【実施例】
【0115】
ここまで一般的に述べられた、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、以下の実施例群および実施形態群を参照することによって、さらに容易に理解されるであろう。なお、以下の実施例群および実施形態群は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のある特定の特徴および実施態様を説明することのみを目的としてここに含まれたものであって、それらに限定されることを意図するものではない。以下に詳述した実施例群および方法群は、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の種々のペプチド化合物群をどのように調製するか、またどのように使用するかについて記載するものであり、そして、上述したように、これらは、単に例示的なものであり、本開示をどのようにも全く限定するものでないものと解釈されるべきである。当業者であれば、これらの化合物群および方法群から適切な変更態様を容易に認識できるであろう。
【0116】
実施例1
ペプチド 20-44 (配列番号 l)に基づくペプチド化合物の抗菌活性、および活性を増加させる方法、ならびにペプチド20-44、95-122および120-146(それぞれ配列番号 l、26および28)に基づく化合物のアップスケールした生産。
【0117】
ある特定の実施形態群においては、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、1つのアミノ酸配列を有するオリゴペプチド誘導体、および1つの可溶化部分をからなる、ペプチド化合物群を含むものであり、ならびにその組成物群を包含するものである。当該オリゴペプチド誘導体は、例えば、CAP37タンパク質のアミノ酸配列 20-44 (配列番号 l)、23-42 (配列番号 8)、95-122 (配列番号 26)、102-122 (配列番号 27)、および120-146 (配列番号 28)からなる群から選択されたいずれか1つのCAP37タンパク質CAP37 タンパク質部分配列に基づくものであり得る。
【0118】
ある特定の実施形態群においては、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)は、1つのオリゴぺプチドおよび1つの可溶化部分を有するオリゴペプチド誘導体群(すなわち、ペプチド化合物群)を含む組成物群を包含するものである。当該オリゴペプチド誘導体ないしペプチド化合物は、以下の式(I)で表される:
S
M-X
R-Pep-Y
R (I)
(式中、Pepは配列番号l〜14、25〜31および47(例えば、第1表を参照のこと。)のアミノ酸配列のいずれか1つ、又は本願明細書において述べられるその他の適当なアミノ酸配列であり、X
RおよびY
Rは、(X
R+Y
R)が4、5、または6つのアルギニン残基であるという前提の下に、それぞれ独立して0、1、2、3、4、5、または6つのアルギニン残基であり、そしてS
Mは、次の(l)〜(3)のうちのいずれか1つの可溶化部位であって、ここで(1)はAEEA
kである(式中k=1〜5)、(2) は AEEEA
kである(式中k=1〜5)、(3)は AEEA
mサブユニットとAEEEA
nサブユニットとの組み合わせである(式中mおよびnは、(m+n)が2、3、4、5、6、7、8、9、または10であるという前提の下に、m=1〜9であり、n=1〜9であり、そしてこれらのサブユニットは任意の順序で配列され得るものである。)
【0119】
本願明細書において上述したように、X
RおよびY
Rは、(X
R+Y
R)が4、5、または6つのアルギニン残基であるという前提の下に、それぞれ独立して0、1、2、3、4、5、または6つのアルギニン残基である。一例として、以下の第2表は、式(I)に基づき利用することができるX
RおよびY
R基の種々の組合せを列挙するものである。第2表に開示されるアミノ酸配列RRRRは、本願明細書において、配列番号15を割り当てられており、一方、アミノ酸配列RRRRR および RRRRRRは、配列番号16および17をそれぞれ割り当てられている。一つの非限定的例においては、X
Rは4つのアルギニン残基を有し、一方、Y
Rは1つのアルギニン残基を有している。
【表1】
【表2】
【表3】
【0120】
AEEAは、[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-酢酸(8-アミノ-3, 6-ジオキサオクタン酸としても知られる。)であり、またAEEEAは、2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-酢酸(ll-アミノ-3,6,9−トリオキサウンデカン酸としても知られる。)である。1つの非制限な例においては、SM基は2つのAEEA部分を含むものである。
【0121】
ペプチド化合物が2つのシステインを有する場合(例えば、配列番号lまたは8)、オリゴペプチドは、その内部における2つのシステイン残基間の結合によって環化されることが可能である。
【0122】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物群は、少なくとも1つの実施形態において、重度のグラム陰性菌(特に限定されるものではないが、例えば、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)、アシネトバクター種および大腸菌(エシェリキア・コリ)を含む。)感染の処置のために用いられることができる。これらの生物は、致命的な院内感染を引き起こすことができるものであり、そして現在の抗生物質療法に対する耐性を急速に獲得しているものである。CAP37のアミノ酸20-44からなるペプチド(配列番号 l)は強力な抗菌活性を有するものの、その溶解性が悪いことを一部の理由として、商業的規模で生産することは困難である。以前に確立された方法論を使用しては、十分な量と純度でこのペプチドをスケールアップすることは失敗に終わっている。多数の技術的なアプローチ、アミノ酸群の組合せ、合成手順、および純化を含む、実質的な研究や実験が、本願明細書において述べられる、商業的にスケールアップされた規模で生産可能でありそしてそれゆえ臨床的に使用可能である、新規で活性なペプチド化合物に最終的に到達するために、必要であった。とりわけ、本願明細書において述べられるペプチド化合物群の新規な特徴は、向上した溶解性、増加した殺菌効果、低減した凝集性、改善された合成、拡張性、および高められた純度である。
【0123】
天然の20-44ペプチドの誘導体化バージョンである、新規ペプチド化合物群は、天然の20-44ペプチド配列の実質的に残りの全ての活性、すなわち、例えば、強力な抗菌作用、リポ多糖(LPS)に結合し中和する能力、および哺乳類細胞に対する低毒性など、を維持しているものである。
【0124】
細菌に対して活性であり、哺乳類細胞に対して低毒性を示す、そして商業的に実行可能な製造コストでスケールアップすることができる、カチオン性の抗菌性ペプチドの生産は、この分野における他の作業のほとんどを避けてきたものである。さらに、その凝集性ゆえに、純化は挑戦できるものであった。しかし、本願明細書に記載の新規なペプチド化合物群は、向上した溶解性を有しており、このことは、その純化および抗菌活性を非常に容易なものとするものである。
【0125】
本願明細書に記載の新規なペプチド化合物群のうちの特定のもののその他の利点には、特に限定されるものではないが、(1) 多数の抗生物質耐性パターンを有する臨床分離体を殺すこれらの能力、および(2)これらの有する細菌殺菌速度が、従来の抗生物質よりもはるかに高速である(例えば、数分以内)ことが、含まれるものである。
【0126】
スケールアップの実現は、挑戦的なものであり容易なものではなかった。学術的な小規模環境におけるCAP37抗菌性ペプチド群の合成は成功したが、このアプローチは、スケールアップした生産に容易に移植することはできなかった。主要な問題は、凝集にあるように見えた。
【0127】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)につながる研究作業の初期の段階においては、ペプチド群を製造するために、アミノ酸の逐次的付加が用いられた。3つの候補ペプチド(CAP37
20-44 (配列番号 l)、CAP37
20-44ser26 (配列番号 2)、CAP37
20-44ser42 (配列番号 5))が合成された。合成のこのモードによって製造された3つの全てのペプチドは、かなり不溶性のものであった。これらの結果に基づき、研究作業は、一度に1つのペプチドの生産ということに焦点を当て、そしてCAP37
20-44ser42 が選択された。1つの実施形態において、アミノ酸の逐次的付加ではなく、フラグメントFmoc縮合法が使用された。このフラグメント縮合法において、3つの小さなフラグメントが製造され、そしてこれらを合せて縮合することで、CAP37
20-44ser42 アミノ酸配列(配列番号 5)を形成した。この背後にある理論的根拠は、3つの小さなフラグメントが高純度体として合成され、そして一緒にして結合させることができるので、凝集の問題のいくつかを克服できるというものであった。この合成からの製品は、1%酢酸に対して透析され、そして凍結乾燥されて、約50%の純度であると測定された。このペプチドの抗菌活性は通常得られたものの約半分であった。1つの実施形態において、前述の透析処理は、希釈トリフルオロ酢酸(TFA)溶液(例えば、0.1%)を用いるものに変更され、これによってより強力な抗菌活性と高い純度 (約80%)を有する製品を得ることができた。次の生産においては、安定性を改善する試みで、合成時に保護されそして純化の最終段階で脱保護される1つシステイン残基が、用いられた。
【0128】
最終的に、各化合物の20 グラムが得られた。しかしながら、凝集と溶解性の主要な技術的な問題は、大分克服されたものの、まだ残るものであった。このため、臨床試験のための大規模な生産が容易でないことが示された。多くの試行錯誤や実験の後に、ペプチドのCOOH 末端および/またはNH
2末端で、複数のアルギニン(R)残基を加える発想が見出された。最初のイテレーション(反復)では、COOH末端に1つとNH
2末端に2つの、計3つのR残基が追加された。アルギニン残基を使用することによる溶解度と活性における効果は顕著に改善された。この成功裡の結果に基づいて、前述の3つの配列のそれぞれが、合計5つのアルギニン残基を有するペプチド主鎖として合成された(例えば、COOH末端に1つとNH
2末端に4つ。例えば、第1表における配列番号18〜20を参照のこと)。化合物のスケールアップが成功し、各ペプチドのグラム単位での合成が可能となった。さらに、生体外的な(インビトロな in vitro)抗菌活性が、以前オリジナルのペプチドで観察されていたものより顕著に大きいものであった。これら3つの5-アルギニンペプチドは、2.5 μΜ程の低濃度で、> 97% 殺菌を示し、これは、以前に観察されていたものよりも10倍高いものであった。
これらの3つの5-アルギニンペプチド(配列番号18〜20)は、また、大腸菌(エシェリキア・コリ)およびネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)を含む他のグラム陰性生物に対しても強力な活性を示した。これらの新規に合成されたペプチドの高められた能力に起因して、当該ペプチドが哺乳動物細胞において細胞毒性を有するかどうかについて検討された。当該ペプチドは、乳酸デヒドロゲナーゼ細胞毒性検出キット(Lactic Dehydrogenase Cytotoxicity Detection kit)(ロシュ ダイアゴノスティック コーポレーション、インディアナポリス、インディアナ州(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN))を使用して評価され、当該ペプチドは、試験された最高濃度(75 μΜ)でも最小限の細胞毒性活性しか有していないことが判った。4時間のインキュベーションの後、3つのペプチドのすべてが、<4% 細胞毒性を示した。24時間のインキュベーションの後、細胞毒性のレベルにわずかな増加があり、ペプチド20-44
ser26 (配列番号 19)は、23%、ペプチド20-44
ser42 (配列番号20)は5%、そしてペプチド20-44
cys (配列番号18)は10%の活性をそれぞれ示した。
【0129】
これら3つの5-アルギニンペプチド(配列番号18〜20)の全てが、カブトガニ血球抽出成分(Limulus Amebocyte Lysate (LAL))検定によって測定された場合に、シュードモナスLPSを結合するものであった。しかしながら、これらのペプチドはLPSの毒性効果を中和することができることは実証されなかった。RAW264.7 マクロファージ細胞のよく特徴付けられた応答が、LPSに対する応答において腫瘍壊死因子α(TNF-α)を産生するために用いられ、これらのペプチドがこのサイトカインの放出を鈍らせるかどうかをについて測定した。これら3つの5-アルギニンペプチドの全てが、シュードモナスLPSに対する応答において、TNF-αの放出を減ずるものであり、そして、この結果は、投与量依存性であった。重要なことは、ペプチドを用いた、前処理 (LPSを添加する3時間前)ならびにRAW264.7 細胞の後処理(LPSを添加した3時間後)の後処理は、サイトカインの放出を弱まらせたことである。対照のペプチドは、TNF-αの放出を減衰することができなかった。さらなる研究は、この減衰は、主に、転写因子核因子 - カッパB (NF-κB)の活性をブロックすることによるものであるようであることを示した。新規なペプチドが結合し、シュードモナスLPSの効果を中和するとの知見は、本願明細書において記載さっる新規な治療的ペプチド化合物が細菌を殺すだけでなく、敗血症の急速な進行に重要な役割を果している、当該細菌によって放出されるLPSエンドトキシンを中和するということを、保証するものであるため、臨床的に重要である。
