(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376979
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアの合成方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20170101AFI20180813BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20180813BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20180813BHJP
A61K 33/24 20060101ALI20180813BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20180813BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20180813BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/107
A61K31/704
A61K33/24
A61K45/00
A61P35/00
A61N5/10 H
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-4060(P2015-4060)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130221(P2016-130221A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】599171866
【氏名又は名称】行政院原子能委員會核能研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107962
【弁理士】
【氏名又は名称】入交 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】林武智
(72)【発明者】
【氏名】杜定賢
(72)【発明者】
【氏名】李偉銘
(72)【発明者】
【氏名】李銘忻
【審査官】
小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−523936(JP,A)
【文献】
Journal of American Chemical Society,2010年,Vol.132, No.2,p.442-443
【文献】
Langmuir,2011年,Vol.27, No.10,p.5874-5878
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/34
A61K 9/107
A61K 31/704
A61K 33/24
A61K 45/00
A61N 5/10
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY
/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアの合成方法であって、
固体水酸化ナトリウムを水に溶解し、セレンと臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加えてセレン水溶液を調製し、
水素化ホウ素ナトリウムと固体水酸化ナトリウムを氷浴中で水に溶解し、ヘリウムの保護雰囲気下で前述の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を攪拌しながら前記セレン水溶液を滴下し、室温において約1時間反応させてから約90℃で約半時間反応させ、セレン化ナトリウム(Sodium selenide、Na2Se2)のアルカリ水溶液とし、
2-ドデセン-1-イルこはく酸無水物(2-Dodecen-1-yl-succinic anhydride)をテトラヒドラフラン(Tetrehydrafuran, THF)に溶解し、前述のセレン化ナトリウムのアルカリ水溶液と混合して約12時間反応させ、カラムクロマトグラフィーで不純物を分離させてから高温乾燥してジセレニド(Diselenide)化合物とし、
前述のジセレニド化合物をテトラヒドラフランに溶解してアミノ基が付いてるポリーエチレングリコールポリマーを加え、架橋剤として1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride、EDC)もしくはN-ヒドロキシスクシンイミド(N-Hydroxysuccinimide、 NHS)を加えて約12時間反応させ、カラムクロマトグラフィーで不純物を分離させてから高温乾燥してジセレニドブロック共重合体(Diselenide Block Co-polymer)を得る、
以上の工程を含むことを特徴とする前記ナノキャリアの合成方法。
【請求項2】
請求項1記載のジセレニドブロック共重合体を構成成分とするナノキャリアに放射性ナノ粒子を封入した陽子線治療用ナノメディシンの合成方法であって、前記ジセレニドブロック共重合体とジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー高分子を採取して超純水に溶解して、油相の前記放射性ナノ粒子を溶解したジクロロメタンを加えて、前記ジセレニドブロック共重合体と前記ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカーと油相の前記放射性ナノ粒子との質量比を5:1:2として、氷浴中で超音波処理による乳化を完了させ、約60℃まで加熱して前記ジクロロメタンを除去して前記放射性ナノ粒子を封入した放射線感受性ナノ球体粒子を得ることを特徴とする前記ナノメディシンの合成方法。
