特許第6377070号(P6377070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377070ペプチド化合物及びその製造方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377070
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ペプチド化合物及びその製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20180813BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/63 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   C07K14/47ZNA
   A61K45/00
   A61K31/7036
   A61K31/407
   A61K31/496
   A61K38/16
   A61K31/7056
   A61K31/546
   A61K31/63
   A61K31/65
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P17/02
   A61P37/06
【請求項の数】15
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2015-546558(P2015-546558)
(86)(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公表番号】特表2016-501889(P2016-501889A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013072884
(87)【国際公開番号】WO2014089088
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/812,584
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/732,750
(32)【優先日】2012年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/813,527
(32)【優先日】2013年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512213332
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ オクラホマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,エイチ.,アン
(72)【発明者】
【氏名】カサス―ヤコビ,アン
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,ジーナ,エル.
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0134989(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0048792(US,A1)
【文献】 米国特許第05627262(US,A)
【文献】 H. ANNE PEREIRA, et al.,Synthetic bactericidal peptide based on CAP37: A 37-kDa human neutrophil granule-associated cationic antimicrobial protein chemotactic for monocytes,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993年,Vol.90,p.4733-4737
【文献】 Herbert Bosshart,Arginine-Rich Cationic Polypeptides Amplify Lipopolysaccharide-Induced Monocyte Activation,INFECTION AND IMMUNITY,2002年,Vol.70,p.6904-6910
【文献】 Denise McCabe, et al.,Basic Residues in Azurocidin/HBP Contribute to Both Heparin Binding and Antimicrobial Activity,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2002年,Vol.277,p.27477-27488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K1/00−19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)ペプチド化合物を含むことを特徴とする組成物:
SM-XR-Pep-YR (I)
(式中、Pepは配列番号l〜14、25〜31および47のアミノ酸配列のいずれか1つであり、
XRおよびYRは、(XR+YR)が4、5、または6つのアルギニン残基であるという前提の下に、それぞれ独立して0、1、2、3、4、5、または6つのアルギニン残基であり、そして
SMは、次の(l)〜(3)のうちのいずれか1つの可溶化部位であって、ここで
(1)は[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]酢酸k(AEEAkである(式中k=1〜5)、
(2) は{2-[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}酢酸k(AEEEAkである(式中k=1〜5)、
(3)は AEEAmサブユニットとAEEEAnサブユニットとの組み合わせである(式中mおよびnは、(m+n)が2、3、4、5、6、7、8、9、または10であるという前提の下に、m=1〜9であり、n=1〜9であり、そしてこれらAEEAmおよびAEEEAnサブユニットは任意の順序で配列され得るものである。)。)
【請求項2】
XRおよびYRは、XRが4つのアルギニン残基でかつYRが0、XRが3つのアルギニン残基でかつYRが1つのアルギニン残基、XRが2つのアルギニン残基でかつYRが2つのアルギニン残基、XRが1つのアルギニン残基でかつYRが3つのアルギニン残基、XRが0でかつYRが4つのアルギニン残基、XRが5つのアルギニン残基でかつYRが0、XRが4つのアルギニン残基でかつYRが1つのアルギニン残基、XRが3つのアルギニン残基でかつYRが2つのアルギニン残基、XRが2つのアルギニン残基でかつYRが3つのアルギニン残基、XRが1つのアルギニン残基でかつYRが4つのアルギニン残基、XRが0でかつYRが5つのアルギニン残基、からなる群から選択されたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SM基は2つのAEEA部分からなるものである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
配列番号21〜23および32〜46のうちのいずれか1つの配列を有するものとしてさらに定義づけられるものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの追加の治療的薬剤をさらに有するものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの追加の治療的薬剤が、抗生物質である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
製薬上許容される担体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
処置を必要とする被験体において細菌感染を処置するおよび/または阻害するために用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
前記細菌感染が、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、大腸菌(エシェリキア・コリ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)およびアシネトバクター・バウマニイからなる群から選択されたいずれかのグラム陰性菌によって引き起こされたものであることを特徴とする請求項8に記載の組成物
【請求項10】
処置を必要とする被験体において真菌感染を処置するおよび/または阻害するために用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
前記真菌感染が、カンジダ属菌、出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)、ヒトプラスマ種、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス種、アスペルギルス・フミガーツスおよびクリプトコッカス・ネオフォルマンスからなる群から選択されてなるいずれかの真菌生物によって引き起こされたものである請求項10に記載の組成物
【請求項12】
前記抗生物質が、(i)単独で投与した場合には最適以下の活性であるまたは細菌に対して有効でない量で、かつ(ii)前記ペプチド化合物との組み合わせにおいて投与された場合には細菌に対して有効である量において投与される、細菌感染の処置において抗生物質の効能を高めるために用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項13】
処置を必要とする被験体での、創傷の治癒および/または移植片の受け入れを促進するために、創傷および移植片の少なくとも1つを処置する方法において、用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載された組成物
【請求項14】
前記抗生物質が、(i)単独で投与した場合には最適以下の活性であるまたは創傷の治癒および/または移植片の受け入れを促進するのに有効でない量で、かつ(ii)前記ペプチド化合物との組み合わせにおいて投与された場合には創傷の治癒および/または移植片の受け入れを促進するのに有効である量において投与される、処置を必要とする被験体での、創傷の治癒および/または移植片の受け入れを促進するために、創傷および移植片の少なくとも1つを処置するにおいて抗生物質の効能を高めるために用いられるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載された組成物
【請求項15】
(a) 前記創傷が、表面創傷、裂傷、擦傷、剥離、切傷、切断創、脚部ないし足部の糖尿病性潰瘍、褥瘡、床擦れ、末梢血管疾患による傷、術後傷、火傷、眼潰瘍、ドライアイおよび眼創傷創傷からなる群から選ばれてなるいずれかのものであり、および/または
(b) 前記移植片が、皮膚移植片である
請求項13または14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/関連による取込みの主張
この出願は、2012年12月3日に出願した米国仮出願米国シリアル番号第61/732750号、2013年4月16日に出願された米国シリアル番号第61/812584号、および2013年4月18日に出願された米国シリアル番号第61/813527号の優先権を主張する。上記の関連特許出願の全内容は、その関連により本明細書中に取り込まれるものである。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所(NIH)の国立眼研究所(NEI)によって授与された公衆衛生局認可番号R01EY0155534の下、およびNIHの国立アレルギー感染症研究所(NIAID)によって授与された認可番号5U01AI075391の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
グラム陰性細菌感染症の有効な治療が、製薬パイプラインにおける新しい抗生物質の欠乏によって苦しんでいる。2006年以降わずか1つの新しい抗菌性物質が承認されたに過ぎない。これゆえ、このような治療のための明確に満たされていない必要性が存在する。抗生物質耐性は、世界の人々の健康への最大の脅威の一つである。これゆえ、耐性を回避することができる新規な作用機序を持つ治療法が強く望まれている。例えば、敗血症または敗血症性ショックは、米国だけで年間20万人以上の人を死亡させている。最適には、敗血症の治療は、抗生物質として機能し、ならびに、エンドトキシン(別名、リポ多糖類、またはLPS)の毒性作用と結合し、これを中和することである。米国だけで重症感染症に起因する罹患率と死亡率は、年間に数十億ドルのコストと見積もられている。欧州連合では、多剤耐性感染に起因する生産性の損失、医療費は年間15億ユーロと見積もられている。グラム陰性感染症に対して有効であり、無毒ないしは低毒性を示す新しい生理活性ペプチドは、この世界的な健康危機への重要な貢献となるであろう。
【0004】
CAP37(Mr 37kDaのカチオン性抗菌タンパク質)は、もともとヒト好中球(PMN)の酸素非依存性殺害機構の成分として同定されたものであり、そして、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム Salmonella typhimurium)、大腸菌(エシェリキア・コリ Escherichia coli)、および緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ Pseudomonas aeruginosa)のグラム陰性菌に対して強力な殺菌活性を有することが実証された。細菌へのその影響とは区別されて、天然のCAP37タンパク質は、宿主細胞に対して強力な調節効果を有している。それは、単球、ミクログリア、およびマクロファージなどの単核食細胞系の細胞の効果的な調節因子である。また、それは、ある特定の角膜上皮、内皮細胞、および平滑筋細胞機能を調節する。
【0005】
CAP37の構造機能分析は、天然分子の20から44の残基に存在するとして同定された、CAP37タンパク質の抗菌ドメインの描写を以前に可能とした。この25個のアミノ酸配列からなるペプチド(すなわち、CAP37(20-44)nat -配列番号l)は、天然分子の抗菌活性を模倣し、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス Staphylococcus aureus)および乳酸球菌(エンテロコッカス・フェカリス Enterococcus faecalis)の二つのグラム陽性菌を包含するようにその活性の範囲を拡張した。このペプチドの殺菌活性はpH依存性であり、pH 5.0と5.5の間で得られる最大活性を有する。26位または42位のシステイン残基のいずれかがセリン残基で置換された、前記20から44の天然のペプチド配列の誘導体(それぞれ、CAP37(20-44)ser26およびCAP37(20-44)ser42 -配列番号2および5)もまた作製された。しかしながら、第1のクラスの抗感染薬としてのペプチドの商業化は、例えば、(1)ペプチドの合成をアップスケールする可能性、(2)好ましくは>90%の純度を達成する可能性、および(3)活性を保持する可能性を要求するものである。前記20-44ペプチドおよび以前に知られたその置換体群は、これらの特徴をもって製造することができなかった。本明細書に開示される本発明の概念(概念群)は、そのような特性を有し、かつ、CAP37およびその誘導体の種々の部分を有してなる新規なペプチド化合物、ならびにこれらの化合物の使用方法に向けられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、いくつかの典型的な実施形態を説明するのみのものであり、従って、本開示の範囲を限定するものと考慮されることを意図するものではないことに、留意すべきである。また、添付の図面において、同様または同一の参照番号は、共通または類似の要素を識別するために使用され得るものであるが、このような要素が、すべてそのように番号付けされているわけではない。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、特定の機能や図形の特定の見方は、明確さと簡潔さのためにその縮尺度において、あるいは概略的に、誇張表示される場合がある。
【0007】
図1】は、マウス角膜炎においてBCC02-5RMP(配列番号22)が、抗菌活性を有していることを示すものである。円形の創傷は上皮を除去することにより、マウスの角膜上で作成され、105コロニー形成単位(CFU)のシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(登録商標) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))で感染させた。感染した創傷は、最初の日において、2時間の間15分毎に、次いで3時間の間30分毎に、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム、ビヒクル対照)またはペプチドの示された濃度を含む生理食塩水で処置された。感染した創傷は、2日目に2回処置され、そして3日目に1回処置された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。平均値がプロットされ、この平均値は、各グループごとに5匹のマウスの代表するものである。マンホイットニー検定を、生理食塩水対照群と比較して、グループごとに行った。*P = 0.014。
【0008】
図2】は、ペプチド 95-122 (配列番号26)が生体内(インビボ in vivo)で角膜創傷治癒を促進することを示すものである。AlgerBrush II (ザ アルジェ カンパニー インコーポレテッド、ラゴヴィスタ、テキサス州(The Alger Company, Inc., Lago Vista, TX))を使用して、マウス角膜上皮を除去し、角膜の擦傷は、ペプチド 95-122 (10-5 M)で 0 時間目と16時間目に処置される、あるいは、0.9% 塩化ナトリウム(生理食塩水ビヒクル)中で未処理のままとされた。創傷の治癒は、フルオレセイン染色とカメラ付倒立顕微鏡を用いて、0時間目、16時間目および24時間目に観察された。データは、16時間目および24時間目での創傷閉鎖の百分率として表され、そして平均±SEMとして表現された。データは、グループごとに少なくとも6匹のマウスを代表するものである。ビヒクル(0.9% 塩化ナトリウム)処置した対照と比較した対応のないt検定(unpaired t-test)によって、*P < 0.05。
【0009】
図3】は、ペプチド 95-122 (配列番号26)が生体内(in vivo)で角膜創傷治癒を促進することを示すものである。AlgerBrush II を使用してマウス角膜上皮を除去し、角膜の擦傷は、ペプチド 95-122 (10-5 M)で 0 時間目と16時間目に処置される、あるいは、0.9% 塩化ナトリウム(生理食塩水ビヒクル)中で未処理のままとされた。創傷の治癒は、フルオレセイン染色とカメラ付倒立顕微鏡を用いて、0時間目、16時間目および24時間目に観察された。0、16および24時間目における生体内での角膜の擦傷の代表的な画像が示される。
【0010】
図4】は、ペプチド 95-122 (配列番号26)がIL-7、IL-15、IFN-γ、およびMIP1-αを顕著に増加させることを示すものである。角膜は、lO-4 M、10-5 M、および 10-6 Mの最終濃度で、5μlのペプチド 95-122 を、および対照としてビヒクル(生理食塩水)を基質内的に注入された。24時間目と48時間目に角膜が採集され、そして瞬間冷凍された。角膜の溶解産物が、IL-7(A)、IL-15(B)、IFN-γ(C)、およびMIP1-α(D)に関してのミリプレックス(商標名)マップマウスサイトカインアッセイ(MILLIPLEX MAP mouse cytokine assay) (イーエムディ ミリポア コーポレーション、ビレリカ、マサチューセッツ州(EMD Millipore Corp., Billerica, MA))を用いて、サイトカインを分析された。独立した実験値の平均が±SEMで示された。ビヒクル処理した対照と比較した対応のないt検定(unpaired t-test)によって、*** P < 0.001、** P < 0.01、* P < 0.05。
【0011】
図5】は、ペプチド 95-122 (配列番号26)がMIP1-βを顕著に増加させることを示すものである。角膜は、lO-4 M、10-5 M、および 10-6 Mの最終濃度で、5μlのペプチド 95-122 を、および対照としてビヒクル(生理食塩水)を基質内的に注入された。24時間目と48時間目に角膜が採集され、そして瞬間冷凍された。角膜の溶解産物が、MIP1-βに関してのミリプレックス(商標名)マップマウスサイトカインアッセイ(MILLIPLEX MAP mouse cytokine assay) (イーエムディ ミリポア コーポレーション、ビレリカ、マサチューセッツ州(EMD Millipore Corp., Billerica, MA))を用いて、サイトカインを分析された。独立した実験値の平均が±SEMで示された。ビヒクル処理した対照と比較した対応のないt検定(unpaired t-test)によって、** P < 0.01、* P < 0.05。
【0012】
図6】は、ペプチド 95-122 (配列番号26)がKC、IL-1βおよびGM-CSFを顕著に増加させることを示すものである。角膜は、lO-4 M、10-5 M、および 10-6 Mの最終濃度で、5μlのペプチド 95-122 を、および対照としてビヒクル(生理食塩水)を基質内的に注入された。24時間目と48時間目に角膜が採集され、そして瞬間冷凍された。角膜の溶解産物が、KC(A)、IL-1β(B)およびGM-CSF(C)に関してのミリプレックス(商標名)マップマウスサイトカインアッセイ(MILLIPLEX MAP mouse cytokine assay) (イーエムディ ミリポア コーポレーション、ビレリカ、マサチューセッツ州(EMD Millipore Corp., Billerica, MA))を用いて、サイトカインを分析された。ビヒクル処理した対照と比較した対応のないt検定(unpaired t-test)によって、** P < 0.01、* P < 0.05。
【0013】
図7】は、CAP37の天然配列に基づく、ペプチド 120-146QH (配列番号29)およびペプチド120-146QR(配列番号28)が、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)化学走化性を仲介することを示すものである。HCEC化学走化性における、緩衝液対照(buffer control) (ゲイバッファ(Gey's buffer)中の0.1 % ウシ血清アルブミン(bsa))、ヘパリン結合上皮成長因子 (HB-EGF 、50 ng/ml)、組換えCAP37(rCAP37, 250 ng/ml)、120-146QH (10-12 M、10-10 M、10-8 M、10 M-6 M、および10-4 M)、ならびに120-146QR(10-10 M、10-8 M、10 M-6 M、および10-4 M)の効果が、改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)によって測定された。HCEC化学走化性は、37℃で3時間培養後に、HB-EGF、rCAP37、ならびにペプチド120-146QH(配列番号29)およびペプチド120-146QR(配列番号28)に対する応答で計測された。化学走化性は、移動の百分率として表される。緩衝液対照 (化学誘引物質なし)が、100% 移動の値を恣意的に割り当てられた。データは、平均±SEMとして表され、これはそれぞれのテストポイントに関して6つの観測から計算される。 対照と比較したウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon signed-rank test)によって、** P < 0.01。
【0014】
図8】は、ペプチド120-146WH(配列番号 31)が、生体内において、角膜創傷治癒を促進することを示すものである。AlgerBrush II を使用してマウス角膜上皮を除去し、角膜の擦傷は、ペプチド120-146WH (10-5 Mまたは10-6 M)で 0 時間目と16時間目に処置される、あるいは、0.9% 塩化ナトリウム(生理食塩水ビヒクル対照)中で未処理のままとされた。創傷の治癒は、フルオレセイン染色とカメラ付倒立顕微鏡を用いて、0時間目、16時間目および24時間目に観察された。データは、16時間目および24時間目での創傷閉鎖の百分率として表され、そして平均±SEMとして表現された。データは、グループごとに少なくとも6匹のマウスを代表するものである。ビヒクル(0.9% 塩化ナトリウム)処理した対照と比較した対応のないt検定(unpaired t-test)によって、*** P < 0.001、*P < 0.05。
【0015】
図9】は、ペプチド120-146WH(配列番号 31)が、生体内において、角膜創傷治癒を促進することを示すものである。AlgerBrush II を使用してマウス角膜上皮を除去し、角膜の擦傷は、ペプチド120-146WH (10-8 Mまたは10-6 M)で 0 時間目と16時間目に処置される、あるいは、0.9% 塩化ナトリウム(生理食塩水ビヒクル対照)中で未処理のままとされた。創傷の治癒は、フルオレセイン染色とカメラ付倒立顕微鏡を用いて、0時間目、16時間目および24時間目に観察された。0、16および24時間目における生体内での角膜擦傷の創傷閉鎖の代表的な画像が示される。
【0016】
図10】は、コンパレータ抗生物質としてのゲンタマイシンと比較しての、 CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の殺菌活性を示すものである。試験された各ペプチドのそれぞれは、25、12.5、6.25および3.12 μΜで使用された。ゲンタマイシンは、4μg/mlで使用された。1×106/mlのアシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter Baumannii) ATCC(商標名) BAA-747(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)、および正の対照ゲンタマイシンと、pH 5.5で60分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0017】
図11】は、コンパレータ抗生物質としてのゲンタマイシンと比較しての、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の殺菌活性を示すものである。試験された各ペプチドのそれぞれは、25、12.5、6.25および3.12 μΜで使用された。ゲンタマイシンは、4μg/mlで使用された。1×106/mlのアシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter Baumannii) ATCC(商標名) BAA-747(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)、および正の対照ゲンタマイシンと、pH 7.2で60分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0018】
