(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対応関係は、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、第1閾値より小さい場合は、前記画素の輝度値を0から前記所定の値までの値に変換するように設定されている、請求項1または2に記載の画像表示方法。
前記対応関係は、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、第1閾値より小さい場合は、前記画素の輝度値を0から前記所定の値までの値に変換するように設定されている、請求項7または8に記載の画像表示装置。
【背景技術】
【0002】
平板形状のディスプレイ装置としては、量産性、駆動手段の容易性、高画質の具現というメリットにおいて、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device、LCD)が特に使用されている。
【0003】
図9に、LCDパネルを1枚使用した従来の画像表示装置901を示す。画像表示装置901は、画像表示装置本体902とLCDモジュール903を備えている。画像表示装置本体902は、画像処理エンジン904を含む。LCDモジュール903は更に、I/F(インタフェース)905、LCDコントローラ906、及びRGBパネル907を備えている。
【0004】
画像表示装置本体902内の画像処理エンジン904で生成された画像データは、I/F905を経由してLCDコントローラ906に送信される。LCDコントローラ906はI/F905から受信した画像データを信号処理し、RGBパネル907に送信する。RGBパネル907はLCDコントローラ906から受信した、信号処理された画像を表示する。
【0005】
画像表示装置901においては、LCDモジュール903に入力された画像データに対し、LCDコントローラ906内のパネルドライバーなどによって折れ線ガンマによる補正を行って、目視における階調のリニアリティ特性を実現している。
【0006】
このような画像表示装置901においては、RGBパネル907をバックライトの照明が通過することで輝度表現を行っている。そのため、特に黒領域の階調特性が悪く、理想の輝度に比べて明るい方向に輝度が観測される。この現象を表したものが
図10である。
図10において、横軸に示される入力、及び縦軸に示される出力は、入力および出力となる画像データの輝度値の最大値を100%とした、輝度値の対数表現となっており、
図10は入力された輝度値が実際にどのような輝度値でRGBパネルに表示されるかを示している。
【0007】
本図において、線1001は輝度値の入出力の理想的な関係を、線1002はLCDパネルを使用した従来の画像表示装置における実際の輝度値の入出力の関係を、それぞれ示す。この入出力の関係、つまり階調特性が理想値に近づくほど、階調がリニアに表示され、人間の目に自然な表示を行うことができる。
【0008】
図10の線1002においては、入力輝度値が小さく、つまり画像データの階調が暗くなると、出力輝度値が理想よりも大きくなっている。つまり実際にRGBパネルに表示される画像は、理想とされる輝度値よりも大きく、すなわち、白っぽく、明るく表示される。この現象は黒浮きといわれ、LCDパネルにおいて暗い領域を表示する際にLCDパネルの遮光が完全でなく、バックライトの照明光が漏れるために発生するものであり、LCDにおいて特に問題となる現象である。従来のCRTでは10,000:1、有機ELパネルでは1,000,000:1のコントラスト比が実現されているが、本現象により従来のLCDパネルにおいては1500:1程度のコントラスト比しか実現できない。
【0009】
そこで、コントラスト比を改善し、黒浮きを解消する装置として、LCDパネルを2枚使用した画像表示装置が提案されている。
【0010】
例えば関連技術として、特許文献1(特開平5−88197)、特許文献2(特開2008−111877)に示される画像表示装置がある。
【発明の概要】
【0011】
特許文献1、2に記載される画像表示装置は、2枚のLCDパネルを使用することにより、全体のコントラスト比は改善されてはいるが、高輝度の点や線などのピーク値については、コントラスト比は改善されない。これらの方法においては、階調変換特性のコントロールが難しいと共に、自然界の映像のダイナミックレンジを再現できていない。
【0012】
自然界の映像のダイナミックレンジの再現に関しては、例えば、画像表示装置で表示する画像をカメラで撮影する際には、カメラは人の眼に比べてダイナミックレンジが低いため、
