【文献】
Sigma Aldrich社,ALDRICH Chemistry, Handbook of Fine Chemicals,2009年,2009-2010,867頁,"1,3-Dibromo-5,5-dimethylhydantoin, 98%"の項
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乾燥機において、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む組成物を精製するハロヒダントイン化合物の製造方法であって、
減圧下、15℃以上、60℃以下の温度で上記組成物から上記有機溶媒及び水を除去する第一工程と、
減圧下、60℃以上、100℃以下の温度で上記第一工程において精製された上記組成物から、上記水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去する第二工程とを含み、
上記乾燥機は、容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、棚段式真空乾燥機、又は棚段式減圧乾燥機であり、
上記第一工程では、上記乾燥機内の温度を、上記第二工程のときよりも低くし、上記組成物に含まれている有機溶媒の含有量を0.5重量%以下にする、ハロヒダントイン化合物の製造方法。
上記組成物から上記有機溶媒を除去する第一工程において、上記ハロゲン単体を除去し、ハロゲン単体の含有量を0.75重量%以下にする、請求項2に記載の製造方法。
上記第一工程のときにおける、圧力は0.1kPa以上、20kPa以下であり、上記第二工程のときにおける、圧力は0.1kPa以上、25kPa以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
上記有機溶媒は、大気圧下における沸点温度が30℃以上200℃以下である、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及び塩素系溶媒のうち少なくともいずれか1種の有機溶媒である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む組成物を精製し、精製によって除去した成分を回収する再利用方法であって、
上記組成物を準備する準備工程と、
上記準備工程の後、上記組成物から有機溶媒を除去し、次いで水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去する除去工程と、
上記除去工程において除去した成分を捕集し、捕集した当該成分を別の上記準備工程において使用するために回収する回収工程とを含み、
上記除去工程では、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハロヒダントイン化合物の製造方法が含んでいる上記第一工程及び上記第二工程を行なう、再利用方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る製造方法は、乾燥機において、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む組成物を精製するハロヒダントイン化合物の製造方法であって、15℃以上、60℃以下の温度で上記組成物から上記有機溶媒を除去する第一工程と、上記第一工程において精製された上記組成物から、上記水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去する第二工程とを含む、製造方法である。
【0020】
上述したように、ハロヒダントイン化合物は液体成分をある程度含んだ湿体の状態では不安定である。そのため、当該湿体を乾燥させる方法があるが、減圧下において加熱乾燥させて精製するとき、ハロヒダントイン化合物がさらに不安定な状態になる。このため、ハロヒダントイン化合物が、分解してヒダントイン化合物とハロゲン単体とが遊離する。これにより、ハロヒダントイン化合物の純度が低下する。また、遊離したハロゲン単体によりハロヒダントイン化合物が着色する。
【0021】
本発明者らは上記問題の解決のために鋭意検討した。その結果、有機溶媒及びハロゲン単体を含んだ状態にあるハロヒダントイン化合物を減圧下で高温乾燥すると分解が促進されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0022】
(組成物)
本発明に係る製造方法において、処理対象となる組成物は、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む。組成物に含まれるハロヒダントイン化合物以外の他の成分、すなわち、水、ハロゲン単体及び有機溶媒は、25℃における蒸気圧が35Pa以上の物質であり、これらの含有量は、例えば、組成物全体に対して、下限値が2重量%であることが好ましく、より好ましくは5重量%であり、さらに好ましくは8重量%である。また、上限値は50重量%であることが好ましく、より好ましくは45重量%であり、さらに好ましくは40重量%である。特に、水及び有機溶媒を含む液体成分の含有量が、2重量%以上、50重量%以下である組成物を好適に適用することができる。この範囲内で他の成分を含む組成物を本発明に係る製造方法によって処理することにより、ハロヒダントイン化合物の着色及び機材の腐食を招くハロヒダントイン化合物の分解を抑制しつつ、ハロヒダントイン化合物を含む組成物から有機溶媒等の成分を除去してハロヒダントイン化合物を製造することができる。
