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特許6376977insitu重合におけるチオフェンモノマーへのポリマーの添加
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376977
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】insitu重合におけるチオフェンモノマーへのポリマーの添加
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20180813BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20180813BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01G9/028 G
   H01G9/00 290H
   C08G61/12
【請求項の数】30
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-561312(P2014-561312)
(86)(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公表番号】特表2015-515746(P2015-515746A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】EP2013000710
(87)【国際公開番号】WO2013135363
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年3月8日
(31)【優先権主張番号】102012004692.8
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/611,197
(32)【優先日】2012年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】アステマン カトリン
(72)【発明者】
【氏名】メルケル ウド
(72)【発明者】
【氏名】ヴッソー クラウス
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525609(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101486838(CN,A)
【文献】 特開2008−109065(JP,A)
【文献】 特開平03−064014(JP,A)
【文献】 特開2011−153224(JP,A)
【文献】 特開平02−235321(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/041506(WO,A1)
【文献】 特開2012−146867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/00−9/28
C08G61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを製造するためのプロセスであって、
a)電極材料(2)の電極体(1)を用意するプロセスステップであって、誘電体(3)がこの電極材料(2)の少なくとも一部の一方の面(4)を覆って陽極体(5)を形成するプロセスステップ、
b)少なくとも1種の酸化剤および下記構造式(I)を特徴とする少なくとも1種のポリマー
【化1】
(式中、
nは整数≧3であり、
前記構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、任意にヒドロキシル基またはポリエーテル基を含むアルキレン基を表し、
前記構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、前記ラジカルRの少なくとも1つはCH、−(CHCH(式中、m=1、2、3、4、5又は6)〜C10アルケニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す)
の存在下で前記陽極体(5)の少なくとも一部において少なくとも1種のチオフェンモノマーをin situ重合させるプロセスステップ
を含み、
前記少なくとも1種のチオフェンモノマー、前記構造式(I)を有する前記少なくとも1種のポリマー、前記少なくとも1種の酸化剤および任意に1種または複数種の添加剤を含む反応液であって、前記構造式(I)を有する前記ポリマーを前記反応液の総重量に対して少なくとも1wt%の濃度で含む、反応液が前記in situ重合に利用される、プロセス。
【請求項2】
前記チオフェンモノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記in situ重合の前記酸化剤として鉄(III)トシレートが利用される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記構造式(I)における前記ラジカルRは−CH−CH−、−CHCH−CH−または−CH−CHOH−CH−からなる群から選択されるラジカルを表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記構造式(I)における少なくとも1つのラジカルRはCH、−(CHCH(式中、m=1、2、3、4、5又は6)、−CH−CH=CH、−CH=CH、−CO−CH=CHまたは−CO−C(CH)=CHである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルまたはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールジアルキルエーテルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリ(co−エチレン−プロピレン)モノアルキルエーテルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーは100〜10,000g/molの範囲の分子量を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記in situ重合に利用される前記反応液は100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリアルキレングリコールをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応液は前記構造式(I)を有する前記ポリマーおよび前記ポリアルキレングリコールを1:10〜10:1の範囲の重量比で含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーおよび前記チオフェンモノマーは、前記構造式(I)を有するポリマー:チオフェンモノマーの重量比少なくとも0.1:1で利用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記重合は20〜300℃の範囲の温度で1分〜12時間の範囲の期間にわたり行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
電極材料(2)の電極体(1)を含むコンデンサであって、誘電体(3)がこの電極材料の少なくとも一部の一方の面(4)を覆って陽極体(5)を形成し、固体電解質層(6)がポリチオフェンおよび請求項1に定義される構造式(I)を有するポリマーを含み、ブレークスルー電圧が化成電圧の50%超であって、前記固体電解質層中の前記ポリチオフェンは、ポリチオフェン/ポリアニオン複合体の形態で存在しない、コンデンサ。
【請求項14】
(γ1)少なくとも1種のチオフェンモノマー、
(γ2)少なくとも1種の酸化剤、
(γ3)下記構造式(I)を特徴とする少なくとも1種のポリマー
【化2】
(式中、
nは整数≧3であり、
