(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377008
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】観察用試料台
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20180813BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-86955(P2015-86955)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-207425(P2016-207425A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
(72)【発明者】
【氏名】岡本 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】椋木 新也
(72)【発明者】
【氏名】中道 大介
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝
(72)【発明者】
【氏名】坪田 隆之
【審査官】
杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−122893(JP,A)
【文献】
特開2012−255763(JP,A)
【文献】
特開2005−327710(JP,A)
【文献】
Zhiyuan Zeng et al.,In situ TEM study of the Li-Au reaction in an electrochemical liquid cell,Faraday Discussions,2014年,Vol.176,pp.95-107
【文献】
李 少淵 他,高速充放電におけるLiMn2O4正極の相変態の”その場”TEM観察,電池討論会講演要旨集,(公社)電気化学会電池技術委員会,2014年11月19日,第55回,第254頁
【文献】
上田 愛 他,全固体リチウムニ次電池におけるSn4P3負極の微細組織観察,電池討論会講演要旨集,(公社)電気化学会電池技術委員会,2012年11月13日,第551頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00−23/2276
H01J27/00−27/26
37/00−37/36
H01M10/42−10/48
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉空間内に置かれた電子材料に電流を供給して前記電子材料の経時的変化を観察する観
察装置を取り付けるための観察用試料台であって、
前記電子材料を保持する電子材料保持機構と、
前記電子材料に電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段からの電流の通電をオンオフする切り替え手段と、
前記電流供給手段からの電流を制御する制御手段と、
前記観察装置を取り付ける取付部と、
通電中の前記電子材料に作用する圧縮力を測定する圧縮力測定手段と、
通電中の前記電子材料の電気的な状態値を測定する電気的状態値測定手段と、
前記閉空間内に配置され、通電中の前記電子材料に作用する圧縮力、及び通電中の前記電子材料の電気的な状態値のうち、少なくとも一つを記録する記録手段と、
を備える、ことを特徴とする観察用試料台。
【請求項2】
閉空間内に置かれた電子材料に電流を供給して前記電子材料の経時的変化を観察する観
察装置を取り付けるための観察用試料台であって、
前記電子材料を保持する電子材料保持機構と、
前記電子材料に電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段からの電流の通電をオンオフする切り替え手段と、
前記電流供給手段からの電流を制御する制御手段と、
前記観察装置を取り付ける取付部と、
通電中の前記電子材料に作用する圧縮力を測定する圧縮力測定手段と、
通電中の前記電子材料の電気的な状態値を測定する電気的状態値測定手段と、
前記閉空間とは別に形成された空間内に配置され、通電中の前記電子材料に作用する圧縮力、及び通電中の前記電子材料の電気的な状態値のうち、少なくとも一つを記録する記録手段と、
を備える、ことを特徴とする観察用試料台。
【請求項3】
