特許第6377416号(P6377416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377416
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】スクリーン印刷版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20180813BHJP
   B41C 1/14 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B41N1/24
   B41C1/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-116316(P2014-116316)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229287(P2015-229287A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】396026710
【氏名又は名称】株式会社オプトニクス精密
(72)【発明者】
【氏名】絹田 精鎮
(72)【発明者】
【氏名】市野沢 義行
(72)【発明者】
【氏名】山梨 隆史
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−044382(JP,A)
【文献】 特開2008−132738(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0032048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B41C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷パターンに対応するパターン開口を有するパターン部と、前記パターン開口に導電ペーストを供給するペースト供給口を有しスキージに接触するペースト供給部とからなる二層構造のマスクを備え、前記ペースト供給口がスキージの移動開始側から移動停止側まで移動方向に沿って設けられたスリット形状であって、このペースト供給口の幅寸法を前記スキージの前記移動開始側から前記移動停止側まで徐々に小さくしたことを特徴とするスクリーン印刷版。
【請求項2】
前記パターン部の厚みが3μm〜4μm、前記ペースト供給部の厚みが6μm〜8μmで、且つ前記パターン部と前記ペースト供給部の厚みの合計が11um以上である請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【請求項3】
前記マスクが電鋳法により作製されたメタルマスクである請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用メタルマスク等のスクリーン印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スクリーン印刷工法は半導体製造において、端子形成、配線形成、素子形成など様々な工程に適用されている。最近では、エレクトロニクス製品の小型化・軽量化・薄型化ニーズに伴い、印刷物の狭線、狭ピッチ化、薄膜化などが求められている。
【0003】
たとえば、セラミックスの誘電体(セラミッククスグリーンシート)と金属電極(導電ペースト)を 多層化(積層)することで小型・大容量化を図った積層セラミックコンデンサー(MLCC)においては、スクリーン印刷工法による導電ペーストの印刷により金属電極の形成を行っており、その金属電極(導電ペースト)の膜厚の薄膜化が求められている。
【0004】
現在、スクリーン印刷工法に使用されている従来のスクリーンマスクは、テンションを掛けて枠に貼り付けられたナイロンメッシュや金属メッシュを用いた編み込み式メッシュに、感光性の乳剤を塗布し、フォトリソマスクなどを介してUVによる露光・現像工程を行い、印刷したい目的のパターン形状の形成を行っている。
【0005】
しかしながら、従来のスクリーンマスクで印刷を行うと、印刷された導電ペーストの各々のパターンにメッシュ痕が発生したり、スクリーン版が印刷物から離れる際に印刷パターンのエッジ部付近の導電ペーストがスクリーン版のパターンエッジにもっていかれ、サドルと呼ばれる凸部が発生したりする。
【0006】
これらのメッシュ痕やサドルは、たとえば上述した積層セラミックコンデンサーの製造において、メッシュ痕は一つのパターン内に導電ペーストの膜厚にバラツキを生じ、メッシュ跡により薄くなっている部分では電気的抵抗が大きくなり、コンデンサーとしての性能を悪くする。
【0007】
