特許第6377219号(P6377219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377219医療用アブレーションカテーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377219
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】医療用アブレーションカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20180813BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61M25/00 500
   A61M25/00 540
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-138561(P2017-138561)
(22)【出願日】2017年7月14日
(62)【分割の表示】特願2013-229767(P2013-229767)の分割
【原出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-202336(P2017-202336A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】岸田 学
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−515544(JP,A)
【文献】 特開平10−174688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行して配された複数の線材と、前記線材に各々設けられた焼灼部と、前記線材を収容する筒状部材とを有し、前記線材は、前記筒状部材内に収容可能であるとともに前記筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、かつ前記筒状部材の遠位側に進出している部分のうち少なくとも一部は、前記筒状部材の外径よりも外側に張り出している医療用アブレーションカテーテルの製造方法であって、
前記線材の第1の所定位置において、前記線材を第1の方向に凸となるように曲げる工程と、前記第1の所定位置とは異なる第2の所定位置において、前記線材を第1の方向とは異なる第2の方向に凸となるように曲げる工程とを含む第1の付形工程と、
前記第1の付形工程の後に、前記線材の少なくとも一部を前記筒状部材の外径よりも外側に張り出す程度に曲げる第2の付形工程と、
を含み、
前記第1の付形工程の後、前記第2の付形工程の前に、前記第1の付形工程により曲げられた前記線材を伸ばすことにより、一旦付された凸形状を緩和させる工程を有することを特徴とする医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記凸形状を緩和させる工程において、前記線材を二本の金属棒で挟んで扱く請求項に記載の医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記凸形状を緩和させる工程において、前記線材を45℃以上180℃以下に加熱しながら前記線材を伸ばす請求項またはに記載の医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項4】
同一の線材において前記第1の所定位置、および前記第2の所定位置が、それぞれ複数存在する請求項1〜のいずれかに記載の医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項5】
並行して配された複数の線材と、前記線材に各々設けられた焼灼部と、前記線材を収容する筒状部材とを有し、前記線材は、前記筒状部材内に収容可能であるとともに前記筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、かつ前記筒状部材の遠位側に進出している部分のうち少なくとも一部は、前記筒状部材の外径よりも外側に張り出している医療用アブレーションカテーテルの製造方法であって、
前記線材の第1の所定位置において、前記線材を第1の方向に凸となるように曲げる工程と、前記第1の所定位置とは異なる第2の所定位置において、前記線材を第1の方向とは異なる第2の方向に凸となるように曲げる工程とを含む第1の付形工程と、
前記第1の付形工程の後に、前記線材の少なくとも一部を前記筒状部材の外径よりも外側に張り出す程度に曲げる第2の付形工程と、
を含み、
同一の線材において前記第1の所定位置、および前記第2の所定位置が、それぞれ複数存在することを特徴とする医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項6】
前記第1の方向と前記第2の方向とは互いに逆向きの方向である請求項1〜のいずれかに記載の医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項7】
前記第の付形工程において、前記線材に前記筒状部材の軸方向と平行となる部分を設ける請求項1〜6のいずれかに記載の医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【請求項8】
