特許第6377097号(P6377097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377097
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】射出成形機システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20180813BHJP
   B22D 17/00 20060101ALI20180813BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B29C45/76
   B22D17/00 Z
   B22D46/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-81051(P2016-81051)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-189935(P2017-189935A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中崎 友喜
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−154475(JP,A)
【文献】 特開2015−077703(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/065915(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0188374(US,A1)
【文献】 特開2016−022621(JP,A)
【文献】 特開2013−018152(JP,A)
【文献】 特開2000−141440(JP,A)
【文献】 特開2009−241287(JP,A)
【文献】 特開2010−093978(JP,A)
【文献】 特開平02−241371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する電力供給装置と、該電力供給装置から電力の供給を受けて駆動される複数台の電動射出成形機とからなり、これらが伝送用電圧線によって相互に接続されている射出成形機システムであって、
前記電力供給装置は、工場から供給される三相交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換回路と、電力を貯蔵すると共に必要に応じて直流電圧として供給する蓄電装置とを備え、該電力供給装置から前記伝送用電圧線に出力される電力は伝送用の直流電圧である伝送用直流電圧にされ
前記電動射出成形機は直流電圧昇降圧回路を備え、前記伝送用電圧線からの前記伝送用直流電圧が前記直流電圧昇降圧回路によって駆動用直流電圧に昇圧され、該駆動用直流電圧が前記電動射出成形機に設けられているインバータに供給されるようになっていることを特徴とする射出成形機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機システムにおいて、前記電力供給装置と複数台の前記電動射出成形機は相互にネットワーク接続され、前記電動射出成形機に関する情報が前記電力供給装置に送信されるようになっていることを特徴とする射出成形機システム。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形機システムにおいて、前記射出成形機システムは情報処理装置を備え、該情報処理装置と前記電力供給装置と複数台の前記電動射出成形機は相互にネットワーク接続され、前記電動射出成形機に関する情報が前記情報処理装置に送信されるようになっていることを特徴とする射出成形機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の電動射出成形機からなる射出成形機システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、金型を型締めする型締装置、樹脂を溶融して金型内に射出する射出装置、等から構成され、射出装置は加熱シリンダ、この加熱シリンダ内に軸方向と回転方向とに駆動されるスクリュ等から構成されている。電動射出成形機は、これらの装置がモータによって駆動されるようになっている。電動射出成形機はコンバータと、複数個のサーボアンプつまりインバータとを備えており、工場から供給される三相交流電力がコンバータによって直流電圧に変換され、この直流電圧からインバータによって所望の周波数の三相交流電圧が生成されてモータに供給され、各装置が駆動される。ところで電動射出成形機は、成形サイクルに必要な電力量は比較的小さいが、射出工程において短時間に大電力を必要とする。従って電動射出成形機が設置される工場においては、射出工程における最大電力を考慮して大容量の受電設備が設けられている。また最大電力が大きいので契約電気料金も高くならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−87938号公報
