特許第6376991号(P6376991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376991
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20180813BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20180813BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H04N7/18 J
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-36036(P2015-36036)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-158188(P2016-158188A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩紀
【審査官】 鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−172994(JP,A)
【文献】 特開2013−083675(JP,A)
【文献】 特開2005−075190(JP,A)
【文献】 特開平11−119147(JP,A)
【文献】 特開2010−130673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の画像を投影する第1の投影手段と、
接近車両の画像を投影する第2の投影手段と、
自車への後方からの接近車両を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された接近車両までの距離を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された距離に基づき前記第2の投影手段により投影される接近車両の画像の大きさを決定する焦点距離を制御する制御手段と、
を有する表示システム。
【請求項2】
第1の投影手段は、焦点距離が固定であり、第2の投影手段は、焦点距離が可変である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記自車の画像の大きさは一定であり、前記自車の画像に隣接して前記接近車両の画像が動的に変化する、請求項1または2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記自車の画像は、予め用意された後方から俯瞰した画像であり、前記接近車両の画像は、予め用意された後方から俯瞰した画像であり、前記接近車両までの距離が短くなるにつれて接近車両の画像が小さく、前記接近車両までの距離が大きくなるにつれて接近車両の画像が大きくなるように、第2の投影手段の焦点距離が制御される、請求項1ないし3いずれか1つに記載の表示システム。
【請求項5】
前記制御手段はさらに、前記接近車両までの距離の変化に応じて、第2の投影手段の投影方向を変化させる、請求項1ないし4いずれか1つに記載の表示システム。
【請求項6】
前記自車の画像の位置は固定であり、前記接近車両の画像の位置が動的に変化する、請求項1ないし5いずれか1つに記載の表示システム。
【請求項7】
前記第1および第2の投影手段は、車両のフロントガラス上に、前記自車の画像および前記接近車両の画像をそれぞれ投影する、請求項1ないし6いずれか1つに記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された表示システムに関し、特に、車両のフロントガラス等に接近車両等の画像を投影する表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転中の視線移動を減らす投影システムとして、ヘッドアップディスプレイ(以下、HUDと略す)が知られている。HUDは、車内に設置された画像投影装置からの画像をフロントウィンドに備え付けられたスクリーンに結像させ、スクリーン越しに見える現実空間にあたかも物体が存在するかのような虚像が生成する投影システムである。運転者は、スクリーン越しに見える虚像を見ることができるため、車内の液晶ディスプレイ等に視線を移す回数を減らすことができる。
【0003】
特許文献1は、後方車両までの距離を算出し、当該算出された距離の情報を投影する警告を開示している。特許文献2は、可動機構を用いずに、運転者の目の位置等に応じて、投影される虚像の位置を変化させることができる車両表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−194997号公報
【特許文献2】特開2004−168230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来の表示システムの概要を示す図である。自車の後方から接近する車両が検知されると、投影部1から警告画像が出力され、フロントガラス2またはそこに備え付けられた透明なスクリーン(以下、このような画像が投影される領域をスクリーンと略す)2Aに警告画像が投影され、運転者は、スクリーン2に表示された虚像を捉えることにより、接近車両を認識する。