前記構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、任意にヒドロキシル基またはポリエーテル基を含むアルキレン基を表し、
前記構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、前記ラジカルRの少なくとも1つはCH、−(CHCH(式中、m=1、2、3、4、5又は6)、C〜C10アルケニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す)、
(γ4)成分(γ1)〜(γ3)と異なる任意選択の1種または複数種の添加剤
を含む反応液であって、
成分(γ1)〜(γ4)の合計が100wt%であり、前記反応液は、前記構造式(I)を有する前記ポリマー(γ3)を前記反応液の総重量に対して少なくとも1wt%濃度で含む、in situ重合のプロセスによる電界コンデンサを製造するための反応液の使用
【請求項15】
前記反応液中の成分(γ1)の濃度は前記反応液の総重量に対して1〜30wt%の範囲である、請求項14に記載の反応液の使用
【請求項16】
前記反応液中の成分(γ2)の濃度は前記反応液の総重量に対して10〜60wt%の範囲である、請求項14または15に記載の使用
【請求項17】
前記反応液中の成分(γ3)の濃度は前記反応液の総重量に対して1〜50wt%の範囲である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用
【請求項18】
前記反応液中の成分(γ4)の濃度は前記反応液の総重量に対して1〜70wt%の範囲である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の使用
【請求項19】
前記反応液は成分(γ1)〜(γ3)と異なる添加剤(γ4)として100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリアルキレングリコールを含む、請求項14〜18のいずれか一項に記載の使用
【請求項20】
前記反応液は前記構造式(I)を有する前記ポリマーおよび前記ポリアルキレングリコールを1:10〜10:1の範囲の重量比で含む、請求項19に記載の使用
【請求項21】
前記反応液は前記構造式(I)を有する前記ポリマーおよび前記チオフェンモノマーを、前記構造式(I)を有するポリマー:チオフェンモノマーの重量比少なくとも0.1:1で含む、請求項14〜20のいずれか一項に記載の使用
【請求項22】
前記チオフェンモノマー(γ1)は3,4−エチレンジオキシチオフェンである、請求項14〜21のいずれか一項に記載の使用
【請求項23】
前記酸化剤(γ2)は鉄(III)トシレートである、請求項14〜22のいずれか一項に記載の使用
【請求項24】
前記構造式(I)における前記ラジカルRは−CH−CH−、−CHCH−CH−または−CH−CHOH−CH−からなる群から選択されるラジカルを表す、請求項14〜23のいずれか一項に記載の使用
【請求項25】
前記構造式(I)における少なくとも1つのラジカルRはCH、−(CHCH(式中、m=1、2、3、4、5又は6)、−CH−CH=CH、−CH=CH、−CO−CH=CHまたは−CO−C(CH)=CHである、請求項14〜24のいずれか一項に記載の使用
【請求項26】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルまたはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールジアルキルエーテルである、請求項14〜25のいずれか一項に記載の使用
【請求項27】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリ(co−エチレン−プロピレン)モノアルキルエーテルである、請求項14〜26のいずれか一項に記載の使用
【請求項28】
前記構造式(I)を有する前記ポリマーは100〜10,000g/molの範囲の分子量を有する、請求項14〜27のいずれか一項に記載の使用
【請求項29】
請求項13に記載のコンデンサを含む、電子回路。
【請求項30】
電子回路における、請求項13に記載のコンデンサの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサを製造するためのプロセス、このプロセスにより得られるコンデンサ、コンデンサ、反応液、電子回路、およびコンデンサの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている電解コンデンサは通例、多孔質金属電極、その金属表面上で誘電体として働く酸化物層、その多孔質構造に導入される導電性金属、通常固体、外部電極(接触している)、たとえば銀層および別の電気接触部ならびに外装で作られている。頻繁に使われる電解コンデンサは、タンタル電解コンデンサであり、その陽極電極は弁金属タンタルで作られ、その上には陽極酸化(「化成」ともいう)により五酸化タンタルの均一な誘電体層を生成させてある。液体または固体電解質が、コンデンサの陰極を形成する。陽極電極が弁金属アルミニウムで作られ、その上に陽極酸化により均一な電気絶縁性の酸化アルミニウム層が誘電体として形成されたアルミニウムコンデンサは、さらに頻繁に利用されている。この場合もやはり、液体電解質または固体電解質がコンデンサの陰極を形成する。アルミニウムコンデンサは通常、巻回型または積層型コンデンサとして構成される。
【0003】
上述のコンデンサの固体電解質としては、π共役ポリマーがその高い電気伝導性のため特に好適である。π共役ポリマーは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。π共役ポリマーは、加工性、重量および化学修飾による特性のターゲット調整に関して金属より利点を有するため、経済的重要性がますます増している。既知のπ共役ポリマーの例には、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレン−ビニレン)があり、工業使用される特に重要なポリチオフェンは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。その酸化形態で非常に高い伝導度を有するためである。
【0004】
導電性ポリマーに基づく固体電解質は、様々な方法で酸化物層に付着させることができる。したがって、特許文献1には、たとえば、3,4−エチレンジオキシチオフェンの固体電解質の製造、および電解コンデンサにおけるその使用について記載されている。この公報の教示によれば、3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化物層にin situ重合する。上述のin situ重合に加えて、既に重合したチオフェンを含む分散液、たとえば従来から公知のPEDOT/PSS分散液を酸化物層に塗布し、次いで分散剤を蒸発により除去する、コンデンサにおいて固体電解質を製造するためのプロセスも、従来から公知である。
【0005】
コンデンサの重要な特性は、特にその低温特性およびその寿命である。コンデンサの「低温特性」は、低温での、特に−40℃未満まで下がった温度でのその電気的特性値、たとえば静電容量、等価直列抵抗、降伏電圧または残留電流に対する影響、とりわけ等価直列抵抗に対する影響を意味するものと理解される。コンデンサの「寿命」は、数日間保存後の、特に高温、特に120℃の温度で500時間保存後のその電気的特性値に対する影響、とりわけ等価直列抵抗に対する影響を意味するものと理解される。
【0006】
たとえば特許文献1により従来から公知であり、in situ重合により製造される固体電解コンデンサは、従来から公知の液体電解コンデンサと比較して低等価直列抵抗および安定な低温特性を特徴とするが、こうした固体電解コンデンサの寿命は、依然として不十分であることが多い。したがって、寿命の改善を示し、同時に低等価直列抵抗および安定な低温特性を有するコンデンサに対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 340 512A号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンデンサに関する、特に固体電解コンデンサに関する、特に非常に好ましくは従来から公知のアルミニウムコンデンサに関する、従来技術に起因する問題を解決するという目的に基づくものであった。
