(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無人機と地上設備とが互いの送受信機及び指向性アンテナにより信号を送受信する無人機制御システムにおける前記送受信機の異常を検知する無人機制御システムの異常検知方法であって、
前記無人機及び前記地上設備の一方または双方の制御部が、
前記送受信機が送受信した信号に基づいて、前記無人機及び前記地上設備の2つの前記指向性アンテナの間のアンテナ間距離を算出する距離算出工程と、
前記送受信機の送信出力と前記指向性アンテナの指向角度とに基づいて、当該指向性アンテナの送信性能を算出する送信性能算出工程と、
前記指向性アンテナの指向角度に基づいて、当該指向性アンテナの受信性能を算出する受信性能算出工程と、
前記無人機及び前記地上設備の一方における前記アンテナ間距離及び前記指向性アンテナの受信性能と、他方における前記指向性アンテナの送信性能とに基づいて、前記一方の前記送受信機での電波の受信レベルを推定する推定工程と、
前記推定工程で推定された受信レベルと前記一方の前記送受信機から取得した実際の受信レベルとの差が所定値以上の場合に、当該一方の送受信機に異常が発生したと判定する判定工程とを、
前記無人機及び前記地上設備の双方の前記送受信機について個別に行うことを特徴とする無人機制御システムの異常検知方法。
前記無人機及び前記地上設備の各々の制御部が、当該制御部を備える前記無人機または前記地上設備の前記送受信機について、前記距離算出工程、前記送信性能算出工程、前記受信性能算出工程、前記推定工程及び前記判定工程を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の無人機制御システムの異常検知方法。
無人機と地上設備とが互いの送受信機及び指向性アンテナにより信号を送受信する無人機制御システムにおいて前記無人機上の位置計測機器の異常を検知する無人機制御システムの異常検知方法であって、
前記無人機及び前記地上設備の一方または双方の制御部が、
前記地上設備の前記送受信機が送受信した信号に基づいて、前記無人機及び前記地上設備の互いの前記指向性アンテナの間のアンテナ間距離を算出する距離算出工程と、
前記地上設備の前記指向性アンテナの指向角度と前記アンテナ間距離とに基づいて、前記無人機の位置を推定する推定工程と、
前記推定工程で推定された前記無人機の位置と前記位置計測機器から取得した前記無人機の位置との距離が所定値以上の場合に、当該位置計測機器に異常が発生したと判定する判定工程と、
を実行することを特徴とする無人機制御システムの異常検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、無人機制御システムにおける送受信機や位置計測機器の異常を好適に検知することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の第一の発明は、無人機と地上設備とが互いの送受信機及び指向性アンテナにより信号を送受信する無人機制御システムにおける前記送受信機の異常を検知する無人機制御システムの異常検知方法であって、
前記無人機及び前記地上設備の一方または双方の制御部が、
前記送受信機が送受信した信号に基づいて、前記無人機及び前記地上設備の2つの前記指向性アンテナの間のアンテナ間距離を算出する距離算出工程と、
前記送受信機の送信出力と前記指向性アンテナの指向角度とに基づいて、当該指向性アンテナの送信性能を算出する送信性能算出工程と、
前記指向性アンテナの指向角度に基づいて、当該指向性アンテナの受信性能を算出する受信性能算出工程と、
前記無人機及び前記地上設備の一方における前記アンテナ間距離及び前記指向性アンテナの受信性能と、他方における前記指向性アンテナの送信性能とに基づいて、前記一方の前記送受信機での電波の受信レベルを推定する推定工程と、
前記推定工程で推定された受信レベルと前記一方の前記送受信機から取得した実際の受信レベルとの差が所定値以上の場合に、当該一方の送受信機に異常が発生したと判定する判定工程とを、
前記無人機及び前記地上設備の双方の前記送受信機について個別に行うようにしたものである。
【0007】
望ましくは、前記無人機及び前記地上設備の少なくとも一方に設けられ、雨雲の位置情報を取得する気象情報取得手段を用い、
前記推定工程では、前記気象情報取得手段により取得された雨雲の位置情報を加味して前記一方の前記送受信機での電波の受信レベルが推定されるようにする。
【0008】
また望ましくは、前記無人機及び前記地上設備の各々の前記指向性アンテナのアンテナパターンを記憶した記憶手段を用い、