図11に示すように黒側や高輝度側でリミッタをかけ、中間輝度域を伸ばしている。これにより、見たい部分のダイナミックレンジを広げるように、画像は撮像されている。元々の入力画像が8ビットで量子化されている場合、このように中間輝度域のコントラストを強く見せるように撮像された結果、高輝度の部分はリミッタがかかったような状態になっている。いわゆる黒つぶれ、白つぶれの現象が発生する。これは、撮像時に高輝度側の情報が失われてしまっているため、本来の輝度の高い部分を再現できないことに、起因するものである。
【0013】
本発明は、前側のLCDパネルと後側のLCDパネルを重ねることにより構成された画像表示装置を用いる、画像表示方法であって、前記前側のLCDパネルにRGB画像を表示すること、RGB画像に基づく画像の階調を、階調変換前後の輝度値の対応関係が登録されたルックアップテーブルによって階調変換して、輝度が調整されたルックアップテーブル出力画像を生成すること、前記後側のLCDパネルに、前記ルックアップテーブル出力画像に基づく白黒調整画像を表示すること、を含み、前記対応関係は、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、第1閾値以上の場合は、前記画素の輝度値を所定の値に変換するように設定されており、前記対応関係は、更に、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、前記第1閾値より大きい第2閾値以上の場合は、前記画素は高輝度領域にあると判断し、前記画素の輝度値を輝度値の最大値に変換するように設定されている、画像表示方法を提供する。
【0014】
前記白黒調整画像は、前記ルックアップテーブル出力画像の前記高輝度領域が拡大された高輝度領域拡大データを生成すること、前記ルックアップテーブル出力画像にローパスフィルタを適用してローパスフィルタ適用画像を生成すること、各画素について、前記高輝度領域拡大データの前記画素に対応する値に応じて、前記ルックアップテーブル出力画像の前記画素に対応する輝度値または前記ローパスフィルタ適用画像の前記画素に対応する輝度値を選択して前記白黒調整画像を生成すること、によって生成されてもよい。
【0015】
前記対応関係は、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、第1閾値より小さい場合は、前記画素の輝度値を0から前記所定の値までの値に変換するように設定されてもよい。
【0016】
前記高輝度領域拡大データは、各画素に対し、前記ルックアップテーブル出力画像の前記画素の輝度値が輝度値の最大値であって、前記画素に隣接する画素の輝度値が輝度値の最大値ではない場合に、前記隣接する画素の輝度値を輝度値の最大値に置換することによって生成されてもよい。
【0017】
前記白黒調整画像は、各画素に対し、前記高輝度領域拡大データの前記画素に対応する値が輝度値の最大値であるときに、前記ローパスフィルタ適用画像の前記画素に対応する輝度値を選択し、輝度値の最大値でないときに、前記ルックアップテーブル出力画像の前記画素に対応する輝度値を選択することにより生成されてもよい。
【0018】
RGB画像に基づく前記画像は、RGB画像から色マトリクス変換によって生成されてもよい。
【0019】
また、本発明は、前側のLCDパネルと後側のLCDパネルを重ねることにより構成された画像表示装置であって、RGB画像を信号処理して前記前側のLCDパネルに供給するLCDコントローラと、階調変換前後の輝度値の対応関係が登録されたルックアップテーブルであって、RGB画像に基づく画像を階調変換し、輝度が調整されたルックアップテーブル出力画像を生成する、前記ルックアップテーブルを含み、前記ルックアップテーブル出力画像に基づく白黒調整画像を前記後側のLCDパネルに供給するLVコントローラと、を含み、前記対応関係は、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、第1閾値以上の場合は、前記画素の輝度値を所定の値に変換するように設定されており、前記対応関係は、更に、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、前記第1閾値より大きい第2閾値以上の場合は、前記画素は高輝度領域にあると判断し、前記画素の輝度値を輝度値の最大値に変換するように設定されている、画像表示装置を提供する。
【0020】