前記電子材料は二次電池である、請求項1または2に記載の観察用試料台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察用試料台に関し、例えば電子顕微鏡等の観察装置を取り付けるための観察用試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池は、高容量及び高エネルギー密度が得られる特性から、モバイル用電池等としての活用を大いに期待されている。これらの電池は、正極板及び負極板、並びに正極板と負極板との間に配置されたセパレーターを有する。
【0003】
通常、正極板及び負極板は、活物質(正極活物質又は負極活物質)、導電助剤、結着剤及び溶媒を混合して作製された塗料(正極塗料又は負極塗料)を集電体上に塗布し、乾燥させて形成される。リチウムイオン二次電池の放電容量を向上させるため、正極板及び負極板を圧延して活物質の密度を高めるのが一般的である。極板内の活物質の密度が高まるほど、リチウムイオン二次電池の容量は向上する。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン二次電池には、充放電時に活物質が膨張及び収縮を繰り返すことから、極板に変形(座屈)が生じ、サイクル寿命が低下してしまうという問題がある。このような極板の充放電時の状態変化や極板に対するリチウムイオンの挙動を観察することは、リチウムイオン二次電池の容量や寿命を向上する上で重要なことである。
【0005】
上記観察手段として、特許文献1では、イオンビームの照射によって電極表面を厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき電極の性能を評価する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、電子材料の通電と該電子材料の通電時の観察とを併せてその場で実施することができる顕微鏡観察用試料台が開示されている。
【0007】
また、非特許文献1には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたin−situ(その場)観察法により、全固体リチウムイオン電池のSi負極の体積膨張変化を視覚的に捕えることが記載されている。さらに、上記電池の充電時に時間経過とともに活物質が膨張することが明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123207号公報
【特許文献2】特開2013−122893号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】岡本嘉紀他、「in−situ SEM観察法を用いた全固体Liイオン電池におけるLiイオンの吸蔵メカニズム調査」、日本顕微鏡学会第70回記念学術講演会、2014年5月11日〜13日、予稿12pmB_SM4−09
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、充電中においては時間経過とともに、電池に作用する圧縮力や、電池の電気的な状態値も変化していると考えられ、これらが電池の劣化現象に深く関与している可能性が高い。ここで、電池の電気的な状態値とは、例えば電圧値、電流値、抵抗値等が挙げられる。しかしながら、従来の装置では、通電中(充放電中)の電池に作用する圧縮力や、通電中の電池の電気的な状態値を測定し記録する手段を備えた観察用試料台はなかった。したがって、通電中の電池に作用する圧縮力や通電中の電池の電気的な状態値と、電池の劣化現象と、の関係を詳細に調査する手段が存在しなかった。なお、上述した特許文献2の顕微鏡観察用試料台は、通電中の電子材料を顕微鏡で観察することはできるが、電子材料に作用する圧縮力や電気的状態値を測定する手段を備えていなかった。
【0011】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、通電中の電子材料に作用する圧縮力を測定可能な観察用試料台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 閉空間内に置かれた電子材料に電流を供給して前記電子材料の経時的変化を観察する観察装置を取り付けるための観察用試料台であって、
前記電子材料を保持する電子材料保持機構と、
前記電子材料に電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段からの電流の通電をオンオフする切り替え手段と、
前記電流供給手段からの電流を制御する制御手段と、
前記観察装置を取り付ける取付部と、
通電中の前記電子材料に作用する圧縮力を測定する圧縮力測定手段と、
を備える、ことを特徴とする観察用試料台。
