(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377429
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】デジタル変調器及び自主放送システム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/2668 20110101AFI20180813BHJP
H04N 21/2368 20110101ALI20180813BHJP
【FI】
H04N21/2668
H04N21/2368
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-129577(P2014-129577)
(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-10006(P2016-10006A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 義和
【審査官】
富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−169227(JP,A)
【文献】
特開2009−164872(JP,A)
【文献】
特開2014−096814(JP,A)
【文献】
特開2007−243573(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0324505(US,A1)
【文献】
特開平11−041582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号、主音声信号及び副音声信号を、放送用信号として、外部から入力するための入力部と、
前記入力部を介して入力された前記放送用信号を符号化する符号化部と、
該符号化部にて符号化されたデジタルデータと放送用の付加データとを多重化して、放送用のTS信号を生成する多重化部と、
前記多重化部にて生成されたTS信号を、所定放送チャンネルのテレビ放送信号に変調して出力する変調部と、
を備え、
前記入力部に、
前記主音声信号及び前記副音声信号をそのまま入力するか、信号経路を切り換えることで、前記主音声信号及び前記副音声信号を、主副を切り換えて入力するかを、外部操作によって切り換えるための主副切換回路、
を設けたことを特徴とするデジタル変調器。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル変調器を一対備えると共に、
該一対のデジタル変調器から出力されるテレビ放送信号を混合して出力する混合器を備え、
前記一対のデジタル変調器の入力部に、映像信号、主音声信号及び副音声信号にて構成される同一の放送用信号が入力され、
一方のデジタル変調器の前記主副切換回路が、前記主音声信号及び前記副音声信号をそのまま入力し、他方のデジタル変換器の前記主副切換回路が、前記主音声信号及び前記副音声信号を、主副を切り換えて入力するように設定され、
前記一対のデジタル変調器が前記変調部から出力するテレビ放送信号の放送チャンネルが、互いに異なる放送チャンネルに設定されていることを特徴とする自主放送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテル等の施設や特定の地域で、所定チャンネルのテレビ放送信号を使った自主放送を行うのに用いられるデジタル変調器、及び、そのデジタル変調器を備えた自主放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自主放送システムにて利用されるデジタル変調器は、自主放送用の映像信号及び音声信号を符号化し、その符号化したデジタルデータ(映像・音声データ)と番組表等の付加データとを多重化することで、放送TS(Transport Stream)と呼ばれる放送データを生成し、その生成した放送データを、所定放送チャンネルの放送信号にOFDM変調するように構成されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−199859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のデジタル変調器は、音声信号が主音声信号と副音声信号とから構成されている場合、各音声信号の主・副を変更することなく、そのまま符号化するようにされている。
【0005】
このため、例えば、主音声が日本語で、副音声が英語の場合、端末側のテレビ受信器では、自主放送の放送チャンネルを選局した直後には、必ず、主音声の日本語が再生されることになる。
【0006】
なお、これは、テレビ受信器は、音声信号に関しては所謂ラストステート機能がなく、選局中のテレビ放送の音声を主音声から副音声に切り換えても、選局チャンネルの切り換え、テレビ受信器の電源オフ等によって、音声の切り換え状態がリセットされてしまうからである。
【0007】
従って、例えば、ホテルで宿泊客が英語しか理解できない外国人である場合、その宿泊客は、自室のテレビ受信器を使って、自主放送されている放送番組を見るには、その放送番組を選局した後、音声を主音声から副音声に切り換えなければならず、使い勝手が悪いという問題があった。
【0008】
また、テレビ受信器の音声切り換えの操作は、頻繁に行われるものではなく、テレビ放送の選局操作に比べて分かり難い。このため、使用者によっては、音声の切り換え方法がわからず、折角2カ国語で自主放送しても、副音声が利用されないことがある。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、2カ国語放送を行う際に主音声と副音声とを任意に設定し得るデジタル変調器を提供することで、外国人向けのテレビ放送信号を簡単に生成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のデジタル変調器は、
