特許第6376980号(P6376980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376980
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】構造物変状検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/07 20060101AFI20180813BHJP
   G01M 7/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G01N29/07
   G01M7/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-4959(P2015-4959)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-130684(P2016-130684A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】小宮 研一
(72)【発明者】
【氏名】石川 大介
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−230053(JP,A)
【文献】 特開2012−127897(JP,A)
【文献】 特開2004−069301(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0019153(US,A1)
【文献】 米国特許第05035144(US,A)
【文献】 特開2003−185643(JP,A)
【文献】 国際公開第00/073781(WO,A1)
【文献】 米国特許第06823737(US,B1)
【文献】 米国特許第05585921(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を音波を用いて非接触で加振する加振部と、
前記加振部による前記測定対象物の加振地点の振動をレーザ光を用いて非接触で検出する第2振動測定部であって、前記レーザ光の光軸が前記加振部の出力中心と同軸上にある第2振動測定部と、
前記測定対象物における前記加振地点から離れた測定地点の振動であって前記加振地点から伝搬する振動を、レーザ光を用いて非接触で検出する第1振動測定部と、
前記加振部と前記第1、第2振動測定部とを保持する筐体と、
前記加振部により前記加振地点に発生させた振動を前記第2振動測定部が検出してから、前記測定地点にて前記加振地点から伝搬する前記振動を前記第1振動測定部が検出するまでの時間を計測する時間計測部と、
を有することを特徴とする構造物変状検出装置。
【請求項2】
前記第2振動測定部は、前記構造物変状検出装置の外部に前記レーザ光を出射するレンズ部を備え、
前記加振部は、前記レンズ部の周囲にある複数のスピーカを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の構造物変状検出装置。
【請求項3】
前記第1振動測定部は、レーザ光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザが出射するレーザ光を反射するミラーであって、回転駆動されることで反射角度を変え、前記測定地点を変更するミラーと、前記ミラーに反射されて入射するレーザ光を前記構造物変状検出装置の外部に出射するレンズ部と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の構造物変状検出装置。
【請求項4】
前記加振地点を固定した状態で、前記ミラーを駆動し、複数の前記測定地点にて前記時間計測部により前記時間を計測することを特徴とする請求項3に記載の構造物変状検出装置。
【請求項5】
前記第1振動測定部は、レーザドップラ振動計測器であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の構造物変状検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、橋梁やトンネル等の構造物の変状(ひび割れ、きれつ、内部の欠陥)を非接触で検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁、トンネル等の構造物の亀裂などの変状を非接触で検出する検出装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示される非接触方式の構造物変状検査装置は、検査対象となる構造物(以下、測定対象物と称す)に超音波発振器で発振した超音波を当てて加振する非接触方式の加振部と、前記加振部で加振された前記測定対象物の振動をレーザドップラ振動計で計測する振動測定部とを有する。
【0004】
この構造物変状検査装置は、測定対象物から離れた地点に前記加振部を配置し、測定対象物表面の検出ポイントやその検出ポイントを含む所定領域に向けて、超音波を発振し、測定対象物を非接触で加振する。また、前記振動測定部は、測定対象物から離れた地点に配置される。前記振動測定部は、加振状態の測定対象物の変状検出ポイントに向けてレーザビームを照射し、その反射光を受光し、受光光に基づいて変状検出ポイントの振動を計測することで当該変状検出ポイントにおける変状の有無を判定する。
【0005】
ところで、変状の有無を検出する手法として、測定対象物の加振点と、振動測定部からのレーザビームが照射される照射ポイントとの間を所定距離とする。そして、前記所定距離を伝搬する振動の伝搬時間が所定の時間に対して異なるか否かにより、変状の有無を検出する。