【請求項3】
請求項1記載のジセレニドブロック共重合体を構成成分とするナノキャリアに化学治療用薬物を封入した陽子線治療用ナノメディシンの合成方法であって、前記ジセレニドブロック共重合体とジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー高分子を採取して超純水に溶解して、前記化学治療用薬物を溶解したジクロロメタンを加えて、前記ジセレニドブロック共重合体:前記ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー:前記化学治療用薬物の質量比を5:1:2として、氷浴中で超音波処理による乳化を完了させ、約60℃まで加熱して前記ジクロロメタンを除去して前記化学治療用薬物を封入した放射線感受性ナノ球体粒子を得ることを特徴とする前記ナノメディシンの合成方法。
【請求項4】
請求項1記載のジセレニドブロック共重合体を構成成分とするナノキャリアに放射性ナノ粒子及び化学治療用薬物を封入した陽子線治療用ナノメディシンの合成方法であって、前記ジセレニドブロック共重合体とジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー高分子を採取して超純水に溶解して、油相の前記放射性ナノ粒子及び前記化学治療用薬物を溶解したジクロロメタンを前述のジセレニドブロック共重合体水溶液に加えて、前記ジセレニドブロック共重合体と前記ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカーと油相の前記放射性ナノ粒子と前記化学治療用薬物との質量比を5:1:1:1として、氷浴中で超音波処理による乳化を完了させ、約60℃まで加熱して前記ジクロロメタンを除去して前記放射性ナノ粒子及び前記化学治療用薬物を封入した放射線感受性ナノ球体粒子を得ることを特徴とする前記ナノメディシンの合成方法。
【請求項5】
前記放射性ナノ粒子がウラン238であることを特徴とする請求項2記載の陽子線治療用ナノメディシンの合成方法。
【請求項6】
前記化学治療用薬物がドキソルビシンであることを特徴とする請求項3記載の陽子線治療用ナノメディシンの合成方法。
【請求項7】
前記放射性ナノ粒子がウラン238であり、前記化学治療用薬物がドキソルビシンであることを特徴とする請求項4記載の陽子線治療用ナノメディシンの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアであって、特に、陽子線治療用の放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアおよびナノキャリアを用いるナノメディシンの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の発生は人体細胞に病変が起きるもので、臨床上の治療法としては外科手術、放射線療法、化学療法、定位放射線治療などが主流である。また、異なる療法は癌病巣に対しても、それぞれの効果と適応症にも相違がある。
【0003】
放射線療法の基本原理は、放射線で癌細胞核の中にあるデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid, DNA)の二重螺旋構造を形成している二本鎖を切断し、癌細胞を死滅させるかその成長を抑制することを目的とし、腫瘍細胞に理想的な照射量を与えて治療効果をもたらす。従来の光子線治療に用いられるγ線もしくはX線は人体を透過する時、照射深度が深くなるにつれて、γ線の強度も指数関数的に減衰するので、腫瘍における癌細胞を破壊する前に、多くの正常な組織に影響する。
しかし、陽子線の物理特性として、そのエネルギーはヒト組織への貫通深度と相まって減衰する一方で、射程先端(即ち腫瘍の位置)で速度を落し、瞬間的に最大エネルギーを放出してブラッグピークを発生させ、他の健康なヒト組織に損傷を与えないまま、癌細胞に有効な照射量を与えて治療する。更に、陽子線治療の拡大ブラッグピーク(spread-out Bragg peak, SOBP)特性により、治療過程において患者の正常なヒト組織が損傷を受けるリスクを下げ、放射線治療の副作用も相対的に最小限に抑えることができる。
【0004】
陽子線とX線の物理的な特性の違いによると、X線は貫通力が強いため、深部組織腫瘍の治療に用いられるが、ヒト組織を通過する時に腫瘍病巣より高い放射線量を腫瘍の前方組織に与え、腫瘍病巣の貫通後も相当な放射線量が残るので、腫瘍周辺の正常なヒト組織に損傷を与えやすい。これに対して、陽子線はヒト組織を貫通する時は少量の放射線量しか漏れないが、治療しようとする腫瘍の深度に到達した位置で大量の放射線量を放出することでブラッグピークを形成し、腫瘍の後方組織には全くエネルギーの影響を残さない。単一のブラッグピークの幅は広くないので、数個のブラッグピークを併用して腫瘍の大きさに合わせられ、陽子線治療の効果を高めることができる。陽子線治療は現在世界で最も先進的な放射線治療技術であり、従来の治療法より腫瘍病巣周辺の正常細胞への損傷がかなり小さく、副作用も相対的に少なくなり、将来的に陽子線治療の普及が期待できる。
