(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377098
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】模様形成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 5/06 20060101AFI20180813BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20180813BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20180813BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B05D5/06 101Z
B05D7/14 Z
B05D3/10 Z
C23C28/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-114528(P2016-114528)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-217615(P2017-217615A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】516170956
【氏名又は名称】タテイシテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100204881
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 伸次
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】立石 忠行
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−226594(JP,A)
【文献】
特開昭58−216761(JP,A)
【文献】
特開昭54−036809(JP,A)
【文献】
特開昭59−113200(JP,A)
【文献】
特開2000−108484(JP,A)
【文献】
特開昭49−109433(JP,A)
【文献】
特公昭50−005739(JP,B1)
【文献】
特開2013−022500(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/084828(WO,A1)
【文献】
特開2015−028096(JP,A)
【文献】
特開2010−158666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の母材表面に模様を形成する模様形成方法であって、
前記金属材料を酸化着色させる着色工程と、
酸化着色された前記金属材料に、界面活性剤をランダムに直接塗布する塗布工程と、
前記界面活性剤が塗布された前記金属材料に塗料を塗装し、模様を形成する塗装及び模様形成工程と、を含む
ことを特徴とする模様形成方法。
【請求項2】
金属材料の母材表面に模様を形成する模様形成方法であって、
前記金属材料を酸化着色させる着色工程と、
酸化着色された前記金属材料に、界面活性剤が添加された塗料を直接塗装し、模様を形成する塗装及び模様形成工程と、を含む
ことを特徴とする模様形成方法。
【請求項3】
前記模様は、木目模様である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の模様形成方法。
【請求項4】
前記塗装及び模様形成工程は、酸化着色の色とは異なる色の塗料を塗装する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の模様形成方法。
【請求項5】
前記金属材料は、ステンレス系又はアルミニウム系である
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の模様形成方法。
【請求項6】
前記塗装及び模様形成工程の後に、クリアを塗装するクリア塗装工程を含む
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の模様形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様形成方法及び構造材料に関する。
【背景技術】
【0002】
構造材料として、従来は木材が使用されていたが、近年は、木材に替えて、木目模様を形成した金属材料が使用されている。金属材料に木目模様を形成する模様形成方法として、金属材料の表面に、木目模様の基調色となる塗料を下地として塗装し、その上に基調色とは異なる色の塗料を刷毛で塗装し、木目模様を形成することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4264491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の模様形成方法は、下地に塗料を用いるため、水又は溶剤などの溶媒を蒸発させる乾燥工程が必要であり、生産性がよくなかった。
【0005】
そこで、本発明は、生産性に優れた模様形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、安価な構造材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る一つの態様は、金属材料の母材表面に模様を形成する模様形成方法であって、前記金属材料を酸化着色させる着色工程と、酸化着色された前記金属材料に塗料を塗装する塗装工程と、前記塗料が塗装された前記金属材料に模様を形成する模様形成工程と、を含むものである。
