(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377341
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】スラグ排出システム及びスラグ排出方法
(51)【国際特許分類】
F27D 15/00 20060101AFI20180813BHJP
C10J 3/52 20060101ALI20180813BHJP
F27D 15/02 20060101ALN20180813BHJP
【FI】
F27D15/00 A
C10J3/52
!F27D15/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-256039(P2013-256039)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-114037(P2015-114037A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】大場 統洋
(72)【発明者】
【氏名】品田 治
(72)【発明者】
【氏名】小山 智規
(72)【発明者】
【氏名】吉田 斎臣
【審査官】
静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−074274(JP,A)
【文献】
特開2010−265409(JP,A)
【文献】
特開2008−184341(JP,A)
【文献】
実開昭52−139349(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 15/00−15/02
C10J 3/46−3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグロックホッパと、
前記スラグロックホッパの下方に設けられるスラグ処理設備と、
前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けて、前記スラグ処理設備へ前記スラグを排出する第1排出路と、
前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けて、前記スラグ処理設備と異なる位置に設けられたスラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出する第2排出路と、
を備え、
前記第1排出路と前記第2排出路が切り替え可能とされているスラグ排出システム。
【請求項2】
前記第2排出路は、
前記スラグロックホッパの下部に接続される屈曲可能なフレキシブル配管と、
前記スラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出するとき、前記フレキシブル配管に接続される排出部と、
を有する請求項1に記載のスラグ排出システム。
【請求項3】
前記第2排出路は、前記スラグロックホッパの下部に接続可能な湾曲接続配管又は溝状部材を備え、
前記スラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出するとき、前記湾曲接続配管又は前記溝状部材が前記スラグロックホッパの下部に接続される請求項1に記載のスラグ排出システム。
【請求項4】
前記フレキシブル配管、又は、前記湾曲接続配管若しくは前記溝状部材の代わりに前記スラグロックホッパの下部に接続される接続配管の一端側に設置された蓋と、
前記スラグ処理設備と接続される接続管の一端に設置され、前記蓋を収容可能な接続部と、
を有する請求項2又は3に記載のスラグ排出システム。
【請求項5】
第1排出路及び第2排出路がスラグロックホッパの出口側に配置されるステップと、
前記第1排出路が前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けるステップと、
前記第1排出路がスラグ処理設備へ前記スラグを排出するステップと、
前記第2排出路が前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けるステップと、
前記第2排出路が前記スラグ処理設備と異なる位置に設けられたスラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出するステップと、
前記第1排出路と前記第2排出路を切り替えるステップと、
を有するスラグ排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグ排出システム及びスラグ排出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス化炉において、炭素含有燃料から可燃性ガスが生成されると、ガス化反応に不要な灰分は、ガス化炉内で溶融された後にスラグとしてガス化炉下部にあるスラグホッパ中の冷却水中に落下して急冷され、ガラス状の水砕スラグとなる。水砕スラグは、数mmから数十mm程度の粒子である。
【0003】
