての白ネギWを植え、ブロックを前記孔に嵌め込むことで、白ネギWを定植パネル3に定植する。
【0013】
定植パネル3の下面側には液肥槽11が備えられており、この液肥槽11には図1に示す液肥供給回収ユニット13からパイプ15を介して液肥Eが供給される。そして、肥料成分が消費された液肥Eがパイプ17を介して回収されるようになっている。
符号19は覆い部を示し、この覆い部19は定植パネル3を上方から覆って閉鎖された栽培室21を形成している。栽培室21には図示しない開閉可能な吸排気口が設けられている。覆い部19は定植パネル3から外れるようになっている。
また、栽培室21にはLEDによって光を照射する図示しない光照射装置が設けられている。
【0014】
栽培室21の天部にはフード23が設けられており、このフード23は定植パネル3の略全体に対向するサイズに設定されている。2つのフード23にはファン装置25がそれぞれ2基設けられている。
【0015】
符号27は粒子体貯留タンクを示し、この粒子体貯留タンク27には発泡スチロールから成る粒子体Pが貯留されている。粒子体Pの粒径は3mmに設定されている。
粒子体貯留タンク27には吸排両用のエアポンプ29が接続されている。また、粒子体貯留タンク27にはパイプ31、33が接続されている。パイプ31の途中部分で分岐しており、この分岐部先端が粒子体Pの供給口35となっている。供給口35はフード23の中心部に接続されている。また、パイプ33は栽培室21の側部に接続されている。
【0016】
上記粒子体貯留タンク27、吸排両用のエアポンプ29及びパイプ31によって粒子体供給手段が構成されている。また、粒子体貯留タンク27、吸排両用のエアポンプ29及びパイプ33によって粒子体回収手段が構成されている。
更に、フード23とファン装置25によって粒子体均一化手段が構成されている。
水耕栽培装置1は以上のように構成されている。
【0017】
次に、この水耕栽培装置1の動作について説明する。
定植パネル3に定植された白ネギWは、その根の一部が定植パネル3の下面から突出して液肥槽11内の液肥Eに浸かっている。従って、白ネギWは液肥Eから養分と水分を得て、また図示しない光照射装置の光照射によって成長する。なお、液肥供給回収ユニット13は液肥Eを適宜供給回収して、液肥槽11内の液肥Eを最適な状態に保つ。
【0018】
図2に示すように白ネギWの葉が少し伸びたところで、栽培室21に設けられた吸排気口(図示せず)を開放してから、エアポンプ29をエアが排出されるように作動させ、このエアによって粒子体貯留タンク27内の粒子体Pをパイプ31の供給口35へ送る。供給口35から放出された粒子体Pはファン装置25から発生する風によってフード23内において拡散させられて定植パネル3上に落下する。従って、粒子体Pは定植パネル3上に均一な厚さに堆積する。これにより粒子体Pは白ネギWの葉鞘部分だけを被覆する。粒子体Pは軽量な合成樹脂である発泡スチロールによって構成されているので、ファン装置25から発生する風に乗り拡散する。
【0019】
白ネギWの成長に従って、上記と同様にして栽培室21に粒子体Pを堆積させて図3図4に示すように葉鞘を被覆する。これにより、葉鞘が軟白化した白ネギWを得ることができる。
白ネギWを収穫する場合には、栽培室21に設けられた吸排気口(図示せず)を開放してから、図5に示すように、エアポンプ29をエアが吸引されるように作動させて、パイプ33を介してエアと共に粒子体Pを吸引し、粒子体貯留タンク27に回収する。粒子体Pは軽量な合成樹脂である発泡スチロールによって構成されているので、比較的小さな吸引力でも容易に吸引でき回収することが可能である。
そして、栽培室21内に粒子体Pが無くなってから、覆い部19を定植パネル3から外して白ネギWを収穫する。
【0020】
このように、水耕栽培装置1では粒子体Pによって白ネギWの葉鞘を覆うことで、軟白化させることが可能であり、水耕栽培において土寄せと同様の効果を得ることができる。また、収穫時においてもエアポンプ29によって粒子体Pを粒子体貯留タンク27に回収できるので、白ネギWを掘り出す作業を行う必要がない。従って、作業者を手間のかかる重労働から解放することが可能となる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では栽培する植物として白ネギを示したが、本発明はこれに限定されず、ホワイトアスパラ等、他の植物の栽培に適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の水耕栽培装置は水耕栽培装置製造業、農業において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0023】
1…水耕栽培装置 3…定植パネル 5…定植パネルの本体
11…液肥槽 13…液肥供給回収ユニット 15、17…パイプ
19…覆い部 21…栽培室 23…フード
25…ファン装置 27…粒子体貯留タンク
29…吸排両用のエアポンプ 31、33…パイプ
35…粒子体の供給口
W…白ネギ E…液肥 P…粒子体
図1
図2
図3
図4
図5