前記第1の付形工程において、前記線材を周期的な波形状に曲げる請求項1〜7のいずれかに記載の医療用アブレーションカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のアブレーションカテーテル(以下、単に「アブレーションカテーテル」或いは「カテーテル」と記載する場合がある)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高血圧症のうち、治療抵抗(難治)性高血圧症は、一般的には3剤以上の降圧剤を使用しても目標血圧まで下がらない高血圧症のことであり、脳卒中、心臓発作、心不全、腎疾患などの心血管系リスクの増加と関連するため、非常に危険な慢性疾患である。高血圧患者のおよそ10分の1(全世界で約1億人)が治療抵抗性高血圧であると言われている。
【0003】
近年、治療抵抗性高血圧の治療法として腎動脈アブレーションが有効であることが示されつつある。腎動脈アブレーションとは、腎動脈の周囲に存在する腎交感神経を焼灼により遮断し、血圧を下げる手技のことである。この方法は、例えばマイクロ波を発生する電極(焼灼部)を備えたアブレーションカテーテルを腎動脈に挿入し、腎動脈の内壁面の一部にマイクロ波を集中的に照射することにより、組織の一部を焼灼するものである。腎動脈を網状に走っている腎交感神経細胞が焼灼されると、交感神経が遮断される。アブレーションカテーテルを用いた手技においては、焼灼される部位が腎動脈の内壁面において離間的に、かつ螺旋(らせん)を描くように、施術する。焼灼される部位(被焼灼部位)が螺旋状に散在していれば、各被焼灼部位が腎動脈の流れ方向の異なる位置に存在しているため、被焼灼部位が万一腫脹しても、腫脹した部位どうしが重ならないため、腎動脈が狭窄を起こしにくくなる。
【0004】
しかしながら、このような操作には熟練の技術を要し、手技時間も長くなる。特許文献1や特許文献2には、並行する複数のワイヤー(細線)をバスケット状に配置したバスケットタイプのアブレーションカテーテルが記載されている。これらのアブレーションカテーテルでは、各ワイヤーに取り付けられた各焼灼部が、アブレーションカテーテルの軸方向の異なる位置に配置されている。したがって、設計上はアブレーションカテーテルを腎動脈に挿入することにより焼灼素子が腎動脈の内壁に密着し、かつ、腎動脈の流れ方向の異なる部位を一度に焼灼できるので、カテーテル操作が容易となり、手技時間も短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/077283号
【特許文献2】米国特許第8454594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アブレーションカテーテルが実際に腎動脈内に挿入される際には、各焼灼部は必ずしも設計通りの位置に配置されていないことがあり、腎動脈内において焼灼部が部分的に集中してしまう場合がある。このようになると、腎動脈内の焼灼部位が腫脹した場合に、腫脹部位どうしが重なり、腎動脈が狭窄を起こしてしまう可能性もある。
したがって、本発明は、焼灼部の集中が起こりにくい医療用アブレーションカテーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは、アブレーションカテーテルの動作について徹底して検証を行った。
アブレーションカテーテルは、特許文献1および特許文献2にも記載されているように、管状のシース部材と、バスケット状に形成された複数のワイヤー(線材)を有している。ワイヤーがバスケット状に広がって形成されているのは、焼灼部を腎動脈の内壁に確実に密着させるためである。一方、ワイヤーを腎動脈内で移動させる際には、ワイヤーはシース部材内の狭い空間にコンパクトに納められる。本発明者らは、アブレーションカテーテルの動作検証を行う中で、ワイヤーがシース部材内に引き込まれる際、ある一つのワイヤーは、シース部材の出口周縁部の内壁に当接しながらアブレーションカテーテルの遠位側からみて右回りに倒れながらシース部材内に折りたたまれて行き、また別のワイヤーは、左回りに倒れながら折りたたまれて行くこと、すなわち、右回りのワイヤーと左回りのワイヤーが混在するために、各ワイヤーはシース部材内で左右不規則に折りたたまれていることを見いだした。各ワイヤーがシース部材の内部で不規則に収納されていると、ワイヤーがシース部材の遠位側の外部に進出して拡張する際にも不規則な状態が残ってしまい、焼灼部が設計通りに配置されない。
【0008】
本発明者らは、さらに検討を重ねる中で、ワイヤーがシース部材内に引き込まれる際、倒れていく方向に右回りまたは左回りという違いがあるのは、個々のワイヤーの微妙な形状のバラツキや、各ワイヤーへの力のかかりかたの微妙な相違によって、たまたま右回りに倒れていくもの、たまたま左回りに倒れていくものとに分かれるためであると考えた。そこで本発明者らは、各ワイヤーの形状に微少な相違があったり、各ワイヤーへの力のかかり具合に多少のバラツキがあっても、ワイヤーがシース部材内に引き込まれる際、全てのワイヤーが同じ方向(例えば右回り)に倒れながらシース部材内に折りたたまれるための構成について検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記課題を解決し得た本発明の第1の医療用アブレーションカテーテルは、