【0005】
従来の放射線治療はX線で癌の腫瘍の定位及び治療をしていたが、位置決め及び照射量を高精度に把握できないため、身体表面と腫瘍との間にある正常なヒト組織も放射線を浴びて損傷を受けることになる。したがって、高精度の定位及び適当な照射量を決める治療装置及びその方法が望ましい。現在の陽子線治療では、大抵X線コンピュータ断層撮影(XCT、X-ray computed tomography)システムを用いて、腫瘍輪郭の定位及び最適な照射量を決めるのであるが、X線コンピュータ断層による定位にはまだ難しい所がある。
【0006】
米国特許公開号US 2007/0031337A1は金ナノ粒子と抗体との良好な結合性を用いて、癌細胞の中の抗原に引き付かせるように、治療位置の定位及び薬用量をコントロールする精度を高める陽子線断層撮影(PCT、Proton Computed Tomography)システムを掲示したので、陽子線断層撮影システムは将来的に趨勢になることが見込める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2007/0031337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアの合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ジセレニド(Diselenide)とアミノプロピルポリエチレングリコール(Aminopropyl Poly(ethylene glycol)) 高分子との化学反応によってジセレニドブロック共重合体を生成してナノキャリアとして使い、そのナノキャリア自体が親疎水性を示すので、乳化工程でジセレニドブロック共重合体を自己組織化させてナノ球体を構成する。
また、乳化過程において、同じく親疎水性を示すジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー(DSPE-PEG-biomarker)高分子を加え、その高分子の自己組織化の過程において、疎水基は有機溶剤を介して集まって整列し、親水基は外部水溶液に露出することで、安定なナノ球体構造を形成する。有機溶剤が揮発した後は、ナノ球体は内部の疎水性によって疎水効果が生じる。
【発明の効果】
【0010】
したがって、水分子はそのナノ球体の内部に入ってナノ球体の構造を破壊することはない。さらに、ナノ球体の外部は親水性を示すので、水溶液の中で安定に存在でき、本発明中で放射線感受性ジセレニドブロック共重合体として開発される。このジセレニドブロック共重合体から作られるナノ球体構造は水溶液の中で安定に存在できるだけでなく、特定の電磁放射によって担体構造の解体速度を制御することも出来るゆえ、放射性薬物の担体として開発される潜在能力を備える。
【0011】
また、本発明の放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリア及びそのナノメディシンの合成方法を利用すれば、確実に癌細胞に対応する薬剤量を高める一方、薬物に対する定位照射の精度も向上することが解る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の陽子線(陽子入射量)をウラン238に当てて核分裂反応を引き起こし、核分裂生成物の発生比率が質量数によって変化することを示す分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は本発明の放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアの合成方法の一実施例であって、少なくとも以下の手順を含む。
ステップ1:0.05molの固体水酸化ナトリウム(NaOH)2gを水25mlに溶解し、50molのセレン3.95gと臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム100gを加えてセレン水溶液を調製した。
ステップ2: 6.6molの水素化ホウ素ナトリウム0.25gと固体水酸化ナトリウム0.2gを氷浴中で水5mlに溶解し、ヘリウムの保護雰囲気下で前述の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を攪拌しながらステップ1のセレン水溶液を滴下し、室温において約1時間反応させてから約90℃で約半時間反応させ、反応が完了に近づくと赤褐色のセレン化ナトリウム(Sodium selenide、Na
2Se
2)のアルカリ水溶液を得る。
ステップ3:2-ドデセン-1-イルこはく酸無水物(2-Dodecen-1-yl-succinic anhydride)をテトラヒドラフラン(Tetrehydrafuran, THF)に溶解し、前述ステップ2で得られたセレン化ナトリウムのアルカリ水溶液と混合して約12時間反応させ、カラムクロマトグラフィーで不純物を分離させてから高温乾燥してジセレニド(Diselenide)化合物を得る。
ステップ4:前述ステップ3で得られたジセレニド化合物をテトラヒドラフランに溶解してアミノ基が付いてるポリーエチレングリコールポリマーを加え、架橋剤として1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride、EDC)もしくはN-ヒドロキシスクシンイミド(N-Hydroxysuccinimide、 NHS)を加えて約12時間反応させ、カラムクロマトグラフィーで不純物を分離させてから高温乾燥して最終製品のジセレニドブロック共重合体(Diselenide Block Co-polymer)を得て放射性ナノ粒子または/及び化学療法薬物を覆う担体として使用する。