図12】は、コンパレータ抗生物質としてのゲンタマイシンと比較しての、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の殺菌活性を示すものである。試験された各ペプチドのそれぞれは、25、12.5、6.25および3.12 μΜで使用された。ゲンタマイシンは、4μg/mlで使用された。1×106/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)、および正の対照ゲンタマイシンと、pH 7.2で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0019】
図13】は、コンパレータ抗生物質としてのゲンタマイシンと比較しての、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の殺菌活性を示すものである。試験された各ペプチドのそれぞれは、25、12.5、6.25および3.12 μΜで使用された。ゲンタマイシンは、4μg/mlで使用された。1×106/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)、および正の対照ゲンタマイシンと、pH 5.5で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0020】
図14】は、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)、120-146QR(配列番号 28)、120-146QH(配列番号 29)、120-146QR-5RMP (配列番号 32)および120-146QH-5RMP (配列番号 33)の殺菌活性の比較を示すものである。1×106/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群の150、75および37.5μg/mlと、および負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)と、pH 5.5で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0021】
図15】は、ペプチド120-146QR-5RMP(配列番号 32)が、緑膿菌角膜炎のマウスモデルにおいて抗菌活性を有することを示すものである。円形の創傷は上皮を除去することにより、マウスの角膜上で作成され、105 CFUのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(登録商標) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))で感染させた。感染した創傷は、最初の日において、6時間の間30分毎に、生理食塩水またはペプチドの示された濃度(2、5、10および20mg/ml)を含む生理食塩水で処置された。感染した創傷は、2日目に2回処置され、そして3日目に1回処置された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。平均値がプロットされ、この平均値は、各グループごとに5匹のマウスの代表するものである。マンホイットニー検定を、生理食塩水対照群と比較して、グループごとに行った。*P = 0.015および**P = 0.097。
【0022】
図16】は、ペプチド120-146WH(配列番号 31)が、緑膿菌角膜炎のマウスモデルにおいて抗菌活性を有することを示すものである。円形の創傷は上皮を除去することにより、マウスの角膜上で作成され、105 CFUのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(登録商標) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))で感染させた。感染した創傷は、最初の日において、6時間の間30分毎に、生理食塩水またはペプチドの示された濃度(2、5、10および20mg/ml)を含む生理食塩水で処置された。感染した創傷は、2日目に2回処置され、そして3日目に1回処置された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。平均値がプロットされ、この平均値は、各グループごとに4〜5匹のマウスの代表するものである。マンホイットニー検定を、生理食塩水対照群と比較して、グループごとに行った。
【0023】
図17】は、ペプチド120-146WR(配列番号 30)が、緑膿菌角膜炎のマウスモデルにおいて抗菌活性を有することを示すものである。円形の創傷は上皮を除去することにより、マウスの角膜上で作成され、105 CFUのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(登録商標) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))で感染させた。感染した創傷は、最初の日において、6時間の間30分毎に、生理食塩水またはペプチドの示された濃度(2、5、10および20mg/ml)を含む生理食塩水で処置された。感染した創傷は、2日目に2回処置され、そして3日目に1回処置された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。平均値がプロットされ、この平均値は、各グループごとに5匹のマウスの代表するものである。生理食塩水対照群と比較してのマンホイットニー検定によって、**P = 0.0079。
【0024】
図18】は、CAP37ペプチド群 95-122 (配列番号 26)、120-146WH (配列番号 31)、および120-146QH-5RMP (配列番号 33)が、皮膚の創傷治癒を促進することを示すものである。対照としての生理食塩水および3つのCAP37に基づくペプチド化合物を局所的に3 mg/mlで用いた、14日間にわたるブタ皮膚における生体内的創傷治癒の結果がグラフとして示される。
【0025】
図19】は、図18にグラフ化して示した結果に関して、写真によって明らかとした、ブタにおける皮膚の創傷治癒の代表的な結果を含むものである。パネルA: 生理食塩水ビヒクル対照。パネルB: ペプチド 95-122 (配列番号 26)。パネルC: ペプチド 120-146WH (配列番号 31)。パネル D: ペプチド 120-146QH-5RMP (配列番号: 33)。
【0026】
図20】は、図18および図19の結果の炎症、脈管形成、肉芽形成および上皮形成の診断基準に基づくブタ皮膚創傷治癒研究からの組織病理学を示すものである。測定された特性が、よく癒された傷の特徴を示すために必要である。炎症は低くなるべきであり、再上皮化は高くなるべきである。
【0027】
図21】は、雄のスプラーグドーリーラット(SDラット)に14C-BCC03-5RMP (配列番号 23) を単回静脈内投与した後の特定時間における、血液および血漿中の放射能の平均濃度を示すものである(グループ1、20 mg/kg)。
【0028】
図22】は、14C-BCC03-5RMP (配列番号 23) の単回静脈内投与の1時間後における雄のスプラーグドーリーラットに関する定量的全身オートラジオグラフィーである(グループ3、20 mg/kg)。
【0029】
図23】は、 CAP37がHCEC単層において創傷閉鎖を増加することを示すものである。(A) HCECは、集密度まで成長させられ、10μlピペット チップを使用して擦傷した。擦傷したHCEC単層は、HB-EGF (250 ng/ml) または rCAP37 (25-2000 ng/ml)で処置される、あるいは、基底ケラチン合成細胞無血清培地(basal Keratinocyte Serum Free Medium (KSFM))中で未処理のままとされた。創傷の閉鎖は、カメラ付倒立顕微鏡を用いて、0時間目、18時間目、24時間目および48時間目に観察された。ヒストグラムは、48時間で取得したデータを表し、そして値は、傷の閉鎖の百分率の平均±SEMである。データは、少なくとも4つの独立した実験を代表するものである。一元配置分散分析(ANOVA)およびそれに続くダネットの多重比較検定(Dunnett's multiple comparison test)によって、治療単層における創傷閉鎖の百分率は、未処理の対照と比較された、**P < 0.01、*P < 0.05。(B) 緩衝液対照、HB-EGFおよびrCAP37 (25、100および250 ng/ml)で処置された、擦傷HCEC単層の代表的な画像が、それぞれの時点に関して示されるものである。画像は、20倍の倍率で撮影されたものである。
【0030】
図24】は、CAP37が生体内で角膜上皮創傷治癒を促進することを示すものである。(A) AlgerBrush II を使用してマウス角膜上皮を除去し、角膜の擦傷は、HB-EGF (250 ng/ml)、rCAP37 (250 ng/ml)またはビヒクル対照(通常生理食塩水)で、0時間目と16時間目に処置された。創傷の閉鎖は、フルオレセイン染色とカメラ付倒立顕微鏡を用いて、0、16、24および48時間目に観察された。データは、創傷閉鎖の百分率として表され、そして平均±SEMとして表現された。データは、グループごとに少なくとも6匹のマウスを代表するものである。処置に応答した創傷閉鎖の百分率は、対応のないt検定によって、ビヒクル処理した対照と比較した、**P < 0.01、*P < 0.05。(B) ビヒクル、HB-EGF、およびCAP37で処置後の0、16、24および48時間目におけるマウス角膜創傷の代表的な画像が示される。黒色の点線は、傷の縁部を示している。
【0031】
図25】は、CAP37に応答した角膜創傷閉鎖および再上皮化の組織学的解析である。AlgerBrush II を使用してマウス角膜が傷付けられ、そして、rCAP37 (250 ng/ml)またはビヒクル(通常生理食塩水)で、0時間目と16時間目に処置された。完全眼球が擦傷した後0、24および48時間目に摘出され、そして断面がヘマトキシリンとエオシン(H & E)を使用して染色された。それぞれ、(A)CAP37処置創傷の24時間目、(B)ビヒクル処理創傷の24時間目、(C)CAP37処置創傷の48時間目、および(D)ビヒクル処理創傷の48時間目、の代表的画像を示すものである。創傷の閉鎖の程度や創傷の再上皮化の程度は、(E) 通常の傷付けてない角膜と比較した。
【0032】
図25は、プロテインキナーゼCδ(PKCδ)およびプロテインキナーゼCθ(PKCθ)が、傷付けた、および傷付けてないHCEC単層において発現されたことを示すものである。
(A) HCEC(SV40アデノウイルス不死化細胞株)が培養密度まで成長させられ、10μlピペット チップを使用して擦傷される(右側のパネル)、あるいは傷付けないまま残した(左のパネル)。これらの単層は、抗PKCδ抗体(250 ng/ml)、抗PKCθ抗体(500 ng/ml)、またはIgG対照(500 ng/ml) および抗マウス二次抗体 (4 μg/ml、ALEXA FLUOR(商標名) 488 dye(ライフテクノロジー コーポレーション、グランドアイランド、ニューヨーク州(Life Technology Corp., Grand island, NY))を使用して、擦傷の2時間後に、PKCアイソフォームに関して染色された。代表的な画像が表示されるものである。目盛棒は20 μmである。
(B) 傷付けてない単層における、PKCアイソフォームδおよびθの構造的発現を示すため、最初のHCECが染色された。代表的な画像が表示されるものである。目盛棒は20 μmである。
【0033】
図27】は、CAP37処置が、HCEC単層におけるPKCδ染色の増加を引き起こすことを示すものである。HCEC単層は、集密度まで成長させられ、10μlピペット チップを使用して擦傷された、あるいはそのまま傷付けないままとされた。続いて、単層は、(AおよびB)緩衝液、(CおよびD)PMA(1 μM)、(EおよびF)250 ng/ml CAP37、ならびに(G〜J)500 ng/ml CAP37で、15分間処置された。細胞は、PKCδ(250 ng/ml;(A〜H))に関して、およびPKCα(1 μg/ml;(I〜J))に関して染色され、そして免疫蛍光法(4 μg/ml、ALEXA FLUOR(商標名) 488 dye(ライフテクノロジー コーポレーション、グランドアイランド、ニューヨーク州(Life Technology Corp., Grand island, NY))を用いて検出した。代表的な画像(C〜H)は、PMAおよびCAP37に反応して、傷付けてない単層(C、EおよびG)におけるPKCδに関しての染色と、擦傷した単層(D、FおよびH)におけるPKCδに関しての増加した染色を示すものである。しかしながら、CAP37での処置後に、PKCα染色における増加は何ら観察されなかった。(I〜J)。擦傷した単層が、CAP37(250 ng/ml;(L))で18時間処置された、あるいは未処理のままとされ(K)、そしてPKCδ関して染色された。CAP37での処置は、創傷の縁部に沿った顕著な染色を示すことが、観察された。目盛棒は20 μmである。
【0034】
図28】は、PKCδが、生体内において角膜上皮の創傷の先端に沿って発現されることを示すものである。AlgerBrush II を使用してマウス角膜が傷付けられ、そして、ビヒクル(通常生理食塩水;(A〜C))またはrCAP37 (250 ng/ml;(D〜F))で、0時間目と16時間目に処置された。完全眼球が擦傷した後6時間目(A、B、D、E)、16時間目(C、F)および48時間目(H)に摘出され、そして断面がPKCδに関して染色された。代表的画像は、傷付けてない角膜(G)におけるPKCδに関しての構造的な染色を示すものである。強い染色の欠落は、ビヒクル処理された角膜の6時間目(A、B)および16時間目(C)における創傷先端(矢印部)において観察された。PKCδに関する著しい染色が、CAP37処置された角膜の6時間目(D、E)および16時間目(F)において創傷先端(矢印部)において観察された。PKCδの存在は、創傷の48時間後(H)においてもまだ観察され、そして、傷付けてない角膜(G)における0時間目に観察される構造的染色と比較に値するものであった。目盛棒は100 μmである。
【0035】
図29】は、PKCδが、生体内でのCAP37に誘発される創傷治癒に必要なものであることを示すものである。(A) PKCδに対して指向するsiRNAまたはスクランブルsiRNAが、マウス結膜に注入された。AlgerBrush II を使用してマウス角膜上皮を除去した。角膜の擦傷は、0時間目と16時間目にrCAP37 (250 ng/ml)で処置される、あるいは未処理のままとされた(生理食塩水ビヒクル)。創傷の治癒は、フルオレセイン染色を用いて、0時間目、16時間目および24時間目に観察された。データは、創傷閉鎖の百分率として表され、そして平均±SEMとして表現された。データは、グループごとに少なくとも9匹のマウスを代表するものである。ビヒクル(通常生理食塩水)処理した対照と比較した対応のないt検定(unpaired t-test)によって、*P < 0.05。それぞれの角膜におけるPKCδノックダウンの効率は、注入後24時間ウエスタンブロット分析で確認され、そして、スクランブルsiRNA注入角膜と比較して決定された。データは、22個の実験サンプルを代表するものであり、平均±SEMとして表される(対応のないt検定によって、***P < 0.0005)。(B) 0、16および24時間で角膜創傷の閉鎖の程度を示す、フルオレセインで染色された代表的画像。点線は、傷の縁部を区別するために用いるものである。
【0036】
図30】は、緑膿菌臨床分離体B64を用いたMIC(最小発育阻止濃度)における、セフォタキシムとの組み合わせでのBCC02-5R-MP(配列番号 22)の効果を示すものである。セフォタキシム(Cefo)およびペプチドの組み合わせ群は、セフォタキシムの一定量(2.81 μg/ml)とペプチドの最適以下の量(0、0.34、1.01および3.04 μg/ml)を含むものであった。左側(A)のプロットは、セフォタキシムおよび抗生物質不在下での緑膿菌の成長曲線、抗生物質(2.81 μg/ml)存在下での緑膿菌の成長曲線、ペプチド(3.15 μg/ml)存在下での緑膿菌の成長曲線、および抗生物質とペプチドの組み合わせの存在下で緑膿菌の成長曲線を示すものである。右側(B)のヒストグラムは、MICの指標である、フラクショナルエリア(Fractional area (FA))を示すものである。ペプチド3.04 μg/mlとセフォタキシムの組み合わせは、有意性を示すものである。P = 0.0143。
【0037】
図31】は、緑膿菌臨床分離体B64を用いたMICにおける、シプロフロキサシンとの組み合わせでのBCC02-5R-MP(配列番号 22)の効果を示すものである。シプロフロキサシン(Cipro)およびペプチドの組み合わせ群は、シプロフロキサシンの一定量(2.1 μg/ml)とペプチドの最適以下の量(0、0.45、1.35および4.05 μg/ml)を含むものであった。左側(A)のプロットは、シプロフロキサシンおよび抗生物質不在下での緑膿菌の成長曲線、抗生物質(2.1 μg/ml)存在下での緑膿菌の成長曲線、ペプチド(4.05 μg/ml)存在下での緑膿菌の成長曲線、および抗生物質とペプチドの組み合わせの存在下で緑膿菌の成長曲線を示すものである。右側(B)のヒストグラムは、MICの指標である、フラクショナルエリア(Fractional area (FA))を示すものである。ペプチド4.05 μg/mlとシプロフロキサシンの組み合わせは、有意性を示すものである。P = 0.0003。
【0038】
図32】は、レボフロキサシン(Levo)との組み合わせでのBCC02-5R-MP(配列番号 22)の効果を示すものであり、該ペプチドの組み合わせ群は、レボフロキサシンの一定量(3.6 μg/ml)とペプチドの最適以下の量(0、0.34、1.01、および3.04 μg/ml)を含むものであった。左側(A)のプロットは、レボフロキサシンおよび抗生物質不在下での緑膿菌の成長曲線、抗生物質(3.6 μg/ml)存在下での緑膿菌の成長曲線、ペプチド(3.04 μg/ml)存在下での緑膿菌の成長曲線、および抗生物質とペプチドの組み合わせの存在下で緑膿菌の成長曲線を示すものである。右側(B)のヒストグラムは、MICの指標である、フラクショナルエリア(Fractional area (FA))を示すものである。ペプチド3.04 μg/mlとレボフロキサシン(の組み合わせは、有意性を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここに開示され、請求の範囲に要求された発明概念(群)の種々の実施形態について、例示的な記述、実施例、および結果によって、より詳細に説明する前に、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明の概念(群)は、本出願において、以下に記載される方法群や組成物群の詳細に何ら限定されるものではないことが理解されるべきである。ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明の概念(群)は、他の実施形態においても可能であり、また種々の方法において実施することが可能である。それゆえ、本明細書において用いられる言葉は、最も広い可能な範囲と意味を意図するものであり、また実施形態は代表的なものであることを意味し、網羅的なものを意味するものではない。また、本明細書において用いられた表現法および用語は、記述の目的のためにあって、特に記載していない限りは限定的に見なされるべきでないことが理解されるべきである。さらに、以下の詳細な説明において、特定の多くの詳述が、本開示のより完全な理解を提供するために与えられている。しかしながら、、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明の概念(群)は、これらの特定な詳述なくしても実施可能であることは当業者にとって明らかであろう。その他の例において、当業者に公知の特徴は、記述の不必要な複雑化を避けるために詳細には記載しなかった。
【0040】
本明細書において別途、特に定義しない場合、ここに開示され、請求の範囲に要求された発明概念(群)に関して使用された科学的および専門的用語は、当業者に一般的に理解されている意味を持っているものである。さらに、文脈によって特に要求されない場合、単数形の用語は、複数形および複数の用語を含んでいるものとする。
【0041】
本明細書で参照されたすべての特許、公開された特許出願および非特許刊行物は、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された発明概念(群)に関係する当業者の技能のレベルを暗示するものである。本出願の任意の部位で参照されたこれらすべて特許、公開された特許出願および非特許刊行物は、個々の刊行物または特許出願が、関連により本明細書中に組込まれるものであると、明確にかつ個々に示したものと同一の程度をもって、関連により本明細書中に組込まれるものである。
【0042】
本願において開示され、そして請求の範囲に要求されたすべての組成物並びにその製造方法およびその利用は、本明細書の開示に照らして、過度の実験を行なうことなく、製造することおよび実施することができるものである。本願において開示され、そして請求の範囲に要求された発明概念(群)の組成物および方法は、好ましい実施形態に照らして記載されているが、発明概念(群)のその概念、本質および範疇を逸脱することなく、当該組成物および/または方法に対して、および本明細書において述べられた方法の各段階の順序において、種々の変更が適用可能であることは、当業者にとって明らかであろう。当業者にとって明らかであるそのような全ての置換および変更は、添付の請求の範囲によって定義されるような発明概念の本質、範疇およびその概念の範囲内のものであると考えられるものである。
【0043】
本開示の方法群および組成物群に従って利用される場合、特に別途に示されない限り、以下の用語は、以下の意味を持ってると、理解されるべきであろう:
【0044】
請求の範囲および/または明細書において「〜から構成される」[comprising]という用語と共に用いられる単語“a"または“an"の使用は、「1つ」を意味するものであるかもしれないが、また、それは「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1以上」の意味と一致するものでもある。開示は、代替手段および「および/または」[and/or]である定義を支持するが、請求の範囲における用語「または」[or]の使用は、代替手段のみに関することを明示的に示すまたは代替手段が相互に排他的である場合以外には、「および/または」[and/or]を意味するために使用される。「少なくとも1つ」[at least one]という用語の使用は、1つ並びに、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに何ら限定されるわけではない、1つ以上の任意の量を包含するものであると理解されるべきである。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100あるいは1000ないしそれ以上まで広がり得、さらに、100または1000の量は、より高い限度もまた満足な結果を生じ得るゆえに、これらが限度であると考慮されるべきではない。さらに、「X,YおよびZの少なくとも1つ」[at least one of X, Y and Z]という用語の使用は、Xのみ、Yのみ、およびZのみ、並びにX、YおよびZの任意の組合せを含むものであると理解されるべきである。
【0045】
明細書および請求の範囲において用いられる場合、「〜から構成される」[comprising](および"comprise"および"comprises"のような、「〜から構成される」[comprising]の任意の形態)、「〜を有する」[having](および"have"および"has"のような、「〜を有する」[having]の任意の形態)、「〜を含む」[including](および"includes"および"include"のような、「〜を含む」[including]の任意の形態)、または「〜を包含する」[containing](および"contains"および"contain"のような、「〜を包含する」[containing]の任意の形態)の語群は、非排他的ないし解放端的なものであり、付加的な、言及されていない要素または方法工程を排除するものではない。
【0046】
本願において用いられる「またはそれらの組合わせ」[or combination thereof]の用語は、この用語に先行する列挙された項目の全ての順列および組合わせを意味するものである。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、Aか、Bか、Cか、ABか、ACか、BCか、またはABCかの、少なくとも1つを含むことを意図するものであり、そしてある特定の文脈において順序が重要である場合には、さらにまたBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含まれる。この実施例で続けると、明白に含まれているのは、1ないしそれ以上の項目ないし用語の反復を含む組合わせ、例えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、である。当業者は、文脈から明らかである場合以外では、どんな組み合わせにも項目ないし用語の数に何ら制限が通常ないことを理解するであろう。
【0047】
この出願全体を通じて、用語「約」[about]は、ある値が、組成物、組成物の投与に用いられる方法に関する誤りの固有の変動、または研究対象群の中に存在する変動、を含むものであることを示すために用いられる。
【0048】
本願で使用される場合「実質的に」[substantially]という用語は、その後記述されていた出来事又は事情が完全に発生する、またはその後記述されていた出来事又は事情が大きな範囲または程度に発生することを意味するものである。たとえば、用語「実質的に」は、その後記述されていた出来事又は事情が、時間の少なくとも90%で、あるいは時間の少なくとも95%で、あるいは時間の少なくとも98%で発生することを意味するものである。
【0049】
本願において使用される場合、ある物に付される「自然に発生する〜」[naturally-occurring]という用語は、その物が自然界において見出され得るという事実を意味するものである。例えば、精油は、自然界において起源から単離されることができる起源中に存在し、また研究所ないしその他の所において、精製される以外は、人によって作為的に修飾されたものでないものであるから、「自然に発生する」ものである。
【0050】
「製薬上許容される〜」[pharmaceutically acceptable]という用語は、妥当な利益/リスク比率に対応して、例えば、毒性、炎症および/またはアレルギー反応などの過度の有害な副作用を起こすことなしに、ヒトおよび/または動物に投与するのに適した化合物群および組成物群を指すものである。
【0051】
「生物学的に活性な〜」[biologically active]は、有機体の生理学的なシステムを変更することのできる能力を意味するものである。
【0052】
