特許第6377409号(P6377409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377409
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】金型の鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   B22C9/08 B
   B22C9/08 E
   B22C9/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-106730(P2014-106730)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-221454(P2015-221454A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】石原 泰之
(72)【発明者】
【氏名】板橋 大一
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−130758(JP,A)
【文献】 実開昭58−028755(JP,U)
【文献】 特開2007−144480(JP,A)
【文献】 特開平09−052143(JP,A)
【文献】 特開昭57−019313(JP,A)
【文献】 実開平05−088744(JP,U)
【文献】 実公昭26−009416(JP,Y1)
【文献】 社団法人 日本鋳造工学会編,鋳造工学便覧,日本,丸善株式会社,2002年 1月31日,501-504頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型鋳造用の鋳型と、該金型の体積以上の容積を有する湯溜め部とを備え、該湯溜め部内に保持された溶湯を、該湯溜め部の鋳込み口および該鋳型の少なくとも一個の堰を介して該鋳型内のキャビティに鋳込むことで金型を鋳造する装置であって、
前記鋳込み口から前記堰までのいずれかの部位に、前記溶湯の流路を開閉自在とする蓋部が設けられるとともに、該蓋部の形状が矩形平板状または円形平板状であり、前記鋳込み口と前記堰との間を繋ぐランナーを備え、該ランナーが、該鋳込み口から下方に向かって延びる垂直部分と、該垂直部分の下端から該堰に向かって延びる水平部分とからなり、該堰が少なくとも2個以上で設けられており、該ランナーの該水平部分が、前記垂直部分の下端から、該少なくとも2個以上の堰に向かって分岐して延びていることを特徴とする金型の鋳造装置。
【請求項2】
前記ランナーの前記水平部分の断面形状が、幅が高さよりも大きく形成されている長方形形状である請求項1記載の金型の鋳造装置。
【請求項3】
前記蓋部が、前記鋳込み口に設けられている請求項1または2記載の金型の鋳造装置。
【請求項4】
前記蓋部が、前記堰に設けられている請求項1〜のうちいずれか一項記載の金型の鋳造装置。
【請求項5】
前記鋳込み口の開口面積が、前記堰の開口面積の総和よりも大きい請求項1〜のうちいずれか一項記載の金型の鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金型の鋳造装置(以下、単に「鋳造装置」とも称する)に関し、詳しくは、鋳造製法により金属成形物(鋳物)としての金型を製造する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリウレタン等を原料とする発泡成形品は、鋳造製法により得られる金型を用いて製造される。しかし、鋳造製法により得られる金型は、気泡や、酸化物等の異物を含んでいる場合があり、このような金型を用いてポリウレタンを発泡成形すると、金型中の気泡や異物にポリウレタンが付着して、金型から発泡成形品を取り出す際に、発泡成形品が破けてしまう不具合が発生していた。
【0003】
鋳物は、目的とする鋳物形状を反転させた形状を有する砂型に、原料を流し込むことで製造されるため、上記のような鋳物中の気泡や異物等の欠陥は、砂型に原料を流し込んで鋳物を製造する際に、原料中に空気や異物が巻き込まれることに起因して生ずるものと考えられる。よって、金型中の欠陥の発生を防止するためには、原料流し込み時における空気や異物の巻き込みを防止することが重要となるが、砂型に原料を流し込む作業は、従来、作業者の手作業により行われており、実際の流し込みの速度や方法等については、作業者によりバラツキがあるのが現状であった。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1では、品質の高い鋳物の製作を可能とするために、溶湯の入口部が溶湯を収容する容器と接続され、容器内の溶湯が入口部、フィーダーを通して鋳型キャビティに充填される鋳型充填方法において、出湯口と鋳型の入口部との接続部に形成される溶湯通路を開放した状態で、鋳型を出湯口の水平軸の回りに回転する技術が提案されている。