(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原材料が積繊される集積用凹部を外周面に有する回転ドラムと、該回転ドラムの内部に配された離型用エアブロー手段と、該回転ドラムの内部と接続された吸引手段とを備え、該回転ドラムを回転させつつ、内部側からの該吸引手段による吸引によって生じた空気流に乗って搬送された原材料を、吸引孔を複数有する多孔性部材で形成された該集積用凹部の外面上に積繊させて積繊物を得、所定の転写位置にて該離型用エアブロー手段から該積繊物に向けてエアを吹き付けることで、該積繊物を該集積用凹部から離型させる積繊装置であって、
前記多孔性部材の内面側に、該多孔性部材と該回転ドラムの側面を形成するドラム側壁とで画成された空間部が形成され、該空間部は、該ドラム側壁に設けられた吸引用開口部を介して外部と連通可能となっており、
前記空間部の前記多孔性部材とは反対側に、前記離型用エアブロー手段からのエアが通過可能な転写用開口部が設けられており、
前記回転ドラムの回転軸方向端部に、前記吸引用開口部による吸引を制御する不回転の吸引チャンバーが該吸引用開口部を覆うように隣接して配され、該吸引チャンバーは、該吸引用開口部と前記吸引手段とを連通する吸引領域と、該吸引用開口部を閉塞する非吸引領域とを、該回転ドラムの周方向に沿って有し、
前記回転ドラムの内部の前記吸引領域に対応する領域に、前記転写用開口部を閉塞する不回転の吸引抑制プレートが該回転ドラムの周方向に沿って配されており、
前記集積用凹部が前記吸引領域を通過しているときは、該吸引領域によって前記吸引用開口部と前記吸引手段とが連通されると共に、前記吸引抑制プレートによって前記転写用開口部が閉塞され、
前記集積用凹部が前記非吸引領域を通過しているときは、該非吸引領域によって前記吸引用開口部が閉塞されると共に、前記吸引抑制プレートによる前記転写用開口部の閉塞が解除され、所定の転写位置にて前記離型用エアブロー手段から該転写用開口部を介して該集積用凹部に対してエアが吹き付けられるようになされている積繊装置。
前記吸引領域として、前記深凹部専用開口部に対応する深凹部専用吸引領域と、前記浅凹部専用開口部に対応する浅凹部専用吸引領域とが、それぞれ前記回転ドラムの周方向に沿って設けられており、該深凹部専用吸引領域は、該浅凹部専用吸引領域よりも該周方向の長さが長い請求項2〜4の何れか一項に記載の積繊装置。
原材料が積繊される集積用凹部を外周面に有する回転ドラムと、該回転ドラムの内部に配された離型用エアブロー手段と、該回転ドラムの内部と接続された吸引手段とを備えた積繊装置を用い、
前記回転ドラムを回転させつつ、内部側からの前記吸引手段による吸引によって生じた空気流に乗って搬送された原材料を、吸引孔を複数有する多孔性部材で形成された前記集積用凹部の外面上に積繊させて積繊物を得る積繊工程と、
所定の転写位置にて前記離型用エアブロー手段から前記積繊物に向けてエアを吹き付けることで、該積繊物を前記集積用凹部から離型させる転写工程とを有する、吸収体の製造方法であって、
前記多孔性部材の内面側に、該多孔性部材と前記回転ドラムの側面を形成するドラム側壁とで画成された空間部が形成され、該空間部は、該ドラム側壁に設けられた吸引用開口部を介して外部と連通可能となっており、
前記空間部の前記多孔性部材とは反対側に、前記離型用エアブロー手段からのエアが通過可能な転写用開口部が設けられており、
前記回転ドラムの回転軸方向端部に、前記吸引用開口部による吸引を制御する不回転の吸引チャンバーが該吸引用開口部を覆うように配され、該吸引チャンバーは、該吸引用開口部と前記吸引手段とを連通する吸引領域と、該吸引用開口部を閉塞する非吸引領域とを、該回転ドラムの周方向に沿って有し、
前記回転ドラムの内部の前記吸引領域に対応する領域に、前記転写用開口部を閉塞する不回転の吸引抑制プレートが該回転ドラムの周方向に沿って配されており、
前記積繊工程では、前記吸引領域によって前記吸引用開口部と前記吸引手段とを連通すると共に、前記吸引抑制プレートによって前記転写用開口部を閉塞し、該吸引手段による吸引によって生じた空気流を、装置外部から前記多孔性部材を通過して装置内部に流入させ、
前記転写工程では、前記非吸引領域によって前記吸引用開口部を閉塞すると共に、前記吸引抑制プレートによる前記転写用開口部の閉塞を解除し、所定の転写位置にて前記離型用エアブロー手段から該転写用開口部を介して該集積用凹部に対してエアを吹き付ける、吸収体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
図1〜
図6には、本発明の積繊装置の一実施態様が示されている。本実施態様の積繊装置1は、原材料が積繊される集積用凹部22を外周面2fに有する回転ドラム2と、該回転ドラム2の内部に配された離型用エアブロー手段75と、回転ドラム2の内部と接続された吸引手段(図示せず)とを備える。積繊装置1は、回転ドラム2を矢印R方向に回転させつつ、内部側からの吸引手段による吸引によって生じた空気流に乗って搬送された原材料を、吸引孔を複数有する多孔性部材27で形成された集積用凹部22の外面22a上に積繊させて積繊物30を得、所定の転写位置(空間C)にて離型用エアブロー手段75から積繊物30に向けてエアを吹き付けることで、積繊物30を集積用凹部22から離型させるように構成されている。
【0012】
さらに説明すると、積繊装置1は吸収体の製造装置であり、
図1及び
図2に示すように、原材料としての繊維材料31及び吸収性粒子32を集積する集積用凹部22を外周面2fに有し、矢印R方向に回転駆動される回転ドラム2と、該回転ドラム2の外周面2fに向けて原材料を飛散状態にて搬送するダクト4と、該ダクト4内に繊維材料31を粉砕して供給する粉砕機5と、該ダクト4の下流側に隣接して回転ドラム2の外周面2fに沿って配されて集積用凹部22に集積された原材料の積繊物30を押さえる押さえベルト6と、回転ドラム2の下方に配された搬送手段としてのバキュームコンベア7とを備えている。
【0013】
回転ドラム2は、
図1及び
図2に示すように、金属製の剛体からなる円筒状のドラム本体20と、該ドラム本体20の外周部に重ねて配され、回転ドラム2の外周面2fを形成する外周部材21とを含んで構成されている。外周部材21は、モータ等の原動機からの動力を受けて、水平軸回りを矢印R方向に回転するが、外周部材21よりも内側に配されたドラム本体20は、固定されていて回転しない。図中、2X方向が回転ドラム2の周方向、2Y方向が回転ドラム2の幅方向(回転ドラム2の回転軸と平行な方向)である。
【0014】
図3及び
図5に示すように、回転ドラム2の2Y方向(回転ドラム2の回転軸方向)の両端部には不回転の吸引チャンバー8,8が隣接して配されている。換言すると、回転ドラム2は、相対向する一対の吸引チャンバー8,8間に介在配置されている。吸引チャンバー8は円盤状をなし、回転ドラム2の両側面2S,2Sの全域がこれら一対の吸引チャンバー8,8によって被覆される。尚、