【0006】
しかし、前記加振部と、前記振動測定部は、それぞれ独立した一つの装置として存在し、測定対象物に対して、個々に超音波の照射位置と、レーザビームの照射位置を独立して設定する。このため、測定ポイントの移動に伴って、レーザビームと超音波の照射位置関係を常に一定に調整するような調整工程が必要であった。
【0007】
また、遠隔からの高精度の測定を想定していることもあり、加振部及び振動計測手段ともに大型であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−248006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この明細書に記載の実施形態の目的は、測定ポイントを移動しても、加振部と振動測定部が照射する超音波およびレーザビームの照射位置間の調整を不要とし、またコンパクト化が図れる構造物変状検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の課題を解決する構造物変状検出装置は、測定対象物を音波を用いて非接触で加振する加振部と、前記加振部による前記測定対象物の加振地点の振動をレーザ光を用いて非接触で検出する第2振動測定部であって、前記レーザ光の光軸が前記加振部の出力中心と同軸上にある第2振動測定部と、前記測定対象物における前記加振地点から離れた測定地点の振動であって前記加振地点から伝搬する振動を、レーザ光を用いて非接触で検出する第1振動測定部と、前記加振部と前記第1、第2振動測定部とを保持する筐体と、前記加振部により前記加振地点に発生させた振動を前記第2振動測定部が検出してから、前記測定地点にて前記加振地点から伝搬する前記振動を前記第1振動測定部が検出するまでの時間を計測する時間計測部と、を有することを特徴とする
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態を示す構造物変状検出装置の概略正面図。
図2図1に示す加振部のパラメトリックスピーカーの構成を示す図。
図3図1に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状がない状態を示す。
図4図1に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状がある状態を示す。
図5図1に示す構造物変状検出装置の検出動作の基本的な流れを説明するフローチャート。
図6図1に示す加振部のパラメトリックスピーカーの制御回路図。
図7図1に示す振動測定部を構成する二次元走査型レーザドップラ振動計の回路図を示す。
図8図1に示す構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図。
図9図1に示す構造物変状検出装置のスキャニング動作を説明する図。
図10図1に示す構造物変状検出装置における変状検出動作の基準となる基準時間測定動作の流れを説明するフローチャート。
図11】第2実施形態を示す構造物変状検出装置の概略正面図。
図12図11に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状が有る状態を示す。
図13図11に示す振動測定部を構成する自己混合干渉型レーザドップラ振動計の回路図。
図14】第2実施形態の構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図。
図15】第2実施形態の変状検出を説明するタイミングチャート。
図16】第3実施形態の構造物変状検出装置の概略正面図。
図17図16に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状が有る状態を示す。
図18】第3実施形態の構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図。
図19図16に示す構造物変状検出装置による検出動作の流れを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
第1実施形態
図1は第1実施形態を示す構造物変状検出装置の概略正面図、図2(a)、(b)は図1に示す加振部のパラメトリックスピーカーの構成を示す図、図3図1に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状がない状態を示す。図4図1に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状がある状態を示す。図5図1に示す構造物変状検出装置の検出動作の基本的な流れを説明するフローチャート、図6図1に示す加振部のパラメトリックスピーカーの制御回路図、図7図1に示す振動測定部を構成する二次元走査型レーザドップラ振動計の回路図、図8図1に示す構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図である。図9図1に示す構造物変状検出装置のスキャニング動作を説明する図、図10図1に示す構造物変状検出装置における変状検出動作の基準となる基準時間測定動作の流れを説明するフローチャートである。
【0014】
図1において、構造物変状検出装置10は、スピーカー800を有する加振部1と、前面にレンズ部430を配置した振動測定部2を有する。加振部1と振動測定部2は、加振部1から出力される音波の出力方向の軸線と、振動測定部2から出射されるレーザビームの軸線とを同じ方向(前方)に向けて筐体3に配置される。加振部1から出力される音波の出力中心をO1、振動測定部2から出力されるレーザビームの出射中心をO2とすると、加振部1と振動測定部2は、出力中心O1と出射中心O2間の距離を所定の間隔L0として筐体3に固定され、一体化されている。