スラグは、スラグホッパからスラグロックホッパ21へ更に落下して、スラグロックホッパ21内に貯められる(
図9参照)。スラグロックホッパ21は、内部のスラグを排出するため、上部入口の弁を閉じてガス化炉内圧力を締め切った後、下部出口の弁23を開いてスラグ冷却水とともにスラグを排出する。スラグは、接続管24を通過してスラグ処理設備22へ排出される。
【0004】
スラグロックホッパ21から排出されたスラグは、スラグ処理設備22によって、所定の位置まで搬送される。スラグ処理設備22には、スラグを他の場所へ搬送するコンベアなどが設けられている。なお、特許文献1では、スクリューコンベア等の機械的輸送手段を用いずに、液状輸送媒体によってスラリー化したスラグを搬送する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−74274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラグ処理設備にて搬送されるスラグは、二酸化ケイ素を主成分とするガラス質の物質である。そのため、スラグ処理設備は、スラグによって摩耗されやすく、トラブルの発生頻度が高い。定格負荷運転時にスラグ処理設備がトラブルで停止した場合、一時的にスラグホッパやスラグロックホッパ内にスラグを貯蔵できるが、貯蔵量が限られており、数時間分しか貯蔵できない。その間にスラグ処理設備が復旧できなかった場合、ガス化炉を部分負荷で運用するか、プラントを停止するしかなく、プラントの稼働率に大きな影響を与える。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、スラグ処理設備が停止している場合でも、プラントを停止させることなく、スラグを適切に排出させることが可能なスラグ排出システム及びスラグ排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスラグ排出システム及びスラグ排出方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るスラグ排出システムは、スラグロックホッパと、前記スラグロックホッパの下方に設けられるスラグ処理設備と、
前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けて、前記スラグ処理設備へ前記スラグを排出する第1排出路と、前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けて、前記スラグ処理設備と異なる位置に設けられたスラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出する
第2排出路とを備え
、前記第1排出路と前記第2排出路が切り替え可能とされている。
【0009】
この構成によれば、スラグロックホッパの出口から排出されるスラグは、通常運転時であればスラグロックホッパの下方に設けられるスラグ処理設備で排出される。しかし、スラグ処理設備がトラブルにより停止した場合、
第2排出路へ切り替えてスラグを排出する。
第2排出路は、スラグ処理設備の近傍に常設されており、短時間でスラグの排出先を切り替えることができる。したがって、スラグ処理設備の停止によってプラントを停止させる必要がなく、一時的に
第2排出路でスラグを排出できることから、プラントを稼働させたまま、スラグ処理設備のメンテナンス時間確保が可能となり、プラントの稼働率を向上させることができる。
【0010】
上記発明において、前記
第2排出路は、前記スラグロックホッパの下部に接続される屈曲可能なフレキシブル配管と、スラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出するとき、前記フレキシブル配管に接続される排出部とを有してもよい。
【0011】
この構成によれば、フレキシブル配管を屈曲させ排出部に接続させることによって、スラグロックホッパに溜まったスラグを、フレキシブル配管及び排出部を介して、スラグ貯蔵エリアへ排出できる。排出部は、例えば管状部材でもよいし、溝状部材でもよい。
【0012】
上記発明において、前記
第2排出路は、前記スラグロックホッパの下部に接続可能な湾曲接続配管又は溝状部材を備え、前記スラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出するとき、前記湾曲接続配管又は前記溝状部材が前記スラグロックホッパの下部に接続されてもよい。
【0013】
この構成によれば、湾曲接続配管又は溝状部材をスラグロックホッパの下部に接続させることによって、スラグロックホッパに溜まったスラグを、湾曲接続配管又は溝状部材を介して、スラグ貯蔵エリアへ排出できる。
【0014】