図1及び
図2においては、ドラム本体20内部の説明の為、一対の吸引チャンバー8,8のうちの一方を取り外した状態を示している。
【0015】
回転ドラム2のドラム本体20は、
図1及び
図2に示すように、回転ドラム2の中心軸側から外周面2f側に向かって設けられた仕切板20pにより仕切られた相互に独立した複数の空間A,B,C,Dを有している。ドラム本体20は、該ドラム本体20の2Y方向の両端部に配された円盤状の一対の吸引チャンバー8,8を繋ぐ円柱状の中心軸部222を有している。ドラム本体20には、金属製の複数の仕切板20pが、一対の吸引チャンバー8,8間に亘って、中心軸部222の外周面から外周面2f側に向かって配されており、積繊装置1においては、4枚配されている。各仕切板22pは、中心軸部222の外周面から略吸引チャンバー8の外周縁に至るまで延在している。4枚の仕切板22pにより仕切られて、ドラム本体20には、相互に独立した4つの空間A,B,C,Dが形成されている。
【0016】
ドラム本体20の中心軸部222には吸引手段としての吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム2内の仕切られた空間A〜Dの圧力が調整できるようになっており、積繊装置1においては、外周面2fがダクト4で覆われた領域に位置する上流側領域である空間Aに対応する領域の吸引力を、下流側領域である空間B〜Dに対応する領域の吸引力よりも強くしたり弱くしたりすることができる。通常、空間Bは、空間Aよりも弱い負圧又は圧力ゼロ(大気圧)に設定される。集積用凹部22内の積繊物30をバキュームコンベア7上に転写するまでは、積繊物30の搬送性の観点から、空間Bを弱い負圧にして、積繊物30を集積用凹部22内に吸引保持させておくことが好ましいが、搬送性に特に問題がなければ、転写性を考慮すると、空間Bは圧力ゼロが好ましい。また、空間C及びDは、集積用凹部22内の積繊物30の転写位置及びその前後を含む領域であるので、圧力ゼロ又は陽圧が好ましい。
【0017】
ダクト4は、
図1及び
図2に示すように、粉砕機5から回転ドラム3に亘って延びており、ダクト4の下流側の開口が、負圧に維持される回転ドラム2の空間Aに位置する外周面2fを覆っている。粉砕機5は、木材パルプシート310を粉砕して繊維材料31とし、これをダクト4内に送り込む粉砕機を備えている。ダクト4における回転ドラム2と粉砕機5との間には、原材料の一種である吸収性粒子32をダクト4内に供給する散布管41が配されている。回転ドラム2の吸気ファン(図示せず)の作動により、ダクト4内の空間には、回転ドラム2の外周面2fに向けて原材料(繊維材料31及び吸収性粒子32)を流す空気流が生じるようになっている。
【0018】
押さえベルト6は、
図1及び
図2に示すように、回転ドラム2のダクト4の位置よりも下流側に隣接して回転ドラム2の外周面2fに沿って配されており、回転ドラム2の空間Aよりも弱い負圧又は圧力ゼロ(大気圧)に設定されている空間Bに位置する外周面2fに沿って配されている。押さえベルト6は、無端状の通気性又は非通気性のベルトであり、ロール61及びロール62に架け渡されて、回転ドラム2の回転と共に連れ回るようになっている。尚、押さえベルト6が通気性のベルトである場合には、実質的に集積用凹部22内の原材料を通過させないものであることが好ましい。押さえベルト6により、空間Bの圧力を大気圧に設定しても、集積用凹部22内の積繊物30をバキュームコンベア7上に転写するまで、集積用凹部22内に保持できる。
【0019】
バキュームコンベア7(搬送手段)は、
図1及び
図2に示すように、回転ドラム2の下方に配されており、回転ドラム2の弱い陽圧又は圧力ゼロ(大気圧)に設定されている空間Cに位置する外周面2fに近接して配されている。バキュームコンベア7は、駆動ロール71及び従動ロール72,72に架け渡された無端状の通気性ベルト73と、通気性ベルト73を挟んで回転ドラム2の空間Cに位置する外周面2fと対向する位置に配されたバキュームボックス74とを備えている。バキュームコンベア7上には、ティッシュペーパー又は透液性の不織布等からなる被覆材35が導入されるようになっている。
【0020】
積繊装置1は、
図2に示すように、集積用凹部22内の積繊物30の離型を促進する離型用エアブロー手段75を備えている。エアブロー手段75は、回転ドラム2内において、集積用凹部22内の積繊物30のバキュームコンベア7への転写位置(回転ドラム2の最下点)に対応する空間Cに配されている。エアブロー手段75は、空間C内において、外周部材21よりも内側に配されており、原材料が積繊される集積用凹部22の外面を形成する多孔性プレート27(多孔性部材)の内面側から外面側に向けてエアを吹き付けることができ、そのエアによって積繊物30の集積用凹部22からの離型が促進される。
【0021】
回転ドラム2の外周部材21についてさらに説明すると、外周部材21は、
図3及び
図4に示すように、多孔性プレート27(多孔性部材)と、該多孔性プレート27の外面27a側に重ねて固定されたパターン形成プレート28とを有する。これら各プレート27及び28は、ボルトあるいは接着剤等の公知の固定手段によって互いに固定されている。原材料の被積繊面である集積用凹部22の外面22aは、多孔性プレート27から形成されている。
【0022】
尚、本明細書において、回転ドラム2の各構成部材(多孔性プレート27、パターン形成プレート28等)の外面は、当該構成部材における、原材料の積繊されるときに該原材料の供給側に向けられる面である。また、当該各構成部材の内面は、当該構成部材における、原材料が積繊されるときに該原材料の供給側とは反対側(回転ドラムの内方側)に向けられる面である。
【0023】
パターン形成プレート28は、回転ドラム2の外周面2fを形成し、集積用凹部22の外形形状を形作っている。本実施態様におけるパターン形成プレート28は、回転ドラム2の周方向(2X方向)の全長に亘って連続して延びる円環状をなし、回転ドラム2の外周面2fの2Y方向の両端に一対設けられている。一対のパターン形成プレート28,28間は、回転ドラム2の周方向の全長に亘って一定である。パターン形成プレート28は、空気を通さない非通気性を有している。ここで、「非通気性」とは、「空気を全く通さない非通気性」及び「微量の空気は通すが実質的に空気を通さない難通気性」の両方を含み、実質的に非通気性という意味である。パターン形成プレート28としては、例えば、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板等を用いることができる。
【0024】