しかし、この方法では、専用設備が必要となり、多額の設備投資が必要になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−090208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、鋳物の製造時における気泡や異物、さらには、湯周り不足や吹かれといった鋳造欠陥の発生を極小化する技術に関しては、従来より検討がなされてきているが、十分なものではなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、大きな設備投資を要することなく、気泡や異物に加え、湯周り不足や吹かれなどの各種鋳造欠陥の発生を、従来の手作業による場合と比較して大幅に低減することができる金型の鋳造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、装置構造の改良により、原料流し込み時における空気や異物の巻き込みを低減することが可能となり、結果として得られる鋳物における欠陥の発生を抑制することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、金型鋳造用の鋳型と、該金型の体積以上の容積を有する湯溜め部とを備え、該湯溜め部内に保持された溶湯を、該湯溜め部の鋳込み口および該鋳型の少なくとも一個の堰を介して該鋳型内のキャビティに鋳込むことで金型を鋳造する装置であって、
前記鋳込み口から前記堰までのいずれかの部位に、前記溶湯の流路を開閉自在とする蓋部が設けられるとともに、該蓋部の形状が矩形平板状または円形平板状であり、前記鋳込み口と前記堰との間を繋ぐランナーを備え、該ランナーが、該鋳込み口から下方に向かって延びる垂直部分と、該垂直部分の下端から該堰に向かって延びる水平部分とからなり、該堰が少なくとも2個以上で設けられており、該ランナーの該水平部分が、前記垂直部分の下端から、該少なくとも2個以上の堰に向かって分岐して延びていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の鋳造装置においては、前記ランナーの前記水平部分の断面形状が、幅が高さよりも大きく形成されている長方形形状であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の鋳造装置においては、前記蓋部は、前記鋳込み口または前記堰に設けられていることが好ましい。さらに、本発明の鋳造装置においては、前記鋳込み口の開口面積が、前記堰の開口面積の総和よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大きな設備投資を要することなく、気泡や異物に加え、湯周り不足や吹かれなどの各種鋳造欠陥の発生を、従来の手作業による場合と比較して大幅に低減することができる金型の鋳造装置を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の金型の鋳造装置の一構成例を示す概略断面図である。
図2】本発明の金型の鋳造装置における溶湯の流路部分を取り出して示す説明図である。
図3】本発明の金型の鋳造装置の他の実施形態に係る溶湯の流路部分を取り出して示す説明図である。
図4】従来の金型の鋳造装置に係る溶湯の流路部分を取り出して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の金型の鋳造装置の一実施形態を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の金型の鋳造装置の一実施形態に係る溶湯の流路部分を取り出して示す説明図である。図示する本発明の金型の鋳造装置は、金型鋳造用の鋳型10と、金型の体積以上の容積を有する湯溜め部20と、湯溜め部20の鋳込み口21と鋳型10の堰11との間を繋ぐランナー30と、を備えるものであり、湯溜め部20内に保持された溶湯を、鋳込み口21、ランナー30および堰11を介して鋳型10内のキャビティ12に鋳込むことで、金型を鋳造するものである。図中、符号13は押し湯部を示す。
【0015】
本発明の鋳造装置においては、鋳込み口21から堰11までのいずれかの部位に、溶湯の流路を開閉自在な蓋部40が設けられている点が重要である。図1に示す例では、蓋部40が、鋳込み口21を開閉自在とするよう設けられている。鋳込み口21の上方に湯溜め部20を設けるとともに、このように、鋳込み口21から堰11までのいずれかの部位に開閉自在な蓋部40を設けて、溶湯の排出を制御可能としたことで、溶湯を、湯溜め部20内または湯溜め部20およびランナー30内に一旦保持した後、重力落下的に鋳型10に鋳込むことができる。よって、本発明においては、蓋部40を開放する工程のみにより、作業者の技量に依存することなく、素早く一定の速度で鋳込むことができるので、従来と比較して、気泡や異物の巻き込みの発生を低減することができ、品質の高い金型を製造することが可能である。また、本発明は、従来構造の鋳造設備に対し湯溜め部20および蓋部40を追加するのみで実施可能であるので、大きな設備投資を要しない。さらに、本発明においては、蓋部40が溶湯の流路を開閉自在に設けられているので、鋳込みの完了を確認した後、直ちに蓋部40により流路を閉塞することで、湯溜め部20内に残留する溶湯を確保することができるメリットもある。