本願において使用される場合、「純粋な」[pure]または「実質的に純粋な」[substantially pure]は、ある目的の種(例えば、ある特定の精油)が圧倒的な種として存在する(すなわち、モル基準で、その組成物中におけるその他のいずれの精油よりも豊富であること)、および、特に、実質的に精製された分画は、当該目的物の種が、存在する高分子種の全ての少なくとも約50%(モル基準で)を構成するものである。一般に、実質的に純粋な組成物は、当該組成物中に存在する高分子種の全ての約80%より多い、より好ましくは約85%より多い、約90%より多い、約95%より多い、あるいは約99%より多い量で構成し得る。さらに、最も好ましくは、ある目的の種が、本質的な均質性のために純化され(汚染種群が、周知の検出方法では組成物中に検出できない。)、ここにおいては当該組成物は本質的にただ一つの高分子種から成ることとなる。「純粋」または「実質的に純粋」の用語はまた、目的の種(例えば、ペプチド化合物)が、少なくとも約60%(w/w)の純度、または、少なくとも約70%(w/w)の純度、または少なくとも約75%(w/w)の純度、または、少なくとも80%(w/w)の純度、または少なくとも85%(w/w)の純度、または少なくとも90%(w/w)の純度、または少なくとも92%(w/w)の純度、または少なくとも95%(w/w)の純度、または少なくとも96%(w/w)の純度、または少なくとも97%(w/w)の純度、または少なくとも98%(w/w)の純度、または少なくとも99%(w/w)の純度、または100%(w/w)の純度である、調製にも関するものである。
【0053】
「被験体」[subject]および「患者」(patient)という用語は、本明細書において相互に入れ替え可能な用語として用いられており、そして、温血動物、特に哺乳動物に関するものであることが理解されるであろう。この用語の範囲ないし意味に含まれる動物としては、限定されるものではないが、例えば、モルモット、犬、猫、ラット、マウス、ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、動物園の動物、ヒト以外の霊長類およびヒトが含まれる。
【0054】
「処置」[treatment]は、治療的処置を意味するものである。「予防」[prevention]は、予防的(prophylactic)ないし予防的(preventative)処置手段を指すものである。「処置する」[treating]の用語は、治療目的のために患者に組成物を投与することを指すものである。
【0055】
「治療的組成物」[therapeutic composition]および「製薬組成物」[pharmaceutical composition]は、当該分野において公知の任意の方法によって、あるいは本明細書において検討されたその他の任意の方法によって被験者に投与され得る、ペプチド化合物含有組成物を指し、ここにおいて当該組成物の投与は、本明細書のその他の箇所で述べる治療的効果を生じさせるものである。投与の形態としては、限定されるわけではないが、例えば、例えば、経口、局所、眼球後、結膜下、経皮、非経口、皮下、鼻腔内、筋肉内、腹腔内、硝子体内および静脈内の経路が、局部的および全身的適用の双方を含んで、含まれるものである。さらに、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)に係る組成物群は、当分野で周知の処方技術を用いて、遅延、制御、延長および/または持続的放出をもたらすように設計され得る。
【0056】
本明細書で投与の一態様を定義するために本明細書で用いられる「局所的」[topical]なる用語は、ある材料が、皮膚へ適用される、または内部的に上皮組織へ適用されることによって投与されることを意味する。
【0057】
「有効量」[effective amount]という用語は、本発明概念の方法で使用された場合に、妥当な利益/リスク比率に対応して、過度の有害な副作用(例えば、毒性、炎症およびアレルギー反応など)を起こすことなしに、検知可能な治療的効果を示すのに十分である、ペプチド化合物の量を指す。治療的効果は、特に限定されるものではないが、例えば、感染または創傷の、部分的なあるいは完全な消去を含み得る。ある患者にとっての有効量は、患者の種類、患者の大きさおよび健康状態、処置すべき状態の種類および重篤度、投与の方法、処置の期間、同時療法の種類(もしある場合)、用いられた特定の処方などに依存するものである。これゆえ、あらかじめ正確な有効量を特定することは不可能である。しかしながら、当業者であれば、本明細書において与えられる情報に基づき、慣用的な実験をおこなうことによって、与えられた状況に関しての有効量を決定することは可能であろう。
【0058】
本明細書において用いられる場合、「同時療法」[concurrent therapy]という用語は、「組合わせ療法」および「付加療法」という用語群と、互換性を持って使用されるものであり、処置を必要とする被験者が、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の治療的組成物と共に、症状を治療するための他の薬剤(例えば、イブプロフェンや筋弛緩剤など)で処置されるないしはこれを与えられることを意味するものであると理解されるべきである。この同時療法は、患者が最初に一方の薬剤で治療され、次いで他方の薬剤で治療されるといった連続的治療であっても、あるいは2つの薬剤が同時に与えられるものであってもよい。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)による組合せ治療の例は、特に限定されるわけではないが、例えば、本願明細書において述べられるペプチド群のうちの2ないしそれ以上の組合せ、当該ペプチド群のうちの1ないしそれ以上と1ないしそれ以上の他の抗生物質との組合せ、あるいは当該ペプチド群のうちの1ないしそれ以上とある特定の症状を処置するために与えられるその他の薬剤との組合せ、を含むものである。
【0059】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)に係るいくつかの実施形態では、高められた、抗菌活性、抗真菌活性、創傷治癒活性および移植組織治癒活性を有し、スケールアップされることが可能であり(すなわち、高い溶解性を有する)、そして高い純度を有する(いくつかの実施形態において少なくとも80%)、ペプチド化合物群の新規な生成が詳述される。いくつかの実施形態では、天然CAP37タンパク質から誘導された種々のペプチドにおいて修飾が行われた。天然CAP37タンパク質から誘導されたこれら種々のペプチドには、CAP37タンパク質の20-44 (配列番号 l)、23-42 (配列番号 8)、95-122 (配列番号 26)、102-122 (配列番号 27)、および120-146 (配列番号 28)アミノ酸位置から誘導されたペプチドが含まれる。当該ペプチド群の種々の実施形態は、高純度、高溶解性、および、特に限定されるものではないが、例えば緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)(抗生物質耐性の臨床分離体を含む)、アシネトバクター・バウマニイ、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)、大腸菌(エシェリキア・コリ)を含む、いくつかの細菌種に対する強力な活性を示すものであった。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるペプチド化合物群は、細菌および/または真菌感染、例えば、裂傷、擦傷、剥離、切傷および切断などのような表面創傷、並びに、例えば、糖尿病性潰瘍(例えば、脚部ないし足部)、褥瘡、床擦れ、末梢血管疾患による傷、「非治癒性」ないしは「遅治癒性」の術後傷および火傷などのような「非治癒性の創傷」、の治療に用いることができるものである。いくつかの実施形態におけるペプチド化合物群は、皮膚移植や臓器移植などのような移植の受け入れを高める処置として使用することができるものである。いくつかの実施形態におけるペプチド化合物群は、眼感染症、眼の創傷および擦傷、並びに眼潰瘍の処置として、またドライアイなどの炎症性状態の処置として使用することができるものである。当該ペプチド群は、他の抗生物質との組み合わせで、またはある特定症状を治療するために与えられる別の薬剤との組み合わせで、用いることができるものである。
【0060】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のいくつかの実施形態は、以下の式(I)で表されるペプチド化合物を含む組成物に関するものである。
SM-XR-Pep-YR (I)
(式中、Pepは配列番号l〜14、25〜31および47のアミノ酸配列のいずれか1つ、又は本願明細書において述べられるその他の適当なアミノ酸配列であり、XRおよびYRは、(XR+YR)が4、5、または6つのアルギニン残基であるという前提の下に、それぞれ独立して0、1、2、3、4、5、または6つのアルギニン残基であり、そしてSMは、次の(l)〜(3)のうちのいずれか1つの可溶化部位であって、ここで(1)はAEEAkである(式中k=1〜5)、(2) は AEEEAkである(式中k=1〜5)、(3)は AEEAmサブユニットとAEEEAnサブユニットとの組み合わせである(式中mおよびnは、(m+n)が2、3、4、5、6、7、8、9、または10であるという前提の下に、m=1〜9であり、n=1〜9であり、そしてこれらのサブユニットは任意の順序で配列され得るものである。))。
【0061】
1つの実施形態において、XRは4つのアルギニン残基を含むものであり、一方、YRは1つのアルギニン残基を含むものである。さらに、SM基は2つのAEEA部分を含み得るものである。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)による好ましい例は、特に限定されるものではないが、以下においてさらに詳述するように、配列番号21〜23および32〜46のうちのいずれか1つの配列を有する、1ないしそれ以上のペプチド化合物を含むものである。
【0062】
1つの非限定的実施形態において、前記式(I)のペプチド化合物の「Pep」配列は、次の配列(配列番号 25)を有し得るものである。
R-H-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-H-X11-R-X13-X14-M-X16-X17-X18-X19-X20
(式中、X3およびX13はフェニルアラニン、チロシン、アルギニン、リジン、またはヒスチジンであり、X4はシステイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X5およびX6はグリシンおよびアラニンから選択されたいずれかのものであり、X7、X11およびX14はアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X9、X17およびX18は、アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X16は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X19は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X20は、システイン、セリンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、Rはアルギニンであり、Hはヒスチジンであり、Mはメチオニンである。)
この配列は、配列番号8(すなわち、CAP37タンパク質のアミノ酸23-42)の誘導体である。
【0063】
別の1つの非限定的実施形態において、前記式(I)のペプチド化合物の「Pep」配列は、次の配列(配列番号47)を有し得るものである。
R-H-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-H-X11-R-X13-X14-M-X16-X17-X18-X19-X20
【0064】
(式中、X3およびX13はフェニルアラニン、チロシン、アルギニン、リジン、またはヒスチジンであり、X4はシステイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X5およびX6はグリシンおよびアラニンから選択されたいずれかのものであり、X7、X11およびX14はアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X9、X17およびX18は、アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X16は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X19は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X20は、システイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、Rはアルギニンであり、Hはヒスチジンであり、Mはメチオニンである。)
【0065】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のいくつかの実施形態は、配列番号8〜14の配列群(すなわち、それぞれ配列番号1〜7に類似し、N末端の3つのアミノ酸(NQG)およびC末端の2つのアミノ酸(FQ)が、当該ペプチド化合物のPep部位が25個のアミノ酸ではなく20個のアミノ酸を含むように切り捨て(トランケート)られた、配列群)の少なくとも1つの配列を有するペプチド化合物を含むものである。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の他のいくつかの実施形態においては、1又はそれ以上の配列番号1の配列において、フェニルアラニンのチロシンによる置換、グリシンのアラニンによる置換、バリンのアラニン、ロイシンまたはイソロイシンによる置換、アラニンのロイシン、イソロイシンまたはバリンによる置換、ロイシンのアラニン、イソロイシンまたはバリンによる置換、イソロイシンのバリン、ロイシンまたはアラニンによる置換、セリンのスレオニンまたはメチオニンによる置換、および、スレオニンのセリンまたはメチオニンによる置換、のうちの1ないしそれ以上の置換がなされ得、また2つのシステイン残基のうちの1つが現在残っている限り、システイン残基がセリン、トレオニンまたはメチオニンで置換され得るものである。同様に、配列番号26〜35の配列の1またはそれ以上において、これらの配列が本願明細書に開示され、請求の範囲に要求されたペプチドにおいて用いられる場合には、1またはそれ以上の保存的置換がなされ得るものである。
【0066】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)によって構築された組成物の1つの非限定的例は、配列番号22 [(AEEA)-(AEEA)-RRRRNQGRHFSGGALIHARFVMTAASCFQR]
(式中、AEEAは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸である。)
のペプチドを有する組成物を包含するものであり、また当該ペプチド化合物は、抗生物質と組み合わせて被験体に投与された場合に当該被験体において前記抗生物質の治療的効果を高める上で有効である。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)によって構築された組成物の他の1つの非限定的例は、配列番号32
[(AEEA)-(AEEA)-RRRRGTRCQVAGWGSQRSGGRLSRFPRFVNVR]
(式中、AEEAは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸である。)
のペプチドを有する組成物を包含するものであり、また当該ペプチド化合物は、このような治療法を必要とする被験者において、創傷治癒および抗菌活性を有するものである。
【0067】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物は、上述したような式(I)でそれぞれ表される、複数のペプチド化合物を含み得るものである。特に限定されるわけではないが、例えば、当該組成物は、少なくとも2つのペプチド化合物を含み、かつこれら少なくとも2つのペプチド化合物のそれぞれがさらに、配列番号21〜23および配列番号32〜46のいずれか1つの配列を有するものであると定義されるものとすることが可能である。他の非限定的例においては、当該組成物は、上述したような式(I)でそれぞれ表される、少なくとも2つのペプチド化合物を含み、そして第1のペプチド化合物のPepが配列番号1〜14および25のうちのいずれか1つであり、かつ第2のペプチド化合物のPepが配列番号26〜31のうちのいずれか1つであるものとすることが可能である。さらに別の非限定的例においては、当該組成物は、上述したような式(I)でそれぞれ表される、少なくとも2つのペプチド化合物を含み、そして第1のペプチド化合物のPepが配列番号26〜27のうちのいずれか1つであり、かつ第2のペプチド化合物のPepが配列番号28〜31のうちのいずれか1つであるものとすることが可能である。
【0068】
さらに、複数のペプチド化合物が、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物中に存在する場合、当該複数のペプチド化合物は、システイン残基の間での結合によってホモ多量体あるいはヘテロ多量体を形成するように多量体化し得るものである。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)によって利用可能な多量体化に関する1つの非制限的な例は、ホモ二量体および/またはヘテロ二量体を形成するための二量体化である。多量体化の一つの非制限的な方法は、「分子間酸化」を介しての結合を包含するものであり、ここにおいて、第26位のシステインの有するチオール基は、他のCys 26 ペプチドからのチオール基(SH基)と結合して、ホモ二量体を形成する。他の非制限的な二量体化方法においては、Cys 42でのSH基が、他のペプチドからのCys 42上のSH基と環化することが可能であり、Cys 42ホモ二量体を形成する。第三の非制限的な別の方法においては、別々のペプチドのCys 42とCys 26の間でのチオール基同士が結合し、ヘテロ二量体を形成する。
【0069】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物は、少なくとも1つの追加的な治療的に活性な薬剤を含み得るものである。当分野で公知の任意の治療的活性薬剤あるいは本願明細書において検討された任意の治療的活性薬剤が、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物中において当該ペプチド化合物と組み合わされ得る。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)に従って利用可能な治療的活性薬剤の非制限的な例としては、抗生物質、その他の治療的に活性なペプチド、抗菌剤、抗真菌剤、創傷治癒剤、および/または移植受容薬剤などが含まれる。
【0070】
当分野において公知の、あるいは本願明細書において検討された、任意の治療的に活性なぺプチドは、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物において当該ペプチド化合物と組み合わされ得る。治療的に活性なぺプチドの非限定的な例は、CAP37ペプチド群を含むものであり、このCAP37ペプチドには、特に限定されるものではないが、例えば、配列番号26〜28のペプチドなどが挙げられる。組成物の特定な1つの非限定的な例は、(a)配列番号21〜23のペプチド化合物の少なくとも1つ、および(b)配列番号26〜28の追加的な治療的ペプチドの少なくとも1つを含むものである。組成物の他の特定な1つの非限定的な例は、(a)配列番号32〜35のペプチド化合物の少なくとも1つ、および(b)配列番号26〜27の追加的な治療的ペプチドの少なくとも1つを含むものである。
【0071】
当分野において公知の、あるいは本願明細書において検討された、任意の抗生物質は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)にしたがって、利用され得るものである。本願明細書に開示されたペプチド化合物と組み合わせて用いることができる抗生物質の例としては、特に限定されるものではないが、例えば、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、トブラマイシン、ネオマイシン、エルタペネム、ドリピネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セフタジジム、セフェピム、セフタロリン、セフトビプロール、アズトレオナム、ピペラシリン、ポリミキシン B、コリスチン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、チゲサイクリン、並びにこれらの組み合わせおよびこれらの誘導体が含まれる。特に、抗生物質の以下の非限定的な例が、総称治癒を促進するペプチド化合物と組み合わせて、用いられる:ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、トブラマイシン、ネオマイシン、エルタペネム、ドリピネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セフタジジム、セフェピム、セフタロリン、セフトビプロール、アズトレオナム、ピペラシリン、ポリミキシン B、コリスチン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、チゲサイクリン、クリンダマイシン、クラリスロマイシン、バンコマイシン、アジスロマイシン、セフィキシム、セフトリアキソン、セファマンドール、セフォタキシム、セフジニル、バシトラシン、スルファセタミド、ドキシサイクリン、ならびにこれらの組み合わせおよびこれらの誘導体。
【0072】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物のペプチド化合物は、当分野で公知の任意の方法で製造することが可能である。例えば、当該ペプチド化合物は、合成的に製造する、あるいは組換え方法によって製造することが可能である。従って、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の他の実施形態は、本願明細書において前述した組成物の一部または全部をコード化するヌクレオチド配列を有するDNA分子が含まれるものである。例えば、DNA分子は、本願明細書において列挙した、記載した、あるいは検討したアミノ酸配列群のいずれかにおいて定義されたようなアミノ酸配列の1つ、特に限定されるわけではないが、例えば、26位または42位に置換システイン残基を有するアミノ酸配列、を有するペプチド化合物をコード化するヌクレオチド配列を有し得るものである。
【0073】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の他の実施形態は、治療的に有効な、あるいは製薬的に有効な量の、少なくとも1つの活性な成分(すなわち、本願明細書において前述した組成物の1ないしそれ以上)を、製薬上許容される担体との組み合わせで含む、製薬的組成物を包含するものである。本願明細書において用いられる場合、「製薬上許容される担体」は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物群を、被験体へと送達するための、製薬上許容される、溶剤、懸濁剤または賦形剤である。当該担体は、特に限定されるわけではないが、例えば、液状でも、固体状でもよく、そして、意図される投与の計画された方法によって選択される。ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に従い利用され得る、製薬上許容される担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリマー類、リポソーム類、エタノール、DMSO、水性緩衝液類、油類、DPPC、脂質、およびこれらの組み合わせなどが含まれる。
【0074】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)にしたがって構築された製薬的組成物の特定の非限定例は、(a)式(I)で表される1つのペプチド化合物を、製薬上許容される担体との組合せにおいて含有する組成物からなる製薬的組成物;(b)式(I)で表される少なくとも2つのペプチド化合物を、製薬上許容される担体との組合せにおいて含有する組成物からなる製薬的組成物;および、(c)式(I)で表される1つのペプチド化合物を、少なくとも1つの治療的活性薬剤(特に限定されるわけではないが、例えば、ペプチド化合物または抗生物質)および製薬上許容される担体との組合せにおいて含有する組成物を少なくとも1つ有してなる製薬的組成物を包含するものである。
【0075】
製薬的組成物は、当該ペプチド化合物および製薬上許容される担体に加えて、1乃至それ以上の追加的な成分を含み得るものであり、その成分としては、特に限定されるわけではないが、例えば、希釈剤、充填剤、塩類、緩衝液類、安定剤類、可溶化剤類、およびその他の当分野で周知の材料が包含される。処方上で含まれうる好ましい担体類、ビヒクル類、およびその他の成分は、例えば、レミントン、「ザ サイエンス アンド プラクティス オブ ファルマシイ」、第21版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed.)において記載されている。「製薬上許容される〜」[pharmaceutically acceptable]という用語は、活性な成分(成分群)の生物学的活性の有効性を阻害することのない非毒性の材料を意味するものである。担体の特徴は、投与経路に依存するものである。
【0076】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の製薬的組成物は、当該ペプチド化合物が、他の製薬上許容される担体に加えて、例えば、両親媒性物質で処理されて、リポソームの形態とされ得るものである。両親媒性物質としては、例えば、水溶液中でミセル、不溶性単分子膜、液晶または水溶液中のラメラ層として凝集した形で存在する脂質などがある。リポソーム剤型に適した脂質としては、特に限定されるものではないが、モノグリセリド類、ジグリセリド類、スルファチド類、リソレシチン、リン脂質類、サポニン、胆汁酸などが、包含される。このようなリポソーム剤型の調製は、例えば、米国特許第 4,235,871号、米国特許第4,501,728号、米国特許第4,837,028号、および米国特許第4,737,323号において開示されているように、当業者に良く知られた程度のものである。なお、これらの全ての文献は、関連により本願明細書に組み込まれるものである。
【0077】
上記から明らかなように、様々な実施形態において、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物(例えば、式(I)によって特徴づけられる)は、抗菌および/または抗真菌の治療術として、目の感染の治療として、目の創傷もしくは擦傷および/または眼の潰瘍の治療として、目のドライアイの治療として、表面の創傷治療として、治癒を促進するために使用すること、ならびに/または、皮膚および/もしくは臓器の移植の受け入れを促進するための処置として使用することが、見出された。
