(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記木材シート巻回部の外周を覆うカバー部材であって、前記木材シート巻回部の外周を内側に向けて押しつけるバネ性を有するカバー部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の部材。
請求項1乃至8のいずれかに記載の部材を製造する製造方法であって、前記木材シートの層が他の層と重なっていない状態で前記木材処理剤を適用する段階を備えたことを特徴とする製造方法。
請求項1乃至8のいずれかに記載の部材を製造する製造方法であって、前記木材シートの層が他の層と重なっている状態で前記木材処理剤を適用する段階を備えたことを特徴とする製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防炎加工木材では、平板を積層したものであるため、平板積層に起因する制約を受ける。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、木材を利用しつつ所定特性を付与することができ、しかも平板積層とは異なる積層構造を採用した部材、及び、前記部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、以下の各態様を提示する。第1の態様による部材は、木材の丸太を桂剥き状に切削することで得られた木材シートが多層状に巻回された木材シート巻回部であって、木材処理剤が適用された木材シート巻回部を備えたものである。
【0007】
この第1の態様によれば、木材シートが多層状に巻回され木材処理剤が適用された木材シート巻回部を備えているので、木材を利用しつつ木材処理剤による所定特性を付与することができ、しかも平板積層とは異なる巻回の積層構造を採用した部材を得ることができる。
【0008】
なお、前記第1の態様による部材の用途は、柱や梁などの建材や、電線用又は導光線用の保護管などを挙げることができるが、これらの用途に限らない。
【0009】
第2の態様による部材は、前記第1の態様において、前記木材処理剤は、不燃化処理、準不燃化処理、難燃化処理、防虫処理、防蟻処理及び防腐処理のうちの少なくとも1つの処理用の処理剤であるものである。
【0010】
この第2の態様は、前記木材処理剤の例を挙げたものであるが、前記第1の態様ではこれらの例に限らない。
【0011】
第3の態様による部材は、前記第1又は第2の態様において、前記丸太の心材部分から得られた前記木材シートが前記木材シート巻回部の中心側に配置され、前記丸太の辺材部分から得られた前記木材シートが前記木材シート巻回部の周辺側に配置されたものである。
【0012】
この第3の態様によれば、前記丸太の心材部分から得られた前記木材シートが前記木材シート巻回部の中心側に配置され、前記丸太の辺材部分から得られた前記木材シートが前記木材シート巻回部の周辺側に配置されているので、辺材は心材に比べて液状の木材処理剤が浸透し易いことから、木材シート巻回部の周辺側が木材シート巻回部の中心側に比べて木材処理剤による所定特性(例えば、不燃化等)をより良好に発揮させることができる。したがって、前記第3の態様によれば、心材部分から得られた木材シートを木材シート巻回部の周辺側に配置し辺材部分から得られた木材シートを木材シート巻回部の中心側に配置する場合に比べて、木材シート巻回部全体として、木材処理剤による特性をより良好に発揮させることができる。
【0013】
第4の態様による部材は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記木材シート巻回部が筒状をなし、前記木材シート巻回部の内側に芯材が配置されていないものである。
【0014】
この第4の態様による部材は、木材シート巻回部の内側に芯材が配置されていない例を挙げたものである。
【0015】
第5の態様による部材は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記木材シート巻回部が筒状をなし、前記木材シート巻回部の内側に配置された管状又は棒状の芯材を備えたものである。前記芯材の材質として、例えば、鋼やアルミニウム等の金属やガラス繊維や炭素繊維や樹脂などを挙げることができる。
【0016】
この第5の態様による部材は、木材シート巻回部の内側に芯材が配置された例を挙げたものである。この第5の態様によれば、前記芯材によって当該部材全体としての強度を高めることができる。
【0017】
第6の態様による部材は、前記第1乃至第5のいずれかの態様において、前記木材シートの互いに重なる少なくとも一部分同士が接着剤で接着されたものである。