また、サドルにおいては、導電ペーストが印刷されたセラミックスグリーシートを積層していく際に、鋭利な凸状となって乾燥された導電ペーストのサドルが非常に薄いセラミックスグリーンシートを突き破り、上層の導電ペーストと接触してショートしてしまう問題が発生する。
【0008】
さらに、編み込み式のメッシュを使用した従来のスクリーンマスクでは、メッシュ部の厚みが厚く、乳剤の厚みを薄くしてもスクリーンマスクのパターン内に搭載されるペーストの量が多くなり、薄膜の印刷が難しい。
メッシュの開孔率を変化させ、スクリーンマスクに搭載されるペーストの量をコントロールすることも可能だが、編み込みメッシュでは厚みや線径が限定されるため開孔率や開孔形状のコントロールには限界がある。
【0009】
また、編み込みメッシュを使用しないスクリーンマスクとして、たとえば特許文献1に記載のスクリーンマスクが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−17461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に係るスクリーン印刷版を図6及び図7に示す。図6及び図7に示すスクリーンマスクにおいて、スクリーンマスク全域におけるペースト厚さのバラツキを抑えることはできるが、図6及び図7のメッシュ部16にある格子状に規則的に2次元配置された複数の矩形状孔16aによってメッシュ痕が発生したり、一つのパターン内における凹凸や厚みにバラツキが生じる恐れがある。
【0012】
本発明は上記問題の解決の為に、印刷パターンエリア中の各々のパターンにおいて、メッシュ痕もサドルも発生せず、且つ非常に薄く均一に導電ペーストを印刷できるスクリーン印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係るスクリーン印刷版は、印刷パターンに対応するパターン開口を有するパターン部と、前記パターン開口に導電ペーストを供給するペースト供給口を有しスキージに接触するペースト供給部とからなる二層構造のマスクを備え、前記ペースト供給口がスキージの移動開始側から移動停止側まで移動方向に沿って設けられたスリット形状であって、このペースト供給口の幅寸法を前記スキージの移動開始側から移動停止側まで徐々に小さくしたことを特徴とする。
【0014】
このスクリーン印刷版では、ペースト供給部への導電ペーストの流れ込みやすさを考慮して、スキージの移動開始側から移動停止側までのペースト供給口の幅寸法を徐々に小さくすることにより、印刷後に印刷物とスクリーン印刷版が離れる際に、導電ペーストがパターン部のエッジに付着してスクリーン印刷版側にもっていかれることがないため、サドルと呼ばれる凸部が発生するのを確実に防止できる。
【0018】
請求項の発明は、請求項1に記載のスクリーン印刷版において、前記パターン部の厚みが3μm〜4μm、前記ペースト供給部の厚みが6μm〜8μmで、且つパターン部とペースト供給部の厚みの合計が11μm以上あることを特徴とする。
導電ペーストを薄く印刷する観点から、パターン部及びペースト供給部の厚みはできるだけ薄い方が良いが、スクリーンマスク印刷版の破れと歪及び変形を考慮すると、上記厚みが好ましい。
【0019】
このスクリーン印刷版では、パターン部のパターン開口に入る導電ペーストの量をペースト供給部におけるスリット形状のペースト供給口の幅寸法や個数を変えて開口率を調整することによりコントロールすることができる。
【0020】
請求項の発明は、請求項1に記載のスクリーン印刷版において、マスクが電鋳法により作製されたメタルマスクであることを特徴とする。
【0021】
このスクリーン印刷版においては、メタルマスクを電鋳法により作製するため、ペースト供給部におけるスリット形状のペースト供給口の幅寸法や形状や個数を自由に設計できる。
従って、ペースト供給部のペースト供給口のスリット形状は、ペーストの流れやすさなどを考慮して矩形以外にも、楕円形、三角形等のスリット形状にすることができる。
また、ペースト供給口の幅寸法も単一の寸法でなく、1パターン内、またはスクリーン印刷版のパターンエリア内の各々のパターンのペースト供給口の幅寸法を変更することも可能である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によるスクリーン印刷版では、ペースト供給部への導電ペーストの流れ込みやすさを考慮して、スキージの移動開始側から移動停止側までのペースト供給口の幅寸法を徐々に小さくすることにより、印刷後に印刷物とスクリーン印刷版が離れる際に、導電ペーストがパターン部のエッジに付着してスクリーン印刷版側にもっていかれることがないため、サドルと呼ばれる凸部を発生させずに非常に薄い均一な膜厚で導電ペーストを印刷することができるいう優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るスクリーン印刷版の平面図である。