上記発明において、前記フレキシブル配管、又は、前記湾曲接続配管若しくは前記溝状部材の代わりに前記スラグロックホッパの下部に接続される接続配管の一端側に設置された蓋と、前記スラグ処理設備に接続される接続管の一端に設置され、前記蓋を収容可能な接続部を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、フレキシブル配管と接続管が接続されるとき、接続部は蓋によって閉鎖される。その結果、フレキシブル配管及び接続管を通過するスラグが接続部から系外へ漏れることを防ぐことができる。また、蓋が接続部に収容されていることから、フレキシブル配管が振動したとしても、フレキシブル配管が接続部から外れにくい。
【0016】
本発明に係るスラグ排出方法は、
第1排出路及び第2排出路が前記スラグロックホッパの出口側に配置されるステップと、
前記第1排出路が前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けるステップと、前記第1排出路がスラグ処理設備へ前記スラグを排出するステップと、前記
第2排出路が前記スラグロックホッパの出口から排出されるスラグを受けるステップと、前記
第2排出路が前記スラグ処理設備と異なる位置に設けられたスラグ貯蔵エリアへ前記スラグを排出するステップと
、前記第1排出路と前記第2排出路を切り替えるステップとを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スラグ処理設備がトラブルにより停止した場合でも、プラントを停止させることなく一時的にスラグを系外へ排出でき、それにより、プラントを稼働させたまま、スラグ処理設備が復旧までに要するメンテナンス時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスラグ排出システムを示す正面図であり、フレキシブル配管が接続管と接続された状態を示している。
【
図2】本発明の一実施形態に係るスラグ排出システムを示す正面図であり、フレキシブル配管が排出管と接続された状態を示している。
【
図3】フレキシブル配管及び蓋を示す斜視図である。
【
図5】フレキシブル配管及び接続管の接続部分を示す斜視図であり、蓋が閉められた状態を示している。
【
図6】フレキシブル配管及び接続管の接続部分を示す斜視図であり、蓋が開けられた状態を示している。
【
図7】本発明の一実施形態の変形例に係るスラグ排出システムを示す正面図であり、直線接続配管が接続管と接続された状態を示している。
【
図8】本発明の一実施形態の変形例に係るスラグ排出システムを示す正面図であり、湾曲接続配管が排出管と接続された状態を示している。
【
図9】従来のスラグ排出システムを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係るスラグ排出システム1の構成について説明する。
スラグロックホッパ21では、ガス化炉の下部にあるスラグホッパで生成されたスラグが上部から落下してきて、スラグが一時的に貯蔵される。スラグロックホッパ21は、内部のスラグを排出するため、上部入口の弁(図示せず。)を閉じてガス化炉内圧力を締め切った後、下部出口の弁23を開いてスラグ冷却水とともにスラグを排出する。
【0020】
スラグロックホッパから排出されたスラグは、フレキシブル配管8及び接続管6を介して、スラグ処理設備22へ供給される。スラグ処理設備22は、スラグを他の場所へ搬送するコンベアなどが設けられている。
【0021】
接続管6は、スラグロックホッパ21の直下に設けられ、例えばスラグ処理設備22から鉛直に立設されている。接続管6の上部には、フレキシブル配管8と接続可能な接続部7が形成されている。接続管6の下部は、スラグ処理設備22に設けられている、例えばコンベアの上部に向けて開口している。接続管6を通過したスラグは、スラグ処理設備22へ供給される。
【0022】
接続部7は、例えばテーパー形状を有しており、下部側の径が狭く、上部側の径が接続管6の径よりも広く形成されている。接続部7の上部側の径は、フレキシブル配管8の一端に設けられたフランジ14(
図2参照)を収容可能な大きさである。
【0023】
フレキシブル配管8は、ゴム製の管又は金属製蛇腹管などである。ゴム製であるほうが、スラグに対する耐摩耗性を有する。したがって、フレキシブル配管8に対して、金属製蛇腹管の内部にゴムをライニングしたものを用いてもよい。フレキシブル配管8の上部は、弁23と接続される。弁23は、スラグ排出時に開状態とされ、スラグを排出しない期間は閉状態とされている。フレキシブル配管8の下部には、フランジ14が設置される。
【0024】
フレキシブル配管8のフランジ14は、通常のスラグ排出時、接続管6の接続部7に収容されて、接続管6と接続される。フランジ14は、スラグ処理設備22を使用できないメンテナンス等の期間(以下、総称して「メンテナンス時」という。)、排出管4と接続される。
【0025】
フレキシブル配管8は、フランジ14側で結合部13を介して、チェーンブロック11のワイヤ12と接続されている。もしスラグ処理設備22にトラブルが発生した場合、チェーブロック11を操作することによってフレキシブル配管8を湾曲させ、結合部13を上方へ吊り上げることができる。結合部13が上方へ吊り上げられることで排出管4側へフランジ14を接続することができ、スラグ一時貯蔵エリア2へスラグを一時的に払い出すことが可能となる。
