特許第6377071号(P6377071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377071熱損失補償手段を含み、液体を抽出するために遠心作用を用いる飲料製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377071
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】熱損失補償手段を含み、液体を抽出するために遠心作用を用いる飲料製造装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/22 20060101AFI20180813BHJP
   A47J 31/50 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A47J31/22
   A47J31/50 206
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-546991(P2015-546991)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2016-503670(P2016-503670A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2013076172
(87)【国際公開番号】WO2014090850
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】12196773.1
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ペレンテス, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム, アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】コラントニオ, ジャン‐リュック
(72)【発明者】
【氏名】ストウブ, アンドレアス
【審査官】 西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−516740(JP,A)
【文献】 特開平07−289437(JP,A)
【文献】 特開昭62−161331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/20
31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と食品原材料を相互作用させて、前記食品原材料を通る前記液体の遠心作用により液体抽出物を形成することによって、前記液体抽出物を調製するための飲料製造装置であって、
前記食品原材料を受け入れるための淹出ユニット(2)と、
遠心作用を受けた前記液体抽出物を前記淹出ユニットの外部で収集するための、排出ダクト(25)を有する収集ユニット(18)と、
前記淹出ユニットを回転駆動するための、前記淹出ユニットに結合された駆動手段と、
前記淹出ユニットに結合されており、前記淹出ユニットに液体を供給する液体供給手段と、を備え、
前記収集ユニット(18)が、収集キャビティ(24)と、前記収集キャビティ(24)が熱的に接続されたヒータ(10)であって、前記淹出ユニットに供給される前記液体を加熱するためのヒータ(10)と、を含み、
前記ヒータ(10)が、前記淹出ユニット(2)から出た後の前記液体抽出物を加熱するようにさらに構成されており、
前記収集ユニット(18)が、前記ヒータ(10)内で加熱される液体を流通させるダクト(120)の、前記収集キャビティ(24)の近くに配置された第1の部分(120a)を備えていることにより、前記ヒータ(10)から出て前記淹出ユニットに供給される前記液体の温度よりも低い温度まで前記収集キャビティが冷却される、飲料製造装置。
【請求項2】
前記飲料製造装置から出る前記液体抽出物の温度が、前記淹出ユニット内に供給される加熱液体の温度よりも10度を超えて低くならない、請求項1に記載の飲料製造装置。
【請求項3】
前記ヒータが、塊状金属のブロック(10a)と、前記ブロック(10a)を通って加熱される水を流通させる前記ダクト(120)とを含む、サーモブロックヒータ(10)である、請求項1又は2に記載の飲料製造装置。
