【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度〜平成26年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料極、固体電解質、及び空気極が順次積層された発電素子が所定の間隔を空けて複数配置されてなり、前記複数の発電素子がインターコネクタにより接続された燃料電池本体と、
前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、
前記空気極に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給部と、
前記インターコネクタ及び前記固体電解質の少なくとも一方の損傷部に対して当該損傷部を修復する修復粒子を供給する修復粒子供給部とを備え、
前記修復粒子供給部は、前記燃料ガスに前記修復粒子を供給することを特徴とする、燃料電池発電装置。
前記修復粒子は、前記損傷部を修復する前記燃料電池本体の修復動作時の前記インターコネクタ又は前記固体電解質の温度以上の温度で少なくとも一部がガス化する、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池発電装置。
前記修復粒子は、前記損傷部を修復する前記燃料電池本体の修復動作時の前記インターコネクタ又は前記固体電解質の温度以上の温度で少なくとも一部が溶融する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置。
前記修復粒子は、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、フッ化ナトリウム及びケイ酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置。
燃料電池本体の温度上昇、前記燃料電池本体から排出される燃料ガス濃度、前記燃料電池本体の電圧低下及び前記燃料電池本体から排出される酸化性ガス中の酸素濃度の少なくとも1つを測定する第1ステップと、
測定した前記温度上昇、前記燃料ガス濃度、前記電圧低下及び前記酸素濃度の少なくとも1つの測定値に基づいて、前記燃料電池本体の発電素子のインターコネクタ及び固体電解質の少なくとも一方の損傷部に対して当該損傷部を修復する修復粒子の供給量を制御する第2ステップとを含むことを特徴とする、燃料電池発電装置の運転方法。
前記第1ステップにおいて、前記燃料電池本体の運転開始前から予め前記修復粒子の供給を開始し、前記第2ステップにおいて、前記測定値が、所定の閾値を超えた場合に、前記修復粒子の供給量を増大し、前記測定値が所定の閾値以下の場合に、前記修復粒子の供給量を減少させる、請求項8に記載の燃料電池発電装置の運転方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な固体酸化物形燃料電池の燃料極では、ニッケル(Ni)が用いられているので、燃料極側がニッケル(Ni)の酸化する酸素分圧以上の酸化性雰囲気になると、燃料極内のニッケル(Ni)が酸化して酸化ニッケル(NiO)となり、燃料極の体積が膨張して燃料電池セルに損傷部(例えば、亀裂など)が発生する場合がある。燃料電池セルに損傷部が発生すると、空気極側から燃料極への酸化性ガスのリーク量が発生して燃料電池セルの損傷部が拡大し、カートリッジ内の周辺のセルスタックへの二次被害に発展する場合がある。このため、燃料電池セルが損傷した場合であっても、損傷部を修復できる燃料電池発電装置が望まれている。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池セルが損傷した場合であっても、自己で損傷部の損傷低下又は修復が可能な燃料電池発電装置及び燃料電池発電装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池発電装置は、燃料極、固体電解質、及び空気極が順次積層された発電素子が所定の間隔を空けて複数配置されてなり、前記複数の発電素子がインターコネクタにより接続された燃料電池本体と、前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、前記空気極に空気を供給する空気供給部と、前記インターコネクタ及び前記固体電解質の少なくとも一方の損傷部に対して当該損傷部を修復する修復粒子を供給する修復粒子供給部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この燃料電池発電装置によれば、燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質に亀裂などの損傷部が生じた場合であっても、損傷部に対して修復粒子が供給されるので、インターコネクタ及び固体電解質の損傷部を修復することができる。したがって、発電素子に亀裂などが生じて損傷した場合であっても、自己による損傷部の損傷低下又は修復が可能な燃料電池発電装置を実現できる。
【0008】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記修復粒子供給部は、前記燃料ガスに前記修復粒子を供給することが好ましい。この構成により、燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質に亀裂などの損傷部が生じた場合であっても、燃料ガスに供給された修復粒子が燃料ガスと共に損傷部に供給されるので、インターコネクタ及び固体電解質の損傷部を修復することができる。
【0009】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記修復粒子供給部は、前記発電素子が設けられた基体の表面上に設けられた修復粒子層であることが好ましい。この構成により、燃料ガスのガスリークによって温度が上昇した燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質の損傷部近傍の修復粒子層に含まれる修復粒子が損傷部に供給されるので、損傷部を効率良く修復することが可能となる。