【特許文献2】特開2013−154475号公報
【特許文献3】特開2013−18152号公報
【0004】
特許文献1には、成形サイクルを通して消費される電力が平滑化される電動射出成形機が提案されている。この電動射出成形機においては、コンバータの出力側である直流電圧線に電力貯蔵装置が設けられている。電力貯蔵装置はインバータによる電力消費が少ない工程のとき、例えば型開閉工程、可塑化工程等において直流電圧線から電力を得て貯蔵する。そして電力消費が多い工程のとき、具体的には射出工程において、貯蔵された電力を直流電圧として直流電圧線に供給する。このように特許文献1に記載の電動射出成形機は直流電圧線に電力を貯蔵・供給できる電力貯蔵装置が設けられているので、電動射出成形機に供給される電力は平滑化され、最大電力は小さくなる。そうすると工場の受電設備の容量は小さくて済み、契約電気料金も少なくなる。
【0005】
ところで工場が停電すると電動射出成形機は必然的に電力の供給が受けられなくなる。成形サイクルの途中で電動射出成形機が停止してしまうと危険もある。例えば型開閉中の動作中に電動射出成形機が停止してしまうと慣性により型盤が動作して金型を破損する可能性がある。特許文献2には、工場の停電が発生した場合でも、所定の時間だけ電動射出成形機を駆動することができ、それによって各装置を安全な状態にすることができる電動射出成形機が提案されている。特許文献2に記載の電動射出成形機は、特許文献1に記載の電動射出成形機と同様に、コンバータの出力側の直流電圧線に電力貯蔵装置が設けられている。これによって停電時でも直流電圧線に直流電圧は供給される。ところで、各装置を制御するコントローラは、正常時には制御用電源から制御用の直流電圧の供給を受けて動作している。特許文献2に記載の電動射出成形機においては、停電が検出されたら、電力貯蔵装置が供給している直流電圧がチョッパ回路を介して降圧される。停電時にはこれが制御用の直流電圧として利用される。この降圧された制御用の直流電圧によりコントローラが正常に動作でき、停電時においても所定時間は電動射出成形機が制御可能になる。これによって電動射出成形機を安全な状態にして停止することができる。
【0006】
本発明と、発明の目的は全く相違してはいるが、発明の構成が若干類似している射出成形機システムが特許文献3に提案されている。この文献に記載の射出成形機システム50は、図4に示されているように、コンバータを含む電源装置51と、この電源装置51から直流電圧の供給を受ける複数台の電動射出成形機52、52、…とから構成されている。このシステム50において、電源装置51はコンバータ55と蓄電装置57とを備え、外部電源53から供給される三相交流電圧はコンバータ55によって直流電圧に変換され、蓄電装置57によって直流電圧が電力として貯蔵されると共に、必要に応じて貯蔵された電力が直流電圧として供給されるようになっている。この射出成形機システム50において、電動射出成形機52、52、…は、直流電圧を安定化させる平滑化コンデンサ59は備えているが、直流電圧は直流電圧線54を介して電源装置51から供給を受けるのでコンバータは不要になっている。電動射出成形機52、52、…には、射出装置のスクリュを駆動する射出軸、可塑化軸、そして型締装置を型開閉する型締軸等の各軸に対応するインバータとモータとが設けられ、直流電圧から三相交流電圧が生成されて各装置が駆動されるようになっている。ところでこの文献によると、一般的な電動射出成形機では電動射出成形機毎に蓄電装置が設けられ、各装置から回生される電力が充電されるようになっている。この射出成形機システム50においては、回生電力を貯蔵・供給する蓄電装置57は電源装置51側に1個だけ備えればよく、電動射出成形機52、52、…毎に蓄電装置を必要としない。従って全体としてコストが小さくなっている。
【0007】