【0023】
なお、本明細書において「組成物」という用語は、液体成分を上記範囲内で含むものを指し、「湿体」ということもある。また、本発明の製造方法により液体成分が5重量%に満たなくなったものを単にハロヒダントイン化合物ということもある。
【0024】
本明細書において、ハロヒダントイン化合物とは、下記化学式Iが挙げられる。なお、下記化学式Iにおいて、R
1、R
2、X
1及びX
2は上述した範囲において、いかなる組み合わせであってもよい。
【0026】
(ここで、
R
1及びR
2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、H、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜10のアリル基もしくはアラルキル基であり、より好ましくは、H、又は炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、H又はメチル基であり、最も好ましくはR
1及びR
2が共にメチル基であり;
X
1及びX
2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、H又はハロゲン原子であり、より好ましくは、H、Br又はIであり、さらに好ましくは、H又はIであり、最も好ましくはX
1及びX
2が共にIであり、ただし、X
1及びX
2が共にHである形態は含まない)。
【0027】
また、より具体的には、例えば、1−ブロモヒダントイン、1−ヨードヒダントイン、3−ブロモヒダントイン、3−ヨードヒダントイン、1,3−ジブロモヒダントイン、1,3−ジヨードヒダントイン、1−ブロモ−5−メチルヒダントイン、1−ヨード−5−メチルヒダントイン、3−ブロモ−5−メチルヒダントイン、3−ヨード−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−メチルヒダントイン、1,3−ジヨード−5−メチルヒダントイン、1−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ヨード−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ヨード−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン及び1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインが好適に挙げられる。
【0028】
なお、組成物中に含有されるハロヒダントイン化合物は、すべて同一の組成であってもよいし、上述した複数種類の組成が混在した状態で存在していてもよい。
【0029】
ハロヒダントイン化合物の入手方法については特に限定されるものではなく、従来公知の方法に従い合成すればよい。ハロヒダントイン化合物の合成方法の一例としては、水溶液中、塩基の存在下において、ヒダントイン化合物とハロゲン単体とを反応させる。例えば、ヒダントイン化合物とアルカリ金属塩(NaOH又はKOH)とを反応させてヒダントイン金属塩を調整し、次いで、当該ヒダントイン金属塩を一塩化ヨウ素(ICl)又は一臭化ヨウ素(IBr)と反応させる。これにより、ハロヒダントイン化合物を含む湿体、すなわち本発明において処理対象となる組成物が得られる。
【0030】
ハロゲン単体としては、例えば、ヨウ素、臭素及び塩素のうち少なくともいずれか1種のハロゲン単体を適用できる。有機溶媒としては、例えば、沸点温度が30℃以上200℃以下である、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及び塩素系溶媒のうち少なくともいずれか1種の有機溶媒が適用できる。
【0031】
なお、エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸−イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−tert−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチルが挙げられる。
【0032】
芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルゼンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、o−シメン、m−シメン、p−シメンが挙げられる。