【請求項4】
前記収集キャビティ(24)が、環状を有しており、前記液体抽出物が前記収集キャビティ(24)内で加熱される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料製造装置。
【請求項5】
前記収集キャビティ(24)が、前記ヒータ(10)の加熱ブロック(10a)と熱的に接続されており、及び/又は、前記収集キャビティ(24)の近くで前記ヒータ(10)内を流通する液体によって冷却される、請求項4に記載の飲料製造装置。
【請求項6】
前記第1の部分(120a)が前記収集キャビティ(24)に対して平行に延びている、請求項に記載の飲料製造装置。
【請求項7】
前記収集キャビティ(24)と前記ヒータ(10)から出るときの前記液体との間の温度差が、8℃と20℃との間の範囲である、請求項4〜のいずれか一項に記載の飲料製造装置。
【請求項8】
昇温時間後、前記収集キャビティ(24)と前記ヒータ(10)から出るときの前記液体との間の温度差が液体流量のみの関数である、請求項4〜のいずれか一項に記載の飲料製造装置。
【請求項9】
前記淹出ユニット(2)が、前記液体抽出物が遠心作用を受けて前記淹出ユニットから外に出るための小さい隙間又は液体出口を外周に残すようにさらに構成されており、前記収集ユニット(18)は、前記小さい隙間又は液体出口を通って遠心作用を受けた前記液体を収集するための、前記淹出ユニット(2)を取り囲む周壁を形成している、請求項4〜のいずれか一項に記載の飲料製造装置。
【請求項10】
前記収集ユニット(18)が、前記淹出ユニット(2)から特定の距離又は空隙(d)を置いて配置された第1の衝突壁(23)を含み、前記第1の衝突壁は、前記液体の衝突面を形成しており、前記収集ユニット(18)のU字形の収集部(24)内に下向きに延びる管状壁であり、前記収集部(24)は、前記ヒータ(10)と一体のブロックを形成してサーモブロックを形成しており、前記サーモブロックは、
前記液体が入る入口(130)と、
前記液体が流通する螺旋状ダクト(120)により形成されたチャンバと、
前記液体が後に前記サーモブロックから出る出口(140)と、
ネクタ(110)を介して供給された電気エネルギーを熱エネルギーに変換する環状の抵抗性加熱要素(100)であり、前記熱エネルギーが前記サーモブロックの塊状金属のブロック(10a)に供給され、流通する前記液体に前記ブロック(10a)を介して供給される、抵抗性加熱要素(100)と、を含み、
前記U字形の収集部(24)は、前記飲料製造装置のフレーム(17)の一部を形成するか又は前記フレームに結合されている、請求項に記載の飲料製造装置。
【請求項11】
前記飲料製造装置が、様々な所定の液量の飲料を製造するように構成されており、前記様々な液量に対して様々な液体流量が用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の飲料製造装置。
【請求項12】
前記収集ユニット(18)が衝突壁(23)を含み、前記衝突壁は、前記ヒータ(10)から分離されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の飲料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を用いて液体をコーヒー粉末のような食品原材料に通すことによって、食品原材料から液状食品を製造するための装置に関する。具体的には、本発明は、遠心作用を受けた後に適切な高温で液状食品が排出される改善された装置及び方法に関する。さらに、本発明は、かかる装置のための収集ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
淹出したコーヒーとコーヒー粉末からなる混合物を遠心力で分離することによって飲料を調製することが知られている。そのような混合物は、熱水と挽いたコーヒー粉末とを所定時間相互作用させることによって得られる。次に水を、粉末材料がその上に存在するスクリーンを通して押し進める。
【0003】
