(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固有振動検出部は、所定の環境条件が予め定められた期間継続した場合に前記固有振動数を検出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の風力発電装置の状態監視装置。
前記固有振動数検出部は、前記複数の振動センサのうちの第1の振動センサにより検出される振動のスペクトルの位相と、前記複数の振動センサのうちの第2の振動センサにより検出される振動のスペクトルの位相との比較結果に基づいて、前記風力発電装置の振動モードを同定する、請求項6に記載の風力発電装置の状態監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下に複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている。なお、以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による状態監視装置が適用される風力発電装置の外観図である。
図1を参照して、風力発電装置10は、ロータヘッド20と、ブレード30と、ナセル90と、タワー100とを備える。タワー100の上部にナセル90が設置される。ナセル90は、タワー100の上部において回動可能に支持され、風向きに応じてナセル90の向き(ヨー角)が制御される。
【0021】
ブレード30は、ロータヘッド20の周方向に取り付けられる。ブレード30は、ピッチ角(ブレード30の風受け面の角度)を変更可能に構成され、風力等に応じてピッチ角が適宜制御される。ロータヘッド20には、ナセル90の内部に導入される主軸が接続されており、主軸は、出力軸に発電機が接続される増速機の入力軸に連結される(図示せず)。
【0022】
図2は、風力発電装置10の構成を詳細に示した図である。
図2を参照して、ナセル90の内部には、主軸35と、増速機40と、発電機50と、主軸用軸受60と、振動センサ65,70,72と、状態監視装置80とが設けられる。ナセル90は、タワー100上においてヨー駆動装置105により回動自在に支持される。
【0023】
主軸35は、ロータヘッド20に接続され、ロータヘッド20からナセル90内に進入して増速機40の入力軸に接続される。主軸35は、ブレード30が風力を受けることによって発生する回転力を増速機40の入力軸へ伝達する。ブレード30は、ロータヘッド20に設けられ、風力を回転力に変換して主軸35に伝達する。
【0024】
増速機40は、主軸35と発電機50との間に設けられ、主軸35の回転速度を増速して発電機50へ出力する。増速機40は、遊星ギヤや中間軸、高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。発電機50は、増速機40の出力軸に接続され、増速機40から受ける回転力によって発電する。発電機50は、たとえば、誘導発電機によって構成される。
【0025】
主軸用軸受60は、主軸35を回転自在に支持する。主軸用軸受60は、転がり軸受によって構成され、たとえば、自動調心ころ軸受や円すいころ軸受、円筒ころ軸受、玉軸受等によって構成される。主軸用軸受60は、単列のものでも複列のものでもよい。振動センサ65は、主軸用軸受60の振動を検出する。なお、振動センサ65は、この発明における「回転振動検出部」の一実施例に対応するものである。
【0026】
振動センサ70,72は、風力発電装置10に生じる振動を検出する。この風力発電装置10に生じる振動を検出する振動センサの数は、1つであってもよいし、3つ以上あってもよいが、複数であることが好ましい。1つのセンサが振動の節に存在しても、その他のセンサで振動を検出したり、個々のセンサの出力は小さくても複数のセンサの出力に基づいて固有振動が発生しているものと判断したりし得るからである。
【0027】
振動センサ70,72の各々は、水平方向に直交する2軸方向の振動を少なくとも検知可能であり、たとえば圧電素子を用いた加速度センサによって構成される。振動センサ70,72は、主軸用軸受60の振動を検出する振動センサ65よりも低い周波数の振動を検出可能に構成され、たとえば0.05Hzの低周波まで測定可能(±3dB範囲)な公知の低周波用の加速度センサを採用可能である。
【0028】
この実施の形態1では、振動センサ70,72は、ナセル90内に設けられ、たとえばナセル90内のフレームに取り付けられる。振動センサ70は、タワー100に対するナセル90の回動軸よりもナセル90の前方側(ロータヘッド20側)に設けられる。一方、振動センサ72は、タワー100に対するナセル90の回動軸よりもナセル90の後方側(発電機50側)に設けられる。なお、振動センサ70,72の配置は、このようなものに限定されるものではないが、図示されるようにナセル90の回動軸を挟んで両側にそれぞれ振動センサ70,72を配置することによって、風力発電装置10の振動モードを精度よく同定することが可能となる(後述)。