【0007】
(2)本発明に係る一つの態様は、金属材料の母材表面に模様を形成する模様形成方法であって、前記金属材料を酸化着色させる着色工程と、酸化着色された前記金属材料に界面活性剤をランダムに塗布する塗布工程と、前記界面活性剤が塗布された前記金属材料に塗料を塗装し、模様を形成する塗装及び模様形成工程と、を含むものである。
【0008】
(3)本発明に係る一つの態様は、金属材料の母材表面に模様を形成する模様形成方法であって、前記金属材料を酸化着色させる着色工程と、酸化着色された前記金属材料に、界面活性剤が添加された塗料を塗装し、模様を形成する塗装及び模様形成工程と、を含むものである。
【0009】
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つの態様において、前記模様は、木目模様であってもよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)までのいずれか1つの態様において、前記金属材料は、ステンレス系又はアルミニウム系であってもよい。
【0011】
(6)本発明に係る別の一つの態様は、金属材料の母材と、前記母材の表面に形成された酸化被膜と、前記酸化被膜の表面に塗布された塗料層と、を含む構造材料であって、前記塗料層は、模様となるように点状、線状又は面状に塗装されていない部分を有し、前記塗料層の塗装されていない部分について、前記酸化被膜が表面に露出しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産性に優れた模様形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、安価な構造材料を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施形態1−3に係る模様形成方法を用いて、模様が形成される構造材料は、住宅の内外装材、台所や浴室の水回り関連品、自動車の内外装部品、電子部品の筐体など、意匠性を要求されるものに用いられる。構造材料は、金属材料であり、好ましくは、ステンレス系又はアルミニウム系のものであるが、チタン系やマグネシウム系であってもよい。構造材料は、その断面が矩形、円形などの棒状又はパイプ状であるが、平板や形鋼、あるいは立体物であってもよい。なお、構造材料は、脱脂、水洗、乾燥などの前処理が行われた後に、着色工程に移行される。
【0015】
実施形態1に係る模様形成方法について説明する。
(着色工程)
着色工程は、酸化着色により、構造材料(母材)の表面を、例えば、黄色、茶色又は黒色など種々の色の基調(下地)色に着色する。酸化着色には、化学着色と電解発色と電解着色とがある。このうち、化学着色は、強酸性の薬液に、構造材料を浸漬し、高温で処理することで、構造材料の表面に酸化被膜を形成し、着色するものである。電解発色は、構造材料を陽極として、薬液に浸漬し、薬液を電気分解することで、構造材料の表面に酸化被膜を形成し、母材の合金成分及び処理条件により着色するものである。電解着色は、構造材料を陽極として、薬液に浸漬し、薬液を電気分解することで、構造材料の表面に酸化被膜を形成し、その後、金属塩を含む溶液で電解処理を施して着色するものである。これらの酸化被膜が、後述する塗料層の下地となる。なお、ここでいう着色は、塗料や染料の着色剤による着色ではなく、表面に形成された酸化被膜によって起きる光の反射・干渉作用により、色が現れるものである。
【0016】
(塗装工程)
塗装工程は、茶色又は黒色の基調色に酸化着色された構造材料の表面に、例えば、黄色、青色、緑色、赤色、白色、黒色、金色、銀色など種々の色の塗料を塗料層として塗装する。このとき、酸化着色の色とは異なる色の塗料を選択するとよい。例えば、構造材料を茶色に酸化着色させた場合は、黄色の塗料を塗装するとよい。
【0017】
塗料には、水又は溶剤を溶媒とする、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂などが用いられる。塗装工程では、スプレーガンや刷毛やローラなどが用いられ、作業者又はロボットにより塗装作業が行われる。
【0018】
(模様形成工程)
模様形成工程は、塗料が塗装された構造材料の表面に、木目などの模様を形成する。模様形成工程では、刷毛、ブラシ、スポンジなどが用いられ、作業者又はロボットにより模様形成作業が行われる。このうち木目模様は、刷毛で構造材料の表面の塗料層をなぞることにより、表面の塗料層の一部が刷毛に掻取られ(除去され)、下地(酸化被膜)の一部が表面に露出することで、形成される。このとき、下地の茶色又は黒色の基調色と、塗料層の塗料の黄色又は緑色とが相まって、自然な木目模様となる。その後、塗料は、乾燥装置で乾燥される。
【0019】
(クリア塗装工程)
クリア塗装工程は、模様が形成された後に、必要に応じて行われるもので、アクリル系樹脂やフッ素系樹脂などのクリアを塗装することにより、表面の塗料層を、保護したり、艶を付与又は消去したりする。
【0020】
このようにして、構造材料は、その表面が酸化着色されて下地となり、下地の上に塗料が塗装され、表面に木目模様が形成される。言い換えると、構造材料は、金属材料の母材と、酸化被膜と、塗料層と、を含み、塗料層は、木目模様となるように塗料層が掻取られた(塗装されていない)部分を有し、塗料層の塗装されていない部分について、酸化被膜が表面に露出している構成となる。
【0021】
実施形態2に係る模様形成方法について説明する。
【0022】
(着色工程)
着色工程は、実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0023】