【0078】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のいくつかの実施形態は、患者、被験体、および/もしくは哺乳動物における細菌および/もしくは真菌感染を治療および/もしくは阻止する方法、並びに/または患者、被験体、および/もしくは哺乳動物における細菌および/もしくは真菌感染を予防的に防止する(および/もしくはその発生を減ずる)方法を包含するものである。この方法において、本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した組成物のいずれかが、患者、被験体、および/もしくは哺乳動物に投与される。特定の非限定的実施形態において、細菌感染は、特に限定されないが、例えば、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、大腸菌(エシェリキア・コリ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)およびアシネトバクター・バウマニイのようなグラム陰性細菌によって引起されるものである。他の非限定的実施形態において、真菌感染は、カンジダ属菌、出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ Saccharomyces cerevisiae)、ヒストプラズマ属、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、アスペルギルス属、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)およびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)からなる群から選択されるたいずれかの真菌生物によって引起されるものである。
【0079】
いくつかの実施形態において、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)はまた、患者、被験体、および/もしくは哺乳動物における目の創傷、目の感染、潰瘍、および/または感染症を処置する方法(特に限定されるわけではないが、局所的および/または全身的方法を含む。)が、また包含される。さらに別の実施形態においては、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、患者において表面創傷の治癒を促進するために、当該創傷を処置する方法も包含するものであり、この方法において、本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した組成物のいずれかが、患者、被験体、および/もしくは哺乳動物に投与(特に限定されるわけではないが、局所的および/または全身的方法を含む。)される。本願明細書において述べられたペプチド化合物で処置されることのできるこのような創傷の非制限的な例としては、裂傷、擦傷、剥離、切傷および切断、並びに、例えば、糖尿病性潰瘍(例えば、脚部ないし足部)、褥瘡、末梢血管疾患による傷、火傷、感染創および術後傷などのような「非治癒性の創傷」が包含される。
【0080】
他の実施形態において、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)はまた、患者、被験体、および/もしくは哺乳動物において、臓器移植片および/または皮膚移植片の治癒および受け入れを促進するために、これらを処置する方法が包含される。この方法において、本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した組成物のいずれかが、患者、被験体、および/もしくは哺乳動物に投与(特に限定されるわけではないが、局所的および/または全身的方法を含む。)される。
【0081】
本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討したペプチド化合物は、
(a)もう1つ別のものとの組み合わせで、および/または(b)少なくとも1つの追加の治療的薬剤(特に限定されるわけではないが、例えば、抗生物質またはその他の治療的化性ペプチド(特に限定されるわけではないが、例えば、他のCAP37ペプチドを含む)など)との組み合せで、投与されることができる。この文脈で使用される「組み合せで」という語は、当該ペプチド化合物(群)および/または当該治療的薬剤(群)が、実質的に同時期に、同時におよび/または完全にもしくは部分的に順番に与えられることを意味するものであり、完全にまたは部分的に順番に供給された場合、当該治療的薬剤は、当該ペプチド化合物の前および/または後に投与され得るものであり、またその逆も同様である。非限定的な例において、当該ペプチド化合物は、周知の抗生物質化学療法および/または抗生物質治療との併用療法において使用されるものであり、例えば、細菌性生物が一般的に発達した抵抗性を有しているような抗生物質などの治療法の併用療法で使用され得る。
【0082】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のいくつかの他の実施形態は、細菌感染症の治療において抗生物質の効果を高める方法を包含するものである。この方法の1つの実施形態においては、抗生物質とペプチド化合物を有してなる、本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した任意の組成物が、治療的に有効な量で、被験体に投与される。当該組成物の治療的に有効な量は、(i)単独で投与した場合には最適以下の活性であるまたは細菌に対して有効でない、および(ii)当該ペプチド化合物との組み合わせにおいて投与された場合には細菌に対して有効である、抗生物質の量を、含むものである。
【0083】
前記方法の別の実施形態は、被験体への2つの別々の成分、すなわち(a)本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した組成物であって、ペプチド化合物を有するもの、及び(b)抗生物質、の投与を包含するものである。抗生物質は、(i)単独で投与した場合には最適以下の活性であるまたは細菌に対して有効でないが、(ii)当該ペプチド化合物との組み合わせにおいて投与された場合には細菌に対して有効である、量において投与される。
【0084】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の特定の実施形態には、処置を必要とする被験体において、創傷の治癒および/または移植片の受け入れを促進するために、少なくとも創傷および移植片の少なくともいずれか1つの処置における抗生物質の効果を高めるための方法が含まれる。この方法の1つの実施形態においては、抗生物質とペプチド化合物を有してなる、本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した任意の組成物が、治療的に有効な量で、被験体に投与される。当該組成物の治療的に有効な量は、(i)単独で投与した場合には、創傷の治療を促進するおよび/または移植片の受け入れを促進するには最適以下の活性であるまたは有効でないが、(ii)当該ペプチド化合物との組み合わせにおいて投与された場合には創傷の治療を促進するおよび/または移植片の受け入れを促進する有効である、抗生物質の量を、含むものである。
【0085】
前記方法の別の実施形態は、被験体への2つの別々の成分、すなわち(a)本願明細書において上述した、あるいは本願明細書において検討した組成物であって、ペプチド化合物を有するもの、及び(b)抗生物質、の投与を包含するものである。抗生物質は、(i)単独で投与した場合には、創傷の治療を促進するおよび/または移植片の受け入れを促進するには最適以下の活性であるまたは有効でないが、(ii)当該ペプチド化合物との組み合わせにおいて投与された場合には創傷の治療を促進するおよび/または移植片の受け入れを促進する有効である、量において投与される。
【0086】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物の治療的に有効な量は、細菌および/または真菌の感染を制御する、低減する、および/または阻止する上で有効である量を指すものである。「制御する」[controlling]なる用語は、感染の進行の徐速化、遮断化、阻止化、および/または停止化などがあるであろう全ての工程を指すことを意図するものであるが、必ずしも感染の症状の完全な消失を示すものではない。
【0087】
「治療的に有効な量」なる用語は、さらに、細菌および/または真菌感染の何らかのパラメータまたは臨床的症状の改善という結果をもたらす量を定義することを意味するものである。実際の投与量は、患者の全体的な状態、症状の重篤度および処方箋指示によって変動する。ここで用いられる「治療的に有効な量」なる用語は、また、有意な患者の利益、例えば、細菌および/もしくは真菌感染の低減ならびに/または創傷および/もしくは移植片治癒における改善、を示すのに十分な、製薬組成物または方法のそれぞれの活性成分の合計量を意味するものである。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合には、この用語はその成分のみを指すものである。組合せにおいて適用される場合には、その用語は、活性成分が組合せにおいて連続的に、および/または同時に投与されたかどうかによらず、治療的効果をもたらすこれら活性成分の合計量を指すものである。
【0088】
本願明細書において述べられる処置に用いられるペプチド化合物の治療的に有効な量は、従来公知の技術を使用し、類似の状況下において得られた結果を観察することによって、一当業者として参加する診断医により決定することができる。治療的に有効な量を決定するにおいては、参加する診断医によって、いくつかの要因、すなわち、特に限定されるわけではないが、例えば、被験体の種、その大きさ、年齢、および一般的な健康状態;罹患している特定の細菌性または真菌性疾患またはその他の状態;細菌性または真菌性疾患またはその他の状態の波及ないし重篤度の程度;個々のの被験者の応答;投与された特定な化合物;投与の形態;投与された処方物の生体利用効率特性;選択された処方量;併用薬の使用;およびその他の関連する状況など、が考慮され得る。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物の治療的に有効な量はまた、細菌または真菌感染を制御するまたは低減するのに有効な、あるいは創傷または移植片の治癒の改善に有効な、ペプチド化合物の量を指すものである。
【0089】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の組成物の治療的に有効な量は、概して、約0.1 μg/kgから約100 mg/kg (活性成分/患者の体重)を供給するために十分な活性成分(すなわち、ペプチド化合物)を含んでいる。特に、当該組成物は、約0.5 μg/kgから約50 mg/kg、さらに好ましくは、約1 μg/kgから約10 mg/kgを供給するものであろう。
【0090】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の方法の実施は、任意の任意の適切な全身用および/または局所用処方とされ、そして上記に列挙した投与量を供与するのに十分な量で、ペプチド化合物を治療的に有効な量でを投与することを含むものである。細菌および/または真菌の感染を実質的に阻害するためのペプチド化合物の、ある効果的な、特定の投与量は、約1 μg/kgから約10 mg/kgのペプチドである。その投与量は、望まれる治療的な効果に依存して、特に限定されるものではないが、例えば、1回単位で投与される、あるいは複数回で(特に限定されるわけではないが、例えば、1日当り1〜5回、または週に1または2回)投与される、あるいは、静脈点滴を介して連続的に投与されることができる。本願明細書に開示された本発明概念(群)の治療方法の1つの非限定的例においては、当該ペプチド化合物は、1日当り1回、約1 mg/kgから約10 mg/kg(体重)の範囲において、静脈脈内注射にて与えられる。
【0091】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の処置または使用の方法を実施するにおいては、ペプチド化合物の治療的に有効な量が、細菌性および/または真菌性疾患状態を有する、および/または、処置されることが望まれるその他の状態(特に限定されるわけではないが、例えば、創傷または移植片)を有する、哺乳動物に投与される。当該ペプチド化合物は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の方法に従って、単独で、または他の治療法との組み合わせにおいて、投与され得る。
【0092】
治療的組成物において使用される当該ペプチド化合物の投与、あるいは本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の方法を実施することは、特に限定されるものではないが、例えば、経口的に、吸入によって(例えば、副鼻腔真菌感染症に対して)、経肛門的に、経皮的に、皮下的に、腹腔内的に、経膣的に、または静脈内的注射のような、周知の種々の手法によって行うことが可能である。経口的処方物は、当該ペプチド化合物が、放出される前に消化器系の部分を通過するように、例えば、当該ペプチド化合物が小腸または大腸に到達する前に放出されることがないように、処方されることができる。
【0093】
ペプチド化合物の治療的に有効な量が経口的に投与される場合、当該化合物は、錠剤、カプセル、散剤、溶液、またはエリキシルの形態とされ得る。製薬組成物はまた、ゼラチンやアジュバントなどの固形状担体を追加的に含有することができる。特に、錠剤、カプセルおよび散剤は、乾燥重量で約0.05%から約95%のペプチド化合物を含有するものである。液状の形態で投与される場合、水、石油、あるいはピーナッツ油、鉱物油、大豆油またはごま油など動物や植物由来の油、または合成油などの液状担体が添加され得る。製薬組成物の液状形態は、さらに、生理食塩水溶液、ブドウ糖または他の糖の溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類を含有し得る。液状形態で投与される場合には、製薬組成物は、特に、ペプチドを約0.005重量%から約95重量%含有する。例えば、約30 mlから約1000 mg 1の投与量を、1日1回または2回経口的に投与され得る。
【0094】
経口投与のために、当該ペプチド化合物は、カプセル、丸薬、錠剤、トローチ、融解物、散剤、懸濁液またはエマルジョンなどのような、固状または液状の調製物に処方されることができる。固形の単位投薬形態は、例えば、界面活性剤、潤滑剤、並びにショ糖、乳糖およびコーンスターチなどの不活性な充填剤を含む、通常のゼラチンタイプのカプセルとされることができる。または投薬形態は、徐放性の調製物とされることができる。
【0095】
別の実施形態において、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群) の化合物は、アカシア、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの結合剤、片栗粉もしくはアルギン酸などの崩壊剤、およびステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑油との組み合わせで、乳糖、ショ糖、コーンスターチなどの周知の錠剤基剤で錠剤化されることができる。液状調製物は、当該ペプチド化合物を、水性あるいは非水溶性の製薬上許容される溶媒中に溶解することによって調製され得、またこれは、当分野において知られているように、懸濁剤、甘味剤、香料、および防腐剤を含有し得る。
【0096】
非経口的投与に関しては、例えば、当該ペプチド化合物は、生理学的に許容され得る製薬用担体に溶解され、そして溶液または懸濁液のいずれかとして投与され得る。好ましい製薬用担体の例としては、水、生理食塩水、ブドウ糖溶液、果糖溶液、エタノール、または、動物、植物もしくは合成の起源のオイルなどがある。製薬用担体はまた、当分野において公知であるように、防腐剤や緩衝剤をも含み得る。
【0097】
当該ペプチド化合物の治療的に有効な量が、静脈内、皮膚または皮下注射によって投与される場合、当該ペプチド化合物は、特に、パイロジェンフリーな(発熱因子のない pyrogen-free)、非経口的に許容される溶液または懸濁液の形態である。このような非経口的に許容されるペプチド溶液の調製は、pH、等張性、安定性などに配慮し、当分野に周知な範囲内で行われ得る。静脈内、皮膚または皮下注射のための特定の製薬組成物は、当
ペプチド化合物に加えて、例えば、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖および塩化ナトリウム注射剤、乳酸加リンゲル注射液、あるいは当分野に公知のその他のビヒクルなどのような、等張性ビヒクルを含み得る。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の製薬組成物は、また、安定剤、防腐剤、緩衝液、酸化防止剤、または当業者に公知のその他の添加剤を含み得る。
【0098】
前述したように、当該組成物はまた、適切な担体を含むことができる。局所的使用に関しては、ローション、軟膏、パウダー、クリーム、スプレーまたはエアロゾルの形態に当該ペプチドを処方するために、任意の周知の賦形剤が添加され得る。外科的移植に関しては、当該ペプチド化合物は、ポリ乳酸やコラーゲン処方物のような、周知の生分解性ないし生体侵食性の担体の任意のものと、組合せられ得る。このような材料は、固形のインプラント、縫合糸、スポンジ、創傷被覆材などの形態で有り得る。いずれにしても、局所的使用に関しては、当該ペプチド化合物は、通常、担体または賦形剤中に、重量比で、約1 : 1000〜約1 : 20,000の割合で存在するが、もちろんこのような比率に何ら限定されるものではない。局所的使用のための組成物の調製は、レミントン、「ザ サイエンス アンド プラクティス オブ ファルマシイ」、第21版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed.)において詳述されている。
【0099】
先に述べたように、投与の特定の量と様式は、当業者によって決定され得るものである。処方物を調製する当業者は、選択したペプチド化合物の特別な特徴、処置すべき感染、感染の段階、およびその他の関連した状況に応じて、容易に適切な形態と投与の様式を選択することができ、当分野に公知の、記載された、例えば、レミントン、「ザ サイエンス アンド プラクティス オブ ファルマシイ」、第21版に記載された、処方技術を用いて、実施し得る。
【0100】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の製薬組成物は、当分野で公知の技術を利用した製造が可能である。代表的には、治療的に有効な量のペプチド化合物は、薬学的に許容可能な担体と混合される。
【0101】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、局所的な細菌または真菌感染を、当該感染を処置するのに十分な組成物の量、例えば、約5重量%〜約10重量%の組成物、を局所的に適用することによって、処置する方法を含むものである(しかしながら、何らこれに限定されるものではない。)。局所薬は、ペースト、ゲル、クリームおよい軟膏などの標準的形態の任意のものとすることが可能である。一実施形態においては、投与するための当該組成物が、経皮吸収を促進するものとして公知の溶剤、特に限定されるものではないが、例えば、エタノールまたはジメチルジメチルスルホキシド(DMSO)を、その他の賦形剤と共にあるいはこれなしに、用いて調製され得る。特に、局所的投与は、リザーバーと多孔質膜とのタイプか、固形のマトリックス集合体かのいずれかの、パッチを用いることで行い得る。
【0102】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の製薬組成物における当該ペプチド化合物の量は、処置している状態の状況と重篤度、および患者が受けてきた以前の処置の状態によって異なるものである。最終的には、担当する医師が、個々の患者を治療するための当該ペプチド化合物の量を決定する。当初は、担当する医師は、当該ペプチド化合物の低用量を投与し、患者の応答性を観察するであろう。投与量を増加させることが、当該患者において最適な治療的効果が得られるまでなされ、そして、その時点からは投与量がさらに増加されることはない。ある特定の投与量を保持することが何ら希望されるものではないとの前提のもとで、本願明細書に開示された本発明概念(群)の方法を実施するために用いられる様々な製薬組成物は、特に限定されるわけではないが、例えば、一投与量当り、体重1kg当り約0.1 mg〜約100 mgのペプチド化合物を含有し得ることが、考慮されると、述べ得る。
【0103】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の製薬組成物を用いた静脈内療法(輸液)の期間は、処置を受けている疾患の重篤度や、個々の患者の状態および潜在的な個々に特有な応答によって、異なる。当該ペプチド化合物の各適用の期間が約1時間〜約2時間の範囲内であり得、また連続的な静脈内投与によって12時間ないし24時間毎に1回与えることが考慮される。他の抗生物質、輸液、および心循環系および呼吸系のサポートは、必要に応じて、当分野に公知の方式によって担当の医師により提供され得る。
【0104】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物によって処置され得る細菌は、特に限定されるものではないが、例えば、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、大腸菌(エシェリキア・コリ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)およびアシネトバクター・バウマニイ、大腸菌(エシェリキア・コリ)などのような、グラム陰性菌を包含するものであるが、特にこれに限定されるものではない。本願明細書に開示され本発明概念(群)のペプチド化合物によって処置され得る真菌感染は、特に限定されるものではないが、例えば、カンジダ属菌、出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)、ヒストプラスマ・カプスラーツムおよびヒトプラスマ症を引起すその他のヒトプラスマ種、アスペルギルス・フミガーツスおよびアスペルギルス症を引き起こす(主に肺に起こる)その他のアスペルギルス種、およびクリプトコッカス症として知られる疾患を引起すクリプトコッカス・ネオフォルマンス(時として肺に見出されるが、主にCNSに存する)、によって引き起こされるものを含むものである。
【0105】
追加的なの製薬的方法は、当該ペプチド化合物の作用の持続時間を制御するために採用され得るものである。増加した半減期および/または調節された放出の調製物は、本願明細書に述べられる当該ペプチド化合物を抱合する、複合体化する、および/または吸収する、ポリマー類を使用することにより達成され得る。調節された供給および/または増加した半減期は、適切な高分子(何ら限定されるものではないが、例えば、多糖類、ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ホモポリマー ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドなどのようなアクリルアミド類)を選択し、そして調節された放出のために、当該高分子の適切な濃度並びに包含の方法を選択することで達成され得る。
【0106】
放出制御調製物および半減期によって作用の存続期間を制御するに有用な別の利用可能な方法としては、ペプチド化合物またはその機能的誘導体を、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミノ酸、ハイドロゲル、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、および、PEGやポリ(L−アスパラタミド)などの共重合体ミセルなどの重合性材料の粒子中に取り込ませることが挙げられる。
【0107】
たとえば、コアセルベーション技術または界面重合(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)によって、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム類、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて、形成されたマイクロカプセル中に当該ペプチド化合物を封入することも可能である。このような技術は、当業者に周知のものである。
【0108】
当該ペプチド組成物が注射可能な材料として用いられる場合、周知の注射可能な担体中に処方することが可能である。好ましい担体としては、生体適合性で製薬上許容されるリン酸緩衝生理食塩水溶液類が含まれ、これらは特に等張性のものである。
【0109】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)に従って凍結乾燥製品の再構成するためには、おおよその生理学的な条件のために一般的に認識されるおよび/または政府の規制によって必要とされる特定の材料を含む可能性がある、滅菌された希釈液を用いることが可能である。この点に関して、滅菌された希釈液は、生理学的に許容されるpHを得るための緩衝化剤、例えば、塩化ナトリウム、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水溶液など、および/または、生理学的許容および/または使用のために安全である他の物質を、含み得るものである。一般に、ヒトにおける静脈内注射のための材料は、当分野において入手可能な、食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって設定された規制に従わなければならない。製薬組成物は、凍結乾燥製品の再構成のため、上記したものと同じ物質群の多くを含んでいる水溶液の形態とすることができる。
【0110】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物は、また、製薬上許容される酸または塩基-添加塩として投与されることができ、これらは、例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸などの無機酸と、あるいは、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの有機酸と反応させることによって、または例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基と、あるいは、例えば、モノ-、ジ-、トリアルキルアミンおよびアリールアミン、および置換エタノールアミンなどの有機塩基と反応させることによって、生成させることが可能である。
【0111】