【0009】
特に、本発明は、コンデンサを製造するためのプロセスを提供するという目的に基づくものであったが、それにより好ましくは固体電解質層の製造の際にin situ重合を使用して、低等価直列抵抗と共に十分な寿命および十分な低温特性の両方を示すコンデンサを提供することができる。
【0010】
上述の有利なコンデンサを製造するためのプロセスはさらに、可能な限り簡便な方法で、特になるべく少ないプロセスステップを用いて、こうしたコンデンサの製造を可能にする点でも優れているはずである。
【0011】
上記の目的の達成には、コンデンサの製造するためのプロセスであって、特に
a)電極材料の電極体を用意するプロセスステップであって、誘電体がこの電極材料の少なくとも一部の一方の面を覆って陽極体を形成するプロセスステップ、
b)少なくとも1種の酸化剤および構造式(I)を特徴とする少なくとも1種のポリマー
【化1】
(式中、
nは整数≧3であり、
構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、任意にヒドロキシル基またはポリエーテル基を含むアルキレン基を表し、
構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、水素原子、C〜C10アルキル基、不飽和C〜C10アルキレン基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、ラジカルRの少なくとも1つはC〜C10アルキル基、不飽和C〜C10アルキレン基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す)
の存在下で陽極体の少なくとも一部において少なくとも1種のチオフェンモノマーをin situ重合させるプロセスステップ
を含み、
少なくとも1種のチオフェンモノマー、構造式(I)を有する少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種の酸化剤および任意に1種または複数種の添加剤を含む反応液であって、いずれの場合も反応液の総重量に対して構造式(I)を有するポリマーを少なくとも1wt%、特に好ましくは少なくとも5wt%、さらに一層好ましくは少なくとも10wt%、最も好ましくは少なくとも14wt%の濃度で含む反応液がin situ重合に利用される、プロセスが貢献をする。
【0012】
プロセスステップa)では、電極材料の電極体であって、誘電体がこの電極材料の少なくとも一部の一方の面を覆って陽極体を形成する、電極体を最初に用意する。
【0013】
原則として、電極体は、高表面積の弁金属粉末をプレスし、これを焼結して通常の多孔質電極体を得ることにより製造することができる。さらにここで、好ましくは弁金属、たとえばタンタルの電気的接触線を従来法で電極体に押し込む。次いで電極体を、たとえば電気化学的酸化により、誘電体、すなわち酸化物層で被覆する。あるいは、多孔質領域を有する陽極箔を得るため金属箔をさらにエッチングし、電気化学的酸化により誘電体で被覆してもよい。巻回型コンデンサでは、電極体を形成し、多孔質領域を有する陽極箔と、陰極箔とは、セパレータを介在させて巻き取る。
【0014】
本発明の文脈において、弁金属は、その酸化物層において電流が両方向に等しく流れることができない金属を意味するものと理解することができる。陽極印加電圧の場合には、弁金属の酸化物層が電流の流れを遮断するのに対し、陰極印加電圧の場合には、大電流が流れて、酸化物層を破壊することがある。弁金属には、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびW、ならびにこれら金属の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物がある。最もよく知られた弁金属の代表例として、Al、TaおよびNbがある。弁金属と同様の電気的特性を有する化合物としては、金属的伝導性を有し、酸化することができ、かつその酸化物層が上述の特性を有する化合物がある。たとえば、NbOは、金属的伝導性を有するものの、一般には弁金属と見なされない。しかしながら、酸化されたNbOの層は弁金属酸化物層の典型的な特性を有するため、NbOまたはNbOと他の元素との合金もしくは化合物は、弁金属と同様の電気的特性を有するそうした化合物の典型的な例である。タンタル、アルミニウムの電極材料、およびニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料が、好ましい。アルミニウムは電極材料として特に好ましい。
【0015】
多くの場合、多孔質領域を有する電極体を製造するには、弁金属を、たとえば粉末形態で焼結して通常の多孔質電極体を得てもよいし、あるいは多孔質構造を金属体上に設ける。後者は、たとえば箔をエッチングすることにより行うことができる。
【0016】
以下、簡潔にするため、多孔質領域を有する本体を多孔質ともいう。したがって、たとえば多孔質領域を有する電極体を多孔質電極体ともいう。一方、この多孔質体には複数のチャネルが連続的に存在してもよく、したがってスポンジ状であり得る。これは、コンデンサの構造にタンタルを使用する場合に当てはまることが多い。さらに、その構造において表面のみが孔を有し、表面孔の下に続く領域が中実であることも可能である。こうした状態は、多くの場合、コンデンサの構造にアルミニウムを使用する場合に見られる。好ましくは、電極体は多孔質である。
【0017】
次いで、このように製造されることが多い多孔質電極体は、誘電体を形成するため、たとえばリン酸またはアジピン酸アンモニウムの水溶液などの好適な電解質に電圧を印加して酸化される。この化成電圧のレベルは、達成される酸化物層の厚さ、または後で使用するコンデンサの電圧に依存する。好ましい化成電圧は、1〜500Vの範囲、特に好ましくは2〜150Vの範囲、特に非常に好ましくは3〜60Vの範囲にある。
【0018】
一般に利用される多孔質電極体は、好ましくは10〜90%、好ましくは30〜80%、特に好ましくは50〜80%の気孔率を有し、10〜10,000nm、好ましくは20〜5,000nm、特に好ましくは50〜3,000nmの平均孔径を有する。
【0019】
本発明によるプロセスの第1の特定の実施形態によれば、製造される電解コンデンサは、アルミニウム巻回型コンデンサである。この場合には、プロセスステップa)において多孔質アルミニウム箔を電極材料として陽極に形成し、酸化アルミニウム被膜を誘電体として形成する。次いでこのようにして得られたアルミニウム箔(陽極箔)に接触線を付け、同様に接触線を付けた別の多孔質アルミニウム箔(陰極箔)と一緒に巻き取るが、これら2枚の箔は、たとえばセルロースに基づくまたは好ましくは合成紙に基づく1枚または複数枚のセパレータ紙で互いに隔てられている。巻き取り後、こうして得られた陽極体を、たとえば接着テープによって固定する。セパレータ紙(単数または複数)は、オーブンで加熱することにより炭化してもよい。アルミニウム巻回型コンデンサの陽極体のこの製造法は従来から十分に公知であり、たとえば米国特許第7,497,879B2号に記載されている。
【0020】
次いでプロセスステップb)では、陽極体の少なくとも一部において、少なくとも1種の酸化剤および上記に再生した構造式(I)を特徴とする少なくとも1種のポリマーの存在下、少なくとも1種のチオフェンモノマーをin situで(すなわち陽極体で)化学酸化重合に供し、ポリチオフェンに基づく固体電解質層を得る。
【0021】
少なくとも1種のチオフェンモノマーは好ましくは下記式(II)の化合物であり、
【化2】
式中、
Aは任意に置換されたC〜Cアルキレンラジカルを表し、