【0130】
アルギニン群が、ペプチドの主鎖を形成するペプチドに結合した場合(配列番号18〜20)、当該ペプチドにおける溶解性における顕著な増加と、非常に強力な活性(細菌負荷の1 x 10
6 CFU/ml から 1 x 10 CFU/mlへの低減する能力、5対数の減少)があった。これらのペプチド(配列番号18〜20)は高い能力を有するものであったが、これらは、約70%を超えた純度に純化することができなかった。多くの時間と実験的努力が、純化技術を探索するために研究に費やされたが、収量および純度は、約70%を超えては増加できなかった。このことは、多くの数の生体外的なLPS結合実験と殺菌性の研究が行われ、そして効果が示されたものであったゆえ、非常に残念であった。最後に、大規模な追加実験の後に、別の可溶化部分がペプチドに追加され、そしてこの追加が、半減期、溶解度、およびペプチドの純度を増加させた。この実施形態において、当該可溶化部位は、一対の小さな(”mini")PEG分子 AEEA(それぞれ約375の分子量を有する。)から構成されるものであった。
【0131】
AEEA で構成される2 つのPEG可溶化部位は、ペプチド主鎖のアミノ末端の端部に、末端間(end-to-end)で結合された。第1表は、2つのAEEA 分子が、配列番号 18、配列番号 19 および配列番号 20 のそれぞれに結合してなり、そして本願明細書において化合物名BCC01-5RMP (配列番号 21)、BCC02-5RMP (配列番号 22)、および BCC03-5RMP (配列番号 23)を、それぞれ割り当てられた3つのペプチド化合物を示している。これら3つのペプチドの化合物において(上記式 (I) を参照)、S
MはAEEA-AEEAであり、 X
R は RRRR (配列番号15)であり, Y
R はRであり、そしてPepは、それぞれ、配列番号1、配列番号2および配列番号5である。
【0132】
5つのアルギニンと2つのAEEA部位を有するこれらのペプチドの純度は、定常的に96.12%〜98.62%であった。良好な研究実施(GLP)級のペプチド合成が、BCC02-5RMP(配列番号 22)で達成され、そして75gのペプチドが97.24%の純度で合成された。
【0133】
20-44配列に基づくペプチド群(配列番号21〜23)に加えて、アミノ酸群95-122(配列番号26および配列番号 27)および120-146(配列番号32〜35)に基づいたペプチドの合成の間に、5つのアルギニンと2つのmini-PEG(商品名)(AEEA、AEEA)を包含させることが、これらのペプチドにおける全体的なスケールアップに同様に役立つものであった。
【0134】
インビトロ殺菌活性:
3つペプチド化合物、BCC01-5RMP (配列番号 21)、BCC02-5RMP (配列番号 22)、および BCC03-5RMP (配列番号 23)は、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、大腸菌(エシェリキア・コリ)、ネズミチフス菌(サルモネラ・チフィムリウム)およびアシネトバクター・バウマニイに対するインビトロ殺菌活性に関して測定された。すべての実験に関して開始の接種量は、1 x 10
6コロニー形成単位(CFU)/mlであった。60〜80分間のインキュベーション後に、残存するコロニー形成単位が数えられ、そしてデータはCFU/mlにおける対数減少としてプロットされた。ペプチドは、シュードモナス属やアシネトバクター属に対して最も強い活性を示したが、サルモネラ種や大腸菌に対してはより低い活性であった。第3表に示すインビトロ殺菌活性は、BCC01-5RMPがこの評価で他の2つのペプチドよりもわずかに優性を有することを示している。
【表4】
【0135】
第4表〜第6表は、緑膿菌および大腸菌株に対する様々なペプチドおよびペプチド化合物の結果を示すものであるあ。第4表および第5表は、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)およびエシェリキア・コリ ATCC(商標名) 25922(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、ペプチドないしペプチド化合物BCC03-5RMP (配列番号:23)、BCC03-MP (配列番号 24)およびBCC03-5R (配列番号 20)の効果を調べた結果を示すものである。5つの追加のアルギニン残基群を有する2つのペプチド化合物(すなわち、BCC03-5RMP (配列番号 23)およびBCC03-5R (配列番号 20)は、可溶化部位S
Mを有するが5つの追加のアルギニン残基群は有しないBCC03-MP (配列番号 24)の効果をはるかに凌ぐものであった。第6表は、BCCOlの"5R"バージョン、即ち、配列番号 18(5つの追加のアルギニン残基群を有する配列番号1から構成される。)、BCC02の"5R"バージョン(即ち、配列番号 19であって、5つの追加のアルギニン残基群を有する配列番号2から構成される。)、ならびにBCC03-5RMP (配列番号 23)およびBCC03-MP(配列番号 24、すなわち、5つの追加のアルギニン残基群を有しない。)を含む、いくつかの他の化合物の活性を比較したものである。このデータは、概して、大腸菌に対するBCC03-5RMP (配列番号 23)の優越性および緑膿菌に対する"5R"または"5RMP"バージョンのペプチドの優越性を示すものである。
【0136】
BCC02-5RMP (配列番号 22)のインビボ殺菌活性:
図1はC57/BLマウスの細菌性角膜炎モデルにおけるインビボでのBCC02-5RMP (配列番号 22)の使用の結果を示すものである。円形の創傷(2mm)は上皮を除去することにより、マウスの角膜上で作成され、10
5コロニー形成単位(CFU)のシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(登録商標) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))で感染させた。感染した創傷は、最初の日において、2時間の間15分毎に、次いで3時間の間30分毎に、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム、ビヒクル対照)またはペプチドの示された濃度を含む生理食塩水で処置された。感染した創傷は、2日目に2回処置され、そして3日目に1回処置された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。平均値がプロットされ、この平均値は、各グループごとに5匹のマウスの代表するものである。マンホイットニー検定を、生理食塩水対照群と比較して、グループごとに行った。ペプチド化合物は、効果的にすべての細菌を殺し、そして0.25〜0.75 mg/mlの濃度の範囲内での感染を治癒した。
【表5】
【表6】
【表7】
【0137】
実施例2:インビトロでのLPS結合および中和
BCC01-5RMP (配列番号 21)、BCC02-5RMP (配列番号 22)、および BCC03-5RMP (配列番号 23)が、カブトガニ血球抽出成分(Limulus Amebocyte Lysate (LAL))を用いて、これらのリポ多糖(LPS)を結合する能力に関して試験された。これらの3つのすべてのペプチドは、シュードモナスLPSに結合した。LALを用いてのLPSを結合するこれらの能力に有意差はなかった。これらのペプチドのLPSを中和する能力が、LPS刺激化RAW264.7 細胞 (マウスのマクロファージ細胞系統)からの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の放出を減衰させる能力を測定することによってすることで評価された。これらの3つのすべてのペプチドは、TNF-αの放出を減衰させることが観測された。サイトカインの放出よって測定された、これらのペプチドのLPSを中和する能力に有意差はなかった。
【0138】
配列120-146に基づくペプチド群(配列番号28〜31)もまた、シュードモナスLPSに結合し、これを中和する。
【0139】
実施例3:BCC03-5RMPの合成および純化
この合成の目的は、BCC03-5R (配列番号 20) を合成し、そしてこれに2つのmini-PEG(商品名)分子(AEEA; ペプチド インターナショナル、インコーポレーテッド、ルイビル、ケンタッキー州(Peptides International, Inc., Louisville, KY))をカップリングさせることで、BCC03-5RMP (配列番号23): (AEEA)-(AEEA)-RRRRNQGRHFCGGALIHARFVMTAASSFQRを製造することである。合成後、当該ペプチド化合物は純化され凍結乾燥された。
【0140】
合成: ペプチド化合物は、Fmoc化学プロトコルを使用して固相ペプチド合成法を用いて合成され得る。ペプチド鎖は、Fmoc-Arg(Pbf)-Wang樹脂上に合成された。アミノ酸の3つの等価物が、それぞれのカップリングに用いられ、そしてカップリングは、DIC/HOBT法を用いて実施された。ペプチド鎖の合成の完了後に、両方のFmoc-mini-PEG(商品名)が、DIC/HOBT法を用いてカップル化された。合成後、樹脂は洗浄され、乾燥された。
【0141】
ペプチド化合物は脱保護化され、TFAを含むスカベンジャーのカクテルを用いて、樹脂から切断された。樹脂を濾去し、濾液はTFAを除去するために蒸発器で蒸発された。ペプチド化合物はエーテルで沈殿され、沈殿物を濾去し、減圧下で乾燥して、粗ペプチドを得た。
【0142】
純化:純化は、YMC ODS Gel C18を支持体として使用して、RP-HPLCによって行った。0.1 % TFA/H
20 とアセトニトリルが、純化の溶剤として用いられた。分画は分析HPLCによって検査され、そして要求される純度を有する分画が一緒にして集められた。集められたものが、蒸発させられ、そして乾燥凍結された。この手法を使用して生成されたペプチドの純度は定常的に、> 95%であった。
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)の他の実施形態においては、ペプチド化合物群は、CAP37タンパク質のその他のアミノ酸部位(特に限定されるものではないが、例えば、ペプチド23-42、95-122、102-122および120-146が包含される。)の誘導体から構成されるものであり、そしてこれらは前記式(I)や第1表やそれに伴う記載のような本明細書の別の場所において述べたように、置換(例えば、131位および/または132位)で、および/またはN−もしくはC−末端アルギニン残基およびmini-PEG(商品名)分子で、誘導体化されているものである。CAP37タンパク質のこのようなペプチド23-42、95-122、102-122、および120-146は、例えば、米国特許第5,107,460号、米国特許第7,354,900号および米国特許第7,893,027号において記載されており、これらの文献の内容はその完全性をもってその関連により本願明細書に明示的に組み込まれる。
【0143】
式(I)のペプチド化合物の「Pep」配列は、次の配列(配列番号 25)を有し得るものである。
R-H-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-X
8-X
9-H-X
11-R-X
13-X
14-M-X
16-X
17-X
18-X
19-X
20
(式中、X
3およびX
13はフェニルアラニン、チロシン、アルギニン、リジン、またはヒスチジンであり、X
4はシステイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X
5およびX
6はグリシンおよびアラニンから選択されたいずれかのものであり、X
7、X
11およびX
14はアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X
9、X
17およびX
18は、アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X
16は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X
19は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X
20は、システイン、セリンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、Rはアルギニンであり、Hはヒスチジンであり、Mはメチオニンである。)
この配列は、配列番号8(すなわち、CAP37タンパク質のアミノ酸23-42)の誘導体である。
【0144】
同様に、前記式(I)のペプチド化合物の「Pep」配列は、次の配列(配列番号47)を有し得るものである。
R-H-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-X
8-X
9-H-X
11-R-X
13-X
14-M-X
16-X
17-X
18-X
19-X
20
(式中、X
3およびX
13はフェニルアラニン、チロシン、アルギニン、リジン、またはヒスチジンであり、X
4はシステイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X
5およびX
6はグリシンおよびアラニンから選択されたいずれかのものであり、X
7、X
11およびX
14はアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X
9、X
17およびX
18は、アラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されたいずれかのものであり、X
16は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X
19は、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、X
20は、システイン、セリン、トレオニンおよびメチオニンから選択されたいずれかのものであり、Rはアルギニンであり、Hはヒスチジンであり、Mはメチオニンである。)
【0145】
実施例4
95-122に基づいた(配列番号 26〜27および46)および120-146に基づいた(配列番号28〜35)ペプチド化合物群の化学走化性および創傷治癒活性
【0146】
一実施形態において、配列番号26〜35から構成されるペプチド化合物を含む、本願明細書に記載された特定のペプチド化合物群は、単球と角膜上皮細胞を含む宿主細胞に関して化学走化性を有する。例えば、ペプチド95-122は、角膜上皮擦傷のインビボマウスモデルにおいて角膜創傷治癒を促進すること、およびブタにおける皮膚創傷治癒を促進することが本願明細書において示された。CAP37タンパク質のペプチド120-146に基づいたペプチド化合物群もまた、細菌活性ならびに宿主細胞の免疫制御を有している。このようなペプチド化合物群の非限定的な例が、以下に述べられ、そして第1表中に列挙されている(配列番号26〜35参照のこと。)。
【0147】
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物群は、特に限定されるものではないが、例えば以下に述べるように、創傷の迅速な治癒を支援する治療として使用することができる。感染した傷の治療に使用できるるものとして抗生物質が存在するが、これらの薬剤のいずれも、細菌を殺すことと創傷治癒促進および/または皮膚移植受入れの改善との双方を示すものではなかった。本願明細書において述べられるようなペプチド化合物群は、上記した両方を行ない得るものであり、医学的に大きなメリットがある。従って強い商業化の可能性を有している。これらのペプチドの化合物を使用して処置することできる傷の種類には、特に限定されるものではないが、例えば、糖尿病性潰瘍、「床擦れ」、火傷患者、感染性乾癬障害、「ドライアイ」炎症性状態などのような慢性の「非治癒性の」創傷、並びに眼潰瘍、眼創傷、皮膚および上皮組織の創傷などの急性創傷が含まれる。前述のように、ペプチド化合物の別の機能は、皮膚移植などの移植の治癒と受入れを促進することである。
【0148】
ペプチド 95-122および102-122: ペプチド95-122 (LDREANLTSSVTILPLPLQNATVEA GTR; 配列番号26)はCAP37 タンパク質のアミノ酸95-122に相当するものである。ペプチド 102-122 (TSSVTILPLPLQNATVEAGTR; 配列番号27)は、95-122 のトランケーションであり、そして、CAP37 タンパク質のアミノ酸102-122に相当するものである。これらのペプチドとその誘導体は、例えば、角膜潰瘍や創傷を有する被験体における角膜上皮細胞の増殖および移行を増加させるため、およびこれらの付着性を高めるため、および皮膚創傷治癒を加速するために、治療的に有効な量で使用されることができる。
【0149】
これらのペプチド (例えば、
図2〜6および7〜9においてペプチド95-122に関して示される)は、例えば、(a); 単球の化学走化性、(b) 角膜上皮細胞など上皮細胞の化学走化性、(c)角膜上皮 (図 2,3)における創傷治癒を、引き起こすおよび/または促進するために用いられ得る。
図2は、データを分析し、ヒストグラムとして表したものである。
図3は、処置されたマウスの目の実際の写真である。この写真からのデータが、
図2においてヒストグラムおよび(d)ペプチドの基質内注入に反応したサイトカイン産生 (
図4〜6)を作成するのに使用された。
【0150】
ペプチド 120-146「(および誘導体):以下に述べるものは、ペプチド120-146 (配列番号: 28)に基づいたものであり、また120-146Q として知られている。これらのペプチドは、特に限定されるわけではないが、例えば、120-146QH、 120-146WR、120-146WH、 120-146QR-5RMP、 120-146 QH-5RMP、120-146WR-5RMPおよび 120-146WH-5RMPを含むものである。
【0151】
1. ペプチド 120-146 、本願明細書において131位のグルタミン (Q) および132位のアルギニン (R)に関してペプチド120-146QRとも称呼されるものは、次の配列を有する:GTRCQVAGWGSQRSGGRLSRFPRFVNV (配列番号: 28)。
【0152】
2. ペプチド 120-146QHは、角膜上皮細胞から配列決定されたCAP37タンパク質の誘起体から誘導され、そして以下の配列(これは132位のアルギニンがヒスチジンによって置換されているものである(これゆえ、120-146QHという名前である。)以外はペプチド120-146QRと同じものである: GTRCQVAGWGSQHSGGRLSRFPRFVNV (配列番号: 29)。
【0153】
3. ペプチド 120-146WR は、ペプチド 120-146QRの類似物であり、131位のグルタミン(Gin, Q)が トリプトファン(Trp, W)によって取り替えられている。このペプチドは次の配列を有している: GTRCQVAGWGSWRSGGRLSRFPRFVNV (配列番号: 30)。
【0154】
4. ペプチド 120-146WH は、ペプチド 120-131の類似物であり、131位のグルタミンがトリプトファン(Trp, W)によって取り替えられている。このペプチドは次の配列を有している: GTRCQVAGWGSWHSGG LSRFPRFVNV (配列番号: 31)。
【0155】
5. ペプチド 120-146QR-5RMP はペプチド 120-146QR の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSQRSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 32)。
【0156】
6. ペプチド 120-146QH-5RMP はペプチド 120-146QH の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSQHSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 33)。
【0157】
7. ペプチド 120-146WR-5RMP はペプチド 120-146WR の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSWRSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 34)。
【0158】
8. ペプチド 120-146WH-5RMP はペプチド 120-146WH の誘導体化バージョンであり、2つのmini-PEG(商品名)(AEEA) 部分 ("MP")と、アミノ末端の4つのアルギニン(R)残基と、カルボキシ末端の1つのRを含んでなるものである。このペプチドは次の配列を有する: (AEEA)-(AEEA) - RRRRGTRCQVAGWGSWHSGGRLSRFPRFVNVR (配列番号: 35)。
【0159】
実施例4の材料と方法
【0160】
ペプチドの合成: アプライド バイオシステムズ モデル 430A ペプチドシンセサイザー(Applied Biosystems model 430A peptide synthesizer)にての固相合成法を用いたペプチドを合成した(0.1 mmolまたは 0.5 mmolスケール)。
【0161】
動物: C57BL/6 雌マウスはザ ジャクソン ラボラトリー (バーハーバー、メイン州、アメリカ合衆国)(The Jackson Laboratory (Bar Harbor, ME, USA))から購入した。すべての動物が人道的に扱われまた。ザ インスティチューショナル アニマル ケア アンドユース コミッティ(IACUC)、オクラホマ大学、オクラホマシティ、オクラホマ州(The Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC) at the University of Oklahoma, Oklahoma City, OK)およびディーン マギー アイ インスティテュート、オクラホマシティ、オクラホマ州(Dean McGee Eye Institute, Oklahoma City, OK)が、すべての動物の研究プロトコルを承認した。
【0162】
角膜創傷治癒のインビボモデル:創傷治癒のインビボモデルは、使い捨て生検パンチ(2 mm、ミルテックス、ヨーク、ペンシルバニア州(Miltex, York, PA))を用いてマウス角膜を画定し、AlgerBrush II (ザ アルジェ カンパニー インコーポレテッド、ラゴヴィスタ、テキサス州(The Alger Company, Inc., Lago Vista, TX))を使用した0.5 mmのめくれでマウス角膜上皮を除去することで、実施された。角膜の擦傷は、ペプチド 95-122 (10
-5 M)、ペプチ 120-146WH(lO
-6 Mおよび10
-8 M)、ペプチド120-146WR(lO
-6 Mおよび10
-8 M)、またはビヒクル対照(0.9% 塩化ナトリウム、pH 5.5、バクスター、ディアフィールド、イリノイ州(Baxter, Deerfield, IL)))で 0 時間目と16時間目に処置された。角膜の傷は、滅菌 PBSで弱められた滅菌フルオレセイン ナトリウム点眼ストリップ USP (Fluorets(商標名)、ショーヴァン ラボラトリー、オーベナス、 フランス(Chauvin Laboratory, Aubenas, France))を用いて可視化された。画像は、0、16、24 時間目のフルオレセイン染色直後に撮影された。
【0163】
化学走化性: 化学走化性は改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)によって測定された。ペプチド120-146QHは、10
-4 M、10 M
-6 M、10
-8 M、10
-10 M、および10
-12 Mで使用され、ペプチド120-146QRは、10
-4 M、10 M
-6 M、10
-8 Mおよび10
-10 Mで使用された。
【0164】
統計的分析: インビボ創傷治癒実験は、対応のないt検定(unpaired t-test)とANOVA使用して分析された。ボイデン チャンバー化学走性実験は、ウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon signed-rank test)によって分析された。統計は、グラフパッド プリズム 4.03 (グラフパッド ソフトウェア インコーポレーテッド、サンディエゴ、カリフォルニア州)( GraphPad Prism 4.03 (GraphPad Software, Inc., San Diego, CA))を用いて計算された。独立した実験値群の平均は ± SEMで示され、そして< 0.05 の P値が、すべての統計解析に関して有意であると考慮された。
【0165】
実施例4の結果
【0166】
ペプチド120-146QR(配列番号28)および120-146QH(配列番号29)は、HCEC群の化学走化性を容易とした。CAP37誘導化ペプチドのHCEC移動に及ぼす影響を明らかにするために、HCECsは、HCECsにおいて見出される天然CAP37配列に基づくペプチド 120-146QH (配列番号 29)、および 好中球において見出される天然CAP37配列に基づくペプチド120-146QR (配列番号: 28)で処置され、これらのペプチドに応答した移動が、改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)を用いて測定された。ペプチド120-146QH(配列番号29)の10
4 M、10 M
-6 M、10
-8 M、および10
-10 Mでの処理、並びに、ペプチド120-146QR(配列番号28)の10 M
-6 Mおよび10
-8 Mでの処理は、投与量依存性をもってHCECs の移行を顕著に増加させることが見出された(
図7)。両方のペプチドは10 M
-6 Mと10
-8 Mの間で移動を最大限に促進した。HB-EGF (正の対照)およびCAP3(ペプチドに関する正の対照)に応答しての移動において顕著な増加があった(
図7)。ペプチド120-146QH(配列番号29)の10 M
-6 Mおよび10
-8 Mでの移動は、完全CAPタンパク質で得られた移動に匹敵するものであった。ペプチド120-146QR(配列番号28)での移動は、完全CAPタンパク質で得られた移動よりは小さいものであったが、緩衝液対照と比較すると顕著なものであった。
【0167】