前述したように、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物は、治療目的のために使用される製薬的調製物中に取り込まれ得るものである。しかしながら、「製薬的調製物」[pharmaeutical preparation]なる用語は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)にしたがってペプチド化合物を含有する調製物群を包含するように、ここにおいてはより広義な意味を意図されるものであり、治療的な目的のためだけではなく、当分野で公知なように、試薬的ないしは診断的な木う的のためにも使用されるものである。治療的使用を意図された製薬的調製物は、「製薬上で許容された」または「治療的に有効な量」の、すなわち、予防的または治療的な健康尺度での量の、当該ペプチド化合物を含むべきである。一方、製薬的調製物が試薬あるいは診断薬として用いられるべき場合には、試薬的あるいは診断的量の当該ペプチド化合物を含むべきである。
【0112】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の特定の実施形態は、本願明細書において上記に記載したまたは本願明細書において検討された、いずれかの組成物を、本願明細書において上記に記載したまたは本願明細書において検討された、いずれかの方法において使用することに係るものである。
【0113】
本願明細書において列挙された診断的および検定方法は、本明細書において提供された教示を与えられた場合には、十分に当業者の技量の範囲内である。
【0114】
略語: ANOVA - 分散分析。CAP37 - 分子量37 キロドルトン(KDa)のカチオン性抗菌タンパク質。BCA - ビシンコニン酸。BSA - ウシ血清アルブミン。DA8 - ジアミノベンジジン テトラハイドロクロライド。BPI - 殺菌性透過性増強(bactericidal permeability-increasing)。DAG - ジアシルグリセリン。EDTA - エチレンジアミン四酢酸。EGF - 上皮成長因子。EGFR - 上皮成長因子受容体。ERK - 細胞外シグナル調節キナーゼ。FBS - ウシ胎児血清。GCSF - 顆粒球コロニー刺激因子。GM-CSF - 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子。GPCR - G タンパク質共役受容体。HB-EGF - ヘパリン結合 - 上皮成長因子。HBSS - ハンクの平衡塩溶液。HCEC(s) - ヒト角膜上皮細胞(群)。H & E - ヘマトキシリンおよびエオシン。HGF - 肝細胞増殖因子。HBD-1 - ヒト β-ディフェンシン-1。IL-6 - インターロイキン-6。IL-8 - インターロイキン-8。IP 10 - インターフェロン - 誘導タンパク質-10。KC - ケラチン合成細胞誘導ケモカイン。KSFM - ケラチン合成細胞無血清培地。LPS - リポ多糖。MCP-1 - 単球走化性タンパク質 1。NADP - ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸。PBS - リン酸緩衝生理食塩水。PDGF-BB - 血小板由来成長因子-BB。PKC - プロテインキナーゼC。 PMA - ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート。PMSF - フッ化フェニルメチルスルホニル。RIPA - 放射性免疫沈降法。ROS - 活性酸素種。SDS-PAGE - ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動法。SFM - 無血清培地。TBS - トリス緩衝生理食塩水。TBST - トリス緩衝生理食塩水トゥイーン(登録商標)20(TWEEN 20)(サーモ フィッシャー サイエンティフィック、ピッツバーグ、ペンシルバニア州(Thermo Fisher Scientific, Pittsburg, PA))。TGF-β - 形質転換増殖因子β。TNF-α - 腫瘍壊死因子α。
【実施例】
【0115】
ここまで一般的に述べられた、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、以下の実施例群および実施形態群を参照することによって、さらに容易に理解されるであろう。なお、以下の実施例群および実施形態群は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のある特定の特徴および実施態様を説明することのみを目的としてここに含まれたものであって、それらに限定されることを意図するものではない。以下に詳述した実施例群および方法群は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の種々のペプチド化合物群をどのように調製するか、またどのように使用するかについて記載するものであり、そして、上述したように、これらは、単に例示的なものであり、本開示をどのようにも全く限定するものでないものと解釈されるべきである。当業者であれば、これらの化合物群および方法群から適切な変更態様を容易に認識できるであろう。
【0116】
実施例1
ペプチド 20-44 (配列番号 l)に基づくペプチド化合物の抗菌活性、および活性を増加させる方法、ならびにペプチド20-44、95-122および120-146(それぞれ配列番号 l、26および28)に基づく化合物のアップスケールした生産。
【0117】
ある特定の実施形態群においては、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、1つのアミノ酸配列を有するオリゴペプチド誘導体、および1つの可溶化部分をからなる、ペプチド化合物群を含むものであり、ならびにその組成物群を包含するものである。当該オリゴペプチド誘導体は、例えば、CAP37タンパク質のアミノ酸配列 20-44 (配列番号 l)、23-42 (配列番号 8)、95-122 (配列番号 26)、102-122 (配列番号 27)、および120-146 (配列番号 28)からなる群から選択されたいずれか1つのCAP37タンパク質CAP37 タンパク質部分配列に基づくものであり得る。
【0118】
ある特定の実施形態群においては、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、1つのオリゴぺプチドおよび1つの可溶化部分を有するオリゴペプチド誘導体群(すなわち、ペプチド化合物群)を含む組成物群を包含するものである。当該オリゴペプチド誘導体ないしペプチド化合物は、以下の式(I)で表される:
SM-XR-Pep-YR (I)
(式中、Pepは配列番号l〜14、25〜31および47(例えば、第1表を参照のこと。)のアミノ酸配列のいずれか1つ、又は本願明細書において述べられるその他の適当なアミノ酸配列であり、XRおよびYRは、(XR+YR)が4、5、または6つのアルギニン残基であるという前提の下に、それぞれ独立して0、1、2、3、4、5、または6つのアルギニン残基であり、そしてSMは、次の(l)〜(3)のうちのいずれか1つの可溶化部位であって、ここで(1)はAEEAkである(式中k=1〜5)、(2) は AEEEAkである(式中k=1〜5)、(3)は AEEAmサブユニットとAEEEAnサブユニットとの組み合わせである(式中mおよびnは、(m+n)が2、3、4、5、6、7、8、9、または10であるという前提の下に、m=1〜9であり、n=1〜9であり、そしてこれらのサブユニットは任意の順序で配列され得るものである。)
【0119】
本願明細書において上述したように、XRおよびYRは、(XR+YR)が4、5、または6つのアルギニン残基であるという前提の下に、それぞれ独立して0、1、2、3、4、5、または6つのアルギニン残基である。一例として、以下の第2表は、式(I)に基づき利用することができるXRおよびYR基の種々の組合せを列挙するものである。第2表に開示されるアミノ酸配列RRRRは、本願明細書において、配列番号15を割り当てられており、一方、アミノ酸配列RRRRR および RRRRRRは、配列番号16および17をそれぞれ割り当てられている。一つの非限定的例においては、XRは4つのアルギニン残基を有し、一方、YRは1つのアルギニン残基を有している。
【表1】
【表2】
【表3】
【0120】
AEEAは、[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-酢酸(8-アミノ-3, 6-ジオキサオクタン酸としても知られる。)であり、またAEEEAは、2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-酢酸(ll-アミノ-3,6,9−トリオキサウンデカン酸としても知られる。)である。1つの非制限な例においては、SM基は2つのAEEA部分を含むものである。
【0121】
ペプチド化合物が2つのシステインを有する場合(例えば、配列番号lまたは8)、オリゴペプチドは、その内部における2つのシステイン残基間の結合によって環化されることが可能である。
【0122】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物群は、少なくとも1つの実施形態において、重度のグラム陰性菌(特に限定されるものではないが、例えば、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)、アシネトバクター種および大腸菌(エシェリキア・コリ)を含む。)感染の処置のために用いられることができる。これらの生物は、致命的な院内感染を引き起こすことができるものであり、そして現在の抗生物質療法に対する耐性を急速に獲得しているものである。CAP37のアミノ酸20-44からなるペプチド(配列番号 l)は強力な抗菌活性を有するものの、その溶解性が悪いことを一部の理由として、商業的規模で生産することは困難である。以前に確立された方法論を使用しては、十分な量と純度でこのペプチドをスケールアップすることは失敗に終わっている。多数の技術的なアプローチ、アミノ酸群の組合せ、合成手順、および純化を含む、実質的な研究や実験が、本願明細書において述べられる、商業的にスケールアップされた規模で生産可能でありそしてそれゆえ臨床的に使用可能である、新規で活性なペプチド化合物に最終的に到達するために、必要であった。とりわけ、本願明細書において述べられるペプチド化合物群の新規な特徴は、向上した溶解性、増加した殺菌効果、低減した凝集性、改善された合成、拡張性、および高められた純度である。
【0123】
天然の20-44ペプチドの誘導体化バージョンである、新規ペプチド化合物群は、天然の20-44ペプチド配列の実質的に残りの全ての活性、すなわち、例えば、強力な抗菌作用、リポ多糖(LPS)に結合し中和する能力、および哺乳類細胞に対する低毒性など、を維持しているものである。
【0124】
細菌に対して活性であり、哺乳類細胞に対して低毒性を示す、そして商業的に実行可能な製造コストでスケールアップすることができる、カチオン性の抗菌性ペプチドの生産は、この分野における他の作業のほとんどを避けてきたものである。さらに、その凝集性ゆえに、純化は挑戦できるものであった。しかし、本願明細書に記載の新規なペプチド化合物群は、向上した溶解性を有しており、このことは、その純化および抗菌活性を非常に容易なものとするものである。
【0125】
本願明細書に記載の新規なペプチド化合物群のうちの特定のもののその他の利点には、特に限定されるものではないが、(1) 多数の抗生物質耐性パターンを有する臨床分離体を殺すこれらの能力、および(2)これらの有する細菌殺菌速度が、従来の抗生物質よりもはるかに高速である(例えば、数分以内)ことが、含まれるものである。
【0126】
スケールアップの実現は、挑戦的なものであり容易なものではなかった。学術的な小規模環境におけるCAP37抗菌性ペプチド群の合成は成功したが、このアプローチは、スケールアップした生産に容易に移植することはできなかった。主要な問題は、凝集にあるように見えた。
【0127】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)につながる研究作業の初期の段階においては、ペプチド群を製造するために、アミノ酸の逐次的付加が用いられた。3つの候補ペプチド(CAP3720-44 (配列番号 l)、CAP3720-44ser26 (配列番号 2)、CAP3720-44ser42 (配列番号 5))が合成された。合成のこのモードによって製造された3つの全てのペプチドは、かなり不溶性のものであった。これらの結果に基づき、研究作業は、一度に1つのペプチドの生産ということに焦点を当て、そしてCAP3720-44ser42 が選択された。1つの実施形態において、アミノ酸の逐次的付加ではなく、フラグメントFmoc縮合法が使用された。このフラグメント縮合法において、3つの小さなフラグメントが製造され、そしてこれらを合せて縮合することで、CAP3720-44ser42 アミノ酸配列(配列番号 5)を形成した。この背後にある理論的根拠は、3つの小さなフラグメントが高純度体として合成され、そして一緒にして結合させることができるので、凝集の問題のいくつかを克服できるというものであった。この合成からの製品は、1%酢酸に対して透析され、そして凍結乾燥されて、約50%の純度であると測定された。このペプチドの抗菌活性は通常得られたものの約半分であった。1つの実施形態において、前述の透析処理は、希釈トリフルオロ酢酸(TFA)溶液(例えば、0.1%)を用いるものに変更され、これによってより強力な抗菌活性と高い純度 (約80%)を有する製品を得ることができた。次の生産においては、安定性を改善する試みで、合成時に保護されそして純化の最終段階で脱保護される1つシステイン残基が、用いられた。
【0128】
最終的に、各化合物の20 グラムが得られた。しかしながら、凝集と溶解性の主要な技術的な問題は、大分克服されたものの、まだ残るものであった。このため、臨床試験のための大規模な生産が容易でないことが示された。多くの試行錯誤や実験の後に、ペプチドのCOOH 末端および/またはNH2末端で、複数のアルギニン(R)残基を加える発想が見出された。最初のイテレーション(反復)では、COOH末端に1つとNH2末端に2つの、計3つのR残基が追加された。アルギニン残基を使用することによる溶解度と活性における効果は顕著に改善された。この成功裡の結果に基づいて、前述の3つの配列のそれぞれが、合計5つのアルギニン残基を有するペプチド主鎖として合成された(例えば、COOH末端に1つとNH2末端に4つ。例えば、第1表における配列番号18〜20を参照のこと)。化合物のスケールアップが成功し、各ペプチドのグラム単位での合成が可能となった。さらに、生体外的な(インビトロな in vitro)抗菌活性が、以前オリジナルのペプチドで観察されていたものより顕著に大きいものであった。これら3つの5-アルギニンペプチドは、2.5 μΜ程の低濃度で、> 97% 殺菌を示し、これは、以前に観察されていたものよりも10倍高いものであった。
これらの3つの5-アルギニンペプチド(配列番号18〜20)は、また、大腸菌(エシェリキア・コリ)およびネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)を含む他のグラム陰性生物に対しても強力な活性を示した。これらの新規に合成されたペプチドの高められた能力に起因して、当該ペプチドが哺乳動物細胞において細胞毒性を有するかどうかについて検討された。当該ペプチドは、乳酸デヒドロゲナーゼ細胞毒性検出キット(Lactic Dehydrogenase Cytotoxicity Detection kit)(ロシュ ダイアゴノスティック コーポレーション、インディアナポリス、インディアナ州(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN))を使用して評価され、当該ペプチドは、試験された最高濃度(75 μΜ)でも最小限の細胞毒性活性しか有していないことが判った。4時間のインキュベーションの後、3つのペプチドのすべてが、<4% 細胞毒性を示した。24時間のインキュベーションの後、細胞毒性のレベルにわずかな増加があり、ペプチド20-44ser26 (配列番号 19)は、23%、ペプチド20-44ser42 (配列番号20)は5%、そしてペプチド20-44cys (配列番号18)は10%の活性をそれぞれ示した。
【0129】
これら3つの5-アルギニンペプチド(配列番号18〜20)の全てが、カブトガニ血球抽出成分(Limulus Amebocyte Lysate (LAL))検定によって測定された場合に、シュードモナスLPSを結合するものであった。しかしながら、これらのペプチドはLPSの毒性効果を中和することができることは実証されなかった。RAW264.7 マクロファージ細胞のよく特徴付けられた応答が、LPSに対する応答において腫瘍壊死因子α(TNF-α)を産生するために用いられ、これらのペプチドがこのサイトカインの放出を鈍らせるかどうかをについて測定した。これら3つの5-アルギニンペプチドの全てが、シュードモナスLPSに対する応答において、TNF-αの放出を減ずるものであり、そして、この結果は、投与量依存性であった。重要なことは、ペプチドを用いた、前処理 (LPSを添加する3時間前)ならびにRAW264.7 細胞の後処理(LPSを添加した3時間後)の後処理は、サイトカインの放出を弱まらせたことである。対照のペプチドは、TNF-αの放出を減衰することができなかった。さらなる研究は、この減衰は、主に、転写因子核因子 - カッパB (NF-κB)の活性をブロックすることによるものであるようであることを示した。新規なペプチドが結合し、シュードモナスLPSの効果を中和するとの知見は、本願明細書において記載さっる新規な治療的ペプチド化合物が細菌を殺すだけでなく、敗血症の急速な進行に重要な役割を果している、当該細菌によって放出されるLPSエンドトキシンを中和するということを、保証するものであるため、臨床的に重要である。
【0130】
アルギニン群が、ペプチドの主鎖を形成するペプチドに結合した場合(配列番号18〜20)、当該ペプチドにおける溶解性における顕著な増加と、非常に強力な活性(細菌負荷の1 x 106 CFU/ml から 1 x 10 CFU/mlへの低減する能力、5対数の減少)があった。これらのペプチド(配列番号18〜20)は高い能力を有するものであったが、これらは、約70%を超えた純度に純化することができなかった。多くの時間と実験的努力が、純化技術を探索するために研究に費やされたが、収量および純度は、約70%を超えては増加できなかった。このことは、多くの数の生体外的なLPS結合実験と殺菌性の研究が行われ、そして効果が示されたものであったゆえ、非常に残念であった。最後に、大規模な追加実験の後に、別の可溶化部分がペプチドに追加され、そしてこの追加が、半減期、溶解度、およびペプチドの純度を増加させた。この実施形態において、当該可溶化部位は、一対の小さな(”mini")PEG分子 AEEA(それぞれ約375の分子量を有する。)から構成されるものであった。
【0131】
AEEA で構成される2 つのPEG可溶化部位は、ペプチド主鎖のアミノ末端の端部に、末端間(end-to-end)で結合された。第1表は、2つのAEEA 分子が、配列番号 18、配列番号 19 および配列番号 20 のそれぞれに結合してなり、そして本願明細書において化合物名BCC01-5RMP (配列番号 21)、BCC02-5RMP (配列番号 22)、および BCC03-5RMP (配列番号 23)を、それぞれ割り当てられた3つのペプチド化合物を示している。これら3つのペプチドの化合物において(上記式 (I) を参照)、SMはAEEA-AEEAであり、 XR は RRRR (配列番号15)であり, YR はRであり、そしてPepは、それぞれ、配列番号1、配列番号2および配列番号5である。
【0132】
5つのアルギニンと2つのAEEA部位を有するこれらのペプチドの純度は、定常的に96.12%〜98.62%であった。良好な研究実施(GLP)級のペプチド合成が、BCC02-5RMP(配列番号 22)で達成され、そして75gのペプチドが97.24%の純度で合成された。
【0133】
20-44配列に基づくペプチド群(配列番号21〜23)に加えて、アミノ酸群95-122(配列番号26および配列番号 27)および120-146(配列番号32〜35)に基づいたペプチドの合成の間に、5つのアルギニンと2つのmini-PEG(商品名)(AEEA、AEEA)を包含させることが、これらのペプチドにおける全体的なスケールアップに同様に役立つものであった。
【0134】
インビトロ殺菌活性:
3つペプチド化合物、BCC01-5RMP (配列番号 21)、BCC02-5RMP (配列番号 22)、および BCC03-5RMP (配列番号 23)は、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、大腸菌(エシェリキア・コリ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)およびアシネトバクター・バウマニイに対するインビトロ殺菌活性に関して測定された。すべての実験に関して開始の接種量は、1 x 106コロニー形成単位(CFU)/mlであった。60〜80分間のインキュベーション後に、残存するコロニー形成単位が数えられ、そしてデータはCFU/mlにおける対数減少としてプロットされた。ペプチドは、シュードモナス属やアシネトバクター属に対して最も強い活性を示したが、サルモネラ種や大腸菌に対してはより低い活性であった。第3表に示すインビトロ殺菌活性は、BCC01-5RMPがこの評価で他の2つのペプチドよりもわずかに優性を有することを示している。
【表4】
【0135】
第4表〜第6表は、緑膿菌および大腸菌株に対する様々なペプチドおよびペプチド化合物の結果を示すものであるあ。第4表および第5表は、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)およびエシェリキア・コリ ATCC(商標名) 25922(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、ペプチドないしペプチド化合物BCC03-5RMP (配列番号:23)、BCC03-MP (配列番号 24)およびBCC03-5R (配列番号 20)の効果を調べた結果を示すものである。5つの追加のアルギニン残基群を有する2つのペプチド化合物(すなわち、BCC03-5RMP (配列番号 23)およびBCC03-5R (配列番号 20)は、可溶化部位SMを有するが5つの追加のアルギニン残基群は有しないBCC03-MP (配列番号 24)の効果をはるかに凌ぐものであった。第6表は、BCCOlの"5R"バージョン、即ち、配列番号 18(5つの追加のアルギニン残基群を有する配列番号1から構成される。)、BCC02の"5R"バージョン(即ち、配列番号 19であって、5つの追加のアルギニン残基群を有する配列番号2から構成される。)、ならびにBCC03-5RMP (配列番号 23)およびBCC03-MP(配列番号 24、すなわち、5つの追加のアルギニン残基群を有しない。)を含む、いくつかの他の化合物の活性を比較したものである。このデータは、概して、大腸菌に対するBCC03-5RMP (配列番号 23)の優越性および緑膿菌に対する"5R"または"5RMP"バージョンのペプチドの優越性を示すものである。
【0136】
BCC02-5RMP (配列番号 22)のインビボ殺菌活性:
図1はC57/BLマウスの細菌性角膜炎モデルにおけるインビボでのBCC02-5RMP (配列番号 22)の使用の結果を示すものである。円形の創傷(2mm)は上皮を除去することにより、マウスの角膜上で作成され、105コロニー形成単位(CFU)のシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(登録商標) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))で感染させた。感染した創傷は、最初の日において、2時間の間15分毎に、次いで3時間の間30分毎に、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム、ビヒクル対照)またはペプチドの示された濃度を含む生理食塩水で処置された。感染した創傷は、2日目に2回処置され、そして3日目に1回処置された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。平均値がプロットされ、この平均値は、各グループごとに5匹のマウスの代表するものである。マンホイットニー検定を、生理食塩水対照群と比較して、グループごとに行った。ペプチド化合物は、効果的にすべての細菌を殺し、そして0.25〜0.75 mg/mlの濃度の範囲内での感染を治癒した。
【表5】
【表6】
【表7】
【0137】
実施例2:インビトロでのLPS結合および中和
BCC01-5RMP (配列番号 21)、BCC02-5RMP (配列番号 22)、および BCC03-5RMP (配列番号 23)が、カブトガニ血球抽出成分(Limulus Amebocyte Lysate (LAL))を用いて、これらのリポ多糖(LPS)を結合する能力に関して試験された。これらの3つのすべてのペプチドは、シュードモナスLPSに結合した。LALを用いてのLPSを結合するこれらの能力に有意差はなかった。これらのペプチドのLPSを中和する能力が、LPS刺激化RAW264.7 細胞 (マウスのマクロファージ細胞系統)からの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の放出を減衰させる能力を測定することによってすることで評価された。これらの3つのすべてのペプチドは、TNF-αの放出を減衰させることが観測された。サイトカインの放出よって測定された、これらのペプチドのLPSを中和する能力に有意差はなかった。
【0138】
配列120-146に基づくペプチド群(配列番号28〜31)もまた、シュードモナスLPSに結合し、これを中和する。
【0139】
実施例3:BCC03-5RMPの合成および純化
この合成の目的は、BCC03-5R (配列番号 20) を合成し、そしてこれに2つのmini-PEG(商品名)分子(AEEA; ペプチド インターナショナル、インコーポレーテッド、ルイビル、ケンタッキー州(Peptides International, Inc., Louisville, KY))をカップリングさせることで、BCC03-5RMP (配列番号23): (AEEA)-(AEEA)-RRRRNQGRHFCGGALIHARFVMTAASSFQRを製造することである。合成後、当該ペプチド化合物は純化され凍結乾燥された。
【0140】
合成: ペプチド化合物は、Fmoc化学プロトコルを使用して固相ペプチド合成法を用いて合成され得る。ペプチド鎖は、Fmoc-Arg(Pbf)-Wang樹脂上に合成された。アミノ酸の3つの等価物が、それぞれのカップリングに用いられ、そしてカップリングは、DIC/HOBT法を用いて実施された。ペプチド鎖の合成の完了後に、両方のFmoc-mini-PEG(商品名)が、DIC/HOBT法を用いてカップル化された。合成後、樹脂は洗浄され、乾燥された。
【0141】
ペプチド化合物は脱保護化され、TFAを含むスカベンジャーのカクテルを用いて、樹脂から切断された。樹脂を濾去し、濾液はTFAを除去するために蒸発器で蒸発された。ペプチド化合物はエーテルで沈殿され、沈殿物を濾去し、減圧下で乾燥して、粗ペプチドを得た。
【0142】
純化:純化は、YMC ODS Gel C18を支持体として使用して、RP-HPLCによって行った。0.1 % TFA/H20 とアセトニトリルが、純化の溶剤として用いられた。分画は分析HPLCによって検査され、そして要求される純度を有する分画が一緒にして集められた。集められたものが、蒸発させられ、そして乾燥凍結された。この手法を使用して生成されたペプチドの純度は定常的に、> 95%であった。
