(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る窓ガラスの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る窓ガラスは、自動車のドアにおいて開閉可能な窓ガラスであり、ドアの上部フレームに上辺及び側辺が収納される窓ガラスである。そして、この窓ガラスは、車内側の面に機能性膜が成膜されたガラス板により構成されている。以下、この窓ガラスについて、詳細に説明する。
【0017】
<1.ガラス板>
図1に示すように、この窓ガラスを構成するガラス板は、上下方向に延びる一対の側辺1,2、両側辺1,2の上端部同士を連結する上辺3、及び両側辺1,2の下端部同士を連結する下辺4を、周縁とする矩形状に形成されている。ここでは、
図1の右側に配置された側辺を第1側辺1、左側に配置される側辺を第2側辺2と称することとする。本実施形態に係る窓ガラスは、第1側辺1が第2側辺2よりも長くなっており、第2側辺2が自動車の前方側に配置される。そして、上辺3は、第1側辺1から第2側辺2に向かって下方に傾斜している。
【0018】
この窓ガラスは、種々の構成が可能であり、例えば、複数のガラス板を有する合わせガラスで構成したり、あるいは一枚のガラス板により構成することもできる。合わせガラスを用いる場合には、例えば、
図2に示すように、構成することができる。
図2は、合わせガラスの断面図である。
【0019】
同図に示すように、この合わせガラスは、外側ガラス板11及び内側ガラス板12を備え、これらガラス板11、12の間に樹脂製の中間膜13が配置されている。外側ガラス板11及び内側ガラス板12は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。一方、中間膜13は、一層で形成されてよいし、複数の層で形成することもできる。複数の層で形成する場合には、例えば、剛性の低い樹脂層を、剛性の高い樹脂層で挟む構造とすることができる。
【0020】
また、ここで用いるガラス板は、平坦状であってもよいし、湾曲していてもよい。但し、湾曲している場合には、車内側の面が凹状に形成される。
【0021】
<2.塗布領域>
図1に示すように、窓ガラスの車内側の面は、上辺3に沿う第1領域101と、第1領域101と隣接し、これよりも下方に位置する第2領域102とに分けられている。第1領域101の幅、つまり窓ガラスの上辺3から、2つの領域101,102の境界(仮想線)Lまでの距離dは、後述するドアの上部フレームの収納部に収納される領域であり、例えば、2〜50mmとすることが好ましく、5〜30mmとすることがさらに好ましい。なお、以下では、両領域の境界Lと第1側辺1との交点を第1交点151、境界Lと第2側辺2との交点を第2交点152と称することとする。
【0022】
<3.機能性膜>
機能性膜は、ガラス板に機能を付与するための機能性材料の添加された膜である。機能性膜としては、例えば、紫外線吸収膜、赤外線(IR)吸収膜、防曇膜、撥水性膜、防汚膜、低反射膜、電磁遮蔽膜、または着色膜などを用いることができる。
【0023】
機能性膜は、後述するように、フローコート法によって成膜することができる。機能性膜の膜厚は、膜の種類によって異なるが、例えば、紫外線吸収性膜を機能性膜とする場合には、例えば、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがさらに好ましい。
【0024】
<4.ドア>
続いて、上記窓ガラスが取り付けられるドアについて、
図3を参照しつつ説明する。
図3に示すように、本実施形態に係るドアは、車体にヒンジを介して開閉自在に取り付けられるドア本体51と、このドア本体51の車内側に取り付けられる化粧カバー(図示省略)、このドア本体51の上部に連結される窓枠部(上部フレーム)52とを、備えている。
【0025】
窓枠部52は、ドア本体51の両側から上方に延びる一対の側枠521,522と、両側枠521,522の上端部同士を連結しほぼ水平に延びる上枠523とで構成されている。そして、両側枠521,522の内側には、窓ガラスが嵌まるガイド溝(
図5参照)が形成されている。これらガイド溝の下端には、ドア本体51の内部空間に延びるランチャンネル(図示省略)がそれぞれ連結されており、これらランチャンネルはガイド溝とともに窓ガラスの昇降をガイドするようになっている。
【0026】
また、窓枠部52において、窓ガラスと側枠521,522、上枠523との隙間には、雨などの進入を防いだり、防音のためのガラスランが取り付けられる。
【0027】
ここで、窓枠部52の上枠523に配置されるガラスランの一例について、