【0018】
この第6の態様によれば、前記接着剤によって、前記木材シート巻回部の巻回状態を保持することができる。前記接着剤の材質は当該部材の用途等によって任意に定めることができるが、例えば、前記木材処理剤が不燃化処理用、準不燃化処理用又は難燃化処理用の処理剤である場合には、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)からなる接着剤などの、高温時に有毒ガスが生じない接着剤を用いてもよい。
【0019】
第7の態様による部材は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、前記木材シート巻回部の外周を覆うカバー部材であって、前記木材シート巻回部の外周を内側に向けて押しつけるバネ性を有するカバー部材を備えたものである。前記カバー部材の材質として、鋼やアルミニウム等の金属やガラス繊維や炭素繊維や樹脂などを挙げることができる。
【0020】
この第7の態様によれば、前記カバー部材によって、前記木材シート巻回部の巻回状態を保持することが可能となる。また、前記第7の態様によれば、前記カバー部材によって当該部材全体としての強度を高めることができる。
【0021】
第8の態様による部材は、前記第1乃至第7のいずれかの態様において、前記木材シート巻回部の巻回状態が保持されるように前記木材シート巻回部を留める留め具を備えたものである。
【0022】
この第8の態様は、留め具によって木材シート巻回部の巻回状態を保持する例を挙げたものである。
【0023】
第9の態様による製造方法は、前記第1乃至第8のいずれかの態様による部材を製造する製造方法であって、前記木材シートの層が他の層と重なっていない状態で前記木材処理剤を適用する段階を備えたものである。
【0024】
この第9の態様によれば、前記木材シートの層が他の層と重なっていない状態で前記木材処理剤を適用するので、木材処理剤が浸透し易くなって前記木材シートの層に木材処理剤をより均一に適用することができ、ひいては、木材処理剤による特性をより良好に発揮させることができる。
【0025】
第10の態様による製造方法は、前記第1乃至第8のいずれかの態様による部材を製造する製造方法であって、前記木材シートの層が他の層と重なっている状態で前記木材処理剤を適用する段階を備えたものである。
【0026】
この第10の態様によれば、前記木材シートの層が他の層と重なっている状態で前記木材処理剤を適用するので、前記木材シートの層に木材処理剤を前記第9の態様ほど均一に適用することができないが、桂剥きをした木材シートの厚さによっては、この第10の態様によっても十分に均一に前記木材シートの層に木材処理剤を適用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、木材を利用しつつ所定特性を付与することができ、しかも平板積層とは異なる積層構造を採用した部材、及び、前記部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による木材を利用した部材及びその製造方法について、図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施の形態による部材1を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示す部材1を示す概略横断面図である。
【0032】
本実施の形態による部材1は、木材の丸太11(後述する
図3及び
図4を参照)を桂剥き状に切削することで得られた木材シート12(後述する
図3及び
図4を参照)が多層状に巻回された木材シート巻回部2であって、木材処理剤が適用された木材シート巻回部2を備えている。
【0033】
本実施の形態では、丸太11の樹種としては、例えば、スギ、ヒノキ、マツ、イチョウ、イチイ、ヒバ等の針葉樹や、ケヤキ、サクラ、シラカバ、ヤナギ、クリ、ブナ、ナラ、カエデ等の広葉樹を挙げることができる。なお、木材シート巻回部2を構成する木材シート12の全てが必ずしも同じ丸太11から得たものである必要はなく、木材シート巻回部2を構成する一部の木材シート12を得た丸太11と、木材シート巻回部2を構成する他の一部の木材シート12を得た丸太11とは異なっていてもよい。また、木材シート巻回部2を構成する木材シート12の樹種は必ずしも全て同じである必要はなく、木材シート巻回部2を構成する一部の木材シート12の樹種と、木材シート巻回部2を構成する他の一部の木材シート12の樹種とは異なっていてもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、木材シート巻回部2は円筒状をなし、図面には示していないが、木材シート巻回部2において木材シート12が当該円筒の軸線の回りに多層状に巻回されている。本実施の形態では、木材シート12の各層に木材処理剤が含浸されており、各層間が接着剤(図示せず)で接着されている。なお、本発明では、例えば、常圧で含浸したり、真空・加圧含浸装置などを用いて含浸したり、木材シート12の各層に木材処理剤を塗布したりすることによって、木材処理剤を適用してもよい。