既存の遠心システムは、装置から排出される液体抽出物が、低すぎる温度で出てくるという点が不都合である。具体的には、液体抽出物は、収集装置内で、装置の収集器の広い表面との熱交換によって冷めてしまう。実際、遠心プロセスの原理によれば、淹出ユニットは、中心軸線に沿って回転して液体の薄層又は噴流を形成し、これが実質的に管状の衝突面に衝突する。液体は、表面に接触してそこから滴下し、この表面は、例えば、完全に円筒である場合には少なくとも約500mmの面積を有する第1の衝突面に等しいものとなり得る。さらに、液体は、通常、同様に抽出された液体との広い接触面積を形成する、少なくとも1つの注出ダクトへと至るU字形のキャビティ内に集められる。さらに、カップなどの容器は、液体を受けるために装置の下に置かれる前に加温されていない限り、さらに液体を冷ましてしまう。
【0004】
そのうえ、焙煎して挽いたコーヒーのような特定の飲料原材料は、所望のアロマ化合物の捕捉を含めて原材料の十分な抽出を保証するためには、特定の温度範囲内の加熱液体、例えば熱水で淹出しなければならないことが知られている。従って、液体が抽出後に受ける温度損失を補償するために淹出ユニットに供給される液体を過熱することは、抽出物の品質に悪影響を及ぼすので、できない。コーヒー又は茶などに関して最適な淹出のための温度範囲は、最終的な飲料の最高品質を保証するために遵守しなければならない。さらに、コーヒー飲料のその他の品質特性、例えば「クレマ」と呼ばれる泡の上部は、調製中、保持されなければならない。
【0005】
上述のような装置内の温度損失を付加的な加熱要素を用いることによって補償することが欧州特許出願公開第2393404A1号により既知であるが、それらの装置は非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遠心作用による飲料(又は液体抽出物)の製造中にその熱損失を少なくとも部分的に補償し、それにより適切な提供温度での飲料の送出を可能にする、製造が簡単で制御が容易な、単純な装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、コーヒー飲料の味覚及び泡特性を保つ装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様において、本発明は、液体と食品原材料を相互作用させて、食品原材料を通る液体の遠心作用により液体抽出物を形成することによって、液体抽出物を調製するための飲料製造装置であって、
食品原材料を受け入れるための淹出ユニットと、
遠心作用を受けた液体抽出物を遠心ユニットの外部で収集するための収集ユニットと、
遠心ユニットを回転駆動するための、遠心ユニットに結合された駆動手段と、
遠心ユニットに結合され、遠心ユニットに液体を供給する液体供給手段と、
遠心ユニットに供給される液体を加熱するためのヒータと、
を備え、
収集ユニットが、遠心ユニットに供給される液体を加熱するためのヒータを含み、
このヒータが、液体抽出物を淹出ユニットから出た後でさらに加熱するように構成される、飲料製造装置に関する。
【0009】
好ましくは、装置から出る液体抽出物の温度は、淹出ユニット内に供給される加熱液体の温度より10度を超えて低くならず、好ましくは8度を超えて低くならないように制御される。
【0010】
好ましくは、制御ユニットは、収集キャビティを含み、液体抽出物は、この収集キャビティ内で加熱される。収集キャビティは、例えば環状とすることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、収集キャビティは、ヒータの加熱ブロックと熱的に接続することができるので、熱伝導により加熱される。ヒータが、高い熱伝導性を有する塊状金属ブロックを有するサーモブロックヒータである場合には、その他の付加的な加熱手段を何ら要することなく収集ユニットを効率的に昇温させることが可能になる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、収集キャビティと、ヒータから出るときの液体との間の温度差は、液体流量のみの関数であり、すなわち、この温度差は、所与の流量に対して一定である。
【0013】
装置は、様々な所定液量の飲料、例えばエスプレッソ・タイプの「ショート」コーヒー飲料、ロング及びベリーロングのコーヒー飲料を、様々な飲料に対して様々な流量を用いて製造するように構成することができる。この場合、収集キャビティとヒータから出るときの液体との間の温度差を、所定液量を有する飲料のタイプに対して、従って特定の流量に対して、一定に保持することができる。
【0014】