【0029】
状態監視装置80は、振動センサ70,72の検出値を受ける。そして、状態監視装置80は、予め準備されたプログラム等に従って風力発電装置10の状態監視処理を実行する。状態監視装置80による状態監視の一例として、状態監視装置80は、風力発電装置10の固有振動数を検出し、設備設置当初からの固有振動数の変化(低下)を監視することによって、金属疲労等によりタワー100に生じた亀裂や結合要素(ボルトや溶接等)の損傷等に起因する機械強度(剛性)の低下が生じているか否かを検知する。風力発電装置10の固有振動数の検出については、状態監視装置80は、振動センサ70,72によって検出される振動波形の周波数分析を行ない、その周波数分析結果に基づいて固有振動数を検出する。
【0030】
図3,
図4を用いて、タワー100に亀裂が生じた場合の固有振動数の変化(低下)について解析したシミュレーション結果を説明する。
図3は、タワーに亀裂が生じた場合の亀裂の長さと固有振動数との関係の一例を示した図である。
図4は、亀裂の長さと固有振動数の低下率との関係の一例を示した図である。この
図3,
図4では、一例として、タワー100のねじり振動についての固有振動数が示されている。
【0031】
シミュレーションは、風力発電装置10の有限要素モデルを作成し、タワー100に亀裂が生じていない場合と、所定量の亀裂を与えた場合とについて行なった。シミュレーションでは、タワー100は、直径2m板厚8mmの鋼製の薄肉円筒であって高さ50mとし、タワー100の上端に近いところに鋼板の厚みに達する亀裂を周方向に与えた。
【0032】
図3,
図4を参照して、亀裂長角度(deg)は、タワー100の周方向に与えた亀裂の長さを表わすものであり、亀裂長角度0°は亀裂無しの場合を示し、亀裂長角度180°はタワー周方向の半周にわたって亀裂を与えた場合を示す。
【0033】
亀裂長角度60°(タワー全周の1/6)では、固有振動数の低下は見られないが、亀裂長角度120°(タワー全周の1/3)になると、固有振動数の低下が見られ、亀裂長角度180°(タワー全周の1/2)では、固有振動数が大きく低下する。このように、タワー100に亀裂が生じると、タワー100の剛性が低下し、固有振動数の低下となって現れる。そこで、振動センサ70,72の検出値を用いて風力発電装置10の固有振動数を検出し、設備設置当初からの固有振動数の変化(低下)を監視することによって、タワー100に生じた亀裂や結合要素(ボルトや溶接等)の損傷等の異常が検知される。
【0034】
ここで、風力発電装置10の固有振動数は、ナセル90の向き(ヨー角)によって変化する。タワー100以下の構造物の剛性について、タワー100の周方向にばらつきがあるからである。すなわち、一般的に、タワーは、いくつかの円筒部材をフランジのついたリング状の鋼部材で繋ぎ合わせることによって構成されるところ、フランジ面の加工誤差やボルト締付力のばらつき等によって、タワー全体の曲げ剛性には方向(水平方向)によるばらつきがある。また、地面にはコンクリートのベース等が設けられるが、このベースの形状もタワーの周方向に均一であるとは限らない。ベースが設置される地面自体の剛性も、方向によるばらつきは少なからず存在し得る。
【0035】
このように、タワーを含むタワー以下の構造物の剛性は、タワーの周方向にばらついており、以下では、これを「タワーの剛性の異方性」と称する。ナセル90は、
図1,2に示したように長方形あるいは長筒状の形状をしているので、ナセル90の向きが変わると、タワー以下の構造物にかかる力の分布が変わり、タワーの剛性の異方性によって固有振動数が変化する。そこで、この実施の形態1では、
図5に示すように、任意の基準方向からのナセル90の向きαに応じて風力発電装置10の固有振動数を監視する。これにより、タワーの剛性の異方性による、ナセル90の向きαに応じた固有振動数の変化の影響を排除し、タワー100に生じた亀裂等による剛性低下に基づく固有振動数の変化(低下)を精度よく検出することができる。
【0036】
図6は、
図2に示した状態監視装置80の機能ブロック図である。
図6を参照して、状態監視装置80は、ハイパスフィルタ(HPF)110,112と、周波数分析部120,122と、固有振動数検出部130と、記憶部140と、変化率算出部150と、異常検知部160とを含む。
【0037】
HPF110は、振動センサ70から受ける検出信号について、予め定められた周波数よりも高い信号成分を通過させ、低周波成分を遮断する。HPF110は、振動センサ70の検出信号に含まれる直流成分を除去するために設けられるものである。振動センサ70の検出信号が直流成分を含まないものであれば、HPF110を省略してもよい。
【0038】