ペプチド120-146WH(配列番号 31)は、角膜創傷治癒を促進するものである。角膜創傷治癒過程に及ぼす 120-146WR (配列番号 30)と120-146WH(配列番号 31)ペプチドの効果を測定するために、創傷治癒のインビボモデルが利用された。ペプチド120-146WH(配列番号 31)は、投与量依存性をもっての生体内で傷の治癒に貢献した(
図8および9)。
【0168】
その結果、ペプチド120-146WH(配列番号 31)は10 M
-6 Mと10
-8 Mの間で創傷治癒を最大限に促進した。120-146WH処置した傷における治癒量は、ビヒクル処置した試料と比較して有意に大きかった(対応のないt検定(unpaired t-test)によって、
*** P < 0.001、
*P < 0.05)(図 8)。インビボの創傷の代表的な画像は、20-146WH処置した傷対ビヒクル処置した傷における創傷治癒において投与量依存性の増加を示した(図 9)。本願明細書に記載したデータは、120-146に基づくペプチド化合物は、細菌を殺すだけでなく、化学走行性を仲介し創傷治癒を促進するものであったことを示している。天然CAP37タンパク質の残基 20-44 (配列番号: l)および95-122 (配列番号: 26)に基づくその他の生理活性ペプチドのいずれも、このような双方の機能を有していない。
【0169】
ペプチド 120-146の誘導体群は、一実施形態において、皮膚および/または眼の使用に適したものして、また、特定の実施形態では、創傷治癒に適したものとして処方され、インビボにおいて創傷治癒に効果的であった。(たとえば、
図7〜8は、120-146に基づくペプチド群 (配列番号 28〜31)を示す)。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のいくつかの実施形態は、さらに創傷治癒特性を有する本願明細書記載のペプチド化合物を、他の120-146に基づくペプチド化合物、あるいはCAP37ペプチド化合物の20-44-5RMP シリーズのいずれか(すなわち配列番号21〜23)と、組み合わせて用いることをさらに含むものであり、双方の治癒並びに抗感染力が提供される。
【0170】
実施例5: 120-146に基づいたぺプチド化合物群の抗菌活性
【0171】
この実施例ではぺプチド120-146に基づいたプチド化合物 (すなわち、配列番号 28-35)、並びにこれらの化合物を含む組成物が、様々な細菌に対して抗菌活性を有することが示される。この実施例では、特に限定されるものではないが、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーザ)、アシネトバクター・バウマニイおよびその他の細菌を含むさまざまな感染症を処置するための抗生物質としてこれらの化合物/組成物が有用性であることが示された(
図10〜14)。これらのペプチド化合物/組成物は、標準的な抗生物質に耐性のある細菌に対して単独で使用できる。これらのペプチド化合物/組成物は、また、抗生物質は中性pHで有効な抗生物質として (
図11〜12)、およびゲンタマイシンが効果がないレベルを含む低pHで有効な抗生物質として(図 10、13)使用可能である。
【0172】
実施例5の材料と方法
【0173】
図10〜13に関して、インビトロ殺菌アッセイでは、1 x 10
6 CFU/mlの細菌懸濁液の開始接種を使用して行った。60〜180分のインキュベーション後に、残存するコロニー形成単位が数えられ、そしてデータはCFU/mlにおける対数減少としてプロットされた。
【0174】
特に、試験ぺプチド(CAP37 ペプチド群120-146WR、120-146WHおよび95-122 (それぞれ、配列番号30, 31および26)のそれぞれは、25、12.5、6.25および3.12 μΜで使用された。ゲンタマイシンは、4μg/mlで使用された。1×10
6/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、これらのペプチド群、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)、および正の対照ゲンタマイシンと、pH 7.2で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0175】
図14に関しては、1×10
6/mlのシュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))が、試験ペプチド群(CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)、120-146QR(配列番号 28)、120-146QH(配列番号 29)、120-146QR-5RMP (配列番号 32)および120-146QH-5RMP (配列番号 33))のそれぞれの150、75および37.5μg/mlと共に、あるいは、負の緩衝液対照(トリプトン生理食塩水)と共に、pH 5.5で180分間インキュベートされた。50μlのアリコートが寒天平板上にプレートアウトされ、一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後に、コロニー形成単位が数えられ、そしてCFU/mlを計算した。
【0176】
図15〜17に関しては、マウスの眼における標準的な緑膿菌角膜炎モデルを使用して、ペプチドのインビボ殺菌活性を調べた(
図15〜17)。ペプチド群120-146QR-5RMP (配列番号: 32)、120-146WH (配列番号: 31)、および 120 146WR (配列番号: 30)が、10
5 CFUの緑膿菌に感染した傷付いた角膜に2、5、10および20mg/mlの投与量で局所的に適用されまた。ペプチドの効力がビヒクル対照での処置と比較された。マウスは、感染後48時間で屠殺し、CFU/目を定量化した。
【0177】
実施例5の結果
【0178】
図10および11は、コンパレータ抗生物質としてのゲンタマイシンと比較しての、 CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の、アシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter Baumannii) ATCC(商標名) BAA-747(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、2つの異なるpH値での、殺菌活性を示すものである。図に示されるように、CAP37 ペプチド 120-146WRと 120-146WHを最高のペプチド濃度で使用した場合に、CFU/mlは、pH 5.5 (図 10)でほぼ4対数分、pH 7.2 (図 11) でほぼ5.5対数分減少し、したがって、ペプチドはpH 7.2でpH 5.5 よりも大きいな活性を有していた。標準的な抗生物質のゲンタマイシンは、標準的な最小阻害濃度 (MIC)以上で使用されたにもかかわらず、pH 5.5では細菌を殺すことができなかった。対照的に、標準的な抗生物質のゲンタマイシンはpH 7.2でバクテリアに対して活性であった。ペプチド95-122は、いずれのpHにおいても、アシネトバクターに不活性であった。 25μΜでのペプチド 120-146WR とペプチド120-146WH、および12.5 μΜでのペプチド120-146WR が、アシネトバクター・バウマニイに対して非常に活性であった。
【0179】
図12と13は、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)および95-122 (配列番号26)の、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、2つの異なるpH値での、殺菌活性を示すものである。図に示されるように、ペプチド120-146WRおよび120-146WHを最高のペプチド濃度で使用した場合に、CFU/mlは、pH 7.2 (図 12)で6対数分、pH5.5(図 13) で4〜5対数分減少し、したがって、ペプチドはpH 7.2でpH 5.5 よりも大きいな化性を有していた。25μΜでのペプチド120-146WRおよび120-146WHが、pH 7.2で標準的な抗生物質のゲンタマイシンと同等の有効性を示した。ゲンタマイシンは、標準的な最小阻害濃度 (MIC)以上で使用されたにもかかわらず、pH 5.5では細菌に対して前記ペプチド程有効ではなかった(2対数分の減少を示すのみ)。ペプチド95-122は、いずれのpHにおいても、シュードモナス・アエルギノーザに不活性であった。 25μΜでのペプチド 120-146WR および12.5 μΜでのペプチド120-146WR が、同じ効果を示した。25 μΜでのペプチド 120-146WRとゲンタマイシンは、シュードモナス・アエルギノーザに対して非常に活性であった。
【0180】
図14は、シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC(商標名) 27853(商品名)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州(American Type Culture Collection, Manassas, VA))に対する、CAP37 ペプチド群120-146WR(配列番号 30)、120-146WH(配列番号 31)、120-146QR(配列番号 28)、120-146QH(配列番号 29)、120-146QR-5RMP (配列番号 32)および120-146QH-5RMP (配列番号 33)の殺菌活性の比較を示すものである。図に示されるように、天然の配列を持つペプチド群(120-146QRおよび120-146QH、それぞれ配列番号 28および29)の最高濃度で、CFU の数は 1〜2対数分で低下した。131位のアミノ酸残基のトリプトファンでの置換によって、ペプチド群(120-146WRおよび120 146WH、それぞれ配列番号 30および31)の殺菌能力は向上し、CFUを6対数分減少させた。比較的低い活性を有する天然の配列の5RMPの添加による修飾(120-146QR-5RMP, 120-146QH-5RMP、それぞれ配列番号32および33)は、ペプチド (75 μ g/ml)の低濃度でも、CFUで約 6対数分の減少を示すように殺菌能を増加させた。配列120-146WR-5RMP (配列番号: 34)および120-146WH-5RMP (配列番号: 35)で作成したペプチドは、ペプチドの実質的に低い濃度でも、非常に効果的であると外挿法によって結論づけられた。
【0181】
図14は、5RMP延長(配列番号32〜33)の比較的不活性なペプチド120-146QR (配列番号: 28)および120-146QH (配列番号: 29)への添加が、いかに殺菌活性を顕著に高めるかをしめいている。ぺプチド120-146WR(配列番号 30)および120-146WH(配列番号 31)は、インビボ殺菌アッセイにおいて非常に強い活性であり、131位のグルタミン残基 (Q)のトリプトファン残基 (W)との交換によって、殺菌が著明に増加したことが示されている。従って、120-146WR-5RMP (配列番号: 34) または 120-146WH-5RMP (配列番号: 35)に基づくペプチドが、卓越した殺菌能を持っていることが予測できる。
【0182】
ペプチド 120-146QR-5RMP (配列番号: 32)、120-146WH (配列番号: 31)、および 120-46WR (配列番号: 30)のインビボ殺菌活性が、マウスの眼における標準の緑膿菌角膜炎モデルを用いて検討された。
図15は、ペプチド120-146QR-5RMP (配列番号: 32)が、10および20 mg/mlの投与量でCFU/目を顕著に低減したことを示している。これら2つのグループで10匹のマウス中6匹が、処置の後に眼に生きた細菌を有していなかったことが示されている。
図16は、ペプチド120-146WH(配列番号 31)が10および20 mg/mlの投与量でCFU/目を顕著に低減したことを示している。
図17は、ペプチド120-146WR(配列番号 30)が5、10および20 mg/mlの投与量でCFU/目を顕著に低減したことを示している。
【0183】
実施例6
95-122に基づいたぺプチド化合物群と120-144に基づいたぺプチド化合物群を用いた皮膚創傷治癒研究
【0184】
この実施例では、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物が、臨床的に重要であるブタ全層切除創傷モデルにおける皮膚の創傷治癒過程におけるこっらの活性に関して評価された。3つの異なるペプチド処方(グループB:ペプチド 95-122 (配列番号 26)、グループC:ペプチド120-146WH (配列番号 31)、およびグループD:ペプチド120-146QH-5RMP (配列番号 33))が、それぞれ同じ濃度(3 mg/ml)で評価された。滅菌生理食塩水を対照 (グループA)として与えた。
【0185】
全層切除の傷は、1.0 cm 生検パンチを使用してブタ(N = 3) の背部に形成された。処置は、各傷 (1グループあたり N = 6(傷))に投与(20ml)にされることで実施され、そして、創傷は、、標準閉塞性ドレッシング(TEGADERM・ 3M Corporation, St. Paul, MN)で覆われた。処置は毎日再適用され、ドレッシングが交換された。臨床的創傷治癒観察および創傷領域(2mm)計測は、創傷形成後0、3、5、7、10、14日目に行われた。創傷領域(2mm)データは、創傷治癒の百分率(%)で表された。動物は、14日目に屠殺され、創傷が採取され、組織学的評価がなされた。臨床的観察は、研究を通して紅斑および浮腫に関してグループ間に顕著な違いがないことを明らかにした。すべてのペプチド製剤治療群は、生理食塩水対照(グループA)と比較して、全時間にわたって、閉鎖と再上皮化のより高い率をもってより高速に治癒することが示された。