Rは互いに独立に、H、直鎖または分岐の任意に置換されたC〜C18アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜Cヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは0〜8の整数を表し、
いくつかのラジカルRがAに結合している場合、それらは同一でもあるいは異なっていてもよい。一般式(II)は、置換基RがアルキレンラジカルAにx回結合していてもよいことを意味するものと理解される。
【0022】
Aが任意に置換されたC〜Cアルキレンラジカルであり、xが0または1である一般式(II)のチオフェンモノマーが、特に好ましい。チオフェンモノマーとしては、重合してポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を与えることができる3,4−エチレンジオキシチオフェンが、特に非常に好ましい。
【0023】
本発明の文脈において、C〜CアルキレンラジカルAは、好ましくはメチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンである。C〜C18アルキルRは好ましくは、直鎖または分岐C〜C18アルキルラジカル、たとえばメチル、エチル、n−もしくはイソ−プロピル、n−、イソ−、sec−もしくはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルを表し、C〜C12シクロアルキルラジカルRは、たとえば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し、C〜C14アリールラジカルRは、たとえばフェニルまたはナフチルを表し、C〜C18アラルキルラジカルRは、たとえばベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。前述のリストは、例示により本発明を説明するのに役立つものであるが、確定的なものと見なしてはならない。
【0024】
本発明の文脈において、ラジカルAおよび/またはラジカルRの考えられる別の任意選択の置換基として、多数の有機基、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、エーテル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホネート基、アミノ基、アルデヒド基、ケト基、カルボン酸エステル基、カルボン酸基、カーボネート基、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン基およびアルコキシシラン基およびカルボキサミド基がある。
【0025】
少なくとも1種のチオフェンモノマーのin situ重合は、好適な酸化剤を使用して行う。扱いやすい安価な酸化剤、たとえば鉄(III)塩、たとえばFeCl、Fe(ClO、有機酸および有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩、さらにH、KCr、アルカリ金属過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、アルカリ金属過ホウ酸塩、過マンガン酸カリウムおよび銅塩、たとえばテトラフルオロホウ酸銅が、実用上の理由から好ましい。過硫酸塩と有機酸および有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩との使用は、それらの塩が腐食作用を有さないという使用上の大きな利点を有する。例示することができる有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩には、たとえば、C〜C20アルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、たとえばラウリル硫酸のFe(III)塩がある。例示することができる有機酸の鉄(III)塩には、たとえばC〜C20アルキルスルホン酸、たとえばメタン−およびドデカンスルホン酸;脂肪族C〜C20カルボン酸、たとえば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族ペルフルオロカルボン酸、たとえばトリフルオロ酢酸およびペルフルオロオクタン酸;脂肪族ジカルボン酸、たとえばシュウ酸、ならびに、とりわけ任意にC〜C20アルキル基で置換された芳香族スルホン酸、たとえばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩がある。本発明により特に非常に好ましい酸化剤として、たとえば、ヘレウスプレシャスメタルズジーエムビーエイチアンドシーオーケージー(Heraeus Precious Metals GmbH & Co.KG)から商品名Clevios(商標)C−B40 V2、Clevios(商標)C−B55 V2、Clevios(商標)C−B40 V2 high Fe、Clevios(商標)C−E、Clevios(商標)C−E60、Clevios(商標)C−E60 high Fe、Clevios(商標)C−ER 31およびClevios(商標)C−ER 60でエタノール溶液またはブタノール溶液の形態で入手可能な鉄(III)トシレートがある(この文脈では、商品名の文字「B」はその商品がブタノール溶液であることを示し、文字「E」はエタノール溶液を表す)。
【0026】
利用するのに好ましい構造式(I)を有するポリマーは、凝固点(SP III)が≦50℃、好ましくは≦40℃、さらに一層好ましくは≦30℃のポリマーである。
【0027】
構造式(I)では、Rは水素原子、C〜C10アルキル基、不飽和C〜C10アルキレン基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、ラジカルRの少なくとも1つはC〜C10アルキル基、不飽和C〜C10アルキレン基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。したがって構造式(I)を有するポリマーは、オリゴ−またはポリアルキレングリコールモノエーテル(ラジカルRの一方はC〜C10アルキル基または不飽和C〜C10アルキレン基であり、他方のラジカルRは水素原子である)、オリゴ−またはポリアルキレングリコールジエーテル(ラジカルRはどちらもC〜C10アルキル基または不飽和C〜C10アルキレン基である)、オリゴ−またはポリアルキレングリコールモノエステル(ラジカルRの一方はアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、他方のラジカルRは水素原子である)、オリゴ−またはポリアルキレングリコールジエステル(ラジカルRはどちらもアクリロイル基またはメタクリロイル基である)またはポリアルキレングリコールエーテルエステル(ラジカルRの一方はアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、他方のラジカルRはC〜C10アルキル基または不飽和C〜C10アルキレン基である)、オリゴ−またはポリアルキレングリコールモノエーテル、特にオリゴ−またはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルであり、ラジカルRの一方がC〜C10アルキル基であると特に非常に好ましい。
【0028】
利用するのにさらに一層好ましい構造式(I)を有するポリマーは、ラジカルRが−CH−CH−、−CHCH−CH−または−CH−CHOH−CH−からなる群から選択されるラジカルであるポリマーである。したがってポリマーは、特に好ましくはオリゴ−またはポリエチレングリコール誘導体、オリゴ−またはポリプロピレングリコール誘導体(任意にさらにエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマーに基づく誘導体が挙げられ、こうしたコポリマーのエチレングリコール単位およびプロピレングリコール単位はランダム状に配置されていても、あるいはブロック状に配置されていてもよい)またはオリゴ−またはポリグリセロール誘導体であり、ポリグリセロールの場合、別のエーテル官能基を介して別のポリグリセロール基がグリセロールモノマー単位の中間のOH基に結合していてもよい(分岐ポリグリセロール)。この文脈において、「誘導体」という用語は、上記のモノエーテル、ジエーテル、モノエステル、ジエステルまたはエーテルエステルを意味するものと理解される。