周波数分析部120は、HPF110によって直流成分が除去された振動波形に対して周波数分析を行ない、分析結果を固有振動数検出部130へ出力する。具体的には、周波数分析部120は、HPF110から受ける振動波形に対して高速フーリエ変換(FFT)処理を行ない、
図7に示すようなフーリエスペクトルおよび位相差スペクトルの算出結果を固有振動数検出部130へ出力する。
【0039】
図3に示したように、風力発電装置10の固有振動数は、低いところでは0.3Hz程度になり得るところ、この固有振動数についてたとえば1%の変化を監視するためには、0.003Hz程度の周波数分解能が必要となる。そこで、この実施の形態1では、周波数分析部120におけるフーリエ変換の対象となる振動波形の時間軸長さTは300秒以上とされる。周波数分解能は、1/Tで表わされるので、0.003Hz程度の周波数分解能を実現するためには、時間軸長さTは300秒以上の長さが必要となるからである。
【0040】
なお、特に図示しないが、フーリエ変換によって得られたスペクトルを複数回測定して平均化してもよい。これにより、ランダムなノイズ成分を小さくすることができる。
【0041】
HPF112は、振動センサ72の検出信号を受ける。周波数分析部122は、HPF112によって直流成分が除去された振動波形を受ける。HPF112および周波数分析部122の構成は、それぞれHPF110および周波数分析部120と同様であるので、説明を繰り返さない。
【0042】
固有振動数検出部130は、周波数分析部120,122による周波数分析の結果に基づいて、風力発電装置10の固有振動数を検出する。詳しくは、
図7に示すように、フーリエスペクトルにおいては、固有振動数fはピーク値で示され、位相差スペクトルにおいては、固有振動数fはスペクトルの位相が反転するゼロクロス点で示される。そこで、固有振動数検出部130は、周波数分析部120および/または122から受けるフーリエスペクトルのピーク値を検出するか、あるいは周波数分析部120および/または122から受ける位相差スペクトルのゼロクロス点を検出することによって固有振動数fを検出する。
【0043】
ここで、上述のように、風力発電装置10の固有振動数は、ナセル90の向きα(
図5)によって変化するところ、この実施の形態1では、ナセル90の向きに応じて固有振動数が監視される。
【0044】
図8は、状態監視装置80において監視される固有振動数を示した図である。
図8を参照して、ナセル90の向きは、30°毎に区分される。そして、固有振動数検出部130は、上述の方法によって固有振動数を検出するとともにその検出時のナセル90の向きを取得し、ナセル90の向きに応じた区分の固有振動数を検出したものとする。ナセル90の向きは、ヨー駆動装置105(
図2)に設けられる角度センサ、あるいはヨー駆動装置105への角度指令値に基づいて検知可能である。なお、区分はこれに限定されるものではない。1区分の範囲を広くして区分の数を減らしてもよいし、1区分の範囲を狭くして区分の数を増やしてもよい。
【0045】
なお、ナセル90の向きを回転させるヨー駆動装置105が作動している状態では、駆動用歯車の接触剛性が増すので、ナセル90とタワー100とのねじり方向の剛性も向上する。そこで、ヨー駆動装置105の消費電力や回転速度等を入力または測定し、これらに応じて区分をさらに細分化して固有振動数を記憶・比較し、固有振動数の低下を検出してもよい。たとえば、ヨー駆動装置105の消費電力が定格の10%以下、10〜60%、そして60%以上と、ナセル90の各向きに対してさらに区分を設けるとよい。
【0046】
さらに、この実施の形態1では、各区分において6つの固有振動数が検出される。たとえば、ナセル90の向きが0〜30°の区分において、f1(1)〜f1(6)の6つの固有振動数が検出される。このようにした理由は以下のとおりである。すなわち、振動モードとしては、タワーの曲げとねじりとについて確認する必要がある。この場合、曲げについては、重根が存在するので2つの固有値が存在し、ねじりについては、1つの固有値が存在する。また、曲げおよびねじりの各々の振動モードについて高次のモードが存在するところ、この実施の形態1では、少なくとも2次までの振動モードを確認することとして、合計6つの固有振動数を検出することとしたものである。なお、より高次のモードまで確認するために、より多くの固有振動数を検出してもよい。
【0047】
なお、各区分において少なくとも6つの固有振動数を検出することは、この発明においては必須の構成ではない。たとえば、シミュレーション結果から、タワーの周方向に生じる亀裂に対しては、タワーのねじり振動の固有振動数が相対的に大きく変化するので、各区分においてねじり振動の固有振動数のみを検出するようにしてもよい。
【0048】
再び
図6を参照して、固有振動数検出部130は、設備設置当初に検出される固有振動数をナセル90の向きの区分毎に記憶部140に記録する。なお、