前記送信性能算出工程及び前記受信性能算出工程では、前記記憶手段に記憶された前記指向性アンテナのアンテナパターンに基づいて、当該指向性アンテナの送信性能及び受信性能が算出されるようにする。
【0009】
さらに望ましくは、前記無人機及び前記地上設備の各々の制御部が、当該制御部を備える前記無人機または前記地上設備の前記送受信機について、前記距離算出工程、前記送信性能算出工程、前記受信性能算出工程、前記推定工程及び前記判定工程を実行するようにする。
【0010】
本願の第二の発明は、無人機と地上設備とが互いの送受信機及び指向性アンテナにより信号を送受信する無人機制御システムにおいて前記無人機上の位置計測機器の異常を検知する無人機制御システムの異常検知方法であって、
前記無人機及び前記地上設備の一方または双方の制御部が、
前記地上設備の前記送受信機が送受信した信号に基づいて、前記無人機及び前記地上設備の互いの前記指向性アンテナの間のアンテナ間距離を算出する距離算出工程と、
前記地上設備の前記指向性アンテナの指向角度と前記アンテナ間距離とに基づいて、前記無人機の位置を推定する推定工程と、
前記推定工程で推定された前記無人機の位置と前記位置計測機器から取得した前記無人機の位置との距離が所定値以上の場合に、当該位置計測機器に異常が発生したと判定する判定工程と、
を実行するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無人機及び地上設備の一方におけるアンテナ間距離及び指向性アンテナの受信性能と、他方における指向性アンテナの送信性能とに基づいて、当該一方の送受信機の受信レベルが推定され、この推定された受信レベルと当該一方の送受信機から取得した実際の受信レベルとの差が所定値以上の場合に、当該一方の送受信機に異常が発生したと判定される。
或いは、地上設備の指向性アンテナの指向角度とアンテナ間距離とに基づいて無人機の位置が推定され、この推定された無人機の位置と、無人機上の位置計測機器から取得した無人機の位置との距離が所定値以上の場合に、当該位置計測機器に異常が発生したと判定される。
これにより、機器単独では自らの異常を検知できない場合であっても、当該機器を備えるものとは別の装置(無人機または地上設備)からの情報を利用することで、当該機器の異常を検知することができる。したがって、無人機制御システムにおいて、送受信機や位置計測機器の異常を好適に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る無人機制御システムの異常検知方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[無人機制御システムの構成]
まず、本実施形態における無人機制御システム100の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、無人機制御システム100の概略構成を示すブロック図である。
この図に示すように、無人機制御システム100は、地上設備30からの制御指令によって無人機20の飛行を制御するものである。
【0015】
無人機20は、地上設備30からの制御指令に基づいて自律飛行可能な無人航空機であり、送受信機21と、飛行機構23と、慣性航法装置24と、気象レーダー25と、記憶部26と、飛行制御部28とを備えて構成されている。
【0016】
送受信機21は、後述する地上設備30の送受信機31とデータリンクを構成しており、指向性アンテナ22を介して地上設備30と互いに各種信号を送受信可能なものである。指向性アンテナ22は、その指向方向を変更可能であるとともに、地上設備30からの電波の受信強度が最も強くなる方向を探索して可動範囲内で自律的に地上設備30の方向を向くように構成されている。
【0017】
飛行機構23は、無人機20を飛行させるための機構であり、推進力を発生させる内燃機関(例えばジェットエンジン)や舵面駆動用のアクチュエータ等から構成されている。
【0018】
慣性航法装置24は、外部からの電波に依ることなく無人機20の位置や姿勢、速度等を計測可能なものであり、本実施形態においては、無人機20の位置に関する位置情報を飛行制御部28へ出力する。
【0019】
気象レーダー25は、気象状況を観測するための機上レーダーであり、本実施形態においては、電波強度を減衰させる雨雲の位置(高度を含む)等に関する雨雲情報を取得し、その信号を飛行制御部28へ出力する。
【0020】