(2) 通電中の前記電子材料の電気的な状態値を測定する電気的状態値測定手段を備える、ことを特徴とする(1)に記載の観察用試料台。
(3) 通電中の前記電子材料に作用する圧縮力、及び通電中の前記電子材料の電気的な状態値のうち、少なくとも一つを記録する記録手段を有する、(2)に記載の観察用試料台。
(4) 前記記録手段は前記閉空間内に配置される、(3)に記載の観察用試料台。
(5) 前記閉空間とは別の空間が形成され、該空間に前記記録手段が配置される、(3)に記載の観察用試料台。
(6) 前記電子材料は二次電池である、(1)〜(5)の何れか1つに記載の観察用試料台。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る観察用試料台によれば、電子材料に通電を行う手段(電流供給手段、切り替え手段、制御手段)と、通電中の電子材料に作用する圧縮力を測定する圧縮力測定手段と、を備えるので、電子材料に電流を供給すると同時に、通電された電子材料に作用する圧縮力の測定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡観察用試料台の全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係る実施形態を詳細に説明する。
【0016】
1.顕微鏡観察用試料台の構成について
図1は実施形態に係る顕微鏡観察用試料台を示した断面図である。
【0017】
図1では観察対象である電子材料Sとして、二次電池、より具体的には加工した全固体電池を用いるが、一次電池や燃料電池等の化学電池を採用してもよく、化学電池の他にキャパシタやピエゾ素子等を採用してもよい。本実施形態に係る顕微鏡観察用試料台1では、これらの電子材料Sに通電を行っている状態において、顕微鏡による電子材料Sの観察や、電子材料Sに作用する圧縮力の測定、電子材料Sの電気的な状態値の測定等を行うことができる。
【0018】
図1において、顕微鏡観察用試料台1は、外形構成部材として、下面に凹部3aが形成された断面逆U字状のハウジング3と、ハウジング3の凹部3a内に嵌め込まれ、下面に凹部2aが形成された土台2と、凹部2aを塞ぐように土台2の下面に取り付けられる土台下部材5と、土台下部材5を下方から支持する基材16と、ハウジング3の上面に固定され、図示しない走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡が取り付け可能な取付部4と、を備える。
【0019】
さらに、顕微鏡観察用試料台1は、電子材料Sに電流を供給する2つの小型電池6a,6b(電流供給手段)と、小型電池6a,6bからの電流の通電をオンオフするマイクロスイッチ7(切り替え手段)と、電子材料Sを保持する電子材料保持機構8と、小型電池6a,6bからの電流を制御する定電流回路(制御手段)を構成する定電流ダイオード9と、を主に備えている。なお、小型電池6a,6bとして、例えば市販のボタン型リチウム電池(3V)を用いることができる。このうち、小型電池6a,6bは、後述する空間SP2に配置され、マイクロスイッチ7、電子材料保持機構8、及び定電流ダイオード9は、後述する閉空間SP1に配置される。
【0020】
ハウジング3は、凹部3aの下部に土台2が取り付けられることにより、当該凹部3a内に閉空間SP1を形成している。土台2の外側側壁とハウジング3の凹部3aの内側側壁との間には、シール材としてOリング10が配置されており、閉空間SP1の密封性が高められている。閉空間SP1は、真空ポンプ等で真空度が高められた真空空間(10
−6Pa〜1000Pa)である。また、閉空間SP1は不活性ガス(アルゴンガスや窒素ガス等)雰囲気で満たされた空間であってもよい。
【0021】
ハウジング3の中央部上方に設けられた取付部4には、図示しない電子顕微鏡等の観察装置を接続できるようになっている。ハウジング3には、取付部4と閉空間SP1とを連通する連通孔3bが設けられている。したがって、取付部4に接続された電子顕微鏡によって、連通孔3bを介して、閉空間SP1内に配置された電子材料Sを観察することができる。
【0022】
土台2の下面に配置された土台下部材5は、凹部2aを塞ぎ、空間SP2を形成する。土台2の下面と土台下部材5の上面との間には、シール材としてのOリング11が配置されており、空間SP2の密封性が保たれている。
【0023】
空間SP2には、2つの小型電池6a,6bが設けられており、小型電池6aのプラス極と小型電池6bのマイナス極とが互いに接触している。このように、閉空間SP1とは別の空間SP2に小型電池6a,6bを配置することで、小型電池6a,6bの故障を防止することができる。仮に、小型電池6a,6bを真空空間である閉空間SP1に配置すると、小型電池6a,6bが故障してしまう可能性が高まる。