【0035】
本実施の形態では、木材シート巻回部2の内側には芯材は配置されておらず、中空となっている。
【0036】
前記木材処理剤としては、例えば、不燃化処理、準不燃化処理、難燃化処理、防虫処理、防蟻処理及び防腐処理のうちの少なくとも1つの処理用の処理剤を挙げることができる。
【0037】
不燃、準不燃、難燃の差は不燃の程度の差であり、難燃、準不燃、不燃の順で理想的な不燃に近づく。不燃化処理用処理剤(不燃剤)、準不燃化処理用処理剤(凖不燃剤)及び難燃化処理用処理剤(難燃剤)としては、例えば、リン酸系やホウ酸系の処理剤を挙げることができる。また、不燃剤として、例えば、特許第3485914号公報、特許第3538194号公報、特許第3631486号公報に開示されているような不燃処理液を用いてよい。
【0038】
防腐・防蟻処理用処理剤(防腐・防蟻剤)としては、例えば、クロム・銅・ひ素化合物系や、銅・アルキルアンモニウム化合物系や、銅・ほう素・アゾール系や、ナフテン酸銅系や、ナフテン酸亜鉛系や、アルキルアンモニウム化合物系や、ほう素・アルキルアンモニウム化合物系や、バーサチック酸亜鉛・ピレスロイド系や、アゾール化合物系の処理剤を挙げることができる。
【0039】
前記接着剤としては、フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア樹脂接着剤、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)からなる接着剤などを挙げることができる。前記木材処理剤が不燃剤、凖不燃剤又は難燃剤である場合には、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)からなる接着剤などの、高温時に有毒ガスが生じない接着剤を用いてもよい。
【0040】
本実施の形態では、丸太11の樹種は、スギ・ヒノキのように中心側の心材と周辺側の辺材との区別が付く種類となっている。図面には示していないが、木材シート巻回部2における中心側部分2Aは、丸太11の心材部分から得られた木材シート12で巻回されたものとなっており、木材シート巻回部2における周辺側部分2Bは、丸太11の辺材部分から得られた木材シート12で巻回されたものとなっている。これにより、丸太11の心材部分から得られた木材シート12が木材シート巻回部2の中心側に配置され、丸太11の辺材部分から得られた木材シート12が木材シート巻回部2の周辺側に配置されている。
【0041】
本実施の形態による部材1を製造する製造方法の一例について、
図3乃至
図7を参照して説明する。
【0042】
図3は、
図1に示す部材1の製造工程の一部の工程を実施する装置を模式的に示す図である。
図4は、
図3中のロータリーレース21による丸太11の桂剥きの様子を模式的に示す概略斜視図である。
図5は、
図3中の巻き取り機26から取り出されたロール31を模式的に示す概略斜視図である。
図6は、
図1に示す部材1の製造工程の他の一部の工程を実施する装置を模式的に示す図である。
図7は、
図6中の巻き取り機44から取り出されたロール51を模式的に示す概略斜視図である。
【0043】
本例による部材1の製造方法では、
図3に示すように丸太11を公知のロータリーレース21にセットし、ロータリーレース21の回転機(図示せず)により丸太11を回転させ、これによりロータリーレース21の切削刃21aを丸太11に当てて、
図3及び
図4に示すように丸太11を桂剥き状に切削して木材シート12を得る。
【0044】
ロータリーレース21により得られた木材シート12は、
図3に示すように、搬送ローラ22及びガイドローラ23により搬送及び案内されて、槽24内に収容された液状の前記木材処理剤25内を通過した後に、巻き取り機26にセットされた芯材27に巻回されて巻き取られる。本例では、木材シート12の層が他の層と重なっていない状態で木材処理剤25内を通過することにより、木材シート12の層が他の層と重なっていない状態で木材処理剤25が含浸されることになる。
【0045】