並行して配された複数の線材と、
前記線材に各々設けられた焼灼部と、
前記線材を収容する筒状部材と、
を有し、前記線材は、前記筒状部材内に収容可能であるとともに前記筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、前記線材は、前記筒状部材外の遠位側に進出している部分の少なくとも一部区間において前記筒状部材の軸方向に対して周回しており、かつ、全ての前記線材の周回方向が同じものである。
【0010】
なお念のため、線材が「周回している」というのは、線材の動的状態を指すものではなく、線材の静止形状を指すものであり、線材の一部区間において、線材の近位側から遠位側に向かうにつれて、筒状部材の軸を中心として周方向に変位している状態を記述したものである。
【0011】
本発明では、全ての線材を一部区間において同じ方向に周回させているため、線材が筒状部材(シース部材)内に引き込まれる際、筒状部材の出口周縁部の内壁に対して同じ角度で当接するため、全ての線材が同じ周方向(例えば右回り)に倒れながら筒状部材内に折りたたまれて行く。したがって、筒状部材内における焼灼部の配置の不均一さの問題は解消されており、そのため、細線が筒状部材の外部に進出して拡張する際にも不規則な状態とはならず、各焼灼部が設計通りに配置されやすくなる。
【0012】
上記課題を解決し得た本発明の第2の医療用アブレーションカテーテルは、
並行して配された複数の線材と、
前記線材に各々設けられた焼灼部と、
前記線材を収容する筒状部材と、
を有し、前記線材は、前記筒状部材内に収容可能であるとともに前記筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、
前記線材は、複数の細線材を撚り合わせて形成されたものであり、全ての線材において撚りの方向は、同じである。
【0013】
複数の細線材を撚り合わせて構成された線材は、緩やかな螺旋を描くように捻れた形状を呈する傾向にある。線材が螺旋を巻く方向が右回りとなるか左回りとなるかは、細線材の撚りの向きが右回りであるか左回りであるかに依存する。したがって、細線材の撚りの向きを右回りか左回りかのどちらかに統一すれば、すなわち、全ての線材において撚りの方向を同じ向きとすれば、各線材が螺旋を巻く方向も、右回りか左回りかのどちらか一種となる。そうすると、線材が筒状部材内に引き込まれる際、筒状部材の出口周縁部の内壁に対して同じ角度で当接するため、全ての線材が同じ方向(例えば右回り)に倒れながら筒状部材内に折りたたまれて行く。したがって、線材が筒状部材内に引き込まれる際の焼灼部の配置の不均一さの問題は解消されるものと考えられる。そのため、細線が筒状部材の外部に進出して拡張する際にも不規則な状態とはならず、各焼灼部が設計通りに配置されやすくなる。
【0014】
上記課題を解決し得た本発明の第3の医療用アブレーションカテーテルは、
並行して配された複数の線材と、
前記線材に各々設けられた焼灼部と、
前記線材を収容する筒状部材と、
を有し、前記線材は、前記筒状部材内に収容可能であるとともに前記筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、前記線材は、前記筒状部材外の遠位側に進出している部分の少なくとも一部区間において前記筒状部材の軸方向に対して周回しており、かつ、全ての前記線材の周回方向が同じであり、
前記線材は、複数の細線材を撚り合わせて形成されたものであり、全ての線材において撚りの方向は、同じである。
【0015】
本発明の第3の医療用アブレーションカテーテルは、上記第1の医療用アブレーションカテーテルの特徴および上記第2の医療用アブレーションカテーテルの特徴を有しており、第1の医療用アブレーションカテーテルおよび第2の医療用アブレーションカテーテルと同様に線材が筒状部材内に引き込まれる際の焼灼部の配置の不均一さの問題が解消される。
【0016】
上記の各医療用アブレーションカテーテルにおいて、前記線材は、前記筒状部材の遠位側に進出している部分のうち少なくとも一部は、前記筒状部材の外径よりも外側に張り出している構成とすることができる。
【0017】
上記の各医療用アブレーションカテーテルにおいて、前記線材に各々設けられた前記焼灼部は、それぞれ、前記筒状部材の軸方向の異なる位置に配置されていることが好ましい。
【0018】
上記の各医療用アブレーションカテーテルにおいて、前記線材は、前記筒状部材の外径よりも外側に張り出す距離が極大となる頂点を少なくとも2箇所有しており、第1の頂点には第1の焼灼部、第2の頂点には第2の焼灼部がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0019】
上記の各医療用アブレーションカテーテルにおいて、同一の線材に設けられた第1の焼灼部と第2の焼灼部とは、前記筒状部材の軸方向に対して周回する方向に所定角度分だけ異なる位置に設けられていることが好ましい。
【0020】
