(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リンを含む有機性汚泥を受け入れる汚泥受入部と、前記汚泥受入部に受け入れられた有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理部と、前記混和処理部で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理部と、前記汚泥分離処理部で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理部と、を備えているリン回収設備であって、
前記汚泥分離処理部で分離された濃縮汚泥に無機凝集剤を添加して脱水する脱水処理部と、
前記脱水処理部で生じた脱水液を前記汚泥受入部に返送する返送機構と、
を備えているリン回収設備。
前記リン回収処理部は、前記汚泥分離処理部で分離された分離液からHAP法またはMAP法に基づいてリンを回収するように構成されている請求項1から3の何れかに記載のリン回収設備。
前記汚泥分離処理部で分離された分離液を生物処理する生物処理部を備え、前記リン回収処理部は、前記生物処理部で生物処理された被生物処理液からHAP法に基づいてリンを回収するように構成されている請求項1から3の何れかに記載のリン回収設備。
リンを含む有機性汚泥を汚泥受入部に受け入れる汚泥受入工程と、前記汚泥受入部に受け入れられた有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理工程と、前記混和処理工程で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理工程と、前記汚泥分離処理工程で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理工程と、を備えているリン回収方法であって、
前記汚泥分離処理工程で分離された濃縮汚泥に無機凝集剤を脱水処理部に添加して脱水する脱水処理工程と、前記脱水処理工程で生じた脱水液を前記汚泥受入部に返送する返送工程と、を備えているリン回収方法。
前記リン回収処理工程でリンが回収された分離液に無機凝集剤を添加する凝集処理工程と、前記凝集処理工程で凝集処理された凝集物を前記汚泥受入部に返送する無機系凝集物返送工程と、を備えている請求項7記載のリン回収方法。
前記リン回収処理工程でリンが回収された分離液に無機凝集剤を添加する凝集処理工程と、前記凝集処理工程で凝集処理された凝集物を前記脱水処理部に返送する無機系凝集物返送工程と、を備えている請求項7記載のリン回収方法。
前記汚泥分離処理工程で分離された分離液を生物処理する生物処理工程を備え、前記リン回収処理工程は、前記生物処理工程で生物処理された被生物処理液からHAP法に基づいてリンを回収する工程である請求項7から9の何れかに記載のリン回収方法。
【背景技術】
【0002】
リン肥料や工業用リン酸の製造のために必要となるリン鉱石は、枯渇資源として欧米では戦略物資に指定されている重要資源であり、そのリン鉱石を100%海外に依存している我が国では、廃棄物からのリン資源の回収が重要な課題になっている。特に下水汚泥等の有機性汚泥に濃縮されるリンは、輸入リン鉱石の10〜20%を占めると想定されていることもあり、有機性汚泥からリンを回収する様々なリン回収設備が提案されている。
【0003】
このようなリン回収設備は、リンを含む有機性汚泥を受け入れる汚泥受入部と、汚泥受入部に受け入れられた有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理部と、混和処理部で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理部と、汚泥分離処理部で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理部を備えている。当該リン回収処理部では、MAP法やHAP法等の晶析法が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、リンを肥料等として再利用できる態様で回収できる晶析法を適用した上で、リンを高効率で回収し、同時に、低含水率の脱水汚泥を排出し、さらに、pH調整剤や希釈水を使用しない、またはこれらの使用量を少なくできる汚泥処理装置等が開示されている。
【0005】
詳述すると、汚泥に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加手段と、前記高分子凝集剤を添加した後の前記汚泥の少なくとも一部を固液分離し、凝集汚泥および分離液を排出する濃縮部と、前記分離液に晶析法を適用してリンを回収し、残部であるアルカリ性脱リン液を排出するリン回収部と、前記凝集汚泥に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段と、前記無機凝集剤を添加した後の前記凝集汚泥を脱水処理し、脱水汚泥および酸性脱水液を排出する脱水部と、前記アルカリ性脱リン液および前記酸性脱水液を混合し中和処理液を排出する混合部と、を備えることを特徴とする汚泥処理装置が開示されている。
【0006】