【0033】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。
【0034】
塩素系溶媒としては、例えば、クロロプロパン、クロロブタン、クロロペンタン、クロロヘキサン、クロロヘプタン、クロロオクタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロブタン、1,3−ジクロロブタン、1,4−ジクロロブタン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3−トリクロロプロパン、四塩化炭素が挙げられる。
【0035】
以下に、本発明に係る製造方法の一実施形態を、
図1に示す製造装置10を用いて説明する。
図1は、本発明に係る製造装置の一実施形態の構成を模式的に示す図である。
【0036】
(製造装置10の構成)
まず、製造装置10の構成を説明する。製造装置10は、乾燥機1、捕集槽2及び減圧ポンプ(圧力制御手段)3を備える構成である。
【0037】
乾燥機1は、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む組成物(以下、「湿体」)を乾燥するための乾燥機である。例えば、乾燥機1内を減圧し、乾燥機1を回転させながら湿体を加熱乾燥することにより、ハロヒダントイン化合物以外の成分を除去し、ハロヒダントイン化合物の純度を高めることができる。乾燥機1は、内部に湿体を収容するための容器を備えており、該容器の周囲に温水を通して内部を加熱できる構成になっている。また、乾燥機1内の圧力は、後述する減圧ポンプ3によって制御されている。なお、乾燥機1内の温度及び圧力を制御する方法はこれに限定されるものではない。
【0038】
乾燥機1としては、様々なものが適用可能であり、例えば、容器回転式真空乾燥機(コニカル真空乾燥機、コニカルドライヤー)、ドラム回転式真空乾燥機(ドラム真空乾燥機)、真空ベルト乾燥機、棚段式真空乾燥機、又は棚段式減圧乾燥機等を好適に用いることができる。特に、容器回転式真空乾燥機(コニカル真空乾燥機)又はドラム回転式真空乾燥機(ドラム真空乾燥機)は、内容物を攪拌できるため、乾燥効率が向上すると共に、乾燥むら及び塊状化を抑制でき、また、装置がコンパクトであることから好ましい。
【0039】
乾燥機1は、配管4aを介して捕集槽2と接続されており、乾燥機1内において除去した気体状の成分を捕集槽2内に送入することができるようになっている。また、乾燥機1と接続されている側の配管4aの末端部(すなわち、乾燥機1と配管4aとの接続部)にはフィルタ(濾過手段、通常は弗化樹脂製)6が設けられており、捕集槽2に送られる気体(気化した成分)を濾過するようになっている。このフィルタ6があることによって、乾燥中に乾燥機1内に飛散した固体物質が減圧ライン(配管4a,4b)中に閉塞を引き起こすことを防ぎ、捕集槽2又は減圧ポンプ3の汚染もしくは腐食を防ぎ、目的物の回収率を向上させる。
【0040】
なお、乾燥機1は、他にも、例えば、乾燥機1内に不活性ガスを導入するために導入口が設けられていてもよい。これにより、乾燥機1内に不活性ガスを導入しつつ、内部を大気圧より減圧することができる。不活性ガスとしては、ハロヒダントイン化合物に対して不活性であればよく、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。
【0041】
配管4aは、筒状のパイプ(加熱手段、図示せず)の内部に収容されており、パイプに温風を通すことによって配管4aを加熱するようになっている。これにより、ヨウ素の塊が配管4a内を閉塞することを防ぐことができる。なお、配管4aを加熱するための手段はこれに限定されるものではない。また、配管4aには、他にも、乾燥機1内と配管4a内との圧力差を監視するためのマノメーター5a,5b、及び配管4a内の閉塞を確認するためのサイトグラス7が設けられている。
【0042】
捕集槽2は、湿体から除去された成分を捕集するための槽である。捕集槽2には、配管4aが接続されており、乾燥機1から排出された気体が送入されるようになっている。捕集槽は1つであってもよいし、複数の捕集槽が設置されていてもよい。本実施形態では、2つの捕集槽(2a,2b)が直列で配置された構成になっている。具体的には、捕集槽2a内は空であり、送入された気体に含まれるヨウ素を捕集するようになっている。一方、捕集槽2b内には気体を吸収するための液体が収容されており、ヨウ素以外のハロゲン単体(すなわち、臭素又は塩素)、水、有機溶媒及び捕集槽2aにおいて捕集しきれなかったヨウ素を捕集するようになっている。捕集槽2b内に収容される液体としては、例えば、還元剤を含む水溶液又は有機溶媒を適用することができる。
【0043】
なお、本実施形態では捕集槽2a内が空であり、捕集槽2b内に液体が収容されているが、捕集槽2a内に液体を収容してもよい。この場合、捕集槽を1つのみ備える構成であってもよく、ヨウ素以外のハロゲン単体、水及び有機溶媒は捕集槽2aに捕集される。また、捕集槽2bに液体を収容し、その液体を外部に抜き出してシャワーとして捕集槽2bに循環させてもよいし、捕集槽2aに液体を収容し、その液体を外部に抜き出してシャワーとして捕集槽2aに循環させてもよい。また、捕集槽2a及び捕集槽2bが共に液体を収容し、その液体を外部に抜き出してシャワーとして捕集槽2a及び捕集槽2bに循環させてもよい。
