特許第6376994号(P6376994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376994オブジェクト形成するプリンタ及び、プリントヘッド内の不動作インクジェットを検出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376994
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】オブジェクト形成するプリンタ及び、プリントヘッド内の不動作インクジェットを検出する装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20180813BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20180813BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180813BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20180813BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20180813BHJP
【FI】
   B29C64/112
   B29C64/393
   B41J2/01 207
   B41J2/01 451
   B41J2/165 501
   B33Y30/00
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-45358(P2015-45358)
(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-196379(P2015-196379A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】14/231,352
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エス・ボニーノ
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−334582(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0139579(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0316247(US,A1)
【文献】 特開2006−069027(JP,A)
【文献】 特開2004−299160(JP,A)
【文献】 特開2010−128383(JP,A)
【文献】 特開2012−232499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 30/00
B41J 2/01
B41J 2/165
B41J 29/393
B41J 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト形成するプリンタであって、
表面層と前記表面層の周囲に沿った縁部とを有し、前記表面層の屈折率が約1.4〜約1.8の範囲である回転部材と、
前記回転部材の前記表面層上に材料を吐出するように構成され、吐出される前記材料の屈折率が約1.3〜約1.5の範囲であるプリントヘッドと、
前記回転部材の前記表面層の前記縁部に光を当てるように配置された光源と、
前記回転部材の前記表面層によって出射された光を受光するように配置され、前記回転部材の前記表面層に対応する画像データを生成するように構成された光学センサと、
前記プリントヘッド、前記光源、および前記光学センサに動作可能に接続され、所定のパターンを参照して前記回転部材の前記表面層に材料を吐出するように前記プリントヘッドを動作させ、前記光源が前記回転部材の前記縁部に光を当てている間に前記光学センサによって生成された画像データを受信するように前記光源を選択的に作動させ、前記受信した画像データと前記所定のパターンを参照して前記プリントヘッド内の不動作インクジェットを検出するように構成されたコントローラと、を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記光源は、赤外光源であることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記光源は、紫外線光源であることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記光源は、単色光源であることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記光源は、多色光源であることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記光源は、レーザダイオードであることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記光源が、ダイオードの1次元アレイを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記光源が、ダイオードの2次元アレイを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記回転部材の前記表面層に離型剤を塗布し、前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部から材料を除去するように構成されたドラムメンテナンスユニットをさらに備え、