【0006】
しかしながら、スクリーン上に投影された警告画像の大きさや位置が固定であると、運転者は、接近車両がどの程度接近しているのか直感的に認識し難い。特許文献2のように、障害物との距離を表示することも可能であるが、実際にサイドミラーにより接近車両を視認しなければ、接近車両との距離を直感的に把握しづらく、そうすると、運転者の視線の移動回数の低減を図ることができない。さらに、撮像カメラにより撮像された接近車両の画像データを投影することで接近車両の遠近感を生じさせることも可能であるが、この場合には、撮像された画像データをリアルタイムに処理しなければならず、非常に高機能、高コストな表示システムとなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、投影された接近車両の画像から接近車両の距離を直感的に認識することができる認識することができる表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示システムは、自車の画像を投影する第1の投影手段と、接近車両の画像を投影する第2の投影手段と、自車への後方からの接近車両を検知する検知手段と、前記検知手段により検知された接近車両までの距離を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された距離に基づき前記第2の投影手段により投影される接近車両の画像の大きさを決定する焦点距離を制御する制御手段と、を有する。
【0009】
好ましくは第1の投影手段は、焦点距離が固定であり、第2の投影手段は、焦点距離が可変である。好ましくは前記自車の画像の大きさは一定であり、前記自車の画像に隣接して前記接近車両の画像が動的に変化する。好ましくは前記自車の画像は、予め用意された後方から俯瞰した画像であり、前記接近車両の画像は、予め用意された後方から俯瞰した画像であり、前記接近車両までの距離が短くなるにつれて接近車両の画像が小さく、前記接近車両までの距離が大きくなるにつれて接近車両の画像が大きくなるように、第2の投影手段の焦点距離が制御される。好ましくは前記制御手段はさらに、前記接近車両までの距離の変化に応じて、第2の投影手段の投影方向を変化させる。好ましくは前記自車の画像の位置は固定であり、前記接近車両の画像の位置が動的に変化する。好ましくは前記第1および第2の投影手段は、車両のフロントガラス上に、前記自車の画像および前記接近車両の画像をそれぞれ投影する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接近車両までの算出された距離に応じて第2の撮像手段により投影される接近車両の画像の大きさを決定する焦点距離を制御するようにしたので、ユーザーは、投影された接近車両の画像の大きさから接近車両の距離を直感的に認識することができる。その結果、ユーザーは、接近車両の距離を確認するためのサイドミラーへの視点の移動回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の表示システムの警告画像の表示例を説明する図である。
図2】本発明の実施例に係る投影システムの構成例を示す図である。
図3図3は、第2の投影装置の構成例を示す図である
図4】本発明の実施例に係る第1および第2の投影装置の設置例を示す図である。
図5】本発明の実施例に係る投影制御プログラムの機能的な構成例を示す図である。
図6】接近車両の算出距離と、第2の投影装置の投射光学系の焦点距離および投射角度の関係を規定したテーブルである。
図7】本発明の実施例に係る投影システムの動作を示すフロー図である。
図8】本発明の実施例に係る投影システムの具体的な表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態の表示システムは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)に代表されるような投影システムを有する。HUDは、車両のフロントガラス等に画像を投射し、実空間に重畳された画像を運転者に見せることができる。
【実施例】
【0013】
図2は、本発明の実施例に係る投影システムの構成例を示す図である。図2に示す投影システム10は、撮像部100、障害物検知部110、記憶部120、画像処理部130、第1の投影装置140、第2の投影装置150、制御部160を含んで構成される。但し、この構成は一例であり、他の構成、例えば、ユーザー入力手段などを包含することも可能である。
【0014】
撮像部100は、少なくとも自車両の左右側方ないし後方を撮像する撮像カメラを含む。撮像部100は、自車の後方から接近する接近車両を撮像し、撮像された接近車両の画像データを制御部160に提供する。この画像データは、例えば、接近車両の検知、あるいは接近車両の距離の算出に利用することができる。