【0015】
図3に示すように、構造物変状検出装置10は、コンクリートやモルタル等で形成された測定対象物4に対して、ある一定の設置距離を隔てて対向配置し、非接触で測定点の振動を測定する。
【0016】
前記設置距離は、振動測定部2を構成するレーザドップラ振動計の焦点距離や、加振部1が出力する音波の到達距離等を考慮した上で決まる。本実施形態の場合、作業者が構造物変状検出装置10を携帯できるような小型のものを想定しているため、数m程度の近距離を想定している。
【0017】
図1において、加振部1のスピーカー800としては、例えばパラメトリックスピーカーやフラットスピーカー、ラウドスピーカー、あるいはガスガン、衝撃波菅といった、非接触で、測定対象物を加振することが可能なものであればよい。以下、本実施例では、加振部1のスピーカーとしてパラメトリックスピーカー800を例に説明する。
【0018】
一方、振動測定部2は、二次元レーザドップラ振動計で構成され、構体3の前面に二次元レーザドップラ振動計のレーザビームの入出射口であるレンズ部430が配置される。
【0019】
パラメトリックスピーカー800の構成としては、図2(a)、(b)に示すように、トランスデューサー(例えば超音波圧電素子)801を平面に複数個並べたものである。トランスデューサー801単体ではおよそ60〜70度の指向性を持つが、図2(a)上記構成とすると指向性が向上する。よって、パラメトリックスピーカー800から発せられる超音波は数度の角度の指向性で、ほぼ一直線に測定対象物4に照射される(図3)。すなわちパラメトリックスピーカー800の中心部とパラメトリックスピーカーから発せられる超音波の中心部O1はほぼ一致する。
【0020】
一方、二次元走査型のレーザドップラ振動計は、本実施形態では自己混合干渉型のレーザドップラ振動計を適用している。自己混合干渉法は、レーザの出力光と、加振された測定対象物からの散乱光をレーザ内部で干渉させ、測定対象物の運動(振動)を測定する手法である。すなわち、レーザビームが照射されている測定対象物の振動を測定することができる。
【0021】
加振部1は、コンクリートやモルタル等で形成された測定対象物4に対して、超音波を照射し、加振する。測定対象物4に照射(当てられた)超音波により測定対象物4に発生する超音波振動は、測定対象物4の表面を伝搬し、レーザドップラ振動計2のレーザビームが照射されている測定ポイントでレーザドップラ振動計に検出される。
【0022】
測定対象物4の表面が例えばコンクリートだとする。加振部1が照射して発生した超音波振動の振動波6がコンクリート表面を真っ直ぐ(最短距離)伝搬する。そして、レーザドップラ振動計2に検出されるまでの時間(伝搬時間)Tを測定し、メモリに記録しておく。ひび割れや亀裂、浮き、剥離等の変状の生じていない健全なコンクリートであれば、この時間が距離L0を超音波が伝搬した時間となる(図3)。
【0023】
一方、測定対象物が、ひびわれの生じたコンクリートの場合を表したのが図4である。この場合、測定対象物4に生じる超音波振動7は、ひび割れ部分を伝搬できないため、ひび割れの深さD方向の頂点を沿うように迂回して伝搬し、レーザドップラ振動計の測定ポイントに達する。
【0024】
すなわち、ひび割れや亀裂、剥離等が生じたコンクリートの場合には、超音波はコンクリートの表面を伝搬することができないため、長い距離を伝搬することになる。コンクリート内を伝搬する超音波の速度はほぼ一定のため、健全なコンクリートの伝搬時間よりも、長い時間を要してレーザドップラ振動計2に計測される。測定ポイントでの伝搬時間をtとする。
【0025】
すなわち、あらかじめ健全なコンクリートで伝搬時間Tを測定し(キャリブレーション)、それを記録しておき、測定対象物を測定した結果である伝搬時間tが健全なコンクリートよりも長い時間であれば、何らかの変状(ひび割れ、亀裂、剥離等)が生じていることになる。
【0026】
図3において、レーザドップラ振動計2は、レーザ部401の半導体レーザ402から出力されたレーザが光学ユニット408によって、測定対象物4上に集光される。集光されたレーザビームが、測定対象物4上で反射し、その散乱光が、光路を通じて、半導体レーザ402内部で干渉し、その光をレーザ部401内部のフォトダイオード403で測定する。
【0027】
図3において、測定対象物4に生じる超音波振動6の進行方向が矢印の向きに振動すると、ドップラーシフトが生じ、散乱光の周波数がわずかに変化する。この散乱光がレーザ部401内部のオリジナル光(バックビーム)と干渉を起こし、それを内蔵フォトダイオード403で検出する。フォトダイオード403上で干渉すると、その周波数差がビート信号として検出される。
【0028】
図5に示すフローチャートに基づいて、変状検出の流れを説明する。
【0029】
Act1において、距離L0を隔てて健全なコンクリートの表面に加振部1により超音波を照射すると共に、振動測定部2によりレーザビームを照射する。そして、超音波の照射が開始されてから、振動測定部2が振動を検出するまでの時間(伝搬時間T)を計測し、Act2に進む。
【0030】
Act2において、基準となる伝搬時間Tをメモリに記録し、Act3に進む。Act1およびAct2の処理は、基準時間測定の処理である。
【0031】
Act3において、振動測定部2のレーザビームが照射する測定ポイントで、加振が開始されてから振動を検出することで、伝搬時間tを測定し、Act4に進む。
【0032】