前記コントローラは、前記ドラムメンテナンスユニットに動作可能に接続され、さらに、前記表面層の表面の少なくとも一部から材料を除去するように前記ドラムメンテナンスユニットを動作させるように構成されている、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記ドラムメンテナンスユニットは、
前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部に係合して前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部に対して移動するように構成された部材と、
前記部材および前記コントローラに動作可能に接続されたアクチュエータであって、前記コントローラによって動作させられることによって、前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部に対して前記部材を移動させることが可能なアクチュエータとをさらに備える、請求項9に記載のプリンタ。
【請求項11】
前記ドラムメンテナンスユニットは、
前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部を加熱するために配置されたヒータをさらに備え、
前記コントローラは、前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部を加熱して前記回転部材の前記表面層の少なくとも一部から材料を除去するように前記ヒータを動作させるように構成される、請求項9に記載のプリンタ。
【請求項12】
前記回転部材の前記表面層が、ポリカーボネートを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項13】
前記回転部材の前記表面層が、アクリルを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項14】
前記回転部材の前記表面層が、ガラスを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項15】
前記回転部材が、回転ドラムであることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項16】
プリントヘッド内の不動作インクジェットを検出する装置であって、
表面層と前記表面層の周囲に沿った縁部とを有し、前記表面層の屈折率が約1.4〜約1.8の範囲である回転部材と、
前記回転部材の前記表面層の前記縁部に光を当てるように配置された光源と、
前記回転部材の前記表面層によって出射された光を受光するように配置され、前記回転部材の前記表面層に対応する画像データを生成するように構成された光学センサと、
前記光源および前記光学センサに動作可能に接続され、前記光源が前記回転部材の前記縁部に光を当てている間に前記光学センサによって生成された画像データを受信するように前記光源を選択的に作動させ、前記受信した画像データと所定のパターンを参照して、上記回転部材の上記表面層に、屈折率が約1.3〜約1.5の範囲にある材料を吐出するプリントヘッド内の不動作インクジェットを検出するように構成されたコントローラと、を備える装置。
【請求項17】
前記光源が、赤外光源、紫外線光源、単色光源、多色光源、およびレーザ光源のうちの1つを含むことを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記回転部材の前記表面層が、ポリカーボネート、ガラス、またはアクリルを主成分とすることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記回転部材が、回転ドラムであることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された装置は、3次元のオブジェクトを形成するプリンタに関し、より詳細には、このようなプリンタにおける不動作インクジェットの正確な検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙等の基板上に文書を印刷することが知られている。現在、最新の印刷形態としては、デジタル3次元造形があげられ、この3次元造形は、積層(additive)造形法としても知られる。このタイプの印刷は、デジタルモデルから実質的に任意の形状の3次元の立体オブジェクトを製造するプロセスである。3次元印刷は、1つまたは複数のプリントヘッドが基板上に材料の連続層を様々な形状で吐出する積層プロセスである。3次元印刷は、主として切断、穿孔等の切削(subtractive)プロセスによって加工物から材料を除去することに依存した従来のオブジェクト形成技術とは区別可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなプリンタを用いて3次元オブジェクトを製造するには、何時間も、もしくは、オブジェクトによっては何日もかかる。