【0015】
障害物検知部110は、ミリ波レーザーなどにより電波を発し、障害物で反射された電波を受け取り、これを制御部160に提供する。障害物検知部110の検知結果は、接近車両の有無の判定や、自車と接近車両との間の距離の算出に利用することができる。
【0016】
記憶部120は、制御部160で実行可能なプログラムや、後述する第1の投影装置140、第2の投影装置150で投影する画像データ等を記憶することができる。好ましい例では、第1の投影装置140により投影される画像データは、自車を識別するためのものであり、例えば、自車を後方から俯瞰する画像データ、あるいはその他の自車を象徴的に表す画像データであることができる。また、第2の投影装置150により投影される画像データは、接近車両を識別するためのものであり、例えば、接近車両を後方から俯瞰する画像データ、あるいはその他の接近車両を象徴的に表す画像データであることができる。
【0017】
画像処理部130は、第1および第2の投影装置140、150により投影される画像データを読出し、これを第1および第2の投影装置140、150へ提供する。さらに画像処理部130は、ユーザー入力、あるいは制御部160からの指示により、第1および第2の投影装置140、150により投影される画像データを加工することも可能である。
【0018】
第1の投影装置140は、光源と、画像データに基づき光源からの光を変調する光変調手段と、光変調手段により変調された光を投影する投影部とを備えている。投影部は、例えば、レンズ、またはプリズム等の光学部材を含み、光変調手段により変調された光を、車内のフロントガラス等のスクリーン上に投影する。第1の投影装置の投影部は、固定焦点距離を有し、スクリーン上の決められた位置に一定サイズの自車の画像を投影する。
【0019】
第2の投影装置150は、光源と、画像データに基づき光源からの光を変調する光変調手段と、光変調手段により変調された光を投影する投影部とを備えている。投影部は、例えば、レンズ、またはプリズム等の光学部材を含み、変調手段により変調された光を、車内のフロントガラス等のスクリーン上に投影する。第2の投影装置の投影部は、可変焦点距離を有し、スクリーン上に異なるサイズの接近車両の画像を投影することができる。
【0020】
図3は、第2の投影装置150の概略構成を示すブロック図である。第2の投影装置150は、光源170、光学系172、光変調手段174、投射光学系176、アクチュエータ178を含む。光源170は、ハロゲンランプ、発光ダイオードアレイ、あるいはレーザーダイオードアレイなどから構成される。光学系172は、光源170からの光を集束し、所定のアスペクト比の光を光変調手段174へ提供する。光変調手段174は、例えば、液晶デバイス、あるいは複数の可変ミラーが2次元的に配置されたディジタルミラーデバイスなどから構成される。光変調手段174は、画像データに基づき、液晶デバイスまたはディジタルミラーデバイスを駆動し、光学系172から入射された光を空間的に変調する。第2の投影装置150は、接近車両の画像を投影するので、接近車両の画像データに基づき光を変調する。投射光学系176は、光変調手段174によって変調された光を投射し、これをスクリーン上に結像させる。
【0021】
アクチュエータ178は、投射光学系176の焦点距離等を可変するための駆動機構(例えば、モータなど)を含む。アクチュエータ178は、制御部160からの制御信号S1に基づき投射光学系176の焦点距離を可変する。投射光学系176からスクリーンまでの距離Lは固定であるが、アクチュエータ178は、投射光学系176に含まれるレンズの位置あるいはプリズムの位置等を移動させることで光学的距離を調整し、投射光学系176の焦点距離を可変する。これにより、スクリーン上に投影される接近車両の画像の大きさを変化させることができる。一方、第1の投影装置140は、第2の投影装置150と同様の構成を有するが、投射光学系の焦点距離が固定であるため、アクチュエータ176を備えていない。
【0022】
さらに好ましい態様では、アクチュエータ178は、制御部160からの制御信号S2に基づき投射光学系176の投射方向を可変することができる。例えば、投射光学系176の光軸を傾けることで、投射方向、つまりスクリーン上に表示される画像の位置を変えることができる。
【0023】
図4は、第1の投影装置140および第2の投影装置150の設置例を示す図である。
第1の投影装置140の投射光学系176A、および第2の投影装置150の投射光学系176は、運転者の前方にあるダッシュボード内に設置され、第1の投影装置140によって自車の画像がフロントガラス180のスクリーン182上に投影され、第2の投影装置150によって接近車両の画像がスクリーン184上に投影される。なお、スクリーン182および184は、便宜上、別々に示しているが、スクリーン182、184は同一のスクリーンであってもよい。
【0024】
