(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377439
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】理美容椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 1/06 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
A47C1/06
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-153697(P2014-153697)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30063(P2016-30063A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】508189946
【氏名又は名称】株式会社パイオニア椅子
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】松尾 英明
【審査官】
須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−238808(JP,A)
【文献】
実開平01−126142(JP,U)
【文献】
特開昭54−006653(JP,A)
【文献】
実開昭53−131900(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C1/024−1/027
A47C1/04−1/11
A47C3/18−3/40
A61G13/00−15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部(2)と、該座部(2)の前下方に配設された前垂れ状取付板(16)と、該前垂れ状取付板(16)に取着されたステップ板(17)と、後方へ傾動可能な背もたれ部(3)とを、備え、該背もたれ部(3)を起立させて上記座部(2)に被施術者(45)を座らせる腰掛使用状態と、上記背もたれ部(3)を後方へ傾動させて上記被施術者(45)を仰臥姿勢とし頭部(46)を後方の洗髪用流し台(50)に乗せるバックシャンプー使用状態とに、切換可能とした理美容椅子に於て、
上記座部(2)及び上記背もたれ部(3)が取着された昇降台枠(1)を昇降させるための主昇降シリンダ(10)と、該昇降台枠(1)に対して上記座部(2)を昇降させるための副昇降シリンダ(20)と、バックシャンプー使用状態下で上記仰臥姿勢となる上記被施術者(45)の脚部(47)を下方から支持するためのフットレスト(4)と、を備え、
上記フットレスト(4)を、上記座部(2)の前端縁(2A)に上下揺動自在に取着し、かつ、フットレスト揺動用シリンダ(25)の一端部を、上記フットレスト(4)に取着すると共に、上記フットレスト揺動用シリンダ(25)の他端部を、上記座部(2)に取着し、上記フットレスト(4)を、上記前垂れ状取付板(16)に接近した垂下状姿勢から上方揺動させて上記仰臥姿勢の上記脚部(47)をほぼ水平に支持するように構成し、
さらに、上記仰臥姿勢の上記脚部(47)を支持したほぼ水平の上記フットレスト(4)と上記フットレスト揺動用シリンダ(25)と上記座部(2)とが、上記昇降台枠(1)及び後方へ傾動した姿勢の上記背もたれ部(3)に対して、上記副昇降シリンダ(20)によって昇降するように構成したことを特徴とする理美容椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容院等で利用客の洗髪を行う際に、背もたれ部を後方へ傾動させて、洗髪される人を仰向け姿勢とし、頭部を後方の洗髪用流し台に乗せる、いわゆるバックシャンプー状態に切換える理美容椅子があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−4911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の理美容椅子は、洗髪される人の体型によっては、背もたれ部を後方へ傾動させただけでは、頭部を洗髪用流し台に乗せることができなかった。例えば、身長の低い女性客や子供は、座高が低いので、座った姿勢から仰向け姿勢となっても頭部が洗髪用流し台に届かず、自ら後方へ移動して頭部の位置を調整しなければならなかった。