【0010】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記燃料電池本体の温度上昇、前記燃料電池本体から排出される燃料ガス濃度、前記燃料電池本体の電圧低下及び前記燃料電池本体から排出される空気中の酸素濃度に基づいて、前記修復粒子の供給量を制御する制御部を備えたことが好ましい。この構成により、発電素子の損傷によって変化する燃料電池本体の温度、燃料ガス濃度、燃料電池本体の電圧低下及び燃料電池本体から排出される空気中の酸素濃度に基づいて修復粒子の供給量を制御するので、発電素子の損傷の発生の有無及び損傷の程度に応じて効率良く修復粒子を供給することが可能となる。
【0011】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記修復粒子は、前記損傷部を修復する前記燃料電池本体の修復動作時の前記インターコネクタ又は前記固体電解質の温度以上の温度で少なくとも一部がガス化することが好ましい。この構成により、燃料ガスに同伴して燃料電池本体の発電素子に供給された修復粒子が燃料電池本体内でガス化するので、修復粒子をガス状態で揮発成分として損傷部に供給することが可能となる。そして、損傷部に供給された揮発成分としての修復粒子は、燃料極側と空気極側との間の酸素分圧の差に基づいて固体として析出する。これにより、多孔質なセラミック部材などを透過して損傷部に修復粒子を供給することができるので、損傷部を効率良く修復することが可能となる。
【0012】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記修復粒子は、前記損傷部を修復する前記燃料電池本体の修復動作時の前記インターコネクタ又は前記固体電解質の温度以上の温度で少なくとも一部が溶融することが好ましい。この構成により、燃料ガスに同伴して燃料電池本体の発電素子に供給された修復粒子が、燃料ガスのガスリークによって燃料電池本体の運転温度以上に温度が上昇した損傷部で溶融するので、損傷部から燃料ガスのガスリークを低減することが可能となる。そして、損傷部からの燃料ガスのガスリークの低減により、損傷部の温度が低下して修復粒子が固体となるので、損傷部を効率良く修復することが可能となる。
【0013】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記修復粒子は、平均粒子径が2.5μm以下であることが好ましい。この構成により、修復粒子が燃料ガスに効率良く同伴されると共に、修復粒子を効率良く損傷部に供給することが可能となる。
【0014】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記修復粒子は、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、フッ化ナトリウム及びケイ酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。この構成により、修復粒子の溶融又は分解及び析出の温度が適度な範囲となるので、効率良く損傷部を防ぐことが可能となる。
【0015】
本発明の燃料電池発電装置においては、前記基体が円筒状をなす基体管であることが好ましい。この構成により、効率良く燃料電池セルの配置と燃料ガス及び空気ガスの供給のバランスとが向上するので、効率良く発電することが可能となる。
【0016】
本発明の燃料電池発電装置の運転方法は、燃料電池本体の温度上昇、前記燃料電池本体から排出される燃料ガス濃度、前記燃料電池本体の電圧低下及び前記燃料電池本体から排出される酸化性ガス中の酸素濃度の少なくとも1つを測定する第1ステップと、測定した前記温度上昇、前記燃料ガス濃度、前記電圧低下及び前記酸素濃度の少なくとも1つに基づいて前記燃料電池本体の発電素子のインターコネクタ及び固体電解質の少なくとも一方の損傷部に対して、当該損傷部を修復する修復粒子の供給量を制御する第2ステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
この燃料電池発電装置の運転方法によれば、発電素子の損傷によって変化する燃料電池本体の温度、燃料ガス濃度、燃料電池本体の電圧低下及び燃料電池本体から排出される空気中の酸素濃度に基づいて修復粒子の供給量を制御するので、燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質に亀裂などの損傷部が生じた場合であっても、修復粒子が効率良く供給されてインターコネクタ及び電解質の損傷部を修復することができる。したがって、発電素子に亀裂が生じて損傷した場合であっても、自己で損傷部の損傷低下又は修復が可能な燃料電池発電装置の運転方法を実現できる。
【0018】
本発明の燃料電池発電装置の運転方法においては、前記測定値が、所定の閾値を超えた場合に、前記修復粒子の供給を開始又は継続し、前記測定値が所定の閾値以下の場合に、前記修復粒子の供給を停止することが好ましい。この方法により、燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質などにおける損傷部の発生に応じて修復粒子を適宜供給することが可能となる。
【0019】
本発明の燃料電池発電装置の運転方法においては、前記第1ステップにおいて、前記燃料電池本体の運転開始前から予め前記修復粒子の供給を開始し、前記第2ステップにおいて、前記測定値が、所定の閾値を超えた場合に、前記修復粒子の供給量を増大し、前記測定値が所定の閾値以下の場合に、前記修復粒子の供給量を減少させることが好ましい。この方法により、燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質などに常時修復粒子を供給することができるので、損傷部の発生を効率良く防ぐことが可能となる。
【0020】
本発明の燃料電池発電装置の運転方法においては、前記第2ステップにおいて、前記測定値が所定の閾値を超えた場合に、前記燃料電池本体の発電を停止して前記修復粒子の供給を開始又は継続し、さらに、前記燃料電池本体の発電を停止した状態で、前記燃料電池本体の温度上昇、前記燃料電池本体から排出される燃料ガス濃度、前記燃料電池本体の電圧低下及び前記燃料電池本体から排出される酸化性ガス中の酸素濃度の少なくとも1つを測定する第3ステップと、前記燃料電池本体の発電を停止した状態での前記燃料電池本体の温度上昇、前記燃料電池本体から排出される燃料ガス濃度、前記燃料電池本体の電圧低下及び前記燃料電池本体から排出される酸化性ガス中の酸素濃度の少なくとも1つの測定値が、所定の閾値を超えた場合に、前記修復粒子の供給を開始又は継続し、前記測定値が所定の閾値以下の場合に、前記修復粒子の供給を停止する第4ステップとを含むことが好ましい。この方法により、インターコネクタ及び固体電解質などの亀裂などの損傷部が大きい場合であっても、燃料電池モジュールの過剰な温度上昇を防ぐことができるので、修復粒子による自己の損傷低下及び修復を効率良く実施することが可能となる。