当該汚泥処理装置によれば、高分子凝集剤が添加された凝集汚泥にさらに無機凝集剤を添加して固液分離することにより、燃焼助剤として好適な含水率の低い脱水汚泥が得られる。
【0007】
また、特許文献2には、し尿、浄化槽汚泥を含む被処理液の処理に際してリン回収量を高めることができる水処理装置等を提供することを目的として、し尿、浄化槽汚泥を含む被処理液にポリマーを添加するポリマー供給手段を有し、主として被処理液中のSS分を除去する前脱水設備と、前脱水設備の脱水ろ液を生物処理する生物処理設備と、生物処理設備を経た生物処理水にカルシウムを添加するカルシウム供給手段およびpH調整剤を添加するpH調整剤供給手段を有し、生物処理水中のリンをヒドロキシアパタイトとして晶析させて沈殿・分離除去するリン回収設備と、を備えたことを特徴とする水処理装置が開示されている。
【0008】
何れも汚泥に高分子凝集剤を添加して固液分離することで、リンが固体側に取り込まれることなく分離液側に残留し、効率的に回収されるようになる。汚泥にポリ硫酸第二鉄や塩化第二鉄等の無機凝集剤を添加すると、汚泥に溶解しているリン酸イオンがこれらの無機凝集剤と反応してリン酸塩固形物となり、固液分離後の分離液に含まれるリン酸イオンの濃度が低下してリンの回収効率が低下するため、無機凝集剤に替えて高分子凝集剤が用いられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、リン回収部から排出されたアルカリ性脱リン液と、無機凝集剤が添加された凝集汚泥が脱水処理された酸性脱水液とを、混合部で混合して中和処理液を生成することにより、pH調整剤や希釈水を使用することなく、生物処理し或いは希釈後下水放流すると記載され、特許文献1の
図4には、混合部で混合された中和処理液の一部をリン回収部に循環供給する態様が開示されている。
【0011】
しかし、生物処理後の処理水には若干のリン成分が残存しているため、高度処理を含めて上質の処理水を得るためには、生物処理後の処理水にさらに無機凝集剤を添加してリン成分等を凝集分離等する必要があり、その際の凝集物を処理するためにフィルタプレス等の別途の固液分離装置が必要になり設備コストが嵩むという問題があった。
【0012】
また、混合部で混合された中和処理液の一部をリン回収部に循環供給する場合には、無機凝集剤成分が含まれる酸性脱水液がリン回収部に供給される結果、リン回収部で処理液に溶解しているリン酸イオンが無機凝集剤と反応してリン酸塩固形物となり、処理液に含まれるリン酸イオンの濃度が低下してリンの回収効率が低下する虞もあった。
【0013】
特許文献2には、リン回収後の処理液に残存する10〜20mg/L程度の若干のリンが生物処理設備で活性汚泥に取り込まれ、リン濃度が約10mg/L以下となり、生物処理設備の後段に凝集分離設備を設ける必要がなくなると記載されているが、上質の処理水を得るためには、生物処理後の処理水にさらに無機凝集剤を添加してリン成分等を凝集分離等する必要があり、上述と同様の問題が内在している。
【0014】
また、特許文献2の場合、低含水率の脱水汚泥を得るために、前脱水設備の濃縮汚泥に無機凝集剤を後添加して固液分離すると、無機凝集剤が含まれる分離液をリン回収設備に投入することができないため、分離液を浄化するための別途の水処理装置が必要になり、設備コストが嵩むという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、設備コストの上昇を招くことなく、リンを効率的に回収するとともに燃焼助剤として使用可能な低含水率の脱水汚泥を得ることができるリン回収設備及びリン回収方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明によるリン回収設備の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、リンを含む有機性汚泥を受け入れる汚泥受入部と、前記汚泥受入部に受け入れられた有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理部と、前記混和処理部で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理部と、前記汚泥分離処理部で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理部と、を備えているリン回収設備であって、前記汚泥分離処理部で分離された濃縮汚泥に無機凝集剤を添加して脱水する脱水処理部と、前記脱水処理部で生じた脱水液を前記汚泥受入部に返送する返送機構と、
を備えている点にある。
【0017】
本発明者らは、脱水処理部で生じた無機凝集剤を含有する脱水液の処理方策について、鋭意研究を重ねた結果、当該脱水液を汚泥受入部に返送すると、意外にも無機凝集剤中の無機金属イオンと有機性汚泥中のリン酸との反応は進行せず、無機凝集剤に含まれる金属イオンがリンを含む有機性汚泥中に含まれる硫化水素と優先的に反応して金属硫化物が生成され、汚泥から発生する悪臭が大幅に軽減されるという新知見を得た。
【0018】
従来の見識によれば、汚泥に無機凝集剤を添加して脱水して得られた脱水液には無機凝集剤が含まれているため、この液分を汚泥受入部に返送すると無機凝集剤中の金属イオンと有機性汚泥中のリン酸イオンとが反応して金属リン酸塩として沈殿し、液中のリン濃度が低下するため、リン回収処理部でのリンの回収量が低下すると予測されていたが、当に当該予測に反する結果が得られたのである。