【0044】
減圧ポンプ3は、乾燥機1内の圧力を制御するためのポンプである。減圧ポンプ3は配管4bを介して捕集槽2に接続されており、捕集槽2を経由して配管4a,4bを介して乾燥機1内の圧力を減圧するようになっている。なお、乾燥機1内の圧力は、例えば窒素を用いて解圧する。
【0045】
なお、本発明に係る製造装置は、例えば、制御システムを備える構成であってもよい。この場合、制御システムによって製造装置における各種処理を自動化させることができる。
【0046】
次に、製造装置10において本発明に係る製造方法を実施する場合を例にして、本発明に係る製造方法の一実施形態について説明する。
【0047】
(第一工程)
本発明に係る製造方法の第一工程は、乾燥機1において、湿体から有機溶媒を除去する工程である。第一工程では、乾燥機1に湿体を投入し、減圧ポンプ3によって大気圧よりも減圧して、乾燥機1を回転させながら乾燥機1内の温度を加熱することによって、湿体から有機溶媒を蒸発させて除去することができる。なお、本例ではコニカル真空乾燥機を用いて回転させながら乾燥させているが、乾燥方法はこれに限定されるものではない。
【0048】
第一工程では、乾燥機1内の温度及び圧力のうち少なくともいずれかを、後述する第二工程のときよりも低くすればよい。例えば、第一工程のときにおける乾燥機1内の温度の下限値は15℃であることが好ましく、より好ましくは25℃であり、さらに好ましくは35℃である。また、上限値は60℃であることが好ましく、より好ましくは55℃であり、さらに好ましくは50℃である。また、例えば、第一工程のときにおける乾燥機1内の圧力の下限値は0.1kPaであることが好ましく、より好ましくは0.3kPaであり、さらに好ましくは0.5kPaである。また、上限値は20kPaであることが好ましく、より好ましくは15kPaであり、さらに好ましくは10kPaである。
【0049】
乾燥機1から除去した有機溶媒は、配管4aを介して捕集槽2a,2b内に送入される。上述したように、本例では、捕集槽2a内は空であり、捕集槽2b内には液体が収容されている。そのため、配管4aを通って送られる有機溶媒は、捕集槽2b内に捕集される。
【0050】
このように、第一工程では、温度及び圧力のうち少なくともいずれかを第二工程のときよりも低くすることにより、湿体から主に有機溶媒及びハロゲン単体を除去することができる。上述したように、有機溶媒及びハロゲン単体を含んだ状態にあるハロヒダントイン化合物を減圧下において高温で乾燥すると、ハロヒダントイン化合物の分解が促進される。このため、ハロヒダントイン化合物の純度が低下したり、遊離したハロゲン単体(主にヨウ素)により着色又は機材が腐食したりする。本発明によれば、より低い温度及び圧力において、まず、有機溶媒及びハロゲン単体を除去するため、ハロヒダントイン化合物の分解促進を抑えることができる。
【0051】
なお、第一工程の終了は、例えば、湿体に含まれる有機溶媒あるいはハロゲン単体の含有量が所定の値以下になったときを基準にすることができる。そのような基準としては、目的物の性状などにより任意に設定することができるが、例えば、第一工程において精製された組成物(以下、「粗乾燥体」)中の有機溶媒の含有量が、好ましくは0.5重量%以下になったときであり、より好ましくは0.2重量%以下になったときに第一工程が終了したと判断すればよい。第一工程において精製された組成物中の有機溶媒の含有量が0.5重量%以下であれば、第二工程の設定温度においてもハロヒダントイン化合物の分解を抑制することができる。また、例えば、粗乾燥体中のハロゲン単体の含有量が、好ましくは0.75重量%以下になったときであり、より好ましくは0.5重量%以下になったときに第一工程が終了したと判断すればよい。第一工程において精製された組成物中のハロゲン単体の含有量が0.75重量%以下であれば、第二工程の設定温度においてもハロヒダントイン化合物の分解を抑制することができる。また、第一工程終了後、乾燥機1内の圧力を一旦解圧し、第二工程に移るときに再度減圧してもよい。
【0052】
(第二工程)
本発明に係る製造方法の第二工程は、乾燥機1において、精製された粗乾燥体から水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去する工程である。第二工程では、乾燥機1内の温度及び圧力のうち少なくともいずれかが、第一工程のときよりも高くなるように、粗乾燥体が収容された乾燥機1内を減圧ポンプ3によって減圧して、乾燥機1を回転させながら乾燥機1内の温度を加熱する。これにより、粗乾燥体から水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去することができる。
【0053】