【0021】
本発明の燃料電池発電装置の運転方法においては、前記第1ステップにおいて、前記燃料電池本体の運転開始前から予め前記修復粒子の供給を開始することが好ましい。この方法により、燃料電池本体のインターコネクタ及び固体電解質などに常時修復粒子を供給することができるので、損傷部の発生を効率良く防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料電池セルが損傷した場合であっても、自己で損傷部の損傷低下又は修復が可能な燃料電池発電装置及び燃料電池発電装置の運転方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、以下の各実施の形態は適宜組み合わせて実施可能である。また、各実施の形態において共通する構成要素には同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池発電装置1の概略構成図である。
図1に示すように、燃料電池発電装置1は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)からなる燃料電池モジュール10と、燃料電池モジュール10に空気(酸化性ガス)を供給する空気供給部(酸化性ガス供給部)11と、燃料電池モジュール10に燃料ガスを供給する燃料供給部12と、燃料ガスに修復粒子を供給する修復粒子供給部14と、燃料電池発電装置1の各部を制御する制御部15とを備える。
【0026】
空気供給部11は、燃料電池モジュール10の空気供給室108(
図1において不図示、
図2参照)へ向けて酸化性ガスとしての空気G1を供給する。空気供給部11と空気供給室108との間は、空気供給流路R1で接続されている。空気供給流路R1には、当該空気供給流路R1を流れる空気の流量を計測する空気流量計30が設けられている。空気供給部11は、酸化性ガスとしては、酸素を略15%以上30%以下含むガスであればよく、空気以外にも燃焼排ガスと空気との混合ガス及び酸素と空気との混合ガスなどを酸化性ガスとして燃料電池モジュール10に供給してもよい。
【0027】
燃料供給部12は、燃料電池モジュール10の燃料供給室106(
図1において不図示、
図2参照)へ向けて燃料ガスG
2を供給する
。燃料供給部12と燃料供給室106との間は、燃料供給流路R2で接続されている。液化天然ガス(LNG)、水素(H
2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)などの炭化水素ガス、石炭など炭素質原料のガス化設備により製造したガスを燃料ガスG
2として供給する。
【0028】
修復粒子供給部14は、燃料供給部12から燃料電池モジュール10に供給される燃料ガスG
2に修復粒子供給流路R4を介して修復粒子14aを供給する。この修復粒子14aは、重力沈下に比べ浮力の影響が大きくなり燃料ガスG
2に浮遊するために、粒子径の一般的な上限が、例えば、空気中の浮遊物質粒子径としてPM2.5である。また、修復粒子14aは、修復粒子14aの平均粒径が2.5μm以下のサブミクロン粒子で構成される。また、修復粒子14aの平均粒径の下限値は、例えば、1nm以上である。修復粒子14aは、燃料ガスG
2に同伴されて燃料電池モジュール10内に供給され、燃料電池モジュール10内で燃料電池セル110(
図1において不図示、
図2参照)に生じた損傷部(例えば、亀裂など)を修復する。
【0029】
修復粒子14aは、サブミクロン粒子が含まれるので凝集しやすく、燃料電池モジュール10内に供給される前に、予熱及び除電をして吸着水蒸気などを除去して搬送ガスに浮遊させた後に希釈することにより凝集を防ぐことができる。また、修復粒子14aは、気系流動化にて粒子間隙にガスを流通させて粒子に抗力を与え、粒子を無重力状態にして粒子全体をあたかも流体のように変化させて供給することによっても凝集を防ぐことが可能となる。
【0030】
修復粒子14aは、燃料電池モジュール10の修復動作時のインターコネクタ又は固体電解質の温度(例えば、800℃〜950℃)以上の温度で少なくとも一部がガス化する。これにより、修復粒子14aは、燃料電池セル110内でガス化して損傷部に到達し、燃料極側と空気極側との酸素分圧の差により固体として析出して損傷部に発生した亀裂などを塞ぐことが可能となる。そして、損傷部のガスリーク量が低減すると温度が低下し、溶融物は固体へと変化し、損傷部分の損傷低下及び修復が可能となる。なお、ここでの修復動作とは、詳細については後述する燃料電池モジュール10の発電時に行う修復動作だけでなく、燃料電池モジュール10の発電を停止したメンテナンス条件下で修復粒子14aを用いて実施する修復動作も含む。
【0031】
修復粒子14aとしては、燃料電池モジュール10の発電部105(
図1において不図示、
図2参照)の修復動作時のインターコネクタ又は固体電解質の温
度で少なくとも一部が液状又は気体となり、蒸気圧を有する物質を用いる。修復粒子14aとしては、典型金属元素及び遷移金属元素と典型非金属元素との化合物を用いることができる。修復粒子14aは、酸化雰囲気で酸化され、還元雰囲気では気体であった物が固体となる物質が好ましい。修復粒子14aとしては、例えば、NaCl及びZnCl
2などが挙げられる。また、修復粒子14aとしては、典型金属元素及び遷移金属元素と典型非金属元素との化合物を複数混合して共晶反応を利用することで、単独の化合物よりも融点を低下させたKCl−NaClの混合物などを用いることもできる。燃料電池モジュール10のセルスタックを構成する材料との反応性が低いものが好ましい。修復粒子14aとしては、例えば、炭酸ナトリウム(NaCO
3)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化亜鉛(ZnCl
2)、フッ化ナトリウム(NaF)及びケイ酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0032】