【0029】
本発明によれば、「オリゴアルキレングリコール誘導体」は、好ましくは3〜6のアルキレン単位(たとえばエチレン単位および/またはプロピレン単位)を含む化合物を意味するものと理解されるのに対し、「ポリアルキレングリコール誘導体」は、好ましくは6を超えるアルキレン単位(好ましくはエチレン単位および/またはプロピレン単位)を含む化合物を意味するものと理解される。
【0030】
本発明によれば、少なくとも1つのラジカルRがCH、−(CHCH(式中、m=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)、−CH−CH=CH、−CH=CH、−CO−CH=CHまたは−CO−C(CH)=CHを表すポリマーを、構造式(I)を有するポリマーとして利用することは、さらに好ましい。
【0031】
本発明によるプロセスの特定の実施形態によれば、利用するのに好ましい構造式(I)を有するポリマーとして、オリゴ−もしくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルまたはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールジアルキルエーテルがあるが、特に非常に好ましくはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。こうしたオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルまたはオリゴ−もしくはポリアルキレングリコールジアルキルエーテルのうち、特に好ましいものには、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリエチレングリコールジアルキルエーテル、特にポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、特にポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリ(co−エチレン−プロピレン)モノアルキルエーテルまたはポリ(co−エチレン−プロピレン)ジアルキルエーテル、特にポリ(co−エチレン−プロピレン)モノアルキルエーテル、またはこれらの化合物の少なくとも2つ混合物、構造式(I)を有するポリマー、特に好ましくは100〜10,000g/molの範囲、特に好ましくは250〜2,500g/molの範囲の分子量を有する上述のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリアルキレングリコールジアルキルエーテルがある。この文脈においては、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルまたはポリアルキレングリコールジメチルエーテル、特にポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールモノエチルエーテルまたはポリアルキレングリコールジエチルエーテル、特にポリアルキレングリコールモノエチルエーテル、ポリアルキレングリコールモノプロピルエーテルまたはポリアルキレングリコールジプロピルエーテル、特にポリアルキレングリコールモノプロピルエーテルおよびポリアルキレングリコールモノブチルエーテル、またはポリアルキレングリコールジブチルエーテル、特にポリアルキレングリコールモノブチルエーテルが、さらに好ましい。
【0032】
好ましくは、本発明によるプロセスに利用される構造式(I)を有するポリマーは沸点が≧150℃、さらに一層好ましくは≧175℃、さらに一層好ましくは≧200℃、さらに一層好ましくは≧225℃、さらに一層好ましくは≧250℃である。構造式(I)を有するポリマーが沸点を有さないが、加熱時に分解する場合、本発明によるプロセスに利用される構造式(I)を有するポリマーは、空気中の分解点が≧150℃、さらに一層好ましくは≧175℃、さらに一層好ましくは≧200℃、さらに一層好ましくは≧225℃、さらに一層好ましくは≧250℃である。構造式(I)を有するポリマーが、構造式(I)を有する少なくとも2つの異なるポリマーの混合物である場合、これらポリマーの少なくとも1つが上述の温度を超える沸点または分解点を有すれば、十分である。
【0033】
本発明によるプロセスにおいては、構造式(I)を有するポリマー:チオフェンモノマーの重量比が少なくとも0.1:1、特に好ましくは少なくとも0.25:1、さらに一層好ましくは少なくとも0.5:1で構造式(I)を有するポリマーおよびチオフェンモノマーを利用するとさらに好ましく、重量比は、たとえば、0.1:1〜20:1、0.25:1〜15:1または0.5:1〜10:1の範囲内であることも可能である。
【0034】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、in situ重合に利用される反応液は100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリアルキレングリコール(すなわち2つのラジカルRが水素原子を表し、Rがアルキレン基を表す構造式(I)の化合物)、特に非常に好ましくは100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリ(co−エチレン−プロピレン)グリコールをさらに含む。この文脈においては、反応液は、構造式(I)を有するポリマーおよびポリアルキレングリコールを1:10〜10:1の範囲、特に好ましくは1:4〜4:1の範囲、さらに一層好ましくは1:3〜3:1の範囲、最も好ましくは1:2〜2:1の範囲の重量比で含むとさらに好ましい。
【0035】
チオフェンモノマーの重合の際には、酸化剤、構造式(I)を有するポリマーおよび任意選択のポリアルキレングリコールに加えて、チオフェンモノマー、酸化剤、構造式(I)を有するポリマーおよびポリアルキレングリコールと異なる追加の添加剤がさらに存在してもよい。
【0036】
考えられる添加剤としては、特にたとえば、酸化剤を溶解または分散させることができる溶媒が挙げられる。好ましい溶媒は、脂肪族アルコール、たとえばメタノール、エタノール、i−プロパノールおよびn−ブタノール;脂肪族ケトン、たとえばアセトンおよびメチルエチルケトン;脂肪族カルボン酸エステル、たとえば酢酸エチルおよび酢酸ブチル;芳香族炭化水素、たとえばトルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素、たとえばヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン;塩素化炭化水素、たとえば塩化メチレンおよびジクロロエタン;脂肪族ニトリル、たとえばアセトニトリル;脂肪族スルホキシドおよびスルホン、たとえばジメチルスルホキシドおよびスルホラン;脂肪族カルボン酸アミド、たとえばメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;脂肪族およびアリール基を有する脂肪族エーテル、たとえばジエチルエーテルおよびアニソールである。さらに、水または水と上記の有機溶媒との混合物を溶媒として使用してもよい。酸化剤、たとえば上述のヘレウスプレシャスメタルズジーエムビーエイチアンドシーオーケージー製の酸化剤のエタノールまたはブタノール溶液を利用する場合、アルコール、特に、たとえば重合中に存在するエタノールまたはn−ブタノールは、溶媒として特に好ましい。
【0037】