図4を参照しつつ説明する。
図4(a)は、
図3のA−A線断面図である。同図に示すように、このガラスラン7は、上枠523に嵌め込まれる長尺状の基部71を備えており、この基部71の下端面には、閉じられた窓ガラスの上辺3が当接する。そして、この基部71には窓ガラスを挟むように、車内側の端部から下方に延びる板状の内側部72、車外側の端部から下方に延びる板状の外側部73と、が連結されている。これら基部71、内側部72、及び外側部73により、窓ガラスの上辺3が収容される収納部が形成され、外部からは見えないようになる。また、内側部72の上下方向の長さは、外側部73よりも長く形成されている。ここで、内側部72により構成される収納部の幅D1は、第1領域の幅dよりも大きくなっている。なお、収納部による窓ガラスが収容される幅D1とは、外側部73及び内側部72のうち、長い方による幅とする。また、
図4(b)に示すように、窓枠部53の上枠523の一部が、ガラスラン7よりも下方に延びて窓ガラスを外部から見えないようにする場合には、上枠523のこの部分を含めて収納部に相当する。この場合、幅D1は、上枠523の下端までとなる。
【0028】
さらに、内側部72の下端部には、窓ガラス側に向かって上方に延びる内側当接部721が連結されており、外側部73の下端部にも、同様に、窓ガラスに向かって上方に延びる外側当接部731が連結されている。内側当接部721及び外側当接部731の上端付近は、窓ガラスの車内側の面及び車外側の面に当接しており、これにより、雨などの進入を防止している。また、窓ガラスが上下動することで、各面は内側当接部721及び外側当接部731により擦られるようになっている。そして、内側当接部721及び外側当接部731が窓ガラスに当接する部分は、収納部の内部に位置しており、窓ガラスが上昇して閉じられるときに、上辺3が収納部に入った後、内側当接部721及び外側当接部731に当接する。ここで、内側当接部721により擦られる窓ガラスの幅D2は、第1領域の幅dよりも小さくなっている。なお、上記内側当接部721及び外側当接部731が、本発明の接触部に相当する。また、擦られる窓ガラスの幅D2とは、外側当接部731及び内側当接部721のうち、長い方による幅とする。
【0029】
なお、このガラスラン7は、上述した基部71、内側部72、外側部73、内側当接部721、及び外側当接部731が、ゴムなどの弾性材料によって一体的に形成することができる。
【0030】
次に、側枠521,522のガイド溝に配置されるガラスランについて、
図5を参照しつつ説明する。
図5は、
図3のB−B線断面図である。なお、以下では第1側辺1側の側枠521について説明するが、第2側辺2側の側枠522についても同様の構成である。
図3に示すように、このガラスラン9は、ガイド溝531に嵌め込まれる長尺状の基部91を備えており、この基部91には、窓ガラスの第1側辺1が当接する。そして、この基部91には窓ガラスを挟むように、車内側の端部から窓ガラスとほぼ並行に延びる板状の内側部92、車外側の端部から窓ガラスとほぼ並行に延びる板状の外側部93と、が連結されている。そして、これら基部91、内側部92、及び外側部93により、窓ガラスの第1側辺1が収容される凹部が形成され、外部からは見えないようになる。また、内側部92と外側部93の水平方向の長さE(凹部の深さ)は、ほぼ同じになっている。
【0031】
さらに、内側部92の先端部には、窓ガラス側に向かって延びる内側当接部921が連結されており、外側部93の下端部にも、同様に、窓ガラスに向かって延びる外側当接部931が連結されている。内側当接部921及び外側当接部931の先端付近は、窓ガラスの車内側の面及び車外側の面に当接しており、これによって、雨などの侵入を防いでいる。
【0032】
なお、このガラスラン9は、上述した基部91、内側部92、外側部93、内側当接部921、及び外側当接部931が、ゴムなどの弾性材料によって一体的に形成することができる。
【0033】
<5.成膜方法の例>
以下、機能性膜の成膜方法の一例として、フローコート法を用いた成膜方法について説明する。まず、機能性膜用塗布液(以下、機能液という)を塗布するための塗布装置について
図6及び
図7を参照しつつ説明する。
図6は、塗布装置の概略を示す側面図、
図7は機能液の塗布経路である。
【0034】
図6(a)に示すように、この塗布装置6は、機能液を射出する射出部61と、この射出部61を支持しながら移動させるロボットアーム62と、窓ガラスGに送風する送風ユニット(図示省略)と、を備えている。
【0035】