【0186】
生理食塩水対照グループAと比較しての定量的創傷面積測定の結果(
図18および第7表参照)は、創傷治癒の百分率(%)が、研究全般を通じてグループ B (95-122;配列番号26)創傷に関して大きいものであった。グループ B (95-122) は、創傷治癒における顕著な(p < 0.05)増加を5、7、10、14日目において示し、また、10日目で創傷閉鎖および再上皮化の99.7%を示した。グループC (120-146WH、配列番号: 31)およびD(120-146QH-5RMP、配列番号: 33 )も創傷治癒における顕著な(p < 0.05)増加を創傷形成後、10、14日目において同様に示した。第8表は、創傷治癒計測の統計的解析を示すものである。
【表8】
【表9】
【0187】
図19は、生理食塩水(第1列)、ペプチド 95-122 (配列番号 26、第2列)、ペプチド 120-146WH (配列番号 31、第3列)、またはペプチド 120-146QH-5RMP (配列番号: 33、第4列)に応答しての創傷治癒の程度を示す7、10、および14日目に撮影された代表的な写真を示すものである。
【0188】
臨床的観察は組織学と相関した。すべてのペプチド治療群(グループB:ペプチド 95-122 (配列番号 26)、グループC:ペプチド120-146WH (配列番号 31)、およびグループD:ペプチド120-146QH-5RMP (配列番号 33))が、生理食塩水対照(グループA)と比較して、創傷形成14日後において、上皮の再現と表皮の成熟に関して大きな程度を示した。組織学的評価の結果は、図 20 及び第4表に示される。肉芽組織、炎症、血管新生の量または特徴に最小限の違いがあった。すべての創傷が、十分に覆われ、脈管形成された。主要な相違は、グループ B、C、およびDは、生理食塩水対照と比較して、上皮の再現と表皮の成熟(基底層と基底層上層の成層、よく組織化された角質層の外観)の大きい程度を示したことであった。
【表10】
【0189】
実施例7
雄ラットへの単回静脈内投与後の
14C-BCC03-5RMP(配列番号: 23)の薬物動態、分布および排泄
【0190】
この実施例の目的は雄ラットへの単回静脈内投与後の
14C-BCC03-5RMP (配列番号: 23)の薬物動態、分布および排泄を評価することである。
14C-BCC03-5RMP由来放射能の薬物動態、排泄、および分布が、
14C-BCC03-5RMPの単一静脈内投与(20 mg/kg; 125 μα/kg)後において雄スプレイグ ラットで検討でされた。
14C-BCC03-5RMP
1は、水中5v/v%のブドウ糖、pH 5.5で処方され、5 mL/kg の投与量で投与されました。合計放射能(グループ 1)の薬物動態の評価は、投与後0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、および72時間で採血した。排泄プロファイルの評価は、投与後0〜8および8〜24 時間から尿が採取され、そして投与後168 時間に至るまで24 時間間隔で尿が採取された。糞は、投与後168時間に至るまで24 時間間隔で採取された。分布プロファイルの評価は、投与後0.25、1、4、24、72 時間毎に動物1匹を犠牲とし、そして、定量的全身オートラジオグラフィー (QWBA)のために屠殺体が準備された。液体シンチレーション計数(LSC) によって全血、血漿, 尿、糞(酸化後)、ケージリンス、ケージ洗浄および屠殺体で放射能の濃度を測定した。組織内濃度が、 MCID(商品名)解析ソフトウェア (InterFocus Imaging Ltd Corp., UK)を使用して各標準曲線から補間により算出された。血液及び血漿中総放射能の薬物動態学的パラメーターは、WinNonlin Professional Edition (version 5.2, Pharsight Corporation, St. Louis, MO)を用いて算出された。
【0191】
静脈内投与後のグループ1の動物の血液および血漿中の総放射能の平均値 (± SD)の薬物動態パラメーターが第10表に示される。
【表11】
【0192】
図21に示すように
14C-BCC03-5RMP (配列番号: 23)の静脈内投与後に、血液及び血漿中放射能濃度が最終分析(投与後72 時間)まで定量化された。血液及び血漿中への放射能の露出(AUC
0-t)は類似する。ただし、血液中放射能の除去の半減期値 (t
1/2)は、血漿のそれの約2.5倍より大きいものであるため、血漿と比較して血液中には約2 倍大きい露出 (AUC
0-∞) であるとの結果となった。血漿中放射能のクリアランスは血と比較しておよそ倍大きく、そして血液および血漿におけるクリアランス値は、ラットの肝血流量の率より小さい。血液中の総放射能の分布容積は血漿と比較した場合約 1.6倍大きいかった。そして血液及び血漿中の分布量は、ラットの体内総体液量よりも大きかった。平均の血対血漿の濃度比は、0.689〜3.11であり、血液の細胞成分へ放射能の優遇分布が示された。
【0193】
静脈内投与後のグループ2の動物の投与放射能量の平均(± SD)回収率を第11表にまとめた。
【表12】
【0194】
静脈内投与後に、投与放射能量の大半は尿中に回収され、このことは腎除去が
14C-BCC03-5RMP 関連放射能の除去の主要な役割を果たすことを示した。静脈内投後の投与放射能量の約2%の糞便の除去は、
14C-BCC03-5RMP 関連放射能の肝・胆道排泄が少なかったことを示した。放射能は、投与後最初の48時間以内で、投与放射能の約55%が比較的急速に除去された。残留放射能は、投与後168時間を通じて糞尿で検出された低レベルでゆっくりと、除去された。屠殺体で放射能の回収は、投与放射能量の約23%が計測最後の時点で組織中に保持されていたことを示した。
【0195】
分布プロファイルに基づいて、
14C-BCC03-5RMP 関連放射能は、単回静脈内投与後に、雄性ラットの組織や臓器に迅速かつ広範囲に分配されたことを示した。中枢神経系 (CNS)に関連する組織を除いて、組織の大半は T
max(、最大濃度C
maxに到達する時間)として 0.5 または 1.0 時間を有していた(図 22)。放射能の濃度は一般的に時間の経過とともに減少 (長い T
max値が観察された中枢神経系、生殖組織を除いて)したが、最後の採取時点においても測定可能であった。最も高い放射能濃度を有していた組織は、甲状腺、下垂体前葉、腎皮質、副腎、および腎臓であった。最も低い放射能濃度を有していた組織は、眼水晶体, 硝子体液、脂肪(腹部)、脳の髄質であった。放射能は、血: 脳関門 (小脳、大脳、延髄、脊髄)によって保護されたCNS組織で検出され、このことは、
14C-BCC03-5RMP 関連放射能は血: 脳関門を横切るものであることが示された。投与後24 72 時間の範囲でのこれら組織に観察されたT
max値は、これらの組織への遅延分布があることを示した。放射能の濃度は精巣においても観察され、このことは
14C-BCC03-5RMP 関連放射能は血: 精巣関門も横切るものであることを示した。精巣に観察される T
max値は投与後72時間であり、この放射能の濃度は血漿で観察されたものより少なかった。
【0196】
14C-BCC03-5RMP 関連放射能は、目と目の組織で検出されました。眼と眼組織で観察されたT
max値は、投与後 0.25 4 時間の範囲であった。。眼と眼組織内で観察された放射能濃度は、一般的に時間の経過とともに減少したが、最後分析時点においても測定可能であった。眼の脈絡膜管における分布の蛍光は、
14C-BCC03-5RMP 関連放射能はこの組織に優先的に配布されることを示すものであった。組織: 血漿濃度比が、主要な組織に関して1より大きかった。いくつかの組織 (腎、副腎、膵臓、下垂体組織)において、非常に高い組織: プラズマ濃度比(最大103)が認められた。
【0197】
結論として、
14C-BCC03-5RMP (配列番号: 23)の静脈内投与後において、血液中での放射能発現と放射能の除去の半減期値は、血漿中の放射能よりも大きかった。総放射能のクリアランスは低く、分布容積は高かった。投与放射能量の大半は、尿中に回収され、このことは腎除去が
14C BCC03 5RMP 関連放射能の除去の主要な役割を果たすことを示した。
14C-BCC03-5RMP関連放射能は、組織や臓器血流に限らずに迅速かつ広範囲に配布された。
14C-BCC03-5RMP関連放射能は、血液: 脳関門および血液: 精巣関門を横切るものであった。
【0198】
実施例8:CAP37タンパク質を用いての角膜創傷治癒
ヒト角膜上皮細胞 (HCEC)の単層が、「傷付けられ」、次いでCAP37 で処置され、創傷閉鎖がは時間をかけて記録された。角膜創傷治癒のインビボモデルにおいて、2 mm径の傷がマウス角膜に形成された。創傷はCAP37で処置され、創傷閉鎖はフルオレセイン染色による16および24時間目に観察された。CAP37処置は、角膜創傷治癒を促進することが示された。関連CAP37配列は、米国特許第 7,354,900号に開示されており、その内容はその関連により完全に本願明細書に参照により明示的に組み込まれる。
【0199】
実施例8の材料と方法
【0200】
細胞培養: アデノ ウイルス SV40 不死化HCECsを、James Chodosh (ボストン、マサチューセッツ州)から提供物として入手した。HCECs は、製造元のよって提供されたL-グルタミン (2 mM、Gibco )、抗生物質−抗真菌薬 (0.1 単位/ml ペニシリンGナトリウム、100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩、0.25 μG/ml アムホテリシンB、Gibco)、および成長サプリメントを追補してなる、規定されたケラチン合成細胞無血清培地(KSFM, Gibco, Grand Island, NY)中で維持され、この実験で使用されるHCECsは10〜20の間のパセージであった。
【0201】
最初のHCECs は、ライオンズ アイバンク (オクラホマシティー、オクラホマ州)から取得したドナー角膜から分離された。それぞれの角膜は4分割され、ディスパーセ (25 caseinolytic U/mL; Becton Dickinson Discovery Labware, Bedford, MA)および 5 μ g/mL ゲンタマイシン(A.G. Scientific Inc., San Diego, CA)を含む ハンクの平衡塩溶液中に配置された。角膜組織は、4℃で氷上にて一晩インキュベートされた。角膜上皮細胞は、メスで角膜の表面の上皮層を持ち上げることによって得られた。0.25% トリプシン-EDTA (トリプシン-エチレンジアミン四酢酸、Gibco)での5分間の消化の後、熱不活化ウシ胎児血清 (FBS、Gibco) の等量を角膜上皮細胞に追加した。細胞は450 X gで5分間遠心分離され、そして細胞ペレットは製造者によって指定された成長因子を追補したKSFMで再懸濁された。細胞は、播種され、フィブロネクチン、コラーゲン及びアルブミンを含有するFNC コーティング混合物 (AthenaES、ボルティモア、メリーランド州)で処理された組織培養皿で培養した。すべての実験を実行する前に HCEC培地は、最低18時間の成長因子が含まれていないKSFM(基底 KSFM)中に置かれた。
【0202】
組換えCAP37の産生: 組換えCAP37(rCAP37)は、RSV PL4発現ベクターを用いて、ヒト萌芽期腎臓(HEK)293細胞で産生されまた。組換えタンパク質は、前述のHPC4イムノアフィニティーカラムで精製された。rCAP37のすべての調製物は、0.01% 酢酸中で透析し、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE) とウェスタンブロット分析によって純粋であると決定された。上記した改変ボイデン ケモタキシス チャンバー法(modified Boyden chemotaxis chamber method)によって機能活性を評価した。これらの研究で使用されるrCAP37は、カブトガニ血球抽出成分(Limulus Amebocyte Lysate (LAL))検定によって測定された場合に、タンパク質の1μg当り、<0.05 エンドトキシン単位を有するものであった。
【0203】
動物: CC57BL/6 雌マウスはジャクソンラボラトリー(バーハーバー、メリーランド州) から購入した。マウスは4-7日順応させ、実験の開始時にすべて8週齢とした。ザ インスティチューショナル アニマル ケア アンドユース コミッティ(IACUC)、オクラホマ大学、オクラホマシティ、オクラホマ州(The Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC) at the University of Oklahoma, Oklahoma City, OK)およびディーン マギー アイ インスティテュート、オクラホマシティ、オクラホマ州(Dean McGee Eye Institute, Oklahoma City, OK)が、すべての動物の研究プロトコルを承認した。
【0204】