修復粒子14aの製造方法としては、固相法、液相法、及び気相法によって合成したものを粉砕してサブミクロン(数百nm)サイズの修復粒子14aを製造する製造方法が挙げられる。固相法では、修復粒子14aの合成後にボールミルなどにより修復粒子14aを粉砕することにより、サブミクロンサイズの修復粒子14aを得ることが可能となる。液相法では、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法及び水熱合成法などによりナノサイズの修復粒子14aを得ることが可能となる。また、気相法では、電気炉法、化学炎法、レーザー法及び熱プラズマ法などによりナノサイズの修復粒子14aを得ることが可能となる。これらの中でも、修復粒子14aは、製造コスト及び品質などの観点から、液相法により製造することが好ましい。また、修復粒子14aの平均粒径としては、1μm以下が好ましい。なお、本実施の形態においては、平均粒径とは、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準拠した測定方法で測定された平均粒子径(体積基準の積算分率における50%径)のものをいう。
【0033】
また、燃料電池発電装置1は、燃料電池モジュール10の電流の電圧を計測する電圧計40と、空気供給流路R1に設けられた第1温度センサ41及び第2温度センサ42と、燃料電池モジュール10の発電室105に設けられた第3温度センサ43と、燃料電池モジュール10の空気排出流路R5に設けられた酸素濃度計44と、燃料電池モジュール10の燃料ガス排出流路R6に設けられたガス濃度計45とを備える。
【0034】
電圧計40は、燃料電池モジュール10の発電によって得られた電流の電圧を計測している。第1温度センサ41は、空気供給流路R1に設けられている。第1温度センサ41は、空気供給流路R1を流れる空気の温度を計測する。第2温度センサ42は、空気供給流路R1に接続される燃焼用燃料ガス供給流路R3の合流部分の下流側に設けられている。第2温度センサ42は、空気供給流路R1の下流側で混合される空気及び燃焼用燃料ガスの温度を計測する。
【0035】
第3温度センサ43は、燃料電池モジュール10の発電室105の温度を計測する。酸素濃度計44は、燃料電池モジュール10から排出される空気中の酸素濃度を測定する。ガス濃度計45は、燃料電池モジュール10から排出される燃料ガスG
2中の燃料ガス濃度を測定する。
【0036】
制御部15には、叙述した空気流量計30、電圧計40、第1温度センサ41、第2温度センサ42、第3温度センサ43、酸素濃度計44及びガス濃度計45が接続されている。制御部15は、燃料電池モジュール10の起動運転時及び発電運転時に燃料電池発電装置の各部を制御する。また、制御部15は、制御弁33を介して修復粒子供給部14から燃料ガスG
2に供給される修復粒子14aの供給量を制御する。
【0037】
図2は、燃料電池モジュール10の概略構成図である。
図2に示すように、燃料電池モジュール10は、ケーシング101と、ケーシング101内に配置され、略円筒状に形成された複数のセルチューブ102と、セルチューブ102の上端部を支持する上管板103aと、セルチューブ102の下端部を支持する下管板103bと、これら上下管板103a,103bの間に配置された上断熱体104aおよび下断熱体104bとを備える。
【0038】
ケーシング101は、胴ケース101aと、胴ケース101aの両端に設けられた上ケース101b及び下ケース101cと、を備える。ケーシング101の内部収容空間には、セルチューブ102が収容されている。
【0039】
上管板103aは、ケーシング101の軸方向の一方(上側)に配置された板状の部材である。下管板103bは、ケーシング101の軸方向の他方(下側)に配置された板状の部材である。ケーシング101の上ケース101bと上管板103aとで区画された空間には、燃料供給室106が形成されている。ケーシング101の下ケース101cと下管板103bとで区画された空間には、燃料排出室107が形成されている。燃料供給室106には、セルチューブ102の一方の開口端が配置され、燃料排出室107には、セルチューブ102の他方の開口端が配置される。
【0040】
上断熱体104aは、ケーシング101の軸方向の一方(上側)に配置される。上断熱体104aは、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状に形成されている。下断熱体104bは、ケーシング101の軸方向の他方(下側)に配置される。下断熱体104bは、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成されている。各断熱体104a,104bには、セルチューブ102が挿通される孔111a,111bがそれぞれ形成されている。孔111a,111bは、直径がセルチューブ102の直径よりも大きく形成されている。上断熱体104a及び下断熱体104bに挟まれた空間には、発電室105が形成されている。また、下管板103bと下断熱体104bとの間には、空気供給室108が形成されており、上管板103aと上断熱体104aとの間には、空気排出室109が形成されている。セルチューブ102の燃料電池セル110は、発電室105内にのみ位置するように配置されている。
【0041】
図3は、セルチューブ102の断面模式図である。
図3に示すように、セルチューブ102は、筒形状をなす基体管102aと、基体管102aの外周面に設けられた発電素子となる燃料電池セル110とを備える。基体管102aは、多孔質となるセラミックス製の円筒管である。基体管102aの内部には、燃料ガスG
2が流れる。また、基体管102aは、多孔質となっているので、内部に流れる燃料ガスG
2を、基体管102aの外周面側に導いている。
【0042】
本実施の形態の燃料電池セル110は、燃料極111と、固体電解質112と、インターコネクタ114と、空気極113とが積層されて構成される。固体電解質112の一方の面側には、燃料極111が設けられている。固体電解質112の他方の面側には、空気極113が設けられている。燃料極111は、基体管102aの外周面に接している。空気極113には、活性金属が含まれている。空気極113は、含有する活性金属により燃焼反応に寄与する機能(触媒作用による燃焼)を有する。
【0043】
また、燃料電池セル110は、基体管102aの軸方向に沿って所定の間隔を空けて複数配置されている。複数の燃料電池セル110は、隣接する一方の燃料電池セル110の燃料極111と、隣接する他方の燃料電池セル110の空気極113とが、インターコネクタ114により接続されている。このように構成された燃料電池セル110は、燃料電池発電装置1の発電運転時において、例えば800℃から950℃の高温下で発電を行う。