3次元プリンタで3次元オブジェクトを製造する際に生じる1つの問題は、オブジェクトを形成する液滴を吐出するプリントヘッド内のインクジェットの一貫した機能性である。オブジェクトを印刷する際に、1つまたは複数のインクジェットが、法線方向ではなく、ある角度で材料をプリントヘッドに吐出することにより、インクジェットが吐出すべき液滴よりも少量の液滴を吐出することにより、または、液滴を放出しないことにより、劣化し得る。これらの動作上の欠陥のいずれかを有するインクジェットが不動作インクジェットとして知られている。プリントヘッドを用いた文書においても、同様のプリントヘッドの故障が知られている。3次元オブジェクトの印刷中に1つまたは複数のインクジェットの動作状態が劣化すると、印刷動作が完了するまで印刷されたオブジェクトの品質を評価することができない。したがって、長時間または数日を必要とする印刷ジョブでは、プリントヘッド内の不動作インクジェットが原因で仕様に適合しないオブジェクトを生成することがある。このようなオブジェクトが検出されると、印刷されたオブジェクトは廃棄され、インクジェットの機能性を復元するために修復手順がプリントヘッドに適用され、印刷ジョブが繰り返される。移動している巻取紙上に高速で文書印刷を行う場合にも、巻取紙のある長さに渡って許容できない画像が生成されてしまうことがあり、巻取紙のこの部分が廃棄されなければならない場合がある。
【0004】
文書印刷システムにおいて不動作インクジェットを検出するシステムが開発されているが、オブジェクト印刷システムにおける不動作インクジェットの検出の方がより問題がある。オブジェクト印刷システムおよび文書印刷システムの両方において特に問題となるのは、透明な材料およびインクの使用である。透明なインク/材料が吐出された基板上におけるこれらの透明インク/材料間のコントラストが低いので、これらの材料およびインクは像形成システムによる検出が困難である。その結果、基板上のパターンの画像データのノイズにより、テストパターンの解析が困難になる。透明インクまたは透明材料を用いた印刷中に不動作インクジェットの検出を可能にする装置があれば、オブジェクト印刷中に修復手順を適用することができ、これにより適切に形成されたオブジェクトまたは文書を生成することができる印刷を継続することができる。これにより、プリンタの製品歩留まりが向上し、印刷がより効率的になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
3次元プリンタにおいて不動作インクジェットの検出を可能にする装置は、表面層と表面層の周囲に沿った縁部を有する回転部材と、前記回転部材の前記表面層の前記縁部に光を当てるように配置された光源と、前記回転部材の前記表面層によって出射された光を受光するように配置され、前記回転部材の前記表面層に対応する画像データを生成するように構成された光学センサと、前記光源および前記光学センサに動作可能に接続され、前記光源が前記回転部材の前記縁部に光を当てている間に前記光学センサによって生成された画像データを受信するように前記光源を選択的に作動させ、前記受信した画像データと所定のパターンを参照して、上記回転部材の上記表面層に材料を吐出するプリントヘッド内の不動作インクジェットを検出するように構成されたコントローラと、を備える装置。
【0006】
不動作インクジェットを検出する装置を組み込んだプリンタは、表面層と前記表面層の周囲に沿った縁部とを有する回転体と、前記回転部材の前記表面層上に材料を吐出するように構成されたプリントヘッドと、前記回転部材の前記表面層の前記縁部に光を当てるように配置された光源と、前記回転部材の前記表面層によって出射された光を受光するように配置され、前記回転部材の前記表面層に対応する画像データを生成するように構成された光学センサと、前記プリントヘッド、前記光源、および前記光学センサに動作可能に接続され、所定のパターンを参照して前記回転部材の前記表面層に材料を吐出するように前記プリントヘッドを動作させ、前記光源が前記回転部材の前記縁部に光を当てている間に前記光学センサによって生成された画像データを受信するように前記光源を選択的に作動させ、前記受信した画像データと前記所定のパターンを参照して前記プリントヘッド内の不動作インクジェットを検出するように構成されたコントローラと、を備える。
【0007】
3次元印刷時に不動作インクジェットを検出する装置またはプリンタの前述の態様および他の特徴は、添付図面と関連付けられた以下の説明により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、3次元対象プリンタの斜視図である。
図2図2は、印刷動作中にプリントヘッド内の不動作インクジェットを検出可能にするモジュールのハウジング内の空間を示す、ハウジングを有する3次元オブジェクトプリンタの正面図である。
図3図3は、図2に示す空間に設置された不動作インクジェット検出モジュールの側面図である。
図4図4は、図3のモジュールを動作させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示される装置の環境、およびその装置の詳細の全般的な理解のために図面を参照する。図中、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0010】