創傷治癒のインビトロモデル:インビトロ擦傷アッセイは、角膜創傷治癒を促進するrCAP37 の能力を決定するために用いられた。ヒト角膜上皮細胞は、コンフルエント単層を得るまで、上記のように培養された。10μlピペット チップを使用して2つの垂直線を作成するように各単層を擦傷した。単層は、パリン結合上皮成長因子(HB-EGF、250 ng/ml)、rCAP37 (25-2000 ng/ml)または基底KSFM (Gibco)で処理された。創傷の閉鎖は、カメラ付倒立顕微鏡(TE2000-E、ニコン、メルヴィル、ニューヨーク州)を用いて、0時間目、18時間目、24時間目および48時間目に観察された。インビトロの傷閉鎖の時間経過の画像は、カメラ付倒立顕微鏡(TE2000-E、ニコン)を使用して、0〜18 時間で得られた。HCEC単層は、前述のようにHB-EGF、rCAP37、および基底KSFMで処置された。各擦傷の幅は、ImageJ ソフトウェア (US National Institutes of Health, Bethesda, MD)を使用して測定した。結果は、傷の閉鎖の百分率として表される。
【0205】
創傷治癒のインビボモデル: マウスはケタミン (100 mg/kg; Bionichepharma, LLC., St. Lake Forrest, IL)およびキシラジン (10 ng/kg;Rompun;Bayer Corp., Shawnee Mission, KS)を使用して麻酔され、そして右の角膜は次のようにして傷付けられた。使い捨て生検パンチ(2 mm、ミルテックス、ヨーク、ペンシルバニア州(Miltex, York, PA))を用いてマウス角膜を画定した。AlgerBrush II (ザ アルジェ カンパニー インコーポレテッド、ラゴヴィスタ、テキサス州(The Alger Company, Inc., Lago Vista, TX))を使用して2mmの画定された範囲内で0.5 mmのめくれでマウス角膜上皮を注意深く除去した。角膜の傷は、HB-EGF(250 ng/ml)、rCAP37 (25-2000 ng/ml)またはビヒクル対照0.9%塩化ナトリウム、pH 5.5、バクスター、ディア フィールド、イリノイ州)で処置された。角膜の傷は、滅菌 PBSで弱められた滅菌フルオレセイン ナトリウム点眼ストリップ USP (Fluorets(商標名)、ショーヴァン ラボラトリー、オーベナス、 フランス(Chauvin Laboratory, Aubenas, France))を用いて可視化された。画像は、0、16、24および48時間のフルオレセイン染色直後にカメラ(Carl Zeiss OPMI VISU 140, Carl Zeiss Surgical, Inc., Oberkochen, Germany)付きの手術顕微鏡を用いて撮影を行った。各開いた傷の面積は、ImageJ ソフトウェア (US National Institutes of Health, Bethesda, MD)を使用して測定した。結果は、傷の閉鎖の百分率として表される。
【0206】
組織学: マウスの完全眼が、傷付けた後の 0、6、16、24、および 48 時間で組織学のために採取された、そして直ちに、Prefer fixative (Anatech LTD., Battle Creek, MI)に20 分間浸漬された後、70% エタノールに移された。組織は、パラフィン包埋化され、5μmの厚さに切断され、そしてSUPERFROSTPLUS(登録商標名)スライド(Statlab Medical Products, Lewisville, TX)上に載置され、その後脱パラフィン化され、再水和され、そして脱イオン水で洗浄された。切片は、ヘマトキシリン(Leica Microsystems, Buffalo Grove, IL)で染色され、脱イオン水で 2回洗浄した後、Blue Buffer (Leica Microsystems)中で洗浄した。切片は最終的に脱イオン水と 95% エタノールで洗浄され、エオシン(Leica Microsystems)で対向染色された。切片は、エタノールで脱水され、キシレンで浄化された。
免疫組織化学: マウスの完全眼が、集られ、固定され、埋め込まれ、そして前述したように切断された。抗原検索が、切片をRodent Decloaker (BioCare Medical, Concord, CA) で処理し、これを20 分間蒸したのち、脱イオン水で20分間冷却することによって行った。切片は30分間Rodent Blocker M (BioCare Medical, Concord, CA)でブロックされ、脱イオン水で1回当り5分間で3回洗浄され、そして、過酸化物ブロック(Cell Marque, Rocklin, CA)で10分間ブロックされた。切片は次いで、脱イオン水中で1回当り5分間で3回洗浄され、ウサギ抗 PKCPKC(4 Santa Cruz Biotechnology, Inc. Santa Cruz, CA)と 4 ℃で一晩インキュベートされた。切片は、ウサギ IgG(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)と 4 ℃で一晩インキュベートされ、非特異的染色のための対照として使用された。一次抗体でのインキュベーション後、切片は、トリス緩衝生理食塩水 (TBS)で 5 分間、3回洗浄し、そして、齧歯類上ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP)-ポリマー(メディカル・バイオケア)( rabbit-on-rodent horseradish peroxidase (HRP)-polymer (BioCare Medical))と30分間インキュベートされた。TBS 5 分間、3回洗浄し、そして、3', 3'-ジアミノベンジジン テトラハイドロクロライド(DAB)色素体 (Cell Marque, Rocklin, CA)で染色し、脱イオン水で洗浄し、イムノマスターヘマトキシリン(Immuno Master Hematoxylin (American Master*Tech Scientific, Inc., Lodi, CA))で対向染色された。染色された組織の画像はカメラ付倒立顕微鏡 (TE2000-E;ニコン)で得た。
【0207】
蛍光抗体法: HCECs とプライマリ HCECs は、Lab-Tek(商標名) II ガラス チャンバー スライド (Nunc, Rochester, NY)で培養され、そして基底メディアで一晩飢えさせた。単層は10 μlピペットチップで擦傷した、或いは傷付けずそのままとされ、そして、1 μΜ ホルボール 12-ミリステート-13-アセタート (PMA、シグマ アルドリッチ)、rCAP37(25-500 ng/ml)、または基底 KSFM (Gibco)で15分処理された。処置後、細胞を室温にてPBS (Gibco) 中の4% (v/v) ホルムアルデヒド溶液 (Thermo、ロックフォード、イリノイ州)で20分間固定化し、次いでPBS (Gibco) 中の0.5% PBS TRITON(商品名)-X 100 (Mallinckrodt, St. Louis, MO)で易透化させた。残りのホルムアルデヒドは、 PBS中の0.05 M 塩化アンモニウム (NH
4Cl、シグマ アルドリッチ、セントルイス ミズーリ州)で10分間クエンチした。細胞をPBS で洗浄し、ブロッキングバッファー (5% ウシ血清アルブミン( Calbiochem, Gibbstown, NJ)および0.5% PBS TRITON(商品名)-X 100 (Mallinckrodt, St. Louis, MO)を含む PBS中の 10% (v/v) ヤギ血清)で室温にて1時間ブロックした。PKC アイソフォームを検出するために、細胞は PKC
δ (250 ng/ml), PKC
θ (500 ng/ml), PKC
α (1
μg/ml)または PKC
γ (1
μg/ml)に対して指向する一次マウス抗体(Becton Dickinson Discovery Labware)中で室温にて1時間インキュベートされた。マウス IgG (1 μ g/ml;Jackson ImmunoResearch) は非特異的染色の対照として用いられた。細胞は 0.25% TRITON(商品名)-X 100 (Mallinckrodt) を含むPBSで洗浄され、そして2次抗体(ブロッキングバッファ中4
μg/ml ; ALEXA FLUOR(登録商標) 488 dye (Life Technologies Corp., Grand Island, NY))で室温にて1時間インキュベートされた。細胞はTBSで5 分間、3回洗浄し、最後に水洗浄し、そしてDAPI (Molecular Probes/Life Technologies Corp., Grand Island, NY)を含むPROLONG(登録商標) Gold Antifade を使用して載置された。画像は倒立エピフルオレセント顕微鏡 (TE2000-E;ニコン)で得た。
【0208】
siRNA トランスフェクションとジーンサイレンシング: PKCdに対して指向するステルス RNAi (商品名) (Ambion (登録商標) 10 μΜ グランド アイランド, ニューヨーク) またはステルス RNAi (商品名) siRNA Negative Control Hi GC (10 mM, Ambion) は (ハミルトン (登録商標)、リノ、ネバダ州) 33 ゲージ針を使用して 5 μl結膜下注射を介してマウス結膜に供給された。結膜下注射後は、上記のように AlgerBrush II を使用して角膜をすぐに負傷した。傷の閉鎖は、前述の16および24 時間で測定した。動物を24 時間で人道的に安楽死させ、SklarSafe・Safety Scalpel #11 (SKLARョ, West Chester, PA)を使用してそれぞれの角膜を切除した。組織は、すぐに凍結乾燥された。角膜ホモジネートは以下のように調製され、各ノックダウンの効率を確認するウエスタンブロット検定によってPKCdのレベルの分析を行った。ノックダウンの角膜のPKCd のレベルをステルス RNAi (商品名) siRNA Negative Control Hi GC (10 mM, Ambion)に比較した。
【0209】
タンパク質の抽出およびウエスタンブロッティング:SklarSafe・Safety Scalpel #11 (SKLARョ, West Chester, PA)を使用してマウス角膜を摘出し、上記のように指定された時点で凍結します。角膜は、cOmplete ULTRAプロテアーゼインヒビター(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN) の 1x カクテルを含む放射線免疫沈降法 (RIPA) バッファーの 200 μl中に置かれた。組織ホモジネートはBULLET BLENDER (登録商標) (Next Advance, Inc., Averill Park, NY)、0.9-2 mm ステンレス ビーズ (Next Advance, Inc.)を使用しての最高速度で 10 分間角膜を崩壊することによって作成された。ホモジネートは 16,000 X g で 10 分間遠心分離し、BCA タンパク質濃度測定 (ピアス、ロックフォード、イリノイ州) を使用して各角膜ホモジネートサンプルから上澄みのタンパク質濃度が測定された。
【0210】
角膜ホモジネートの各サンプルからのタンパク質 (20 μg)が10 %SDS-PAGEゲル電気泳動によって分析された。電気泳動に次いで、サンプルはウェスタンブロット分析のための硝酸セルロース膜 (Whatmanョ Inc. Florham Park, NJ)に移された。硝酸セルロース膜は、TWEEN 20 (Thermo Fisher Scientific, Pittsburg, PA) を含むトリス緩衝生理食塩水 (TBST)中の 5 %BSA (Calbiochem)で 1時間ブロックされて、そしてPKCd (Santa Cruz) または・actin(Sigma-Aldrich)に対して指向する一次抗体を含むTBST中の 5 %BSA (Calbiochem)で製造業者によって指定に従い一晩インキュベートされた。膜は、TBST で 5 分間 3 回洗浄し、そして、HRPに抱合させたウサギ (Cell Signaling Technology, Danvers, MA) またはマウス(Sigma-Aldrich)二次抗体と1 時間室温でインキュベートされてた。製造元の指示に従って、二次抗体が使用されました。ブロットは、Pierce ECL Western Blotting Substrateを使用して展開され、そしてUltraLum Imager (Omega, Claremont, CA)を用いて可視化した。れ、ブロットはImageJ software (U.S. National Institutes of Health, Bethesda, MD).を使用して分析され、半定量化された。
【0211】
統計: インビトロ創傷治癒実験は、。一元配置分散分析(ANOVA)およびそれに続くダネットの多重比較検定(Dunnett's multiple comparison test)によって分析を行いました。インビボ創傷治癒とPKCdノックダウン研究は、対応のないt検定によって分析された。統計は、グラフパッド プリズム 4.03 (グラフパッド ソフトウェア インコーポレーテッド、サンディエゴ、カリフォルニア州)( GraphPad Prism 4.03 (GraphPad Software, Inc., San Diego, CA))を用いて計算された。独立した実験値群の平均は ± SEMで示され、そして< 0.05 の P値が、すべての統計解析に関して有意であると考慮された。
【0212】
実施例8の結果
【0213】