特許文献3には、他の射出成形機システム50’も提案されている。この射出成形機システム50’も、図5に示されているように、1台の電源装置51’と、複数台の電動射出成形機52’、52’、…とから構成されているが、電源装置51’から各電動射出成形機52’、52’、…には、直流電圧によってではなく、矩形波からなる交流電圧によって電力が供給されるようになっている。具体的には、電源装置51’にはDC/矩形波コンバータ61が設けられ、コンバータ55が変換した直流電圧が矩形波からなる交流電圧に変換されている。矩形波の交流電圧は矩形波電圧線62を介して各電動射出成形機52’、52’、…に供給されており、各電動射出成形機52’、52’、…には矩形波/DCコンバータ63が設けられ、矩形波の交流電圧が直流電圧に変換されている。射出成形機システム50’においても、図4に示されている射出成形機システム50と同様に、コンバータ55や蓄電装置57を電動射出成形機52’、52’、…毎に設ける必要がなく、全体として低コストでシステムを提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の電動射出成形機は、電力貯蔵装置が設けられているので、消費される電力が平滑化され、工場から必要になる三相交流電圧の最大電力は小さくて済む。従って工場の受電設備に対する負担が少なく、電気料金も少なく優れている。また特許文献2に記載の電動射出成形機は、特許文献1に記載の電動射出成形機と同様に最大電力を小さくすることができ、さらに停電時にも制御用の直流電圧が確保されるので電動射出成形機を安全な状態にすることができ優れている。しかしながら問題も見受けられる。具体的には、電動射出成形機が複数台あるとき、同様の効果を得ようとすると、全ての電動射出成形機に電力貯蔵装置を設ける必要があるのでコストが嵩むという問題がある。また停電時に駆動できる時間が短いという問題がある。特許文献2の発明の目的に鑑みると、電力貯蔵装置の容量は、停電時に電動射出成形機を安全な状態にして停止するのに必要な電力を貯蔵する程度であるので、電動射出成形機を長時間駆動することは考慮されていない。仮に、大量の電力が貯蔵されるように大型の電力貯蔵装置を設けるようにすれば、停電時であっても長時間電動射出成形機の運転は可能になる。しかしながら大型の電力貯蔵装置を設けると、電動射出成形機が大型化してしまうしコスト高になってしまう。
【0009】
特許文献3に記載の射出成形システム50、50’において、蓄電装置57が設けられている目的は、回生電力を貯蔵し、適宜これを供給することである。つまり、電動射出成形機52、52’の成形サイクルにおける電力の平滑化を目的とするものでもないし、停電時に電動射出成形機52、52’が駆動できるように電力を供給することを目的とするものでもない。しかしながら、蓄電装置57の容量をある程度大きくすれば、各電動射出成形機52、52’、…の成形サイクルにおける消費電力のバラツキを緩和することができ、外部電源53から電源装置51に供給される電力を平滑化することはできそうである。また停電時に電動射出成形機52、52’、…に電力を供給することもできそうである。しかしながら、このような射出成形機システム50、50’にも問題が見受けられる。具体的には、直流電圧が不安定になる問題を指摘することができる。まず射出成形機システム50を例に説明すると、電動射出成形機52は前記したように射出工程において大電力を消費する。射出工程に要する時間は成形サイクル全体の中でごくわずかであるが、大電力が消費されるので瞬間的に直流電圧が低下してしまう。一応電動射出成形機52には平滑化コンデンサ59が設けられているので、直流電圧線54の直流電圧の低下は若干緩和はされる。しかしながら直流電圧の低下は他の電動射出成形機52の運転にとって影響する。もし、複数台の電動射出成形機52、52、…において同時に射出工程が実施されると、直流電圧の瞬間的な低下は無視できなくなり、他の電動射出成形機52の制御に悪影響を及ぼしてしまう。射出成形機システム50’においても同様の問題がある。射出工程における直流電圧の低下の影響は、矩形波電圧線62における矩形波交流電圧の低下となって現れる。もし複数台の電動射出成形機52’、52’、…において同時に射出工程が実施されると、電圧低下は大きくなり、他の電動射出成形機52’の運転に支障がでてしまうからである。
【0010】
本発明は、上記したような問題点を解決した射出成形機システムを提供することを目的とし、具体的には、工場から供給される電力が平滑化され、それによって工場の受電設備に対する負担が少ないと共に電気料金が安く、停電時に所定時間電動射出成形機が運転でき、システムに属している全ての電動射出成形機が必要な電力が安定的に得られるような射出成形機システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、電力を供給する電力供給装置と、該電力供給装置から電力の供給を受けて駆動される複数台の電動射出成形機とからなり、これらが伝送用電圧線によって相互に接続されている射出成形機システムとして構成する。電力供給装置は、交流直流変換回路と蓄電装置とを備える。工場から供給される三相交流電圧は交流直流変換回路によって直流電圧に変換され、蓄電装置には電力を貯蔵されると共に必要に応じて直流電圧として供給されるようにする。