【0019】
上述の構成によれば、リン回収処理部でのリンの回収量の低下を招くことなく、また脱水処理部で生じた脱水液に対する別途の水処理設備も不要となるばかりでなく、有機性汚泥中に含まれる硫化水素と反応して金属硫化物が生成されることにより、有機性汚泥から悪臭の原因となる硫化水素が除去されるので、悪臭を除去するための別途の設備も不要となるのである。
【0020】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、前記リン回収処理部でリンが回収された分離液に無機凝集剤を添加する凝集処理部と、前記凝集処理部で凝集処理された凝集物を前記汚泥受入部に返送する無機系凝集物返送機構と、を備えている点にある。
【0021】
リン回収処理部でリンが回収された分離液に無機凝集剤が添加され、残存する少量のリンも凝集除去され、上質の処理水が得られるようになる。そして、無機凝集剤が含まれる凝集物が汚泥受入部に返送されることにより、第一の特徴構成と同様に、有機性汚泥から悪臭の原因となる硫化水素が除去され、凝集物を処理するための別途の固液分離装置も不要となる。
【0022】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、前記リン回収処理部でリンが回収された分離液に無機凝集剤を添加する凝集処理部と、前記凝集処理部で凝集処理された凝集物を前記脱水処理部に返送する無機系凝集物返送機構と、を備えている点にある。
【0023】
凝集処理部で凝集処理された凝集物が無機系凝集物返送機構によって脱水処理部に返送され、汚泥分離処理部で分離された濃縮汚泥とともに当該脱水処理部で脱水処理され、燃焼助剤に好適な低含水率の脱水汚泥が得られ、液分が返送機構によって汚泥受入部に返送されることにより、有機性汚泥から悪臭の原因となる硫化水素が効果的に除去される。
【0024】
また、上述の第二の特徴構成と同様に、リン回収処理部でリンが回収された分離液に残存するリンを除去するために無機凝集剤が添加され、凝集物にも無機凝集剤が多量に含まれる。従って、脱水処理部で添加される無機凝集剤の量を低減することができるようになる。
【0025】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記リン回収処理部は、前記汚泥分離処理部で分離された分離液からHAP法またはMAP法に基づいてリンを回収するように構成されている点にある。
【0026】
リンを回収する方法としては、液中のリンを種晶表面に晶析させる反応に基づいてリンを回収する晶析法、水処理系から吸着剤を用いてリンを回収する吸着脱リン法、焼却灰からリン酸カルシウムを回収するアルカリ抽出法、焼却灰からリン酸系肥料を製造する還元溶融法などが知られている。晶析法には、水処理系からHAP(ヒドロキシアパタイト)を回収するHAP法及び水処理系からMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)を回収するMAP法が知られている。HAP法及びMAP法は比較的リン濃度が高い液体からリンを回収するのに適した方法である。また、回収されたHAP及びMAPは、そのままでく溶性の肥料として用いることができる。液中のリンを回収すること及び回収されたリンを肥料として用いるという点から、晶析法を用いてリンを回収するのが好ましく、HAP法またはMAP法を用いてリンを回収するのがさらに好ましい。
【0027】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記汚泥分離処理部で分離された分離液を生物処理する生物処理部を備え、前記リン回収処理部は、前記生物処理部で生物処理された被生物処理液からHAP法に基づいてリンを回収するように構成されている点にある。
【0028】
HAP法とは、リン含有液にカルシウムイオンとpH調整剤を添加して、液中のリンを種晶表面に晶析させHAP(ヒドロキシアパタイト)を得る方法であり、生物処理により窒素が除去された被生物処理液にHAP法を適用することにより、リンが回収される。従って、リン回収処理部では、アンモニアの非存在下でリンが回収されるので、臭気が発生することなく衛生的に処理でき、リン回収物も臭気が発生することなく衛生的である。好ましい環境下でリンが効果的に回収できるようになり、回収されたHAPは、く溶性のリン酸肥料として有効に利用できるようになる。
【0029】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、リンを含む有機性汚泥が、し尿及び/または浄化槽汚泥である。
【0030】
し尿及び/または浄化槽汚泥は、高濃度のリンを含む液体であるため、液中からのリンの回収である本発明を適用するのに適しているからである。
【0031】
本発明によるリン回収方法の第一の特徴構成は、特許請求項7に記載した通り、リンを含む有機性汚泥を汚泥受入部に受け入れる汚泥受入工程と、前記汚泥受入部に受け入れられた有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理工程と、前記混和処理工程で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理工程と、前記汚泥分離処理工程で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理工程と、を備えているリン回収方法であって、前記汚泥分離処理工程で分離された濃縮汚泥に無機凝集剤を