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の他の実施形態においては、ペプチド化合物群は、CAP37タンパク質のその他のアミノ酸部位(特に限定されるものではないが、例えば、ペプチド23-42、95-122、102-122および120-146が包含される。)の誘導体から構成されるものであり、そしてこれらは前記式(I)や第1表やそれに伴う記載のような本明細書の別の場所において述べたように、置換(例えば、131位および/または132位)で、および/またはN−もしくはC−末端アルギニン残基およびmini-PEG(商品名)分子で、誘導体化されているものである。CAP37タンパク質のこのようなペプチド23-42、95-122、102-122、および120-146は、例えば、米国特許第5,107,460号、米国特許第7,354,900号および米国特許第7,893,027号において記載されており、これらの文献の内容はその完全性をもってその関連により本願明細書に明示的に組み込まれる。
【0143】
式(I)のペプチド化合物の「Pep」配列は、次の配列(配列番号 25)を有し得るものである。
R-H-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-H-X11-R-X13-X14-M-X16-X17-X18-X19-X20
(式中、X3およびX13はフェニルアラニン、チロシン、アルギニン、リジン、またはヒスチジンであり、X4はシステイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X5およびX6はグリシンおよびアラニンから選択されたいずれかのものであり、X7、X11およびX14はアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X9、X17およびX18は、アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X16は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X19は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X20は、システイン、セリンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、Rはアルギニンであり、Hはヒスチジンであり、Mはメチオニンである。)
この配列は、配列番号8(すなわち、CAP37タンパク質のアミノ酸23-42)の誘導体である。
【0144】
同様に、前記式(I)のペプチド化合物の「Pep」配列は、次の配列(配列番号47)を有し得るものである。
R-H-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-H-X11-R-X13-X14-M-X16-X17-X18-X19-X20
(式中、X3およびX13はフェニルアラニン、チロシン、アルギニン、リジン、またはヒスチジンであり、X4はシステイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X5およびX6はグリシンおよびアラニンから選択されたいずれかのものであり、X7、X11およびX14はアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X9、X17およびX18は、アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X16は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X19は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X20は、システイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、Rはアルギニンであり、Hはヒスチジンであり、Mはメチオニンである。)
【0145】
実施例4
95-122に基づいた(配列番号 26〜27および46)および120-146に基づいた(配列番号28〜35)ペプチド化合物群の化学走化性および創傷治癒活性
【0146】
一実施形態において、配列番号26〜35から構成されるペプチド化合物を含む、本願明細書に記載された特定のペプチド化合物群は、単球と角膜上皮細胞を含む宿主細胞に関して化学走化性を有する。例えば、ペプチド95-122は、角膜上皮擦傷のインビボマウスモデルにおいて角膜創傷治癒を促進すること、およびブタにおける皮膚創傷治癒を促進することが本願明細書において示された。CAP37タンパク質のペプチド120-146に基づいたペプチド化合物群もまた、細菌活性ならびに宿主細胞の免疫制御を有している。このようなペプチド化合物群の非限定的な例が、以下に述べられ、そして第1表中に列挙されている(配列番号26〜35参照のこと。)。
【0147】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物群は、特に限定されるものではないが、例えば以下に述べるように、創傷の迅速な治癒を支援する治療として使用することができる。感染した傷の治療に使用できるるものとして抗生物質が存在するが、これらの薬剤のいずれも、細菌を殺すことと創傷治癒促進および/または皮膚移植受入れの改善との双方を示すものではなかった。本願明細書において述べられるようなペプチド化合物群は、上記した両方を行ない得るものであり、医学的に大きなメリットがある。従って強い商業化の可能性を有している。これらのペプチドの化合物を使用して処置することできる傷の種類には、特に限定されるものではないが、例えば、糖尿病性潰瘍、「床擦れ」、火傷患者、感染性乾癬障害、「ドライアイ」炎症性状態などのような慢性の「非治癒性の」創傷、並びに眼潰瘍、眼創傷、皮膚および上皮組織の創傷などの急性創傷が含まれる。前述のように、ペプチド化合物の別の機能は、皮膚移植などの移植の治癒と受入れを促進することである。
【0148】
ペプチド 95-122および102-122: ペプチド95-122 (LDREANLTSSVTILPLPLQNATVEA GTR; 配列番号26)はCAP37 タンパク質のアミノ酸95-122に相当するものである。ペプチド 102-122 (TSSVTILPLPLQNATVEAGTR; 配列番号27)は、95-122 のトランケーションであり、そして、CAP37 タンパク質のアミノ酸102-122に相当するものである。これらのペプチドとその誘導体は、例えば、角膜潰瘍や創傷を有する被験体における角膜上皮細胞の増殖および移行を増加させるため、およびこれらの付着性を高めるため、および皮膚創傷治癒を加速するために、治療的に有効な量で使用されることができる。
【0149】
これらのペプチド (例えば、図2〜6および7〜9においてペプチド95-122に関して示される)は、例えば、(a); 単球の化学走化性、(b) 角膜上皮細胞など上皮細胞の化学走化性、(c)角膜上皮 (図 2,3)における創傷治癒を、引き起こすおよび/または促進するために用いられ得る。図2は、データを分析し、ヒストグラムとして表したものである。図3は、処置されたマウスの目の実際の写真である。この写真からのデータが、図2においてヒストグラムおよび(d)ペプチドの基質内注入に反応したサイトカイン産生 (図4〜6)を作成するのに使用された。
【0150】
ペプチド 120-146「(および誘導体):以下に述べるものは、ペプチド120-146 (配列番号: 28)に基づいたものであり、また120-146Q として知られている。これらのペプチドは、特に限定されるわけではないが、例えば、120-146QH、 120-146WR、120-146WH、 120-146QR-5RMP、 120-146 QH-5RMP、120-146WR-5RMPおよび 120-146WH-5RMPを含むものである。
【0151】
1. ペプチド 120-146 、本願明細書において131位のグルタミン (Q) および132位のアルギニン (R)に関してペプチド120-146QRとも称呼されるものは、次の配列を有する:GTRCQVAGWGSQRSGGRLSRFPRFVNV (配列番号: 28)。
【0152】
2. ペプチド 120-146QHは、角膜上皮細胞から配列決定されたCAP37タンパク質の誘起体から誘導され、そして以下の配列(これは132位のアルギニンがヒスチジンによって置換されているものである(これゆえ、120-146QHという名前である。)以外はペプチド120-146QRと同じものである: GTRCQVAGWGSQHSGGRLSRFPRFVNV (配列番号: 29)。
【0153】
3. ペプチド 120-146WR は、ペプチド 120-146QRの類似物であり、131位のグルタミン(Gin, Q)が トリプトファン(Trp, W)によって取り替えられている。このペプチドは次の配列を有している: GTRCQVAGWGSWRSGGRLSRFPRFVNV (配列番号: 30)。
【0154】
4. ペプチド 120-146WH は、ペプチド 120-131の類似物であり、131位のグルタミンがトリプトファン(Trp, W)によって取り替えられている。このペプチドは次の配列を有している: GTRCQVAGWGSWHSGG LSRFPRFVNV (配列番号: 31)。
【0155】
5. ペプチド 120-146QR-5RMP はペプチド 120-146QR の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSQRSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 32)。
【0156】
6. ペプチド 120-146QH-5RMP はペプチド 120-146QH の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSQHSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 33)。
【0157】
7. ペプチド 120-146WR-5RMP はペプチド 120-146WR の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSWRSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 34)。
【0158】
8. ペプチド 120-146WH-5RMP はペプチド 120-146WH の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSWHSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 35)。
【0159】
実施例4の材料と方法
【0160】
ペプチドの合成: アプライド バイオシステムズ モデル 430A ペプチドシンセサイザー(Applied Biosystems model 430A peptide synthesizer)にての固相合成法を用いたペプチドを合成した(0.1 mmolまたは 0.5 mmolスケール)。
【0161】
動物: C57BL/6 雌マウスはザ ジャクソン ラボラトリー (バーハーバー、メイン州、アメリカ合衆国)(The Jackson Laboratory (Bar Harbor, ME, USA))から購入した。すべての動物が人道的に扱われまた。ザ インスティチューショナル アニマル ケア アンドユース コミッティ(IACUC)、オクラホマ大学、オクラホマシティ、オクラホマ州(The Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC) at the University of Oklahoma, Oklahoma City, OK)およびディーン マギー アイ インスティテュート、オクラホマシティ、オクラホマ州(Dean McGee Eye Institute, Oklahoma City, OK)が、すべての動物の研究プロトコルを承認した。
【0162】
角膜創傷治癒のインビボモデル:創傷治癒のインビボモデルは、使い捨て生検パンチ(2 mm、ミルテックス、ヨーク、ペンシルバニア州(Miltex, York, PA))を用いてマウス角膜を画定し、AlgerBrush II (ザ アルジェ カンパニー インコーポレテッド、ラゴヴィスタ、テキサス州(The Alger Company, Inc., Lago Vista, TX))を使用した0.5 mmのめくれでマウス角膜上皮を除去することで、実施された。角膜の擦傷は、ペプチド 95-122 (10-5 M)、ペプチ 120-146WH(lO-6 Mおよび10-8 M)、ペプチド120-146WR(lO-6 Mおよび10-8 M)、またはビヒクル対照(0.9% 塩化ナトリウム、pH 5.5、バクスター、ディアフィールド、イリノイ州(Baxter, Deerfield, IL)))で 0 時間目と16時間目に処置された。角膜の傷は、滅菌 PBSで弱められた滅菌フルオレセイン ナトリウム点眼ストリップ USP (Fluorets(商標名)、ショーヴァン ラボラトリー、オーベナス、 フランス(Chauvin Laboratory, Aubenas, France))を用いて可視化された。画像は、0、16、24 時間目のフルオレセイン染色直後に撮影された。
【0163】
化学走化性: 化学走化性は改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)によって測定された。ペプチド120-146QHは、10-4 M、10 M-6 M、10-8 M、10-10 M、および10-12 Mで使用され、ペプチド120-146QRは、10-4 M、10 M-6 M、10-8 Mおよび10-10 Mで使用された。
【0164】
統計的分析: インビボ創傷治癒実験は、対応のないt検定(unpaired t-test)とANOVA使用して分析された。ボイデン チャンバー化学走性実験は、ウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon signed-rank test)によって分析された。統計は、グラフパッド プリズム 4.03 (グラフパッド ソフトウェア インコーポレーテッド、サンディエゴ、カリフォルニア州)( GraphPad Prism 4.03 (GraphPad Software, Inc., San Diego, CA))を用いて計算された。独立した実験値群の平均は ± SEMで示され、そして< 0.05 の P値が、すべての統計解析に関して有意であると考慮された。
【0165】
実施例4の結果
【0166】
ペプチド120-146QR(配列番号28)および120-146QH(配列番号29)は、HCEC群の化学走化性を容易とした。CAP37誘導化ペプチドのHCEC移動に及ぼす影響を明らかにするために、HCECsは、HCECsにおいて見出される天然CAP37配列に基づくペプチド 120-146QH (配列番号 29)、および 好中球において見出される天然CAP37配列に基づくペプチド120-146QR (配列番号: 28)で処置され、これらのペプチドに応答した移動が、改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)を用いて測定された。ペプチド120-146QH(配列番号29)の104 M、10 M-6 M、10-8 M、および10-10 Mでの処理、並びに、ペプチド120-146QR(配列番号28)の10 M-6 Mおよび10-8 Mでの処理は、投与量依存性をもってHCECs の移行を顕著に増加させることが見出された(図7)。両方のペプチドは10 M-6 Mと10-8 Mの間で移動を最大限に促進した。HB-EGF (正の対照)およびCAP3(ペプチドに関する正の対照)に応答しての移動において顕著な増加があった(図7)。ペプチド120-146QH(配列番号29)の10 M-6 Mおよび10-8 Mでの移動は、完全CAPタンパク質で得られた移動に匹敵するものであった。ペプチド120-146QR(配列番号28)での移動は、完全CAPタンパク質で得られた移動よりは小さいものであったが、緩衝液対照と比較すると顕著なものであった。
【0167】
ペプチド120-146WH(配列番号 31)は、角膜創傷治癒を促進するものである。角膜創傷治癒過程に及ぼす 120-146WR (配列番号 30)と120-146WH(配列番号 31)ペプチドの効果を測定するために、創傷治癒のインビボモデルが利用された。ペプチド120-146WH(配列番号 31)は、投与量依存性をもっての生体内で傷の治癒に貢献した(図8および9)。
【0168】
その結果、ペプチド120-146WH(配列番号 31)は10 M-6 Mと10-8 Mの間で創傷治癒を最大限に促進した。120-146WH処置した傷における治癒量は、ビヒクル処置した試料と比較して有意に大きかった(対応のないt検定(unpaired t-test)によって、*** P < 0.001、*P < 0.05)(図 8)。インビボの創傷の代表的な画像は、20-146WH処置した傷対ビヒクル処置した傷における創傷治癒において投与量依存性の増加を示した(図 9)。本願明細書に記載したデータは、120-146に基づくペプチド化合物は、細菌を殺すだけでなく、化学走行性を仲介し創傷治癒を促進するものであったことを示している。天然CAP37タンパク質の残基 20-44 (配列番号: l)および95-122 (配列番号: 26)に基づくその他の生理活性ペプチドのいずれも、このような双方の機能を有していない。
【0169】
ペプチド 120-146の誘導体群は、一実施形態において、皮膚および/または眼の使用に適したものして、また、特定の実施形態では、創傷治癒に適したものとして処方され、インビボにおいて創傷治癒に効果的であった。(たとえば、図7〜8は、120-146に基づくペプチド群 (配列番号 28〜31)を示す)。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のいくつかの実施形態は、さらに創傷治癒特性を有する本願明細書記載のペプチド化合物を、他の120-146に基づくペプチド化合物、あるいはCAP37ペプチド化合物の20-44-5RMP シリーズのいずれか(すなわち配列番号21〜23)と、組み合わせて用いることをさらに含むものであり、双方の治癒並びに抗感染力が提供される。
【0170】
実施例5: 120-146に基づいたぺプチド化合物群の抗菌活性
【0171】
この実施例ではぺプチド120-146に基づいたプチド化合物 (すなわち、配列番号 28-35)、並びにこれらの化合物を含む組成物が、様々な細菌に対して抗菌活性を有することが示される。この実施例では、特に限定されるものではないが、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、アシネトバクター・バウマニイおよびその他の細菌を含むさまざまな感染症を処置するための抗生物質としてこれらの化合物/組成物が有用性であることが示された(図10〜14)。これらのペプチド化合物/組成物は、標準的な抗生物質に耐性のある細菌に対して単独で使用できる。これらのペプチド化合物/組成物は、また、抗生物質は中性pHで有効な抗生物質として (図11〜12)、およびゲンタマイシンが効果がないレベルを含む低pHで有効な抗生物質として(図 10、13)使用可能である。
【0172】
実施例5の材料と方法
【0173】
図10〜13に関して、インビトロ殺菌アッセイでは、1 x 106 CFU/mlの細菌懸濁液の開始接種を使用して行った。60〜180分のインキュベーション後に、残存するコロニー形成単位が数えられ、そしてデータはCFU/mlにおける対数減少としてプロットされた。
【0174】
特に、試験ぺプチド(CAP37 ペプチド群120-146WR、120-146WHおよび95-122 (それぞれ、配列番号30, 31および26)のそれぞれは、25、12.5、6.25および3.12 μΜで使用された。ゲンタマイシンは、4μg/mlで使用された。1×106/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)、および正の対照ゲンタマイシンと、pH 7.2で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0175】
図14に関しては、1×106/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、試験ペプチド群(CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)、120-146QR(配列番号 28)、120-146QH(配列番号 29)、120-146QR-5RMP (配列番号 32)および120-146QH-5RMP (配列番号 33))のそれぞれの150、75および37.5μg/mlと共に、あるいは、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)と共に、pH 5.5で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0176】
図15〜17に関しては、マウスの眼における標準的な緑膿菌角膜炎モデルを使用して、ペプチドのインビボ殺菌活性を調べた(図15〜17)。ペプチド群120-146QR-5RMP (配列番号: 32)、120-146WH (配列番号: 31)、および 120 146WR (配列番号: 30)が、105 CFUの緑膿菌に感染した傷付いた角膜に2、5、10および20mg/mlの投与量で局所的に適用されまた。ペプチドの効力がビヒクル対照での処置と比較された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。
【0177】
実施例5の結果
【0178】
図10および11は、コンパレータ抗生物質としてのゲンタマイシンと比較しての、 CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の、アシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter Baumannii) ATCC(商標名) BAA-747(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、2つの異なるpH値での、殺菌活性を示すものである。図に示されるように、CAP37 ペプチド 120-146WRと 120-146WHを最高のペプチド濃度で使用した場合に、CFU/mlは、pH 5.5 (図 10)でほぼ4対数分、pH 7.2 (図 11) でほぼ5.5対数分減少し、したがって、ペプチドはpH 7.2でpH 5.5 よりも大きいな活性を有していた。標準的な抗生物質のゲンタマイシンは、標準的な最小阻害濃度 (MIC)以上で使用されたにもかかわらず、pH 5.5では細菌を殺すことができなかった。対照的に、標準的な抗生物質のゲンタマイシンはpH 7.2でバクテリアに対して活性であった。ペプチド95-122は、いずれのpHにおいても、アシネトバクターに不活性であった。 25μΜでのペプチド 120-146WR とペプチド120-146WH、および12.5 μΜでのペプチド120-146WR が、アシネトバクター・バウマニイに対して非常に活性であった。
【0179】
図12と13は、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、2つの異なるpH値での、殺菌活性を示すものである。図に示されるように、ペプチド120-146WRおよび120-146WHを最高のペプチド濃度で使用した場合に、CFU/mlは、pH 7.2 (図 12)で6対数分、pH5.5(図 13) で4〜5対数分減少し、したがって、ペプチドはpH 7.2でpH 5.5 よりも大きいな化性を有していた。25μΜでのペプチド120-146WRおよび120-146WHが、pH 7.2で標準的な抗生物質のゲンタマイシンと同等の有効性を示した。ゲンタマイシンは、標準的な最小阻害濃度 (MIC)以上で使用されたにもかかわらず、pH 5.5では細菌に対して前記ペプチド程有効ではなかった(2対数分の減少を示すのみ)。ペプチド95-122は、いずれのpHにおいても、シュードモナス・アエルギノーザに不活性であった。 25μΜでのペプチド 120-146WR および12.5 μΜでのペプチド120-146WR が、同じ効果を示した。25 μΜでのペプチド 120-146WRとゲンタマイシンは、シュードモナス・アエルギノーザに対して非常に活性であった。
【0180】
図14は、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)、120-146QR(配列番号 28)、120-146QH(配列番号 29)、120-146QR-5RMP (配列番号 32)および120-146QH-5RMP (配列番号 33)の殺菌活性の比較を示すものである。図に示されるように、天然の配列を持つペプチド群(120-146QRおよび120-146QH、それぞれ配列番号 28および29)の最高濃度で、CFU の数は 1〜2対数分で低下した。131位のアミノ酸残基のトリプトファンでの置換によって、ペプチド群(120-146WRおよび120 146WH、それぞれ配列番号 30および31)の殺菌能力は向上し、CFUを6対数分減少させた。比較的低い活性を有する天然の配列の5RMPの添加による修飾(120-146QR-5RMP, 120-146QH-5RMP、それぞれ配列番号32および33)は、ペプチド (75 μ g/ml)の低濃度でも、CFUで約 6対数分の減少を示すように殺菌能を増加させた。配列120-146WR-5RMP (配列番号: 34)および120-146WH-5RMP (配列番号: 35)で作成したペプチドは、ペプチドの実質的に低い濃度でも、非常に効果的であると外挿法によって結論づけられた。
【0181】
図14は、5RMP延長(配列番号32〜33)の比較的不活性なペプチド120-146QR (配列番号: 28)および120-146QH (配列番号: 29)への添加が、いかに殺菌活性を顕著に高めるかをしめいている。ぺプチド120-146WR(配列番号 30)および120-146WH(配列番号 31)は、インビボ殺菌アッセイにおいて非常に強い活性であり、131位のグルタミン残基 (Q)のトリプトファン残基 (W)との交換によって、殺菌が著明に増加したことが示されている。従って、120-146WR-5RMP (配列番号: 34) または 120-146WH-5RMP (配列番号: 35)に基づくペプチドが、卓越した殺菌能を持っていることが予測できる。
【0182】
ペプチド 120-146QR-5RMP (配列番号: 32)、120-146WH (配列番号: 31)、および 120-46WR (配列番号: 30)のインビボ殺菌活性が、マウスの眼における標準の緑膿菌角膜炎モデルを用いて検討された。図15は、ペプチド120-146QR-5RMP (配列番号: 32)が、10および20 mg/mlの投与量でCFU/目を顕著に低減したことを示している。これら2つのグループで10匹のマウス中6匹が、処置の後に眼に生きた細菌を有していなかったことが示されている。図16は、ペプチド120-146WH(配列番号 31)が10および20 mg/mlの投与量でCFU/目を顕著に低減したことを示している。図17は、ペプチド120-146WR(配列番号 30)が5、10および20 mg/mlの投与量でCFU/目を顕著に低減したことを示している。