前記LVコントローラは、前記ルックアップテーブル出力画像の前記高輝度領域を拡大した高輝度領域拡大データを生成する、高輝度領域拡大部と、前記ルックアップテーブル出力画像にローパスフィルタを適用してローパスフィルタ適用画像を生成するローパスフィルタ部と、各画素について、前記高輝度領域拡大データの前記画素に対応する値に応じて、前記ルックアップテーブル出力画像の前記画素に対応する輝度値または前記ローパスフィルタ適用画像の前記画素に対応する輝度値を選択して前記白黒調整画像を生成する選択部と、を更に含んでもよい。
【0021】
前記対応関係は、RGB画像に基づく前記画像の各画素の輝度値が、第1閾値より小さい場合は、前記画素の輝度値を0から前記所定の値までの値に変換するように設定されてもよい。
【0022】
前記高輝度領域拡大部は、各画素に対し、前記ルックアップテーブル出力画像の前記画素の輝度値が輝度値の最大値であって、前記画素に隣接する画素の輝度値が輝度値の最大値ではない場合に、前記隣接する画素の輝度値を輝度値の最大値に置換することにより、前記高輝度領域拡大データを生成してもよい。
【0023】
前記選択部は、各画素に対し、前記高輝度領域拡大データの前記画素に対応する値が輝度値の最大値であるときに、前記ローパスフィルタ適用画像の前記画素に対応する輝度値を選択し、輝度値の最大値でないときに、前記ルックアップテーブル出力画像の前記画素に対応する輝度値を選択することにより前記白黒調整画像を生成してもよい。
【0024】
前記LVコントローラは、RGB画像から色マトリクス変換によって、RGB画像に基づく前記画像を生成する色マトリクス変換部をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0026】
すなわち、高輝度の点や線の部分で白ピーク処理を施すことで、高輝度領域の表現能力を高めることが可能である。
【0027】
好ましい様態では、黒浮きを防止し、コントラスト比を格段に改善することが可能となる。
【0028】
好ましい様態では、画像表示装置を、安価に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態である画像表示装置の信号処理ブロック図を示す。
図1における画像表示装置1は、画像表示装置本体2とLCDモジュール3を備えている。画像表示装置本体2は、画像処理エンジン4を含む。LCDモジュール3は更に、I/F(インタフェース)5、LCDコントローラ6、RGBパネル7、LV(ライトバルブ)コントローラ8、及びLVパネル9を備えている。
【0032】
画像表示装置本体2内の画像処理エンジン4は、RGB画像を生成し、LCDモジュール3に送信する。
【0033】
LCDモジュール3内のI/F5は、画像処理エンジン4が生成したRGB画像を受信し、LCDコントローラ6、及びLVコントローラ8に送信する。
【0034】
LCDコントローラ6は、I/F5からRGB画像を受信し、受信したRGB画像を信号処理して、RGBパネル7に送信する。
【0035】
RGBパネル7は、LCDコントローラ6からRGB画像を受信し、表示する。
【0036】
LVコントローラ8は、I/F5からRGB画像を受信し、受信したRGB画像を信号処理して、白から黒までの明暗だけで表現された、グレースケールの画像を生成し、当該画像の輝度を調整して、LV画像(輝度が調整されたグレースケールの白黒調整画像)を生成し、LVパネル9に送信する。
【0037】
LVパネル9は、LVコントローラ8からLV画像を受信し、表示する。
【0038】
図2は、
図1に示される画像表示装置1の一部の実施の形態を示す。
図2の画像表示装置1は、
図1に記載のRGBパネル7とLVパネル9、及びバックライトユニット10を備える。
【0039】
RGBパネル7は、カラーフィルタ基板11、TFT基板12、偏光フィルム13、駆動IC14を備えている。カラーフィルタ基板11は、ブラックマトリクスやR、G、Bのカラーフィルタを配列し、共通電極などが形成された基板である。TFT基板12は、液晶側にTFTや電極などを形成した基板である。偏光フィルム13は、後述するバックライトユニット10から照射される光を偏光させる。駆動IC14は、LCDコントローラ6によって処理されたRGB画像を、TFT基板12を駆動させることによってRGBパネル7に表示する。
【0040】
LVパネル9は、ガラス基板15、TFT基板16、偏光フィルム17、駆動IC18を備えている。ガラス基板15はRGBパネル7におけるカラーフィルタ基板11に対応するものであるが、カラーフィルタ基板11とは異なり、カラーフィルタ基板11の有するブラックマトリクスやカラーフィルタを有さない。これは、LVパネル9が、LV画像、つまり白から黒までの明暗だけで表現された、グレースケールの画像を表示するという、本発明の特徴に基づくものである。TFT基板16、偏光フィルム17は、RGBパネル7のTFT基板12、偏光フィルム13と同様のものである。駆動IC18は、LVコントローラ8によって処理されたLV画像を、TFT基板16を駆動させることによってLVパネル9に表示する。