図8に示される各固有振動数が設備設置後直ちに検出されるとは限らないが、風力発電装置10の稼働時間の累積に伴ない全ての固有振動数が検出されて記録される。あるいは、各区分において固有振動数を検出するために、ナセル90の向きが各区分に入るようにナセル90を強制的に回動させてもよい。そして、記憶部140に記録された設備設置当初の各固有振動数を基準として、固有振動数の低下に基づく状態監視が行なわれる。
【0049】
変化率算出部150は、固有振動数検出部130によって検出される固有振動数、およびその検出時のナセル90の向きに関する情報を受ける。そして、変化率算出部150は、ナセル90の向きに応じた固有振動数の基準値(設備設置当初の値)を記憶部140から読出し、固有振動数検出部130から受ける固有振動数と比較することによって固有振動数の低下率を算出する。なお、上述のように、固有振動数は区分毎に6つ管理されており、検出された各固有振動数について低下率が算出される。
【0050】
異常検知部160は、変化率算出部150の算出結果に基づいて、風力発電装置10の異常を検知する。すなわち、異常検知部160では、6つの固有振動数に対して異常と判定するための固有振動数低下率のしきい値が予め設定されており、変化率算出部150により算出された低下率がしきい値を超える場合には、風力発電装置10が異常であると判定される。なお、ナセル90の向きのいずれかの区分において6つの固有振動数の1つでも低下率がしきい値を超えると、風力発電装置10が異常であると判定される。
【0051】
なお、上記においては、設備設置当初の固有振動数が記憶部140に記録されるものとしたが、固有振動数検出部130により検出される固有振動数をナセル90の向きの区分毎に常時記録し、変化率算出部150は、記憶部140に記録されたデータに基づいて変化率を算出するようにしてもよい。
【0052】
また、特に図示しないが、異常検知部160による異常有無の検知結果は、無線または有線の通信手段によって外部の状態監視サーバ等に送信され、異常が検知された場合には、風力発電装置10や状態監視サーバ等においてアラームが表示される。
【0053】
なお、固有振動数を精度よく検出するためには、固有振動を励起させる外力が大きい方が望ましい。そこで、固有振動数検出部130が固有振動数を検出する条件として、たとえば、風速や発電機50の発電量、主軸35の回転速度等に下限を設けてもよい。あるいは、ナセル90の向きの上記区分のうち最も風の吹く方向(範囲)に対応する区分に限定して、固有振動数検出部130が固有振動数を検出するようにしてもよい。
【0054】
また、特に図示しないが、固有振動数の検出は、ブレードに含まれる水分量や、ブレードの内部・外部に付着・堆積した水・氷・雪等の量が変化しない状況において行なわれるのが好ましい。ブレードは、軽量化のために、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)等によって構成されたり、内部に空洞が設けられたりするところ、吸水性を有する上記材料の吸水量やブレード内部の空洞に侵入した水分量の変化、或いはブレードの内部・外部に付着・堆積した水・氷・雪等の量の変化に伴なう質量変化は、検出される固有振動数に影響を及ぼすからである。
【0055】
そこで、気温や湿度を計測し、これらの情報に基づいて、たとえば気温10℃以上で湿度70%以下である時間が72時間以上継続したような場合にのみ、固有振動数の検出及び異常判定を行なうようにしてもよい。なお、上記の温度、湿度、継続時間は一例であり、風力発電装置を設置した場所に応じて異常判定を行なう条件を決定することができる。また、温度や湿度だけでなく天候の情報を併用してもよく、たとえば晴天の場合に固有振動数の検出及び異常判定を行なうようにしてもよい。
【0056】
以上のように、この実施の形態1においては、ナセル90の向きに応じた風力発電装置10の固有振動数が検出されるので、タワー100の剛性低下による固有振動数の変化を、ナセル90の向きが変わることによる固有振動数の変化と切り離して検出することができる。したがって、この実施の形態1によれば、タワー100の剛性低下による風力発電装置10の固有振動数の変化を正確に検出して風力発電装置10の異常有無を検知することができる。また、定期的な目視検査や打音検査などを廃止したり、または検査間隔を延長したりすることが可能となる。
【0057】
また、この実施の形態1によれば、ナセル90の向きの区分毎に6つの異なる固有振動数が検出され監視されるので、風力発電装置10に生じる振動モードに応じた固有振動数の変化を正確に検出して風力発電装置の異常有無を検知することができる。
【0058】
また、この実施の形態1によれば、周波数分析部120,122におけるフーリエ変換の対象となる振動波形の時間軸長さを300秒以上としたので、0.3Hz程度の低周波の固有振動数についても、固有振動数の変化を正確に検出して風力発電装置10の異常有無を検知することができる。