多孔性プレート27は、装置内部側(回転ドラム2の内方)からの吸引によって生じた空気流(バキュームエアー)を装置外部側(回転ドラム2の外方)に伝え、該空気流に乗って運ばれてくる原材料を透過させずに保持し、空気のみを透過させる通気性のプレートである。多孔性プレート27には、該プレート27を厚み方向に貫通する吸引孔(細孔)が、該プレート27の全体に均一な分布で複数(多数)形成されており、集積用凹部22が回転ドラム2内における負圧に維持された空間上を通過している間、該吸引孔が空気流の透過孔として機能する。多孔性プレート27としては、例えば、金属又は樹脂製のメッシュプレート、あるいは金属又は樹脂製の板にエッチング、パンチングで複数(多数)の細孔を形成したもの等を用いることができる。
【0025】
回転ドラム2の外周部材21における多孔性プレート27の内面側には、
図4及び
図5に示すように、該多孔性プレート27と回転ドラム2の側面2Sを形成するドラム側壁25とで画成された、空間部26が形成されている。
【0026】
本実施態様における集積用凹部22は、
図4及び
図5に示すように、多孔性プレート27の回転ドラム2の回転中心(ドラム本体20の中心軸部222)からの距離が相対的に短い深凹部22Dと、該距離が相対的に長い浅凹部22Sとに区分されており、これに対応して空間部26は、深凹部対応部26Dと浅凹部対応部26Sとに区分される。即ち、集積用凹部22は、深凹部22Dと浅凹部22Sとから構成されており、回転ドラム2は、空間部26を複数の領域に区分するリブ23,24を有し、該リブ23,24によって空間部26は、集積用凹部22の平面視において、集積用凹部22の深凹部22Dと重なる部分である深凹部対応部26Dと、集積用凹部22の浅凹部22Sと重なる部分である浅凹部対応部26Sとに区分されている。ここで、「平面視」とは、対象物(集積用凹部等)を、回転ドラム2の外周面2fの法線方向(回転ドラム2の回転軸方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。
【0027】
集積用凹部22において、深凹部22Dは、回転ドラム2の外周面2fからの深さが相対的に深い領域であり、浅凹部22Sは、外周面2fからの深さが相対的に浅い領域である。本実施形態においては、後述するように深凹部22Dと浅凹部22Sとで原材料の吸引時間を異ならせており、集積用凹部22内に形成された積繊物30においては、深凹部22Dに対応する部分が、相対的に原材料の積繊量が多い高坪量部(肉厚部)となり、浅凹部22Sに対応する部分が、相対的に原材料の積繊量が少ない低坪量部(肉薄部)となる。つまり、本実施態様における集積用凹部22は、原材料を相対的に高坪量に積繊させる深凹部22D(高坪量積繊領域)と、原材料を相対的に低坪量に積繊させる浅凹部22S(低坪量積繊領域)とを有している。
【0028】
本実施態様においては、
図4及び
図5に示すように、深凹部22Dは、回転ドラム2の2Y方向(回転軸方向)の中央部に位置し、該深凹部22Dとドラム側壁25との間に浅凹部22Sが位置している。より具体的には、本実施態様における集積用凹部22は、
図3に示すように、回転ドラム2の外周面2fに周方向の全長に亘って連続的に形成されており、深凹部22Dは、回転ドラム2の2X方向(周方向)に所定間隔を置いて2Y方向の中央部に複数(4個)間欠的に配されており、複数の深凹部22Dはそれぞれ浅凹部22Sに包囲されている。
【0029】
そして、集積用凹部22の深凹部22D及び浅凹部22Sがこのように配されているのに対応して、空間部26においては、深凹部対応部26Dが回転ドラム2の2Y方向の中央部に位置し、該深凹部対応部26Dとドラム側壁25との間に浅凹部対応部26Sが位置している。
【0030】
図4及び
図5に示すように、深凹部22Dと浅凹部22Sとの境界部には段差が形成されており、深凹部22Dの多孔性プレート27が浅凹部22Sの多孔性プレート27に対して、相対的に低い位置(回転ドラム2の回転中心に近い位置)に存している。この段差は、空間部26を深凹部対応部26Dと浅凹部対応部26Sとに区分する非通気性のリブ23の一部(外側部)からなる。リブ23は、深凹部22Dの多孔性プレート27の外面の周囲から浅凹部22Sに向かって立設する前記外側部と、深凹部22Dの多孔性プレート27の内面の周囲から回転ドラム2の回転中心に向かって立設する内側部とを有し、該内側部が、空間部26を深凹部対応部26Dと浅凹部対応部26Sとに区分している。
【0031】
また、
図4に示すように、空間部26には、回転ドラムの幅方向(2Y方向)に延びる非通気性のリブ24が、回転ドラム2の周方向(2X方向)に所定間隔を置いて複数設けられており、この複数のリブ24によって、空間部26(浅凹部対応部26S)は2X方向に複数の領域に区分されている。リブ24は、2Y方向の中央部にリブ23が存在する領域では該リブ23に連接され、リブ23の非存在領域では、空間部26(浅凹部対応部26S)を2Y方向に横断している。
【0032】
前述したように、回転ドラム2の内部には相互間が仕切られた複数の空間(空間A〜D)が形成され、それら複数の空間のうちの一部(空間A)が負圧に維持されており、集積用凹部22が回転ドラム2のR方向への回転によって同方向に搬送され、負圧に維持された空間A上を通過している間に、該凹部22の外面22aをドラム外方から内方に向かって空気流が流れる。仮に、リブ24が設けられておらず、空間部26が非通気性部材によって2X方向に複数の領域に区分されていない場合、前記空気流が空間部26全体を2X方向に通過可能になるため、集積用凹部22における空間Aを通過中の部分のみならず、空間Aを通過していない部分にも前記空気流の影響が及び、その結果積繊ムラ等の不都合が生じるおそれがある。リブ24は、このような不都合を効果的に防止し得る。
【0033】
空間部26は、
図3及び
図4に示すように、ドラム側壁25に設けられた吸引用開口部29を介して外部と連通可能となっている。本実施態様においては、吸引用開口部29として、深凹部22Dと外部とを連通する深凹部専用開口部29Dと、浅凹部22Sと外部とを連通する浅凹部専用開口部29Sとが設けられている。浅凹部専用開口部29Sは、回転ドラム2の側面2Sの周縁から相対的に近い(回転ドラム2の回転中心から相対的に遠い)位置にあり、深凹部専用開口部29Dは、該周縁から相対的に遠い(回転ドラム2の回転中心から相対的に近い)位置にある。浅凹部専用開口部29Sは、回転ドラム2の側面2Sの周縁部又はその近傍の全体に、周方向に所定間隔を置いて複数設けられている。深凹部専用開口部29Dは、回転ドラム2の側面2Sにおける深凹部22Dに対応する部分のみに設けられている。本実施態様においては、回転ドラム2の周方向(2X方向)の全長に亘って連続する集積用凹部22に、4つの深凹部22Dが2X方向に等間隔に配されているので、該回転ドラム2の側面2Sにおいても、これら4つの深凹部22Dに対応する4つの部分それぞれに深凹部専用開口部29Dが設けられ、各部分につき3個の深凹部専用開口部29Dが設けられている。