【0005】
そこで、
図4に示すように、背もたれ部43に対し座部42を上昇させ、洗髪される人45が頭部46の位置を調整し易くするということが行われている。
しかし、座部42だけが上昇することで、脚部47を支持するフットレスト44と座部42の間に段差Gが生じ、洗髪される人45が仰け反って苦しい姿勢になるという欠点があった。
【0006】
そこで、本発明は、バックシャンプー使用状態で、洗髪される人が楽な姿勢で頭部を洗髪用流し台に乗せることのできる理美容椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る理美容椅子は、座部と、
該座部の前下方に配設された前垂れ状取付板と、該前垂れ状取付板に取着されたステップ板と、後方へ傾動可能な背もたれ部とを、備え、該背もたれ部を起立させて上記座部に被施術者を座らせる腰掛使用状態と、上記背もたれ部を後方へ傾動させて
上記被施術者を仰臥姿勢とし頭部を後方の洗髪用流し台に乗せるバックシャンプー使用状態とに、切換可能とした理美容椅子に於て、上記座部及び上記背もたれ部
が取着された昇降台枠を昇降させるための主昇降シリンダ
と、該昇降台枠
に対して上記座部を昇降させる
ための副昇降シリンダ
と、バックシャンプー使用状態下で
上記仰臥姿勢となる
上記被施術者の脚部を下方から支持する
ためのフットレストと、を備え、上記フットレストを、上記座部の前端縁に
上下揺動自在に取着し、
かつ、フットレスト揺動用シリンダの一端部を、上記フットレストに取着すると共に、上記フットレスト揺動用シリンダの他端部を、上記座部に取着し、上記フットレストを、上記前垂れ状取付板に接近した垂下状姿勢から上方揺動させて上記仰臥姿勢の上記脚部をほぼ水平に支持するように構成し、さらに、上記仰臥姿勢の上記脚部を支持したほぼ水平の上記フットレストと上記フットレスト揺動用シリンダと上記座部とが、上記昇降台枠及び後方へ傾動した姿勢の上記背もたれ部に対して、上記副昇降シリンダによって昇降するように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の理美容椅子によれば、洗髪される人(被施術者)が仰け反ることなく、楽な仰向け姿勢で頭部を洗髪用流し台に乗せることができる。座部を上昇させてもフットレストとの間に段差を生じることなく、被施術者が腰を反らせて苦しい姿勢とならないように安定して支持し、バックシャンプー状態で快適に洗髪できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の理美容椅子の腰掛使用状態を示した側面図である。
【
図2】本発明の理美容椅子のバックシャンプー使用状態を示した側面図である。
【
図3】バックシャンプー使用状態に於て座部及びフットレストが上昇する本発明の理美容椅子の側面図である。
【
図4】バックシャンプー使用状態に於て座部のみが上昇する従来の理美容椅子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1と
図2に示すように、本発明の理美容椅子は、美容院等で利用客(被施術者)45を座部2に座らせる腰掛使用状態と、背もたれ部3を後方へ傾動させて利用客(被施術者)45を仰臥姿勢とし頭部46を後方の洗髪用流し台50に乗せるバックシャンプー使用状態とに、切換可能とした理美容椅子であって、座部2及び背もたれ部3が取着される昇降台枠1と、昇降台枠1を昇降させる主昇降シリンダ10とを、備えている。
【0011】
昇降台枠1は、下面に主昇降シリンダ10のロッドの先端が取着され、かつ、座部2を昇降させる副昇降シリンダ20を付設している。主昇降シリンダ10は、床に設置された土台15に鉛直状に支持されている。主昇降シリンダ10は、昇降台枠1と共に座部2及び背もたれ部3を昇降させる。
座部2は、クッション性を有するシート部材21と、シート部材21の下面に配設される座板部材22とを、有し、座板部材22の下面に、副昇降シリンダ20のロッドの先端が取着されている。副昇降シリンダ20は、(昇降台枠1に対し)座部2を独立して昇降させる。即ち、背もたれ部3の高さ位置を保ちつつ、副昇降シリンダ20によって座部2の高さ位置のみ調節可能としている。この構成により、