上記の各医療用アブレーションカテーテルにおいて、各々の線材に設けられた第1の焼灼部のうち、最も遠位側にあるものと最も近位側にあるものとの間の距離と、各々の線材に設けられた第2の焼灼部のうち、最も遠位側にあるものと最も近位側にあるものとの間の距離が異なるものである態様を実施することができる。
【0021】
医療用アブレーションカテーテルにおいて、用いられる線材の弾性が高いことが望ましい。上記のように、線材に設けられた焼灼部を腎動脈の内壁に確実に密着させるためである。弾性が高められた線材を作製するために、発明者らは様々な試行錯誤を行った結果、次の方法により医療用アブレーションカテーテルを製造した場合に線材の弾性が高まることを見いだした。
【0022】
すなわち、弾性が高められた線材を有する医療用アブレーションカテーテルの製造方法は、並行して配された複数の線材と、前記線材に各々設けられた焼灼部と、前記線材を収容する筒状部材とを有し、前記線材は、前記筒状部材内に収容可能であるとともに前記筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、かつ前記筒状部材の遠位側に進出している部分のうち少なくとも一部は、前記筒状部材の外径よりも外側に張り出している医療用アブレーションカテーテルの製造方法であって、
前記線材の第1の所定位置において、前記線材を第1の方向に凸となるように曲げる工程と、前記第1の所定位置とは異なる第2の所定位置において、前記線材を第1の方向とは異なる第2の方向に凸となるように曲げる工程とを含む第1の付形工程と、
前記第1の付形工程の後に、前記線材の少なくとも一部を前記筒状部材の外径よりも外側に張り出す程度に曲げる第2の付形工程と、を含むものである。
【0023】
上記医療用アブレーションカテーテルの製造方法において、前記第1の付形工程の後、前記第2の付形工程の前に、前記第1の付形工程により曲げられた線材を伸ばすことにより、一旦付された凸形状を緩和させる工程を加えることが望ましい。
【0024】
上記医療用アブレーションカテーテルの製造方法において、前記第1の方向と前記第2の方向とを互いに逆向きの方向とすることが望ましい。
【0025】
上記医療用アブレーションカテーテルの製造方法において、同一の線材において前記第1の所定位置、および前記第2の所定位置が、それぞれ複数存在していることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、(1)医療用アブレーションカテーテルを構成する線材が、筒状部材の軸方向に対して周回しており、かつ、全ての線材の周回方向が同じであることにより、または、(2)医療用アブレーションカテーテルを構成する線材が、複数の細線材を撚り合わせて形成されたものであり、全ての線材において撚りの方向が同じであることにより、
細線が筒状部材の外部に進出して拡張する際に不規則な状態とはならず、各焼灼部が設計通りに配置されやすくなるという優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルの斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材の円筒投影図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルを遠位側からみた側面図である。
図4図4(a)は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材の一部斜視図であり、図4(b)は、本発明の実施の形態2にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材の一部斜視図であり、図4(c)は、本発明の実施の形態2にかかる他の医療用アブレーションカテーテルの線材の一部斜視図である。
図5図5は、本発明の実施の形態3にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材の円筒投影図である。
図6図6は、本発明の実施の形態4にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材の斜視図である。
図7図7(a)は、本発明の実施の形態5にかかる医療用アブレーションカテーテルの斜視図であり、図7(b)は、同医療用アブレーションカテーテルの線材毎の側面図である。
図8図8(a)〜(c)は、本発明の実施の形態6にかかる医療用アブレーションカテーテルの一部製造工程を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態6にかかる医療用アブレーションカテーテルの一部製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0029】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルの斜視図である。図1において、医療用アブレーションカテーテル1は、並行して配された複数の線材2a〜2dと、線材2a〜2dに各々設けられた焼灼部3a〜3dと、線材2a〜2dを収容する筒状部材4とを有している。線材2a〜2dは、筒状部材4内に収容可能であるとともに筒状部材4外の遠位側(図1の左側)に進出可能に構成されている。なお、線材2a〜2dは、遠位側において遠位側結束体5によって結束されており、また近位側において近位側結束体6によって結束されている。結束の形態は、熱溶着、接着等が好ましい。