制御部160は、マイクロプロセッサやマイクロコントローラを含み、ROM/RAMあるいは記憶部120に記憶されたプログラム等を実行することにより各部を制御する。さらに本実施例では、制御部160は、接近車両の検知に基づき、第1の投影装置140および第2の投影装置150の投影を制御する投影制御プログラム200を実行することができる。
【0025】
図5は、投影制御プログラムの機能的な構成例を示す図である。投影制御プログラム200は、接近車両判定部210、距離算出部220、投影制御部230を含んで構成される。接近車両判定部210は、撮像部100からの撮像データおよび/または障害物検知部110による後方の接近車両の検知情報に基づき、自車後方の接近車両の有無を判定する。距離算出部220は、接近車両判定部210によって接近車両があると判定されたとき、接近車両までの距離を計測する。距離の計測方法は、特に問わないが、撮像部100の撮像データ(この場合、左右の2つの方向された撮像された画像データを用いる)から算出したり、障害物検知部110の検知結果から算出する。好ましい例では、距離算出部220は、一定の時間間隔で距離を算出し、接近車両の動的な変化を算出する。
【0026】
投影制御部230は、接近車両判定部210によって接近車両があると判定され、距離算出部220によって接近車両の距離が算出されると、これらの情報に基づき第1および第2の投影装置140、150を制御する。投影制御部230は、第1の投影装置140に自車の画像をスクリーン182上に投影させ、かつ第2の投影装置150に接近車両の画像をスクリーン184上に投影させる。
【0027】
さらに投影制御部230は、距離算出部220によって算出された距離に基づき第2の投影装置150の投射光学系176の焦点距離を可変するための制御信号S1をアクチュエータ178に出力する。アクチュエータ178は、制御信号S1に基づき、投射光学系176の焦点距離を調整し、算出距離に応じた大きさの接近車両を表示させる。なお、距離算出部220によって算出される距離は、接近車両の移動に応じて刻々と変化し、この変化に応じて、投射光学系176の焦点距離も刻々と変化される。
【0028】
さらに投影制御部230は、距離算出部220によって算出された距離に基づき第2の投影装置150の投射光学系176の投射方向を可変するための制御信号S2をアクチュエータ178に出力する。アクチュエータ178は、制御信号S2に基づき、投射光学系176の投射方向を調整し、算出距離に応じた位置に接近車両を表示させる。なお、距離算出部220によって算出される距離は、接近車両の移動に応じて刻々と変化し、この変化に応じて、投射光学系176の投射方向も刻々と変化される。
【0029】
図6は、接近車両までの距離と、焦点距離および投射角度の関係を規定したテーブルである。例えば、距離は、各々が一定の範囲を規定するように複数に分割され、各範囲に対応する焦点距離(f1、f2、f3・・・fn)および投射角度(α1、α2、α3、・・・αn)が規定される。投影制御部230は、当該テーブルを参照し、算出距離に該当する焦点距離を選択する制御信号S1を出力し、また該当する投射角度を選択する制御信号S2を出力し、投射光学系176の迅速な制御を実行する。他の態様では、投影制御部230は、予め決められた数式等に従い、算出された距離に応じた焦点距離や投影角度を演算により算出し、それに応じた制御信号S1、S2をアクチュエータ178に出力する。
【0030】
図7は、本実施例の投影システムの動作を示すフロー図である。自車の走行中、自車の後方の接近車両が撮像部100により撮像され、または障害物検知部110により検知されると、接近車両判定部210により接近車両があると判定される(S100)。このとき、接近車両判定部210は、接近車両が自車の左右のいずれの方向から接近しているのかを同時に判定することも可能である。
【0031】
接近車両の有が判定されると、距離算出部220により接近車両と自車との距離が算出されると(S102)、投影制御部230は、第1および第2の投影装置140、150に画像の投影を開始させる。第1の投影装置140は、記憶部120から読み出された自車の画像データに基づき変調された自車の画像をスクリーン182上に投影する。これにより、自車の画像が表示される(S104)。第1の投影装置140の投射光学系176Aは、固定された焦点距離であり、かつ投射角度が固定であるため、自車の画像は、固定された大きさで、かつ固定された位置に表示される。
【0032】
投影制御部230はさらに、算出された距離に基づき、投射光学系176の焦点距離および投影角度を選択し(S106)、その選択結果に基づき制御信号S1、S2をアクチュエータ178に出力する。これにより、アクチュエータ178は、投射光学系176の焦点距離および投射角度を調整する(S108)。第2の投影装置150は、記憶部120から読み出された接近車両の画像データに基づき変調された接近車両の画像をスクリーン184上に投影する。これにより、スクリーン184上には、算出距離に応じた大きさおよび投影位置に接近車両が表示される(S110)。