【0026】
排出管4は、例えば直線状の管状部材であり、スラグ処理設備22の近傍に設けられる。排出管4は、例えば
図1に示すように、支持部材3によって、スラグロックホッパ21側が高く、スラグ一時貯蔵エリア2側が低くなるように、支持される。
【0027】
排出管4の上部には、フランジ5が設置される。排出管4のフランジ5は、メンテナンス時、フレキシブル配管8のフランジ14と接続される。排出管4がフレキシブル配管8と接続されているメンテナンス時、スラグは、フレキシブル配管8及び排出管4を通過して、スラグ一時貯蔵エリア2へ排出される。フランジ接続とすることによって、フレキシブル配管8及び排出管4を互いに強固に結合させることができる。スラグ通過時、フレキシブル配管8及び排出管4に荷重がかかることから、フランジ接続とすることによって、フレキシブル配管8及び排出管4が外れることを防止できる。
【0028】
次に、
図3から
図6を用いて、フレキシブル配管8のフランジ14近傍及び接続管6の接続部7について説明する。
フレキシブル配管8側には、
図3に示すように、取っ手17が設けられた蓋15が設置される。蓋15は、中央にフレキシブル配管8が通過して設置される開口部を有する環状部材である。また、蓋15には、掛かり溝16が形成される。他方、接続部6の内周面には、掛かり溝16に対応して、
図4に示すように、突起部18が形成される。
【0029】
図5は、フランジ14が接続部7に収容された状態を示している。蓋15が、取っ手17を用いて、フレキシブル配管8を中心にして回転させられることによって、突起部18が掛かり溝16に係合する。その結果、通常のスラグ排出時において、蓋15が接続部7から外れることがない。また、フレキシブル配管8が振動したとしても、蓋15が接続部7に嵌った状態で維持されるため、フレキシブル配管8が外れることが無く、スラグやスラグ水が系外へ漏れることを防ぐことができる。
【0030】
図6は、蓋15を接続部7から取り外した状態を示している。蓋15を回転させて接続部7から取り外すことによって、フレキシブル配管8のフランジ14を排出管4のフランジ5へ接続することが可能になる。
【0031】
次に、本実施形態に係るスラグ排出システムを用いたスラグの排出方法について説明する。
通常のスラグ排出時、フレキシブル配管8の下端に設けられたフランジ14は、
図1に示すように、接続管6の接続部7に収容される。これにより、フレキシブル配管8と接続管6が接続されている。そして、スラグロックホッパ21に貯蔵されたスラグをスラグ処理設備22へ供給する際、弁23を開状態とする。
その結果、スラグロックホッパ21に貯蔵されているスラグは、フレキシブル配管8及び接続管6を通過して、スラグ処理設備22へ供給される。
【0032】
一方、メンテナンス時は、まず、フレキシブル配管8のフランジ14側を、例えばチェーンブロック11によって、上方へ吊り上げる。これにより、フレキシブル配管8を屈曲させることができ、フレキシブル配管8のフランジ14側を排出管4側へ向けることが可能になる。このとき、弁23は閉状態である。
【0033】
その後、フレキシブル配管8のフランジ14と、排出管4のフランジ5とを、ボルト及びナットを用いて、互いに接続させる。そして、フレキシブル配管8と排出管4とが接続された状態で、弁23を開状態とする。その結果、スラグロックホッパ21に貯蔵されているスラグは、フレキシブル配管8及び排出管4を通過して、スラグ一時貯蔵エリア2へ排出される。
図2では、符号30に貯蔵された状態のスラグを示している。
スラグ一時貯蔵エリア2に貯蔵されたスラグは、重機やトラック等によって、所定の場所へ搬出される。
【0034】
以上、本実施形態によれば、フレキシブル配管8の接続先を接続管6から排出管4へ切り換えるだけで、スラグの排出先をスラグ処理設備22からスラグ一時貯蔵エリア2へ切り替えることができる。フレキシブル配管8の接続の切り換えは、簡単かつ迅速に行うことができスラグ一時貯蔵エリア2へスラグを排出できるため、ガス化炉をガス化炉を部分負荷で運用したり、プラントを停止させる必要がない。そのため、スラグ処理設備22でトラブルが発生した場合でも、プラントを稼働させたまま、メンテナンス期間を確保できるため、プラントの稼働率を向上させることができる。
【0035】
また、炭素含有燃料中には重金属類が含まれており、重金属類は、炭素含有燃料を燃焼させた後のスラグ(灰分)にも微量であるが存在している。重金属類が環境に与える負荷は大きく、厳しい規制値が設けられている。しかし、スラグは、非晶質となっており、内部の重金属類が固定されて水分と接触しても溶出しない構成を有している。また、保管されるスラグの粒径は飛散する大きさでは無い。
【0036】
さらに、スラグと一緒に一時貯蔵エリア2へ排出されるスラグ水は、一時貯蔵エリア2になだらかな傾斜を設けておくことによって、スラグと水に分離される。そして、分離された水は、専用のポンドへ貯留される。ポンド内に水中ポンプを設置しておけば、貯留水はスラグ処理設備22で用いられている既設の水循環系等へ戻すことができる。したがって、一時貯蔵エリア2にスラグ及びスラグ水を排出したとしても、特別な処理が必要となる排水量が増えることは無い。したがって、本実施形態は、スラグの特性を利用しており、環境負荷にも配慮されているといえる。