Act4において、伝搬時間tをメモリに記録し、Act5に進む。
【0033】
Act5において、基準の伝搬時間Tと測定伝搬時間tを比較する。測定伝搬時間tが基準伝搬時間を超えている場合(t>T)、Act6に進み、測定伝搬時間tが基準伝搬時間未満の場合(t<T)、Act7に進む。
【0034】
Act6において、t>Tの場合は図4に示す状態であるため、変状ありと判定し、Act8に進み元に戻る。
【0035】
Act7において、t<Tの場合は図3に示す状態にあるため、変状なしと判定し、Act8に進む。
【0036】
次に、加振部1であるパラメトリックスピーカー800の制御回路を図6に基づいて説明する。
【0037】
パラメトリックスピーカー800は、トランスデューサー801を平面に複数個並べたものであるため、駆動回路部(DRV00、DRV01、・・・・DRVn)600、601・・・610もトランスデューサー801の数だけある。例えば図2(a)のパラメトリックスピーカー800の場合には、9個のトランスデューサー801から構成されているため、駆動回路部も9個必要である(DRV00〜DRV08)。
【0038】
装置全体を制御するCPU511は、データライン513とトランスデューサー801を指定するアドレスライン515とクロックライン514を使用して、任意のトランスデューサー801を駆動することができる。ただし、本例では、9個すべて駆動する。アンド回路520に、クロックライン514からクロック信号と、アドレスライン515からアドレス信号が入力されると、フリップフロップ回路560のFF00に信号1が出力される。フリップフロップ回路560は、全出力端子から信号1が出力され、駆動回路部(DRV00〜DRV08)が同時に駆動される。
【0039】
次に、二次元レーザドップラ振動計2の構成の詳細を図7に基づいて説明する。
【0040】
二次元レーザドップラ振動計2は、測定対象物4の測定面を互いに直交するX−Y平面とすると、X−Y平面上の任意の測定点に向けてレーザビームを照射できるようになっている。
【0041】
本実施形態では、X軸回りとY軸回りに回転できるガルバノスキャナー420にレーザビームを照射し、測定対象物からの反射光をガルバノスキャナー420、光学ユニット408を介してレーザ部401で受光する。
【0042】
レーザ部401には、パワーモニター用のフォトダイオード403が内蔵されている。半導体レーザ402はカレントドライバ404によって、定電流駆動される。モニターダイオード403の出力は、電流―電圧変換アンプ405によって変換及び増幅された後、ローパスフィルター406によって高周波成分のノイズをカットされる。この信号409がビート信号で、この信号をモニターすることによって、ドップラーシフトが生じたかどうか分かる。さらにFFT407によってフーリエ変換し、レーザ強度のパワースペクトルを得ることができる。
【0043】
本方法を選択したのは、従来の光ヘテロダイン検出法のような参照光が不要となるので、光学系の構成を単純化でき、低コストかつ小型装置を実現できるからである。
【0044】
測定用レーザビーム光を走査させる2次元走査手段は、いわゆるガルバノスキャナー420である。測定用のレーザビーム光は、光学ユニット408によって、ガルバノスキャナー420の反射ミラー面に集光される。図の縦軸(y軸)を中心にミラーを回転させるとx軸方向にビーム光を走査し、図の横軸(x軸)を中心にミラーを回転させるとy軸方向にレーザビーム光を走査する。この動作によって、図9のx軸方向の座標とy軸方向の座標で決まる任意の位置に測定用レーザビーム光を自由に移動することができる。
【0045】
ガルバノスキャナー420のミラーは、x軸回り駆動用のx軸アクチュエータ(不図示)と、y軸回り駆動用のy軸アクチュエータ(不図示)によりx軸回りとy軸回りにそれぞれ回転駆動される。CPU511から測定点の座標(X,Y)指示がなされると、y軸座標データ部421と、x軸座標データ部422からy軸ドライバ423とx軸ドライバ424へ駆動信号がそれぞれ出力される。そして、前記y軸アクチュエータと前記x軸アクチュエータが駆動される。その結果、レーザビームは測定点に照射される。
【0046】
構造物変状検出装置のシステム構成を図8に示す回路図に基づいて説明する。なお、詳細な構成は図6及び図7で説明したのでその説明は省略する。
【0047】
構造物変状検出装置のシステム構成は、CPU511により、スピーカー駆動部810を駆動し、パラメトリックスピーカー800から超音波を出力する。スピーカー駆動部810は、駆動信号をタイマ830のスタート端子に出力する。
【0048】
一方、CPU511は、レーザドップラ振動計820を駆動し、計測結果のデータ信号をタイマ830のストップ端子とCPU511に出力する。
【0049】
タイマ830は、スタート端子にスピーカー駆動信号が入力されるとタイマをスタートさせ、レーザドップラ振動計820の計測結果のデータ信号が入力されるとタイマをストップさせる。そして、メモリ840に計測結果のデータを記録させる。
【0050】
この場合、パラメトリックスピーカー800が測定対象物4に向けて照射する超音波の照射点は一箇所である。これに対し、レーザドップラ振動計820はガルバノスキャナー420がx−y座標上の任意の測定点に向けてレーザビームを照射し、例えばマトリックス状に設定した測定点で振動を検出する。
【0051】
図9は構造物変状検出装置のひび割れ等の変状を検出する方法を説明する概略図である。
【0052】