【0183】
実施例6
95-122に基づいたぺプチド化合物群と120-144に基づいたぺプチド化合物群を用いた皮膚創傷治癒研究
【0184】
この実施例では、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物が、臨床的に重要であるブタ全層切除創傷モデルにおける皮膚の創傷治癒過程におけるこっらの活性に関して評価された。3つの異なるペプチド処方(グループB:ペプチド 95-122 (配列番号 26)、グループC:ペプチド120-146WH (配列番号 31)、およびグループD:ペプチド120-146QH-5RMP (配列番号 33))が、それぞれ同じ濃度(3 mg/ml)で評価された。滅菌生理食塩水を対照 (グループA)として与えた。
【0185】
全層切除の傷は、1.0 cm 生検パンチを使用してブタ(N = 3) の背部に形成された。処置は、各傷 (1グループあたり N = 6(傷))に投与(20ml)にされることで実施され、そして、創傷は、、標準閉塞性ドレッシング(TEGADERM・ 3M Corporation, St. Paul, MN)で覆われた。処置は毎日再適用され、ドレッシングが交換された。臨床的創傷治癒観察および創傷領域(2mm)計測は、創傷形成後0、3、5、7、10、14日目に行われた。創傷領域(2mm)データは、創傷治癒の百分率(%)で表された。動物は、14日目に屠殺され、創傷が採取され、組織学的評価がなされた。臨床的観察は、研究を通して紅斑および浮腫に関してグループ間に顕著な違いがないことを明らかにした。すべてのペプチド製剤治療群は、生理食塩水対照(グループA)と比較して、全時間にわたって、閉鎖と再上皮化のより高い率をもってより高速に治癒することが示された。
【0186】
生理食塩水対照グループAと比較しての定量的創傷面積測定の結果(図18および第7表参照)は、創傷治癒の百分率(%)が、研究全般を通じてグループ B (95-122;配列番号26)創傷に関して大きいものであった。グループ B (95-122) は、創傷治癒における顕著な(p < 0.05)増加を5、7、10、14日目において示し、また、10日目で創傷閉鎖および再上皮化の99.7%を示した。グループC (120-146WH、配列番号: 31)およびD(120-146QH-5RMP、配列番号: 33 )も創傷治癒における顕著な(p < 0.05)増加を創傷形成後、10、14日目において同様に示した。第8表は、創傷治癒計測の統計的解析を示すものである。
【表8】
【表9】
【0187】
図19は、生理食塩水(第1列)、ペプチド 95-122 (配列番号 26、第2列)、ペプチド 120-146WH (配列番号 31、第3列)、またはペプチド 120-146QH-5RMP (配列番号: 33、第4列)に応答しての創傷治癒の程度を示す7、10、および14日目に撮影された代表的な写真を示すものである。
【0188】
臨床的観察は組織学と相関した。すべてのペプチド治療群(グループB:ペプチド 95-122 (配列番号 26)、グループC:ペプチド120-146WH (配列番号 31)、およびグループD:ペプチド120-146QH-5RMP (配列番号 33))が、生理食塩水対照(グループA)と比較して、創傷形成14日後において、上皮の再現と表皮の成熟に関して大きな程度を示した。組織学的評価の結果は、図 20 及び第4表に示される。肉芽組織、炎症、血管新生の量または特徴に最小限の違いがあった。すべての創傷が、十分に覆われ、脈管形成された。主要な相違は、グループ B、C、およびDは、生理食塩水対照と比較して、上皮の再現と表皮の成熟(基底層と基底層上層の成層、よく組織化された角質層の外観)の大きい程度を示したことであった。
【表10】
【0189】
実施例7
雄ラットへの単回静脈内投与後の 14C-BCC03-5RMP(配列番号: 23)の薬物動態、分布および排泄
【0190】
この実施例の目的は雄ラットへの単回静脈内投与後の14C-BCC03-5RMP (配列番号: 23)の薬物動態、分布および排泄を評価することである。14C-BCC03-5RMP由来放射能の薬物動態、排泄、および分布が、14C-BCC03-5RMPの単一静脈内投与(20 mg/kg; 125 μα/kg)後において雄スプレイグ ラットで検討でされた。14C-BCC03-5RMP1は、水中5v/v%のブドウ糖、pH 5.5で処方され、5 mL/kg の投与量で投与されました。合計放射能(グループ 1)の薬物動態の評価は、投与後0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、および72時間で採血した。排泄プロファイルの評価は、投与後0〜8および8〜24 時間から尿が採取され、そして投与後168 時間に至るまで24 時間間隔で尿が採取された。糞は、投与後168時間に至るまで24 時間間隔で採取された。分布プロファイルの評価は、投与後0.25、1、4、24、72 時間毎に動物1匹を犠牲とし、そして、定量的全身オートラジオグラフィー (QWBA)のために屠殺体が準備された。液体シンチレーション計数(LSC) によって全血、血漿, 尿、糞(酸化後)、ケージリンス、ケージ洗浄および屠殺体で放射能の濃度を測定した。組織内濃度が、 MCID(商品名)解析ソフトウェア (InterFocus Imaging Ltd Corp., UK)を使用して各標準曲線から補間により算出された。血液及び血漿中総放射能の薬物動態学的パラメーターは、WinNonlin Professional Edition (version 5.2, Pharsight Corporation, St. Louis, MO)を用いて算出された。
【0191】
静脈内投与後のグループ1の動物の血液および血漿中の総放射能の平均値 (± SD)の薬物動態パラメーターが第10表に示される。
【表11】
【0192】
図21に示すように14C-BCC03-5RMP (配列番号: 23)の静脈内投与後に、血液及び血漿中放射能濃度が最終分析(投与後72 時間)まで定量化された。血液及び血漿中への放射能の露出(AUC0-t)は類似する。ただし、血液中放射能の除去の半減期値 (t1/2)は、血漿のそれの約2.5倍より大きいものであるため、血漿と比較して血液中には約2 倍大きい露出 (AUC0-∞) であるとの結果となった。血漿中放射能のクリアランスは血と比較しておよそ倍大きく、そして血液および血漿におけるクリアランス値は、ラットの肝血流量の率より小さい。血液中の総放射能の分布容積は血漿と比較した場合約 1.6倍大きいかった。そして血液及び血漿中の分布量は、ラットの体内総体液量よりも大きかった。平均の血対血漿の濃度比は、0.689〜3.11であり、血液の細胞成分へ放射能の優遇分布が示された。
【0193】
静脈内投与後のグループ2の動物の投与放射能量の平均(± SD)回収率を第11表にまとめた。
【表12】
【0194】
静脈内投与後に、投与放射能量の大半は尿中に回収され、このことは腎除去が14C-BCC03-5RMP 関連放射能の除去の主要な役割を果たすことを示した。静脈内投後の投与放射能量の約2%の糞便の除去は、14C-BCC03-5RMP 関連放射能の肝・胆道排泄が少なかったことを示した。放射能は、投与後最初の48時間以内で、投与放射能の約55%が比較的急速に除去された。残留放射能は、投与後168時間を通じて糞尿で検出された低レベルでゆっくりと、除去された。屠殺体で放射能の回収は、投与放射能量の約23%が計測最後の時点で組織中に保持されていたことを示した。
【0195】
分布プロファイルに基づいて、14C-BCC03-5RMP 関連放射能は、単回静脈内投与後に、雄性ラットの組織や臓器に迅速かつ広範囲に分配されたことを示した。中枢神経系 (CNS)に関連する組織を除いて、組織の大半は Tmax(、最大濃度Cmaxに到達する時間)として 0.5 または 1.0 時間を有していた(図 22)。放射能の濃度は一般的に時間の経過とともに減少 (長い Tmax値が観察された中枢神経系、生殖組織を除いて)したが、最後の採取時点においても測定可能であった。最も高い放射能濃度を有していた組織は、甲状腺、下垂体前葉、腎皮質、副腎、および腎臓であった。最も低い放射能濃度を有していた組織は、眼水晶体, 硝子体液、脂肪(腹部)、脳の髄質であった。放射能は、血: 脳関門 (小脳、大脳、延髄、脊髄)によって保護されたCNS組織で検出され、このことは、14C-BCC03-5RMP 関連放射能は血: 脳関門を横切るものであることが示された。投与後24 72 時間の範囲でのこれら組織に観察されたTmax値は、これらの組織への遅延分布があることを示した。放射能の濃度は精巣においても観察され、このことは14C-BCC03-5RMP 関連放射能は血: 精巣関門も横切るものであることを示した。精巣に観察される Tmax値は投与後72時間であり、この放射能の濃度は血漿で観察されたものより少なかった。
【0196】
14C-BCC03-5RMP 関連放射能は、目と目の組織で検出されました。眼と眼組織で観察されたTmax値は、投与後 0.25 4 時間の範囲であった。。眼と眼組織内で観察された放射能濃度は、一般的に時間の経過とともに減少したが、最後分析時点においても測定可能であった。眼の脈絡膜管における分布の蛍光は、14C-BCC03-5RMP 関連放射能はこの組織に優先的に配布されることを示すものであった。組織: 血漿濃度比が、主要な組織に関して1より大きかった。いくつかの組織 (腎、副腎、膵臓、下垂体組織)において、非常に高い組織: プラズマ濃度比(最大103)が認められた。
【0197】
結論として、 14C-BCC03-5RMP (配列番号: 23)の静脈内投与後において、血液中での放射能発現と放射能の除去の半減期値は、血漿中の放射能よりも大きかった。総放射能のクリアランスは低く、分布容積は高かった。投与放射能量の大半は、尿中に回収され、このことは腎除去が14C BCC03 5RMP 関連放射能の除去の主要な役割を果たすことを示した。 14C-BCC03-5RMP関連放射能は、組織や臓器血流に限らずに迅速かつ広範囲に配布された。14C-BCC03-5RMP関連放射能は、血液: 脳関門および血液: 精巣関門を横切るものであった。
【0198】
実施例8:CAP37タンパク質を用いての角膜創傷治癒
ヒト角膜上皮細胞 (HCEC)の単層が、「傷付けられ」、次いでCAP37 で処置され、創傷閉鎖がは時間をかけて記録された。角膜創傷治癒のインビボモデルにおいて、2 mm径の傷がマウス角膜に形成された。創傷はCAP37で処置され、創傷閉鎖はフルオレセイン染色による16および24時間目に観察された。CAP37処置は、角膜創傷治癒を促進することが示された。関連CAP37配列は、米国特許第 7,354,900号に開示されており、その内容はその関連により完全に本願明細書に参照により明示的に組み込まれる。
【0199】
実施例8の材料と方法
【0200】
細胞培養: アデノ ウイルス SV40 不死化HCECsを、James Chodosh (ボストン、マサチューセッツ州)から提供物として入手した。HCECs は、製造元のよって提供されたL-グルタミン (2 mM、Gibco )、抗生物質−抗真菌薬 (0.1 単位/ml ペニシリンGナトリウム、100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩、0.25 μG/ml アムホテリシンB、Gibco)、および成長サプリメントを追補してなる、規定されたケラチン合成細胞無血清培地(KSFM, Gibco, Grand Island, NY)中で維持され、この実験で使用されるHCECsは10〜20の間のパセージであった。
【0201】
最初のHCECs は、ライオンズ アイバンク (オクラホマシティー、オクラホマ州)から取得したドナー角膜から分離された。それぞれの角膜は4分割され、ディスパーセ (25 caseinolytic U/mL; Becton Dickinson Discovery Labware, Bedford, MA)および 5 μ g/mL ゲンタマイシン(A.G. Scientific Inc., San Diego, CA)を含む ハンクの平衡塩溶液中に配置された。角膜組織は、4℃で氷上にて一晩インキュベートされた。角膜上皮細胞は、メスで角膜の表面の上皮層を持ち上げることによって得られた。0.25% トリプシン-EDTA (トリプシン-エチレンジアミン四酢酸、Gibco)での5分間の消化の後、熱不活化ウシ胎児血清 (FBS、Gibco) の等量を角膜上皮細胞に追加した。細胞は450 X gで5分間遠心分離され、そして細胞ペレットは製造者によって指定された成長因子を追補したKSFMで再懸濁された。細胞は、播種され、フィブロネクチン、コラーゲン及びアルブミンを含有するFNC コーティング混合物 (AthenaES、ボルティモア、メリーランド州)で処理された組織培養皿で培養した。すべての実験を実行する前に HCEC培地は、最低18時間の成長因子が含まれていないKSFM(基底 KSFM)中に置かれた。
【0202】
組換えCAP37の産生: 組換えCAP37(rCAP37)は、RSV PL4発現ベクターを用いて、ヒト萌芽期腎臓(HEK)293細胞で産生されまた。組換えタンパク質は、前述のHPC4イムノアフィニティーカラムで精製された。rCAP37のすべての調製物は、0.01% 酢酸中で透析し、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE) とウェスタンブロット分析によって純粋であると決定された。上記した改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)によって機能活性を評価した。これらの研究で使用されるrCAP37は、カブトガニ血球抽出成分(Limulus Amebocyte Lysate (LAL))検定によって測定された場合に、タンパク質の1μg当り、<0.05 エンドトキシン単位を有するものであった。
【0203】
動物: CC57BL/6 雌マウスはジャクソンラボラトリー(バーハーバー、メリーランド州) から購入した。マウスは4-7日順応させ、実験の開始時にすべて8週齢とした。ザ インスティチューショナル アニマル ケア アンドユース コミッティ(IACUC)、オクラホマ大学、オクラホマシティ、オクラホマ州(The Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC) at the University of Oklahoma, Oklahoma City, OK)およびディーン マギー アイ インスティテュート、オクラホマシティ、オクラホマ州(Dean McGee Eye Institute, Oklahoma City, OK)が、すべての動物の研究プロトコルを承認した。
【0204】
創傷治癒のインビトロモデル:インビトロ擦傷アッセイは、角膜創傷治癒を促進するrCAP37 の能力を決定するために用いられた。ヒト角膜上皮細胞は、コンフルエント単層を得るまで、上記のように培養された。10μlピペット チップを使用して2つの垂直線を作成するように各単層を擦傷した。単層は、パリン結合上皮成長因子(HB-EGF、250 ng/ml)、rCAP37 (25-2000 ng/ml)または基底KSFM (Gibco)で処理された。創傷の閉鎖は、カメラ付倒立顕微鏡(TE2000-E、ニコン、メルヴィル、ニューヨーク州)を用いて、0時間目、18時間目、24時間目および48時間目に観察された。インビトロの傷閉鎖の時間経過の画像は、カメラ付倒立顕微鏡(TE2000-E、ニコン)を使用して、0〜18 時間で得られた。HCEC単層は、前述のようにHB-EGF、rCAP37、および基底KSFMで処置された。各擦傷の幅は、ImageJ ソフトウェア (US National Institutes of Health, Bethesda, MD)を使用して測定した。結果は、傷の閉鎖の百分率として表される。
【0205】
創傷治癒のインビボモデル: マウスはケタミン (100 mg/kg; Bionichepharma, LLC., St. Lake Forrest, IL)およびキシラジン (10 ng/kg;Rompun;Bayer Corp., Shawnee Mission, KS)を使用して麻酔され、そして右の角膜は次のようにして傷付けられた。使い捨て生検パンチ(2 mm、ミルテックス、ヨーク、ペンシルバニア州(Miltex, York, PA))を用いてマウス角膜を画定した。AlgerBrush II (ザ アルジェ カンパニー インコーポレテッド、ラゴヴィスタ、テキサス州(The Alger Company, Inc., Lago Vista, TX))を使用して2mmの画定された範囲内で0.5 mmのめくれでマウス角膜上皮を注意深く除去した。角膜の傷は、HB-EGF(250 ng/ml)、rCAP37 (25-2000 ng/ml)またはビヒクル対照0.9%塩化ナトリウム、pH 5.5、バクスター、ディア フィールド、イリノイ州)で処置された。角膜の傷は、滅菌 PBSで弱められた滅菌フルオレセイン ナトリウム点眼ストリップ USP (Fluorets(商標名)、ショーヴァン ラボラトリー、オーベナス、 フランス(Chauvin Laboratory, Aubenas, France))を用いて可視化された。画像は、0、16、24および48時間のフルオレセイン染色直後にカメラ(Carl Zeiss OPMI VISU 140, Carl Zeiss Surgical, Inc., Oberkochen, Germany)付きの手術顕微鏡を用いて撮影を行った。各開いた傷の面積は、ImageJ ソフトウェア (US National Institutes of Health, Bethesda, MD)を使用して測定した。結果は、傷の閉鎖の百分率として表される。
【0206】
組織学: マウスの完全眼が、傷付けた後の 0、6、16、24、および 48 時間で組織学のために採取された、そして直ちに、Prefer fixative (Anatech LTD., Battle Creek, MI)に20 分間浸漬された後、70% エタノールに移された。組織は、パラフィン包埋化され、5μmの厚さに切断され、そしてSUPERFROSTPLUS(登録商標名)スライド(Statlab Medical Products, Lewisville, TX)上に載置され、その後脱パラフィン化され、再水和され、そして脱イオン水で洗浄された。切片は、ヘマトキシリン(Leica Microsystems, Buffalo Grove, IL)で染色され、脱イオン水で 2回洗浄した後、Blue Buffer (Leica Microsystems)中で洗浄した。切片は最終的に脱イオン水と 95% エタノールで洗浄され、エオシン(Leica Microsystems)で対向染色された。切片は、エタノールで脱水され、キシレンで浄化された。
免疫組織化学: マウスの完全眼が、集られ、固定され、埋め込まれ、そして前述したように切断された。抗原検索が、切片をRodent Decloaker (BioCare Medical, Concord, CA) で処理し、これを20 分間蒸したのち、脱イオン水で20分間冷却することによって行った。切片は30分間Rodent Blocker M (BioCare Medical, Concord, CA)でブロックされ、脱イオン水で1回当り5分間で3回洗浄され、そして、過酸化物ブロック(Cell Marque, Rocklin, CA)で10分間ブロックされた。切片は次いで、脱イオン水中で1回当り5分間で3回洗浄され、ウサギ抗 PKCPKC(4 Santa Cruz Biotechnology, Inc. Santa Cruz, CA)と 4 ℃で一晩インキュベートされた。切片は、ウサギ IgG(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)と 4 ℃で一晩インキュベートされ、非特異的染色のための対照として使用された。一次抗体でのインキュベーション後、切片は、トリス緩衝生理食塩水 (TBS)で 5 分間、3回洗浄し、そして、齧歯類上ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP)-ポリマー(メディカル・バイオケア)( rabbit-on-rodent horseradish peroxidase (HRP)-polymer (BioCare Medical))と30分間インキュベートされた。TBS 5 分間、3回洗浄し、そして、3', 3'-ジアミノベンジジン テトラハイドロクロライド(DAB)色素体 (Cell Marque, Rocklin, CA)で染色し、脱イオン水で洗浄し、イムノマスターヘマトキシリン(Immuno Master Hematoxylin (American Master*Tech Scientific, Inc., Lodi, CA))で対向染色された。染色された組織の画像はカメラ付倒立顕微鏡 (TE2000-E;ニコン)で得た。
【0207】
蛍光抗体法: HCECs とプライマリ HCECs は、Lab-Tek(商標名) II ガラス チャンバー スライド (Nunc, Rochester, NY)で培養され、そして基底メディアで一晩飢えさせた。単層は10 μlピペットチップで擦傷した、或いは傷付けずそのままとされ、そして、1 μΜ ホルボール 12-ミリステート-13-アセタート (PMA、シグマ アルドリッチ)、rCAP37(25-500 ng/ml)、または基底 KSFM (Gibco)で15分処理された。処置後、細胞を室温にてPBS (Gibco) 中の4% (v/v) ホルムアルデヒド溶液 (Thermo、ロックフォード、イリノイ州)で20分間固定化し、次いでPBS (Gibco) 中の0.5% PBS TRITON(商品名)-X 100 (Mallinckrodt, St. Louis, MO)で易透化させた。残りのホルムアルデヒドは、 PBS中の0.05 M 塩化アンモニウム (NH4Cl、シグマ アルドリッチ、セントルイス ミズーリ州)で10分間クエンチした。細胞をPBS で洗浄し、ブロッキングバッファー (5% ウシ血清アルブミン( Calbiochem, Gibbstown, NJ)および0.5% PBS TRITON(商品名)-X 100 (Mallinckrodt, St. Louis, MO)を含む PBS中の 10% (v/v) ヤギ血清)で室温にて1時間ブロックした。PKC アイソフォームを検出するために、細胞は PKCδ (250 ng/ml), PKCθ (500 ng/ml), PKCα (1 μg/ml)または PKCγ (1 μg/ml)に対して指向する一次マウス抗体(Becton Dickinson Discovery Labware)中で室温にて1時間インキュベートされた。マウス IgG (1 μ g/ml;Jackson ImmunoResearch) は非特異的染色の対照として用いられた。細胞は 0.25% TRITON(商品名)-X 100 (Mallinckrodt) を含むPBSで洗浄され、そして2次抗体(ブロッキングバッファ中4 μg/ml ; ALEXA FLUOR(登録商標) 488 dye (Life Technologies Corp., Grand Island, NY))で室温にて1時間インキュベートされた。細胞はTBSで5 分間、3回洗浄し、最後に水洗浄し、そしてDAPI (Molecular Probes/Life Technologies Corp., Grand Island, NY)を含むPROLONG(登録商標) Gold Antifade を使用して載置された。画像は倒立エピフルオレセント顕微鏡 (TE2000-E;ニコン)で得た。
【0208】
siRNA トランスフェクションとジーンサイレンシング: PKCdに対して指向するステルス RNAi (商品名) (Ambion (登録商標) 10 μΜ グランド アイランド, ニューヨーク) またはステルス RNAi (商品名) siRNA Negative Control Hi GC (10 mM, Ambion) は (ハミルトン (登録商標)、リノ、ネバダ州) 33 ゲージ針を使用して 5 μl結膜下注射を介してマウス結膜に供給された。結膜下注射後は、上記のように AlgerBrush II を使用して角膜をすぐに負傷した。傷の閉鎖は、前述の16および24 時間で測定した。動物を24 時間で人道的に安楽死させ、SklarSafe・Safety Scalpel #11 (SKLARョ, West Chester, PA)を使用してそれぞれの角膜を切除した。組織は、すぐに凍結乾燥された。角膜ホモジネートは以下のように調製され、各ノックダウンの効率を確認するウエスタンブロット検定によってPKCdのレベルの分析を行った。ノックダウンの角膜のPKCd のレベルをステルス RNAi (商品名) siRNA Negative Control Hi GC (10 mM, Ambion)に比較した。
【0209】
タンパク質の抽出およびウエスタンブロッティング:SklarSafe・Safety Scalpel #11 (SKLARョ, West Chester, PA)を使用してマウス角膜を摘出し、上記のように指定された時点で凍結します。角膜は、cOmplete ULTRAプロテアーゼインヒビター(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN) の 1x カクテルを含む放射線免疫沈降法 (RIPA) バッファーの 200 μl中に置かれた。組織ホモジネートはBULLET BLENDER (登録商標) (Next Advance, Inc., Averill Park, NY)、0.9-2 mm ステンレス ビーズ (Next Advance, Inc.)を使用しての最高速度で 10 分間角膜を崩壊することによって作成された。ホモジネートは 16,000 X g で 10 分間遠心分離し、BCA タンパク質濃度測定 (ピアス、ロックフォード、イリノイ州) を使用して各角膜ホモジネートサンプルから上澄みのタンパク質濃度が測定された。
【0210】
角膜ホモジネートの各サンプルからのタンパク質 (20 μg)が10 %SDS-PAGEゲル電気泳動によって分析された。電気泳動に次いで、サンプルはウェスタンブロット分析のための硝酸セルロース膜 (Whatmanョ Inc. Florham Park, NJ)に移された。硝酸セルロース膜は、TWEEN 20 (Thermo Fisher Scientific, Pittsburg, PA) を含むトリス緩衝生理食塩水 (TBST)中の 5 %BSA (Calbiochem)で 1時間ブロックされて、そしてPKCd (Santa Cruz) または・actin(Sigma-Aldrich)に対して指向する一次抗体を含むTBST中の 5 %BSA (Calbiochem)で製造業者によって指定に従い一晩インキュベートされた。膜は、TBST で 5 分間 3 回洗浄し、そして、HRPに抱合させたウサギ (Cell Signaling Technology, Danvers, MA) またはマウス(Sigma-Aldrich)二次抗体と1 時間室温でインキュベートされてた。製造元の指示に従って、二次抗体が使用されました。ブロットは、Pierce ECL Western Blotting Substrateを使用して展開され、そしてUltraLum Imager (Omega, Claremont, CA)を用いて可視化した。れ、ブロットはImageJ software (U.S. National Institutes of Health, Bethesda, MD).を使用して分析され、半定量化された。