【0041】
RGBパネル7とLVパネル9は、正面から見た場合に、対応する画素が重なって表示されるように、互いに重ねて配置される。
【0042】
バックライトユニット10は、光ガイドパネル19と光源20を備える。光源20は光ガイドパネル19に対し光を照射する。光ガイドパネル19は、光源20から照射された光を屈折させてLVパネル9に照射する。光ガイドパネル19から照射された光は、重ねられたLVパネル9、及びRGBパネル7を順に通過して、画像表示装置1を視聴する人間の眼に届く。
【0043】
次に、
図3を用いて、LVコントローラ8を説明する。
【0044】
LVコントローラ8は、色マトリクス変換部30、ルックアップテーブル(LUT)31、高輝度領域拡大部32、ローパスフィルタ(LPF)部33、遅延部34、および選択部35を備える。
【0045】
色マトリクス変換部30は、I/F5を介して画像処理エンジン4からRGB画像を受信する。色マトリクス変換部30は受信したRGB画像に対して、色マトリクス変換を行う。色マトリクス変換は、R、G、Bのそれぞれの輝度値を入力とした場合に、例えば次式のような演算を行うことで、グレースケールの輝度値であるYを取得する。c
1、c
2、c
3は所定の定数である。
【0046】
これにより、色マトリクス変換部30は、入力されたRGB画像から、白から黒までの明暗だけで表現された、グレースケールの色マトリクス変換画像を生成する。色マトリクス変換部30は生成した色マトリクス変換画像をLUT31に送信する。
【0047】
LUT31は、色マトリクス変換部30から色マトリクス変換画像を受信する。LUT31は色マトリクス変換画像を階調変換し、LUT出力画像を生成する。
図10を用いて上述したように、画像データの階調が暗くなると、出力輝度値が理想よりも大きく、したがって明るくなる。つまり、実際にLCDパネルに表示される画像は、理想とされる輝度値よりも大きく、したがって白っぽく、明るく表示される。このように、理想値と実測値との間で階調特性が乖離する入力輝度値を、所定の閾値1とする。
【0048】
また、輝度値の最大値に近い、高い値の閾値2を設定する。閾値2は、閾値2より高い高輝度を有する画素と、比較的高い輝度値ではあるが、閾値2よりは低い輝度値を有する画素と区別して、これらの画素間で明暗をより強調して表示するためのものである。
【0049】
LUT31は、色マトリクス変換画像の各画素に対して、当該画素の輝度値が閾値1以上の場合は、当該輝度値を所定の値、例えば輝度値が8ビットで表される場合は255に0.8などの1より小さい小数を掛けた値に変換する。LUT31は、更に、当該画素の輝度値が閾値1より大きい閾値2以上の場合は、当該画素は高輝度領域にあると判断し、当該輝度値を輝度値の最大値、例えば輝度値が8ビットで表される場合は255に変換する。このようにしてLUT31は、輝度が調整されたLUT出力画像を生成する。
【0050】
図4に、LUT31の階調変換特性の例を示す。
図4(a)、(b)共に、輝度値が8ビットで表される場合を例示している。
図4(a)は、閾値1以上で閾値2より小さい入力輝度値を255×m(mは1より小さい小数)の値に変換し、閾値2以上の入力輝度値を255に変換し、閾値1より小さい入力輝度値を線形の関数により0から255×mの間の値に変換する、LUT31の値の設定例である。
図4(b)は、閾値1以上で閾値2より小さい入力輝度値を255×mの値に変換し、閾値2以上の入力輝度値を255に変換し、閾値1より小さい入力輝度値を曲線形状の関数により0から255×mの間の値に変換する、LUT31の値の設定例である。
【0051】
輝度値が8ビットで表される場合、閾値1は32などの値をとり得るが、これに限られない。閾値2も、閾値1より大きいいかなる値も選択可能ではあるが、閾値2は輝度値が特に高い領域のコントラストを強調するために当該領域を選別するためのものであるので、輝度値の最大値である255に近い値を有するようにして、入力輝度値、すなわち、LUT31への入力となる色マトリクス変換画像における輝度値が輝度値の最大値に近い画素のみ、階調変換後の出力輝度値が輝度値の最大値を有するようにするのが望ましい。
【0052】
LUT31は、上記のように、高輝度領域でも、暗領域でもない、これらの間の中間領域に相当する輝度値を有する画素については、それに対する出力輝度値を輝度値の最大値よりも一定量小さい値(
図4の例における255×m)に設定する。このような階調変換特性を有するLUT31によって階調変換を行うことで、輝度値が小さい暗領域のコントラストを強調し、黒浮きを防止すると同時に、高輝度領域の表現能力を高めることが可能となる。