加振部1のパラメトリックスピーカー800から出力される超音波の照射位置を○で表した。一方、振動測定部2から出射されるレーザビーム光の照射位置を●で示した。振動測定部2は、図7で説明する2次元走査型のレーザドップラ振動計820である。x軸とy軸の交点である図面中央位置がホームポジション(HP)位置とする。(x、y)座標を指定することで、測定用のレーザビーム光を測定対象物の任意の位置に自由に移動することができる。図9では、x軸上とy軸上にそれぞれ測定用レーザビーム光を照射した際のイメージを●にて表現している。x軸上のx0〜x10までの各点の座標間隔(L0〜L4)は、等間隔である。また、y軸上のy0〜y10までの各点の座標間隔(L0〜L4)は等間隔である。例えば、点O1と、測定点(x5、y4)との直線距離は、L0+L4の平方根で得られる。
【0053】
振動測定部2の測定位置を測定対象物4上の任意の位置に自由に移動できることによって、加振部1の加振位置と振動計測手段と振動計測位置間のひび割れを検出することが可能となる。すなわち、後述する、ひび割れの伸長を計測することができる。
【0054】
図9は、例えば、コンクリートで形成されたトンネルの覆工部上に生じたひび割れ900を、本構造物変状検出装置10で検出する様子を説明するための図である。変状の一例としてひび割れの伸長をは、必ずしも直線上に生じるわけではなく、図のように方向を変えつつ伸長する。また、ひび割れは、目視で確認出来るものもあるが、そうでないものもある。図では便宜上太い黒線で表現しているが、本装置では目視で確認できないようなひび割れを検出することができる。
【0055】
図9ではトンネルの覆工部上に、構造物変状検出装置10の加振部1の加振点と振動測定部2のレーザビーム照射点が投影されているイメージ図である。例えば、座標(x0、y5)は加振部3のパラメトリックスピーカー800から出力される超音波が投影されており、その超音波出力が照射される位置である。
【0056】
同様に、(x5、y5)は振動測定手段であるレーザドップラ振動計のホームポジション(HP)であり、測定用レーザビーム光が照射される位置である(距離がL0)。また、(x0、y5)、(x1、y5)、(x2、y5)、(x3、y5)、(x4、y5)、(x6、y5)、(x7、y5)、(x8、y5)、(x9、y5)、(x10、y5)はホームポジションから、x軸の左右方向に測定用レーザビーム光を移動させて照射させたイメージ図である。
【0057】
同様に、(x5、y0)、(x5、y1)、(x5、y2)、(x5、y3)、(x5、y4)、(x5、y5)、(x5、y6)、(x5、y7)、(x5、y8)、(x5、y9)、(x5、y10)はy軸の上下方向に測定用レーザビーム光を移動させて照射させたイメージ図である。
【0058】
振動測定部2のレーザドップラ振動計の測定用レーザビーム光が投影されたエリアが、本構造物変状検出装置の検知範囲である。
【0059】
次にひび割れ検知について図10のフローチャートに従って説明する。
【0060】
まず図3に示すように、健全な状態のコンクリート上を本装置により測定し(図5のAct1−Act3)、メモリに840に記録する(図5のAct4)。
【0061】
Act11において、m_max=10 (x軸最大値)、n_init=5 (y軸ホームポジション)にレーザビームの照射位置を設定し、Act12に進む。
【0062】
Act12において、半導体レーザ402を発光させ、Act13に進む。
【0063】
Act13において、測定点の座標(x、y)を設定し、Act14に進む。
【0064】
Act14において、CPU511は、レーザドップラ振動計820の測定用レーザビームの照射位置を設定した座標位置(x10、y5)にガルバノスキャナー420のミラーを移動させ、Act15に進む。レーザビームはレンズ408によって、ガルバノスキャナー420のミラー面上にフォーカスされ、さらにミラー面で反射し、レンズ430によって、測定ポイントであるコンクリート上にフォーカスされる。この動作によって座標(x10、y5)の測定ポイントの振動を計測する。
【0065】
Act15において、パラメトリックスピーカー800をオンとし、超音波を照射位置O1に照射し、Act16に進む。CPU511は、データライン513(図6参照)に[0001 1111 1111]をセットし、アドレスライン515に[1]をセットする。さらにクロックライン514にクロックを発生させることによってDRV00〜DRV08ドライバを有効にし、超音波を発生させる(時間測定開始)。
【0066】
Act16において、測定点での超音波振動の伝搬時間t(xm、yn)を取得し、Act17に進み、伝搬時間tをメモリ840に記録し、Act18に進む。超音波はコンクリートを加振し、その表面を伝搬し、レーザドップラ振動計の測定位置である(x10、y5)に到達した時点でレーザドップラ振動計に検出される(時間測定終了)。この測定時間を伝搬時間t(x10、y5)として、メモリ840に記憶する。
【0067】
Act18において、x軸の座標位置を1減じ(m=m−1)、Act19に進む。
【0068】
Act19において、x軸の座標位置が既にx10からx0まで達している場合(m<0、Yes)、Act20に進み、m>0の場合(No)にはAct13に戻る。
【0069】
Act20において、y軸の座標位置nが0未満であるか否かを判定し、0未満であれば終了し、0以上であればAct21に進む。
【0070】
Act21において、y軸の座標位置を1減じ(n=n−1)、Act13に戻る。
【0071】