図1の腰掛使用状態に於て、座高の低い子供や、ロングヘアーで身長が低い女性客が座部2に腰掛ける状況でも、座部2の高さ位置を適宜変更して、散髪や染毛等の施術を行い易いように調節できる。なお、副昇降シリンダ20には、座部2を常時下方へ弾発付勢する引張バネ23が付設されている。
【0012】
昇降台枠1の後端縁には、(L字状)取付部材31を介して背もたれ部3が揺動自在に枢着されている。背もたれ部3は、クッション性を有するバックレスト部材32と、バックレスト部材32の後面に配設され主要操作スイッチSの全てが設けられた背板部材33とを、有している。なお、図示省略の背もたれ部揺動用シリンダによって、背もたれ部3を後方へ傾動させるのが好ましい。あるいは、昇降台枠1の昇降に伴って、背もたれ部3を後方へ傾動させるリンク機構を設けても良い。
昇降台枠1の前端縁には、前垂れ状取付板16が固着されており、取付板16の下端に前方突出状のステップ板17が取着されている。なお、図示省略するが、前垂れ状取付板16及びステップ板17は、座部2(座板部材22)の前端縁2Aに固着するも好ましく、副昇降シリンダ20による座部2の昇降に伴って取付板16及びステップ板17が昇降しても良い。
【0013】
座部2の前端縁2Aには、上下方向に揺動自在のフットレスト4が取着されている。
フットレスト4は、
図1に示す腰掛使用状態では、前垂れ状取付板16に沿って略垂下状態にて保持され、被施術者45は、脚部47をステップ板17に乗せて座る。
図1から
図2に示すバックシャンプー使用状態に切換える際、座板部材22に設けられたフットレスト揺動用シリンダ25によってフットレスト4が下方から上方へ揺動し、フットレスト4が仰臥姿勢の被施術者45の脚部47を支持する。なお、フットレスト揺動用シリンダ25には、フットレスト4を下方へ揺動させる方向に常時弾発付勢する引張バネ26が付設されている。フットレスト揺動用シリンダ25は、背もたれ部3の後方への傾動に連動して、フットレスト4を上方へ揺動させるように、電気的に制御するのが好ましい。
【0014】
図3に示すように、フットレスト4は、副昇降シリンダ20による座部2の昇降に伴って、座部2と一緒に昇降するように構成されている。
図3に於て、座部2及びフットレスト4を上昇させることで、被施術者45は、頭部46を後方の洗髪用流し台50に乗せ易くなる。しかも、被施術者45は、ほぼ水平仰臥姿勢となって、脚部47だけが下がることなく、楽な姿勢で仰向けに寝ることができる。即ち、座部2及びフットレスト4は一緒に昇降して、段差を創ることなく、被施術者45の腰部から脚部47を安定して支持する。こうして、被施術者45の腰が反らず、仰け反る姿勢になるのを防止する。被施術者45は、安定した楽な姿勢で頭部46を洗髪用流し台50に乗せることができる。
【0015】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、副昇降シリンダ20は、復動式油圧シリンダとしても良く、この場合、引張バネ23を省略しても良い。
【0016】
以上のように、本発明に係る理美容椅子は、座部2と、後方へ傾動可能な背もたれ部3とを、備え、背もたれ部3を起立させて座部2に被施術者45を座らせる腰掛使用状態と、背もたれ部3を後方へ傾動させて被施術者45を仰臥姿勢とし頭部46を後方の洗髪用流し台50に乗せるバックシャンプー使用状態とに、切換可能とした理美容椅子に於て、座部2及び背もたれ部3は、主昇降シリンダ10によって昇降する昇降台枠1に取着され、かつ、昇降台枠1には、座部2を昇降させる副昇降シリンダ20を設け、バックシャンプー使用状態下で、仰臥姿勢となる被施術者45の脚部47を下方から支持するフットレスト4を、座部2の前端縁2Aに取着し、副昇降シリンダ20による座部2の昇降に伴ってフットレスト4が昇降するように構成したので、被施術者45が仰け反ることなく、楽な仰向け姿勢で頭部46を洗髪用流し台50に乗せることができる。座部2を上昇させてもフットレスト4との間に段差を生じることなく、被施術者45が腰部を反らせて苦しい姿勢とならないように安定して支持し、バックシャンプー状態で快適に洗髪できる。
【符号の説明】
【0017】
1 昇降台枠
2 座部
2A 前端縁部
3 背もたれ部
4 フットレスト
10 主昇降シリンダ
16 前垂れ状取付板
17 ステップ板
20 副昇降シリンダ
25 フットレスト揺動用シリンダ
45 被施術者
46 頭部
47 脚部
50 洗髪用流し台