【0053】
尚、閾値1より小さい入力輝度値を0から輝度値の最大値よりも一定量小さい値の間の値に変換する関数の形状は、
図4(a)、(b)に限られない。関数の形状は、実験による実測で求めることが可能である。
【0054】
LUT31は、メモリなどに、入力輝度値と出力輝度値の、つまり、階調変換前後の輝度値の対応関係として事前に登録し、別途設置されるCPUなどでLUT31上に登録された対応関係を参照しながら、入力輝度値を出力輝度値に変換するように、実装することが可能である。
【0055】
LUT31は、上記のように生成されたLUT出力画像を、
図3に示される、高輝度領域拡大部32、LPF部33、及び遅延部34に送信する。
【0056】
高輝度領域拡大部32は、LUT31が生成したLUT出力画像を受信し、LUT出力画像に対し、高輝度領域を拡大し、高輝度領域拡大データを生成する。具体的には、高輝度領域拡大部32は、各画素に対し、LUT出力画像の当該画素の輝度値が輝度値の最大値であって、当該画素に隣接する画素の輝度値が輝度値の最大値ではない場合に、隣接する画素の輝度値を輝度値の最大値に置換することにより、高輝度領域拡大データを生成する。
【0057】
図5(a)は高輝度領域拡大部32で行われる高輝度領域拡大処理の概要を示したものである。高輝度領域拡大処理はLUT出力画像の各画素に対して、画素ごとに行われる。LUT出力画像の、現在処理中の画素(及びその輝度値)をX
C、X
Cに隣接する画素(及びその輝度値)を、X
Cの左上の画素から右方向および下方向に順に、X
1〜X
8とする。図中、着色して表示されている画素は高輝度領域に属する画素、すなわち、LUT出力画像において輝度値の最大値である255の値を有する画素を示し、白く表示されている画素は高輝度領域に属さない画素とする。すなわち、X
1、X
4、X
6、X
7が高輝度領域に属し、X
2、X
3、X
5、X
8が高輝度領域に属さない。
【0058】
図5(b)は、高輝度領域拡大処理の手順をプログラム形式で表現した例である。まず、X
Cが255か否か、つまり高輝度領域に属するか否かを判定する。
図5(a)の例においては、X
Cは高輝度領域に属するため、隣接する画素の輝度値X
1〜X
8を参照し、輝度値X
iが255ではない、つまり高輝度領域に属していなければ、X
iを255に、つまり該当する画素が高輝度領域に属するように、変更する。すなわち、処理中の注目画素が、画像において高輝度領域の境界であるエッジ上の高輝度領域に属し、なおかつ、注目画素に隣接する画素で高輝度領域に属さないものがあれば、注目画素の周辺を1画素分だけ高輝度領域にすることによって、高輝度領域を広げる処理を行う。以上の処理により、高輝度領域拡大部32はLUT出力画像から高輝度領域拡大データを生成する。
【0059】
本実施形態においては、処理対象となるLUT出力画像の各水平ライン上の各画素に対して、当該画素を注目画素として順次、高輝度領域拡大処理を実施している。このような実施形態において、ある画素について高輝度領域拡大処理を実施した際に、当該画素に隣接する画素で高輝度領域に属さないものが存在し、高輝度領域拡大処理によって当該画素が高輝度領域に属するように変更された場合、この、高輝度領域に属するように変更された画素については、当該画素を注目画素とした高輝度領域拡大処理は行われないことに注意されたい。高輝度領域拡大処理の各所で行われる判定は、高輝度領域拡大部32に入力されたLUT出力画像の値を用いるものであり、当該LUT出力画像に対する高輝度領域拡大処理中に値が変更された可能性がある、処理中、あるいは処理後のデータの値を用いるものではない。これにより、画素ごとに繰り返される高輝度領域拡大処理によって、高輝度領域が際限なく拡大されることを防いでいる。
【0060】
高輝度領域拡大部32は、生成した高輝度領域拡大データを選択部35に送信する。
【0061】
図3に示されるLPF部33は、LUT31からLUT出力画像を受信し、受信したLUT出力画像に対し、LPFを適用し、LPF適用画像を生成する。LPF部33は、生成したLPF適用画像を選択部35に送信する。
【0062】
図3に示される選択部35は、高輝度領域拡大部32が生成した高輝度領域拡大データと、LPF部33が出力したLPF適用画像と、LUT31が出力したLUT出力画像を受信し、各画素について、高輝度領域拡大データの当該画素に対応する値に応じて、LUT出力画像の当該画素に対応する輝度値またはLPF適用画像の当該画素に対応する輝度値のいずれかを選択する。選択部35は、各画素に対し、高輝度領域拡大データの当該画素に対応する値が輝度値の最大値であるときに、LPF適用画像の当該画素に対応する輝度値を選択し、輝度値の最大値でないときに、前記LUT出力画像の当該画素に対応する輝度値を選択することにより、各画素に対する輝度値を決定する。選択部35は、各画素について選択された輝度値を結合して、LVパネル9に最終的に表示されるLV画像を生成し、LVパネル9に送信する。