すなわち、Act18−21において、CPU511は、ガルバノスキャナー420によって、レーザドップラ振動計の測定用レーザビームの照射位置を(x9、y5)に移動させ、レーザ半導体402を発光させる。レーザビームはレンズ408によって、ガルバノスキャナー420のミラー面上にフォーカスされ、さらにミラー面で反射し、レンズ430によって、測定ポイントであるコンクリート上にフォーカスされる。この動作によって(x9、y5)の測定ポイントの振動を計測することが可能になる。
【0072】
先ほどと同様に、パラメトリックスピーカーから超音波を発生させる(時間測定開始)。超音波はコンクリートを加振し、その表面を伝搬し、レーザドップラ振動計の測定位置である(x9、y5)に到達した時点でレーザドップラ振動計に検出される(時間測定終了)。この測定時間T(x9、y5)をメモリ840に記憶する。
【0073】
以下同様にレーザドップラ振動計の測定用レーザビーム光を下記位置に移動させ、パラメトリックスピーカーの超音波を照射し、超音波の照射位置とレーザドップラ振動計の測定位置間の伝搬時間t(x、y)を測定し、メモリに記憶する。
【0074】
座標位置の変更は、例えば、Act18、19、20、21において、(x8、y5)〜(x1、y5)の後に、順に(x10、y4)〜(x0、y4)、(x10、y3)〜(x0、y3)、(x10、y2)〜(x0、y2)、(x10、y1)〜(x0、y1)、(x10、y0)〜(x0、y0)で実行される。
【0075】
なお、説明の便宜上上記座標としたが、ガルバノスキャナー420のミラーの移動位置をもっと詳細に表現できるのであれば、加振ポイント(x0、y5)と測定ポイント(x10、yn)間を直線で結んだ線上の測定ポイントの伝搬時間を計測しメモリに記憶させても良い。
【0076】
上記動作によって、健全な状態のコンクリートでの超音波の伝搬時間が判明する。
【0077】
図9図10において、測定対象物に超音波振動を発生させ(時間測定開始)、時間測定開始からレーザドップラ振動計の測定位置である(x10、y5)に振動が到達すると、レーザドップラ振動計が振動を検出する(時間測定終了)。この測定時間t(X10、y5)をメモリ840に記憶する。図9の場合、x0とx10間にひび割れが存在するため、測定時間は健全時の測定時間T(x10、y5)0よりも長くなる(t(x10、y5)>T(x10、y5))。測定時間の大小関係によって、CPU511は、ひび割れの存在を検出する。
【0078】
詳細なひびわれ位置を検出するために、測定ポイントを、加振ポイントO1に近づけて、同様の動作を行う。測定ポイントを(x9、y5)に移動する。
【0079】
CPU511は、さらに超音波を発生させる(時間測定開始)。超音波振動は、コンクリートを加振し、その表面を伝搬し、レーザドップラ振動計の測定位置である(x9、y5)に到達した時点でレーザドップラ振動計に検出される(時間測定終了)。この測定時間t(x9、y5)をメモリ840に記憶する。図10場合、x0とx9間にひび割れが存在するため、測定時間は健全時の測定時間T(x9、y5)よりも長くなる(t(x9、y5)>T(x9、y5))。
【0080】
以下、同様に、測定ポイントを(x8、y5)、(x7、y5)、(x6、y5)(x5、y5)、(x4、y5)、(x3、y5)、(x2、y5)選択し、上記測定を繰り返す。本実施形態の場合には、(x2、y5)の測定時間が、ほぼ基準時間と等しくなるため、ひび割れ位置は、(x3、y5)と(x2、y5)の間に存在すると判定される。
【0081】
さらに、レーザドップラ振動計の測定ポイントを(x10、y4)、(x10、y3)、(x10、y2)、(x10、y3)、(x10、y2)、(x10、y1)、(x10、y0)、の順に移動させて、同様の測定を行うことによって、ひびわれの位置を検出することができる。
【0082】
第2実施形態
図11は第2実施形態を示す構造物変状検出装置の概略正面図、図12図11に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状が有る状態を示す。図13図11に示す振動測定部を構成する自己混合干渉型レーザドップラ振動計の回路図、図14は第2実施形態の構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図、図15は第2実施形態の変状検出を説明するタイミングチャートである。なお、図11図12図13図14において、図1,2,3,4、7,8に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0083】
第2実施形態は、時間計測開始タイミングを発生する専用の振動測定部を設けて、加振部1から照射された超音波がコンクリート等の測定対象物4を加振した瞬間に時間計測を開始できるようにした。
【0084】
これによって、誤差要因となる超音波が照射され測定対象物4を加振するまでの時間を完全に取り除き、本来測定すべき時間のみを測定することができるようになるため、高精度のひび割れなどの変状の計測が可能になる。
【0085】
図11において、加振手段800は、パラメトリックスピーカーやフラットスピーカー、ラウドスピーカー、あるいはガスガン、衝撃波菅といった、非接触で、測定対象物4を加振することが可能ものであればよい。以下、本例では、一実施例としてパラメトリックスピーカーを例に説明する。
【0086】
図11において、構造物変状検出装置10は、筐体3の前面に振動測定部2(以下、第1の振動測定部2Aとする)である二次元レーザドップラ振動計のレーザビームの入出射口であるレンズ部430が配置されるのは、第1実施形態と同様である。さらに、第2の振動測定部2Bであるレーザドップラ振動計のレーザビームの入出射口であるレンズ部431が配置される。
【0087】