【0016】
すなわち、図4に示すように、従来の鋳造装置では、溶湯は、鋳込み口121からランナー130、堰111、キャビティ(製品部)112という流路を経て、鋳型110内に鋳込まれる。この鋳込みは、一般には取鍋等からの落下式注湯となるため、溶湯落下の際の大気の巻込み(気泡・酸化物形成)や、鋳込み速度の不足による、溶湯充填不足(湯廻り不足)を生じやすい。つまり、注湯を行う作業者の技量に、鋳造欠陥の発生が左右されやすい。これに対し、本発明においては、鋳込み口21の上部に、金型の鋳造に充分な量の溶湯を一旦保持しておける湯溜め部20を設けているので、湯溜め部20に一旦溶湯を溜めた後、蓋部40の開放により、湯溜め部20内の溶湯を短時間で一気に鋳型10内部に充填させることができる。
【0017】
本発明によれば、従来と比較して鋳込みに要する時間が短縮できるので、溶湯が空気に接触する時間が少なくなり、溶湯内に気泡や異物を巻き込みにくくなるとともに、湯廻り不足も発生しにくくなる。また、溶湯を湯溜め部20内に一旦溜めるので、蓋部40の開放前に、湯溜め部20への注湯時に溶湯内に巻き込まれた気泡や異物を、湯溜め部20内で浮上分離させることができ、溶湯内の気泡や異物の量を、より低減することができる。さらに、鋳込む時間を短縮したことにより、溶湯が鋳型10内のキャビティ12を形成する砂型に接触する時間も短縮できるので、溶湯中の水素濃度の増大を抑制することができる。例えば、アルミニウム合金の溶湯を用いた場合、溶湯中の水素濃度を0.8ml/100g Al以下とすることで、直径0.3mm以上の気泡が金型内に生じにくくなるため、金型内の気泡にウレタンが付着して発泡成形品が破けてしまうなどの問題を解消することができる。なお、溶湯中の水素濃度は、低いほど、発生する気泡の大きさも小さくなるので好ましい。
【0018】
図2に示す実施形態においては、蓋部40は、湯溜め部20の内部側に、鋳込み口21を開閉自在とするよう設けられている。この場合、鋳込み口21を蓋部40により閉じた状態で溶湯を湯溜め部20内に溜めた後、蓋部40を鋳込み口21から外して鋳込み口21を開放することで、湯溜め部20内の溶湯を鋳込み口21からランナー30内に一気に流出させることができる。図示するように、蓋部40は平板状を呈しており、その一方の面には、持ち手としての柄部41が一体的に設けられている。よって、作業者は、柄部41を握って蓋部40を動かすことで、鋳込み口21の開閉を容易に行うことができる。この場合の蓋部40の形状としては、鋳込み口21を閉塞可能であればよいので、図示するような、鋳込み口21の開口形状に対応する矩形平板状の他、円形平板状としてもよい。蓋部40を円形平板状とした場合、鋳込み口21を閉塞する際に柄部41が回転した場合でも、蓋部40の向きを問わないので、特に、鋳込み口21を閉じる際の操作がしやすいメリットがある。なお、図示する例では、蓋部40に柄部41を設けて、手動で操作可能に構成しているが、電動やエア駆動として、遠隔操作により蓋部の開閉を行うものとしてもよい。
【0019】
なお、本発明において、溶湯の温度を保持する観点からは、湯溜め部20については、断熱性の高い材質を用いることが好ましい。また、湯溜め部20の熱容量を可能な限り小さくすることも効果的である。
【0020】
また、本発明の鋳造装置においては、鋳込み口21の開口面積が、堰11の開口面積の総和よりも大きいことが好ましい。これにより、鋳込み口21から堰11までの間の溶湯の流下部における渦流の発生を抑制して、大気からの気泡の混入を抑制する効果を得ることができる。また、特に、図2に示す実施形態においては、蓋部40を鋳込み口21から取り外した後、溶湯をランナー30内に速やかに充填することができ、注湯開始直後以降の新たな気泡や酸化物の巻込みの発生をより効果的に抑制することができる。
【0021】
さらに、本発明の鋳造装置においては、図2,3に示すように、ランナー30が、その流路断面積が下流側に向かって徐々に小さくなる部分を有することが好ましい。これにより、蓋部40を鋳込み口21から取り外した後、溶湯をランナー30内に、気泡残りなしでより確実に充填することができ、注湯開始直後以降の新たな気泡や酸化物の巻込みの発生をより効果的に抑制することができる。図2に示す例では、ランナー30は、流路断面積が下流側に向かって徐々に小さくなる部分を一部に有している。また、図3に示す例では、ランナー30の流路断面積は、ランナー30の全長にわたり、下流側に向かって徐々に小さくなっている。
【0022】
さらにまた、本発明の鋳造装置においては、図示するように、堰11が、鋳型10の下部に、少なくとも1個以上、例えば、1〜6個、図示する例では2個で、設けられていることが好ましい。鋳型の下部から溶湯が鋳込まれるものとすることで、気泡や異物の巻込みの発生をより確実に抑制することができる。ここで、鋳型10の下部とは、図示するように、配置可能な限り鋳型10の底面近傍との意味であり、例えば、鋳型10内部のキャビティ12の底面と、ランナー30内の流路の底面とが一致するような位置である。