【0044】
基体管102aは、セラミックス製の円筒であり、内部改質能を有する鉄属金属(例えば、Ni)及び鉄属金属酸化物(例えば、NiO)、並びに、これらの合金及び合金酸化物を含有する。基体管102aは、例えば、NiとCSZとの混合物(カルシア安定化ジルコニア−CaO安定化ZrO
2)である。また、基体管102aは、内周面によって燃料通路を形成する。基体管102aは、多孔質材料で構成され、燃料通路を流れる燃料ガスを燃料極111へ通過させる。基体管102aは、混合物の粒子径を調整したり、ポアー材を混合させることにより多孔質とすることができる。
【0045】
燃料極111は、例えば、Ni及びYSZ(イットリウム安定化ジルコニア−Y
2O
3安定化ZrO
2)の混合物により構成される。燃料極111は、導電性を有すると共に、多孔質材である。燃料極111の基体管102aとは反対側の面には固体電解質112が積層され、基体管102aの軸方向において隣り合う他方の燃料極111との間まで存在するように形成されている。燃料極111は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni−YSZが用いられる。燃料極111は、燃料極111の成分であるNiが燃料ガスG
2に対して触媒作用を有する。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスG
2、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極111は、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質112を介して供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質112との界面付近において電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するものである。燃料電池セル110は、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0046】
固体電解質112は、例えば、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア−Y
2O
3安定化ZrO
2)により構成される。燃料極ガスと空気極ガスの接触を避けるために緻密質とする。固体電解質112は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するYSZが主として用いられる。この固体電解質112は、空気極113で生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極111に移動させるものである。
【0047】
空気極113は、例えば、LaMnO
3系材料、LaFeO
3系材料及びLaCoO
3系材料などの少なくとも一種の多孔質の導電性セラミックスで構成される。空気極113は、固体電解質112との界面付近において、供給される酸化性ガスとしての空気G
1中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成するものである。また、この空気極113は、燃焼反応に寄与する機能(触媒作用による燃焼)を有している。空気極113に燃料ガスG
2が供給されると、燃料ガスG
2は、空気極113において触媒燃焼する。空気極113は、発電機能を有する触媒であると共に、酸化反応を含む燃焼機能を有する触媒でもある。
【0048】
インターコネクタ114は、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、ガスの漏出を防止するために緻密質となっている。インターコネクタ114は、燃料ガスG2と空気G
1とが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ114は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。インターコネクタ114は、隣り合う燃料電池セル110において、一方の燃料電池セル110の空気極113と他方の燃料電池セル110の燃料極111とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル110同士を直列に接続するものである。
【0049】
セルチューブ102を構成するために、基体管102aの軸方向にて隣り合う燃料電池セル110において、一方の燃料電池セル110の燃料極111と、他方の燃料電池セル110の空気極113とが、インターコネクタ114により接続されている。また、燃料極111はその一部が固体電解質112で被覆され、また一部がインターコネクタ114により被覆されている。また、セルチューブ102は、基体管102aの外面に、燃料極111、固体電解質112、インターコネクタ114、空気極113を積層して焼結する。
【0050】
ここで、燃料電池モジュール10の全体動作について説明する。燃料電池モジュール10は、燃料電池セル110を所定の温度まで上昇させる起動運転を行った後、燃料電池セル110で発電を行う発電運転を行う。燃料電池モジュール10が発電運転を行うと、燃料電池モジュール10の空気供給室108には空気G
1が流入する。この空気G
1は下断熱体104bの孔111bとセルチューブ102との隙間を介して発電室105内に供給される。一方、燃料供給室106には燃料ガスG
2が流入する。この燃料ガスG
2はセルチューブ102の基体管102aの内部を介して発電室105内に供給される。ここでは、空気G
1と燃料ガスG
2とは、セルチューブ102の内周面及び外周面において互いに逆向きに流れている。
【0051】
基体管102aの内部を流れる燃料ガスG
2は、基体管102aの細孔を通過して燃料極111に達する。この燃料ガスG
2は、燃料極111に含まれる活性金属により水蒸気改質される。水蒸気改質により生成された水素は、燃料極111の細孔を通過して固体電解質112まで到達する。一方、空気G
1は、基体管102a(空気極113)の外側を流れる。空気中の酸素は、空気極113の細孔を通過する途中または固体電解質112まで到達してイオン化する。イオン化した酸素は固体電解質112を通過し、燃料極111に到達する。固体電解質112を通過した酸素イオンは燃料ガスG
2と反応する。このような電池反応により生じる電位差によって、燃料電池モジュール10は発電を行う。