射出部61は、窓ガラスGの方向を向くノズル611と、このノズル611を支持する基部612とを備えており、この基部612には機能液を供給するゴムなどで形成されたチューブ部材64が連結されている。チューブ部材64は、機能液を送り出すポンプ(図示省略)等から配送される機能液を射出部61に供給する。そして、基部612を介してノズル611とチューブ部材64とは連通しており、チューブ部材64により供給される機能液は、ノズル611から射出される。
【0036】
ロボットアーム62は、射出部61を支持し、上下左右前後へと三次元的に移動させることができる。また、送風ユニットは、例えば、1又は複数のファンで構成され、機能液が射出された部分に送風するためのユニットである。
【0037】
次に、上記塗布装置6による機能液の塗布方法について説明する。まず、機能液を塗布する対象となる窓ガラスGを、例えば、立てられた状態で載置し、機能液の塗布を行う車内側の面をノズル611に向けて配置する。このとき、窓ガラスGの車外側の面は、鉛直方向から角度Dだけ傾くようにしておく。そして、ノズル611から噴射される機能液が
図6に示すような軌跡をたどるように塗布される。なお、窓ガラスGが湾曲している場合には、
図6(b)に示すように、窓ガラスGの上下方向の長さTの中心点Xにおける接線Fと、鉛直方向に延びる線Kとのなす角度を上述した角度Nとする。なお、角度Nは、−30〜15度であることが好ましい。また、本発明者は、角度Nが0度より小さいと、機能液の流れが良くなるため、第1領域101と機能液が塗布された第2領域102との境界線を、直線状にすることができるため、見栄え良く成膜できることを見出した。この観点から、窓ガラスが湾曲している場合には、
図6(b)に示す角度Dは、−15〜0度であることがさらに好ましい。
【0038】
そして、機能液の塗布経路は、
図7に示すとおりである。まず、ロボットアーム62を駆動し、射出部61のノズル611を、機能液が噴射されたときに、第1側辺1における下端付近の塗布開始点Raに機能液が当たる位置まで移動させる。そして、ノズル611から塗布開始点Raへ機能液を噴射されると、ノズル611を上方へ移動させる。これにより、機能液は第1側辺1に沿って塗布される。そして、塗布位置が第2領域102の上端付近にある第1経路変更点Rbに到達すると、ノズル611を、第2領域102の上縁、つまり第1領域と第2領域の境界Lに沿って移動させる。ここで、塗布開始点Raから第1経路変更点Rbまでの機能性膜用液の塗布経路を第1経路と称することとする。そして、境界Lに沿って射出された機能液は下方に流れ落ち、これによって、第2領域102に機能液が塗布される。そのため、機能液を直接射出しない部分にも機能液を行き巡らせることができ、窓ガラスGに機能液を塗布するのに用いる機能液の量を低減することができる。
【0039】
そして、ノズル611が、第2側辺2付近にある第2経路変更点Rcに到達すると、ノズル611を下方へ移動し、第2側辺2に沿って機能液を塗布する。こうして、機能液の塗布位置が第2側辺2の下端付近である塗布終了点Rdに到達すると、ノズル611からの機能液の射出を停止する。ここで、第1経路変更点Rbから第2経路変更点Rcまでの機能液の塗布経路を第2経路と称し、第2経路変更点Rcから塗布終了点Rdまでの機能液の塗布経路を第3経路と称することとする。また、以下では、成膜された機能成膜の外縁について、第1側辺1に沿う部分を第1側辺部、第2側辺2に沿う部分を第2側辺部、境界Lに沿う部分を中央部、第1側辺部と中央部との連結部分を第1コーナー部C1、第2側辺部と中央部との連結部分を第2コーナー部C2と称することとする。なお、このような機能液の塗布を行っているときには、送風ユニットにより、ガラス面に空気を吹き付け、これにより、ガラス面に形成された機能膜を乾燥させる。こうして、窓ガラスにおける車内側の面の第2領域102に機能性膜が成膜される。なお、
図7における塗布開始点Ra、第1経路変更点Rb、第2経路変更点Rc、及び塗布終了点Rdは、厳密な位置を表すものではなく、説明の便宜上、おおよその位置を表している。
【0040】
ところで、機能液の塗布経路が、第1経路から第2経路に移行する際には、次に説明するように、2種類の方法で機能液が塗布される。この点について、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。これらの図では、それぞれ、機能液の塗布経路(a)と機能液が塗布された領域(b)をそれぞれ示している。まず、第1の方法は、