丸太11の桂剥きが終了して丸太11から得られた木材シート12が芯材27に巻回されて巻き取られ終わると、巻き取り機26からロール31が取り出される。
図5は、前述したように、巻き取り機26から取り出されたロール31を模式的に示す概略斜視図である。ロール31は、芯材27とこれに巻回された木材シート12とからなる。なお、必要に応じて、木材シート12が芯材27に巻回された状態に保持されるように、バンド(図示せず)等で仮留めしておく。
【0046】
巻き取り機26から取り出されたロール31は、自然乾燥、強制乾燥又はその両方にて乾燥される。
【0047】
複数本の丸太11から、このような乾燥後のロール31を複数用意しておく。
【0048】
次に、乾燥後のロール31を
図6中の巻き出し機41にセットし、巻き出し機41の回転機(図示せず)によりロール31を回転させ、これによりロール31から木材シート12を巻き出す。
【0049】
巻き出し機41によりロール31から巻き出された木材シート12は、
図6に示すように、搬送ローラ42により搬送されて、接着剤塗布機43により前記接着剤が塗布された後に、巻き取り機44にセットされた芯材45に巻回されて巻き取られる。本例では、接着剤塗布機43は、木材シート12の一方の面の全面に接着剤を塗布する。接着剤塗布機43の接着剤塗布方法は、例えば、噴射塗布でもよいし、ロールコータによる塗布などでもよい。なお、木材シート12の一方の面の全面には接着剤を塗布する代わりに、木材シート12の芯材45への巻終り付近のみに接着剤を塗布してもよい。
【0050】
そして、ロール31から丸太11の心材部分から得られた木材シート12が全部巻き出されて芯材45に巻回されても、未だ木材シート巻回部2における中心側部分2Aに満たない場合には、ロール31から丸太11の心材部分から得られた木材シート12が全部巻き出された所で、ロール31の木材シート12を切断し、一旦、木材シート12の芯材45への巻回を中断する。その後、当該ロール31を、心材部分から得られた木材シート12が残っている別のロール31に交換し、心材部分から得られた木材シート12が中心側部分2Aの途中まで芯材45に巻回されたものに対して、交換後のロール31から巻き出された心材部分から得られた木材シート12を更に巻回していく。
【0051】
そして、ロール31から巻き出されて芯材45に巻回された丸太11の心材部分から得られた木材シート12が木材シート巻回部2における中心側部分2Aを満たすと、そこでロール31の木材シート12を切断し、一旦、木材シート12の芯材45への巻回を中断する。
【0052】
その後、当該ロール31を、丸太11の心材部分から得られた木材シート12が取り除かれ丸太11の辺材部分から得られた木材シート12が残っている別のロール31に交換し、心材部分から得られた木材シート12が中心側部分2Aの最後まで芯材45に巻回されたものに対して、交換後のロール31から巻き出された辺材部分から得られた木材シート12を更に巻回していく。
【0053】
そして、ロール31から丸太11の辺材部分から得られた木材シート12が全部巻き出されて芯材45に巻回されても、未だ木材シート巻回部2における周辺側部分2Bに満たない場合には、ロール31から丸太11の辺材部分から得られた木材シート12が全部巻き出された所で、一旦、木材シート12の芯材45への巻回を中断する。その後、当該ロール31を、丸太11の心材部分から得られた木材シート12が取り除かれ丸太11の辺材部分から得られた木材シート12が残っている別のロール31に交換し、辺材部分から得られた木材シート12が周辺側部分2Bの途中まで芯材45に巻回されたものに対して、交換後のロール31から巻き出された辺材部分から得られた木材シート12を更に巻回していく。
【0054】
そして、ロール31から巻き出されて芯材45に巻回された丸太11の辺材部分から得られた木材シート12が木材シート巻回部2における周辺側部分2Bを満たすと、そこでロール31の木材シート12を切断し、木材シート12の芯材45への巻回を終了する。
【0055】
その後、巻き取り機44からロール51が取り出される。
図7は、前述したように、巻き取り機44から取り出されたロール51を模式的に示す概略斜視図である。ロール51は、芯材45とこれに巻回された木材シート12とからなる。なお、必要に応じて、木材シート12が芯材27に巻回された状態に保持されるように、バンド(図示せず)等で仮留めしておく。
【0056】