【0030】
遠位側結束体5にはX線不透過マーカー9が取り付けられている。手技中に、医療用アブレーションカテーテルの先端位置を把握するためである。遠位側結束体5自体にX線不透過材料が取り付けられていれば、X線不透過マーカー9を省略することもできるため、医療用アブレーションカテーテルを小径化することができる。
【0031】
焼灼部3a〜3dは、導線(図示せず)によって給電されている。導線および線材2a〜2dは、腎動脈中の血液等と接しないようにするため、被覆チューブ(図示せず)によって覆われていることが望ましい。導線が、例えばエナメル被覆など、十分な絶縁対策が取られたものであれば、被覆チューブを用いなくても差し支えない。
【0032】
筒状部材4外の遠位側に進出している部分の少なくとも一部区間においては、筒状部材4の軸方向(図1の一点鎖線)に対して周回しており、かつ、全ての線材2a〜2dの周回方向は同じである。「周回」の意味が動的なものではないことについては既に述べているが、図2および図3を用いてさらに詳しく説明する。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材2a〜2dを図1に示した円筒投影面7に投影した円筒投影図である。図2の左側が図1と同様に医療用アブレーションカテーテルの遠位側である。また、図1の丸囲みのA(以下、「丸A」と記載する。丸囲みのBについても同じ。)の位置が図2の丸Aの位置に相当し、図1の丸Bの位置が図2の丸Bの位置に相当する。また、図1の一点鎖線を中心として周回する方向Xは、図2の図面上方から下方へ向かう方向Xに相当する。例えば線材2aに着目してみると、線材2aは、近位側の丸Bから出発した後、少なくとも区間αにおいては、方向Xとは反対向きに円筒投影面7を変位している。すなわち、筒状部材4の軸方向(図1の一点鎖線)に対して周回している。また、図2に示すように他の線材2b〜2dについても線材2aと同様に方向Xとは反対向きに周回している。このように線材2a〜2dは、区間αにおいては、筒状部材4の軸方向に対して周回しており、かつ、全ての線材2a〜2dの周回方向は同じである。区間αは、遠位側の丸Aから出発し所定の距離にわたるものであってもよい。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルを遠位側(図1のY方向)からみた側面図である。図3からもわかるように、全ての線材2a〜2dは、近位側(図面奥側)を出発した後に、同じ方向に周回し始め、それぞれ焼灼部3a〜3dが設けられている場所を経由して、最後に遠位側結束体5に集結している。このように線材2a〜2dは、少なくとも一部の区間においては、筒状部材4の軸方向に対して周回しており、かつ、全ての線材2a〜2dの周回方向は同じである。
【0035】
線材2a〜2dが以上のように形成されているため、線材が筒状部材4内に引き込まれる際には、全ての線材2a〜2dがX方向に倒れながら筒状部材4内に折りたたまれて行く。したがって、筒状部材4内における焼灼部3a〜3dの配置に不均一さはなく、そのため、線材2a〜2dが筒状部材4の外部に進出して拡張する際にも、各焼灼部3a〜3dが設計通りに配置されやすくなる。
【0036】
本実施の形態において用いられる焼灼部3a〜3dと導線(図示せず)と接続形態は、溶接であることが好ましい。焼灼部3a〜3dは、被覆チューブ(図示せず)上に固定されていることが安定的に体内の電位を測定するために好ましく、固定の方法は接着、かしめ、焼灼部3a〜3dの遠位側および近位側の両端への樹脂による堤防固定等が好ましい。焼灼部3a〜3dに接続された導線は被覆チューブの内側に配置されていることが好ましい。
【0037】
本実施の形態において用いられる焼灼部3a〜3dの材料としては、通電性があり、生体適合性がある材料であれば、特に問わないが、例えば、プラチナイリジウム合金、ステンレス材等を用いることができる。焼灼部3a〜3dの焼灼方式に特に制限はなく、例えばバイポーラ方式(一方電極を線材2aに設置し、他方電極を体外に設置する方式)、モノポーラ方式(一方電極および他方電極の双方を線材2aに設置する方式)などを用いることができる。また、焼灼のためのエネルギー発生源についても、周波数に特に制限はなく、高周波、マイクロ波など、焼灼ができるものであれば問題ない。
【0038】
本実施の形態において用いられる線材2a〜2dの材料としては、通電性があり、生体適合性がある材料であれば、特に問わないが、例えば、プラチナイリジウム合金、ステンレス鋼材、タンタル、コバルト合金、ナイチノール(ニッケルチタン合金)を用いることができる。X線透視化において造影可能である点からはX線不透過性を有する材料、たとえば、プラチナ、タングステン等が好ましい。
【0039】
本実施の形態においては、4本の線材2a〜2dを使用した例について説明したが、本
数に特に制限はない。治療効果、筒状部材4への収納性、医療用アブレーションカテーテルの生産性を考慮すると、線材の本数を4本または5本にすることが好ましい。