例えば、第二工程のときにおける乾燥機1内の温度の下限値は60℃であることが好ましく、より好ましくは70℃であり、さらに好ましくは75℃である。また、上限値は100℃であることが好ましく、より好ましくは95℃であり、さらに好ましくは90℃である。また、例えば、第二工程のときにおける乾燥機1内の圧力の下限値は0.1kPaであることが好ましく、より好ましくは0.3kPaであり、さらに好ましくは0.5kPaである。また、上限値は25kPaであることが好ましく、より好ましくは20kPaであり、さらに好ましくは15kPaである。
【0054】
乾燥機1から除去した水及びハロゲン単体は、配管4aを介して捕集槽2a,2b内に送入される。本例では、空の捕集槽2aにはハロゲン単体のうちヨウ素が捕集され、液体が収容されている捕集槽2bには、ヨウ素以外のハロゲン単体及び水が捕集される。
【0055】
このように、第二工程では、温度及び圧力のうち少なくともいずれかが第一工程のときよりも高いことにより、粗乾燥体から主に水及びハロゲン単体を除去することができる。粗乾燥体を十分な温度及び圧力で加熱乾燥させるため、ハロヒダントイン化合物をより安定な乾燥体にすることができる。また、第二工程のときには粗乾燥体から有機溶媒が除去されているため、高温で加熱乾燥させてもハロヒダントイン化合物の分解促進が抑えられる。よって、純度が高く、且つ、着色の少ないハロヒダントイン化合物を製造することができる。
【0056】
ところで、本発明の方法を用いた場合であっても、乾燥中に一部のハロヒダントイン化合物が分解し、それによってハロゲン単体が生じることもあり得る。しかし、本発明によれば、そのように生じたハロゲン単体も乾燥中に好適に除去することができる。そのため、当然のことながら、最初から(すなわち湿体の中に)ハロゲン単体を含む組成物であっても、本発明の方法によってハロゲン単体を好適に除去し、高純度のハロヒダントイン化合物に精製することができる。
【0057】
なお、第二工程の終了は、例えば、粗乾燥体に含まれる水の含有量が所定の値以下になったときを基準にすることができる。そのような基準としては、目的物の性状などにより任意に設定することができるが、例えば、第二工程において乾燥体中の水の含有量が、好ましくは3.0重量%以下になったときであり、より好ましくは2.0重量%以下になったときであり、最も好ましくは1.0重量%以下になったときに第二工程が終了したと判断すればよい。
【0058】
本発明に係るハロヒダントイン化合物の製造方法において好適に乾燥されて有機溶媒及びハロゲン単体が除去され、水分の含有量が3重量%以下である、ハロヒダントイン化合物を得ることができる。水分の含有量が3重量%以下であれば、5℃の冷蔵保存によって1年以上貯蔵しても純度を低下させることなく貯蔵することができる。
【0059】
本発明に係るハロヒダントイン化合物の製造方法は、第二工程の終了後、さらに他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、組成物から、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、又は有機溶媒をさらに除去する工程が挙げられる。
【0060】
(再利用
方法)
本発明は、さらに、上述した製造方法において組成物から除去し、捕集した有機溶媒及びハロゲン単体を再利用する
方法を提供する。
【0061】
本発明に係る再利用
方法は、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む組成物を精製し、精製によって除去した成分を回収する再利用
方法であって、上記組成物を準備する準備工程と、上記準備工程の後、上記組成物から有機溶媒を除去し、次いで水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去する除去工程と、上記除去工程において除去した成分を捕集し、捕集した当該成分を別の上記準備工程において使用するために回収する回収工程とを含む、
方法である。
【0062】
準備工程とは、水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれか、有機溶媒、ならびにハロヒダントイン化合物を含む組成物を準備する工程である。準備する組成物としては、本発明に係る製造方法の説明において述べた湿体を適用することができる。組成物を準備する方法としては、上述した合成方法を用いればよい。
【0063】
除去工程とは、上記準備工程の後、上記組成物から有機溶媒を除去し、次いで水及びハロゲン単体のうち少なくともいずれかを除去する工程である。具体的には、本発明に係る製造方法における第一工程及び第二工程の手順を適用することができる。
【0064】
回収工程とは、上記除去工程において除去した成分を捕集し、捕集した当該成分を別の上記準備工程において使用するために回収する工程である。除去した成分の捕集方法についても、本発明に係る製造方法において説明した方法を適用することができる。また、回収方法については特に限定されるものではなく、例えば、