【0034】
深凹部専用開口部29D及び浅凹部専用開口部29Sは、何れも断面形状が真円形状をなしている。本実施態様においては、深凹部専用開口部29Dと浅凹部専用開口部29Sとで開口径は同一である。吸引用開口部29の開口径の大きさは、吸引手段(図示せず)による吸引によって生じる空気流の風量に比例し、該開口径が大きいほど、空気流の風量が大きくなり、原材料の吸引力が大きくなる。本実施態様においては、深凹部専用開口部29Dと浅凹部専用開口部29Sとで開口径が同一であるので、深凹部22Dと浅凹部22Sとは原材料の吸引力は同じである。
【0035】
深凹部専用開口部29Dと浅凹部専用開口部29Sとで開口径が異なっていても良く、例えば、深凹部専用開口部29Dの開口径を浅凹部専用開口部29Sのそれよりも大きくしても良い。「深凹部専用開口部29Dの開口径>浅凹部専用開口部29Sの開口径」とすることにより、深凹部22Dにおける原材料の吸引力が浅凹部22Sのそれよりも大きくなり、これにより、集積用凹部22に原材料が積繊されて形成された積繊物30において、深凹部22Dに対応して形成される高坪量部と浅凹部22Sに対応して形成される低坪量部との坪量差が一層大きくなり、原材料の偏在化が一層顕著になり得る。
【0036】
本実施態様においては、
図4及び
図5に示すように、深凹部対応部26Dが回転ドラム2の2Y方向(回転軸方向)の中央部に位置し、該深凹部対応部26Dを挟んで2Y方向の両側に浅凹部対応部26Sが位置しているところ、このように、深凹部対応部26Dとドラム側壁25との間に浅凹部対応部26Sが介在配置されていることに起因して、深凹部対応部26Dとドラム側壁25に設けられた深凹部専用開口部29Dとを結ぶ吸引管223が、浅凹部対応部26Sを2Y方向に横断している。
【0037】
吸引管223は円筒形状をなしている。集積用凹部22内の積繊物30をバキュームコンベア7上へ転写する際には、離型用エアブロー手段75からエアが噴出され、そのエアが、後述する転写用開口部224を通過して空間部26(浅凹部対応部26S及び深凹部対応部26D)に流入し多孔性プレート27に向かうところ、浅凹部対応部26Sを2Y方向に横断している吸引管223の形状如何によっては、斯かる離型用エアブロー手段75によるエアブローが阻害され、積繊物30の転写工程に影響が出るおそれがある。斯かる観点から、本実施態様では吸引管223の形状として、空気の流れを比較的阻害し難い円筒形状を採用している。
【0038】
尚、浅凹部対応部26Sは、浅凹部専用開口部29Sが設けられたドラム側壁25と距離を置かずに隣接しているので、吸引管223の如き、ドラム側壁25(凹部専用開口部29S)から延出する配管を必要としない。浅凹部専用開口部29Sは、リブ24によって回転ドラム2の周方向(2X方向)に複数の領域に区分された浅凹部対応部26Sの各該領域に1個ずつ配されている。
【0039】
図4に示すように、空間部26の多孔性プレート27とは反対側には、離型用エアブロー手段75(
図2参照)からのエアが通過可能な転写用開口部224が設けられている。転写用開口部224は、一対のドラム側壁25,25によって画成されており、深凹部対応部26D及び浅凹部対応部26S共用の転写用開口部である。
【0040】
一対の吸引チャンバー8,8は、吸引用開口部29(29D,29S)による吸引を制御する不回転の部材であり、
図3及び
図5に示すように、回転ドラム2の両側面2S,2Sに吸引用開口部29を覆うように配されている。吸引チャンバー8自体は非通気性であり、例えば、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板等から構成されている。
【0041】
吸引チャンバー8は、
図2及び
図3に示すように、吸引用開口部29と吸引手段(図示せず)とを連通する吸引領域80と、吸引用開口部29を閉塞する非吸引領域81とを、回転ドラム2の周方向(2X方向)に沿って有している。吸引領域80は、吸引チャンバー8における回転ドラム2の側面2Sとの対向面に穿設された開口部であり、側面2Sの平面視において円盤状の吸引チャンバー8(回転ドラム2)と同一の曲率半径を有する円弧状をなしている。非吸引領域81には開口部は穿設されておらず、非吸引領域81は非通気性であるため、吸引用開口部29(29D,29S)が非吸引領域81で被覆された状態では、吸引手段(図示せず)による吸引が阻害される。
【0042】
本実施態様においては、吸引領域80として、深凹部専用開口部29Dに対応する深凹部専用吸引領域80Dと、浅凹部専用開口部29Sに対応する浅凹部専用吸引領域80Sとが、それぞれ回転ドラム2の周方向(2X方向)に沿って設けられている。深凹部専用吸引領域80Dと浅凹部専用吸引領域80Sとは、円盤状の吸引チャンバー8の半径方向においては位置が異なっており、浅凹部専用吸引領域80Sは、回転ドラム2の側面2Sの周縁から相対的に近い(回転ドラム2の回転中心から相対的に遠い)位置にあり、深凹部専用吸引領域80Dは、該周縁から相対的に遠い(回転ドラム2の回転中心から相対的に近い)位置にある。
【0043】
図2及び
図3に示すように、深凹部専用吸引領域80Dは、浅凹部専用吸引領域80Sよりも回転ドラム2の周方向(2X方向)の長さが長い。吸引領域80(80D,80S)の2X方向に沿った長さは、吸引手段(図示せず)による吸引時間に比例し、該長さが長いほど、対応する集積用凹部22の各部(深凹部22D又は浅凹部22S)での原材料の吸引時間が長くなる。前述したように、本実施態様においては、深凹部専用開口部29Dと浅凹部専用開口部29Sとで開口径が同一であるので、深凹部22Dと浅凹部22Sとは原材料の吸引力は同じであるが、深凹部22Dに対応する深凹部専用吸引領域80Dの方が、浅凹部22Sに対応する浅凹部専用吸引領域80Sよりも2X方向の長さが長いため、深凹部22Dの方が浅凹部22Sよりも原材料の吸引時間が長くなる。従って、深凹部22Dの方が浅凹部22Sよりも原材料の積繊量が多くなる。
【0044】
図2に示すように、深凹部専用吸引領域80Dは、吸引チャンバー8におけるドラム本体20の空間A(外周面がダクト4で覆われている領域であって、図示しない吸引手段としての吸気ファンにより負圧に維持される回転ドラム2の空間)に対応する領域の周方向の略全長に亘って連続して延びており、深凹部専用吸引領域80Dのドラム回転方向Rの上流側の端部80Dfは、空間Aと空間Dとの境界(仕切板20p)の近傍に位置し、これとは反対側に位置する下流側の端部80Drは、空間Aと空間Bとの境界(仕切板20p)の近傍に位置している。一方、深凹部専用吸引領域80Dよりも2X方向の長さが短い浅凹部専用吸引領域80Sは、そのドラム回転方向Rの上流側の端部80Sfが、空間Aの中間位置、より具体的には、深凹部専用吸引領域80Dの上流側の端部80Dfよりもドラム回転方向Rの下流側に位置し、下流側の端部80Srが、深凹部専用吸引領域80Dの下流側の端部80Drと2X方向において同位置にある。