このような電力供給装置から伝送用電圧線を介して電動射出成形機に供給される電力は電力伝送用の伝送用直流電圧として送電される。電動射出成形機は直流電圧昇降圧回路を備え、電力供給装置から供給される伝送用直流電圧は直流電圧昇降圧回路によって駆動用直流電圧に昇圧される。電動射出成形機内のインバータにはこの駆動用直流電圧が供給されることになる。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、電力を供給する電力供給装置と、該電力供給装置から電力の供給を受けて駆動される複数台の電動射出成形機とからなり、これらが伝送用電圧線によって相互に接続されている射出成形機システムであって、前記電力供給装置は、工場から供給される三相交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換回路と、電力を貯蔵すると共に必要に応じて直流電圧として供給する蓄電装置とを備え、該電力供給装置から前記伝送用電圧線に出力される電力は伝送用の直流電圧である伝送用直流電圧にされ、前記電動射出成形機は直流電圧昇降圧回路を備え、前記伝送用電圧線からの前記伝送用直流電圧が前記直流電圧昇降圧回路によって駆動用直流電圧に昇圧され、該駆動用直流電圧が前記電動射出成形機に設けられているインバータに供給されるようになっていることを特徴とする射出成形機システムとして構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機システムにおいて、前記電力供給装置と複数台の前記電動射出成形機は相互にネットワーク接続され、前記電動射出成形機に関する情報が前記電力供給装置に送信されるようになっていることを特徴とする射出成形機システムとして構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機システムにおいて、前記射出成形機システムは情報処理装置を備え、該情報処理装置と前記電力供給装置と複数台の前記電動射出成形機は相互にネットワーク接続され、前記電動射出成形機に関する情報が前記情報処理装置に送信されるようになっていることを特徴とする射出成形機システムとして構成される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明は、電力を供給する電力供給装置と、該電力供給装置から電力の供給を受けて駆動される複数台の電動射出成形機とからなり、これらが伝送用電圧線によって相互に接続されている射出成形機システムとして構成されている。電力供給装置は、工場から供給される三相交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換回路と、電力を貯蔵すると共に必要に応じて直流電圧として供給する蓄電装置とを備え、該電力供給装置から伝送用電圧線に出力される電力は伝送用の直流電圧である伝送用直流電圧にされるようになっている。そして電動射出成形機は直流電圧昇降圧回路を備え、伝送用電圧線からの伝送用直流電圧が直流電圧昇降圧回路によって駆動用直流電圧に昇圧され、該駆動用直流電圧が電動射出成形機に設けられているインバータに供給されるようになっている。このように電力を供給する電力供給装置は蓄電装置を備えているので、必要に応じて蓄電装置に電力を貯蔵したり蓄電装置から電力を供給したりできる。そうすると、結果的に工場から電力供給装置に供給される三相交流電圧の電力が平滑化され、最大電力は小さくなる。従って本発明の射出成形機システムは工場の受電設備に対する負担が少なく、電気料金は安くなる。また蓄電装置の蓄電容量を十分に大きくすれば、停電時にも電動射出成形機に電力を供給することができ、電動射出成形機を運転し続けることができる。そして本発明によると、電動射出成形機は、直流電圧昇降圧回路によって伝送用直流電圧を駆動用直流電圧に昇圧してインバータに供給している。そうすると、もし他の電動射出成形機において大量の電力が消費されて伝送用直流電圧が一時的に低下したとしても、直流電圧昇降圧回路を適切に制御して駆動用直流電圧は一定に安定させることができる。つまり伝送用直流電圧が一時的に低下しても、インバータの電力供給には全く影響を与えない。本発明によると電動射出成形機は、必要な電力が安定的に得られることが保証される。
【0014】
