特許第6377505号(P6377505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377505
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/00 20060101AFI20180813BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01R9/00 Z
   H01R9/00 A
   H01R13/42 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-237661(P2014-237661)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-100261(P2016-100261A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達規
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3875670(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの主表面を有し、前記2つの主表面の一方が電気機器の筐体の一面の内部に位置するように、前記筐体に取り付けられる絶縁体の基部と、
前記基部に、前記2つの主表面を貫通して概略矩形に形成され、板状の端子が挿通される端子孔とを、
有し、前記端子孔の一つの辺が、その辺の外方に向かって段状とされることによって、前記端子孔が、その主要部と拡張部とを有するものとされ、前記端子は、少なくとも幅が異なる複数のものが準備され、そのうちの1つの幅の前記端子が前記端子孔の主要部に挿通可能な幅に設定され、他の幅の前記端子が前記拡張部に挿通可能な幅に設定された端子台。
【請求項2】
請求項1記載の端子台において、前記基部の2つの主表面のうち前記筐体内に位置する一方の面には、前記端子孔の少なくとも拡張部の縁に、前記端子をその厚さ方向に貫通するネジが挿通される固定部が形成されている端子台。
【請求項3】
請求項2記載の端子台において、前記端子の中途にナットが一体的に設けられ、前記固定部に、前記ナットが挿入される凹所が形成されている端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力端子のような端子が取り付けられる端子台に関し、特に、異なる複数の端子のうち選択されたものが取り付け可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、回路遮断器に電源を供給するために、端子ユニットを使用することが開示されている。この端子ユニットは、ケース内に回路遮断器に接続する接続端子を有し、この接続端子が電源側の電線に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−125149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような端子ユニットは、使用する電源の容量に応じて接続端子の厚さや幅を変更する必要がある。特許文献1に開示されているような端子ユニットでは、その電源容量に応じた接続端子を備えたものを個別製造することが一般的であり、コストの増加を招いていた。このような問題は、電気機器の筐体に取り付ける電源出力端子や入力端子においても同様に生じていた。
【0005】
本発明は、多様な種類の端子のうち選択されたものを取り付けることが可能な端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の端子台は、絶縁体製の基部を有している。この基部は、対向する2つの主表面を有し、前記2つの主表面の一方が電気機器の筐体の一面の内部に位置するように、前記筐体に取り付けられる。電気機器としては、例えば電源供給装置を使用することができる。基部は、対向する2つの主表面を有するものであれば、種々のものを使用することができ、例えば矩形状や円板状等の種々の形状とすることができる。前記基部には、前記2つの主表面を貫通した端子孔が矩形に形成されている。この端子孔に、板状の端子が、挿通される。前記端子孔の一方の辺が、その辺の外方に向かって段状とされることによって、前記端子孔が、その主要部と拡張部とからなっている。段は、1段とすることもできるし、複数段とすることもできる。また、段は、その辺の一方に偏って形成することもできるし、辺の中央に形成することもできる。前記端子は、電源の出力用端子とすることもできるし、電源の入力用端子とすることもできる。前記端子は、少なくとも幅が異なる複数のものが準備される。前記端子孔の一つの辺が、その辺の外方に向かって段状とされることによって、前記端子孔が、その主要部と拡張部とを有するものとされ、前記端子は、少なくとも幅が異なる複数のものが準備され、そのうちの1つの幅の前記端子が前記端子孔の主要部に挿通可能な幅に設定され、他の幅の前記端子が前記拡張部に挿通可能な幅に設定されている。なお、幅のみでなく、厚さも異なったものとすることもできる。
【0007】
このように構成された端子台では、少なくとも幅が異なる複数種類の端子のどれでも、端子孔に挿通することができるので、複数種類のいずれの端子を使用する場合でも、共通に端子台を使用することができる。なお、端子孔には、端子を挿通後に、端子の周囲を包囲するようにカバーを取り付けることができる。
【0008】