記憶部26は、無人機20の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに作業領域としても機能するメモリであり、本実施形態においては、機上アンテナ特性260を記憶している。
機上アンテナ特性260は、無人機20に搭載された指向性アンテナ22のアンテナパターンデータであり、より詳しくは、指向性アンテナ22に対する送受信電波の方向と送信電波強度及び受信感度との関係をプロットしたデータベースである。
【0021】
飛行制御部28は、無人機20の各部を中央制御する。具体的に、飛行制御部28は、飛行機構23を駆動制御して無人機20の飛行を制御したり、送受信機21及び指向性アンテナ22を通じて地上設備30と各種信号を送受信したり、記憶部26に記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0022】
一方、地上設備30は、送受信機31と、気象レーダー35と、記憶部36と、指令制御部38とを備えて構成されている。
【0023】
送受信機31は、無人機20の送受信機21とデータリンクを構成しており、指向性アンテナ32を介して無人機20と互いに各種信号を送受信可能なものである。指向性アンテナ32は、略全天方位を指向可能であるとともに、無人機20からの電波の受信強度が最も強くなる方向を探索して自律的に無人機20の方向を向くように構成されている。
【0024】
気象レーダー35は、気象状況を観測するためのレーダーであり、本実施形態においては、電波強度を減衰させる雨雲の位置(高度を含む)に関する情報を取得し、その信号を指令制御部38へ出力する。
【0025】
記憶部36は、地上設備30の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに作業領域としても機能するメモリであり、本実施形態においては、地上アンテナ特性360を記憶している。
地上アンテナ特性360は、地上設備30に設置された指向性アンテナ32のアンテナパターンデータであり、より詳しくは、指向性アンテナ32に対する送受信電波の方向と送信電波強度及び受信感度との関係をプロットしたデータベースである。
【0026】
指令制御部38は、ユーザ操作に基づいて地上設備30の各部を中央制御する。具体的に、指令制御部38は、送受信機31及び指向性アンテナ32を通じて無人機20と各種信号を送受信したり、記憶部36に記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0027】
[送受信機の異常検知方法]
続いて、無人機制御システム100において送受信機21,31の異常を検知する方法について説明する。
図2は、この異常検知方法の流れを示すフローチャートであり、
図3は、当該異常検知方法の工程のうち電波の受信レベルを推定する際のデータの流れを示すデータフロー図である。
【0028】
本実施形態における送受信機21,31の異常検知方法は、無人機20の送受信機21及び地上設備30の送受信機31の一方または双方の受信レベルが低下した場合(但し、データリンクが途絶してはいない)などに、当該送受信機21,31に異常(故障)が発生したか否かを検知する処理である。
なお、ここでは、無人機20が飛行中であるものとする。また、以下の説明では、説明の分かり易さのために、無人機20の構成要素の語頭に「機上」を付し、地上設備30の構成要素の語頭に「地上」を付すこととする。
【0029】
図2に示すように、本実施形態における送受信機21,31の異常検知方法では、まず、機上指向性アンテナ22及び地上指向性アンテナ32がいずれも正常であるか否かが判定される(ステップS1)。具体的には、無人機20の飛行制御部28が機上指向性アンテナ22について、地上設備30の指令制御部38が地上指向性アンテナ32について、それぞれ正常に動作・機能しているか否かを判定する。
そして、機上指向性アンテナ22及び地上指向性アンテナ32のいずれか一方だけでも正常に動作・機能していないと判定された場合には(ステップS1;No)、他の処理へ移行する。
【0030】
機上指向性アンテナ22及び地上指向性アンテナ32がいずれも正常であると判定された場合(ステップS1;Yes)、無人機20上での電波の受信レベルと地上設備30での電波の受信レベルとが推定される(ステップS2)。
【0031】
このステップでは、
図3に示すように、無人機20と地上設備30との各々において、送受信機21,31が正常であった場合での電波の受信レベルが推定される。