【0052】
そして、発電室105において、発電に利用され高温となった燃料ガスG
2は、空気供給室108において、発電に利用される前の空気G
1と熱交換される。また、発電室105において、発電に利用され高温となった空気G
1は、空気排出室109において、発電に利用される前の燃料ガスG
2と熱交換される。
【0053】
そして、発電に利用された後の燃料ガスG
2及び空気G
1が熱交換により冷却された後、燃料ガスG
2は、燃料排出室107に流入して燃料排出室107から燃料電池モジュール10の外部に排出される。空気G
1は、空気排出室109から燃料電池モジュール10の外部に排出される。
【0054】
次に、本実施の形態に係る燃料電池発電装置1における燃料電池セル110の修復動作について説明する。
図4は、本実施の形態に係るセルチューブ102の断面模式図である。
【0055】
図4に示すように、燃料電池発電装置1の運転時には、基体管102aの内部に燃料ガスG
2が供給されて残留燃料ガスと水が発生すると共に、基体管102aの外部を空気G
1が流れる。ここで、燃料電池セル110の緻密膜である固体電解質112と、インターコネクタ114にピンホールなどの欠陥部がある場合、欠陥部から空気G
1に含まれる酸素が燃料極111と空気極113との差圧によるリーク及び燃料極111と空気極113の酸素濃度差による拡散によって燃料極111へ侵入し、燃料極111のニッケル(Ni)が酸化して酸化ニッケル(NiO)となり、燃料極111の一部の領域が体積膨張する場合がある。この場合には、燃料極111の他の領域に圧縮応力が発生して電解質112、インターコネクタ114及び基体管102aの内面に引張り応力が発生し、発生した引張り応力が破壊応力を上回ると亀裂などが発生して損傷部Xが生じる場合がある。
【0056】
本実施の形態においては、基体管102aの内部を流れる燃料ガスG
2中に修復粒子14aが同伴されて燃料電池セル110に供給される。供給された修復粒子14aは、修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112の温度 (例えば、800℃〜950℃)以上で少なくとも一部がガス化する。そして、ガス化した修復粒子14aは、多孔質なセラミックスなどにより構成された基体管102aを透過して燃料電池セル102の損傷部Xに到達する。さらに、損傷部Xは、空気極113側から燃料極111と空気極113との差圧による酸素リーク及び燃料極111と空気極113との酸素濃度差による酸素拡散により、還元雰囲気である燃料極111側と比較して、燃料側の酸素分圧が高い状態であり、損傷部Xに到達した修復粒子14aのガス化した修復粒子成分は、損傷部Xの酸素分圧下で酸化され固体として析出する。これにより、空気極113側から燃料極111側への酸素リーク経路である損傷部Xが析出した固体で少なくとも一部は塞ぐことができ、酸素リーク量が低減する。
【0057】
次に、
図5A及び
図5Bを参照して、本実施の形態に係る燃料電池の運転方法について詳細に説明する。
図5Aは、本実施の形態に係る燃料電池の運転方法の一例を示すフロー図である。
図5Aに示すように、まず、制御部15は、燃料電池発電装置1の通常運転後(ステップST10)、第3温度センサ43による燃料電池モジュール10の温度上昇(例えば、25℃)、ガス濃度計45による燃料電池モジュール10から排出される燃料ガス中の燃料ガス濃度、電圧計40による燃料電池モジュール10の電圧低下及び酸素濃度計44による燃料電池モジュール10から排出される空気中の酸素濃度の各種測定値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップST11)。そして、制御部15は、各種測定値が所定の閾値以下である場合(ステップST11:Yes)には、燃料電池モジュール10の通常運転を継続する。また、制御部15は、各種測定値が所定の閾値を超えた場合(ステップST11:No)には、修復粒子供給部14より燃料電池モジュール10への修復粒子14aの供給を開始する(ステップST12)。これにより、燃料電池モジュール10は、
図4に示したように修復粒子14aがガス化して損傷部Xに到達して析出するので、損傷部Xの亀裂などを修復することが可能となる。修復に寄与しなかった修復粒子14aは、燃料電池セル110以外の低温部で析出するので、燃料出口の配管にフィルターを設置し回収、又は冷却トラップにて気相からの凝縮を促進させて回収する。
【0058】
そして、制御部15は、再び測定した各種測定値が所定の閾値以下であるか否かを判定し、各種測定値が所定の閾値以下である場合(ステップST13:Yes)には、修復粒子供給部14からの修復粒子14aの供給を停止して燃料電池モジュール10の通常運転を継続する(ステップST14)。ここでは、制御部15は、修復粒子の供給終了後に通電せずに燃料ガスG
2のみを所定時間流してもよい。これにより、燃料電池モジュール10内に残存する修復粒子14aを排出できるので、燃料電池モジュール10を清浄にすることが可能となる。また、制御部15は、再び測定した各種測定値が所定の閾値を超えた場合(ステップST13:No)には、修復粒子供給部14からの修復粒子14aの供給を継続して燃料電池モジュール10を運転する(ステップST12)。
【0059】
図5Bは、本実施の形態に係る燃料電池の運転方法の他の例を示すフロー図である。
図5Bに示す例では、制御部15は、第3温度センサ43、ガス濃度計45、電圧計40及び酸素濃度計44による各種測定値が所定の閾値を超えた場合(ステップST11:No)には、燃料電池モジュール10への空気G
1及び燃料ガスG
2の供給を停止して燃料電池モジュール10の発電を停止させる(ステップST15)。これにより、インターコネクタ114及び固体電解質112などの亀裂などの損傷部Xが大きい場合であっても、燃料電池モジュール10の過剰な温度上昇を防ぐことができるので、修復粒子14aによる自己の損傷低下及び修復を効率良く実施することが可能となる。損傷部Xの修復動作後、制御部15は
、燃料電池モジュール10への空気G
1及び燃料ガスG
2の供給を再開して発電を開始した後(ステップST16)、燃料電池モジュール10を通常運転する。
【0060】
図5Cは、本実施の形態に係る燃料電池の運転方法の別の例を示すフロー図である。