(塗布工程)
塗布工程は、基調色に酸化着色された構造材料の表面に、撥水剤などの界面活性剤を添加剤として、塗布する。添加剤は、刷毛、特殊ノズル、スポンジなどで、ランダムに(斑となるように)塗布される。
【0024】
(塗装及び模様形成工程)
塗装工程は、添加剤がランダムに塗布された構造材料(酸化被膜)の表面に、顔料成分の少ない(希釈された)塗料を塗装する。塗料は、スプレーガンや刷毛やローラなどで塗装される。これにより、添加剤が塗布されていない部分には、塗料が塗装され(塗料層が形成され)、添加剤が塗布された部分には、塗料が十分に塗装されない(塗料層が塗装されない)ため、木目模様が形成される。すなわち、塗装工程と模様形成工程とが実質的に同時に行われる。その後、塗料は、乾燥装置で乾燥される。
【0025】
(クリア塗装工程)
クリア塗装工程は、実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0026】
このようにしても、構造材料の表面に木目模様を形成することができ、構造材料は、金属材料の母材と、酸化被膜と、塗料層と、を含み、塗料層は、木目模様となるように塗料層が塗装されていない部分を有し、塗料層の塗装されていない部分について、酸化被膜が表面に露出している構成となる。
【0027】
実施形態3に係る模様形成方法について説明する。
【0028】
(着色工程)
着色工程は、実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0029】
(塗装及び模様形成工程)
塗装工程は、基調色に酸化着色された構造材料の表面に、撥水剤などの界面活性剤が添加された塗料を塗布する。塗料は、刷毛、ブラシ、スポンジなどで塗装される。このとき、塗料のレベリング状態などを事前にテストし、界面活性剤の種類や添加量を調整した塗料を用いるとよい。これにより、界面活性剤が塗料の表面張力を低下させるため、刷毛などで塗料が所定の模様となるように塗装されると、酸化被膜上を斑に濡れ広がり、塗料が十分塗装されない部分ができ、また、これら以外に塗料層が塗装されない部分もできるため、木目模様が形成される。すなわち、この実施形態でも、塗装工程と模様形成工程とが実質的に同時に行われる。その後、塗料は、乾燥装置で乾燥される。
【0030】
(クリア塗装工程)
クリア塗装工程は、実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0031】
このようにしても、構造材料の表面に木目模様を形成することができ、構造材料は、金属材料の母材と、酸化被膜と、塗料層と、を含み、塗料層は、木目模様となるように塗料層が塗装されていない部分を有し、塗料層の塗装されていない部分について、酸化被膜が表面に露出している構成となる。
【0032】
上記実施形態1−3では、構造材料の表面に木目模様を形成したが、塗料層の一部を、点状、線状又は面状に掻取り(又は塗装せず)、塗料層の塗装されていない部分について、酸化被膜を表面に露出させて、他の模様を形成してもよい。このとき、酸化被膜の色と、塗料の色とを適宜組合せることで、構造材料の表面に、種々の模様及び色合いを形成してもよい。
【0033】
以上のとおり、本発明の実施形態1に係る模様形成方法は、金属材料の表面に模様を形成するものであって、金属材料を酸化着色させる着色工程と、酸化着色された金属材料に塗料を塗装する塗装工程と、塗料が塗装された金属材料に模様を形成する模様形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明の実施形態2に係る模様形成方法は、金属材料の母材表面に模様を形成するものであって、金属材料を酸化着色させる着色工程と、酸化着色された金属材料に界面活性剤をランダムに塗布する塗布工程と、界面活性剤が塗布された金属材料に塗料を塗装し、模様を形成する塗装及び模様形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の実施形態3に係る模様形成方法は、金属材料の母材表面に模様を形成する模様ものであって、金属材料を酸化着色させる着色工程と、酸化着色された金属材料に、界面活性剤が添加された塗料を塗装し、模様を形成する塗装及び模様形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0036】
これにより、従来の模様形成方法と比較し、下地に塗料を使用しないため、乾燥工程が不要となり、生産性に優れた模様形成方法とすることができる。また、下地の塗料の分だけ、生産コストを低減することができる。
【0037】
本実施形態では、着色工程は、金属材料を茶色又は黒色に着色する。これにより、木目模様の下地となる基調色の着色を、酸化着色によって行うことができる。
【0038】
本実施形態では、塗装工程は、酸化着色の色とは異なる色の塗料を塗装する。これにより、塗料層の塗料の色と、下地の基調色とが相まって、自然な模様を形成することができる。
【0039】
本実施形態では、金属材料は、ステンレス系又はアルミニウム系である。これにより、構造材料の用途に応じて、強度や重量を適宜設定することができる。
【0040】
本発明の実施形態に係る構造材料は、金属材料の母材と、母材の表面に形成された酸化被膜と、酸化被膜の表面に塗布された塗料層と、を含むものであって、塗料層は、模様となるように点状、線状又は面状に塗装されていない部分(初めから塗料層が塗装されていない状態も含む)を有し、塗料層の塗装されていない部分について、酸化被膜が表面に露出している。これにより、下地に塗料を使用しないため、安価な構造材料とすることができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。