具体的に、まず無人機20では、飛行制御部28が、機上指向性アンテナ22の指向方向での送信性能(送信電波強度)及び受信性能(受信感度)を算出する。より詳しくは、飛行制御部28の機上送信性能算出器281が、機上送受信機21から取得した送信出力と、機上指向性アンテナ22から取得したアンテナ指向角度と、記憶部26から読み出した機上アンテナ特性260とに基づいて、機上指向性アンテナ22の指向方向での送信性能を算出する。飛行制御部28は、算出した機上指向性アンテナ22の送信性能を、データリンクを介して地上設備30へ送信する。なお、ここでは便宜的に「指向性アンテナの送信性能」と記載するが、当該送信性能が送受信機による信号出力も加味されたものであることは言うまでもない。
また、飛行制御部28の機上受信性能算出器282が、機上指向性アンテナ22から取得したアンテナ指向角度と、記憶部26から読み出した機上アンテナ特性260とに基づいて、機上指向性アンテナ22の指向方向での受信性能を算出する。
さらに、飛行制御部28の距離算出器283が、機上送受信機21が送受信した信号に基づいて、機上指向性アンテナ22と地上指向性アンテナ32との間のアンテナ間距離(すなわち、無人機20と地上設備30との間の距離)を算出する。具体的に、距離算出器283は、例えば、機上送受信機21が地上設備30から受信した時間情報の付いた信号に基づいて、その時間差(受信時刻と信号内の送信時刻)からアンテナ間距離を算出したり、機上送受信機21により地上設備30との間でパルス信号を往復させて、この送受信に要した時間からアンテナ間距離を算出したりする。
【0032】
一方、地上設備30では、指令制御部38が、無人機20におけるものと同様に、地上指向性アンテナ32の指向方向における送信性能及び受信性能を算出する。より詳しくは、指令制御部38の地上送信性能算出器381が、地上送受信機31から取得した送信出力と、地上指向性アンテナ32から取得したアンテナ指向角度と、記憶部36から読み出した地上アンテナ特性360とに基づいて、地上指向性アンテナ32の送信性能を算出する。指令制御部38は、算出した地上指向性アンテナ32の送信性能を、データリンクを介して無人機20へ送信する。
また、指令制御部38の地上受信性能算出器382が、地上指向性アンテナ32から取得したアンテナ指向角度と、記憶部36から読み出した地上アンテナ特性360とに基づいて、地上指向性アンテナ32の受信性能を算出する。
さらに、指令制御部38の距離算出器383が、送受信機31が送受信した信号に基づいて、機上指向性アンテナ22と地上指向性アンテナ32との間のアンテナ間距離(すなわち、無人機20と地上設備30との間の距離)を算出する。具体的に、距離算出器383は、例えば、地上送受信機31が無人機20から受信した時間情報の付いた信号に基づいて、その時間差(受信時刻と信号内の送信時刻)からアンテナ間距離を算出したり、地上送受信機31により無人機20との間でパルス信号を往復させて、この送受信に要した時間からアンテナ間距離を算出したりする。
【0033】
そして、無人機20では、飛行制御部28の機上受信レベル推定器284が、地上設備30から送信された地上指向性アンテナ32の送信性能と、機上受信性能算出器282が算出した機上指向性アンテナ22の受信性能と、距離算出器283が算出したアンテナ間距離と、気象レーダー25から取得した雨雲情報とに基づいて、送受信機21,31が正常であった場合に得られるであろう無人機20での電波の受信レベルを推定する。ここで、雨雲情報は、電波の減衰要素としての雨雲が、無人機20と地上設備30との間にどの程度の湿り気でどれだけの距離に亘って存在するか等を加味するのに用いられる。
【0034】
また、地上設備30でも同様にして、指令制御部38の地上受信レベル推定器384が、無人機20から送信された機上指向性アンテナ22の送信性能と、地上受信性能算出器382が算出した地上指向性アンテナ32の受信性能と、距離算出器383が算出したアンテナ間距離と、気象レーダー35から取得した雨雲情報とに基づいて、送受信機21,31が正常であった場合に得られるであろう地上設備30での電波の受信レベルを推定する。
【0035】
機上及び地上での各受信レベルが推定されると、
図2に示すように、送受信機21,31の異常有無が、無人機20と地上設備30とで個別に判定される。
具体的に、まず無人機20では、飛行制御部28が、機上送受信機21から実際の受信レベルを取得し、推定された受信レベルと比較する(ステップS31)。
次に、飛行制御部28は、実際の受信レベルと推定された受信レベルとのレベル差が所定値以上であるか否か、つまり実際の受信レベルと推定された受信レベルとが略同一と見做せるか否かを判定する(ステップS41)。