収集キャビティとヒータから出るときの液体との間の温度差は8℃と20℃との間の範囲にあることが好ましく、8℃と17℃との間であることがより好ましい。温度差は、例えば、エスプレッソ・タイプのコーヒーに対して8〜10℃、好ましくは約9℃にすることができ(流量80ml/分)、ミディアムサイズのコーヒーに対して12℃と14℃との間、好ましくは13℃にすることができ(流量180ml/分)、エキストラロングのコーヒー飲料に対して15℃と17℃との間、好ましくは16℃とすることができる(流量210ml/分)。一定の温度差により、各レシピに対して常に理想的なパラメータを有することが可能になる。
【0015】
淹出ユニットは、カプセル又はポッドなどの小分けパッケージに入れられた一回量の食品原材料を受け入れるように構成することができる。従って、淹出ユニット内の回転ドラムは、カプセル又はポッドホルダを形成するような大きさ及び形にすることができ、その中に淹出操作前にカプセル又はポッドが設置される。蓋は、カプセル又はポッド内に液体を注入するための手段を含むことができ、付加的に、液体注入ランスを差し込むことを可能にする入口穿孔手段を設けることができる。蓋はまた、液体が小分けパッケージから出ることを可能にする少なくとも1つの、好ましくは幾つかの外周出口をカプセル又はポッドに設けるために、その外周に出口穿孔手段を含むこともできる。もちろん、ポッドは、液体透過性のフィルタ壁を含むため穿孔する必要がないフィルタポッドとすることもできる。
【0016】
収集ユニットは、遠心作用を受けた液体抽出物を受けるための、淹出ユニットの液体出口から距離を置いて位置する衝突壁を含むことができる。衝突壁は、ヒータから分離されたものとすることができる。
【0017】
「分離された」とは、壁が、壁に衝突した液体によるある程度の熱補償を与えることになるヒータによって直接加熱されないことを意味する。実際、遠心作用を受けた液体と衝突壁との衝突の際に、すなわち、液体が高い遠心力で淹出ユニットから出るやいなや(例えば、液体がカプセルから放出されたとき)、泡の気泡が加熱面に当たって崩壊する傾向があることが経験された。その結果、コーヒーのクレマは、加熱された衝突壁によって甚だしく劣化することがある。従って、収集ユニット内の熱損失を受け入れキャビティ内でのみ補償すること、及び、衝突壁(impact wall)を周囲温度又はその付近で維持して、泡の気泡の崩壊を回避することが好ましい。
【0018】
収集ユニットは、少なくとも1つの注出ダクトをさらに含むことができる。注出ダクトは、キャビティと一体のブロックで作られた、又はキャビティに関連付けられた(例えば固定された)管状部分とすることができる。幾つかの注出ダクトを設けて、液体抽出物を様々な容器に(例えば2つのカップに)分配することができる。
【0019】
ヒータのヒータブロックと環状収集キャビティとの間の熱伝達は、接触壁若しくは接触部を介して生じるものであってもよく、又はヒータブロックと環状キャビティと一体のブロックで作ることもできる。
【0020】
好ましくは、収集キャビティは、収集キャビティの近くでヒータ内を流通する液体によって冷却される。液体は、収集キャビティに近い領域でヒータに入ることが好ましく、その結果、ヒータに入る通常は周囲温度の液体が収集キャビティを冷却することになる。これにより、付加的な加熱又は冷却要素を要することなく、収集キャビティを熱的に接続されたヒータブロックの温度よりも低い温度にすることが可能にする。特に効率的な構成は、環状収集キャビティをヒータ内で液体を流通させるダクトの第1の部分と組み合わせることであり、この第1の部分もまた実質的に環状であり、同様の断面を有し、環状収集キャビティの下方に同軸に配置される。
【0021】
一般に、液体抽出物と接触する収集ユニットの平均壁厚は、2mm未満、好ましくは1mm未満、最も好ましくは約0.5mmの寸法にされる。実際、収集ユニットの壁と接触しているときの液体抽出物の熱の散逸を減らすことが特に有効であることが見いだされた。
【0022】
例えば、コーヒー抽出物の場合、淹出ユニットに入る液体の淹出温度は、75から95℃の範囲内に含まれる。より好ましくは、装置は、ヒータ内で液体を加熱して、加熱された液体が90℃と95℃との間の温度で淹出ユニットに供給されるように構成される。温度範囲は、原材料の最適な抽出を保証する一方で、特にコーヒーには所望されない焦げ臭いフレーバー・ノートを避けるように選択される。