【0024】
小型電池6bのプラス極は、導電部材12を介して閉空間SP1内のマイクロスイッチ7に電気的に接続されている。マイクロスイッチ7には、充放電のトリガーとなるキャップ7aが設けられている。キャップ7aには、顕微鏡観察用試料台1の外部に通ずる引き部材13が取り付けられている。作業者は、引き部材13を引くことでマイクロスイッチ7からキャップ7aを外すことができ、電子材料Sの充放電を開始させることができる。
【0025】
電子材料保持機構8は、電子材料Sの表面及び裏面(図中の左面及び右面)に当接する第1及び第2当接部材8a,8bと、第1及び第2当接部材8a,8bを介して電子材料Sを保持する第1及び第2保持部材8c,8dと、第2保持部材8dに押し部材8eを当接させることにより電子材料Sを加圧する加圧手段8gと、後述のロードセル8iを介して加圧された電子材料Sを加圧手段8gとは逆側で支持する支持手段8hと、を備える。
【0026】
第1及び第2当接部材8a,8bは、例えば銅やインジウム等の金属製の箔からなり、電子材料Sの表面及び裏面の全面を覆っている。これにより、第1及び第2当接部材8a,8bは、電子材料Sを均一に加圧するための手段として機能する。第1及び第2保持部材8c,8dは、例えばステンレス鋼等の導通材からなり、第1及び第2当接部材8a,8bを介して電子材料Sを挟持する。そして、第1及び第2当接部材8a,8b並びに第1及び第2保持部材8c,8dは、電子材料Sを充放電するために、電流及び電圧を受給する部材として機能する。
【0027】
加圧手段8gは、金属製のネジ等からなる押し部材8eと、押し部材8eが螺合するネジ孔を有する台座8fと、を備える。押し部材8eは、台座8fのネジ孔よりも長いので、当該ネジ孔に螺合しつつ、第2保持部材8dに当接することが可能である。そして、第2保持部材8dに対する押圧力を調整することで、電子材料Sに対する保持力を変更することができる。なお、押し部材8eとして、金属製のバネを採用してもよい。
【0028】
押し部材8e及びマイクロスイッチ7はリード線15によって電気的に接続されており、リード線15の途中に定電流ダイオード9が介挿される構成となっている。なお、マイクロスイッチ7は閉空間SP1の外に設けてもよい。
【0029】
支持手段8hは、第1当接部材8a、第1保持部材8c、及びロードセル8iを介して、電子材料Sを支持する。すなわち、ロードセル8iは、第1保持部材8cと支持手段8hとの間に配置される。ここで、電子材料Sが特に二次電池である場合、通電時(充放電時)に時間経過とともに、活物質が膨張及び収縮を繰り返すので、電子材料Sの膨張力の反作用として、当該電子材料Sには第1及び第2当接部材8a,8bから圧縮力が作用する。電子材料Sからの膨張力は、第1当接部材8a及び第1保持部材8cを介してロードセル8iにも作用するので、ロードセル8iは当該膨張力を測定することにより、電子材料Sに作用する圧縮力を検出することが可能である。このように、ロードセル8iは、通電中の電子材料Sに作用する圧縮力を測定する圧縮力測定手段として構成される。なお、本実施形態のロードセル8iでは、第1保持部材8cに隣接する部分の径(上下方向幅)が、他の部分の径よりも小さく設定されている。これにより、第1保持部材8cに対するロードセル8iの片当たりを抑制することができる。
【0030】
顕微鏡観察用試料台1は、通電中の電子材料Sの電気的な状態値(例えば、電圧値、電流値、抵抗値)を測定する不図示の電気的状態値測定手段を備える。このように、ロードセル8iによって測定された電子材料Sに作用する圧縮力、及び電気的状態値測定手段によって測定された電子材料Sの電気的な状態値は、不図示の導電部材等により記録手段17に送信される。
【0031】
記録手段17は、例えばUSBタイプのデータロガー等からなり、ロードセル8iや電気的状態値測定手段から送信されたデータを記録する。記録手段17に記録されたデータを読み出すためには、記録手段17を顕微鏡観察用試料台1の外部に取り出してパーソナルコンピュータ等に接続する。
【0032】
このように、本実施形態によれば、電子材料Sに電流を供給すると同時に、通電された電子材料Sに作用する圧縮力及び電子材料Sの電気的な状態値の測定及び記録に行うことができる。したがって、電子材料Sに作用する圧縮力又は電子材料Sの電気的な状態値と、電子材料Sの劣化現象と、の関係を明らかにすることができ、電子材料Sの長寿命化を満足することが可能となる。
【0033】