他の発明によると、射出成形機システムにおいて、電力供給装置と複数台の電動射出成形機は相互にネットワーク接続され、電動射出成形機に関する情報が電力供給装置に送信されるようになっている。また他の発明によると、射出成形機システムは情報処理装置を備え、該情報処理装置と電力供給装置と複数台の電動射出成形機は相互にネットワーク接続され、電動射出成形機に関する情報が情報処理装置に送信されるようになっている。従って、これらの発明においては射出成形機システムに属する電動射出成形機の電力情報や動作情報を送信して電力供給装置または情報処理装置で集中的に管理できる。例えば電力情報であれば、平均電力であったり、瞬時電力であったり、色々な電力情報を管理することができる。これらの電力情報はディスプレイに表示することもできるし、あるいはシステム全体における合計の電力が電力供給装置が供給できる最大電力に近づいてきたら警報を発することもできる。さらには、電力供給装置が供給可能な最大電力に近づいてきたら、システムに属する電動射出成形機に、電力の消費量が多い工程、つまり射出工程を遅らせるような指令を出すことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る射出成形機システムを示す、システムブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電力供給装置を示す図で、その(ア)(イ)はそれぞれ異なる実施の形態に係る電力供給装置を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電動射出成形機に設けられている、直流電圧昇降圧回路を示す回路図である。
図4】従来の射出成形機システムを示す、システムブロック図である。
図5】従来の射出成形機システムを示す、システムブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る射出成形機システム1は、図1に示されているように、1台の電力供給装置2と、複数台の電動射出成形機3、3、…と、そして上位コントローラである情報処理装置4とから構成されている。この射出成形機システム1において、工場電源5から供給される電力は電力供給装置2において一括で受け入れられ、後で説明する所定の電圧である伝送用直流電圧として出力される。それぞれの電動射出成形機3、3、…にはこの伝送用直流電圧が供給されるようになっている。
【0017】
電力供給装置2は、交流直流変換回路7と蓄電装置8とからなる。交流直流変換回路7は、工場電源5から供給される例えば200Vの三相交流電圧を所定の直流電圧に変換する回路であり、本実施の形態においてはPWMコンバータからなる。PWMコンバータからなるので、工場の三相交流電圧を所望の電圧の直流電圧に変換できるだけでなく、直流電圧側に余剰の電力、例えば回生電力により電力が余剰となれば工場電源5に電力を戻すこともできる。ところで交流直流変換回路7は必ずしもPWMコンバータから構成する必要はなく、例えばシンプルなダイオード整流回路から構成するようにしてもよい。ダイオード整流回路は回生電力等の余剰な電力を工場電源5に戻すことはできないが、余剰な電力は次に説明する蓄電装置8に蓄電されるので実質的に問題はないからである。
【0018】
蓄電装置8は、色々な構成を採ることができるが、本実施の形態に係る電力供給装置2においては、図2の(ア)に示されているように、降圧充電回路11と、伝送電圧変換回路12と、蓄電池からなる蓄電器13とから構成されている。降圧充電回路11はDCチョッパ回路からなり、交流直流変換回路7から直流電圧が出力される第1の直流電圧線15に接続されている。そして第1の直流電圧線15の直流電圧を降圧して蓄電に適した蓄電用直流電圧に変換して第2の直流電圧線16に供給するようになっている。蓄電器13は第2の直流電圧線16に接続され、蓄電用直流電圧の電力を得て蓄電するようになっている。また蓄電器13は、射出成形機システム1の消費電力が大きくなって一時的に蓄電用電流電圧が低下すると第2の直流電圧線16に電力を供給するようになっている。伝送電圧変換回路12もDCチョッパ回路からなり、このような第2の直流電圧線16に接続されている。そして第2の直流電圧線16の蓄電用直流電圧を昇圧して伝送用の直流電圧、例えば200Vの伝送用直流電圧にして、伝送用電圧線20に供給する。また電動射出成形機3、3、…から回生電力が回生されて伝送用直流電圧が一時的に高くなった場合には、伝送用直流電圧を降圧して第2の直流電圧線16に供給することもある。この場合にも蓄電器13に電力が貯蔵されることになる。このように蓄電装置8は、余剰の電力があるときには蓄電器13に電力を貯蔵し、伝送用電圧線20に適宜伝送用直流電圧として電力を供給するようになっている。なお、この実施の形態において第2の直流電圧線16に供給されている蓄電用直流電圧は伝送用電圧線20に供給される伝送用直流電圧より低電圧になっているが、同じ電圧として構成することもできる。この場合には伝送電圧変換回路12は不要であり、降圧充電回路11は直接伝送電圧線20に接続するようにする。
【0019】