【0023】
ヒータの温度は、制御ユニットによって、及び適切な温度センサ(例えば、NTCサーミスタ)によって制御することができる。この制御ユニットは、淹出ユニット内の液体供給ポンプの制御といった様々な制御機能を提供する、装置の中央制御装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の注出装置の概略図を内部のカプセルと共に示す。
図2図1の装置の一部であるヒータを含む収集ユニットの3D図を示す。
図3A図2の収集ユニットのある面に沿った断面図である。
図3B図2の収集ユニットの別の面に沿った断面図である。
図3C図2の収集ユニットの更に別の面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示される本発明の飲料製造装置1は、淹出ユニット2における遠心作用による食品原材料と液体との相互作用から、液体抽出物とも呼ばれる液状食品を調製するように構成される。遠心力の効果を用いて、原材料の固形分、液体及びアロマ化合物で満たされた液体が淹出ユニットから抽出されるように原材料を通過するのに必要な流体運動量が与えられる。「抽出」又は「抽出物」という用語は、淹出、溶解、希釈、混合、乳化及びそれらの組合せの作用の結果として得られるプロセス又は生成物として、一般的な意味で解釈されるべきものとする。
【0026】
淹出ユニット2は、通常、食品原材料を受け入れるためのドラム4を含む。装置は、1回分のカプセル60内に包装された食品原材料を受け入れるように構成することができ、これは装置を開いたときに行われる。ドラムは、カプセルの底部が下方に突き出ることを可能にする中央開口部を有する回転駆動する又は駆動されるリングとして設計することもできることに留意されたい。それゆえ、リングは、その側壁及び/又はリムでカプセルを支持するように設計することができる。
【0027】
淹出ユニットは、その上側に、少なくとも部分的にドラムを閉鎖してその中に挿入されたカプセルの封入を保証する蓋5を含む。淹出ユニットは、加熱された液体を淹出ユニット内に送るように、より具体的にはカプセルがユニット内に挿入されているときにカプセル内部に送るように構成された、液体供給ダクト6に結合される。供給ダクト6は、淹出囲繞体の中に下向きに突出する管状導管を形成する液体注入器11で終端する。液体は、液体リザーバ7内に貯蔵され、ポンプ9によって流体導管8を経てインラインヒータ10に向かって導かれ、ヒータ入口130においてヒータ内に入る。ヒータ10については、後でより詳細に論ずる。加熱された液体は、ヒータからヒータ出口140を通って出て、加熱された液体がリザーバからの特定の正圧で淹出ユニットに供給される。液体は、好ましくは水であり、温度は、典型的には、淹出される原材料によって変化し得る最適淹出温度とされる。コーヒーの場合、温度は、摂氏約75度から95度までの範囲とすることができる。より好ましくは、供給される液体の温度は、コーヒーの最適な品質の抽出を保証するために約90℃から95℃までとされる。温度は、この場合、液体注入器11内で液体がカプセルに送られる直前に測定される。
【0028】
水用ヒータは、原則として、高慣性サーマルブロック(サーモブロック)、又はカートリッジ(例えば欧州特許第1913851号に記載)若しくは少なくとも1つの厚膜若しくは抵抗器を埋め込んだチューブヒータ(例えば欧州特許第1253844号又は欧州特許第1380243号に記載)のようなODH(「オンデマンドヒータ」)といった多様な加熱モジュールの中から選択することができる。
【0029】
本発明の本実施形態において、ヒータ10は、より詳細に後述する高慣性サーマルブロック(サーモブロック)である。ポンプは、ピストンポンプ、蠕動ポンプ、膜ポンプ、回転ポンプ、重力ポンプ等の任意の適切なポンプとすることができる。
【0030】
装置は、装置の構成要素を制御するようにプログラムされた制御ユニット12をさらに含む。具体的には、制御ユニット12は、ポンプ9の「オン」及び「オフ」の起動を制御する。この制御は、装置のキーボード又は画面(図示せず)上のコマンド(例えばボタン)の起動によるものとすることができる。制御ユニットは、淹出ユニット内で液体の温度を正しい値に昇温するために、ヒータ10の「オン」及び「オフ」の起動をさらに制御する。制御ユニット内に温度制御ループが設けられ、図3Cに示されるように、少なくとも1つの温度センサ、ここではNTC(負の温度係数)サーミスタ160がヒータ10の表面に配置される。