【0040】
本実施の形態において用いられるX線不透過マーカー9の材料は、特に限定されるものではなく、X線を透過させないことで、術者による確認を可能にする材料であれば、金属でも樹脂でも無機物であっても使用できる。また、X線不透過マーカー9の個数も特に限定されない。
【0041】
本実施の形態においては、一本の線材2aに対して一つの焼灼部3aが設けられている例について説明したが、一本の線材2aに対して複数の焼灼部を設けても良い。
【0042】
本実施の形態においては、線材2a〜2dが遠位側結束体5および近位側結束体6によって結束されている例について示した。これらの結束体により、線材が製造中に乱れることを防止できる。結束体と被覆チューブとを連結する構成とすれば、熱溶着による結束体への固定が可能であり、アブレーションカテーテルの製造工程が容易となる点で好ましいが、導線の配線が困難となる場合には、被覆チューブを遠位側結束体5、近位側結束体6に挿入する部分を剥いで固定することも可能である。
【0043】
<医療用アブレーションカテーテルの使用例>
以上のように構成されたアブレーションカテーテル1を用いた血管焼灼術では、まず、筒状部材4が患者の血管内に挿入される。筒状部材4の先端部には屈曲機構(図示せず)が付与され、血管が枝分かれしている地点において、目的の血管に容易に挿入可能となるようにしてもよい。筒状部材4は、最終的には焼灼目的の部位に到達する。
【0044】
次に、線材2a〜2dを折りたたんで、筒状部材4の手元側(近位側)から筒状部材4の内腔に挿入する。線材2a〜2dは手で折りたたむことが簡便で好ましいが、自動折りたたみ機構が付与されて、折りたたみ機構の作動により折りたたまれ、筒状部材4に挿入されても良い。ただし、本発明によれば、線材2a〜2dが基本的にはひとりでに同じ周方向に周回しながら折りたたまれていくため、自動折りたたみ機構を用いなくても良いという利点がある。
【0045】
また、筒状部材4への挿入をより容易にするために、線材2a〜2dの表面に親水性コーティングを塗布しても良い。この際、焼灼部3a〜3dの表面については、血液存在下において、通電することが可能であれば、コーティングを塗布した方が、筒状部材4および血管内への挿入の観点から好ましい。通電することが不可な場合は、焼灼部3a〜3dの表面のコーティングを除去するか、焼灼部3a〜3dの表面にはコーティングを塗布しないことが好ましい。
【0046】
焼灼部3a〜3dは筒状部材4の遠位側の出口開口部から、血管内に出て、目的病変部に到達する。焼灼部3a〜3dは出口開口部から血管内に出る際、線材2a〜2dのばね性(弾性)により反発して外方に拡がり、挿入前の元の形状に戻る。自動折りたたみ機構が付与された場合は、折りたたみ機構の解除により元の形状に戻る。このばね性は被覆チューブおよび線材2a〜2dの少なくとも一方に存在していればよく、使用される状況において自由に選択できる。線材2a〜2dの材料についてはばね性があれば特に問わないが、ニッケルチタン合金を用いれば形状復元性が良い。また、安価で加工性を考慮するとステンレス材でも構わない。また、導線の漏れ電流によるショートを防止する点で、被覆チューブにはPEEK材を用いることが好ましい。折りたたみ機構は焼灼部3a〜3dをワイヤー、静電、圧力等で駆動させることも可能であるし、焼灼部3a〜3dに折りたたみチューブ(図示せず)を被せて折りたたんでもよい。折りたたみ機構の解除は、折りたたむ操作の反対の操作を行えばよい。
【0047】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2にかかる医療用アブレーションカテーテルについて図面を用いて説明する。実施の形態2にかかる医療用アブレーションカテーテルは、基本的には実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルと同様の構成を有しているので、共通する部分については説明を省略する。
【0048】
図4(a)は、本発明の実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材2aの一部斜視図である。図4(b)は、本発明の実施の形態2にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材2aの斜視図である。図4(b)に示す通り、線材2aは、複数の細線10を互いに撚り合わせることにより構成されている。図4(c)は、本発明の実施の形態2にかかる他の医療用アブレーションカテーテルの線材2aの一部斜視図である。図4(c)に示す通り、線材2aは、芯材11を中心として、複数の細線10を互いに撚り合わせることにより構成されている。
【0049】