【0045】
図5に示すように、一対の吸引チャンバー8,8は、それぞれ、ドラム本体20の中心軸部222に対応する中心部の内部に中心空間部82を有し、一対の吸引チャンバー8,8それぞれの中心空間部82とそれらの間に位置するドラム本体20の中心軸部222の内部空間とは互いに連通している。また、吸引チャンバー8の内部には、深凹部専用吸引領域80D及び浅凹部専用吸引領域80Sそれぞれと中心空間部82とを連通し、吸引手段(図示せず)による吸引によって生じる空気流の流路として機能する通路83,84が設けられている。通路83は深凹部専用吸引領域80Dと中心空間部82とを連通し、通路84は浅凹部専用吸引領域80Sと中心空間部82とを連通している。
【0046】
図1及び
図2に示すように、回転ドラム2(ドラム本体20)の内部の吸引領域80(80D,80S)に対応する領域、即ち、側面視において吸引領域80と重なる領域には、転写用開口部224を閉塞する不回転の吸引抑制プレート9が回転ドラム2の周方向(2X方向)に沿って配されている。吸引抑制プレート9は、深凹部専用吸引領域80Dと同様に、ドラム本体20の空間A(外周面がダクト4で覆われている領域)の周方向の略全長に亘って連続して延びており、ドラム本体20の側面視において、該ドラム本体20(吸引チャンバー8)と同一の曲率半径を有する円弧状をなしている。吸引抑制プレート9は、一対の吸引チャンバー8,8の一方又は両方における回転ドラム2との対向面に固定されている。ドラム本体20の空間B,C及びDには吸引抑制プレート9は配されていない。吸引抑制プレート9は非通気性であり、例えば、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板等から構成されている。
【0047】
次に、前述した積繊装置1の動作を、これを用いて吸収体を連続的に製造する方法に基づいて説明する。本実施態様の製造方法は、回転ドラム2を回転させつつ、回転ドラム2の内部と接続された吸引手段(図示せず)による内部側からの吸引によって生じた空気流に乗って搬送された原材料(繊維材料31及び吸収性粒子32)を、多孔性プレート27で形成された集積用凹部22の外面22a上に積繊させて積繊物30を得る積繊工程と、所定の転写位置にて離型用エアブロー手段75から積繊物30に向けてエアを吹き付けることで、積繊物30を集積用凹部22から離型させてバキュームコンベア7(搬送手段)に転写させる転写工程とを有する。
【0048】
先ず、回転ドラム2内の空間A及びバキュームボックス74内を、それぞれに接続された吸引手段としての吸気ファン(図示せず)を作動させて負圧にする。尚、前述したように、回転ドラム2は吸引チャンバー8を介して吸引手段に接続されている。また、回転ドラム2(外周部材21)を図中符号Rで示す方向に回転させ、押さえベルト6を作動させる。前述したように、回転ドラム2の幅方向(2Y方向)の両側に配された一対の吸引チャンバー8,8は不回転であり、両吸引チャンバー8,8間に挟まれた不回転のドラム本体20の外周部を、外周部材21が回転する。
【0049】
次いで、粉砕機5を作動させて、木材パルプシート310を粉砕して得られた繊維材料31をダクト4内に供給する。また、ダクト4に配された散布管41により、ダクト4内に吸収性粒子32を供給する。
【0050】
回転ドラム2の集積用凹部22が、ダクト4に覆われ負圧に維持された空間A上を通過しているときは、
図5の上半分に示すように、一対の吸引チャンバー8,8の吸引領域80によって、回転ドラム2の両側面2S,2Sに設けられた吸引用開口部29と吸引手段(図示せず)とが連通されると共に、吸引抑制プレート9によって転写用開口部224が閉塞される。
【0051】
より具体的には、集積用凹部22が空間D上を通過して空間A上に導入されると、該凹部22の深凹部22Dに対応する深凹部専用開口部29Dと吸引チャンバー8の深凹部専用吸引領域80Dとが重なり合って連通すると共に、吸引抑制プレート9によって転写用開口部224が閉塞される。一方、浅凹部専用吸引領域80Sが深凹部専用吸引領域80Dよりもドラム回転方向Rの下流側に位置していることに起因して、集積用凹部22が空間A上に導入された当初は、その浅凹部22Sに対応する浅凹部専用開口部29Sと重なり合うのは、吸引チャンバー8の非開口部(非吸引領域81)であり、浅凹部専用開口部29Sは該非開口部によって通気が阻害される。従って、集積用凹部22が空間A上に導入されてから浅凹部専用吸引領域80S上に到達するまでの間(前記積繊工程の初期)は、吸引手段による吸引力は深凹部22Dのみに作用し、浅凹部22Sには作用しない。その結果、深凹部22Dに発生した吸引力により、ダクト4内に、原材料(繊維材料31及び吸収性粒子32)を、回転ドラム2の外周面2fに搬送する空気流(バキュームエアー)が生じ、該空気流に乗せて搬送された原材料が集積用凹部22内の深凹部22Dのみに選択的に積繊する。
【0052】
次いで、外周部材21の回転に伴って集積用凹部22が空間A上を回転方向Rに走行し、浅凹部専用吸引領域80S上に到達すると、該凹部22の浅凹部22Sに対応する浅凹部専用開口部29Sと吸引チャンバー8の浅凹部専用吸引領域80Sとが重なり合って連通し、前記積繊工程の後期が開始される。このとき、集積用凹部22の深凹部専用開口部29Dと吸引チャンバー8の深凹部専用吸引領域80Dとは引き続き連通した状態にあり、且つ転写用開口部224は吸引抑制プレート9によって閉塞された状態にある。これによって、深凹部22Dのみならず浅凹部22Sにも吸引手段による吸引力が作用し、前記空気流に乗せて搬送された原材料が浅凹部22Sにも積繊する。このようにして、集積用凹部22内に原材料(繊維材料31及び吸収性粒子32)が積繊されて積繊物30が形成される。
【0053】
次いで、外周部材21の回転に伴って集積用凹部22が空間A上を通過して空間B上に導入されると、回転ドラム2の内部においては、一対の吸引チャンバー8,8の非吸引領域81によって、回転ドラム2の両側面2S,2Sに設けられた吸引用開口部29(29D,29S)が閉塞されると共に、吸引抑制プレート9による転写用開口部224の閉塞が解除される。これによって、集積用凹部22には吸引手段による吸引力が全く作用しなくなる。この集積用凹部22の非吸引状態は、集積用凹部22が空間C及びD上を通過している間も維持される。一方、回転ドラム2の外部においては、
図1及び
図2に示すように、空間A上を通過して空間B上に導入されてきた集積用凹部22の積繊物30を押さえベルト6で押さえつける。
【0054】