考えられる添加剤として、さらにバインダー、たとえばポリビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエステル、シリコーン、ならびに有機溶媒に可溶であるピロール/アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/アクリル酸エステルコポリマーおよびエチレン/酢酸ビニルコポリマーがある。さらに水溶性バインダー、たとえばポリビニルアルコールを増粘剤として使用してもよい。
【0038】
陽極体の少なくとも一部において酸化剤および一般構造式(I)を有するポリマーの存在下、および任意に上記の添加剤の1つまたは複数の存在下、チオフェンモノマーのin situ重合を、各成分を陽極体の少なくとも一部に(多孔質領域)に導入し、次いでチオフェンモノマーを重合する手順により実施し、重合は20〜300℃の範囲、特に好ましくは23℃〜250℃の範囲の温度で1分〜12時間の範囲、特に好ましくは15分〜10時間の範囲の期間行う。
【0039】
各成分(チオフェンモノマー、酸化剤、構造式(I)のポリマー、任意選択のポリアルキレングリコールおよび任意選択の追加の添加剤)の陽極体の少なくとも一部への導入は、様々な方法で行うことができる。したがって、本発明によるプロセスの一実施形態によれば、陽極体の少なくとも一部に各成分をすべて、全成分を含む単一の溶液または分散液の形態で一緒に導入する。しかしながら、チオフェンモノマーおよび酸化剤を互いに別々に導入することも考えられる。このため、たとえば、酸化剤は、構造式(I)を有するポリマー、任意選択のポリアルキレングリコールおよび任意選択の追加の添加剤と溶液または分散液の形態で一緒に導入してもよく、これとは別に後に(あるいは前に)導入してもよく、チオフェンモノマーは、任意に追加の添加剤を含む溶液または分散液の形態で導入してもよい。しかしながら、チオフェンモノマーおよび酸化剤を別々に加える場合、チオフェンモノマーは、構造式(I)のポリマー、任意選択のポリアルキレングリコールおよび任意選択の追加の添加剤を溶液または分散液の形態で一緒に、およびこれとは別に後に(あるいは前に)導入し、酸化剤は、任意に追加の添加剤を含む溶液または分散液の形態で導入することが好ましい。
【0040】
各成分(別々または一緒)の多孔質領域への導入は、公知のプロセス、たとえば含浸、浸漬、注入、滴下、スプレー、噴霧、ナイフコート、刷毛塗りまたは印刷、たとえばインクジェット印刷、スクリーン印刷もしくはタンポン印刷により行うことができる。好ましくは、この導入は、プロセスステップa)で得られた陽極体を、全成分(チオフェンモノマー、酸化剤、構造式(I)のポリマー、任意選択のポリアルキレングリコールおよび任意選択の追加の添加剤)または成分の一部(上述の連続的添加の場合)を含む溶液または分散液に浸漬し、そうして全成分または成分の一部を含浸させる手順により行う。浸漬または含浸は好ましくは、1秒〜120分の範囲、特に好ましくは10秒〜60分の範囲、最も好ましくは30秒〜15分の範囲の期間行う。全成分または成分の一部の陽極体への導入は、たとえば圧力の増減、振動、超音波または熱により行いやすくなることがある。
【0041】
重合後に電解質を誘電体層に付着させたら、電解コンデンサは、当業者に公知の方法で仕上げを行ってもよい。タンタル電解コンデンサの場合、コンデンサ本体を、たとえば、独国特許出願公開第10 2005 043 828A号から公知のようにグラファイト層および銀層で被覆してもよいし、アルミニウム巻回型コンデンサの場合、米国特許第7,497,879B2号の教示内容に従い、コンデンサ本体をアルミニウムビーカーに入れ、封止性検査ガラスを付け、圧着して機械的にしっかりと密閉する。次いでエージングにより公知の方法でコンデンサから誘電体の欠陥を取り除いてもよい。
【0042】
上記の目的の達成にはさらに、本発明によるプロセスにより得られるコンデンサも貢献をする。
【0043】
上記の目的の達成にはさらに、電極材料の電極体であって、誘電体がこの電極材料の少なくとも一部の一方の面を覆って陽極体を形成する、電極体と、ポリチオフェンおよび上記で定義した構造式(I)を有するポリマーを含む固体電解質層とを含むコンデンサも貢献し、そのブレークスルー電圧は化成電圧の50%超、好ましくは60%超、一層好ましくは70%超、最も好ましくは80%超である。たとえば、化成電圧が36Vである場合、ブレークスルー電圧は少なくとも18V(50%)、好ましくは少なくとも21.6V(60%)、一層好ましくは少なくとも25.2V(70%)、最も好ましくは少なくとも28.8V(80%)である。
【0044】
電極材料の電極体、誘電体、ポリチオフェンおよび構造式(I)を有するポリマーとしては、本発明のプロセスに関連して好ましい実施形態として既に記載した電極体、誘電体、ポリチオフェンおよび構造式(I)を有するポリマーが好ましい。
【0045】
本発明によるコンデンサの好ましい実施形態によれば、固体電解質層は、いずれの場合も固体電解質層の総重量に対してポリマーアニオン、特にポリスチレンスルホン酸を10wt%未満、好ましくは1wt%未満、最も好ましくは0.1wt%未満で含み、固体電解質層は実質的にポリマーアニオンを含まない、特に実質的にポリスチレンスルホン酸を含まないことが特に好ましい。さらに、固体電解質層のポリチオフェンはポリチオフェン/ポリアニオン複合体の形態で存在しないことが特に好ましい。
【0046】
さらに上記の目的の達成には、
(γ1)少なくとも1種のチオフェンモノマー、
(γ2)少なくとも1種の酸化剤、
(γ3)構造式(I)を特徴とする少なくとも1種のポリマー
【化3】
(式中、
nは整数≧3であり、
構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、任意にヒドロキシル基またはポリエーテル基を含むアルキレン基を表し、
構造式(I)内のラジカルRは同一でもあるいは異なっていてもよく、水素原子、C〜C10アルキル基、不飽和C〜C10アルキレン基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、ラジカルRの少なくとも1つはC〜C10アルキル基、不飽和C〜C10アルキレン基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す)、
(γ4)成分(γ1)〜(γ3)と異なる任意選択の1種または複数種の添加剤
を含む反応液であって、成分(γ1)〜(γ4)の合計が100wt%であり、反応液はいずれの場合も反応液の総重量に対して、構造式(I)を有するポリマー(γ3)を少なくとも1wt%、特に好ましくは少なくとも5wt%、さらに一層好ましくは少なくとも10wt%、最も好ましくは少なくとも14wt%の濃度で含む、反応液も貢献をする。
【0047】
この反応液は、欧州特許出願公開第0 340 512A号に記載されたin situ重合のプロセスによる電解コンデンサの製造に特に好適である。
【0048】
好ましいチオフェンモノマー(γ1)、酸化剤(γ2)、構造式(I)を有するポリマー(γ3)および添加剤(γ4)はまた、本発明によるプロセスに関連して好ましいチオフェンモノマー、酸化剤、構造式(I)を有するポリマーおよび添加剤として既に上述した化合物または成分である。
【0049】
本発明によれば、成分(γ3)と成分(γ1)との重量比は、少なくとも0.1:1、特に好ましくは少なくとも0.25:1、さらに一層好ましくは少なくとも0.5:1であり、重量比は、たとえば、0.1:1〜20:1、0.25:1〜15:1または0.5:1〜10:1の範囲内であることも可能である。
【0050】
本発明によれば、反応液中の成分(γ1)の濃度がいずれの場合も反応液の総重量に対して1〜30wt%の範囲、特に好ましくは1.5〜20wt%の範囲、最も好ましくは2.5〜15wt%の範囲であるとさらに好ましい。
【0051】
本発明によれば、反応液中の成分(γ2)の濃度がいずれの場合も反応液の総重量に対して10〜60wt%の範囲、特に好ましくは15〜55wt%の範囲、最も好ましくは20〜50wt%の範囲であるとさらに好ましい。
【0052】