脱水処理部に添加して脱水する脱水処理工程と、前記脱水処理工程で生じた脱水液を前記汚泥受入部に返送する返送工程と、を備えている点にある。
【0032】
本発明によるリン回収方法の第二の特徴構成は、特許請求項8に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記リン回収処理工程でリンが回収された分離液に無機凝集剤を添加する凝集処理工程と、前記凝集処理工程で凝集処理された凝集物を前記汚泥受入部に返送する無機系凝集物返送工程と、を備えている点にある。
【0033】
本発明によるリン回収方法の第三の特徴構成は、特許請求項9に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記リン回収処理工程でリンが回収された分離液に無機凝集剤を添加する凝集処理工程と、前記凝集処理工程で凝集処理された凝集物を前記脱水処理部に返送する無機系凝集物返送工程と、を備えている点にある。
【0034】
本発明によるリン回収方法の第四の特徴構成は、特許請求項10に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記汚泥分離処理工程で分離された分離液を生物処理する生物処理工程を備え、前記リン回収処理工程は、前記生物処理工程で生物処理された被生物処理液からHAP法に基づいてリンを回収する工程である点にある。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した通り、本発明によれば、設備コストの上昇を招くことなく、リンを効率的に回収するとともに燃焼助剤として使用可能な低含水率の脱水汚泥を得ることができるリン回収設備及びリン回収方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のリン回収設備及びリン回収方法の実施形態を説明する。
(実施の形態1)
図1には、本発明の第1の実施形態によるリン回収設備1が示されている。リン回収設備1は、リンを含む有機性汚泥からリンを回収する装置で、リンを含む有機性汚泥を受け入れる受入槽2及び中継槽4を備えた汚泥受入部と、リンを含む有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理部5と、混和処理部5で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理部6と、汚泥分離処理部6で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理部10を備えている。尚、本明細書では、「リンを含む有機性汚泥」を単に「有機性汚泥」と表記する場合もある。
【0038】
汚泥受入部2は、リンを含む有機性汚泥を受け入れる。受入槽2に受け入れられたリンを含む有機性汚泥は、所望の供給量で汚泥受入部2から前処理部3へ送られる。前処理部3は、スクリーンなどで構成され、リンを含む有機性汚泥中の固形物やティッシュペーパーなどの繊維の長いゴミなどの汚水中の夾雑物が「し渣」として除去される。
【0039】
夾雑物が除去された有機性汚泥は、中継槽4に蓄えられ、中継槽4に接続される混和処理部5などの処理能力に応じた供給量で混和処理部5に送られる。混和処理部5では、有機性汚泥に高分子凝集剤が添加され、混和処理される。高分子凝集剤は有機性汚泥中のSS(浮遊物質)を凝集して、脱水を容易にする。この処理により、有機性汚泥に含まれるリン酸態リン(PO
43−)は有機性汚泥の液分に含まれることとなる。尚、混和処理部5には、高分子凝集剤を所望量供給するための高分子凝集剤供給手段が設けられていてもよく、有機汚泥と高分子凝集剤を効率よく混合するための攪拌手段が設けられていてもよい。
【0040】
汚泥分離処理部6では、混和処理部5で高分子凝集剤と混和処理をされた有機性汚泥から液分が分離される。汚泥分離処理部6は、公知のスクリーンを使用することができる。汚泥分離処理部6で分離された液分は、分離液として貯留部8に貯留され、所望の量が生物処理部9に送られ、硝化脱窒処理される。
【0041】
生物処理部9は、分離液中のアンモニアを硝化菌が硝酸に変え、脱窒素菌が硝酸を窒素ガスに変えて取り除く硝化・脱窒槽と処理後の被処理液を膜分離する膜分離槽を備えている。膜分離された汚泥は、一部が返送汚泥として硝化・脱窒槽に返送され、一部が余剰汚泥として中継槽4に返送される。
【0042】
リン回収処理部10では、生物処理部9で硝化・脱窒処理が行われた被生物処理液からリンが回収される。本実施の形態のリンの回収は、HAP法により行われる。被生物処理液は、カルシウムイオンを供給するカルシウムイオン源とpHを調整するpH調整剤と共にリン回収処理部10に供給される。
【0043】