本実施形態において、第2の振動測定部2Bであるレーザドップラ振動計のレーザビーム入出射口部であるレンズ部431の周囲に加振部1を構成するパラメトリックスピーカー800を配置している。本構成によれば、パラメトリックスピーカー800から発せられた超音波の中心部O1と、第2の振動測定部2Bであるレーザドップラ振動計から出射されるレーザビーム光の中心部がほぼ一致する。このため、加振対象である測定対象物4のコンクリート表面部の加振ポイントを、第2の振動測定部2Bであるレーザドップラ振動計によって測定することができる。
【0088】
図12および図13において、第2振動測定部2Bは、本例では自己混合干渉型のレーザドップラ振動計を適用している。自己混合干渉法は、レーザの出力光と測定対象からの散乱光をレーザ内部で干渉させ、測定対象の運動を測定する手法である。
【0089】
図12および図13において、レーザ半導体1402から出力されたレーザビームは光学ユニット1408によって、測定対象物4上に集光される。集光されたレーザビームが、測定対象物4上で反射し、その散乱光が、光路を通じて、レーザ半導体1402の内部で干渉し、その光を半導体レーザ内部のフォトダイオード1403で測定する。すなわち、測定対象物が、図13の矢印の向きに振動すると、ドップラーシフトが生じ、散乱光の周波数がわずかに変化する。この散乱光がレーザ半導体1402内部のオリジナル光(バックビーム)と干渉を起こし、それを内蔵フォトダイオード1403で検出する。フォトダイオード1403上で干渉すると、その周波数差がビート信号として検出される。
【0090】
半導体レーザ部1401には、半導体レーザ1402とパワーモニター用のフォトダイオード1403が内蔵されている。半導体レーザ1402はカレントドライバ1404によって、定電流駆動される。モニターダイオードであるフォトダイオード1403の出力は、電流―電圧変換アンプ1405によって変換及び増幅された後、ローパスフィルター1406によって高周波成分のノイズをカットされる。この信号1409がビート信号で、この信号をモニターすることによって、ドップラーシフトが生じたかどうか分かる。さらにFFT1407によってフーリエ変換し、レーザ強度のパワースペクトルを得ることができる。
【0091】
一方、第1の振動測定部2Aである二次元走査型のレーザドップラ振動計については、第1の実施形態の振動測定部2と同様なのでその説明は省略する。
【0092】
図14は第2実施形態の構造物変状検出装置10のシステム構成を示す。
【0093】
本実施形態は、健全なコンクリート部で基準時間を測定する際と、実際にひび割れを測定する際に特徴がある。
【0094】
まず、第2の振動測定部2Bのレーザビームをコンクリートやモルタル上に照射する。
【0095】
次に、加振部3のスピーカー800によって、コンクリートやモルタル等で形成された測定対象物4に対して、超音波を照射する。すなわち、CPU511は、データライン513に[0000 1111 1111]をセットし、アドレスライン515に[1]をセットする。さらにクロックラインにクロックを発生させることによって、超音波を発生させる。照射された超音波はコンクリートに到達し、コンクリートを加振する。
【0096】
この際、第2の振動部2Bは、コンクリートの振動を検出し、タイマ830に対して、測定開始信号1409を出力する。タイマ830はこの測定開始信号1409を受信し、基準クロックをカウントし始める。
【0097】
加振部1によってコンクリートに照射された超音波は、その表面を伝搬し、レーザドップラ振動計の測定位置に到達した時点で第1の振動測定部2Aであるレーザドップラ振動計に検出される。コンクリートの振動を検出した第1のレーザドップラ振動計2Aは、測定終了信号1409をタイマ830に対して出力する。タイマ830はこの測定終了信号1409を受信しカウントを停止し、カウント値をメモリ840に記録する。
【0098】
図15は上記のタイミングチャートである。加振部1の超音波照射を開始する信号がドライバに入力され、実際に超音波発振が始まり、それがコンクリートに到達するまでの時間(t_err)はばらつきが生じやすい。例えば、パラメトリックスピーカー800を構成する圧電トランスデューサー801の起動時間は個々にばらつきがある。
【0099】
しかし、第2の振動測定部2Bは、加振部1から照射される超音波が加振対象であるコンクリートを加振した瞬間を検出し、タイマ840による時間測定を開始するため、上記ばらつきを含まない精度の良い時間計測ができる。このため、基準時間を測定する際や、実際にひび割れを測定する際に精度の良い計測が可能で、高精度にひび割れ検出を行うことができる。
【0100】
第3実施形態
図16は第3実施形態の構造物変状検出装置の概略正面図、図17図16に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状が有る状態を示す。図18は第3実施形態の構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図、図19図16に示す構造物変状検出装置による検出動作の流れを説明するフローチャートである。
【0101】
第3実施形態は第2実施形態の変形例を示す。
【0102】
図16は第3実施形態の構造物変状検出装置の概略正面図、図17図16に示す構造物変状検出装置の側断面図で、構造物に変状が有る状態を示す。図18は第3実施形態の構造物変状検出装置のシステム構成を示す回路図、図19図16に示す構造物変状検出装置による検出動作の基本的な流れを説明するフローチャートである。
【0103】