図8に示すように、第1経路の終点である第1経路変更点Rbが、第1領域101と第2領域102の境界Lを超えて、第1領域101側に位置する。そして、第2経路は、第1経路変更点Rbから斜め下方に向かい、境界Lを超えて第2領域102に入ってから境界Lに沿う経路となる。ここで、第1経路から第2経路に移行する際には、ノズル611からの機能液の吐出圧は一定、または吐出圧を上昇させながら、第1経路変更点Rbを通過する。このとき、塗布された機能液の外縁は、境界Lからはみ出し、これによって第1コーナー部C1は円弧状に形成される。すなわち、はみ出した部分の外縁は、境界Lから離間している。なお、塗布された機能液の外縁が境界Lからはみ出すのであれば、第1経路変更点Rbは、必ずしも境界Lから超えて第1領域101に配置される必要はなく、境界L上、あるいは第2領域102内にあってもよい。
【0041】
そして、第2経路から第3経路に移行する際にも、機能液を、境界Lを超えて、第1領域側にはみ出すように塗布する。すなわち、第2経路変更点Rcは、境界を越えて第1領域101側にあるため、第2経路において、機能液は、第2側辺2に近づくと、境界Lを越えて塗布される。そして、第3経路において、機能液は、第2経路変更点Rcから第2側辺2に沿って下方に塗布され、塗布終了点Rdまで塗布される。なお、機能液の吐出圧についても、上記と同様に制御する。また、塗布された機能液の外縁が境界Lからはみ出すのであれば、第2経路変更点Rcは、必ずしも境界Lから超えて第1領域101に配置される必要はなく、境界L上、あるいは第2領域102内にあってもよい。
【0042】
上記のように、塗布された機能液は、境界を越えて第1領域101にはみ出しているが、はみ出している部分の側辺1、2からの長さHは、上述した窓枠部の側枠521,522の凹部の深さEよりも短くすることが好ましい。これにより、長さHである、はみ出している部分は、凹部の中に隠れて外部から見えないようにすることができる。但し、完全に凹部の中に配置されなくてもよく、少なくとも一部が隠れていればよい。
【0043】
続いて、第2の方法について、
図9を参照しつつ説明する。第2の方法は、
図9に示すように、第1経路変更点Rbが、境界Lを越えることなく、第2領域102内に位置している。すなわち、塗布された機能液の外縁が境界Lに接した地点が第1経路変更点Rbであり、そこから塗布された機能液の外縁が境界Lを沿うように、第2経路に沿って移動する。これにより、第1経路変更点Rbに対応する第1コーナー部C1は、円弧状に形成され、第2領域102の第1交点151付近には、機能液が塗布されない非塗布領域が形成される。
【0044】
この非塗布領域の側辺1、2からの長さMは、上述した窓枠部の側枠521,522の凹部の深さEよりも短くすることが好ましい。これにより、非塗布領域は、凹部の中に隠れて外部から見えないようにすることができる。但し、完全に凹部の中に配置されなくてもよく、少なくとも一部が隠れていればよい。
【0045】
また、
図8(b)のはみ出している部分や、
図9(b)の非塗布領域の少なくとも一部は、上述した収容部の幅D1内に形成されることが好ましい。そして、窓枠部の上枠523の収容部の幅D1内、及び側枠521,522の凹部内に、非塗布領域のすべてが収容され、外部から見えないようにすることがさらに好ましい。
【0046】
ここで、円弧状に形成されたコーナー部C1,C2の曲率半径は、5〜30mmであることが好ましい。これは、曲率半径が5mmより小さくなると、液量が少なくなり、ノズルを速く動かすと液割れするおそれがある。またノズルをゆっくり動かすと液割れを防ぐことが可能であるが塗布に時間を要しコストアップとなる。曲率半径が大きくなる程、液量が多くなり、塗布時間を短縮できサイクルアップやコストダウンとなるが、曲率半径が30mmより大きいと、液量が多いためガラス面に射出後、機能液が塗れ広がりやすく側辺から飛び越え車外側の面にはみ出すおそれがある。車外側の面にはみ出すと外観不良となり、また車外側の面に別の機能性膜を成膜する際には、はみ出した膜が別の機能性膜に悪影響を与える可能性がある。車外側の面をマスキングするという対策もあるがマスキング工程が追加されコストアップとなってしまう。
【0047】
なお、曲率半径は、次のように、算出することができる。
図10(a)に示すように、まず、コーナー部と境界との交点Nを見出す。次に、交点Nを通り、第1側辺1と平行な直線Kを規定する。続いて、直線Kから第1側辺側へ15mm離れた位置を通り、直線Kと平行な直線Jを規定する。そして、直線Jとコーナー部C1との交点Pを規定する。このとき、直線K上で、交点N,Pから等距離にある点Xを曲率半径の中心とする。すなわち、曲率半径は、距離NX(またはPX)となる。
【0048】
また、