【0063】
図6は、選択部35における、各画素に対する出力値の選択方法の概要を示すものである。
図6上部の「LUT出力」は、LUT31が出力したLUT出力画像のある1水平ラインに対し、横軸を当該水平ラインを構成する画素の並び、縦軸を各画素の輝度値とした図である。
図6下部の「選択出力」は、選択部35が出力したLV画像における、「LUT出力」と同一の1水平ラインを示すものであり、横軸を当該水平ラインを構成する画素の並び、縦軸を各画素のLV画像における輝度値とした図である。
【0064】
「LUT出力」の「暗領域」は、色マトリクス変換画像の対応する画素が0から閾値1より小さい値を有していたために、LUT31によって0から255×mより小さい輝度値に階調変換された画素により構成された領域を指す。「LUT出力」の「中間領域」は、色マトリクス変換画像の対応する画素が閾値1以上で、閾値2より小さい値を有していたために、LUT31によって輝度値255×mに階調変換された画素により構成された領域を指す。「LUT出力」の「高輝度」は、色マトリクス変換画像の対応する画素が閾値2以上の値を有していたために、LUT31によって輝度値255に階調変換された画素により構成された領域を指す。
【0065】
ここで、「LUT出力」の「拡大された高輝度領域」は、高輝度領域拡大部32が高輝度で表示するように判断した結果、高輝度領域拡大データにおいて値が255の輝度値を有する画素、及び、LUT出力画像においてもともと輝度値255を有していた画素により構成された領域を指す。拡大された高輝度領域には、もともとは高輝度領域でなかった領域が高輝度領域に変更された部分が含まれている。したがって、
図6の「LUT出力」において、拡大された高輝度領域は、高輝度領域と中間領域の一部を包含した形状で描かれている。
【0066】
選択部35は、拡大された高輝度領域に属する画素に関しては、LPF適用画像の対応する画素の輝度値を選択する。また、選択部35は、拡大された高輝度領域に属さない画素に関しては、LUT出力画像の対応する画素の輝度値を選択する。選択された各画素の輝度値は、結合され、LV画像として、LVパネル9へ送信される。すなわち、LUT出力画像の、拡大された高輝度領域に属する画素に関してのみ、LPF適用画像の対応する画素の輝度値に置き換わった画像が、LV画像として送信される。
【0067】
遅延部34は、LUT31が出力するLUT出力画像が、選択部35へ到達するタイミングを、主に高輝度領域拡大処理、及びLPF処理に相当する時間分だけ遅延させる。
【0068】
LVパネル9は、選択部35から受信したLV画像、すなわち輝度が調整されたグレースケールの白黒調整画像を受信し、表示する。
【0069】
次に、本実施形態に基づいて、画像を表示する手順について記載する。
【0070】
まず、
図1に示されるように、画像表示装置本体2の画像処理エンジン4が、画像表示装置1に表示すべきRGB画像を生成し、LCDモジュール3に送信する。
【0071】
LCDモジュール3が、I/F5によりRGB画像を受信し、I/F5は受信したRGB画像をLCDコントローラ6、LVコントローラ8の双方に送信する。
【0072】
LCDコントローラ6がI/F5からRGB画像を受信し、受信したRGB画像を信号処理してRGBパネル7に送信する。
【0073】
RGBパネル7がLCDコントローラ6から受信したRGB画像を表示する。
【0074】
他方、LVコントローラ8もLCDコントローラ6と同様に、I/F5からRGB画像を受信する。
【0075】
図3に図示される、LVコントローラ8の色マトリクス変換部30が、受信したRGB画像に対し色マトリクス変換を行い、白から黒までの明暗だけで表現された、グレースケールの色マトリクス変換画像を生成し、LUT31に送信する。
【0076】
LUT31が、色マトリクス変換部30から色マトリクス変換画像を受信する。LUT31には、階調変換前後の輝度値の対応関係が登録されている。LUT31は、受信した色マトリクス変換画像の各画素に対して、階調変換を行い、LUT出力画像を生成する。
【0077】