図1は、3次元オブジェクトまたは部品10を生成するプリンタ100の構成要素の構成を示す。本明細書で用いられる「3次元プリンタ」という用語は、3次元オブジェクトを形成するためにオブジェクトの画像データを参照して材料を吐出する任意の装置を意味する。プリンタ100は、支持材料用容器14、造形材料用容器18と、一対のインクジェットプリントヘッド22、26と、造形基板30と、平面状支持部材34と、柱状支持部材38と、アクチュエータ42と、コントローラ46とを備えている。導管50は、プリントヘッド22を支持材料用容器14に接続し、導管54は、プリントヘッド26を造形材料用容器18に接続する。両方のインクジェットプリントヘッドは、コントローラ46に動作可能に接続されたメモリ内の3次元画像データを参照して、それぞれのプリントヘッドに供給される支持材料と造形材料を吐出するように、コントローラ46によって制御される。造形材料が製造される部品10の構造を形成する一方、支持材料によって形成された支持構造体58により、部品10が構築されるときに造形材料が硬化する間、造形材料がその形状を維持することができる。部品10が完成すると、支持構造体58は、洗浄、ブローイングまたは溶解によって除去される。
【0011】
コントローラ46はまた、平面状支持部材34およびプリントヘッド22、26の互いに対する移動を制御するために、少なくとも1つの、あるいは複数のアクチュエータに動作可能に接続されている。すなわち、1つまたは複数のアクチュエータは、平面状支持部材の表面を基準に処理方向および処理方向と交差する方向にプリントヘッドを移動させるために、プリントヘッドを支持する構造体に動作可能に接続され得る。あるいは、1つまたは複数のアクチュエータは、部品が製造されている表面を処理方向および処理方向と交差する方向に移動させるように、平面状支持部材34または柱状支持部材38のいずれかに動作可能に接続され得る。本明細書で用いられる「処理方向」という用語は、平面状支持部材34の表面の一方の軸に沿った移動を表し、「処理方向に交差する方向」は、平面状支持部材の表面における処理方向の軸に直交する軸に沿った移動を表す。これらの方向は、図1において、文字「P」および「C−P」で示されている。プリントヘッド22、26および平面状支持部材34は、平面状支持部材34と直交する方向にも移動する。この方向は、本明細書では上下方向と呼び、柱状支持部材38と平行であり、図1において文字「V」で示されている。上下方向の移動は、柱状支持部材38に動作可能に接続された1つ以上のアクチュエータによって、プリントヘッド22、26に動作可能に接続された1つ以上のアクチュエータによって、または柱状支持部材38とプリントヘッド22、26の両方に動作可能に接続された1つ以上のアクチュエータによって行うことができる。これら種々の構成において、アクチュエータは、コントローラ46に動作可能に接続され、コントローラ46は、柱状支持部材38、プリントヘッド22、26、またはその両方を上下方向に移動させるようにアクチュエータを動作させる。
【0012】
図2に、ハウジングを有する3次元オブジェクトプリンタを示す。プリンタ60は、ハウジング64を有する。ハウジング64内には、略立方体形状を有する6つの区画がある。図2には、ハウジング64が、区画を隠すように閉じるドアがない状態で示されている。区画72は、可動台82上の平面状支持体78を含む。可動台82は、可動台82を上下方向に沿って昇降可能にする1つまたは複数のアクチュエータとガイド部材(図示せず)とを有して構成されている。平面状支持体78は、3次元オブジェクトが形成される面である。一部の実施形態では、プリントヘッド86の長さは、区画72の後壁から区画72の前部開口部に向かう方向の平面状支持体78の長さにほぼ等しい。これらの実施形態において、プリントヘッド86は、往復直線運動のみを行うようにハウジング64の側壁96と側壁100との間の空間に支持部材92に取り付けられている。他の実施形態では、プリントヘッド86の長さは、区画72の後壁から区画72の前部開口部に向かう方向の平面状支持体78の長さよりも短い。これらの実施形態において、プリントヘッド86は、区画72の上方の平面において直交する2方向に往復移動するようにハウジング64の側壁96と側壁100との間の空間に支持部材92に取り付けられている。これらの様々な実施形態では、1つまたは複数のアクチュエータ104が、プリントヘッド86に動作可能に接続されている。コントローラ108は、支持部材92上でプリントヘッド86を前後に直線状に移動させるか、または、平面内の直交する2方向にプリントヘッド86を移動させるように、アクチュエータ104を動作させる。プリントヘッド86内のインクジェットを選択的に動作させて、支持台82を上下方向に移動させ支持部材92上のプリントヘッド86を水平方向に移動させることによって、3次元オブジェクトを平面状支持体78上に形成することができる。
【0013】