巻き取り機44から取り出されたロール51は、前記接着剤による接着が、ロール51の形が変形しない程度に進行するまで、自然乾燥、強制乾燥又はその両方にて乾燥される。前記接着剤による接着が、ロール51の形が変形しない程度に進行したら、ロール51から芯材45を引き抜く。芯材45の引き抜き後のロール51(木材シート巻回部2に相当)を自然乾燥、強制乾燥又はその両方にて乾燥させる。これにより、本実施の形態による部材1が完成する。なお、必要に応じて、芯材45の引き抜きの前又は後に、ロール51(木材シート巻回部2に相当)の外周面に研磨(サンダー)加工及び/又は旋削(レース)加工を施すことで、表面仕上げ及び径のサイズ調整を行ってもよい。また、必要に応じて、長さ方向のサイズ調整を行うべく所定箇所で切断してもよい。
【0057】
前述した部材1の製造方法において、例えば、
図3に示す工程に代えて、
図8及び
図9に示す工程を行ってもよい。
図8は、
図1に示す部材1の製造工程の一部の代替工程を実施する装置を模式的に示す図である。
図9は、
図1に示す部材1の製造工程の他の一部の代替工程を実施する装置を模式的に示す図である。
図8及び
図9において、
図3中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0058】
この製造方法では、
図8に示すように丸太11をロータリーレース21にセットし、ロータリーレース21の回転機(図示せず)により丸太11を回転させ、これによりロータリーレース21の切削刃21aを丸太11に当てて、
図8及び
図4に示すように丸太11を桂剥き状に切削して木材シート12を得る。
【0059】
ロータリーレース21により得られた木材シート12は、
図8に示すように、搬送ローラ22により搬送されて、巻き取り機26にセットされた芯材27に巻回されて巻き取られる。
【0060】
丸太11の桂剥きが終了して丸太11から得られた木材シート12が芯材27に巻回されて巻き取られ終わると、巻き取り機26からロール32が取り出される。なお、必要に応じて、木材シート12が芯材27に巻回された状態に保持されるように、バンド(図示せず)等で仮留めしておく。複数本の丸太11から、このようなロール32を複数用意しておく。
【0061】
次に、
図9に示すように、複数のロール32を、槽24内に収容された液状の前記木材処理剤25に浸漬させる。これにより、木材シート12の層が他の層と重なっている状態で木材処理剤25が含浸されることになる。なお、ロール32に常圧で木材処理剤25を含浸させる代わりに、ロール32に真空・加圧含浸装置などを用いて木材処理剤25を含浸させてもよい。
【0062】
その後、ロール32を木材処理剤25内から取り出して、自然乾燥、強制乾燥又はその両方にて乾燥させる。その後、この製造方法では、前述した製造方法と同じく
図6以降の工程を行うことで、
図1に示す部材1が完成する。
【0063】
本実施の形態による部材1では、木材シート12が多層状に巻回され木材処理剤25が適用された木材シート巻回部2を備えているので、木材を利用しつつ木材処理剤25による所定特性を付与することができ、しかも平板積層とは異なる巻回の積層構造を採用した部材を得ることができる。
【0064】
なお、本実施の形態による部材1の用途は、柱や梁などの建材や、電線用又は導光線用の保護管などを挙げることができるが、これらの用途に限らない。
【0065】
また、本実施の形態による部材1では、木材シート巻回部2における中心側部分2Aは、丸太11の心材部分から得られた木材シート12で巻回されたものとなっており、木材シート巻回部2における周辺側部分2Bは、丸太11の辺材部分から得られた木材シート12で巻回されたものとなっているので、辺材は心材に比べて液状の木材処理剤25が浸透し易いことから、木材シート巻回部2の周辺側が木材シート巻回部2の中心側に比べて木材処理剤25による所定特性(例えば、不燃化等)をより良好に発揮させることができる。したがって、本実施の形態によれば、心材部分から得られた木材シート12を木材シート巻回部2の周辺側に配置し辺材部分から得られた木材シート12を木材シート巻回部2の中心側に配置する場合に比べて、木材シート巻回部2全体として、木材処理剤25による特性をより良好に発揮させることができる。もっとも、本発明では、木材シート巻回部2において、心材部分から得られた木材シート12及び辺材部分から得られた木材シート12を前述したように配置にすることに限定されるものではない。
【0066】
図3に示す工程を採用する前述した部材1の製造方法では、木材シート12の層が他の層と重なっていない状態で木材処理剤25が含浸されるので、木材シート12の層が他の層と重なっている状態で木材処理剤25が含浸される製造方法(
図8及び