【0023】
図3は、本発明の金型の鋳造装置の他の実施形態に係る溶湯の流路部分を取り出して示す説明図である。図3に示す本発明の他の実施形態においては、蓋部80が、ランナー70の内部側に、堰51を開閉自在とするよう設けられている。この場合、堰51を蓋部80により閉じた状態で溶湯を湯溜め部60およびランナー70内に溜めた後、蓋部80を堰51から外して堰51を開放することで、湯溜め部60およびランナー70内の溶湯を堰51から直接キャビティ52内に一気に流出させることができる。この実施形態では、鋳型50とランナー70との境界面である堰51に近い位置まで溶湯を溜めておくことで、注湯開始直後の状態から、気泡や異物の巻き込み量をより低減することができる。なお、図中の符号53は押し湯部、61は鋳込み口、81は柄部を示す。
【0024】
本発明においては、鋳込み口から堰までのいずれかの部位に、溶湯の流路を開閉自在とする蓋部が設けられているものであればよく、これにより、各種鋳造欠陥の発生を低減することが可能な鋳造装置とすることができる。例えば、図1,2に示す実施形態では、湯溜め部とランナーとの間の溶湯の流路の境界面である鋳込み口から、ランナーと鋳型との間の溶湯の流路の境界面である堰までのいずれかの部位に、溶湯の流路を開閉自在な蓋部を設けているが、本発明においては、鋳込み口を堰に直接接続する構成とすることもでき、この場合、鋳込み口と堰との間を蓋部により閉塞する構成とすることができる。また、蓋部は、2箇所以上に設けてもよく、例えば、鋳込み口および堰の双方に設けることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記表中に示す条件に従う鋳造装置をそれぞれ用いて、ポリウレタンフォーム成形品製造用の金型の製造を行った。金型(鋳物)の寸法は、外周が幅700mm×長さ500mm×高さ200mmであって、厚み20mmの弁当箱型容器(溶湯質量:約42kg)であった。鋳造合金としては、アルミニウム合金AC2B(Si:7質量%,Cu:2.2質量%,Mg:0.4質量%,Fe:0.7質量%,残量:Al)を用いた。鋳込み温度は、720℃(SNIF法による脱ガス実施後)とした。
【0026】
各実施例および比較例において、鋳型の材料には、珪砂とフラン樹脂との混合品(自己硬化型砂型)を用いた。各鋳型の表面には、鋳造に先立って塗型材を筆塗りして、乾燥させた。また、各鋳造装置において、鋳込み口から堰までのランナー内の溶湯質量は約15kgであり、押し湯部は、φ100mm×高さ300mm×4本(溶湯の総質量:約25kg)であった。
【0027】
実施例1の鋳造装置は、鋳型と、湯溜め部と、湯溜め部の鋳込み口と鋳型の堰との間を繋ぐランナーとを備えており、鋳込み口を開閉自在な蓋部を備えていた。また、実施例1の鋳造装置において、堰は鋳型の下部に2個で設けられており、ランナーは、流路断面積が、下流側に向かって徐々に小さくなる部分を有していた。一方、鋳込み口の開口面積は、堰の開口面積の総和よりも小さかった。
【0028】
実施例2の鋳造装置は、鋳込み口の開口面積が、堰の開口面積の総和よりも大きい点以外は実施例1の鋳造装置と同様の構成を有していた。
【0029】
実施例3の鋳造装置は、堰が鋳型の下部に1個で設けられ、ランナーの流路断面積が、ランナーの全長にわたり、下流側に向かって徐々に小さくなっており、鋳込み口を開閉自在な蓋部に代えて、堰を開閉自在な蓋部を備えている点以外は実施例2の鋳造装置と同様の構成を有していた。
【0030】
比較例1の鋳造装置は、湯溜め部および掛堰を有さず、鋳込み口への落下注湯により鋳込みを行うものであって、ランナーが、流路断面積が下流側に向かって徐々に小さくなる部分を有しない以外は、実施例3の鋳造装置と同様の構成を有していた。
【0031】
【表1】
【0032】
各実施例および比較例の鋳造装置について、鋳込みの完了までにかかった時間を測定するとともに、得られた鋳物の表面をサンドブラスト処理した後、鋳物表面における鋳造欠陥を目視により確認して、その数を計測した。目視で確認しにくいφ0.3mm以下程度の大きさの欠陥については、カウントから除外した。これらの結果を、下記の表中に示す。
【0033】
【表2】
*1)比較例1については、欠陥が群落状に発生しており、個別のカウントが困難であったため、欠陥数のカウントを途中で断念した。
【0034】
上記表中の結果から明らかであるように、鋳造装置において、湯溜め部を設けるとともに、鋳込み口から堰までのいずれかの部位に、溶湯の流路を開閉自在な蓋部を設けたことで、従来と比較して短時間で鋳込みを完了することが可能となり、結果として、鋳物における鋳造欠陥の数を、簡易にかつ大幅に減少させることができることが確かめられた。特に、鋳造欠陥の発生を嫌う鋳物製造分野において、この技術が持つ意義は極めて大きいと言える。
【符号の説明】
【0035】
10,50,110 鋳型
11,51,111 堰
12,52,112 キャビティ
20,60 湯溜め部
21,61,121 鋳込み口
30,70,130 ランナー
40,80 蓋部
41,81 柄部
図1
図2
図3
図4