電動射出成形機3は、従来周知の電動射出成形機と同様に、金型を型締めする型締装置、加熱シリンダとスクリュとからなり樹脂を溶融して射出する射出装置、成形品を突き出す突出装置、等から構成され、これらの各装置はサーボモータ等のモータによって駆動されるようになっている。これらのモータを駆動するためのサーボアンプ等のインバータ22、23、24、…が、図1において、射出軸22、可塑化軸23、型締軸24、…等のように示されている。
【0020】
本実施の形態に係る電動射出成形機3は、前記したように電力供給装置2からの伝送用直流電圧が電力として供給されるようになっている。伝送用直流電圧は、伝送用電圧線20を介して供給されるが、他の電動射出成形機3において大量の電力が消費されると一時的に電圧が変化してしまい、インバータ22、23、…に安定した直流電圧が供給できなくなってしまう。そこで本実施の形態に係る電動射出成形機3は、この伝送用直流電圧を昇圧して、インバータ22、23、…の供給に適した安定した直流電圧に変換する直流電圧昇降圧回路25を備えている。直流電圧昇降圧回路25は、伝送用電圧線20と、インバータ22、23、…に駆動用の直流電圧である駆動用直流電圧を供給する駆動用電圧線26とに接続されている。
【0021】
直流電圧昇降圧回路25の例が図3に示されている。直流電圧昇降圧回路25は、第1、2のパワートランジスタ28、29と、第1、2のパワートランジスタ28、29に対して並列に設けられている第1、2のダイオード30、31と、リアクトル32とからなる、周知のDCチョッパ回路として構成されている。直流電圧昇降圧回路25は制御装置33によって駆動されるようになっており、リアクトル32を流れる電流は電流センサ35によって、そして駆動用直流電圧は駆動用電圧線26において、それぞれ監視されている。制御装置33によって第1、2のパワートランジスタ28、29が適切にON/OFFされ、駆動用電圧線26における駆動用直流電圧、例えば350Vの直流電圧が一定になるように制御されている。このような直流電圧昇降圧回路25は、伝送用直流電圧が多少変動しても、インバータ22、23、…に供給される駆動用直流電圧を安定させることができるので、直流電圧安定化回路ということもできる。このように駆動用直流電圧が安定的に供給されるので電動射出成形機3、3、…は安定的に駆動できる。
【0022】
一般的に電動射出成形機は、成形サイクルを通じて消費される電力が変動する。型開閉工程や計量工程における消費電力は比較的小さいが、射出工程における消費電力は非常に大きい。本実施の形態に係る射出成形機システム1は、工場電源5から供給される電力を一括で電力供給装置2で受け、これを伝送用直流電圧に変換して複数台の電動射出成形機3、3、…に供給するようにしているので、工場電源5からの電力供給は十分に平滑化される。すなわち電力供給装置2は蓄電装置8を備えているので、蓄電装置8において電力を貯蔵したり、電力を供給することができ、射出成形機システム1全体で消費される電力を平滑化できるからである。従って、このようなシステムだけでも全体として十分に消費される電力が平滑化され、工場の受電設備の負担が少なく電気料金は安くすることができる。また工場電源5の停電時も蓄電装置8に蓄電されている電力によってある程度射出成形機システム1を運転することはできる。つまり本発明が目的としている効果は十分に得られる。しかしながら、複数台の電動射出成形機3、3、…において射出工程が実質的に同時に実施されると、消費される電力が一時的に大きくなり、蓄電装置8から供給される電力だけでは十分でなく一時的に工場電源5からの三相交流電圧の消費が大きくなる場合もある。システムの管理者にとって、全体の電力の消費の傾向を把握することは重要である。そこで、本実施の形態に係る射出成形機システム1は、次に説明するように、それぞれの電動射出成形機3、3、…において消費される電力等の情報や成形動作情報をやりとりし、これによって管理者が電力の消費について把握できるようになっている。
【0023】
本実施の形態に係る射出成形機システム1は、図1に示されているように、電力供給装置2、電動射出成形機3、3、…、そして情報処理装置4が、ネットワーク38によって互いに接続されている。各電動射出成形機3、3、…は電力に関する色々な情報を情報処理装置4に送る。例えば、現在の瞬間的な電力である瞬時電力、成形サイクル全体における平均の電力である平均電力、成形サイクル全体における最大の電力である最大電力等である。また、各射出成形機3、3、…における、瞬時、平均の電流、電圧を送るようにしてもよい。そしてこのような電力情報だけでなく、各射出成形機3、3、…における成形サイクルの情報、つまり成形動作に関する情報をやりとりすることもできる。成形動作に関する情報として、例えば射出開始、型開完了等の成形サイクルの各工程の開始、完了等の情報を送ることができる。