図4(b)、(c)に示す通り、線材2aが細線10の撚り線により構成されていると、各細線10が真っ直ぐに戻ろうとする力および相互の張力によるものと考えられるが、線材2aは、緩やかな螺旋を描くように捻れた形状を呈する傾向にある。線材2aが螺旋を巻く方向が遠位端側からみて右回りとなるか左回りとなるかは、細線材の撚りの向き(図4(b)のZ)によって決まる。したがって、細線10の撚りの向きを、遠位端側からみて右回りか左回りかのどちらかに統一すれば、すなわち、全ての線材2a〜2dにおいて撚りの方向を同じ向きとすれば、各線材2a〜2dが螺旋を巻く方向も、右回りか左回りかのどちらか一方に揃う。そうすると、線材2a〜2dが筒状部材4内に引き込まれる際、筒状部材4の出口周縁部に対して同じ角度で当接するため、全ての線材が同じ方向に倒れながら筒状部材4内に折りたたまれて行く。したがって、線材2a〜2dが筒状部材4内に引き込まれる際の焼灼部3a〜3dの配置の不均一さは解消されるものと考えられる。そのため、線材2a〜2dが筒状部材4の外部に進出して拡張する際にも不規則な状態とはならず、各焼灼部3a〜3dが設計通りに配置されやすくなる。
【0050】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3にかかる医療用アブレーションカテーテルについて図面を用いて説明する。本実施の形態にかかる医療用アブレーションカテーテルは、基本的には実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルと同様の構成を有しているので、共通する部分については説明を省略する。図5は、実施の形態3にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材の円筒投影図である。なお、実施の形態3にかかる医療用アブレーションカテーテルを遠位側からみた側面図は、実施の形態1の場合と同じく図3である。
【0051】
図3に示すように、本発明の実施の形態3にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材2a〜2dは、外側に張り出している一つの頂点(極大部)を有しており、各頂点には焼灼部3a〜3dが設けられている。また各頂点は、筒状部材4の軸方向の位置が異なるため、実施の形態1とは異なり、図5に示すように各焼灼部3a〜3dは、筒状部材4の軸方向の異なる位置にそれぞれ配置されている。焼灼部3a〜3dをこのように配置することによって、被焼灼部位が螺旋状に散在し、すなわち被焼灼部位が腎動脈の流れ方向の異なる位置に存在しているため、万が一、被焼灼部位が腫脹しても、腫脹した部位どうしが重ならないため、腎動脈の狭窄が起こりにくくなる。
【0052】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4にかかる医療用アブレーションカテーテルについて図面を用いて説明する。実施の形態4にかかる医療用アブレーションカテーテルは、基本的には
実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルと同様の構成を有しているので、共通する部分については説明を省略する。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態4にかかる医療用アブレーションカテーテルの線材2aの斜視図である。実施の形態4の線材2aは、図6に示すように2箇所に頂点を有しており、それぞれの頂点に第1の焼灼部3a,第2の焼灼部3aaが設けられている。ただし、線材2aに形成された頂点は、同一平面内にあるのではなく、第1の焼灼部3aを含む頂点を含む平面と、第2の焼灼部3aaを含む頂点を含む平面とは、互いに所定の角度(図6では45度)をなしている。図示はしていないが、線材2b〜2dについても同様であり、45度の角度をなしている2つの面上に、第1の焼灼部3bおよび第2の3bb、第1の焼灼部3cおよび第2の3cc、第1の焼灼部3dおよび第2の3ddが設けられている。腎動脈の複数箇所において焼灼処置を施すために、一本の線材に対して複数の焼灼部を設けることが有効ではあるが、腎動脈の交感神経は、腎動脈の長さ方向に沿って延びているため、腎動脈の長さ方向に異なる位置であっても、腎動脈の周方向の同じ位置を焼灼すると、同一の交感神経を2箇所で焼灼してしまうことになる。同一の交感神経を2箇所以上で焼灼してしまうと、腎動脈がショックで閉塞してしまうリスクがある。また、交感神経の切断は1箇所で十分であるので、同一の交感神経を2箇所で焼灼することは効率的ではない。
【0054】
そこで、本実施の形態において説明したように、第2の焼灼部3aa〜3ddの腎動脈の周方向の位置を第1の焼灼部3a〜3dに対して例えば45度分だけ位相異ならせることにより、同一の交感神経の重複的焼灼を回避することができる。
【0055】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5にかかる医療用アブレーションカテーテルについて図面を用いて説明する。実施の形態5にかかる医療用アブレーションカテーテルは、基本的には実施の形態1にかかる医療用アブレーションカテーテルと同様の構成を有しているので、共通する部分については説明を省略する。
【0056】
図7(a)は、本発明の実施の形態5にかかる医療用アブレーションカテーテルの斜視図であり、図7(b)は、同医療用アブレーションカテーテルの線材毎の側面図である。図7(a)に示すように、実施の形態5にかかる線材2aは2箇所に頂点を有しており、それぞれの頂点に第1の焼灼部3a,第2の3aaが設けられている。線材2b〜2dについても同様にそれぞれ2箇所に頂点を有しており、各頂点に、第1の焼灼部3bおよび第2の3bb、第1の焼灼部3cおよび第2の3cc、第1の焼灼部3dおよび第2の3ddが設けられている。なお、図7(a)の例では、線材2a〜2dは中央部付近において一旦中心軸付近に戻って中間結束体8により結束されているが、線材2a〜2dは2箇所に頂点を有してさえいればよく、中間結束体8は必ずしも設けられなくても良い。