図2に破線で輪郭を示す領域112は、透光性基板を用いてプリンタ60の不動作インクジェットを検出するモジュールの配置を示す。上述のように、材料を完全にまたは部分的に吐出しないこと、または、材料を傾斜方向に不規則に吐出することで、オブジェクトの印刷中にインクジェットが故障すると、製造されているオブジェクトの形が崩れてしまう。現在のところ、オブジェクトの製造が終了するまでこの形状不良を検出することができない。以下でより詳しく説明するように、透光性基板上に吐出された材料を光学的に検知する領域112を用いることにより、プリンタ60は、オブジェクト製造時に不動作インクジェットを検出するように構成することができる。モジュール300内のいくつかの構成要素は、図示するように、水平方向H、奥行方向D、および上下方向Vに移動することができる。
【0014】
図3のブロック図に、オブジェクト印刷時に透明材料を吐出する不動作インクジェットを検出するモジュールの一実施形態を示す。モジュール300は、プリンタ60の領域112内に収まるように構成されている。モジュール300は、光学センサ304と、透光性表面層308を有する回転ドラム312と、光源314と、1つまたは複数のアクチュエータ316と、ドラムメンテナンスユニット(Drum Maintenance Unit:DMU)320と、コントローラ324とを備えている。アクチュエータ316は、ドラム312に動作可能に接続されて、ドラム312を回転させる。プリントヘッドが図に示す位置にあるとき、ドラム312の表面層にプリントヘッドから材料を吐出することができる。光源314によって回転ドラム312の表面層の縁部に光を当てながら、ドラム312を図中の矢印方向に回転して光学センサ304に対向する位置に移動させる。光学センサ304は、ドラム312の表面層308の画像データを生成する向きに配置され、一方、図3に示すように、光源314は、光が表面層308のドラム移動方向に直交する方向に伝搬するように表面層308の縁部に光を当て、この光は用紙から突出する。光学センサ304は、回転ドラム312の表面層の画像データを生成し、後述するように、プリントヘッドが表面層308上に材料を吐出した表面層上の領域が発光する。これにより、不動作インクジェットを検出するために、ドラム表面の画像データを、プリントヘッド86を動作させてドラム表面層上に材料を吐出するのに用いられた画像データと比較することができる。
【0015】
光源314としては、発光ダイオード(light emitting diode:LED)のアレイ、レーザダイオードのアレイ、冷陰極蛍光ランプ、フィラメント等を用いることができる。アレイは、1次元アレイ、すなわち、線形アレイであってもよく、2次元アレイであってもよい。光源314によって生じる光は、赤外線、紫外線、多色、または単色であってもよい。赤外光の1つの利点は、周囲光条件に起因するノイズの影響を受けにくいことである。
【0016】
ドラムは、DMU320に対向する位置まで回転を続ける。DMU320は、離型剤334槽内のドナーローラ330と、アクチュエータ316に動作可能に接続された計量ブレード338とを備えている。ドナーローラ330は、槽内の離型剤334を表面層308に塗布し、計量ブレード338は、表面層308に接触して、表面層308を被覆する層状に離型剤を塗布するとともに、吐出された材料を除去し、余分な離型剤および材料を槽334に導く。これに加えて、または、これに代えて、ヒータ344を、コントローラ324に動作可能に接続させて、ヒータ344を選択的に電源に接続するようにしてもよい。後述するように、ヒータは、クリーニング部材が表面層308を掃除する前に造形材料および支持材料を加熱するように計量ブレード338に対して位置決めされている。コントローラ324は、アクチュエータ316、光学センサ304、および光源314に動作可能に接続されており、ドラムを回転させ、光学センサ304、光源314、および計量ブレード338とを選択的に動作させる。
【0017】
ドラム312の透光性表面層308は、プリントヘッド86から吐出される造形材料および支持材料を支持し、表面層の縁部に入射した光を全内部反射する材料で構成されている。これらの材料は、回転部材上の層表面上のなんらかの材料がこの材料と回転部材上の層表面との界面における全反射特性を変化させる屈折率を有していなければ、表面層の縁部に沿って入射した光が表面層内に留まるようにすることができる。屈折率が約1.3〜約1.5の範囲の材料またはインクを吐出するプリンタの場合、透光性表面層の屈折率は、典型的には約1.4〜約1.8の範囲である。例えば、表面層308は、ポリカーボネート、ガラスまたはアクリルを主成分とし得る。層の表面を印刷する際には、この層の平面状の表面に吐出された材料と表面層との間の屈折率が同様であると、表面層から下方に伝搬する光が、表面層と材料との界面に対する入射角度が浅くても、材料に入射することができる。材料の内部の光は、材料と周囲空気との間の界面への入射角度が急角度となっている。この角度により、光は、周囲空気中に出射することができる。光の他の部分は、複数回内部反射し、最終的に材料から出射する。材料の積層体から漏出する光は光が漏出しない被覆されていない層の表面と際立って対照的であるため、漏出する光は、透光性表面層の表面上の材料の位置を視覚的に示す。上述した実施形態では、離型剤の屈折率は約1.5であり、これにより、離型剤は、回転部材312の表面層308の表面に表面層308からの光を結合するが、層の表面に材料が存在していない領域では表面層内に光を留める。表面層308が光学センサ304を通過すると、光学センサ304は、表面層308の表面上のテストパターンの画像データを形成する電気信号を生成する。
【0018】