前記基部の2つの主表面のうち前記筐体内に位置する一方の面には、前記端子孔の少なくとも拡張部の縁に、前記端子をその厚さ方向に貫通するネジが挿通される固定部を形成することもできる。
【0009】
このように構成すると、少なくとも幅が異なる複数種類の端子のいずれであっても、ネジによって固定部に固定される。
【0010】
前記端子の中途にナットを一体的に設け、前記固定部に、前記ナットが挿入される凹所を形成することもできる。
【0011】
このように構成すると、固定部にネジによって端子板を固定するときに、端子と一体的にされたナットをネジで螺合できるので、一方向からドライバー等の工具を差し込んで組み立てることができ、製造を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、複数種類の端子を共通の端子台に取り付けることができ、コストの低減、在庫管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の1実施形態の端子台の正面図、左側面図、平面図及び部分省略背面図である。
図2図1の端子台を使用しためっき用電源装置の部分省略背面図及び部分省略横断平面図である。
図3図1の端子台で使用する種類の異なる端子板の正面図及び左側面図である。
図4図1の端子台に異なる種類の端子板を取り付けた状態を示す部分省略拡大正面図である。
図5図1の端子台の変形零を示す部分省略拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1実施形態の端子台2は、電気機器、例えばめっき用電源装置の出力端子用のもので、図2(a)に示すように、めっき用電源装置の筐体4の背面6に取り付けられている。端子台2は、図1に示すように、基部8を有している。基部8は、概略矩形、例えば長方形の平板体に絶縁体によって構成され、対向する主表面、例えば表面10と裏面12とを有している。この基部8の4隅には、表面10と裏面12とを貫通するように、ネジ挿通孔14が形成され、これを利用して筐体4の背面6に基部が取り付けられている。図1(b)に示すように基部8の裏面12側に突出させた台部16が、図2(b)に示すように筐体4の背面6に形成した孔に合致し、台部16が筐体4の内部に突出し、基部8の表面10側が筐体4の背面6から外部に突出するように取り付けられている。
【0015】
基部8の表面10と裏面12とを貫通するように、2つの端子孔18、18が形成されている。これら端子孔18、18は、図1(a)に示すように、間隔をあけて基部8の1つの対角線上にほぼ位置するように形成されている。これら端子孔18、18は、概略矩形状、例えば長方形状に形成され、その長辺が、基部8の長辺と平行になるように配置されている。
【0016】
これら端子孔18、18には、上述した出力端子となる正の出力端子用及び負の出力端子用の金属製の端子板20が挿通される。これら正負いずれの出力端子用でも同じ形状の端子板が使用される。
【0017】
但し、端子板20は、その電流容量によって、例えば、この実施形態では、図3(a)乃至(d)に示すように、厚さ寸法と幅寸法とが異なる4種類のもののうち、めっき用電源装置の出力電源容量に応じたものが使用される。例えば厚さ寸法がt1で、幅寸法がW1の端子板20a、厚さ寸法がt2(t2>t1)で幅寸法がW1の端子板20bと、厚さ寸法がt3(t3>t2)で、幅寸法がW2(W2>W1)の端子板20c、厚さ寸法がt4(t4>t3)で、幅寸法がW2の端子板20dが、準備されている。各端子板20a乃至20dの中途には、ナット21が片側に突出するように嵌入されて一体化されている。
【0018】
これらのうち選択されたものが、端子孔18、18に挿通される。この挿通は、図2(b)に示すように端子板20の長さ方向が表面10と裏面12とを繋ぐ方向になるように、即ち、端子板20の先端が筐体4の内部に外部から侵入するように行われている。端子孔18、18は、厚さや幅が異なる端子板20a乃至20dのいずれもが取り付け可能なものである必要がある。
【0019】
そこで、端子孔18は、図1(a)に示すように、長辺間の間隔がt2で、短辺間の間隔がW2である長方形状の主要部22を有している。この主要部22の一方の長辺の中央から、その外側に、その長辺から長辺までの距離がt1で、短辺間の距離がW1である長方形状の拡張部24が形成されている。即ち、一方の長辺が外方に段状に拡張されている。なお、拡張部24は、2つの端子孔18において、互いに反対方向に突出している。
【0020】
従って、端子板20aを端子孔18に挿通する場合、図4(a)に示すように、端子板20aは、拡張部24の両短辺に、端子板20aの幅W1方向の両縁が接触し、拡張部24の長辺に、端子板20aの厚さt1方向の一方の縁が接触するように配置される。この場合、端子板20aの他方の縁は、拡張部24と主要部22との境界に位置する。
【0021】
端子板20bを端子孔18に挿入する場合、図4(b)に示すように端子板20bは、拡張部24の両短辺に、端子板20bの幅W1方向の両縁が接触し、拡張部24の長辺に、端子板20bの厚さt2方向の一方の縁が接触するように配置される。この場合、端子板20bの他方の縁は、拡張部24と主要部22との境界よりも主要部22側に突出して位置する。
【0022】
端子板20cを端子孔18に挿入する場合、図4(c)に示すように端子板20cは、主要部22の両短辺に、端子板20cの幅W2方向の両縁が接触し、拡張部24と主要部22との境界部分に、端子板20cの厚さt1方向の一方の縁が接触するように配置される。なお、拡張部24と主要部22との境界と反対側の主要部22の長辺に、端子板20cの厚さt1方向の他方の縁が接触するように配置することも可能である。