押さえベルト6による積繊物30の押さえつけは、集積用凹部22が空間B上を通過する直前で解除される。外周部材21の回転に伴って集積用凹部22が空間B上を通過して空間C上に導入されると、所定の転写位置(回転ドラム2の最下点)にて、離型用エアブロー手段75から転写用開口部224を介して集積用凹部22に対してエアが吹き付けられる(転写工程)。
【0055】
空間Cでは、空間Aで転写用開口部224を閉塞していた吸引抑制プレート9は存在せず、転写用開口部224は開口しており、且つ回転ドラム2の側面2Sの吸引用開口部29(29D,29S)は吸引チャンバー8の非吸引領域81で被覆されているため、
図6に示すように、離型用エアブロー手段75から噴出したエア(図中矢印で示す)が多孔性プレート27の全域に当たる。斯かるエアによる内部側から外部側への押圧と、バキュームボックス74からの吸引とにより、積繊物30は破壊されることなく、その全体が集積用凹部22からスムーズに離型し、バキュームコンベア7上に転写される。従って、本実施態様の積繊装置1によれば、回転ドラム2の集積用凹部22内の積繊物の転写性に優れているため、特に坪量が部分的に異なる吸収体を、周縁部の欠け等を生じさせずに効率良く製造することができる。
【0056】
従来この種の積繊装置においては、吸引用の開口部と転写用の開口部とは同じであったが、本実施態様の積繊装置1は、吸引用開口部29(29D,29S)と転写用開口部224とを別々に設けたことに主たる特徴がある。即ち、転写用開口部224とは全く異なる位置(回転ドラム2の側面2S)に吸引専用の開口部29を設け、且つその開口部29を、高坪量積繊領域形成用の深凹部専用開口部29Dと低坪量積繊領域形成用の浅凹部専用開口部29Sとに分けることで、集積用凹部22内の各部の吸引時間をそれぞれ独立に制御可能とし、それによって坪量が部分的に異なる積繊物の製造(原材料の偏在化)を実現している。また本実施態様の積繊装置1においては、このように転写用開口部224とは別に、吸引専用の開口部29を設けることで原材料の偏在化を実現しているため、例えば、転写用開口部224の一部を非通気性にして吸引力を部分的に低下させる等の、原材料の偏在化のための工夫を転写用開口部224やその周辺部等に施す必要が無く、エアブローによるエアの通過を阻害し得る構成を採用しないで済む。特に本実施態様においては、離型用エアブロー手段75と多孔性プレート27との間の空間部26(26D,26S)に存しているのは、厚みの薄いリブ23,24と円筒形状の吸引管223のみであり、離型用エアブロー手段75から噴出されたエアを実質的に妨げる部材が存在しないため、積繊物30の転写性に優れる。
【0057】
図7には、本実施態様の集積用凹部22から離型した直後の積繊物30の一部が示されている。積繊物30は、
図7に示すように、集積用凹部22の深凹部22Dに対応する部分が、相対的に原材料の積繊量が多い高坪量部(肉厚部)33となり、浅凹部22Sに対応する部分が、相対的に原材料の積繊量が少ない低坪量部(肉薄部)34となっている。また、積繊物30の一方の面30b(凹部22の外面22aとの接触面とは反対側の面)は、その全域が略平坦である一方、他方の面30a(凹部22の外面22aとの接触面)は、高坪量部33と低坪量部34との境界部に段差を有しており、平坦ではない。
【0058】
積繊物30を被覆材35に転写した後、被覆材35の搬送方向に沿う両側部を積繊物30側に折り返して、積繊物30の上下両面を被覆材35で被覆し、積繊物30及び被覆材35を所定長さに切断することによって、吸収体が得られる。
【0059】
こうして得られた吸収体は、積繊物30からなる吸収性コアが、相対的に高坪量の高坪量部33と相対的に低坪量の低坪量部34とを含み、吸収体原料の積繊量が部分的に異なっている。吸収体は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に用いられる吸収体として好適な高品質なものとなっている。特に、使い捨ておむつに用いられる吸収体としては、高坪量部33が腹側(前側)、低坪量部34が背側(後側)となるように吸収性物品に組み込まれて使用されることが、吸収体の性能を最大限発揮させる点で好ましい。このように、吸収体内に坪量(原料の積繊量)が異なる高坪量部及び低坪量部を形成することは、柔軟で装着感の向上した吸収体が得られる等の利点がある。特に、高坪量部の前後あるいは周囲に低坪量部が形成された吸収体は、柔軟で装着感に優れる。
【0060】
本発明で製造する吸収体は、吸収性物品の吸収体として好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。本発明で製造可能な吸収体(積繊物)は、積繊物30の如き、高坪量部と低坪量部とを有するものに制限されず、例えば、坪量が均一な吸収体、又は、一部に切り欠き若しくは吸収体材料の存在しない空間部を有する吸収体等も含まれる。
【0061】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収体は、上下面が一枚又は複数枚のコアラップシートに被覆されていても良い。裏面シートは水蒸気透過性を有していても有しなくても良い。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつ、生理用ナプキンに適用する場合には、吸収体の起立した両側部の更に外側に、一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0062】
本発明は、前記実施態様に制限されず適宜変更可能である。例えば前記実施態様では、回転ドラム2の2Y方向の両側に一対の吸引チャンバー8,8が配されていたが、吸引チャンバー8は、回転ドラム2の2Y方向の片側(例えばドライブ側)のみに配されていても良い。また前記実施態様では、集積用凹部22は、回転ドラム2の外周面2fに周方向の全長に亘って連続的に形成されていたが、周方向に間欠的に形成されていても良い。前述した本発明の実施態様に関し、更に以下の付記(積繊装置及び吸収体の製造方法)を開示する。
【0063】
<1>
原材料が積繊される集積用凹部を外周面に有する回転ドラムと、該回転ドラムの内部に配された離型用エアブロー手段と、該回転ドラムの内部と接続された吸引手段とを備え、該回転ドラムを回転させつつ、内部側からの該吸引手段による吸引によって生じた空気流に乗って搬送された原材料を、吸引孔を複数有する多孔性部材で形成された該集積用凹部の外面上に積繊させて積繊物を得、所定の転写位置にて該離型用エアブロー手段から該積繊物に向けてエアを吹き付けることで、該積繊物を該集積用凹部から離型させる積繊装置であって、
前記多孔性部材の内面側に、該多孔性部材と該回転ドラムの側面を形成するドラム側壁とで画成された空間部が形成され、該空間部は、該ドラム側壁に設けられた吸引用開口部を介して外部と連通可能となっており、