図10(b)に示すように、直線Kから第1側辺側へ15mm離れた位置が、第1側辺1を越えてしまう場合には、第1側辺1とコーナー部C1との交点を交点Pと規定する。
【0049】
さらに、
図10(c)に示すように、機能性膜の第1側辺部が第1側辺1に沿って正確に塗布されておらず、わずかに離れるように塗布されている場合には、直線Jとコーナー部C1との交点Pが、境界Lから下方へ大きく離れることがある。この場合には、第1交点151から下方へ15mm離れた位置とコーナー部C1との交点P2を交点Pの代わりに用い、曲率半径を算出する。
【0050】
このように、曲率半径を算出した場合、ノズルから吐出される機能液の液量(1秒当たりの塗布量)と、曲率半径の関係は、例えば、
図11のようになる。したがって、機能液の液量が多くなるほど、曲率半径が大きくなり、車外側の面に機能液がはみ出すおそれがある。
【0051】
そして、第2経路変更点Rcについても同様であり、これに対応する第2コーナー部C2の外縁は、境界Lを越えることなく、円弧状に形成される。これにより、第2領域102の第2交点152付近には、機能液が塗布されない非塗布領域が形成される。
【0052】
この第2の方法では、第2領域102の第1及び第2交点151、152付近に、機能液が塗布されない非塗布領域が形成されるが、この非塗布領域の側辺1、2からの長さMは、上述した窓枠部の側枠521,522の凹部の深さEよりも短くなっている。すなわち、長さMである、非塗布領域は、凹部の中に隠れて外部から見えないようになっている。
【0053】
<6.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、第1経路から第2経路に移行する際には、ノズル611からの機能液の吐出圧は一定、または吐出圧を上昇させながら、第1経路変更点Rbを通過する。同様に、第2経路から第3経路に移行する際にも、ノズル611からの機能液の吐出圧は一定、または吐出圧を上昇させながら、第2経路変更点Rcを通過する。これにより、機能性膜のコーナー部C1,C2は円弧状に形成される。したがって、吐出圧を低下させることなく、コーナー部C1,C2が円弧状になるように、機能液が塗布されるため、機能液の塗布量を低下させずに、機能液を塗布することができる。その結果、塗布時間を短縮することができ、製造コストの低減にもつながる。
【0054】
なお、吐出量を低下させずに、機能液を塗布するため、機能液の外縁のコーナー部C1,C2は、機能液は境界Lに沿って正確に塗布されず、境界Lからはみ出したり、あるいは境界Lに達せず非塗布領域が形成される。しかしながら、このような不完全な塗布領域が形成されたとしても、この部分は窓ガラスの両側のわずかな部分であり、機能液の奏する機能には影響しない。しかも、これらの領域は、上枠523の収容部や側枠521,522の凹部に隠すこともできる部分であるので、外観的にも問題は生じない。
【0055】
<7 変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0056】
上記実施形態では、第1交点及び第2交点の両方について、機能液の2つのコーナー部C1,C2を、ともに円弧状に形成しているが、一方のコーナー部のみを円弧状にしてもよい。また、機能液を、一方のコーナー部において、
図8に示すように、境界Lを越えて塗布し、他方のコーナー部において、
図9に示すように、境界Lを越えずに塗布することもできる。
【0057】
また、機能性膜は、境界Lよりも下方全体に塗布されていなくてもよく、例えば、下辺4付近に非塗布領域を設けてもよい。
【0058】
上述した第2領域の幅dは、上枠523の接触部の幅D2よりも大きくしているが、これに限定されない。すなわち、窓ガラスの上辺3から所定の幅を空けて上辺3に沿って機能液が塗布されていない領域が形成されていればよく、このような領域が形成されていれば、たとえ、その幅dが接触部の幅D2よりも小さかったとしても、機能液の上縁付近において擦られる部分の面積を小さくすることができる。この観点も含め、機能性膜の外縁の中央部は、上記境界に沿っていればよく、必ずしも境界と一致する必要はない。すなわち、境界Lから上方または下方に多少であればはみ出していてもよい。
【0059】
上記実施形態では、自動車の前部座席側のドアに取り付けられる窓ガラスについて説明したが、後部座席側のドアに取り付けられる窓ガラスであってもよい。例えば、窓ガラスの形状は、上述したように上辺が傾斜しているものでなくてもよく、後部座席側に取り付けられるような上辺が概ね水平に延びるようなものであってもよい。すなわち、本発明に係る窓ガラスは、ドアの上部フレームにおいて開閉するものであれば、形状が限定されるものではない。