【0023】
端子板20dを端子孔18に挿入する場合、図4(d)に示すように、端子板20dは、主要部22の両短辺に、端子板20dの幅W2方向の両縁が接触し、拡張部24と主要部22との境界部分に、端子板20dの厚さt2方向の一方の縁が接触するように配置される。
【0024】
このようにして、異なる種類の端子板20a乃至20dのうち選択されたものが、端子孔18、18に挿通可能である。
【0025】
表面10側において、端子孔18、18の周囲には、これらを余裕を持ってそれぞれ包囲するように、外観が概略直方体状の保護筒26が、表面10側から図2(b)に示すように端子台2の基部8の表面10から筐体4の外側に突出している。
【0026】
端子孔18、18に挿通された端子板20を固定するために、図1(b)乃至(d)に示すように、裏面12側において、端子孔18、18の周囲には、端子孔18、18を包囲するように外観が概略直方体状の固定部28が裏面12から筐体4の内部に侵入するように突出している。図1(d)は端子台2を、筐体4の内部から背面方向にみた状態を示している。この固定部28の拡張部24の長辺に対応する側壁28aは、拡張部24に対応して図1(d)に示すように拡張部24の外側に一部が突出し、そこに図1(b)に示すようにネジ挿通孔30が形成され、これと対向する側壁28bには、ナット21挿入用の凹所34が形成されている。端子台2の裏面12の固定部28から端子板20を挿入し、凹所34にナット21を挿入すると、端子板20の一部は筐体4の外部に引き出され、一部は筐体4内に配置された状態となる。そして、このネジ挿通孔30に挿通されたネジ(図示せず)が端子板20の中途に嵌入されたナット21に螺合して、端子板20は固定部28に固定される。ナット21にネジを螺合する際に、ナット21(端子板20)を回転させる力が作用するが、端子板20a乃至20dのいずれが使用されていても、端子板20a乃至20dの幅方向の両側にある縁は、端子孔18の主要部22または拡張部24上下の短辺に当接して回り止めされているので、ネジ止めする際に端子板20a乃至20dが回転することが防止されている。したがって、ナット21を工具を用いて押えなくてもナット21は回転しないので、一方向からドライバーを挿入してネジを回してネジ止めすることができ、ネジの挿入方向と逆側でナット21を押えるためのスペースを不要にでき、組立も容易にできる。
【0027】
また、保護筒26内の端子孔18に近い位置には、端子孔18の隙間から筐体4内に、塵埃等が侵入することを防止するため、図1(a)に示すカバー36が嵌め込まれている。このカバー36は、保護筒26の内周面の端子孔18に近い位置に対応する形状を有している。また、カバー36には、端子板の挿通孔38が形成され、この挿通孔38に端子板を挿通した状態で、保護等26内に嵌め込まれる。挿通孔38の位置は、端子板20a乃至20dに応じて異ならせることが望ましい。但し、端子板20a乃至20dの厚さの相違が余り大きく無い場合には、端子板20a乃至20dは金属製であり、弾性があるので、厚さの違いを吸収可能であり、カバー36は、挿通孔38の位置を固定した1種類のみ準備することも可能である。
【0028】
各端子板20a乃至20dの先端は、筐体4の内部に挿通された後、図2(b)に示すように筐体4内の所定の基板40、42に接続される端子板20a乃至20dは、固定部28に取り付けた基板44を貫通して、基板40、42に接続されている。拡張部24を、主要部22の一方の長辺の中央に形成しているので、幅寸法が異なる端子板20a乃至20dのいずれを使用しても、基板40、42への端子板20a乃至20dの接続位置が変化することはない。基板44上には、端子板20a乃至20dが接続されるフィルタ回路が構成されている。
【0029】
上記の実施形態では、正負の出力端子に本発明を実施したので、基部8に形成した挿通孔18は2つであるが、例えば三相交流を出力するような電気機器の出力端子に本発明を実施する場合、端子孔18は3つ形成される。また、上記の実施形態では、端子孔18の拡張部24は1つだけ設けたが、図5(a)に示すように、拡張部24a、24bのように複数の拡張部を形成することもでき、これによって4種類よりも多い端子板の中から選択した端子板を使用することができる。また、拡張部24は、主要部22の一方の長辺の中央に形成したが、図5(b)に示すように、一方の短辺側に偏った位置に拡張部24を形成することもできる。また、上記の実施形態では、4種類の端子板20a乃至20dを使用したが、厚さ寸法が同じで幅寸法が異なる2種類の端子板20bと20dとの2種類のみを使用することもできる。また、上記の実施形態では、端子孔18、18は、基部8の1つの対角線上にほぼ位置するように配置したが、長辺または短辺に平行に並べて配置することもできる。上記の実施形態では、端子板20にナット21を嵌入させたが、端子板20にナット21を一体的に設ければ良く、例えば端子板20にナット21を溶接等によって取り付けることもできる。
【0030】
上記の実施形態では、本発明による端子台をめっき用電源装置の電源出力端子用に使用したが、これに限ったものではなく、他の電気機器、例えば溶接機用の電源に使用することもできるし、また電源出力端子以外にも、例えば電源入力端子等に使用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
2 端子台
4 筐体
6 背面
8 基部
10 表面(主表面)
12 裏面(主表面)
18 端子孔
20 端子板
22 主要部
24 拡張部
図1
図2
図3
図4
図5