ドラム312は、透光性表面層308を設ける種々の方法で形成することができる。一部の実施形態では、ドラム312は、透明の開口シリンダのように、ポリカーボネート、アクリル等のガラスまたはプラスチックから成形することができる。あるいは、陽極酸化処理されたアルミニウムドラム等の金属製のドラムにポリカーボネートを被覆して、ドラムの金属表面上の層として表面層308を形成してもよい。
【0019】
図4に、3次元オブジェクトを製造するプリンタを動作させる方法を示す。この方法の説明では、プロセスがなんらかのタスクまたは機能を実行している旨の記載は、コントローラまたは汎用プロセッサが、このコントローラまたはプロセッサに動作可能に接続されたメモリに記憶されたプログラム命令を実行して、そのタスクまたは機能を実行するようにデータを操作する、または、プリンタ内の1つ以上の構成要素を動作させることを意味する。上述したコントローラ324は、このようなコントローラまたはプロセッサとすることができる。あるいは、コントローラ324は、それぞれここに記載した1つまたは複数のタスクまたは機能を形成するように構成された2つ以上のプロセッサおよび関連回路を用いて実現されてもよい。
【0020】
印刷動作中の所定のタイミングで、コントローラ108(図2)は、アクチュエータ104を動作させてプリントヘッド86を領域112内に配置されたモジュール300内に移動する(ブロック404)。コントローラ324がモジュール300内においてプリントヘッドを検出したことに応答して、コントローラ324は、ドラム312に動作可能に接続されたアクチュエータ316を動作させて、ドラム312および透光性表面層308を回転させることにより、層の表面のクリーンな部分をプリントヘッド86に対向させる(ブロック408)。コントローラ324は、コントローラ108に信号を生成し、プリントヘッド内のインクジェットを動作させて表面層308の表面にテストパターンを印刷する(ブロック412)。一実施形態では、プリントヘッド内の各インクジェットは、表面層308の表面のインクジェットと対向する部分に、テストドットとも呼ばれる材料を堆積させるために繰り返し操作される。テストパターンが印刷された後、コントローラ108は、プリントヘッド86をモジュール300の外に移動させてもよい。コントローラ324は、ドラム312が回転を続けている間、光源314を作動させて表面層308の一方の縁部に光を照射する(ブロック416)。コントローラ324は、光学センサ304を作動させ、センサ304は、表面層308の表面の画像データとしてコントローラ324に供給される電気信号を生成する(ブロック420)。上述したように、造形材料および支持材料が吐出された領域が発光する。光を内部反射する表面層の部分および発光する部分は、造形材料および支持材料を吐出するのに用いられたテストパターンに対応していなければならない。表面層308の表面の画像データは、不動作インクジェットを特定するために、テストパターンを形成するのに用いられた造形材料および支持材料の予想される位置を基準にして分析され(ブロック424)、不動作インクジェットが特定された場合、欠陥プリントヘッドを示す信号がプリンタの操作者に対して生成される(ブロック428)。そこで、操作者は適切な措置を取ることができる。
【0021】
続いて、図4のプロセスでは、ドラム312が回転を続けて層表面の印刷された部分が、DMU320を通過する(ブロック432)。コントローラ324は、アクチュエータ316を動作させて、表面層308の表面にドナーローラ330および計量ブレード338を係合させ、表面層308の表面に離型剤を塗布し、表面層から材料を除去する(ブロック436)。除去された材料は槽334内に回収され、回収された材料は、離型材を後で使用するために槽334に戻すことができるように、フィルタ(図示せず)を介してポンプによって取出されてもよい。操作者は、随時、DMU320を取り外して新しいDMUに交換して、ドラムクリーニング機能を新しくすることができる。
【0022】
上述した実施形態は、3次元オブジェクトを形成するプリンタ内に含まれるが、透光性表面層およびこのような表面層によって照射された光から不動作インクジェットを検出するシステムは、2次元文書印刷システム、特に、透明インクを使用したものにも用いることができる。このようなシステムにおいて、回転ドラム上の透光性表面層は、プリンタの印刷ゾーンに近接して配置することができ、プリントヘッドは、随時、表面層上にインクを吐出するために回転する表面層に対向して移動される。そして、光が表面層に導入され、表面が像形成されることにより、画像データを不動作インクジェットを特定するために分析することができる。したがって、本明細書で用いられる、プリントヘッドから吐出される物質を表す場合の「材料」は、3次元オブジェクトプリンタで用いられる造形材料および支持材料、ならびに、2次元印刷等に使用されるあらゆる種類のインクを意味する。
【0023】
上記に開示した特徴および機能ならびに他の特徴および機能の変形例、またはそれらの代替例は、他の多くの様々なシステム、アプリケーションまたは方法と好ましく組み合わせることができることを理解されたい。現在予見または予想されていない様々な代替、変更、変形、改善が後に当業者によって成され得るが、これらも以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4