【0037】
通常のスラグロックホッパ21に貯蔵可能なスラグ量は、定格運転時の約数時間分となるように計画されることが一般的である。そこで、スラグ処理設備22のメンテナンス時にスラグを貯蔵できるようにするため、スラグロックホッパ21の容量を増大させることも考えられる。しかし、この場合、スラグロックホッパ21の容量増大に伴って、スラグロックホッパ給水ポンプの容量を増大させたり、一定時間毎のスラグ排出間隔が長くなったり、スラグロックホッパ21を支持する鉄骨構造をより強固にさせたりする必要がある。また、メンテナンス終了時、通常時よりもスラグがスラグロックホッパ21に多く溜まっている。そのため、メンテナンス終了後の処理に備えて、スラグ処理設備22もある程度余裕を持った設計(定格運転時のスラグ処理能力以上の設計)が要求される。そのため、メンテナンス時にしか容量増大分を使用しないことを考慮すると過剰な対応となってしまう。これに対して、上述した実施形態では、スラグロックホッパ21の容量を増大させることなく、従来の容量のまま、スラグ処理設備22のメンテナンス時にスラグを排出させることが可能である。
【0038】
また、スラグ処理設備22を設けずに、スラグロックホッパ21の直下にスラグ貯蔵エリアを設けて、スラグロックホッパ21から直接スラグ貯蔵エリアへスラグを排出することも考えられる。しかし、定格運転時に、多量のスラグ搬出が必要となる場合、ホイールローダ等の重機による搬出では効率が悪い。スラグロックホッパ21から例えば30t/h超のスラグが排出される場合、最大積載重量が7〜8t程度の市販のホイールローダを用いたとしても、スラグ貯蔵エリアとスラグ搬出先との間をホイールローダで4〜5回/h往復しなければならない。これに対して、本実施形態では、スラグロックホッパ21のメンテナンス時のみ一時貯蔵エリア2にスラグを排出することとし、それ以外の通常の期間では、スラグ処理設備22を用いてスラグを排出できることから、効率良くスラグの搬出を行うことができる。
【0039】
上述した構成では、フレキシブル配管8と排出管4が排出路を構成する。排出路について、上述した実施形態では、直線状の管状部材である排出管4を用いる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、排出管4の代わりに、断面凹形状を有する溝状部材を用いてもよい。管状部材の排出管4のほうが、スラグの拡散を防止できるが、排出速度を調整することによって、溝状部材を用いてもフレキシブル配管8からスラグ一時貯蔵エリア2へスラグを排出できる。
【0040】
また、フレキシブル配管8の代わりに、
図8に示すように湾曲形状を有する湾曲接続配管36を用いてもよい。湾曲接続配管36は、スラグの通常排出時、スラグ処理設備22の近傍に退避させておく。通常排出時は、
図7に示すように、直線接続配管33を弁23と接続管31の間に接続する。そして、メンテナンス時、直線接続配管33を弁23及び接続管31から取り外し、
図8に示すように、湾曲接続配管36の上端を弁23の下部と接続させ、湾曲接続配管36の下端を排出管4と接続させる。これにより、メンテナンス時、スラグは、湾曲接続配管36を通過して、スラグ一時貯蔵エリア2へ排出される。直線接続配管33は、フランジ35,34によって弁23と接続管31と接続され、湾曲接続配管36は、フランジ38,37によって弁23と排出管4に接続される。なお、湾曲接続配管36の長さを長くすれば、排出管4を別途設けずに湾曲接続配管36によってスラグをスラグ一時貯蔵エリア2へ排出できる。また、
図3から
図6を用いて説明したように、
図7の例でも、直線接続配管33の一端側に蓋15を設け、接続管31の一端にテーパー形状の接続部7を設けてもよい。さらに、湾曲接続配管36の代わりに、断面凹形状を有する溝状部材を用いてもよい。
【0041】
さらに、本実施形態では、接続管6又は排出管4との接続を、フレキシブル配管8によって行う場合について説明したが、例えば予めスラグロックホッパ21の出口側に振り分けダンパーを設置してもよい。振り分けダンパーは、通常のスラグ排出時は、スラグ処理設備22側へスラグが供給されるように切り換えられ、メンテナンス時は、スラグ一時貯蔵エリア2へ排出されるように切り換えられる。ただし、振り分けダンパーの駆動部が、メンテナンス時に、スラグによる摩耗によって動作しないということが生じないように留意する必要がある。これに対して、上述したフレキシブル配管8を用いた実施形態では、駆動部がないため、振り分けダンパーを用いる場合に比べて有利である。
【符号の説明】
【0042】
1 スラグ排出システム
2 スラグ一時貯蔵エリア(スラグ貯蔵エリア)
4 排出管(排出路,排出部)
6 接続管
7 接続部
8 フレキシブル配管(排出路,排出部)
15 蓋
21 スラグロックホッパ
22 スラグ処理設備
33 直線接続配管(接続配管)
36 湾曲接続配管(排出路)