【0033】
投影制御部230は、接近車両までの算出距離の変化を監視し(S112)、算出距離に変化が生じた場合には、ステップS106からステップS110の処理が繰り返され、第2の投影装置150の投影が制御される。これにより、接近車両の画像の大きさおよび表示位置が動的に変化される。そして、接近車両判定部210により接近車両がなしと判定されると(S114)、第1および第2の投影装置140、150の投影が終了される。
【0034】
図8は、本実施例の表示システムの具体的な表示例である。同図に示すように、運転者の視点からは、第1の投影装置140の投射光学系176Aから投射された自車の画像Mがスクリーン上に表示される。一方、第2の投影装置150の投射光学系176から投射された接近車両の画像Q1〜Q3が、自車の画像Mに隣接して表示される。接近車両の画像Q1は、時刻T1のときの虚像、接近車両の画像Q2は、時刻T2のときの虚像、接近車両Q3は、時刻T3のときの虚像を示している。
【0035】
時刻T1のとき、自車から接近車両までの算出距離L1は比較的大きく、それ故、接近車両の画像Q1は相対的に大きく、スクリーンの左下の位置に表示される。このとき、接近車両の画像Q1のサイズは比較的に大きい。次に、時刻T2のとき、接近車両が自車により接近し、算出距離L2は、算出距離L1よりも小さく、それ故、接近車両の画像Q2のサイズは、画像Q1よりも小さくなり、その表示位置は、スクリーンのほぼ中央に表示される。同時に、接近車両の画像Q2は、自車の画像Mよりも大きく表示される。次に、時刻T3のとき、接近車両がさらに自車に接近し、算出距離L3は、算出距離L2よりも小さく、それ故、接近車両の画像Q3のサイズは、Q2よりも大きくなり、その表示位置は、スクリーンの右上に表示される。このとき、接近車両の画像Q3は、自車の画像Mに等しく、接近車両が接近したことが直感的に認識される。
【0036】
自車の画像Mのサイズおよび表示位置が固定であるため、自車の画像Mと接近車両の画像Q1、Q2、Q3の関係により、直感的に接近車両の距離感を認識することができる。つまり、接近車両が徐々に近づいてくる場合は、接近車両の画像のサイズが徐々に小さくなり、反対に、接近車両が遠ざかる場合には、接近車両の画像のサイズが徐々に大きくなる。この接近車両の画像のサイズと位置の動的変化は、自車の画像と対比されるため、認識し易い。さらに、運転者は、フロントガラス越しに投影された自車の画像Mおよび接近車両の画像Q1、Q2、Q3を見ることができるため、サイドミラー等への視点移動の回数を低減することができる。
【0037】
上記実施例で示したように、接近車両との距離に応じて接近車両の画像のサイズおよび/または位置を変化させるようにしたので、接近車両の画像から接近車両のまでの距離を直感的に認識することができる。なお、上記の例では、算出距離が短くなるにつれ、接近車両の画像が小さくなるように表示されたが、自車および接近車両の後方の俯瞰画像を表示させない場合には、この大小関係は反対でもよい。
【0038】
上記実施例では、接近車両までの算出距離に応じて、投射光学系の焦点距離および投射方向の双方を制御する例を示したが、焦点距離または投射方向のいずれかを制御するようにしてもよい。さらに上記実施例では、第1の投影装置140は、自車の画像を表示する例を示したが、自車の画像に加えて他の警告画像、例えば、後方からの接近車両があることを示すマークやインジケータなどを一緒に表示してもよい。
【0039】
さらに上記実施例では、第2の投影装置150による接近車両の画像を、自車の画像の左側に表示する例を示したが、接近車両の画像は、自車の画像の右側に表示されてもよい。さらに接近車両の画像は、接近車両が実際に自車に接近する方向に応じて表示されるようにしてもよい。例えば、接近車両が自車の後方の左側車線から接近する場合には、接近車両の画像を、自車の画像の左側に表示し、接近車両が自車の後方の右側車線から接近する場合には、接近車両の画像を自車の画像の右側に表示するようにしてもよい。この場合、第2の投影装置150の投射光学系176の投射方向は、接近車両の左側または右側の位置に応じて制御される。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:投影部 2:フロントガラス
2A:スクリーン 10:投影システム
100:撮像部 110:障害物検知部
120:記憶部 130:画像処理部
140:第1の投影装置 150:第2の投影装置
160:制御部 170:光源
172:光学系 174:光変調手段
176、176A:投射光学系 178:アクチュエータ
180:フロントガラス 182、184:スクリーン
200:投影制御プログラム 210:接近車両判定部
220:距離算出部 230:投影制御部
M:自車の画像 Q1、Q2、Q3:接近車両の画像
T1、T2、T3:時刻 S1、S2:制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8