そして、飛行制御部28は、実際の受信レベルと推定された受信レベルとのレベル差が所定値以上であると判定した場合(ステップS41;Yes)、機上送受信機21に異常が発生していると判定し、その旨の信号を地上設備30へ送信する(ステップS51)。
また、実際の受信レベルと推定された受信レベルとのレベル差が所定値未満であると判定した場合には(ステップS41;No)、飛行制御部28は、機上送受信機21は正常であると判定し、その旨の信号を地上設備30へ送信する(ステップS61)。
【0036】
一方、地上設備30では、指令制御部38が、地上送受信機31から実際の受信レベルを取得し、推定された受信レベルと比較する(ステップS32)。
次に、指令制御部38は、実際の受信レベルと推定された受信レベルとのレベル差が所定値以上であるか否か、つまり実際の受信レベルと推定された受信レベルとが略同一と見做せるか否かを判定する(ステップS42)。
そして、指令制御部38は、実際の受信レベルと推定された受信レベルとのレベル差が所定値以上であると判定した場合(ステップS42;Yes)、地上送受信機31に異常が発生していると判定する(ステップS52)。
また、実際の受信レベルと推定された受信レベルとのレベル差が所定値未満であると判定した場合には(ステップS42;No)、指令制御部38は、地上送受信機31は正常であると判定する(ステップS62)。
【0037】
こうして、機上送受信機21及び地上送受信機31の異常有無が判定され、少なくとも一方の送受信機が異常であると判定された場合には、無人機20の飛行任務を中断するなどの緊急措置が講じられる。また、いずれの送受信機とも正常であると判定された場合には、距離が離れたことや雨雲などの外囲環境により受信レベルが低下していると判断され、飛行経路を変更するなどの対応により無人機20の飛行任務は続行される。
【0038】
[慣性航法装置の異常検知方法]
続いて、無人機制御システム100において慣性航法装置24の異常を検知する方法について説明する。
図4は、この異常検知方法の流れを示すフローチャートである。
【0039】
本実施形態における慣性航法装置24の異常検知方法は、例えばGPS情報欺瞞を含む無人機20の位置計測不良が疑われる場合などに、無人機20の位置を算出する慣性航法装置24に異常(故障)が発生したか否かを検知する処理である。
なお、ここでは、無人機20が飛行中であるものとする。
【0040】
図4に示すように、本実施形態における慣性航法装置24の異常検知方法では、まず、地上設備30の指令制御部38が、地上送受信機31及び地上指向性アンテナ32がいずれも正常に動作・機能しているか否かを判定する(ステップT1)。
そして、地上送受信機31及び地上指向性アンテナ32のいずれか一方だけでも正常に動作・機能していないと判定された場合には(ステップT1;No)、他の処理へ移行する。
【0041】
地上送受信機31及び地上指向性アンテナ32がいずれも正常であると判定された場合(ステップT1;Yes)、地上設備30でのアンテナ情報に基づいて機上指向性アンテナ22の位置(すなわち、無人機20の位置)が推定される(ステップT2)。
具体的に、地上設備30の指令制御部38は、地上指向性アンテナ32から取得したアンテナ指向角度(電波追尾方向)と、地上送受信機31から取得したアンテナ間距離とに基づいて、機上指向性アンテナ22の位置を推定する。つまり、機上指向性アンテナ22(無人機20)が、地上指向性アンテナ32の指向方向にアンテナ間距離だけ離れた位置に存在するものとして、当該機上指向性アンテナ22の位置が推定される。ここで、アンテナ間距離は、上述した送受信機の異常検知の場合と同様に、地上送受信機31が送受信した信号に基づいて算出される。
そして、指令制御部38は、推定した機上指向性アンテナ22の位置を、データリンクを介して無人機20へ送信する。
【0042】
次に、無人機20の飛行制御部28が、慣性航法装置24から当該無人機20の位置(すなわち、機上指向性アンテナ22の位置)情報を取得し、地上設備30から送信されてきた推定位置と比較する(ステップT3)。
【0043】
次に、飛行制御部28は、慣性航法装置24から得られた無人機20の位置と、推定された無人機20の位置との差(距離)が所定値以上であるか否か、つまり、これらの位置が略一致していると見做せるか否かを判定する(ステップT4)。
【0044】
そして、飛行制御部28は、これらの位置の差が所定値以上であると判定した場合(ステップT4;Yes)、慣性航法装置24に異常が発生していると判定し、その旨の信号を地上設備30へ送信する(ステップT5)。