映像信号、主音声信号及び副音声信号などの放送用信号を外部から入力するための入力部と、
前記入力部を介して入力された前記放送用信号を符号化する符号化部と、
該符号化部にて符号化されたデジタルデータと放送用の付加データとを多重化して、放送用のTS信号を生成する多重化部と、
前記多重化部にて生成されたTS信号を、所定放送チャンネルのテレビ放送信号に変調して出力する変調部と、
を備え、
前記入力部に、前記主音声信号と前記副音声信号とをそのまま入力するか、主副を切り換えて入力するかを、外部操作によって切り換えるための主副切換回路、
を設けたことを特徴とする。
【0011】
また,請求項2に記載の自主放送システムは、
請求項1に記載のデジタル変調器を一対備えると共に、
該一対のデジタル変調器から出力されるテレビ放送信号を混合して出力する混合器を備え、
前記一対のデジタル変調器の入力部に、映像信号、主音声信号及び副音声信号などの同一の放送用信号が入力され、
一方のデジタル変調器の前記主副切換回路が、前記主音声信号及び前記副音声信号をそのまま入力し、他方のデジタル変換器の前記主副切換回路が、前記主音声信号と前記副音声信号とを切り換えて入力するように設定され、
前記一対のデジタル変調器が前記変調部から出力するテレビ放送信号の放送チャンネルが、互いに異なる放送チャンネルに設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のデジタル変調器においては、上述した従来のデジタル変調器と同様、放送用信号を入力するための入力部と、放送用信号を符号化する符号化部と、符号化部にて符号化されたデジタルデータと放送用の付加データとを多重化する多重化部と、多重化部にて生成されたTS信号を所定放送チャンネルのテレビ放送信号に変調する変調部とを備える。
【0013】
そして、入力部には、主音声信号と前記副音声信号とをそのまま入力するか、主副を切り換えて入力するかを、外部操作によって切り換えるための主副切換回路が設けられている。
【0014】
このため、本発明のデジタル変調器によれば、端末側のテレビ受像器の用途に応じて、入力部に入力された主音声信号と副音声信号を切り換えることなくテレビ放送信号として出力することもできるし、主副を切り換えたテレビ放送信号として出力することもできる。
【0015】
従って、端末側のテレビ受像器の利用者は、本発明のデジタル変調器にて生成されたテレビ放送信号を選局させた際に、音声信号の主副を切り換えることなく、所望の言語でテレビ放送を楽しむことができる。
【0016】
また、本発明のデジタル変調器によれば、端末側のテレビ受像器の用途に応じて音声信号の主副を設定してから、音声信号を入力する必要がないので、自主放送を行う場合に、音声信号切換用の装置を別途用意する必要がなく、自主放送システムの構成を簡単にすることができる。
【0017】
次に、請求項2に記載の自主放送システムにおいては、本発明のデジタル変調器を一対備える。そして、その一対のデジタル変調器の入力部には、映像信号、主音声信号及び副音声信号などの同一の放送用信号が入力される。
【0018】
また、一方のデジタル変調器の主副切換回路は、主音声信号及び副音声信号をそのまま入力するように設定され、他方のデジタル変換器の主副切換回路は、主音声信号と副音声信号とを切り換えて入力するように設定され、更に、これら各デジタル変調器が変調部から出力するテレビ放送信号の放送チャンネルは、互いに異なる放送チャンネルに設定される。
【0019】
このため、各デジタル変調器から出力されるテレビ放送信号を混合する混合器からは、映像信号が同じで音声信号の主副が異なる2チャンネル分のテレビ放送信号が出力されることになり、この2つのテレビ放送信号を自主放送信号として1本のケーブルで端末側に伝送できる。
【0020】
従って、端末側では、テレビ受像器に選局させる放送チャンネルを切り換えることで、音声の主副を切り換える操作を行うことなく、自主放送を主音声でも副音声でも楽しむことができるようになり、端末側で自主放送を見るときのテレビ受像器の操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態の自主放送システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】実施形態のデジタル変調器の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の自主放送システムは、予め作製されDVD、HDD等の記憶媒体に記憶された放送用信号を再生するための再生装置2と、再生装置2から出力される放送用信号を2分配する分配器4と、分配器4を介して入力される同一の放送用信号を、それぞれ、所定放送チャンネルのテレビ放送信号に変換するための一対のデジタル変調器6、8と、デジタル変調器6、8から出力されるテレビ放送信号を混合して出力する混合器9と、を備える。
【0023】
ここで、再生装置2が再生する放送用信号は、ホテルの館内放送、地域の告知放送、といった各種自主放送を行うためのものであり、映像信号と音声信号とを含む。また、音声信号は、一般的なテレビ放送と同様、モノラル音声信号、ステレオ音声信号、若しくは、主音声信号と副音声信号との多重音声信号、にて構成される。
【0024】
デジタル変調器6は、分配器4を介して入力される放送用信号を、そのまま、所定放送チャンネルNのテレビ放送信号に変換して出力するためのものである。
また、デジタル変調器8は、分配器4を介して入力される放送用信号の音声信号が多重音声信号である場合に、音声信号の主副を切り換えて、デジタル変調器6とは異なる放送チャンネルMのテレビ放送信号を生成するのに用いられる。