リンが回収された後の被生物処理液には、15〜20mg/L程度のリンが含まれている。凝集処理部11において、無機凝集剤が添加されて、残存するリンが除去される。凝集処理により、得られた凝集物及び凝集物に含まれる無機凝集剤は、無機系凝集物返送機構14を介して汚泥受入槽2に返送される。尚、凝集処理部11には、無機凝集剤を所望量供給するための無機凝集剤供給手段が設けられていてもよく、被生物処理液と無機凝集剤を効率よく混合するための攪拌手段が設けられていてもよい。
【0044】
汚泥受入槽2では、無機凝集剤に含まれる金属イオンがリンを含む有機性汚泥中に含まれる硫化水素と優先的に反応して金属硫化物が生成され、汚泥から発生する悪臭が大幅に軽減されるようになる。
【0045】
高度処理・消毒設備12では、活性炭などを用い、凝集処理部11から排出された被生物処理液に含まれるCOD、色度原因物質などの汚濁物質が除去され、放流される。
【0046】
上述した汚泥分離処理部6で分離された濃縮汚泥は、無機凝集剤が添加されて脱水処理部7で脱水処理され、低含水率の脱水汚泥が得られる。このため、減容効果により処理場外への搬送輸送費を安くすることができ、或いは燃焼した際の発熱量の大きさを利用して燃焼助剤として用いることができる。脱水処理部7で脱水された液分は、返送機構13を介して汚泥受入部2に返送される。
【0047】
尚、返送機構13を介して返送される液分、または無機系凝集物返送機構14を介して返送される凝集物及び凝集物に含まれる無機凝集剤は、主に汚泥受入槽2であるが、これらの返送先は、汚泥受入槽2とともに汚泥受入部2を構成する中継槽4であってもよく、汚泥受入槽2と中継槽4の双方であってもよい。
【0048】
図2には、本発明の第1の実施形態によるリン回収方法のフローチャートが示されている。
上述した汚泥受入部によってリンを含む有機性汚泥が受け入れられる汚泥受入工程が実行され、混和処理部5によって汚泥受入部2に受け入れられた有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混和する混和処理工程が実行される。
【0049】
汚泥分離処理部6によって混和処理部5で混和処理された有機性汚泥から液分を分離する汚泥分離処理工程が実行され、リン回収処理部10によって汚泥分離処理部6で分離された分離液からリンを回収するリン回収処理工程が実行され、脱水処理部7によって汚泥分離処理工程で分離された濃縮汚泥に無機凝集剤を添加して脱水する脱水処理工程が実行される。そして、返送機構13によって脱水処理工程で脱水された液分を汚泥受入部2に返送する返送工程が実行される。
【0050】
リンを含む有機性汚泥は、リン酸態リン(PO
43−)を含む固形と液状の中間性状を示す泥状の廃棄物であれば特に限定されず、鉱工業や農水産業の生産活動に伴って発生するのみならず、下水道、し尿処理、廃水処理などの公害防止施設など様々な分野から発生するものを含む。
【0051】
リンを含む有機性汚泥としては、特に、し尿及び/または浄化槽汚泥が好ましい。し尿及び/または浄化槽汚泥は、リン含有量が多く、また、悪臭の原因となる硫化水素(H
2S)を含有しているからである。本発明のリンの回収方法に適している有機性汚泥としては、特に制限はなく、例えば、リン含有量(全リン)として30〜500mg/L、リン酸態リン濃度として30〜300mg/Lのリンが含まれる有機性汚泥が挙げられる。
【0052】
汚泥受入工程では、汚泥受入部2で、投入されたリンを含む有機性汚泥に含まれる、土砂や石、金属片など後段の装置を傷める異物が、沈降除去される。
【0053】
汚泥受入部2で受け入れられた有機性汚泥中には、固形物やティッシュペーパーなどの繊維の長いゴミなどの汚水中の夾雑物が存在する。前処理工程では、前処理部3で、これらの夾雑物が除去される。
【0054】
混和処理工程では、混和処理部5で有機性汚泥に高分子凝集剤が添加される。混和処理部5で有機性汚泥に添加される高分子凝集剤は、有機性汚泥に添加することができ、有機性汚泥中のSS(浮遊物質)を凝集して、固液分離を容易にすることができるものとして、公知の高分子凝集剤が用いられる。高分子凝集剤のイオン性はアニオン、カチオン、ノニオンまたは両性のいずれであってもよく、高分子凝集剤は、液状タイプ(エマルジョンタイプ)であってもよく、粉末タイプであってもよい。
【0055】
これらの高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤、ポリアクリル酸エステル系高分子凝集剤、ポリメタクリル酸エステル系高分子凝集剤などが挙げられる。使用する高分子凝集剤としては、処理対象である有機性汚泥の性状により最適な種類を選択することができる。
【0056】
高分子凝集剤の添加割合は、有機性汚泥中に含まれるほとんどのリン酸態リンが、汚泥分離処理部から分離され、かつ汚泥中のSS(浮遊物質)を凝集できる量であればよく、処理対象である有機性汚泥の性状により最適な添加量が決定される。例えば、有機性汚泥中の固形物乾燥量(DS)に対して1.0重量%から3.0重量%、好ましくは1.5重量%から2.5重量%である。
【0057】
汚泥分離処理工程では、混和処理工程で高分子凝集剤と混和処理をされた有機性汚泥から液分が分離される。
【0058】
汚泥分離処理工程で使用されるスクリーンとしては、脱水処理部で有機性汚泥を脱水して、有機性汚泥を減容化することができ、且つ目詰まりを起こしにくいものであれば、特に制限はなく、公知のスクリーンを使用することができる。