【0031】
液体注入器11は、淹出ユニットが注入器11の周りで中心軸線Iに沿って回転できるような方式で淹出ユニットに取り付けられ、注入器11は固定されることが好ましい。より具体的には、蓋5が玉軸受手段13に沿って取り付けられ、その結果、蓋は、注入器の周りで回転駆動されたときに回転できるようになっている。
【0032】
淹出ユニットは、遠心プロセス中、駆動ユニット14によって回転駆動される。駆動ユニットは、結合部15を介してドラム4に結合されることが好ましい。駆動ユニットは、ボルトその他によって装置のフレーム17に取り付けられた直流(DC)モータなどの電気モータ16を含む。モータ16は、適切なソケット41を介して結合部15に連結されたシャフト88を含む。ドラムもまた、フレームに対して回転リンク機構で取り付けられることに留意されたい。このために、結合部15は、玉軸受手段39を介してフレームに取り付けられる。
【0033】
従って、淹出ユニット2は、装置内に、すなわちフレーム17と注入器11との間に回転可能に取り付けられる。モータ16の起動もまた制御ユニット12により制御され、遠心プロセス中に淹出ユニットを回転駆動する。遠心作用速度は、一定又は可変とすることができるプロファイルに従って制御装置によって設定される。一般に、抽出段階中の速度は、1000rpmと16000rpmとの間である。速度は、飲料調製サイクル中に必要に応じて制御ユニットによって加速又は減速することができる。
【0034】
淹出ユニット内で遠心作用を受けた液体抽出物は、収集ユニット18によって収集される。淹出ユニットは、好ましくは、液体抽出物が遠心作用を受けて該ユニットから外に出るための小さい隙間又は液体出口をその外周に残すようにさらに構成される。隙間又は液体出口は、隙間又は出口のすぐ上流の、淹出ユニットの囲繞体の中で、例えばカプセル内で、特定の圧力が生じるようなものとされる。好ましいモードにおいて、淹出ユニットの内側の円周に十分な液体の圧力がかかったときにのみ淹出ユニットを開く弁手段56が設けられる。弁手段56は、ドラム及び/又はカプセルの縁部に閉鎖力を印加するリング部分19によって形成することができる。弁手段は、リング部分を閉鎖張力で維持する弾性付勢部材20をさらに含む。付勢部材は、ばね、ゴム弾性又は液圧手段とすることができる。リング部分は、遠心作用を受けた液体の圧力によって弁手段が開いたときに連続的な間隙を形成する。流れの間隙又は制限部(restriction)は、幅(w)を非常に小さく、例えば0.01mmと0.5mmとの間とすることができるが、リング部分の全周に沿った連続的な周長を有するものとすることができる。従って、流れの間隙又は制限部の表面積(S)は、式S=2・π・R・wで計算することができ、式中、Rはリング部分の半径であり、「w」は弁手段の開口幅を表わす。間隙の表面積は、1mmと500mmとの間の範囲とすることができる。表面積は、回転速度によって変化し、通常、回転速度が速いほど面積は大きくなる。
【0035】
図1に示されるように、蓋は、カプセルの壁に幾つかの出口を穿孔するための穿孔部材21をさらに含むことができる。穿孔部材は、蓋の外周に配置され、囲繞体の方向に下向きに方向付けることができる。同様に図で明らかなように、カプセルは、随意に、原材料、例えば挽いたコーヒーを収容する主チャンバと、穿孔されるカプセルの上壁に隣接した小さい外周収集凹部とを分離する、フィルタ部22含むことができる。カプセル内の凹部は、穿孔部材をカプセル内に差し込んで幾つかの出口を形成することを可能にするのに十分な深さ、例えば5〜10mmとされる。
【0036】
装置の収集ユニット18は、小さい隙間又は出口を通って遠心作用を受けた液体を収集するための、淹出ユニットを取り囲む周壁を形成する。具体的には、収集ユニットは、淹出ユニットから、具体的には制限弁から特定の距離又は空隙(d)で配置された第1の衝突壁23を含む。この衝突壁は、液体の衝突面を形成する管状壁とすることができ、これは収集ユニットのU字形収集部24の中に下向きに延びる。U字形収集部24は、フレーム17の一部を形成するか、又は装置のフレームに結合される。
【0037】