【0025】
なお、デジタル変調器8は、音声信号がモノラル音声信号若しくはステレオ音声信号である場合には、その音声信号を含む放送用信号をそのままチャンネルMのテレビ放送信号に変換するように手動で設定される。
【0026】
デジタル変調器6及び8は、放送用信号の音声信号が多重音声信号である場合に主副を切り換えるか否かの設定、及び、生成するテレビ放送信号のチャンネル設定、が異なるだけであり、装置構成は同じである。
【0027】
すなわち、
図2に示すように、デジタル変調器6及び8は、放送用信号の入力端子として、アナログ入力端子12と、HDMI(登録商標,High-Definition Multimedia Interface )入力端子14と、SDI(Serial Digital Interface)入力端子16との、3種類の入力端子を備える。
【0028】
そして、これら各入力端子12、14、16を介して入力されたアナログ、HDMI規格、SDI規格の放送用信号は、入力切換回路18に入力される。
入力切換回路18は、上記3種類の放送用信号の内の何れか一つを選択して、映像信号及び2系統(モノラル、左右、若しくは主副)の音声信号に変換するためのものである。
【0029】
そして、入力切換回路18から出力される映像信号は、符号化部20に入力され、入力切換回路18から出力される2系統の音声信号は、主副切換回路22を介して、符号化部20に入力される。
【0030】
主副切換回路22は、入力切換回路18から入力される2系統の音声信号が主音声信号と副音声信号とから構成されている場合に、その信号経路を切り換えることで、主副を切り換えて出力するためのものである。
【0031】
なお、入力切換回路18にて選択される放送用信号、及び、主副切換回路22が信号経路を切り換えるか否か(換言すれば音声信号の主副を切り換えるか否か)は、制御回路30により設定される。
【0032】
次に、符号化部20は、入力切換回路18及び主副切換回路22を介して入力される放送用信号(映像信号+2系統の音声信号)から、HD画質にデジタル化された映像・音声データ(例えば、MPEG-2 TS )を生成するためのものである。
【0033】
そして、その生成された映像・音声データは、多重化部24に入力され、多重化部24にて、時刻情報、番組表情報等の各種付加データと多重化されることにより、デジタル放送信号(放送TS)に変換される。
【0034】
また、多重化部24にて生成されたデジタル放送信号(放送TS)は、変調部26に入力され、変調部26にて、所定放送チャンネルの周波数帯のテレビ放送信号であるOFDM信号に変調されて、当該デジタル変調器6又は8から、混合器9へ出力される。
【0035】
なお、変調部26にて生成されるテレビ放送信号の放送チャンネルは、制御回路30により設定される。
次に、制御回路30は、外部装置(例えば、パーソナルコンピュータや携帯情報端末(タブレット若しくは多機能携帯電話)等)32との間で無線若しくは有線による通信を行う通信機能を有するマイクロコンピュータにて構成されている。
【0036】
そして、制御回路30は、外部装置32からの指令に従い、入力切換回路18による放送用信号の選択、主副切換回路22による信号経路の切り換え(音声信号の主副の切り換え)、変調部26にて生成されるテレビ放送信号の放送チャンネル、多重化部24にて映像・音声データに付加する付加データ、等の各種設定を行う。
【0037】
従って、本実施形態のデジタル変調器6、8は、これらのパラメータを、外部装置32を使って任意に設定できることになる。
以上説明したように、本実施形態のデジタル変調器6、8においては、入力端子12、14、16から符号化部20に至る映像及び音声信号の入力部に、入力切換回路18と主副切換回路22が設けられている。
【0038】
そして、主副切換回路22は、使用者が外部装置32から制御回路30を介して、音声信号の信号経路を切り換えることで、音声信号が主音声信号と副音声信号とから構成されている場合に主副を切り換えることができるようにされている。
【0039】
このため、本実施形態のデジタル変調器6、8によれば、デジタル変調器6のように、音声信号の主音声信号と副音声信号を切り換えることなく、所望放送チャンネルのテレビ放送信号を生成することもできるし、デジタル変調器8のように、音声信号の主副を切り換えて、所望放送チャンネルのテレビ放送信号を生成することもできる。
【0040】
また、本実施形態の自主放送システムには、音声信号の主副の切り換え、及び、生成するテレビ放送信号の放送チャンネルが、互いに異なるように設定された2つのデジタル変調器6、8を備え、各デジタル変調器6、8にて生成されたテレビ放送信号を混合器9で混合して、端末側に出力するようにされている。
【0041】
従って、端末側では、テレビ受像器に選局させる放送チャンネルを切り換えることで、音声の主副を切り換える操作を行うことなく、自主放送を主音声でも副音声でも楽しむことができるようになり、端末側で自主放送を見るときのテレビ受像器の操作性を向上できる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、主副切換回路を専用のハードウェアで実現する方法を示したが、符号化・多重化プロセスの中で、ソフトウェア的に実現してもよい。この場合、TS信号の中の音声データストリームを、Lch/Rchを入れ換えることで実現できる。
【符号の説明】
【0043】
2…再生装置、4…分配器、6,8…デジタル変調器、9…混合器、12…アナログ入力端子、14…HDMI入力端子、16…SDI入力端子、18…入力切換回路、20…符号化部、22…主副切換回路、24…多重化部、26…変調部、30…制御回路、32…外部装置。