【0014】
前述のジセレニドブロック共重合体と1,2-ジステアレート-スズ-グリセロ-3-エタノールアミンリン酸-ポリエチレングリコール-バイオマーカーをナノ薬物の担体として、放射性ナノ粒子または/及び化学療法薬物を覆うナノ薬物の合成方法には下記三種類がある。
【0015】
その一、放射性ナノ粒子(Radiated nanoparticles、RNPs)を封入する場合:ナノ球体を構成する主成分であるジセレニドブロック共重合体10mgとナノ球体構造を安定させるジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー(DSPE-PEG-biomarker)高分子2mgを採取して超純水5mlに溶解し、油相の放射性ナノ粒子4mgが溶解している有機溶剤のジクロロメタン1mlを加えて、ジセレニドブロック共重合体:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー:油相の放射性ナノ粒子の質量比を5:1:2として、氷浴中で超音波処理による乳化を完了させ、約60℃まで加熱してジクロロメタンを除去して放射性ナノ粒子を封入した約100ナノメートル(nm)の放射線感受性ナノ球体粒子(RNPs-Radiation-Sensitive nanoparticles)を得る。
【0016】
その二、化学治療用薬物(drug)を封入する場合:ジセレニドブロック共重合体10mgとジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー高分子2mgを採取して超純水5mlに溶解し、化学療法用のドキソルビシン(Doxorubicin)4mgが溶解している有機溶剤のジクロロメタン1mlを加えて、ジセレニドブロック共重合体:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー:ドキソルビシンの質量比を5:1:2とし、氷浴中で超音波処理による乳化を完了させ、約60℃まで加熱してジクロロメタンを除去してドキソルビシンを封入した約100nmの放射線感受性ナノ球体粒子(DOX-Radiation-Sensitive nanoparticles)を得る。
【0017】
その三、放射性ナノ粒子及び化学治療用薬物を同時に封入する場合:ジセレニドブロック共重合体10mgとジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー高分子2mgを採取して超純水5mlに溶解して、更に油相の放射性ナノ粒子2mg及びドキソルビシン2mgが溶解している有機溶剤のジクロロメタン1mlに加えて、ジセレニドブロック共重合体:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール‐バイオマーカー:油相の放射性ナノ粒子:ドキソルビシンの質量比を5:1:1:1として、氷浴中で超音波処理による乳化を完了させて、約60℃まで加熱してジクロロメタンを除去して放射性ナノ粒子及びドキソルビシンを封入した約120nmの放射線感受性ナノ球体粒子(RNPs/DOX-Radiation-Sensitive nanoparticles)を得る。
【0018】
本発明の放射線感受性共重合体を構成成分とするナノキャリアでナノメディシンを伝送して陽子線治療を行うとき、高エネルギーの陽子線が体内に入射すると、体内に入るに従って放射線量が徐々に減少する。腫瘍に到達した時点で、初期エネルギーの三分の一〜四分の一程度に減衰するので、それに応じて陽子線が入射するときの放射線量及び透過深度を決めることができる。陽子線が腫瘍上に分布しているウラン238に当たるとき、陽子線のエネルギーを10〜1000MeVに維持すれば、一定の確率でウラン238の核分裂反応を引き起こせる。
図1を参照すると、陽子線(高入射線量を100MeVとする)がウラン238に当たると核分裂反応を起こし、核分裂生成物の発生比率は質量数の変化に応じて分布する。これらの核分裂生成物は大体不安定な核種であるため、さらに放射性崩壊をし続ける。
【0019】
表1は、発生率の高い核分裂生成物の核種名称及びその放射性崩壊の関連データを一覧表とした。特に、陽子線(高入射線量を10〜250MeVとする)がウラン238に衝突して核分裂反応を起こす時の発生率の高い核分裂生成物の核種名称及びその放射性崩壊の関連データである。これらの核分裂生成物は崩壊過程においても高エネルギーの電子を放出するので、患者が陽子線治療を終えた後でも、これらの崩壊過程によって発生した電子で腫瘍の癌細胞を破壊し続けることができ、治療効果を高める目的を果たす。
【0021】
以上、添付の図を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、前記説明は単に本発明を説明することを目的としており、意味限定や請求の範囲に記載された本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。したがって、前記説明によって当業者であれば、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で各種の変更および修正が可能であることはいうまでもない。