【0057】
図7(a)に示すように、線材2a〜2dに設けられた第1の焼灼部のうち、最も遠位側にある第1の焼灼部3cと最も近位側にある第1の焼灼部3aとの間の距離(図7中の距離A)と、線材2a〜2dに設けられた第2の焼灼部のうち、最も遠位側にある第1の焼灼部3ccと最も近位側にある第2の焼灼部3aaとの間の距離(図7中の距離B)を互いに異ならせることができる。例えば、腎動脈の形状の違いや与える焼灼エネルギーの違いに応じて、距離Aおよび距離Bを互いに独立して設定することができる。
【0058】
もちろん、第1の焼灼部3a〜3d、第2の焼灼部3aa〜3ddは、それぞれ均等間隔で配置されることが好ましい。万が一、被焼灼部位が腫脹しても、腫脹した部位どうしが重ならないようにするためである。
【0059】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6にかかる医療用アブレーションカテーテルの製造方法について図面を用いて説明する。医療用アブレーションカテーテル自体は、一般的に知られている方法によって製造することができるものであり、並行して配された複数の線材と、線材に各々設けられた焼灼部と、線材を収容する筒状部材とを有し、線材は、筒状部材内に収容可能であるとともに筒状部材外の遠位側に進出可能に構成されており、かつ筒状部材の遠位側に進出している部分のうち少なくとも一部は、筒状部材の外径よりも外側に張り出しているタイプのものを前提としている。本実施の形態は、医療用アブレーションカテーテルに用いられる線材の製法に特徴を有するものである。図8は、本発明の実施の形態6にかかる医療用アブレーションカテーテルの一部製造工程を示す図である。
【0060】
図8(a)に示すように、まず、線材2aを準備する。次に、図8(b)に示すように、線材2aの第1の所定位置2xにおいて、線材2aを第1の方向に凸となるように曲げる工程と、第1の所定位置とは異なる第2の所定位置2yにおいて、線材を第1の方向とは異なる第2の方向に凸となるように曲げる工程とを含む第1の付形工程を実行する。
【0061】
次に、第1の付形工程の後に、図8(c)に示すように線材の少なくとも一部を筒状部材の外径よりも外側に張り出す程度に曲げる第2の付形工程を実行する。なお、図8(c)に示すように線材2aの山なり形状の裾野部分は、筒状部材4の軸方向と平行に近く、なだらかであることが望ましい。線材2aに局所的な負荷をかけず、筒状部材4への出し入れを円滑に行うためである。
【0062】
以上のような工程を経て製造された線材2aは、第1の付形工程を行っていない従来の線材2aに比べて高い弾性を示すため、線材2aに設けられた焼灼部3aを腎動脈の内壁に確実に密着させることができる。凸となる部分の角度に特に制限はないが、例えば、15〜85度(好ましくは20〜80度、より好ましくは25〜75度)であれば、線材2aの弾性がより一層高まる。
【0063】
第1の付形工程の後に、線材2aを図8(a)に示すような直線状に近い状態に一旦戻すことが、線材2aの弾性を向上させる点で望ましい。例えば、図8(b)の状態の線材2aを、図9に示すように二本の金属棒12で挟んで扱(しご)くことにより、一旦付された凸形状を緩和させて直線状に近い形状に戻るように伸ばすことが好ましい。この工程の後に、図8(c)の第2の付形工程を行って線材2aを完成させることにより、線材2aの弾性がより一層高まる。線材2aを扱く際には、線材2aを45〜180℃(好ましくは65〜160℃、より好ましくは85〜140℃)に加熱することが好ましい。加熱により、線材2aの形状がより一層安定しやすく、弾性を高めることができるからである。
【0064】
なお、図8(b)に示すように、第1の所定位置2xを谷部とし、第2の所定位置2yを谷部の方向とは反対方向の山部とするなどして、第1の方向と第2の方向とを互いに逆向きに設けることにより、谷部または山部の向きに対する弾性をいっそう向上させることができる。
【0065】
また、同じ長さの線材2aに対して、第1の所定位置2xと第2の所定位置2yの数は、最低限一つずつあれば良いが、数多く密に形成するほうが線材2aの弾性をより一層高めることができる。これにより、弾性力の弱いステンレス鋼材やニッケルチタン(Ni−Ti)合金でも線材2aとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 アブレーションカテーテル
2a,2b,2c,2d 線材
2x 第1の所定位置
2y 第2の所定位置
3a,3b,3c,3d,3aa,3bb,3cc,3dd 焼灼部
4 筒状部材
5 遠位側結束体
6 近位側結束体
7 円筒投影面
8 中間結束体
9 X線不透過マーカー
10 細線
11 芯材
12 金属棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9