図2図1に示すスクリーン印刷版の一部拡大斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るスクリーン印刷版のペースト供給部における変形例を示すペースト供給口の平面図である。
図4】本発明の実施形態に係るスクリーン印刷版におけるメタルマスクの作製工程図である。
図5】スクリーン印刷版のペースト供給部における比較例を示すペースト供給口の平面図である。
図6】従来例のスクリーン印刷版の平面図である。
図7図6に示すスクリーン印刷版の一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。この実施形態では、積層セラミックコンデンサーの内部電極をセラミックスグリーンシートに印刷する際のスクリーン印刷版を例にとって説明しているが、その他のスクリーン印刷工法にも適用できる。
【0025】
図1において、1はテトロン製メッシュであり、ステンレス製のフレーム2に張り付けられ接着剤によって接着されている。3は電鋳法により作製されメッシュ1に張り付けられたメタルマスクである。4はメタルマスク3のパターンエリアであり、一点鎖線で示している。5はメタルマスク3の開口部であり、一部を破線で示している。
【0026】
メタルマスク3の開口部5は図2に示すように、厚み方向にパターン部6とペースト供給部7とからなる二層構造になっている。パターン部6には、印刷パターンに対応する凹状のパターン開口61が所定のピッチで複数配置されて形成されている。ペースト供給部7には、スキージ(図示せず)の接触により、パターン開口61に導電ペースト(図示せず)を供給するペースト供給口71が形成されている。
【0027】
このように、メタルマスク3の開口部5には、パターン開口61とペースト供給口71が設けられ、一度の印刷で複数の電極をセラミックグリーンシートに印刷できるように、開口部5はパターンエリア4内に所定のピッチで規則的に複数配置されている。
【0028】
[変形例]
図3はペースト供給口71の変形例を示したもので、(a)はスキージの移動開始側Sから移動停止側Eまでのペースト供給口71の幅寸法を同一にしたものである。(b)はスキージの移動開始側Sから移動停止側Eまでのペースト供給口71の幅寸法を徐々に小さくしたものである。(c)はスキージの移動開始側Sから移動停止側Eまでのペースト供給口71の幅寸法を徐々に大きくしたものである。
尚、図3の(a)に示したペースト供給口71は角部を丸くした楕円形のスリット形状でも良く、また図3の(b)、(c)に示したペースト供給口71は移動開始側Sあるいは移動停止側Eの端部を鋭角にした三角形のスリット形状でも良い。
【0029】
次に、スクリーン印刷版におけるメタルマスク3の作製プロセスを図4に基づいて説明する。
図4の工程(1)に示すように、ステンレスなどの導電性基板8にレジストを塗布し、ペースト供給口71と同じ平面形状を有したフォトリソマスクを介してUVまたはX線などによる露光を行い、レジストを感光させる。次に現像液にてレジストの現像を行い不要な部分を除去して、ペースト供給口71と同じ平面形状のレジスト構造体9を作製する。
【0030】
次に工程(2)に示すように、電鋳法により例えばニッケル、あるいはニッケル合金などを導電性基板8上のレジスト構造体9を除く部分に電析させ、ペースト供給口71を有したペースト供給部7を作製する。
【0031】
次に工程(3)に示すように、ペースト供給部7上にレジストを塗布し、パターン開口61と同じ平面形状を有したフォトリソマスクを介してUVまたはX線などにより露光を行い、レジストを感光させる。この時、パターン開口61を有したフォトリソマスクをパターン開口61と工程(2)によって形成されたペースト供給口71の位置が対応するように置く。
次に、現像液によりレジストの現像を行いパターン開口61と同じ平面形状のレジスト構造体10を作製する。
【0032】
次に工程(4)に示すように、電鋳法によりたとえばニッケル、ニッケル合金などをペースト供給部7上にレジスト構造体10を除く部分に電析させ、パターン部6を作製する。
尚、ペースト供給部7とパターン部6の密着を強固にするため、パターン部6の電析を行う前に、酸処理などでペースト供給部7の表面の活性化を行うことが望ましい。
【0033】
次に工程(5)に示すように、レジスト構造体9および10の除去を行う。これによりペースト供給口71を有したペースト供給部7と、パターン開口61を有したパターン部6の二層構造が形成される。