LUT31は、色マトリクス変換画像の各画素に対して、当該画素の輝度値が閾値1以上の場合は、当該輝度値を所定の値、例えば輝度値が8ビットで表される場合は255に0.8などの1より小さい小数を掛けた値に変換する。LUT31は、更に、当該画素の輝度値が閾値1より大きい閾値2以上の場合は、当該画素は高輝度領域にあると判断し、当該輝度値を輝度値の最大値、例えば輝度値が8ビットで表される場合は255に変換する。また、LUT31は、当該画素の輝度値が閾値1より小さい場合は、当該輝度値を0から輝度値の最大値に1より小さい小数を掛けた値の間の値に変換する。
【0078】
LUT31は生成したLUT出力画像を、高輝度領域拡大部32、LPF部33、及び遅延部34に送信する。
【0079】
高輝度領域拡大部32は、LUT31が生成したLUT出力画像を受信し、高輝度領域が拡大された高輝度領域拡大データを生成する。すなわち、高輝度領域拡大部32は、各画素に対し、LUT出力画像の当該画素の輝度値が輝度値の最大値であって、当該画素に隣接する画素の輝度値が輝度値の最大値ではない場合に、隣接する画素の輝度値を輝度値の最大値に置換することによって、高輝度領域拡大データを生成する。高輝度領域拡大部32は、生成した高輝度領域拡大データを選択部35に送信する。
【0080】
他方、LPF部33もLUT出力画像を受信し、LPFを適用し、LPF適用画像を生成する。LPF部33は、生成したLPF適用画像を選択部35に送信する。
【0081】
選択部35は、高輝度領域拡大データ、LPF適用画像、および、遅延部34によって遅延されたLUT出力画像をそれぞれ受信する。遅延部34が、LUT出力画像が選択部35へ到達するタイミングを、主に高輝度領域拡大処理、及びLPF処理に相当する時間分だけ遅延させる。それにより、選択部35が高輝度領域拡大データの値を基にした輝度値の選択を行う際には、当該高輝度領域拡大データに時間的に対応するLUT出力画像が入力として供給されるように、LUT出力画像の到着タイミングが調整される。
【0082】
選択部35は、各画素について、高輝度領域拡大データの当該画素に対応する値に応じて、LUT出力画像の当該画素に対応する輝度値、またはLPF適用画像の当該画素に対応する輝度値を選択して、白黒調整画像を生成する。すなわち、選択部35は、各画素に対し、高輝度領域拡大データの当該画素に対応する値が輝度値の最大値であるときに、LPF適用画像の当該画素に対応する輝度値を選択し、輝度値の最大値でないときに、LUT出力画像の当該画素に対応する輝度値を選択することにより、LV画像を生成する。
【0083】
これにより、LV画像において、拡大された高輝度領域に属する画素には、確実にLPF適用画像の対応する輝度値が設定され、当該画素はLVパネル9において高輝度領域として表示される。
【0084】
上記のように、同一のRGB画像が、一方はLCDコントローラ6を介してRGB画像としてRGBパネル7に、他方はLVコントローラ8を介して、白から黒までの明暗だけで表現された、グレースケールのLV画像としてLVパネル9に、同時に表示される。
【0085】
前側のLCDパネルであるRGBパネル7と、後側のLCDパネルであるLVパネル9は、
図2に示されるように重ねられた構造になっているため、光源20からバックライトユニット10を介して照射された光は、同一のRGB画像を基にしたLV画像、RGB画像がそれぞれ表示されたLVパネル9、RGBパネル7を順次通過し、人間の眼に届く。光がLVパネル9、及びRGBパネル7を通過する際に、カラーフィルタ基板11、及びそれぞれが有する図示しない液晶層を通過することによって、色調や輝度が制御される。
【0086】
輝度の制御はLVパネル9、及びRGBパネル7のそれぞれによって個別に行うことが可能であり、したがって、細やかなコントラストの調整が可能となる。
【0087】
また、RGBパネル7とLVパネル9を通してバックライトユニット10から光を照射すると、双方のパネルを通して人間の眼に届く光は、それぞれのパネルの透過率を掛け合わせたものとなる。表示しようとする画像の暗い部分の黒浮きを防止するために、LUT31が前述のような階調変換を、グレースケールの画像に対して行うことにより、輝度値が小さく暗い部分のLVパネル9の透過率を悪くする。それにより、RGB画像を表示するRGBパネル7の輝度値を変更せずに、LVパネル9の輝度値のみを変更することで、黒浮きを防止することが可能となる。
【0088】
さらに、LUT31は
図4に示されるように、入力された色マトリクス変換画像の各画素の輝度値を、0から輝度値の最大値×mの間の値と、輝度値の最大値×mと、輝度値の最大値の、三種類の輝度値に変換する。すなわち、暗領域と中間領域を区別すると同時に、輝度値の最大値である高輝度領域と中間領域をも、明確に異なる輝度値として表示するように、輝度値の階調変換がなされる。この結果、輝度値の高い、特に明るい部分を、他の部分から強調させて表現することが可能となる。