図9に示す工程を採用する前述した部材1の製造方法)に比べて、木材処理剤25が浸透し易くなって木材シート12の層に木材処理剤25をより均一に適用することができ、ひいては、木材処理剤25による特性をより良好に発揮させることができる。
【0068】
図10は、本発明の第2の実施の形態による部材61を示す概略斜視図であり、
図1に対応している。
図11は、
図10に示す部材61を示す概略横断面図であり、
図2に対応している。
図10及び
図11において、
図1及び
図2並びに
図6及び
図7中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0069】
本実施の形態による部材61が前記第1の実施の形態による部材1と異なる所は、前記第1の実施の形態による部材1では、木材シート巻回部2の内側には芯材は配置されておらずに中空となっているのに対し、本実施の形態による部材61では、木材シート巻回部2の内側に円柱状の芯材45が配置されている点である。
【0070】
芯材45の材質として、例えば、鋼やアルミニウム等の金属やガラス繊維や炭素繊維や樹脂などを挙げることができる。
【0071】
本実施の形態による部材61は、基本的には、前記第1の実施の形態による部材1と同様の製造方法によって製造することができる。ただし、本実施の形態による部材61を製造する場合には、例えば、
図6及び
図7中の芯材45として円柱状の部材を用い、ロール51から芯材45を引き抜かずに芯材45を残せばよい。このとき、芯材45が木材シート巻回部2から長さ方向に突出しないように、芯材45を切断しその長さを調整してもよいし、芯材45を木材シート巻回部2から長さ方向に突出したままにしてもよい。後者の場合には、木材シート巻回部2からの芯材45の突出部分は、例えば、他の部材とのジョイントに用いてもよい。
【0072】
本実施の形態によっても前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。また、本実施の形態による部材61は、芯材45を有しているので、前記第1の実施の形態による部材1に比べて強度を高めることができる。
【0074】
図12は、本発明の第3の実施の形態による部材71を示す概略斜視図であり、
図10に対応している。
図13は、
図12に示す部材71を示す概略横断面図であり、
図11対応している。
図12及び
図13において、
図10及び
図11中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0075】
本実施の形態による部材71が前記第2の態様による部材61と異なる所は、前記第2の実施の形態による部材61では、芯材45が円柱状であるのに対し、芯材45が円筒状である点である。
【0076】
本実施の形態による部材71も、前記第2の実施の形態による部材61と同様の製造方法によって製造することができる。
【0077】
本実施の形態によっても前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0079】
図14は、本発明の第4の実施の形態による部材81を示す概略斜視図であり、
図1に対応している。
図15は、
図14に示す部材81を示す概略横断面図であり、
図2に対応している。
図14及び
図15において、
図1及び
図2並びに
図6及び
図7中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0080】
本実施の形態による部材81が前記第1の実施の形態による部材1と異なる所は、木材シート巻回部2の外周を覆うカバー部材82であって、木材シート巻回部2の外周を内側に向けて押しつけるバネ性を有するカバー部材82が、追加されている点である。
【0081】
本実施の形態では、カバー部材82は、横断面でC状をなすように構成され、木材シート巻回部2の外周のほぼ全体を覆っている。カバー部材82の材質として、例えば、鋼やアルミニウム等の金属やガラス繊維や炭素繊維や樹脂などを挙げることができる。
【0082】
本実施の形態による部材81の製造時には、カバー部材82は、そのバネ性に抗して押し広げて、木材シート巻回部2の外周を覆うように装着すればよい。
【0083】
本実施の形態によっても前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。また、本実施の形態による部材81は、カバー部材82を有しているので、前記第1の実施の形態による部材1に比べて強度を高めることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、カバー部材82が木材シート巻回部2の巻回状態を保持する機能を持つので、木材シート巻回部2において木材シート12の互いに重なる少なくとも一部分同士を必ずしも接着剤で接着する必要はない。