【0059】
使用することのできるスクリーンの例としては、例えば、ウェッジワイヤースクリーン、ロータリースクリーン、ハニカムスクリーンなどの公知のスクリーンが挙げられる。スクリーンの目開きとしては、0.5mmから1.0mm程度である。尚、公知のスクリーンが組み込まれた濃縮ユニットなどを使用することもできる。
【0060】
脱水処理工程では、汚泥分離処理工程で分離された濃縮汚泥に無機凝集剤が添加されて脱水処理される。無機凝集剤は、高分子凝集剤と同様に有機汚泥中のSS分を凝集させるものである。本実施の形態で無機凝集剤を添加するのは、高分子凝集剤によって濃縮させた濃縮汚泥に添加して、フロックをさらに強固にし、脱水しやすいものに変えるためである。濃縮汚泥に無機凝集剤を添加することで、脱水処理を容易にすることができるものである。
【0061】
使用できる無機凝集剤としては、上述の機能を奏するものであれば特に制限はなく、公知の無機凝集剤を使用することができる。例えば、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、ポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化第二鉄などが挙げられ、好ましくはポリ硫酸第二鉄である。
【0062】
無機凝集剤の添加量は、濃縮汚泥の性状により異なり、また使用する無機凝集剤の種類により異なる。濃縮汚泥中の固形物乾燥量(DS)に対して2.0重量%から7.0重量%、好ましくは5.0重量%程度添加すればよい。
【0063】
脱水処理工程で、無機凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水する装置としては、公知の脱水分離装置を使用することができる。例えば、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機などである。脱水処理工程で脱水された脱水汚泥は、燃焼助剤として再利用することができる。
【0064】
脱水処理工程で生じた脱水液は、受入処理部2に返送される。当該脱水液には、脱水処理工程で添加された無機凝集剤が含まれる。上述したように、無機凝集剤を混和処理部5に返送すると、無機凝集剤が含まれた脱水液がリン回収工程に供され、リンの回収率が低下する。一方、無機凝集剤が含まれた脱水液を受入処理部2に返送すると、無機凝集剤が有機性汚泥に含まれる硫化水素などの悪臭の原因となる物質と反応して悪臭を軽減させるとともに、リンの回収処理効率が低減しないという効果を有する。
【0065】
脱水処理工程で生じた脱水液を汚泥受入部に返送する返送機構14は、液分を移送することができるものであれば、特に制限がなく、公知の移送機構を用いることができる。返送機構は、例えば、パイプであり、またはポンプなどの強制移送装置が設けられているパイプである。
【0066】
生物処理工程では、上述の汚泥分離処理工程で分離された分離液が被生物処理液として生物処理される。生物処理工程には、被生物処理液中のアンモニアを硝化菌が硝酸に変え、脱窒素菌が硝酸を窒素ガスに変えて取り除く硝化・脱窒工程と処理後の被処理液を膜分離する膜分離工程が含まれる。生物処理工程は、公知の生物処理に用いられる方法を用いればよい。生物処理工程では、一部のリンが菌体合成に用いられるだけであり、高いリン濃度の分離液を得ることができる。高負荷(膜分離)脱窒素処理方式を採用した生物処理工程は、アンモニアも不純物も少なく、HAP法を用いてリン酸を回収するための好適な態様となる。
【0067】
本実施の形態においては、リン回収工程は晶析法の1つの方法であるHAP法を用いてリンが回収される。HAP法では、被生物処理液からHAP(ヒドロキシアパタイト)が回収される。HAPは、リン酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合体であり、化学式Ca
10(PO
4)
6(OH)
2で示される塩基性リン酸カルシウムである。
【0068】
HAP法では、被生物処理液中のリン酸態リン(PO
43−)にカルシウムイオン源を添加して、さらにpHを調整することで過飽和としたリン酸溶液から、HAPを種結晶の表面に晶析させるものである。
【0069】
添加することのできるカルシウムイオン源としては、イオン性物質のうち、陽イオンがカルシウムで構成されるものであればよく、例えば、塩化カルシウム、消石灰(水酸化カルシウム)、硝酸カルシウム等のカルシウム塩の何れかから選択される単一または複数の物質が好適に用いられる。
【0070】
pH調整剤としては、水酸基を有する化合物を用いればよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などを用いることができる。尚、カルシウムイオン源として水酸化カルシウムを用いると、カルシウムイオン源とpH調整剤の両方の機能を果たすことができる。
【0071】
本実施の形態のリン回収工程では、HAP法を用いるので、リンの回収は、リン回収処理部10から種結晶の表面に晶析した結晶を一部引き抜いて行う。残りの結晶はリン回収処理部10で次の反応での種結晶として用いられる。本実施の形態のリン回収工程において、被生物処理液中のリン濃度が20mg/L以下になると、回収するための薬品量が低下する。リンの回収を収率よく行うためには、リン回収工程後の被生物処理液中のリン濃度が15mg/L以上になるようにリン回収工程を行うとよい。例えば、リン濃度が50mg/Lの被生物処理液からのリンの回収率は70%、リン濃度が100mg/Lの被生物処理液からのリンの回収率は85%となる。