【0211】
統計: インビトロ創傷治癒実験は、。一元配置分散分析(ANOVA)およびそれに続くダネットの多重比較検定(Dunnett's multiple comparison test)によって分析を行いました。インビボ創傷治癒とPKCdノックダウン研究は、対応のないt検定によって分析された。統計は、グラフパッド プリズム 4.03 (グラフパッド ソフトウェア インコーポレーテッド、サンディエゴ、カリフォルニア州)( GraphPad Prism 4.03 (GraphPad Software, Inc., San Diego, CA))を用いて計算された。独立した実験値群の平均は ± SEMで示され、そして< 0.05 の P値が、すべての統計解析に関して有意であると考慮された。
【0212】
実施例8の結果
【0213】
CAP37はインビトロ創傷の閉鎖を容易とする:CAP37 仲介移行、HCEC増殖、接着が、CAP37 を角膜創傷治癒のプロセスを促進するという前提を導く。この前提を調べるためには、インビトロ擦傷モデルが、CAP37が傷の閉鎖を促進するかどうかを決定するため利用された。調査結果は、 CAP37は、インビトロでの傷の閉鎖の投与量依存的(図 23 A)促進を示した。CAP37 は、最大限に 250 と 500 ng/ml の濃度で使用すると傷の閉鎖を促進した。250 ng/ml のCAP37でCAP37処理した傷の創傷閉鎖率は、ほぼ 18 時間で 71% であり、 約 41%の閉鎖を示した基底メディア処理試料より有意に多かった (**P <0.01) 。CAP37の500 ng/mlでの傷の治療は、約 62% 閉鎖となり、緩衝液対照より有意に大きかった (* P < 0.05)。正の対照として使用されたHB-EGFは治療単層の ほぼ 88% 閉鎖を示した (図 23A)。時間の各ポイントで撮影した インビトロ擦傷アッセイの代表的な画像は、様々な治療への応答の閉鎖の程度を示す。HB-EGFで治療の傷は、傷が完全な閉鎖するのに 24 から 48 時間の間必要である一方、 CAP37 の 250 ng/ml で処置した場合は 24 時間で完全に閉鎖された。バッファー処理(図 23 )は、48 時間で完全閉鎖に届かなかった
【0214】
創傷後の最初の18時間のインビトロ創傷閉鎖の時間経過顕微鏡観察研究は、細胞の先端が、CAP37 対 HB-EGFに応答するにおいて、明らかな違いがあることを示した。CAP37処理のサンプルでは、個々の細胞が先端(リーディングエッジ)から切り離れ他の細胞から独立した負傷領域を横切って這い進むすることがわかった。細胞は、活性化を示す明白な葉状仮足(lamellipodia)を有して、偏極を示した。リーディングエッジでないすべての細胞は、活性化または葉状仮足を生産した。ただし、傷のエッジには、HB- EGF 処理単層よりもよりダイナミックな活動が示された。HB-EGF処理細胞は、傷の閉鎖の著しく異なる方法を示した。これらの細胞はシートで進み、個々の細胞は切り離れたり、あるい細胞の前記した進入するシートに独立して、創傷を横切って移動しないもののようであった極在化や葉状仮足形成のような、CAP37処理細胞の形態変化は、HB-EGFまたは基底KSFM処理単層には表れなかった。
【0215】
CAP37のin vivo マウスモデルにおける角膜創傷治癒促進: 角膜創傷治癒材料と方法記載の in vivo マウスモデルを使用して、傷の閉鎖の CAP37 の局所適用の効果が検討され16、24、および 48 時間での閉鎖率が正の対照 HB-EGF と負のビヒクル対照と比較した(図24aおよび図24b)。16 時間で CAP37は71%で傷の大きさを減じ、24時間で CAP37 処理 (250 ng/ml)は83% 傷閉鎖した。両方の時点で CAP37処置した傷の閉鎖は、ビヒクル処理対照よりも有意に大きいものであった(* P < 0.05 緩衝液対照と比較して)。傷の時間依存閉鎖がHB-EGFでも示され、緩衝液対照と比較して顕著に高かった(** P < 0.01)。フルオレセイン染色傷の代表的な画像は、図22Bで表示され、HB-EGF と CAP37とビヒクルで治療の反応の傷治癒の時間依存が示された。図示されるように、フルオレセイン染色 (図22B) によって測定されるように、すべての傷は48 時間で完全閉鎖を示した。
【0216】
CAP37は24 時間で角膜再上皮化につながる: フルオレセイン染色法は、角膜上皮剥離と治癒の程度を確認する総形態学的アプローチを提供する。ただし、CAP37が、完全な再上皮化を促進して角膜の上皮層の構造の整合性を復元するかどうかを確認するのに、完全眼球は16、24、および 48 時間で収集され組織学のため処理された(図25A〜E)。ヘマトキシリンとエオシン(H & E)染色標本は、24 時間でその再上皮化は順調に進んで、CAP37での治療に応答してこれらの細胞の増殖を示す、上皮の基底細胞層の修復がもたらされることを明らかにした(図25A)。図24Bに示された24時間でのフルオレセイン染色の低レベルの検出の可能性があって、CAP37への応答において、24時間での移行および扁平上皮細胞への分化は完了したものではないと思われた。CAP37への応答においての再上皮化は、24時間で、ビヒクル処理した傷と比較して大きく促進された (図25B)。図に示されるように、上皮は、傷の中央地域において単層厚さのみであり、基底細胞の増殖は、これと同じ時間時点での、CAP37処理した傷と比較して限られていた。これはさらに、図24Bに示されたフルオレセイン染色傷において、ビヒクル処理傷が非常により強い染色をされていることが示されていることでで確認できる。48時間で、CAP37処理した傷 (図25)は、全くの完全性を取り戻して、無傷の角膜 (図25E)と組織学的区別できないものであった。ビヒクル治療角膜は、48時間で再上皮化したが頂層性の完全な構造(図25)は観察されなかった 。
【0217】
PKCδと PKCθが負傷したHCEC 単層に存在する: 発明者による研究は、PKCアイソフォームαδ、ε、θ、η、ι、λ、ζは、ヒト角膜上皮細胞に発現されCAP37は、走化性において特異的にPKCδとθを活性化することを示す上皮細胞の移動は、正常な創傷治癒に重要なステップであるが、これらのアイソフォームが創傷治癒に関与していたかどうか疑問であった傷付けたものと傷付けていないHCEC単分子膜がPKCδとθの発現を見るために染色された。結果は、傷付けていないHCEC単分子膜におけるPKCアイソフォームδとθの構成的発現を示し、創傷の縁に沿って両方のアイソフォームの増加した染色を示した(図26A)。PKCアイソフォームδとθの構成的発現は、プライマリーHCECsを使用して確認した(図26B)。SV40 HCEC細胞系およびプライマリーHCECsにおけるこれらの2つのアイソフォームの染色の特異性は、染色を示さないIgG抗体対照を用いて示された。
【0218】
CAP37治療HCEC 単分子膜のPKCδ染色の増加につながる: PKCδはCAP37を介する角膜創傷治癒のさらなる調査に選択されたCAP37が、傷付けたものと傷付けていないHCEC単分子膜でのPKCδ発現に影響を有するかどうかを決定するために、HCECsをCAP37 (250および500 ng/ml)ならびに正の対照としてのPMAで処理した。未処理の傷付けていないHCEC単層(図27A)および未処理の傷付けたHCEC単層(図27B)を上回る、PKCδ染色における用量依存性の増加が、傷付けていないHCEC単層(図27Eおよび図27G)と傷付けたHCEC単層(図27Fおよび図27H)の双方において、CAP37処理した細胞で15 分で見られた。PKCδ染色における増加は、500 ng/mlのCAP37での処理に続いて観察されたより大きな染色から、用量依存性であると思われた。CAP37に反応するPKCδ染色における増加は、未処理 (図27K)のものに対して少なくとも18時間(図27L)持続された。PKCδの発現は、CAP37処理細胞 (図27EH)とPMA処理細胞 (図27、27D)の間で比較されたCAP37処理に応答したこの増加した発現がPKCδ染色に特異的であることを立証するために、PKCのαアイソフォームの染色も行ったが、CAP37で処理した場合に、PKCα染色における増加は、単膜 (図27I)内にも単層の創傷の縁(図27J)に沿っても観察されなかった
【0219】
PKCδは、インビボで創傷の縁に沿って発現される: PKCδに関する染色は、培養HCEC単層(図26A)における傷に応答して増加したので、研究は、PKCδの発現における増加がインビボで角膜の創傷において観察されるであろうかどうかを決定するために行った。前述のように角膜が擦傷され、マウスの完全眼球が傷付けた後の6、16、および48時間で免疫組織化学のために収集され、傷に応答してのPKCδの発現を調べた傷付けた後の6時間(図28A〜B)および16時間(図28C)では、新しく増殖しおよび移行してきた上皮細胞の先端(リーディング エッジ)でPKCδはほとんど、ないしは全く観察されませんでした。ただし、リーディング エッジより離れた位置での上皮細胞は、正常な傷付けられていない角膜(図28G)におけるPKCδの恒常的な発現に匹敵する低いレベルの染色を示した。
【0220】
傷のCAP37処理がPKCδの発現において影響を有していたかどうかを決定するために、角膜が傷付けられ、そしてその直後および傷付けた16時間後に処理された。6時間および16時間後に摘出された眼は、1回のCAP37の処理(0時間目)を受けたものであり、一方、48時間後に摘出された眼は、2回のCAP37の処理(0時間目および16時間目)を受けたものである。6 時間で染色された切片は、新しく移行しおよび増殖している上皮細胞、ならびに創傷の縁から離れたそれらの細胞に関して強く染色されることを示した(図28D〜E)。PKCδに関する同様の染色パターンが、傷付けられた16時間後で得られた切片において観察された(図28F。48時間後に得られた切片は、完全に治癒されており、そして、傷付けていない角膜(図28における恒常的発現と同様の強度で、上皮全体が均一に染色されているものであった(図28H
【0221】
PKCδはインビボにおけるCAP37傷治癒に必要である: CAP37が、PKCδを介して傷治癒を仲介しているかどうかを決定する siRNA を用いたインビボ実験を行った。マウス角膜が、PKCδに対して指向するsiRNAで、またはスクランブル siRNAでトランスフェクションされた。スクランブル siRNAおよびPKCδ siRNAでのトランスフェクションに続いて、上述したようにして傷が形成された。角膜は、次いでビヒクルまたはCAP37(250 ng/ml)で処理され、そして傷の閉鎖を16時間および24時間で測定した。スクランブル siRNAをトランスフェクションされた角膜は、CAP37処理後24時間で、傷閉鎖における期待された増加を示した(P < 0.05) (図29)。PKCδ siRNAをトランスフェクションされた角膜においては、16時間および24時間のいずれの時点でも、CAP37に応答しての創傷治癒の大幅な増加がなかった(図29)。しかしながら、CAP37処理は、生理食塩水処理創傷以上の傷治癒におけるわずかな増加につながるものであった。しかしこの増加は統計的有意性には届かないものであった(図29A)このことは、PKCδは、含まれている唯一のシグナル伝達分子ではなく、それぞれの角膜におけるPKCδのノックダウンが、ウェスタンブロットによって評価した場合に、平均 50%であった(図29A)ことの影響であることを示すことができるものであった。このノックダウンのレベルは、スクランブル siRNA 対照と比較した場合に、統計的に有意なものである(*** P < 0.005)と測定された。フルオレセイン染色傷の代表的な画像が、スクランブル siRNAをトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された角膜における経時的な傷閉鎖の程度を表す(図29B)。図示されるように、最大傷の閉鎖は、スクランブル siRNAをトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された動物において観察された
【0222】
これらの結果は、ヘパリン結合タンパク質およびアズロシジンとしても知られる、好中球由来のタンパク質CAP37の新たな機能を示すものである。創傷治癒における一連のインビトロのおよびインビボのモデルを使用して、CAP37 が、インビトロで、ならびに角膜擦傷のマウスモデルにおいて傷閉鎖を加速することが示された。重要なことは、CAP37 の角膜上皮創傷治癒を促進するというメカニズムが特定されたことである。免疫組織化学的および siRNA 技術を用いることにより、プロテインキナーゼC (PKC)シグナル伝達経路、 特にPKCδが、CAP37仲介角膜上皮創傷治癒の重要な変調成分であることが立証された。これは、角膜上皮創傷治癒において、好中球顆粒由来抗菌タンパク質によって用いられる細胞内シグナル伝達メカニズムの最初の実証であると思われる。
【0223】
角膜は免疫特権部位であり、そしてそれゆえ、角膜における治癒のプロセスは皮膚の創傷で起こるプロセスとは同一ではない。ただし、角膜および皮膚での創傷治癒の双方において重要な特徴の1つは、好中球が不可欠な細胞成分であるということである。好中球はプロセスの初期の参加者であり、そしてこれらの強力な抗菌作用及び貪食活性によって、感染から宿主を保護することを基本とするものである。角膜が傷付けられた場合、好中球はリンパ管を介して角膜中へと移行する。研究は、角膜創傷治癒の遅延は、抗体による好中球減少症のマウスで発生することを示している。野生型およびノックアウトマウスを用いたルミカンとヘムオキシゲナーゼに関する、および角膜上皮創傷治癒のウサギモデルに関する、その他の研究はさらに好中球の存在が治癒を加速することを立証しているこのことが、CAP37、LL 37、ヒト β-ディフェンシン-1 (HBD-1)のような好中球の顆粒内で見出される抗菌タンパク質、および殺菌性-透過性-増加(bactericidal-permeability-increasing (BPI))タンパク質が、創閉鎖を調節する上で有用であると証明し得るとの概念を本発明者らにもたらした。
【0224】
創傷部位に補充された好中球はCAP37並びにその他抗菌タンパク質およびペプチドを含む、それらの顆粒成分を放出し、角膜感染に対する最初の防御ラインを提供する。侵入病原体を殺すことに加えて、これらの抗菌性ペプチド類は、自然免疫を制御する宿主細胞の機能を調節することができることが今明らかとなった。重要なことは、好中球はこれらの抗菌タンパク質の唯一の源ではないということであるCAP37およびLL-37は、感染および傷付けられたことへの応答において、角膜上皮を含む、宿主細胞において、誘導されることができる。LL-37は、CAP37とどうように、インビトロにおいて、抗菌性で、リポ多糖を結合し、そして角膜上皮創傷治癒を促進することが示された。CAP37とは異なりLL-37はHCECの増殖を促進せず、そして角膜上皮細胞の移動および創傷治癒におけるそれらの影響を含む細胞内シグナル伝達機構が解明されていない
【0225】
この実施例は、HB-EGF がインビトロでの創傷治癒を促進することを確認するのみならず、HB-EGF がインビボで角膜創傷治癒を促進することも初めて明らかにした。HB-EGFは、これがまたCAP37と同様にヘパリン結合タンパク質であり、そしてまた、HB-EGFが器官組織培地において角膜創傷治癒を促進するというインビトロの証拠があったゆえに、正の対照として使用するため選ばれた。以前のインビトロの研究は、EGFではなく、HB-EGFはEGF受容体の延長可された活性化を介して角膜創傷治癒を容易とすることを示していた。これは、HB-EGFは、角膜表面上の負に帯電したグリカンに結合することができる一方、EGFは処理後に洗浄除去されてしまうという事実によると信じられている。EGFに代って長期に作用するゆえにこれを望ましいものとするHB-EGFのぺパリン結合特性は、CAP37にも適用され、そしてこれを角膜創傷治療に有効なものとする。
【0226】
理論に拘束されることを希望せず、本研究は、先に、増殖、移行、および接着として定義された、CAP37介在細胞プロセスが、角膜上皮の創傷の治癒を促進することと関連して作用することを示すものである。CAP37処理されたインビトロの創傷の経時的なビデオは、少なくとも創傷修復の初期の段階で、主として移行を促進するとすることによって、角膜上皮創傷治癒に影響しているのではないかと推測する。増殖、接着などの他のメカニズムはプロセスのより後の段階で関与する可能性がある
【0227】
研究の1つの構成は、CAP37介在角膜上皮創傷治癒を誘発する細胞内シグナル伝達機構の描写であった。インビトロおよびインビボでの角膜創傷閉鎖(図23〜24)を仲介するCAP37の能力を実証した後、PKCδの存在が未処理の角膜上皮細胞培養単層において同定され、そして、初期の角膜上皮細胞で確認された(図26)。CAP37処理角膜上皮細胞単層は、PKCδ二環する染色において増加を示し(図27)、これはCAP37処理18 時間後まで持続され、この効果が一過性でなかったことが示された。免疫組織化学は、傷付けていないマウス角膜におけるPKCδの恒常的な存在を明らかにした一方で、CAP37処理創傷の免疫組織化学は、6時間および16時間後のいずれにおいても、ビヒクル処理対照に比べて、傷のリーディング エッジに沿ってPKCδの染色が増加していることを明らかとした(図28)。CAP37処理創傷における傷のリーディング エッジに沿ってのPKCδの存在およびこのPKCδの増加は、角膜上皮総称治療のマウスモデルにおいてPKCδがノックダウンされた研究へと向けさせた。結果は、PKCδの部分的なノックダウンが、インビボでの角膜創傷治癒におけるCAP37の効果を減ずるのに十分であることを明らかにした。PKCδノックダウンは、CAP37の効果を完全に切断するものではない一方で、スクランブル siRNAをトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された角膜と、PKCδ siRNAをトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された角膜との間で、いずれの時間時点においても有意差は見られず、創傷治癒における減少は臨床的にまだ有意な影響を与えるものであろう(図29)。達成された平均PKCδノックダウンは50%であり、そしてこれは、CAP37が、PKCδに対するsiRNAでトランスフェクションされた角膜において創傷閉鎖の一定量をいまだに促進するのはなぜかという理由を説明できるものである。これらの発見のための別の説明は、PKCθのようなその他のPKCアイソフォームは、CAP37介在創傷治癒に部分的に寄与するかもしれないということである。他の研究者らは、PKCαおよびPKCεはHGF誘導角膜創傷治癒に重要であり、そしてPKCαはウサギ角膜創傷治癒において重要な変調成分であるということを示している。これに対して、PKCαノックアウトマウスを用いた研究は、より迅速な角膜上皮創傷治癒を実証しており、そして本発明者らはこれは恐らくこのモデルにおける浸潤性好中球数が少ないことによるものであることを示した。CAP37を用いた研究では、PKCαの関与が示されなかった。すべての炎症反応に関して、炎症細胞の流入を制限することと治癒プロセスを促進することの間に繊細なバランスが存在する。
【0228】
図28における興味深い観察は、CAP37処理角膜創傷のリーディングエッジでPKCδの染色に加えて、移住する白血球の染色があることである。好中球は、好中球における完全NADPH酸化と呼吸性バースト活性化のために必要とされる、 PKCδを発現することが知られている。研究は、LL-37 など抗菌タンパク質がNADPHオキシダーゼ系を介して時間−および用量−依存性で好中球において反応性酸素種(ROS)の生産を引き起こすことができることを示している。これは過酸化水素(H2O2)の低レベル(10-20 μΜ)角膜上皮細胞の接着と移行の促進を介して角膜創傷治癒を誘導することが示されているために、創傷治癒の観点から特に重要である。本発明者から未発表の結果は、CAP37がまた走化性を仲介する細胞である、小膠細胞(ミクログリア)と単球において、CAP37がROSの生産を増加させることを示した。さらに、NADPHオキシダーゼはHCECsに発現されること、およびこれらの細胞はこの酵素複合体を介して過酸化物を生産できるものであることが、最近実証された。これらをまとめれば、これらの研究は、CAP37が創傷の縁で角膜上皮細胞におけるPKCδの発現を誘導し、そして、これによって創傷治癒を促進する、NADPHオキシダーゼおよび活性酸素の生産を局所的に活性化するものであることを示すものである
【0229】
実施例9
BCC02-5RMP 間相乗効果 ( 配列番号: 22) と低用量の抗生物質。
【0230】
抗生物質耐性に対向する伝統的な努力は、既存薬における増量的な変化を行うことに依存している。この戦略は、短期的な救済を提供するが、細菌はこれらのわずかな変更への抵抗力をすぐに開発する。このため、多剤耐性グラム陰性菌による感染症の治療のための安全かつ効果的な治療のための薬剤の開発パイプラインに深刻なギャップが存在する
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、シュードモナス属、アシネトバクター属、サルモネラ属およびエシェリキア・コリのようなグラム陰性病原体による深刻な感染の治療に関して、非感染性の新規な種類として、この主要な医療問題に貢献するものである。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)にはしたがって実施形態として細菌感染症の治療おいて抗生物質の効果を高めるための方法を含むものであるこの方法では、抗生物質および本願明細書に開示されたペプチド化合物が投与され、そこにおいて抗生物質は、(i)当該抗生物質のみで投与された場合には細菌に対して最適以下または有効ではないが、(ii)ペプチド化合物との組み合わせで投与した場合には細菌に対して有効である、投与量で投与される。
【0231】
本治療的方法は、少なくとも1つの実施形態において、本明細書に開示されたペプチド化合物 (例えば、BCC02-5RMP (配列番号22))を、治療抗生物質の標準的な効果を強化(増強)するために用いるものであり、耐性菌に対しては最適値以下ないし効果がないと以前に考えられていたような投与量で、これら抗生物質を耐性菌に対して効果的なものとするものである。これらの発見は、もし現存する抗生物質が低い投与量(最適以下ないし<MIC)で用いられることができればこれらはより毒性となる可能性が低くなり、また、現存する抗生物質が低い投与量(最適以下ないし<MIC)でかつ本願明細書に開示された本発明概念群のペプチド化合物と組み合わせにおいて投与された際には、これらの抗生物質の低い投与量がそれのみで投与された場合と比較して、細菌がこれらの抗生物質に対して耐性を獲得しにくいという理由から、重要なものである。したがって、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物の組み合わせで抗生物質の投与は、臨床設定で使用できる抗生物質時間の長さを延長する可能性が高いものである
【0232】
前述のとおりこれらの所見の重要性は、BCC02-5RMP (配列番号 22)のような、しかしながらこれに限定されない、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求されたペプチド化合物(群)は、抗生物質治療の標準の効果を、これらがより低用量(最適以下ないし<MIC)で使用されることができ、そして抗生物質へ耐性となってい生物に対してこれらの活性を取り戻すように、増強することができる。つまり、生物が抗生物質への耐性ゆえに、一度生物に対して有効でないと考えられていた抗生物質に、生物が再感作されることができる。
【0233】
この結果を支持するデータ図30〜32の通りです。レボフロキサシンとシプロフロキサシン耐性で、セフォタキシムに中間感度を有する緑膿菌臨床分離株が選ばれた。ペプチドおよび抗生物質は、3:1、1:1、1:3 の 抗生物質: ペプチドのMIC等価物の出発比率でマイクロタイタープレートのウェルの中にセットアップされたこれらは抗生物質およびペプチドの最適以下/致死以下レベルを下回る濃度まで連続希釈された生物 (1 x 105 CFU/ウェル) が追加され、 BIOSCREEN C (商品名)アッセイ(グロース システムス ユーエスエイ、ニュージーランド州ピスカタウェイ[Growth Systems USA, Piscataway, NJ)を行っ、データを 24 時間にわたって収集し。この生物はシプロフロキサシン (8.4 μ g/ml の MIC)レボフロキサシン (15g/μ g/ml の MIC) およびセフォタキシム (15 μ g/ml の MIC)に耐性であったが当該緑膿菌分離株をペプチド添加により最適以下/致死以下の投与量でこれらの抗生物質のそれぞれに感受性とすることが可能であった。
【0234】
たとえば、図 30Aは、 2.81 μg/ml の致死以下濃度でセフォタキシムの存在下での生物の成長/生存率曲線、および2.81μg/mlのセフォタキシム 0.34、1.01、3.04 μg/ml ペプチドとの併用での成長曲線を示すものである。3.15 μg/ml でペプチド自の存在下での生物の成長が表示される。ペプチドと抗生物質の不在での緑膿菌の成長がまた示される。成長曲線ならびに小数領域 (FA) (図30) を示しているヒストグラム見られるように、2.81μg/mlのセフォタキシムの添加は生物において殺菌性の効果ほとんど与えなかった。これは抗生物質の存在下での成功が比較対照の成長曲線と非常に似たものであるゆえである。、0.34 と lμg/ml のペプチドBCC02-5RMP (配列番号 22)の添加は、抗生物質の殺菌作用に及ぼす統計的影響がなかった。ただし、ペプチドの 3.04 μg/ml 添加においては、セフォタキシムに中間感度をもつ菌が今や感受性のものとなったことが明らかだった (P = 0.0143 対になっていない t 検定による)。これは、CAP37 に基づくペプチドの化合物は、標準的な抗生物質との組み合わせで使用された場合標準的な抗生物質治療上の線量が下げられ、耐性菌を治療に感受性とすることができることを示しています。
【0235】
この効果が、別のクラスからの抗生物質でも見られるかどうかを確立するために、シプロフロキサシン(図31A〜B)とレボフロキサシン(図32A〜B)でのこれらの研究を行うことが選ばれた。シプロフロキサシンの 2.1 μg/ml にペプチド4.05 μg/ml の添加は顕著に殺害 (P = 0.0003、対になっていないt検定による)に影響を及ぼした。つまり、本明細書に記載方法8.4 μg/ml から 2.1 μg/ml (図31A〜B) にMIC低減することができた。同様に、本明細書に記載の方法はペプチド3.04 μg/ml の存在下で15 μg/mlから 3.04 μg/ml にレボフロキサシンの MIC を削減でき
【0236】
以上、特定の実施形態にもとづいて、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)を説明したが、多くの代替手段、変更、および変化が当業者に明らかにであることが理解されよう。従って、発明的な概念の精神と広い範囲の中に包含されるそのようなすべての代替手段、変更、および変化は、本発明に含まれるものである。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]