また、これらの位置の差が所定値未満であると判定した場合には(ステップT4;No)、飛行制御部28は、慣性航法装置24は正常であると判定する(ステップT6)。
【0045】
こうして、無人機20上の慣性航法装置24の異常有無が判定され、異常があると判定された場合には、無人機20の飛行任務を中断するなどの緊急措置が、必要に応じて講じられる。
【0046】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、無人機20及び地上設備30の一方におけるアンテナ間距離及び指向性アンテナの受信性能と、他方における指向性アンテナの送信性能とに基づいて、両送受信機が正常であれば得られるであろう当該一方の送受信機の受信レベルが推定される。そして、この推定された受信レベルと当該一方の送受信機から取得した実際の受信レベルとの差が所定値以上の場合に、当該一方の送受信機に異常が発生したと判定される。
これにより、送受信機21,31単独では自らの異常を検知できない場合であっても、当該送受信機21,31を備えるものとは別の装置(無人機20または地上設備30)からの情報を利用することで、当該送受信機21,31の異常を検知することができる。
したがって、無人機制御システム100において、信号を送受信する送受信機21,31の異常を好適に検知することができる。ひいては、受信レベルの低下が送受信機21,31の異常によるものか、或いは外囲環境によるものかを好適に判別することができるため、受信レベル低下時には常に任務を中断させていた従来に比べ、任務中断リスクを低減させることができる。
【0047】
また、地上設備30の送受信機31が送受信した信号に基づいてアンテナ間距離が算出され、このアンテナ間距離と地上設備30の指向性アンテナ32の指向角度とに基づいて無人機20の位置が推定される。そして、この推定された無人機20の位置と、無人機20上の慣性航法装置24から取得した無人機20の位置との距離が所定値以上の場合に、当該慣性航法装置24に異常が発生したと判定される。
これにより、無人機20上の慣性航法装置24単独では自らの異常を検知できない場合であっても、地上設備30からの情報を利用することで、当該慣性航法装置24の異常を検知することができる。
したがって、無人機制御システム100において、無人機20の位置を計測する慣性航法装置24の異常(GPS情報欺瞞を含む位置計測不良)を好適に検知することができる。
【0048】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、無人機20及び地上設備30の各々に設けられた気象レーダーが雨雲情報を取得することとしたが、これら無人機20及び地上設備30が雨雲情報を含む気象情報を取得可能であればその具体構成は特に限定されず、例えば通信手段により通信ネットワーク上から気象情報を取得することとしてもよい。また、無人機20及び地上設備30のいずれか一方が気象レーダーまたは通信手段により気象情報を取得し、この情報をデータリンクで他方に送信することなどとしてもよい。例えば、地上設備30のみに気象レーダー35を設けることとしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態における送受信機の異常検知方法では、無人機20及び地上設備30の各々の制御部(飛行制御部28、指令制御部38)が、当該制御部を備える無人機20または地上設備30の送受信機について各工程を実行することとしたが、いずれか一方の制御部が双方の送受信機についての各工程を実行することとしてもよい。
例えば、地上設備30の指令制御部38が、無人機20から機上のアンテナ指向角度や送信出力を取得して、機上の送受信性能の算出や受信レベルの推定等を行うことなどとしてもよい。但し、この場合には、機上アンテナ特性260を地上設備30の記憶部36に予め記憶させておき、無人機20の記憶部26に代えて地上設備30の記憶部36を用いるようにすることが好ましい。地上設備30の指令制御部38の方が無人機20の飛行制御部28よりも高い演算処理能力が期待できるため、できるだけ地上設備30の指令制御部3に演算処理させるように構成することが好ましい。
【0051】
また、慣性航法装置の異常検知方法においても、無人機20及び地上設備30のいずれか一方の制御部(飛行制御部28、指令制御部38)が、略全ての工程を実行することとしてもよい。
例えば、地上設備30の指令制御部38が、無人機20から慣性航法装置24による位置情報を取得して、当該位置情報の比較等を行うことなどとしてもよい。