第3実施形態は、第2実施形態と同様に、第2振動測定部2Cによって、加振部1による測定対象4への加振点O1での加振を検出する。しかし、本実施形態の第2の振動測定部2Cは、第1の振動測定部2Aと同様にガルバノスキャナー2420を有する。第2振動測定部2Cのレンズ431のレンズ中心は加振部1のスピーカー800により加振される中心(スピーカー800の出力中心O1)とは異なる位置に配置される。なお、図17において、第2振動測定部2Cを構成する部材において、第1振動測定部2Aを構成する部材と同じ部材には、第1振動測定部2Aの部材の符号の前に2を付してその説明を省略する。また、図18に示す部材において、図14に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図17に示す配置において、加振ポイントを測定するため、第2振動測定部2Cを二次元走査型のレーザドップラ振動計とした。すなわち、基準時間測定工程及変状(例えばびひび割れ)測定工程の前に、第2振動測定部2Cの測定位置が、加振位置と一致するようにガルバノスキャナー2420のミラーを制御する工程が加わる。この測定動作によって、加振部1によってコンクリートが加振された瞬間を、第2振動測定部2Cが検知し、タイマ830の測定開始信号を出力する。以降の工程はすでに説明済みであるため省略する。
【0105】
図18において、第2振動測定部2Cは、第1振動測定部2Aと同様に、ガルバノスキャナー2420のミラーを所定の座標位置に移動させる信号がCPU511から入力される。
【0106】
図16に示す構造物変状検出装置による検出動作の流れを図19に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0107】
Act31において、第2振動測定部2Cのガルバノスキャナー2420のミラーを加振部3により加振される測定対象物4の加振位置に移動させ、Act32に進む。
【0108】
Act32において、加振部1は健全なコンクリートに対して加振し、第1振動測定部2Aにより基準伝搬時間Tの基準時間を測定し、Act33に進む。健全なコンクリートは測定対象物4に存在するものとする。このため、第2振動測定部2Cは、ガルバノスキャナー2420のミラーを健全なコンクリートに向けてレーザビームを照射する。この場合、基準伝搬時間測定のためのレーザビームの照射位置と加振点との距離は予め求められている。これにより基準伝搬時間Tが求まる。
【0109】
Act33において、測定した基準伝搬時間Tをメモリ840に記録し、Act34に進む。
【0110】
Act34において、第2振動測定部2Cの測定位置を加振部1で加振する加振位置に移動し、Act35に進む。
【0111】
Act35において、第1振動測定部2Aのガルバノスキャナー420を駆動し、照射位置を測定位置(振動検出位置)に移動し、Act36に進む。
【0112】
Act36において、測定位置(振動検出位置)での振動伝搬時間tを測定し、Act37に進む。
【0113】
Act37において、振動伝搬時間tをメモリ840に記録し、Act38に進む。
【0114】
Act38において、振動伝達時間tと基準伝達時間Tとの大小を比較する。Act38において、振動伝達時間tが伝達時間Tを超えている場合、図4に示すような状態が存在すると推測できるため、Act39に進んで変状ありと判定し、次の測定位置での測定を実行する。また、振動伝達時間tが伝達時間T未満の場合には、Act40に進んで変状なしと判定し、次の測定位置での測定を実行する。
【0115】
本実施形態によれば、第2振動測定部2Cと加振部1との動作により、基準となる振動の伝搬時間Tを測定することができる。このため、測定対象物4の中で健全なコンクリート部分を用いて基準となる振動伝搬時間Tを測定することができる。
【0116】
第1実施形態〜第3実施形態において、第1振動測定部2A、第2振動測定部2Cは、ガルバノスキャナー420(2420)を有する。このガルバノスキャナー420(2420)は、ミラーを直交するx軸回りと、y軸回りに回転することにより、測定対象物4の任意の位置にレーザビームを照射することができる。
【0117】
また、上記した各実施形態は、筐体3内に加振部1と振動測定部2、2A、2B、2Cを配置している。筐体3は、箱形状、フレーム形状等が例示できる。
【0118】
すなわち、振動測定装置は、以下の特徴を有する。
(1):半導体レーザから測定対象物に向けてレーザビームを照射し、前記半導体レーザ内でオリジナル光と反射したレーザビームとで生じる干渉をフォトダイオードで検出するレーザ部と、前記レーザ部からのレーザビームを前記測定対象物に向けて照射させ、前記測定対象物で反射したレーザビームを前記半導体レーザに入射させる反射ミラーと、前記半導体レーザから出射されるレーザビームを前記測定対象物の任意の位置に照射させるべく前記反射ミラーの向きを制御する駆動部とを有する。
(2):(1)の振動測定装置において、前記フォトダイオードが干渉を検出すると、前記測定対象物に発生した振動を検出したと判定する判定部を有する。
【0119】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施できる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0120】
10 構造物変状検出装置
1 加振部
800 パラメトリックスピーカー
2 振動測定部
2A 第1振動測定部 2B、2C 第2振動測定部
3 筐体
4 測定対象物
401 レーザ部
402 半導体レーザ
403 フォトダイオード
420 ガルバノスキャナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19