CAP37はインビトロ創傷の閉鎖を容易とする:CAP37 仲介移行、HCEC増殖、接着が、CAP37 を角膜創傷治癒のプロセスを促進するという前提を導く。この前提を調べるためには、インビトロ擦傷モデルが、CAP37が傷の閉鎖を促進するかどうかを決定するため利用さ
れた。調査結果は、 CAP37は、インビトロでの傷の閉鎖の投与量依存的(図 23 A)促進を示した。CAP37 は、最大限に 250 と 500 ng/ml の濃度で使用すると傷の閉鎖を促進
した。250 ng/ml のCAP37でCAP37
処理した傷の創傷閉鎖率は、ほぼ 18 時間で 71% であ
り、 約 41%の閉鎖を示した基底メディア処理試
料より有意に多かった (**P <0.01) 。CAP37の500 ng/mlでの傷の治療は、約 62% 閉鎖とな
り、緩衝液対照より有意に大きかった (* P < 0.05)。
正の対照として使用されたHB-EGF
は治療単層の ほぼ 88% 閉鎖を示した (図 23A)。時間の各ポイントで撮影した インビトロ擦傷アッセイの代表的な
画像は、様々な治療への応答の閉鎖の程度を
示す。HB-EGFで治療の傷は、傷が完全な閉鎖
するのに 24 から 48 時間の間必要である一方、 CAP37 の 250 ng/ml で処置した場合は 24 時間で完全に閉鎖さ
れた。バッファー処理
傷(図 23
B)は、48 時間で完全閉鎖に届か
なかった。
【0214】
創傷後の最初の18時間の
インビトロ創傷閉鎖
の時間経過顕微鏡観察研究は、細胞の先端が、CAP37 対 HB-EGFに
応答するにおいて、明らか
な違いがあることを示した。CAP37処理のサンプルで
は、個々の細胞が
先端(リーディングエッジ
)から切り離れ、
他の細胞から独立した負傷領域を横切って這い進むすることがわかった。細胞は、活性化を示す明白な
葉状仮足(lamellipodia)を有して、偏極を示した。リーディングエッジでないすべての細胞は、
活性化または葉状仮足を生産した。ただし、傷のエッジには、HB- EGF 処理単層よりもよりダイナミックな活動が
示された。HB-EGF処理細胞は、傷の閉鎖の著しく異なる
方法を示した。これらの細胞はシート
で進み、個々の細胞は切り離れたり、あるい細胞の前記した進入するシートに独立して、創傷を横切って移動しないもののようであった。
極在化や葉状仮足形成のような、CAP37処理細胞の形態変化は、HB-EGFまたは基
底KSFM処理単層に
は表れなかった。
【0215】
CAP37のin vivo マウスモデルにおける角膜創傷治癒促進: 角膜創傷治癒材料と方法
に記載の in vivo マウスモデルを使用して、傷の閉鎖の CAP37 の
局所適用の効果が検討され
、16、24、および 48 時間での閉鎖率が
正の対照 HB-EGF と負のビヒクル対照と比較した(
図24aおよび
図24b)。16 時間で CAP37は71%で傷の大きさを減じ、24時間で CAP37 処理 (250 ng/ml)は83% 傷閉鎖した。両方の時点で CAP37処置した傷の閉鎖は、ビヒクル処理対照よりも有意に大きいものであった(* P < 0.05 緩衝液対照と比較して)。傷の時間依存閉鎖がHB-EGFでも示され、緩衝液対照と比較して顕著に高かった(** P < 0.01)。フルオレセイン染色傷の代表的な画像は、
図22Bで表示され、HB-EGF と CAP37とビヒクルで治療の反応の傷治癒の時間依存が示された。図示されるように、フルオレセイン染色 (
図22B) によって測定されるように、すべての傷は48 時間で完全閉鎖を示した。
【0216】
CAP37は24 時間で
角膜再上皮化につながる: フルオレセイン染色法は、角膜上皮剥離と治癒の程度を確認する総形態学的アプローチを提供
する。ただし、CAP37が、完全な再上皮化を促進して角膜の上皮層の構造の整合性を復元するかどうかを確認するのに
、完全眼球は16、24、および 48 時間で収集され
、組織学
のため処理された(図25A〜E)。ヘマトキシリンとエオシン(H & E)染色標本は、
24 時間でその再上皮化は順調に進んで
、CAP37での治療に応答してこれらの細胞の増殖を示す、上皮の基底細胞層の修復がもたらされることを明らかにした(
図25A)。
図24Bに示された24時間でのフルオレセイン染色の低レベルの検出の可能性があって、CAP37への応答において、24時間での移行および扁平上皮細胞への分化は完了したものではないと思われた。CAP37
への応答においての再上皮化は、24時間
で、ビヒクル
処理した傷と比較して大きく促進された
(図25B)。図に示されるように、上皮は、傷の中央地域において単層厚さのみであり、基底細胞の増殖は、これと同じ時間
時点での、CAP37処理した傷と比較して限られていた。これはさらに、
図24Bに示されたフルオレセイン染色傷
において、ビヒクル処理傷が非常により強い染色をされていることが示されていることでで確認できる。48時間
で、CAP37
処理した傷 (
図25C)は
、全くの完全性を取り戻して、無傷の角膜 (
図25E)と組織学的区別できない
ものであった。ビヒクル治療角膜は、48時間で再
上皮化したが頂層性の完全な構造(
図25D)は観察されなかった 。
【0217】
PKC
δと PKC
θが負傷したHCEC
単層に存在する:
本発明者によ
る研究は、PKCアイソフォームα
、δ、ε、θ、η、ι、λ、ζ
は、ヒト角膜上皮細胞
に発現され、
CAP37は、走化性
において特異的にPKCδとθを活性化することを示す。
上皮細胞の移動は、正常な創傷治癒に重要なステップ
であるが、これらのアイソフォームが創傷治癒に関与していたかどうか
疑問であった。
傷付けたものと傷付けていないHCEC単分子膜
がPKCδとθの発現を見るために染色された。結果は、傷付けていないHCEC単分子膜におけるPKCアイソフォームδとθの構成的発現を示し、創傷の縁に沿って両方のアイソフォームの増加した染色を示した(図26A)。PKCアイソフォームδとθの構成的発現は、プライマリーHCECsを使用して確認した(図26B)。SV40 HCEC
細胞系およびプライマリーHCECsにおけるこれらの2つのアイソフォームの染色の特異性は、
染色を示さないIgG抗体対照を用いて示された。
【0218】
CAP37治療
はHCEC 単分子膜の
PKCδ染色の増加につながる: PKC
δはCAP37を介する角膜創傷治癒のさらなる調査に
選択された。
CAP37が、傷付けたものと傷付けていないHCEC単分子膜でのPKCδ発現に影響を有するかどうかを決定するために、HCECsをCAP37 (250および500 ng/ml)ならびに正の対照としてのPMAで処理した。未処理の傷付けていないHCEC単層(図27A)および未処理の傷付けたHCEC単層(図27B)を上回る、PKCδ染色における用量依存性の増加が、傷付けていないHCEC単層(図27Eおよび図27G)と傷付けたHCEC単層(図27Fおよび図27H)の双方において、CAP37処理した細胞で15 分で見られた。PKCδ染色における増加は、
500 ng/mlのCAP37での処理に続いて観察されたより大きな染色から、用量依存性であると思われた。CAP37に反応するPKCδ染色における増加は、未処理 (図27K)のものに対して少なくとも18時間(図27L)持続された。PKCδの発現は、CAP37処理細胞 (
図27E〜H)とPMA処理細胞 (
図27C、27D)の間で比較
された。
CAP37処理に応答したこの増加した発現がPKCδ染色に特異的であることを立証するために、PKCのαアイソフォームの染色も行ったが、
CAP37で処理した場合に、PKCα染色における増加は、単膜 (図27I)内にも単層の創傷の縁(図27J)に沿っても観察されなかった。
【0219】
PKC
δは、
インビボで創傷の縁に沿って発現される:
PKCδに関する染色は、培養HCEC単層(図26A)における傷に応答して増加したので、研究は、PKCδの発現における増加がインビボで角膜の創傷において観察されるであろうかどうかを決定するために行った。前述のように角膜が擦傷され、マウスの完全眼球が傷付けた後の6、16、および48時間で免疫組織化学のために収集され、
傷に応答してのPKCδの発現を調べた。
傷付けた後の6時間(図28A〜B)および16時間(図28C)では、新しく増殖しおよび移行してきた上皮細胞の先端(リーディング エッジ)でPKCδはほとんど、ないしは全く観察されませんでした。ただし、リーディング エッジより離れた位置での上皮細胞は、正常な傷付けられていない角膜(図28G)におけるPKCδの恒常的な発現に匹敵する低いレベルの染色を示した。
【0220】
傷のCAP37処理がPKCδの発現において影響を有していたかどうかを決定するために、角膜が傷付けられ、そしてその直後および傷付けた16時間後に処理された。6時間および16時間後に摘出された眼は、1回のCAP37の処理(0時間目)を受けたものであり、一方、48時間後に摘出された眼は、2回のCAP37の処理(0時間目および16時間目)を受けたものである。6 時間で染色
された切片は、新しく移行
しおよび増殖している上皮細胞、ならびに創傷の縁から離れたそれらの細胞に関して強く染色されることを示した(図28D〜E)。PKC
δに関する同様の染色パターンが、
傷付けられた16時間後で得られた切片において観察された(図28F)。48時間
後に得られた
切片は、完全に治癒
されており、そして、傷付けていない角膜(
図28G)
における恒常的発現と同様の強度で、上皮
全体が均一に染色されているものであった(図28H)。
【0221】
PKC
δはインビボにおけるCAP37傷治癒に必要である: CAP37が、
PKCδを介して傷治癒を仲介しているかどうかを決定する siRNA を用いた
インビボ実験を行った。マウス角膜
が、PKCδに対して指向するsiRNAで、またはスクランブル siRNAでトランスフェクションされた。スクランブル siRNAおよびPKCδ siRNAでのトランスフェクション
に続いて、上述したようにして傷が形成された。角膜は、
次いでビヒクル
またはCAP37
(250 ng/ml)で処理され、そして傷の閉鎖を16
時間および24時間で測定
した。スクランブル siRNA
をトランスフェクションされた角膜は、
CAP37処理後24時間で、傷閉鎖における期待された増加を示した(P < 0.05) (
図29A)。
PKCδ siRNAをトランスフェクションされた角膜においては、16時間および24時間のいずれの時点でも、CAP37
に応答しての創傷治癒の大幅な増加がなかった(
図29A)。
しかしながら、CAP37処理は、生理食塩水処理創傷以上の傷治癒におけるわずかな増加につながるものであった。しかしこの増加は統計的有意性には届
かないものであった(図29A)。
このことは、PKCδは、含まれている唯一のシグナル伝達分子ではなく、それぞれの角膜におけるPKCδのノックダウンが、ウェスタンブロットによって評価した場合に、平均 50%であった(図29A)ことの影響であることを示すことができるものであった。このノックダウンのレベルは、
スクランブル siRNA 対照と比較した場合に、統計的に有意な
ものである(*** P < 0.005)
と測定された。フルオレセイン染色傷の代表的
な画像が、スクランブル siRNA
をトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された角膜における経時的な傷閉鎖の程度を表す(図29B)。図示されるように、最大
の傷の閉鎖
は、スクランブル siRNA
をトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された動物
において観察された。
【0222】
これらの結果は、ヘパリン結合タンパク質
およびアズロシジンとして
も知られる、好中球由来のタンパク質
CAP37の新たな機能を示す
ものである。創傷治癒
における一連のインビトロのおよびインビボのモデルを使用して、CAP37 が、
インビトロで、ならびに角膜擦傷のマウスモデルにおいて傷閉鎖を加速することが示された。重要なことは、CAP37 の角膜上皮創傷治癒を促進するというメカニズムが
特定されたことである。免疫組織化学的および siRNA 技術
を用いることにより、プロテインキナーゼC (PKC)
のシグナル伝達経路、 特にPKC
δが、
CAP37仲介角膜上皮創傷治癒の重要な変調成分であることが立証された。これは
、角膜上皮創傷治癒において、好中球顆粒由来抗菌タンパク質
によって用いられる細胞内シグナル伝達メカニズムの最初の
実証であると思われる。
【0223】
角膜は免疫特権
部位であり、そしてそれゆえ、角膜
における治癒のプロセスは皮膚の
創傷で起こるプロセスとは同
一ではない。ただし、角膜
および皮膚
での創傷治癒の双方において重要な特徴の1つは、好中球が不可欠な
細胞成分であるということで
ある。好中球はプロセスの初期の参加者
であり、そしてこれらの強力な抗菌作用及び貪食活性に
よって、感染から
宿主を保護する
ことを基本とするものである。角膜
が傷付けられた場合、好中球は
リンパ管を介して角膜中へと移行する。研究は、角膜創傷治癒
の遅延は、抗体による好中球減少症のマウスで発生することを示してい
る。野生型およびノックアウトマウスを用いたルミカンとヘムオキシゲナーゼ
に関する、および角膜上皮創傷治癒のウサギモデルに関する、その他の研究はさらに好中球の存在が
治癒を加速することを
立証している。
このことが、CAP37、LL 37、ヒト β-ディフェンシン-1 (HBD-1)のような好中球の顆粒内で見出される抗菌タンパク質、および殺菌性-透過性-増加(bactericidal-permeability-increasing (BPI))タンパク質が、創閉鎖を調節する上で有用であると証明し得るとの概念を本発明者らにもたらした。
【0224】