図5Cに示す例では、まず、制御部15は、運転開始前から燃料電池モジュール10に修復粒子供給部14から修復粒子14aの供給を開始する(ステップST21)。次に、制御部15は、修復粒子供給部14から燃料電池モジュール10への修復粒子14aの供給を継続した状態で燃料電池モジュール10を通常運転を開始する(ステップST22)。続いて、制御部15は、第3温度センサ43による燃料電池モジュール10の温度上昇(例えば、25℃)、ガス濃度計45による燃料電池モジュール10から排出される燃料ガス中の燃料ガス濃度、電圧計40による燃料電池モジュール10の電圧低下及び酸素濃度計44による燃料電池モジュール10から排出される空気中の酸素濃度の各種測定値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップST23)。そして、制御部15は、各種測定値が所定の閾値を超えた場合(ステップST23:No)には、修復粒子供給部14より燃料電池モジュール10への修復粒子14aの供給量を増加させる(ステップST24)。これにより、燃料電池モジュール10は、
図4に示したように修復粒子14aがガス化して損傷部Xに到達して析出するので、損傷部Xの亀裂などを修復することが可能となる。修復に寄与しなかった修復粒子14aは、燃料電池セル110以外の低温部で析出するので、燃料出口の配管にフィルターを設置し回収、又は冷却トラップにて気相からの凝縮を促進させて回収する。また、制御部15は、各種測定値が所定の閾値以下である場合(ステップST23:Yes)には、修復粒子供給部14からの修復粒子14aの供給量を減少させて燃料電池モジュール10の通常運転を継続する(ステップST25)。これにより、燃料電池の運転方法は、燃料電池モジュール10のインターコネクタ114及び固体電解質112などに常時修復粒子14aを供給することができるので、損傷部Xの発生を効率良く防ぐことが可能となる。
【0061】
図5Dは、本実施の形態に係る燃料電池の運転方法の別の例を示すフロー図である。
図5Dに示す例では、まず、制御部15は、運転開始前から燃料電池モジュール10に修復粒子供給部14から修復粒子14aの供給を開始する(ステップST31)。次に、制御部15は、修復粒子供給部14から燃料電池モジュール10に修復粒子14aを供給した状態で燃料電池モジュール10を通常運転する(ステップST32)。次に、制御部15は、第3温度センサ43、ガス濃度計45、電圧計40及び酸素濃度計44による各種測定値が所定の閾値を超えた場合(ステップST33:No)には、燃料電池モジュール10への空気G
1及び燃料ガスG
2の供給を停止して燃料電池モジュール10の発電を停止させる(ステップST34)。これにより、インターコネクタ114及び固体電解質112などの亀裂などの損傷部Xが大きい場合であっても、燃料電池モジュール10の過剰な温度上昇を防ぐことができるので、修復粒子14aによる自己の損傷低下及び修復を効率良く実施することが可能となる。
【0062】
次に、制御部15は、燃料電池モジュール10の発電を停止した状態で燃料電池モジュール10への修復粒子14aの供給を継続する(ステップST35)。ここでは、制御部15は、インターコネクタ114及び固体電解質112などの亀裂などの損傷部Xが大きい場合には、詳細については後述する第2の実施の形態に係る燃料電池モジュール10の修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112(例えば、800℃〜950℃)に対して高い温度で少なくとも一部が溶融する修復粒子14aを用いてもよい。これにより、性状が異なる2種類の修復粒子14aを併用することができるので、損傷部Xを効率良く修復することが可能となる。次に、制御部15は、第3温度センサ43による燃料電池モジュール10の温度上昇(例えば、25℃)、ガス濃度計45による燃料電池モジュール10から排出される燃料ガス中の燃料ガス濃度、電圧計40による燃料電池モジュール10の電圧低下及び酸素濃度計44による燃料電池モジュール10から排出される空気中の酸素濃度の各種測定値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップST36)。そして、制御部15は、各種測定値が所定の閾値を超えた場合(ステップST36:No)には、修復粒子供給部14より燃料電池モジュール10への修復粒子14aの供給を継続する(ステップST34)。また、制御部15は、各種測定値が所定の閾値以下である場合(ステップST36:Yes)には、燃料電池モジュール10への修復粒子14aの供給を停止して修復動作を終了する(ステップST37)。続いて、制御部15は、損傷部Xの修復動作後、制御部15は
、燃料電池モジュール10への空気G
1及び燃料ガスG
2の供給を再開して発電を開始した後(ステップST38)、燃料電池モジュール10を通常運転する。これにより、燃料電池の運転方法は、燃料電池モジュール10の通常運転開始前から燃料電池モジュール10の修復動作完了後まで、燃料電池モジュール10のインターコネクタ114及び固体電解質112などに常時修復粒子14aを供給することができるので、損傷部
Xの発生を効率良く防ぐことが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、燃料電池モジュール
110の燃料電池セル10に亀裂が生じた場合であっても、燃料ガスG
2に供給された修復粒子14aが燃料ガスG
2と共に燃料電池セル110に供給されるので、燃料電池セル110に生じた亀裂などの損傷部Xを修復することができる。これにより、燃料電池セル110に亀裂が生じて損傷した場合であっても、自己で損傷部Xの損傷低下又は修復が可能な燃料電池発電装置1を実現できる。
【0064】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。
【0065】
図6は、本実施の形態に係るセルチューブ102の断面模式図である。
図6に示すように、本実施の形態においては、修復粒子14aとしては、燃料電池モジュール10の修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112(例えば、800℃〜950℃)に対して高い温度で少なくとも一部が溶融する修復粒子14aを用いる。これにより、基体管102aに亀裂部102axが生じた場合であっても、ガスリークによって温度上昇した燃料極111の損傷部Xの近傍で修復粒子14aが溶融し、溶融した修復粒子14aが基体管102aの亀裂部102axから燃料極111に向けて浸入して損傷部Xに到達する。これにより、溶融した修復粒子14aが、例えば、表面張力あるいは燃料と空気側の差圧によるガス圧力により損傷部Xからのガスリークの抵抗となるので、ガスリーク量が徐々に低減される。そして、ガスリーク量の低減に伴って損傷部Xの近傍の温度が低下するので、修復粒子14aの溶融物が固化して損傷部Xを完全に塞ぐことが可能となる。