本発明によれば、反応液中の成分(γ3)の濃度がいずれの場合も反応液の総重量に対して1〜50wt%の範囲、特に好ましくは3〜30wt%の範囲、最も好ましくは5〜20wt%の範囲であるとさらに好ましい。
【0053】
本発明によれば、反応液中の成分(γ4)の濃度がいずれの場合も反応液の総重量に対して1〜70wt%の範囲、特に好ましくは5〜60wt%の範囲、最も好ましくは10〜50wt%の範囲であるとさらに好ましい。
【0054】
本発明による反応液の特定の実施形態によれば、反応液は、別の成分(γ5)として100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリアルキレングリコール(すなわち2つのラジカルRが水素原子を表し、Rがアルキレン基を表す構造式(I)の化合物)、特に非常に好ましくは100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリ(co−エチレン−プロピレン)グリコールを含む。この文脈においては、反応液は、構造式(I)を有するポリマーおよびポリアルキレングリコールを1:10〜10:1の範囲、好ましくは1:4〜4:1、特に好ましくは1:3〜3:1の範囲、最も好ましくは1:2〜2:1の範囲の重量比で含むとさらに好ましい。
【0055】
本発明による組成物の特に非常に好ましい実施形態によれば、組成物は、
(γ1)5〜20wt%のチオフェンモノマー、好ましくは3,4−エチレンジオキシチオフェン、
(γ2)25〜65wt%の酸化剤、好ましくは鉄(III)トシレート、
(γ3)10〜30wt%の構造式(I)のポリマー、好ましくは200〜10,000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、
(γ4)添加剤としての25〜50wt%の溶媒、好ましくはエタノールまたはブタノール、
(γ5)100〜2,000g/molの範囲の分子量を有する0〜30wt%のポリアルキレングリコール、好ましくは100〜2,000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコール
を含む。
【0056】
本発明による組成物の調製は、各成分の単純混合により行うことができる。この文脈では、たとえば、本発明による組成物の調製の際に酸化剤(γ2)を既に溶媒(γ4)に溶解または分散させておいてもよく、次いでこの溶液または分散液をチオフェンモノマー(γ1)、構造式(I)のポリマー(γ3)および任意に追加の添加剤(γ4)と混合させればよい。
【0057】
上記の目的の達成にはさらに、本発明によるプロセスにより得られるコンデンサを電子回路に、たとえばフィルタコンデンサまたはデカップリングコンデンサとして使用することも貢献をする。たとえば、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、サーバ)、コンピュータ周辺機器(たとえばPCカード)、携帯型電子機器、たとえば携帯電話、デジタルカメラまたは娯楽用電子装置、娯楽用電子機器、たとえばCD/DVDプレヤーおよびコンピュータゲーム機、ナビゲーションシステム、電気通信設備、家庭電気製品、たとえば除細動器ための医療技術、電源、たとえば再生可能エネルギに基づく電源、または、たとえばハイブリッド自動車もしくは電気自動車用の自動車エレクトロニクスに見られるような電子回路が、好ましい。
【0058】
さらに、上記の目的の達成には、本発明によるプロセスにより得られるコンデンサを含むそうした電子回路も貢献をする。
【0059】
次に、非限定的な図および例を用いて本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】プロセスステップa)およびb)を含むプロセスにより得られる本発明によるコンデンサの一部を通る断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、プロセスステップa)およびb)を含むプロセスにより得られる本発明によるコンデンサの一部を通る断面の図である。コンデンサは、通常アルミニウムなどの多孔質電極材料2で作られる電極体1を有する。電極材料2の表面4上には、誘電体3が薄層として形成され、その結果、やはり多孔質であり、かつ電極材料2の電極体1および誘電体3を含む陽極体5が形成される。誘電体3に続き、任意に追加の層の後に、固体電解質6(たとえばPEDOTに基づく)を設けることで、電極材料2の電極体1、誘電体3および固体電解質6を含むコンデンサ本体7が形成される。固体電解質6の層は、構造式(I)のポリマーを含む。
【0062】
測定方法
低温特性
静電容量(マイクロファラッド単位)は、LCRメータ(アジレント(Agilent)4284A)によって20℃および−40℃で120Hzにて測定した。いずれの場合も10個のコンデンサを製造し、平均値を判定した。以下の表では、静電容量測定値に基づき評価した「低温特性」について、−40℃での静電容量の減少が20℃で判定した静電容量と比較して10%超を超えない場合、良好(「+」)と記載する。静電容量が10%〜20%減少する場合、低温特性は表に「0」で表記され、静電容量が20%超減少する場合、低温特性は不十分とされる(表に「−」で表記される)。
【0063】
寿命試験
等価直列抵抗(mΩ単位)は、LCRメータ(アジレント4284A)によって20℃で100kHzにて測定した。いずれの場合も10個のコンデンサを製造し、平均値を判定した。以下の表では、等価直列抵抗の測定に基づき評価した「寿命」について、等価直列抵抗の増加が120℃で500時間保存後に10%を超えない場合、良好(「+」)と記載する(この保存中に電圧は印加しない)。等価直列抵抗の増加がこの保存中に10%を超える場合、寿命は不十分とされる(表に「−」で表記される)。
【0064】
ブレークスルー電圧の判定
ブレークスルー電圧の判定では、コンデンサに1,000Ωの抵抗を直列に設け、0Vから1V/sの電圧ステップで電圧を増加させる。それにより生じた電流を、ケースレー(Keithley)199Multimeterで測定した。生じた電流が1mA超まで上昇した電圧値をブレークスルー電圧と規定した。
【0065】
平均値
他に記載がない限り、平均値は算術平均値である。
【実施例】
【0066】
A)酸化電極体の製造
200mm×3mm(陽極箔)の寸法を有する、36Vで形成した多孔質アルミニウム箔、および210mm×3mm(陰極箔)の寸法を有する多孔質アルミニウム箔にそれぞれ接触線を付け、次いで2枚のセルロースセパレータ紙と一緒に巻き取り、接着テープで固定した。次いで酸化電極体のセパレータ紙を300℃のオーブンで炭化した。
【0067】
B)アルミニウム巻回型コンデンサの製造
実施例1(本発明による)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)、2.5gのPEG−400および2.5gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含む混合物に含浸させる。
【0068】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0069】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1で確認することができる。
【0070】
実施例2(本発明による)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含む混合物に含浸させる。
【0071】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0072】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および−40℃での静電容量の減少は、表1で確認することができる。
【0073】
比較実施例1(本発明によらない)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのエチレングリコールを含む混合物に含浸させる。