創傷部位に補充された好中球はCAP37
並びにその他抗菌タンパク質
およびペプチド
を含む、それらの顆粒成分を放出し、角膜感染に対する
最初の防御ラインを提供する。侵入病原体を殺すことに加えて、これらの抗菌性ペプチド
類は、自然免疫を制御する宿主細胞の機能を調節することができること
が今明らかとなった。重要な
ことは、好中球はこれらの抗菌タンパク質の唯一の
源ではないということである。
CAP37およびLL-37は、感染および傷付けられたことへの応答において、角膜上皮を含む、宿主細胞において、誘導されることができる。LL-37は、CAP37とどうように、インビトロにおいて、抗菌性で、リポ多糖を結合し、そして角膜上皮創傷治癒を促進することが示された。CAP37とは異なりLL-37は
、HCECの増殖を
促進せず、そして角膜上皮細胞の移動
および創傷治癒におけるそれらの影響を含む細胞内シグナル伝達機構が解明されてい
ない。
【0225】
この実施例
は、HB-EGF が
インビトロでの創傷治癒を促進することを確認
するのみならず、HB-EGF が
インビボで角膜創傷治癒を促進することも
初めて明らかに
した。HB-EGFは、これがまたCAP37
と同様にヘパリン結合タンパク質
であり、そしてまた、HB-EGFが器官
組織培地において角膜創傷治癒を促進するというインビトロの証拠があったゆえに、正の対照として使用するため選ばれた。以前のインビトロの研究は、EGFではなく、HB-EGFはEGF受容体の延長可された活性化を介して角膜創傷治癒を容易とすることを示していた。これは、HB-EGF
は、角膜表面上の負に帯電したグリカンに結合することができる一方、EGFは処理後に洗浄除去されてしまうという事実によると信じられている。EGFに代って長期に作用するゆえにこれを望ましいものとするHB-EGFのぺパリン結合特性は、CAP37にも適用され、そしてこれを角膜創傷治療に有効なものとする。
【0226】
理論に拘束されることを希望せず
、本研究は、先に、増殖、移行、および接着として定義され
た、CAP37介在細胞プロセスが、角膜上皮の創傷の治癒を促進することと関連して作用することを示すものである。CAP3
7処理されたインビトロの創傷の経時的なビデオ
は、少なくとも創傷修復の初期の段階で、主として移行を促進するとすることによって、角膜上皮創傷治癒に影響しているのではないかと推測する。増殖、接着などの他のメカニズムはプロセスの
より後の段階で関与する可能性が
ある。
【0227】
研究の1つの構成は、CAP37介在角膜上皮創傷治癒を誘発する細胞内シグナル伝達機構の描写であった。インビトロおよびインビボでの角膜創傷閉鎖(図23〜24)を仲介するCAP37の能力を実証した後、PKCδの存在が未処理の角膜上皮細胞培養単層において同定され、そして、初期の角膜上皮細胞で確認された(図26)。CAP37処理角膜上皮細胞単層は、PKCδ二環する染色において増加を示し(図27)、これはCAP37処理18 時間後まで持続され、この効果が一過性でなかったことが示された。免疫組織化学は、傷付けていないマウス角膜におけるPKCδの恒常的な存在を明らかにした一方で、CAP37処理創傷の免疫組織化学は、6時間および16時間後のいずれにおいても、ビヒクル処理対照に比べて、傷のリーディング エッジに沿ってPKCδの染色が増加していることを明らかとした(図28)。CAP37処理創傷における傷のリーディング エッジに沿ってのPKCδの存在およびこのPKCδの増加は、角膜上皮総称治療のマウスモデルにおいてPKCδがノックダウンされた研究へと向けさせた。結果は、PKCδの部分的なノックダウンが、インビボでの角膜創傷治癒におけるCAP37の効果を減ずるのに十分であることを明らかにした。PKCδノックダウンは、CAP37の効果を完全に切断するものではない一方で、スクランブル siRNAをトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された角膜と、PKCδ siRNAをトランスフェクションされ、そしてCAP37で処理された角膜との間で、いずれの時間時点においても有意差は見られず、創傷治癒における減少は臨床的にまだ有意な影響を与えるものであろう(図29)。達成された平均PKCδノックダウンは50%であり、そしてこれは、CAP37が、PKCδに対するsiRNAでトランスフェクションされた角膜において創傷閉鎖の一定量をいまだに促進するのはなぜかという理由を説明できるものである。これらの発見のための別の説明は、PKCθのようなその他のPKCアイソフォームは、CAP37介在創傷治癒に部分的に寄与するかもしれないということである。他の研究者らは、PKCαおよびPKCεはHGF誘導角膜創傷治癒に重要であり、そしてPKCαはウサギ角膜創傷治癒において重要な変調成分であるということを示している。これに対して、PKCαノックアウトマウスを用いた研究は、より迅速な角膜上皮創傷治癒を実証しており、そして本発明者らはこれは恐らくこのモデルにおける浸潤性好中球数が少ないことによるものであることを示した。CAP37を用いた研究では、PKCαの関与が示されなかった。すべての炎症反応に関して、炎症細胞の流入を制限することと治癒プロセスを促進することの間に繊細なバランスが存在する。
【0228】
図28における興味深い観察は
、CAP37処理角膜創傷のリーディングエッジでPKCδの染色に加えて、移住する白血球の染色があることである。好中球は、好中球における
完全NADPH酸化と
呼吸性バースト活性化のために必要とされる、 PKC
δを発現する
ことが知られている。研究は、LL-37 など抗菌タンパク質がNADPH
オキシダーゼ系を介して時間−および用量−依存性で好中球
において反応性酸素種(ROS)の生産を引き起こすことができることを示している。これは
、過酸化水素(H
2O
2)の低レベル(10-20 μΜ)
が角膜
上皮細胞の接着と移行の促進を介して角膜創傷治癒を誘導することが示されているために、創傷治癒の観点から特に重要である。本発明者から未発表の結果は、
CAP37がまた走化性を仲介する細胞である、小膠細胞(ミクログリア)と単球において、CAP37がROSの生産を増加させることを示した。さらに、NADPHオキシダーゼはHCECsに発現されること、およびこれらの細胞はこの酵素複合体を介して過酸化物を生産できるものであることが、最近実証された。これらをまとめれば、これらの研究は、CAP37が
創傷の縁で角膜上皮細胞におけるPKCδの発現を誘導し、そして、これによって創傷治癒を促進する、NADPHオキシダーゼおよび活性酸素の生産を局所的に活性化するものであることを示すものである。
【0229】
実施例9
BCC02-5RMP 間相乗効果 ( 配列番号: 22) と低用量の抗生物質。
【0230】
抗生物質耐性
に対向する伝統的な努力は、既存薬
における増量的な変化を行うことに依存し
ている。この戦略は、短期的な救済を提供
するが、細菌はこれらのわずかな変更への抵抗
力をすぐに開発する。
このため、多剤耐性グラム陰性菌による感染症の治療のための安全かつ効果的な治療のための薬剤の開発パイプラインに深刻なギャップが存在
する。
本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物
は、特に限定されるものではないが、例えば、シュードモナス属、アシネトバクター属、サルモネラ属およびエシェリキア・コリのようなグラム陰性病原体による深刻な感染の治療に関して、非感染性の新規な種類として、この主要な医療問題に貢献するものである。本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)にはしたがって
、実施形態として細菌感染症の治療
おいて抗生物質の効果を高めるための方法
を含むものである。
この方法では、抗生物質および
本願明細書に開示されたペプチド化合物が投与
され、そこにおいて抗生物質は、(i)当該抗生物質のみで投与された場合には細菌に対して最適以下または有効ではないが、(ii)ペプチド化合物との組み合わせで投与した場合
には細菌に対して有効
である、投与量で投与される。
【0231】
本治療的方法は、少なくとも1つの実施形態において、
本明細書に開示されたペプチド化合物 (例えば、BCC02-5RMP (配列番号22))
を、治療抗生物質の標準的な効果を強化(増強)するために用いるものであり、耐性菌に対しては最適値以下ないし効果がないと以前に考えられていたような投与量で、これら抗生物質を耐性菌に対して効果的なものとするものである。これらの発見は、もし現存する抗生物質が低い投与量(最適以下ないし<MIC)で用いられることができればこれらはより毒性となる可能性が低くなり、また、現存する抗生物質が低い投与量(最適以下ないし<MIC)でかつ本願明細書に開示された本発明概念群のペプチド化合物と組み合わせにおいて投与された際には、これらの抗生物質の低い投与量がそれのみで投与された場合と比較して、細菌がこれらの抗生物質に対して耐性を獲得しにくいという理由から、重要なものである。したがって、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)のペプチド化合物
との組み合わせで
の抗生物質の投与は、
臨床設定で使用できる抗生物質
の時間の長さを延長する可能性が高い
ものである。
【0232】
前述のとおりこれらの所見の重要性は、
BCC02-5RMP (配列番号 22)のような、しかしながらこれに限定されない、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求されたペプチド化合物
(群)は、抗生物質治療の標準の効果を、これらがより低用量
(最適以下ないし<MIC)で使用されることができ、そして
抗生物質へ耐性となってい
た生物
に対してこれらの活性を取り戻す
ように、増強することができる。つまり、生物が
抗生物質への耐性ゆえに、一度
生物に対して有効で
ないと考えられていた抗生物質に
、生物が再感作
されることができる。
【0233】
この結果を支持するデータ
は図30〜32の通りです。レボフロキサシンとシプロフロキサシン耐性
で、セフォタキシムに中間感度
を有する緑膿菌臨床分離株が選ば
れた。ペプチド
および抗生物質は、3:1、1:1、1:3 の
抗生物質: ペプチドのMIC等価物の出発比率でマイクロタイタープレートの
ウェルの中にセットアップさ
れた。
これらは抗生物質
およびペプチドの
最適以下/致死
以下の
レベルを下回る濃度
まで連続希釈
された。
生物 (1 x 10
5 CFU/ウェル) が追加さ
れ、 BIOSCREEN C (商品名)アッセイ
(グロース システムス ユーエスエイ、ニュージーランド州ピスカタウェイ[Growth Systems USA, Piscataway, NJ)を行っ
て、データを 24 時間にわたって収集し
た。この生物はシプロフロキサシン (8.4 μ g/ml の MIC)
、レボフロキサシン (
15g/μ g/ml の MIC)
およびセフォタキシム (15 μ g/ml の MIC)
に耐性であったが、
当該緑膿菌分離株をペプチド添加により最適
以下/致死
以下の投与量でこれらの抗生物質のそれぞれに感受性とすることが可能であった。
【0234】
たとえば、図 30A
は、 2.81
μg/ml の致死
以下濃度でセフォタキシムの存在下で
の生物の成長/生存率曲線、
および2.81
μg/mlのセフォタキシム
と 0.34、1.01、3.04
μg/ml
のペプチド
との併用
での成長曲線を示すものである。3.15
μg/ml でペプチド
独自の存在下での
生物の成長が表示される。ペプチドと抗生物質の不在での
緑膿菌の成長がまた示される。
成長曲線ならびに小数領域 (FA) (
図30B) を示しているヒストグラム
に見られるように、
2.81μg/mlのセフォタキシムの添加は生物において
殺菌性の効果ほとんど与えなかった。
これは抗生物質の存在下での成功が比較対照の成長曲線と非常に似たものであるゆえである。、0.34 と l
μg/ml のペプチドBCC02
-5RMP (配列番号 22)
の添加は、抗生物質の殺菌作用に及ぼす統計
的影響がなかった。ただし、ペプチドの 3.04
μg/ml 添加
においては、セフォタキシムに中間感度をもつ菌が
今や感受性のものとなったことが明らかだった (P = 0.0143
、 対になっていない t 検定
による)。これは、CAP37 に基づくペプチドの化合物は、標準的な抗生物質との組み合わせで使用された場合
、標準的な抗生物質治療上の線量が下げられ、耐性菌
を治療に感受性とすることができることを示しています。
【0235】
この効果が、別のクラスからの抗生物質
でも見られるかどうかを確立するた
めに、シプロフロキサシン(図31A〜B)とレボフロキサシン(図32A〜B)でのこれらの研究を行うことが選ばれた。シプロフロキサシンの 2.1 μg/ml にペプチド4.05 μg/ml の添加
は顕著に殺害 (P = 0.0003、対になっていないt検定
による)
に影響を及ぼした。つまり、
本明細書に記載
の方法
は8.4 μg/ml から 2.1
μg/ml (
図31A〜B) に
MICを
低減することができた。同様に、
本明細書に記載の方法は
ペプチド3.04 μg/ml の存在下で15 μg
/mlから 3.04 μg/ml にレボフロキサシンの MIC を削減でき
た。
【0236】
以上、特定の実施形態にもとづいて、本願明細書に開示され、請求の範囲に要求された本発明概念(群)を説明したが、多くの代替手段、変更、および変化が当業者に明らかにであることが理解されよう。従って、発明的な概念の精神と広い範囲の中に包含されるそのようなすべての代替手段、変更、および変化は、本発明に含まれるものである。