U字形収集部24は、サーモブロックヒータ10と一体のブロックを形成する。このブロックは、図2及び図3A〜3Bでより詳細に示される。上で既に述べたように、液体は入口130を通ってサーモブロックに入り、加熱のために螺旋状ダクト120で形成された加熱チャンバを通って流通し、出口140を通ってサーモブロックから出る。ダクト120は、好ましくは鋼製であり、熱エネルギーを蓄積するための高い熱液量、及び必要なときはいつでも必要量の蓄積熱を内部で流通する液体に伝達するための高い熱伝導率を有する、実質的に円筒形のブロック10aを形成する、具体的にはアルミニウム、鉄及び/又はその他の金属又は合金製の(塊状の)金属塊を通って延びる。本発明の好ましい実施形態によれば、ヒータブロック10aは、アルミニウム製である。これは、ダイキャストプロセスで作製することができ、2つの金型半部分及び中心軸の1つの金型コアによって射出される。明確に区別されたダクト120の代わりに、サーモブロックのダクトは、機械加工又はそれ以外の方法でダクト本体内に形成される、例えばサーモブロック塊の鋳造ステップ中に形成される、貫通路とすることができる。サーモブロック塊がアルミニウム製の場合には、健康面を考慮して流通液体とアルミニウムとの間の接触を避けるために、独立した、例えば鋼のダクトを設けることが好ましい。ブロック塊は、ダクトの周りの1個又は数個の組立部品で作製することができる。サーモブロックヒータ10は、コネクタ110を介して供給される電気エネルギーを熱エネルギーに変換する環状の抵抗性熱要素100を含む。熱は、サーモブロック塊に供給され、この塊を経て、すなわちブロック10aを経て、流通液体に供給される。加熱要素は、金属塊の中に鋳造するか若しくは収容することができ、又は金属塊の表面に当接して固定することができる。ダクトは、その/それらの長さ及びブロックを通じた熱伝達を最大にするように、サーモブロックに沿って螺旋状又はその他の配置を有するものとすることができる。
【0038】
U字形収集部24は、サーモブロックヒータ10のブロック10aと熱的に接触しているので、遠心作用プロセス中の液体の温度損失を補償するために同様に加熱されることになる。しかしながら、ブロック10aが達する温度は、収集部に望まれる温度よりも高い。収集部24が、淹出ユニットに供給されるときの液体の温度より低い特定の温度までしか昇温しないよう保証するために、液体は、環状収集ユニット24の直ぐ下の入口130を通ってブロック10aに入り、環状U字形収集ユニット24の下方に配置された螺旋状ダクト120の第1の巻き120aを通って流通する。それゆえ収集ユニット24は、通常およそ20℃である温度で、すなわち周囲温度でダクト120に入る液体によって冷却される。数秒後、収集ユニット24は、ヒータ10から出る液体の温度より低い温度に達し、その温度差は、ダクト120を通る一定流量の液体に対して一定である。このことは、様々な飲料レシピに対して様々な流量が用いられるシステム、例えば、よりショートなコーヒーはより低流量で調製され、よりロングなコーヒーはより高流量で調製されるシステムにおいて、各レシピに対して一定かつ明確に規定された温度差が得られることを意味する。一般に、本発明は、液体の流量と、当然リザーバ7内の液体の温度と、サーモブロックヒータ10及び関連付けられた収集ユニット24の設計とに応じて、収集された液体を提供のために十分な熱い温度(例えば、60〜90℃)で維持することを可能にし、温度損失は最小化されるか、さらには阻止される。
【0039】
衝突壁は、U字形環状収集部24から分離されており、加熱されることはなく、又は少なくとも顕著に加熱されることはない。このことは、遠心作用による淹出ユニットからの液体抽出物の放出中にコーヒーの泡(「クレマ」)が壊れるリスクを低減する。
【0040】
図2及び図3Cに示されるように、環状収集ユニット内に収集された液体は、次に少なくとも1つの排出ダクト25を介して注出される。本発明の文脈において、排出ダクトは収集ユニットの一部とみなされる。
【0041】
装置の熱反射壁を設けることもまた望ましい場合があり、それは、通過する熱の伝導を最小化することができ、かつ、熱を液体抽出物に向かって反射することができる。そのような表面は、例えば、金属の反射顔料を含むか又は金属膜(例えばalu膜)で被覆された高分子支持体で作製することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C