【0072】
HAP法により回収されたリンには、く溶性リン酸が30%程度含まれる。また、生物処理が行われた被生物処理液を用いてリン回収工程が行われるので、得られたHAPは臭気がなく、衛生的である。尚、回収されたHAPの径は数十μmであり、必要に応じて脱水処理を行なってもよい。
【0073】
リンが回収された被生物処理液には、リンが15mg/Lから20mg/L程度含まれている。凝集処理工程では、リンが回収された被生物処理液に無機凝集剤を添加して、残存するリンを凝集処理する。この処理により、リン(T−P)は、1.0mg/L以下の極微量な濃度とすることができる。
【0074】
凝集処理工程で用いられる無機凝集剤は、上述した無機凝集剤と同様の無機凝集剤を使用することができる。凝集処理が行われた分離液は膜分離などで固液分離され、凝集物が分離される。分離された凝集物には無機凝集剤が含まれる。分離された凝集物及び凝集物に含まれる無機凝集剤を、無機系凝集物返送機構14を介して汚泥受入部2に返送することができる。分離された凝集物を汚泥受入部2に返送することで、凝集物を処理するための別途の処理設備が不要になるばかりでなく、分離された凝集物に含まれる無機凝集剤により、その後のリンの回収処理が阻害されることなく、有機性汚泥の悪臭が効果的に抑制されるようになる。
【0075】
高度処理・消毒処理工程では、凝集処理工程を経た被処理液に含まれるCODや着色物質などが除去される。高度処理・消毒処理工程は、例えば、被処理液を活性炭吸着塔などに導入することによって行われる。高度処理・消毒処理工程を経た被処理液は、放流される。
【0076】
(第2の実施形態)
以下、本発明による別のリン回収設備及びリン回収方法を説明する。
図3には本発明の第2の実施形態によるリン回収設備の説明図が、
図4には本発明の第2の実施形態によるリン回収方法のフロー図が示されている。本実施の形態では、凝集処理工程で凝集処理が行われ、分離された凝集物が無機系凝集物返送機構14を介して、脱水処理部7に返送される点が実施の形態1と異なる。以下の説明において、実施の形態1とは、異なる部分のみを説明する。
【0077】
凝集処理工程で無機凝集剤を添加して凝集処理が行われる。十分な凝集効果を得るために、無機凝集剤は必要量より多く添加される。凝集処理工程で得られた凝集物を脱水処理部7に無機系凝集物返送機構14を介して返送することで、脱水処理部7で添加される無機凝集剤の添加量を軽減することができる。
【0078】
また、無機系凝集物返送機構14を介して返送された凝集物は、脱水汚泥と共に回収され、再利用される。一方、脱水処理後の液分は、返送機構13を介して汚泥受入部に返送されるので、無機凝集剤が有機性汚泥に含まれる硫化水素などの悪臭の原因となる物質と反応して悪臭を軽減させるとともに、リンの回収処理効率が低減しないという効果を有する。
【0079】
(第3の実施形態)
以下、本発明による別のリン回収設備及びリン回収方法を説明する。
図5には本発明の第3の実施形態によるリン回収設備の説明図が、
図6には本発明の第3の実施形態によるリン回収方法のフロー図が示されている。本実施の形態では、リン回収方法としてMAP法を用いる。このため、汚泥分離処理部6で分離された分離液を用いて、リン回収処理部10でリンを回収し、リンが回収された分離液を被生物処理液として生物処理する生物処理部9が設けられている点が実施の形態1と異なる。以下の説明において、実施の形態1とは、異なる部分のみを説明する。
【0080】
本実施の形態においては、リン回収工程は晶析法の1つの方法であるMAP法を用いてリンが回収される。MAP法では、被処理液からMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)が回収される。MAPは、化学式MgNH
4PO
4で示される。
【0081】
MAP法では、リン酸態リン(PO
43−)とアンモニアが共存する状態で、マグネシウムイオン源を添加して、さらにpHを調整することで窒素とリンからMAPを得て種結晶の表面に晶析させるものである。MAP法はアンモニアイオンが存在することが必須である。本実施の形態では有機性汚泥中にアンモニアイオンが存在するため、アンモニアを添加する工程を省略することができる。また、有機汚泥中のアンモニアの含有量が少ない場合は、アンモニアが添加されてもよい。
【0082】
添加することのできるマグネシウムイオン源としては、イオン性物質のうち、陽イオンがマグネシウムで構成されるものであればよく、例えば、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩の何れかから選択される単一または複数の物質が好適に用いられる。
【0083】
pH調整剤としては、水酸基を有する化合物を用いればよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などを用いることができる。尚、マグネシウムイオン源として水酸化マグネシウムを用いると、マグネシウムイオン源とpH調整剤の両方の機能を果たすことができる。