このような情報はタイムスタンプと共に送信してもよく、各射出成形機3、3、…において、成形サイクルのどのタイミングでどの位の電力が消費されているか、情報処理装置4において集計し、分析することができる。情報処理装置4においては電力に関する情報を収集し、必要に応じて集計する。全ての電動射出成形機3、3、…について、平均電力を合計して射出成形機システム1の合計の平均電力を得てもよい。最大電力の合計を計算し、全ての電動射出成形機3、3、…において射出工程が同時に実施された場合に予想される最大の電力を計算してもよい。電力供給装置2からは、工場電源5から供給されている三相交流電圧の瞬時電力や、伝送用直流電圧として供給可能な最大電力等が情報処理装置4に送られる。情報処理装置4は、これらの電力に関する情報を付属の表示器に表示する。そして電動射出成形機3、3、…において必要になる電力が、電力供給装置2から供給可能な最大電力を越えそうな場合には警報を発するようにする。
【0024】
本実施の形態に係る射出成形機システム1は、ネットワーク接続されているので、情報処理装置4から各電動射出成形機3、3、…の成形サイクルをコントロールすることもできる。例えば、各電動射出成形機3、3、…から電力に関する情報だけでなく、現在実施中の工程や次に実施する工程等の工程情報も情報処理装置4に送信するようにする。情報処理装置4では現在の電力を監視し、成形機システム1における消費電力が大きくなってきたと判断したら、これから射出工程を実施する予定の電動射出成形機3に指令を出し、射出工程を遅らせるようにする。射出工程は前記したように大量の電力を消費するので、射出成形機システム1全体の電力を一時的に抑えることができ、工場電源5から供給される電力をさらに平滑化できることになる。なお、この例では情報処理装置4が各電動射出成形機3、3、…の工程を把握して、これから射出工程を開始しようとしている特定の電動射出成形機3に対して指令を出すようにしているが、情報処理装置4から全ての電動射出成形機3、3、…にブロードキャストするようにしてもよい。つまり射出成形機システム1の全体の消費電力が大きくなってきたときに、警報をブロードキャストで発するようにする。この警報を受け取った電動射出成形機3、3、…は、これから射出工程を実施しようとする場合には、自主的に所定時間だけ射出工程を遅らせるようにする。このような方法を採る場合には、情報処理装置4が各電動射出成形機3、3、…の工程を把握する必要はない。
【0025】
本実施の形態に係る射出成形機システム1は、色々な変形が可能である。例えば電力供給装置2’を、図2の(イ)のように変形することができる。この実施の形態においては交流直流変換回路7は、工場電源5から供給される三相交流電圧を伝送用直流電圧に変換して直接伝送用電圧線20に供給するようにしている。そして蓄電装置8’はこの伝送用電圧線20に設けるようにする。蓄電装置8’は、昇降圧蓄電・供給回路36と蓄電器13とから構成する。昇降圧蓄電・供給回路36は伝送用直流電圧を降圧して蓄電池である蓄電器13の蓄電に適した直流電圧にすると共に、伝送用直流電圧の低下を検出したら、蓄電器13から電力を取り出して直流電圧を昇圧し、伝送用直流電圧として伝送用電圧線20に供給するようになっている。蓄電装置8は、この他にも色々な変形が可能であり、交流直流変換回路7からの直流電圧を電力として蓄電することができ、そして伝送用直流電圧の低下を検出したら、蓄電した電力を伝送用直流電圧として供給できるようになっていればどのように構成されていてもよい。
【0026】
射出成形機システム1は、全体の変形も可能である。具体的には、電力供給装置2に情報処理装置4の機能を持たせて、情報処理装置4を省略する変形が可能である。つまり電動射出成形機3、3、…の電力に関する情報等は電力供給装置2に送信するようにし、電力供給装置2に表示器を設けてこれらの情報を表示したり、必要に応じて警報を発するようにしてもよい。この場合電力供給装置2が全体の電力を監視して、必要に応じて電動射出成形機3、3、…の成形サイクルをコントロールしてもよい。また、本実施の形態においては、電力供給装置2や電動射出成形機3、3、…は、互いにネットワーク接続されて電力に関する情報等をやりとりするように説明したが、ネットワーク接続は必須ではなく、ネットワーク接続されていなくても十分に本発明が目的としている効果が得られることは前述した通りである。
【符号の説明】
【0027】
1 射出成形機システム 2 電力供給装置
3 電動射出成形機 4 情報処理装置
5 工場電源 7 交流直流変換回路
8 蓄電装置 11 降圧充電回路
12 伝送電圧変換回路 13 蓄電器
20 伝送用電圧線 25 直流電圧昇降圧回路
26 駆動用電圧線 38 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5