パターン部6とペースト供給部7の厚みは導電ペーストを薄く印刷する観点から、できるだけ薄い方が良いが、後述する検証例によりスクリーンマスク印刷版の破れと歪及び変形を考慮し、パターン部6の厚みを3μm〜4μm、ペースト供給部7の厚みを6μm
〜8μmで、且つパターン部6とペースト供給部7の厚みの合計が11μm以上にしてある。
【0034】
次に、導電性基板8からペースト供給部7とパターン部6を一体的に剥離することにより、メタルマスク3が得られる。
このメタルマスク3を図1に示すように、フレーム2にテンションを掛けて張られたテトロン製メッシュ1上に置き、メタルマスク3の外周部とテトロン製メッシュ1を接着剤によって貼り付け、フレーム2の内側のテトロン製メッシュ1を切り取ることにより、本発明のスクリーン印刷版を作製することができる。
【0035】
以上の工程で作製された本発明によるスクリーン印刷版を用いて印刷テストを行い、導電ペーストの膜厚と印刷形状の確認を行った。尚、印刷テストにおいて、ペーストはニッケル粉末に溶剤を混合し、粘度40Pa・sのものを使用し、印刷機はask・Cosmo−S130を用いた。
印刷物はセラミックスグリーンシートを用いて、スクリーン印刷版と印刷物とのギャップは5umとした。印刷テスト実施後、導電ペーストが印刷されたセラミックスグリーンシートは、乾燥オーブンにて60℃で1時間保持し、導電ペーストの乾燥を行った後、その厚みを厚み測定機にて測定した。
【0036】
[検証例1]
印刷テストの検証例1として、図3(a)のペースト供給部7を搭載したスクリーン印刷版を用いて印刷した。その結果、1パターンの導電ペーストの厚みは1μmで均一であり、メッシュ痕とサドルは観察されなかった。
【0037】
[検証例2]
検証例2として、図3(b)(c)のペースト供給部7をそれぞれ搭載したスクリーン印刷版を用いて印刷をした。1パターンのペーストの厚みは1μmで均一であり、メッシュ痕とサドルは図3(b)(c)の何れの場合も観察されなかった。
特に、ペースト供給部7への導電ペーストの流れ込みやすさを考慮して、スキージの移動開始側Sから移動停止側Eまでのペースト供給口71の幅寸法を図3(b)のように徐々に小さくすると、印刷後に印刷物とスクリーン印刷版が離れる際に、導電ペーストがパターン部6のエッジに付着してスクリーン印刷版側にもっていかれることがないため、サドルと呼ばれる凸部が発生するのを確実に防止できることが確認できた。

【0038】
[検証例3]
検証例3として、図3(a)のペースト供給部7を搭載したスクリーンマスク印刷版において、パターン部6とペースト供給部7の厚みを変えて、スクリーンマスクの耐久性の検証を行った。この検証結果を表1に記載しており、パターン部6とペースト供給部7の厚みの組み合わせと、印刷後のスクリーン印刷版の歪み、破れ、及びパターン部6やペースト供給部7の変形の有無を示している。
【0039】
表1
【0040】
検証の結果、検証Noが8、11、12は良好に印刷されることが判明した。一方、検証Noが1〜7及び9、10はパターン部6とペースト供給部7の厚みの合計が10μm以下であり、印刷された導電ペーストに、破れや変や歪が観察された。
表1の結果からわかるように、スクリーン印刷版の耐久性を考慮すると、パターン部6の厚みは3μm〜4μm、ペースト供給部7の厚みは6μm〜8μmで、且つパターン部6とペースト供給部7の厚みの合計が11μm以上であることが好ましいことが立証された。



【0041】
[比較例]
図5は、本発明におけるペースト供給口71の比較例として例示したペースト供給部11の平面図であり、本発明のようにスキージの移動開始側Sから移動停止側Eまでのペースト供給口71をスリット形状にしないで、図5(a)はペースト供給口111を30個、図5(b)はペースト供給口111を40個設けたものである。
【0042】
この図5(a)(b)のペースト供給部11をそれぞれ搭載したスクリーン印刷版を用いて印刷をしたところ、1パターンのペーストの厚みは1.5〜2.5umでメッシュ痕とサドルが発生することが観察された。
【0043】
このように、本発明によれば、検証例と比較例との印刷テストの結果からもわかるように、ペースト供給口71をスキージの移動開始側Sから移動停止側Eまで移動方向に沿って設けられたスリット形状とすることにより、印刷パターンエリア内の各々の1パターンにおいて、メッシュ痕やサドルを発生させずに非常に薄い均一な膜厚で導電ペーストを印刷することができ、工業的価値が高く、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0044】
3 メタルマスク
6 パターン部
7 ペースト供給部
61 パターン開口
71 ペースト供給口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7