【0074】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0075】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1で確認することができる。
【0076】
比較実施例2(本発明によらない)
A)で得られた酸化電極体を、8gのEDOT(Clevios(商標)M V2)、22gのエチレングリコールおよび36.7gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)を含む混合物に含浸させる。
【0077】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0078】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1で確認することができる。
【0079】
比較実施例3(本発明によらない)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2)および25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)を含む混合物に含浸させる。
【0080】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0081】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1で確認することができる。
【0082】
比較実施例4(本発明によらない)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのPEG−400を含む混合物に含浸させる。
【0083】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0084】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1で確認することができる。
【0085】
実施例3(本発明による)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのポリ−(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)モノブチルエーテル(アルドリッチ(Aldrich);分子量約970g/mol)を含む混合物に含浸させる。
【0086】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0087】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1に示す。
【0088】
実施例4(本発明による)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(分子量約1,000g/mol)を含む混合物に含浸させる。
【0089】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0090】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1に示す。
【0091】
実施例5(本発明による)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および2.5gのポリ−(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)モノブチルエーテル(アルドリッチ;分子量約970g/mol)および2.5gのPEG−400を含む混合物に含浸させる。
【0092】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0093】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1に示す。
【0094】
実施例6(本発明による)
A)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)、2.5gのPEG−400および2.5gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(分子量約1,000g/mol)を含む混合物に含浸させる。
【0095】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0096】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1に示す。
【0097】
実施例7(本発明による)
C)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのポリ−(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートを含む混合物に含浸させる。重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0098】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表1で確認することができる。
【0099】
【表1】
【0100】
C)酸化電極体の製造:
200mm×5mm(陽極箔)の寸法を有する92Vで形成した多孔質アルミニウム箔、および240mm×5mm(陰極箔)の寸法を有する多孔質アルミニウム箔にそれぞれ接触線を付け、次いで2枚のセルロースセパレータ紙と一緒に巻き取り、接着テープで固定した。これら酸化電極体を10個製造した。次いで酸化電極体のセパレータ紙を300℃のオーブンで炭化した。
【0101】
D)アルミニウム巻回型コンデンサの製造
実施例8(本発明による)
C)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)および5gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含む混合物に含浸させる。
【0102】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0103】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表2で確認することができる。
【0104】
実施例9(本発明による)
C)で得られた酸化電極体を、5gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)、25gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)、2.5gのPEG−400および2.5gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含む混合物に含浸させる。
【0105】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0106】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表2で確認することができる。
【0107】
比較実施例5(本発明によらない)
C)で得られた酸化電極体を、10gのEDOT(Clevios(商標)M V2、ヘレウス)および50gの酸化剤(Clevios(商標)CE 60、Fe(III)トシレートをエタノールに溶解させた60%濃度の溶液、ヘレウス)を含む混合物に含浸させる。
【0108】
重合は、室温で15分間、次いで85℃で30分間のその後の保存期間中に起こる。
【0109】
上記のように製造されたコンデンサの120℃で500時間保存後の寿命および低温特性(−40℃での静電容量の減少)は、表2で確認することができる。
【0110】
【表2】
【符号の説明】
【0111】
1 電極体
2 電極材料
3 誘電体
4 表面
5 陽極体
6 固体電解質
7 コンデンサ本体
図1