【0089】
ただし、LUT31の出力をそのままLVパネル9に描画すると、高輝度の領域が他に比べて、際だって表示されてしまう。これは、LUT31において、入力輝度値が中間領域に属する画素に対する出力輝度値として、輝度値の最大値×mの値を使用する一方で、高輝度領域に属する画素に対する出力輝度値として、輝度値の最大値を使用しており、両者の出力輝度値が連続的でないことに起因する。これは、
図6の「LUT出力」において、高輝度領域と中間領域の境界の立ち上がり、立下りが垂直であることに表れている。
【0090】
そこで、LUT出力画像の、中間領域と高輝度領域の間の輝度値の境界をなだらかにするために、LPF部33を適用している。LPF部33がLUT出力画像にLPFを適用することによって、輝度値を
図6に表わされるような一水平ライン上の関数としてみたときに、関数の高域成分が除去されて、なまった状態にされる。それにより、特に高輝度領域と中間領域の境界部分について、そのエッジがなまった状態になり、結果として、高輝度領域の中央部がとがり、周辺部が傾斜を形成するようになる。
【0091】
他方で、高輝度領域以外の領域については、LUT出力画像の輝度値を尊重した表示を行うために、本実施形態においては、高輝度領域拡大データが輝度値の最大値の部分についてのみ、LPF適用画像の輝度値を選択している。これらの処理により、高輝度領域以外の表示がなまることなく、高輝度領域の階調特性を良好にして白つぶれを防止し、自然な画像を表現することが可能となる。
【0092】
上記の一連の処理は、バックライト側の後側のLCDパネルをLVパネル9として構成したために、複雑な構成となってはおらず、実装に要する回路規模が小さくて済む。
【0093】
また、LUT31の値は製品実装前にオフラインで作成し、回路構成上はメモリを実装するのみですむので、階調特性の変換は容易に実現できる。
【0094】
更に、
図2を用いて示したように、LVパネル9はLVコントローラ8から受信したLV画像を表示する。LV画像はグレースケールの画像を基にしたものであるため、カラーフィルタなどの、通常のLCDパネルが必要とする一部の構成要素を必要としない。
【0095】
以上の理由により、安価に製品を提供することも可能である。
【0096】
本実施形態による実験結果を
図7、8に示す。
【0097】
図7(a)はRGB画像、
図7(b)はRGB画像に対し色マトリクス変換を行った色マトリクス変換画像、
図7(c)は色マトリクス変換画像をLUT31によって階調変換後、高輝度領域拡大処理などの更なる処理を実施したLV画像で、
図7(a)のRGB画像と
図7(c)のLV画像を重ねて表示したものが
図7(d)の最終出力画像である。
【0098】
図8(a)〜(d)は、
図7(a)〜(d)の拡大図である。本拡大図において、中心に時計台が表示されている。時計台の中心の光が、
図8(a)においてはすべて輝度値の最大値で描画され、白つぶれが起きている。本処理を適用した結果、
図8(d)においては、時計台の中心の光の、高輝度領域に相当する部分の階調が良好に表示されている。
【0099】
本実施形態におけるLPFに関しては、2次元のLPFで、例えば、7×7のタップの積和演算で実現し、例えば全てのタップの重み(係数)が1であるようなフィルタを実装してもよいが、タップのサイズや係数は低域通過フィルタを形成するものであれば、特に上記に限定されるものではない。
【0100】
高輝度領域拡大処理において、注目画素が高輝度の場合に、注目画素からの他の画素までの距離を計算し、所定の距離以内の画素の高輝度領域拡大データが高輝度ではない場合に、それを高輝度に属するように置換する処理を行ってもよい。本実施形態においては、注目画素の近傍の8画素に関して処理を実施したが、更に1画素離れた、計24画素に関して、処理を実施してもよい。
【0101】
LUT31、高輝度領域拡大部32、選択部35などの各部において、各画素に対する処理は順次実行してもよいし、並列に実行してもよい。
【0102】
LVコントローラ8における処理はLCDコントローラ6における処理よりも、処理時間を必要とする可能性がある。この場合は、LCDコントローラ6の前段、後段、あるいはLCDコントローラ6の内部に、LVコントローラ8と画像表示タイミングを同期させるための遅延回路を備えてもよい。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能であることが理解できるであろう。
【0104】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。