【0084】
本実施の形態のリン回収工程では、MAP法を用いるので、リンの回収は、リン回収処理部10から種結晶の表面に晶析した結晶を一部引き抜いて行う。残りの結晶はリン回収処理部10で次の反応での種結晶として用いられる。本実施の形態のリン回収工程において、リン回収量は、実施の形態1と同様に、リン回収工程後の被処理液中のリン濃度と汚泥分離処理部で分離された分離液中のリン濃度とに基づいて適宜決定することができる。
【0085】
MAP法により回収されたリン(MAP)の径はmm単位であり、脱水はスクリーンで行うことができる。また、MAPは、肥料の3大要素のリンと窒素、及び必須元素のマグネシウムを含むため。単体で肥料として使用することができる。
【0086】
尚、MAP法では、アンモニアが必要であるので、有機性汚泥としては、し尿や浄化槽汚泥が好適に用いられる。このため、臭気、衛生対策が必要とされる。
【0087】
生物処理工程では、上述のリン回収工程で処理された分離液が被生物処理液として生物処理される。生物処理工程では、被生物処理液中のリン回収工程で消費されなかったアンモニアを硝化菌が硝酸に変え、脱窒素菌が硝酸を窒素ガスに変えて取り除く硝化・脱窒工程と処理後の被生物処理液を膜分離する膜分離工程からなる。生物処理工程は、公知の生物処理に用いられる方法を用いればよい。高負荷(膜分離)脱窒素処理方式を採用した生物処理工程を行うことが望ましい。
【0088】
(第4の実施形態)
以下、本発明による別のリン回収設備及びリン回収方法を説明する。
図7には本発明の第4の実施形態によるリン回収設備の説明図が、
図8には本発明の第4の実施形態によるリン回収方法のフロー図が示されている。本実施の形態では、リン回収方法としてMAP法を用い、汚泥分離処理部6で分離された分離液を用いて、リン回収処理部10でリンを回収し、リンが回収された分離液を被生物処理液として生物処理する生物処理部9が設けられている点が実施の形態3と同様である。また、凝集処理部11で凝集処理された凝集物を脱水処理部7に無機系凝集物返送機構を介して返送する構成は、実施の形態2と同様である。
【0089】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、無機系凝集物返送機構として、凝集処理部11で凝集処理された凝集物を汚泥受入部に返送する構成、または凝集処理部11で凝集処理された凝集物を脱水処理部7に返送する構成を説明したが、凝集処理部11で凝集処理された凝集物を汚泥受入部及び脱水処理部7の双方に返送するように構成されていてもよい。
【0090】
上記第1から第4の実施形態は晶析法を用いてリンを回収する。その他、水処理系から吸着剤を用いてリンを回収する吸着脱リン法、焼却灰からリン酸カルシウムを回収するアルカリ抽出法または焼却灰からリン酸系肥料を製造する還元溶融法などの公知のリンの回収方法を上記各実施の形態のリン回収処理部10に適用することも可能である。
【実施例】
【0091】
以下に実験例を説明する。
(実験例1)
K施設搬入し尿等(BOD:3,700mg/l,SS:5,700mg/l,T−N:1,300mg/l)80mLとK施設濃縮汚泥(SS:2,800mg/l)10mLと水10mLで全体として100mLとして実験例1の試験サンプルを作成した。K施設無機系濃縮汚泥は、無機凝集剤として硫化第二鉄を用い、生物処理として膜分離高負荷脱窒素処理方式を行った。
【0092】
(実験例2)
K施設搬入し尿等(BOD:3,700mg/l,SS:5,700mg/l,T−N:1,300mg/l)80mLとI施設濃縮汚泥(SS:2,400mg/l)10mLと水10mLで全体として100mLとして実験例2の試験サンプルを作成した。K施設無機系濃縮汚泥は、無機凝集剤として硫化第二鉄を用い、生物処理として膜分離高負荷脱窒素処理方式を行った。
【0093】
(実験例3)
K施設搬入し尿等(BOD:3,700mg/l,SS:5,700mg/l,T−N:1,300mg/l)80mLと水20mLで全体として100mLとして実験例3の試験サンプルを作成した。
【0094】
(リン酸濃度及び硫化水素濃度確認試験)
上記実験例1〜3をそれぞれ200mLの上記実験例1〜3をそれぞれ200mLのバイアルに入れ密栓し、室温で、振とう機を用いて、50回/分の振とう条件で連続的に浸透した。密栓直後(0時間)及び72時間振とう後の液中のリン酸濃度及び硫化水素濃度を測定した。リン酸濃度はモリブデン青吸光度法を用い、硫化水素濃度はガスクロマトグラフ法を用いて測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0095】
表1から、凝集処理された凝集物をし尿等に添加して浸透した実験例1,2では、リン酸濃度はほとんど変化していないのに対し、硫化水素濃度は大きく減少していることがわかる。この結果から、硫化水素は、硫化第二鉄と反応し、硫化鉄(FeS)が生成されたためと考えられた。また、実験例3において、72時間後に硫化水素が増加したのは、し尿等に含まれる硫酸菌がし尿等中の硫化物を還元反応したためと考えられた。
【0096】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。