なお、
図1において記録手段17は、閉空間SP1内に配置されているが、空間SP2に配置しても構わない。例えば、記録手段17を閉空間SP1に配置する場合、配置スペースは広いが、電子顕微鏡による電子線やX線等の暴露量が多くなる。この配置を採用する場合、電子材料Sの交換時等、電子材料Sを取り出す際に、記録手段17も外部に取り出せばよいので作業効率が高い。記録手段17を空間SP2に配置する場合、配置スペースは狭いが、電子顕微鏡による電子線やX線等の暴露量を少なくすることができる。
【0034】
2.通電時の観察並びに圧縮力及び電気的状態値の測定について
上記のような構成において、先ず作業者は、電子材料Sを電子材料保持機構8によって保持させる。この場合、加圧手段8gによる保持力、即ち、電子材料Sに対する押圧力は、ロードセル8iで検出される値によって調整される。
【0035】
続いて、作業者は引き部材13を引くことによりマイクロスイッチ7のキャップ7aを外す。すると、小型電池6a,6bから導電部材12、リード線15、定電流ダイオード9、押し部材8eを介して電子材料Sに電流が供給される。つまり本実施形態では、全固体電池である電子材料Sの充電が開始される。詳細には、電子材料Sに対して所定時間、一定電流を供給し、該所定時間が経過した後、電流値を右肩下がりに低下させるように電流を供給することができる。なお、上記一定電流の大きさについては、定電流ダイオード9によって可変できる。
【0036】
このように、顕微鏡観察用試料台1によれば、電子材料Sに通電を行う手段と、電子顕微鏡を取り付ける取付部4と、を備えるので、電子材料Sを充電している際に、同時に走査型電子顕微鏡等で電子材料Sを観察することができる。このように、電子材料Sの充電を実施しながら、その場で電子材料Sの充電時における構造的変化の観察を容易に行うことができる。さらに、顕微鏡観察用試料台1は、ロードセル8i、電気的状態値測定手段、及び記録手段17を備えるので、電子材料Sに通電を行っている状態において、電子材料Sに作用する圧縮力の測定及び記録、並びに電子材料Sの電気的な状態値の測定及び記録を行うことができる。特に、本実施形態では、電子材料Sに通電を行う手段、ロードセル8i、電気的状態値測定手段、及び記録手段17等が一体的に構成されているので、結線等の煩雑な作業が不要となり、作業効率が改善できる。
【0037】
なお、電子材料Sの充電時に限られず、電子材料Sの放電時においても、顕微鏡による電子材料Sの観察、電子材料Sに作用する圧縮力の測定及び記録、並びに電子材料Sの電気的な状態値の測定及び記録を行うことができる。この場合、定電流ダイオード9の代わりに、上記とは逆方向に電流が流れる定電流ダイオードを取り付け、小型電池6a,6bの代わりに、導電部材12に金属製のダミーブロックを接触させておくことで電子材料Sの放電を実施できる。
【0038】
なお、上記実施形態では、取付部4に取り付けられ、電子材料Sの経時的変化を観察する観察装置として、走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡を採用したが、これに限定されるものではなく、オージェ電子分光装置(AES)、電子エネルギー損失分光装置(EELS)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、X線光電子分光装置(XPS)、二次イオン質量分析装置(SIMS)、フーリエ変換型赤外分光装置(FTIR)、又はラマン分光装置等の他の観察装置を採用することもできる。
【0039】
また、上記実施形態では、電流供給手段として小型電池6a,6bを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば家庭用電源をコンバーターにより変換した直流電源を電流供給手段として用いてもよい。
【0040】
以上が本発明を実施するための形態であるが、本発明はもとより上記実施形態によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0041】
1 顕微鏡観察用試料台
2 土台
2a 凹部
3 ハウジング
3a 凹部
4 取付部
5 土台下部材
6a,6b 小型電池(電流供給手段)
7 マイクロスイッチ(切り替え手段)
8 電子材料保持機構
8a,8b 当接部材
8c,8d 保持部材
8e 押し部材
8g 加圧手段
8h 支持手段
8i ロードセル(圧縮力測定手段)
9 定電流ダイオード
10,11 Oリング
12 導電部材
13 引き部
材
15 リード線
16 基材
17 記録手段
S 電子材料
SP1 閉空間
SP2 空間