前記空間部の前記多孔性部材とは反対側に、前記離型用エアブロー手段からのエアが通過可能な転写用開口部が設けられており、
前記回転ドラムの回転軸方向端部に、前記吸引用開口部による吸引を制御する不回転の吸引チャンバーが該吸引用開口部を覆うように隣接して配され、該吸引チャンバーは、該吸引用開口部と前記吸引手段とを連通する吸引領域と、該吸引用開口部を閉塞する非吸引領域とを、該回転ドラムの周方向に沿って有し、
前記回転ドラムの内部の前記吸引領域に対応する領域に、前記転写用開口部を閉塞する不回転の吸引抑制プレートが該回転ドラムの周方向に沿って配されており、
前記集積用凹部が前記吸引領域を通過しているときは、該吸引領域によって前記吸引用開口部と前記吸引手段とが連通されると共に、前記吸引抑制プレートによって前記転写用開口部が閉塞され、
前記集積用凹部が前記非吸引領域を通過しているときは、該非吸引領域によって前記吸引用開口部が閉塞されると共に、前記吸引抑制プレートによる前記転写用開口部の閉塞が解除され、所定の転写位置にて前記離型用エアブロー手段から該転写用開口部を介して該集積用凹部に対してエアが吹き付けられるようになされている積繊装置。
【0064】
<2>
前記回転ドラムは、円筒状のドラム本体と、該ドラム本体の外周部に重ねて配され、該回転ドラムの外周面を形成する外周部材とを含んで構成され、該外周部材は回転するが、該ドラム本体は、固定されていて回転しない前記<1>に記載の積繊装置。
<3>
前記ドラム本体は、前記回転ドラムの中心軸側から外周面側に向かって設けられた仕切板により仕切られた相互に独立した複数の空間を有している前記<2>に記載の積繊装置。
<4>
前記集積用凹部は、前記多孔性部材の前記回転ドラムの回転中心からの距離が相対的に短い深凹部と、該距離が相対的に長い浅凹部とから構成され、
前記回転ドラムは、前記空間部を複数の領域に区分するリブを有し、該リブによって該空間部は、前記集積用凹部の平面視において、前記深凹部と重なる部分である深凹部対応部と、前記浅凹部と重なる部分である浅凹部対応部とに区分されており、
前記吸引用開口部として、前記深凹部と外部とを連通する深凹部専用開口部と、前記浅凹部と外部とを連通する浅凹部専用開口部とが設けられている前記<1>〜<3>の何れか一項に記載の積繊装置。
【0065】
<5>
前記深凹部対応部は、前記回転ドラムの回転軸方向の中央部に位置し、該深凹部対応部と前記ドラム側壁との間に前記浅凹部対応部が位置しており、
前記深凹部対応部と前記ドラム側壁に設けられた前記深凹部専用開口部とを結ぶ吸引管が、前記浅凹部対応部を前記回転軸方向に横断している前記<4>に記載の積繊装置。
<6>
前記吸引管は円筒形状をなしている前記<5>に記載の積繊装置。
<7>
前記深凹部は、前記回転ドラムの回転軸方向の中央部に位置し、該深凹部と前記ドラム側壁との間に前記浅凹部が位置している前記<4>〜<6>の何れか一項に記載の積繊装置。
<8>
前記集積用凹部は、前記回転ドラムの外周面に周方向の全長に亘って連続的に形成されており、前記深凹部は、該回転ドラムの周方向に所定間隔を置いて回転軸方向の中央部に複数間欠的に配されており、その複数の該深凹部はそれぞれ前記浅凹部に包囲されている前記<4>〜<7>の何れか一項に記載の積繊装置。
<9>
前記深凹部と前記浅凹部との境界部には段差が形成されており、該段差は、前記空間部を前記深凹部対応部と前記浅凹部対応部とに区分する前記リブの一部からなる前記<4>〜<8>の何れか一項に記載の積繊装置。
<10>
前記リブは、前記深凹部の前記多孔性部材の外面の周囲から前記浅凹部に向かって立設する外側部と、該深凹部の該多孔性部材の内面の周囲から回転ドラムの回転中心に向かって立設する内側部とを有し、該内側部が、前記空間部を前記深凹部対応部と前記浅凹部対応部とに区分している前記<4>〜<9>の何れか一項に記載の積繊装置。
<11>
前記空間部には、前記回転ドラムの回転軸方向に延びる前記リブが、該回転ドラムの周方向に所定間隔を置いて複数設けられており、複数の該リブによって、該空間部は該周方向に複数の領域に区分されている前記<4>〜<10>の何れか一項に記載の積繊装置。
【0066】
<12>
前記吸引領域として、前記深凹部専用開口部に対応する深凹部専用吸引領域と、前記浅凹部専用開口部に対応する浅凹部専用吸引領域とが、それぞれ前記回転ドラムの周方向に沿って設けられており、該深凹部専用吸引領域は、該浅凹部専用吸引領域よりも該周方向の長さが長い前記<4>〜<11>の何れか一項に記載の積繊装置。
<13>
前記深凹部専用開口部と前記浅凹部専用開口部とで開口径が異なる前記<4>〜<12>の何れか一項に記載の積繊装置。
<14>
前記深凹部専用吸引領域は、前記ドラム本体における前記吸引手段によって負圧に維持される空間に対応する領域の周方向の略全長に亘って連続して延びている前記<12>又は<13>に記載の積繊装置。
<15>
前記浅凹部専用吸引領域の前記回転ドラムの回転方向下流側の端部が、前記深凹部専用吸引領域の該回転ドラムの回転方向下流側の端部と周方向において同位置にある前記<12>〜<14>の何れか一項に記載の積繊装置。
<16>
前記吸引チャンバーの内部に、前記ドラム本体の中心軸部に対応する中心空間部と、前記吸引手段による吸引によって生じる空気流の流路として機能する通路とが設けられており、該通路を介して前記深凹部専用吸引領域及び前記浅凹部専用吸引領域それぞれと該中心空間部とが連通している前記<12>〜<15>の何れか一項に記載の積繊装置。
<17>
前記回転ドラムの外周面に向けて原材料を飛散状態にて搬送するダクトと、該ダクト内に原材料としての繊維材料を粉砕して供給する粉砕機とを有する前記<1>〜<16>の何れか一項に記載の積繊装置。
【0067】
<18>
原材料が積繊される集積用凹部を外周面に有する回転ドラムと、該回転ドラムの内部に配された離型用エアブロー手段と、該回転ドラムの内部と接続された吸引手段とを備えた積繊装置を用い、
前記回転ドラムを回転させつつ、内部側からの前記吸引手段による吸引によって生じた空気流に乗って搬送された原材料を、吸引孔を複数有する多孔性部材で形成された前記集積用凹部の外面上に積繊させて積繊物を得る積繊工程と、
所定の転写位置にて前記離型用エアブロー手段から前記積繊物に向けてエアを吹き付けることで、該積繊物を前記集積用凹部から離型させる転写工程とを有する、吸収体の製造方法であって、
前記多孔性部材の内面側に、該多孔性部材と前記回転ドラムの側面を形成するドラム側壁とで画成された空間部が形成され、該空間部は、該ドラム側壁に設けられた吸引用開口部を介して外部と連通可能となっており、
前記空間部の前記多孔性部材とは反対側に、前記離型用エアブロー手段からのエアが通過可能な転写用開口部が設けられており、