【0066】
本実施の形態では、修復粒子14aとしては、燃料電池モジュール10の発電部の修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112の温度で少なくとも一部が溶融する典型金属元素及び遷移金属元素と典型非金属元素との化合物が好ましい。修復粒子14aとしては、例えば、融点が1000℃程度のケイ化カルシウム(CaSi
2)及びフッ化ナトリウム(NaF)などが挙げられる。また、典型金属元素及び遷移金属元素と典型非金属元素との化合物を複数混合して共晶反応させることにより、単独の化合物よりも融点を低下させた混合物であるSrO−ZnO−P
2O
5、PbO−CrO
3−WO
3などを用いることもできる。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、燃料電池モジュール10の修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112より高い溶融温度を有する修復粒子14aを用いるので、ガスリークによって温度が上昇した燃料電池セル110の損傷部Xの近傍で修復粒子14aが溶融して損傷部Xに到達する。これにより、損傷部Xを塞ぐことが可能となるので、自己で効率良く損傷部Xの損傷低下及び修復が可能となる。
【0068】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。
【0069】
図7は、本実施の形態に係るセルチューブ102の断面模式図である。
図7に示すように、本実施の形態においては、基体管102aの内壁に修復粒子14aを予め塗布して修復粒子14aを含む修復粒子層(修復粒子供給部)140を設ける。これにより、
図8に示すように、基体管102aの内壁に亀裂部102axが生じると共に燃料電池セル110に損傷部Xが発生した場合には、修復粒子層140内の修復粒子14aが亀裂部102axを介して損傷部Xに侵入するので、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に損傷部Xを修復することが可能となる。修復粒子層140としては、造孔材などを含有して気体を透過するものが好ましい。また、修復粒子層140としては、燃料電池モジュール10の運転温度で溶融せず、修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112の温度で溶融又はガス化するものが好ましい。さらに、修復粒子層140としては、線膨張率(熱膨張率)がセルスタックの線膨張率と近いものが好ましい。
【0070】
本実施の形態においては、修復粒子14aとしては、上述した第2の実施の形態と同様のものを用いることができる。また、修復粒子14aとしては、修復動作時のインターコネクタ114又は固体電解質112の温度で少なくとも一部が液状又は気体となって蒸気圧が有する物質を用いてもよい。このような物質としては、例えば、典型金属元素及び遷移金属元素と典型非金属元素との化合物であって、酸化雰囲気で酸化され、還元雰囲気では気体であった物が固体となるフッ化ナトリウム(NaF)などの物質が挙げられる。また、上記の典型金属元素及び遷移金属元素と典型非金属元素の化合物を複数混合して共晶反応により単独の化合物よりも融点を低下させたものを用いてもよい。
【0071】
修復粒子層140の製造方法としては、修復粒子14aに気孔を形成するための造孔材と、精製水及び分散材とを混合して混練機により混練してスラリー化する。そして、得られたスラリーを空気極焼成後のセルスタック又は還元工程後のセルスタックの基体管102aの内部にディッピングなどによって塗布することにより修復粒子層140を設けることができる。造孔材としては、例えば、アクリル粒子及びスチレン粒子が挙げられる。また、分散材としては、セラミックス用分散材(商品名:ポイズ532A、花王社製)などを用いることができる。また、修復粒子14aのスラリーの塗布時の膜厚は、スラリーの粘度、降伏値及び表面張力などにより適宜制御することができる。
【0072】
このように、本実施の形態によれば、基体管102aの内面に予め設けた修復粒子層140から燃料電池セル110に生じた損傷部Xに修復粒子14aが供給されるので、燃料電池セル110に損傷部Xが生じた場合であっても、自己で損傷部Xを修復することが可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態では、セルチューブ102内に設けた修復粒子層140から修復粒子14aを供給するだけでなく、
図9及び
図10に示すように、上述した実施の形態1及び実施の形態2の場合と同様に、必要に応じて修復粒子供給部14から燃料ガスに修復粒子14aを供給してもよい。これにより、修復粒子層140から供給される修復粒子14aの供給量の不足により損傷部Xの損層低下が不十分となった場合であっても、燃料ガスと共に修復粒子供給部14から供給される修復粒子14aにより自己によりインターコネクタ114及び固体電解質112の損傷部Xの損傷低下及び修復が可能となる。また、修復粒子層140内に予め設ける修復粒子14aとは異なる種類の修復粒子14aを供給することも可能となるので、修復粒子層140内の修復粒子14aでは十分に修復できない損傷部Xを効率良く修復することも可能となる。
【0074】
なお、上述した各実施の形態では、燃料電池セル110の基体が円筒の基体管102aである例について説明したが、基体としては、円筒型の基体管102aだけでなく、平板型の基体管、及び扁平円筒型基体管などの各種形状の基体を用いることができる。また、インターコネクタ114は、直列接続に接続されていてもよく、並列に接続されていてもよい。
【0075】
また、上述した各実施の形態では、燃料電池モジュール10の燃料電池セル110が基体上に設けられた例について説明したが、燃料電池モジュール10は、燃料電池セル110が必ずしも基体の上に設けられたものである必要はなく、燃料極111、固体電解質112及び空気極113が順次積層された燃料電池セル110が隣接して複数配置されてなるものであればよい。