【0059】
[実施の形態2]
風力発電装置10に対する励振力となり得るものには、主に、風力、ブレード30の回転による遠心力、増速機40の歯車の噛み合い伝達誤差による力などがある。この実施の形態2では、増速機40の歯車の噛み合い伝達誤差により生じる励振力に着目し、発電機50の発電量に応じて固有振動数がさらに区分される。これにより、たとえば、発電量が多いとき(たとえば定格の80%以上)よりも発電量が中程度のとき(たとえば定格の50%程度)の方がフーリエスペクトルにおいて固有振動数のピークが卓越している場合に、発電量が中程度のときに検出される固有振動数を用いてより正確に異常判定を行なうことが可能となる。
【0060】
この実施の形態2における風力発電装置の構成は、実施の形態1における風力発電装置10と同じである。
【0061】
図9は、発電機50の定格に応じて区分される固有振動数を説明するための図である。
図9とともに
図8を参照して、ナセル90の向きが0〜30°のときの固有振動数f1(1)について、発電機50の定格がたとえば0〜40%、40〜80%、80%以上の3つの区分にさらに分類される。図示しないが、ナセル90の向きに応じて区分される、
図8に示したその他の固有振動数の各々についても、固有振動数f1(1)と同様に、発電機50の定格に応じて固有振動数がさらに区分される。
【0062】
この実施の形態2によれば、増速機40の歯車の噛み合い伝達誤差により生じる励振力の影響を大きく受ける振動モードの固有振動数を的確に検出して、風力発電装置10の異常有無を検知することができる。
【0063】
なお、上記においては、発電機50の発電量に応じて固有振動数をさらに区分するものとしたが、その他にも、風速や風向(特にナセル90の向きに対する風向)に応じて固有振動数を区分してもよい。
【0064】
[実施の形態3]
図2に示したように、振動センサ70は、タワー100に対するナセル90の回動軸よりもナセル90の前方側(ロータヘッド20側)に設けられ、振動センサ72は、タワー100に対するナセル90の回動軸よりもナセル90の後方側(発電機50側)に設けられる。すなわち、振動センサ70,72は、ナセル90の回動軸を挟んで反対側に配設される。この実施の形態3では、このような振動センサ70,72の配置のもとで、風力発電装置10の振動モード(曲げ/ねじり)が精度良く同定される。
【0065】
具体的には、振動センサ70からの信号に基づく振動のスペクトルと、振動センサ72からの信号に基づく振動のスペクトルとの位相が反転しているとき、ねじりの振動モードが生じていると判定される。また、振動センサ70からの信号に基づく振動のスペクトルと、振動センサ72からの信号に基づく振動のスペクトルとの位相が同じであれば、曲げの振動モードが生じていると判定される。
【0066】
この実施の形態3における風力発電装置の全体構成は、
図1,2に示した実施の形態1における風力発電装置10と同じである。
【0067】
図10は、実施の形態3における状態監視装置80Aの機能ブロック図である。
図10を参照して、この状態監視装置80Aは、
図6に示した状態監視装置80の構成において、振動モード同定部170をさらに含む。
【0068】
振動モード同定部170は、周波数分析部120,122による周波数分析結果に基づいて、発生している振動モードを同定する。詳しくは、振動モード同定部170は、周波数分析部120から受けるスペクトルの位相と、周波数分析部122から受けるスペクトルの位相とを比較する。そして、振動モード同定部170は、位相が互いに反転していれば、ねじりの振動モードが発生しているものと判定し、互いの位相が略一致していれば、曲げの振動モードが発生しているものと判定する。そして、振動モード同定部170は、その同定結果を異常検知部160へ通知する。
【0069】
これにより、変化率算出部150の算出結果に基づいて風力発電装置10の異常が検知された場合に、振動モード同定部170による振動モードの同定結果に基づいて、どのような振動モードが生じているかについても検知することができる。
【0070】
以上のように、この実施の形態3によれば、風力発電装置10の固有振動数の変化を正確に検出して風力発電装置10の異常有無を検知するとともに、異常時の風力発電装置10の振動モードを精度良く同定することができる。
【0071】
なお、上記の各実施の形態においては、ナセル90内に設けられる状態監視装置80,80Aによって風力発電装置10の異常検知が行なわれるものとしたが、たとえば、周波数分析部120,122(
図6,
図10)の分析結果を外部の状態監視サーバ(図示せず)へ送信し、状態監視サーバによって固有振動数の検出を行なうことによって異常有無を検知してもよい。
【0072】
今回開示された各実施の形態は、適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。