前記回転ドラムの回転軸方向端部に、前記吸引用開口部による吸引を制御する不回転の吸引チャンバーが該吸引用開口部を覆うように配され、該吸引チャンバーは、該吸引用開口部と前記吸引手段とを連通する吸引領域と、該吸引用開口部を閉塞する非吸引領域とを、該回転ドラムの周方向に沿って有し、
前記回転ドラムの内部の前記吸引領域に対応する領域に、前記転写用開口部を閉塞する不回転の吸引抑制プレートが該回転ドラムの周方向に沿って配されており、
前記積繊工程では、前記吸引領域によって前記吸引用開口部と前記吸引手段とを連通すると共に、前記吸引抑制プレートによって前記転写用開口部を閉塞し、該吸引手段による吸引によって生じた空気流を、装置外部から前記多孔性部材を通過して装置内部に流入させ、
前記転写工程では、前記非吸引領域によって前記吸引用開口部を閉塞すると共に、前記吸引抑制プレートによる前記転写用開口部の閉塞を解除し、所定の転写位置にて前記離型用エアブロー手段から該転写用開口部を介して該集積用凹部に対してエアを吹き付ける、吸収体の製造方法。
【0068】
<19>
前記回転ドラムは、円筒状のドラム本体と、該ドラム本体の外周部に重ねて配され、該回転ドラムの外周面を形成する外周部材とを含んで構成され、該外周部材は回転するが、該ドラム本体は、固定されていて回転しない前記<18>に記載の吸収体の製造方法。
<20>
前記ドラム本体は、前記回転ドラムの中心軸側から外周面側に向かって設けられた仕切板により仕切られた相互に独立した複数の空間を有している前記<19>に記載の吸収体の製造方法。
<21>
前記集積用凹部は、前記多孔性部材の前記回転ドラムの回転中心からの距離が相対的に短い深凹部と、該距離が相対的に長い浅凹部とから構成され、
前記回転ドラムは、前記空間部を複数の領域に区分するリブを有し、該リブによって該空間部は、前記集積用凹部の平面視において、前記深凹部と重なる部分である深凹部対応部と、前記浅凹部と重なる部分である浅凹部対応部とに区分されており、
前記吸引用開口部として、前記深凹部と外部とを連通する深凹部専用開口部と、前記浅凹部と外部とを連通する浅凹部専用開口部とが設けられている前記<18>〜<20>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【0069】
<22>
前記深凹部対応部は、前記回転ドラムの回転軸方向の中央部に位置し、該深凹部対応部と前記ドラム側壁との間に前記浅凹部対応部が位置しており、
前記深凹部対応部と前記ドラム側壁に設けられた前記深凹部専用開口部とを結ぶ吸引管が、前記浅凹部対応部を前記回転軸方向に横断している前記<21>に記載の吸収体の製造方法。
<23>
前記吸引管は円筒形状をなしている前記<22>に記載の吸収体の製造方法。
<24>
前記深凹部は、前記回転ドラムの回転軸方向の中央部に位置し、該深凹部と前記ドラム側壁との間に前記浅凹部が位置している前記<21>〜<23>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<25>
前記集積用凹部は、前記回転ドラムの外周面に周方向の全長に亘って連続的に形成されており、前記深凹部は、該回転ドラムの周方向に所定間隔を置いて回転軸方向の中央部に複数間欠的に配されており、その複数の該深凹部はそれぞれ前記浅凹部に包囲されている前記<21>〜<24>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<26>
前記深凹部と前記浅凹部との境界部には段差が形成されており、該段差は、前記空間部を前記深凹部対応部と前記浅凹部対応部とに区分する前記リブの一部からなる前記<21>〜<25>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<27>
前記リブは、前記深凹部の前記多孔性部材の外面の周囲から前記浅凹部に向かって立設する外側部と、該深凹部の該多孔性部材の内面の周囲から回転ドラムの回転中心に向かって立設する内側部とを有し、該内側部が、前記空間部を前記深凹部対応部と前記浅凹部対応部とに区分している前記<21>〜<26>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<28>
前記空間部には、前記回転ドラムの回転軸方向に延びる前記リブが、該回転ドラムの周方向に所定間隔を置いて複数設けられており、複数の該リブによって、該空間部は該周方向に複数の領域に区分されている前記<21>〜<27>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【0070】
<29>
前記吸引領域として、前記深凹部専用開口部に対応する深凹部専用吸引領域と、前記浅凹部専用開口部に対応する浅凹部専用吸引領域とが、それぞれ前記回転ドラムの周方向に沿って設けられており、該深凹部専用吸引領域は、該浅凹部専用吸引領域よりも該周方向の長さが長い前記<21>〜<28>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<30>
前記深凹部専用開口部と前記浅凹部専用開口部とで開口径が異なる前記<21>〜<29>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<31>
前記深凹部専用吸引領域は、前記ドラム本体における前記吸引手段によって負圧に維持される空間に対応する領域の周方向の略全長に亘って連続して延びている前記<29>又は<30>に記載の吸収体の製造方法。
<32>
前記浅凹部専用吸引領域の前記回転ドラムの回転方向下流側の端部が、前記深凹部専用吸引領域の該回転ドラムの回転方向下流側の端部と周方向において同位置にある前記<29>〜<31>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<33>
前記吸引チャンバーの内部に、前記ドラム本体の中心軸部に対応する中心空間部と、前記吸引手段による吸引によって生じる空気流の流路として機能する通路とが設けられており、該通路を介して前記深凹部専用吸引領域及び前記浅凹部専用吸引領域それぞれと該中心空間部とが連通している前記<29>〜<32>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<34>
前記積繊工程において、前記深凹部の方が前記浅凹部よりも原材料の吸引時間が長くなされており、それによって相対的に該浅凹部よりも該深凹部の方が高坪量の積繊物を得る前記<29>〜<33>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
<35>
前記積繊装置は、前記回転ドラムの外周面に向けて原材料を飛散状態にて搬送するダクトと、該ダクト内に原材料としての繊維材料を粉砕して供給する粉砕機とを有する前記<18>〜<34>の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。