【0086】
図16は、本発明の第5の実施の形態による部材91を示す概略斜視図であり、
図1に対応している。
図16において、
図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0087】
本実施の形態による部材91が前記第1の実施の形態による部材1と異なる所は、本実施の形態による部材91では、木材シート巻回部2において木材シートの互いに重なる層間は接着剤で接着されておらず、木材シート巻回部2の巻回状態が保持されるように木材シート巻回部2を留める留め具として、Cリング状の留め具92が複数設けられている点である。
【0088】
留め具92は、前記第4の実施の形態による部材81のカバー部材82を長さ方向を短く構成したものに相当している。
【0090】
図17は、本発明の第6の実施の形態による部材101を示す概略斜視図であり、
図1に対応している。
図17において、
図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0091】
本実施の形態による部材101が前記第1の実施の形態による部材1と異なる所は、本実施の形態による部材101では、木材シート巻回部2において木材シートの互いに重なる層間は接着剤で接着されておらず、木材シート巻回部2の巻回状態が保持されるように木材シート巻回部2を留める留め具として、ステープラの針102が、木材シート巻回部2において、木材シート12の巻終り端12aの付近に複数設けられている点である。
【0093】
図18は、本発明の第7の実施の形態による部材111を示す概略斜視図であり、
図1に対応している。
図18において、
図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0094】
本実施の形態による部材111が前記第1の実施の形態による部材1と異なる所は、本実施の形態による部材111では、木材シート巻回部2において木材シートの互いに重なる層間は接着剤で接着されておらず、木材シート巻回部2の巻回状態が保持されるように木材シート巻回部2を留める留め具として、木ネジ112が、木材シート巻回部2において、木材シート12の巻終り端12aの付近に複数設けられている点である。
【0095】
なお、前記第4乃至第7の実施の形態による部材81,91,101,111において、前記第2の実施の形態による部材61又は前記第3の実施の形態による部材71と同様に、木材シート巻回部2の内側に円柱状又は円筒状の芯材45を配置してもよい。
【0097】
図19は、本発明の第8の実施の形態による部材121を示す概略斜視図であり、
図12及び
図14に対応している。
図20は、
図19に示す部材121を示す概略横断面図であり、
図13及び
図15に対応している。
図19及び
図20において、
図12乃至
図15中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0098】
本発明では、前述した第1乃至第7の実施の形態並びにそれらの変形例において、円筒状や円柱状の形状を、四角筒状や四角柱状の形状、あるいは、三角筒状や三角柱状の形状などに置き換えてもよい。本実施の形態による部材121は、そのような形状置き換えの一例を示している。本実施の形態による部材121は、
図14及び
図15に示す前記第4の実施の形態による部材81において
図12及び
図13に示す前記第3の実施の形態による部材71と同様に木材シート巻回部2の内側に円筒状の芯材45を配置したものにおいて、円筒状や円柱状の形状を四角筒状や四角柱状の形状に置き換えたものに相当している。
【0099】
以上、本発明の各実施の形態及びそれらの変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
例えば、本発明では、いずれかの実施の形態による前記部材を複数用意し、縦接ぎ加工によって、これらの複数の部材を長さ方向に接合してもよい。
【0101】
また、本発明では、いずれかの実施の形態による前記部材の外面に、任意の化粧シートを貼り付けてもよい。
【解決手段】部材1は、木材の丸太を桂剥き状に切削することで得られた木材シートが多層状に巻回された木材シート巻回部2であって、木材処理剤が適用された木材シート巻回部2を備える。部材1は木材シート巻回部2を備えているので、木材を利用しつつ木材処理剤による所定特性を付与することができ、しかも平板積層とは異なる巻回の積層構造を採用した部材1を得ることができる。