図1に示す製造装置10の捕集槽2a,2bに、それぞれ有機溶媒及びハロゲン単体を取り出すための配管を接続しておき、そこから取り出すようにしてもよい。これにより、回収した成分を別の準備工程において再利用することができる。
【0065】
なお、ここでいう「別の準備工程」とは、回収工程の後に再び上記組成物を準備する、すなわちハロヒダントイン化合物を含む湿体を合成する工程を指し、その際、回収工程において回収した成分を用いて合成を行なうことができる。
【0066】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0067】
以上のように、本発明に係る製造方法では、上記組成物から上記有機溶媒を除去する第一工程において、上記有機溶媒の含有量を0.5重量%以下にすることがより好ましい。
【0068】
また、本発明に係る製造方法では、上記組成物から上記有機溶媒を除去する第一工程において、上記ハロゲン単体を除去し、ハロゲン単体の含有量を0.75重量%以下にすることがより好ましい。
【0069】
また、本発明に係る製造方法では、上記第一工程では、上記乾燥機内の温度及び圧力のうち少なくともいずれかを、上記第二工程のときよりも低くすることがより好ましい。
【0070】
また、本発明に係る製造方法では、上記第一工程のときにおける、上記温度は15℃以上、60℃以下であり、上記第二工程のときにおける、上記温度は60℃以上、100℃以下であることがより好ましい。
【0071】
また、本発明に係る製造方法では、上記第一工程のときにおける、上記圧力は0.1kPa以上、20kPa以下であり、上記第二工程のときにおける、上記圧力は0.1kPa以上、25kPa以下であることがより好ましい。
【0072】
また、本発明に係る製造方法では、上記有機溶媒は、大気圧下における沸点温度が30℃以上200℃以下である、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及び塩素系溶媒のうち少なくともいずれか1種の有機溶媒であるものに対して好適に適用できる。
【0073】
また、本発明に係る製造方法では、上記ハロゲン単体が、ヨウ素、臭素及び塩素のうち少なくともいずれか1種のハロゲン単体であるものに対して好適に適用できる。
【0074】
また、本発明に係る製造方法では、上記ハロヒダントイン化合物が、上記化学式Iで示される化合物であることがより好ましい。
【0075】
また、本発明に係る製造装置は、上記乾燥機と上記配管との接続部に設けられ、気化した上記成分を濾過する濾過手段をさらに備えることがより好ましい。
【0076】
また、本発明に係る製造装置では、上記捕集槽内に、気化した上記成分を吸収するための液体を収容していることがより好ましい。
【0077】
また、本発明に係る製造装置では、上記液体が、還元剤を含む水溶液又は有機溶媒であることがより好ましい。
【実施例】
【0078】
1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインは0.1規定の硝酸銀水溶液を用いた滴定法を用いて、酢酸ブチルはガスクロマトグラフの内部標準法を用いて定量した。また、ヨウ素単体は、クロロホルムにて試料から抽出し、硝酸銀滴定法を用いて定量した。なお、水の含有量については、JIS−K0067−1992 4.1.4(1)「第1法 大気圧下で加熱乾燥する方法」に準拠し、試料を大気圧下で105℃にて2時間乾燥し、質量の減少を測定して得た揮発物含有量から、ヨウ素単体の含有量を差し引いた値を水の含有量とした。通常、水の含有量の測定はカールフィッシャー装置を用いて実施するが、本試料はカールフィッシャー液と反応するため測定できないからである。
【0079】
〔製造例1:1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの合成〕
まず、以下の手順によって1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン(ハロヒダントイン化合物)を含む組成物を製造した。
【0080】
1000Lのグラスライニング反応釜に水(350.5kg)を仕込み、12.0重量%のNaOH水溶液(81.7kg)を仕込み、次に、5,5−ジメチルヒダントイン(31.4kg、245.0モル)を仕込んだ。その後、6℃まで冷却した。
【0081】
次に、反応釜の内容物の温度を0〜7℃に保ちながら、12.0重量%のNaOH水溶液(66.2kg、198.0モル)と42.3重量%の一塩化ヨウ素の酢酸ブチル溶液(76.5kg、200.0モル)とを2時間かけて滴下した。滴下終了後、6℃で15分間熟成を行なった。次に、遠心濾過器を用いて反応生成物を濾過し、濾過したケーキを250kgの水を用いて洗浄した。得られた1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの湿体(組成物)の重量は83.3kgであった。得られた湿体には1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインが73.3kg(88.0重量%)、ヨウ素単体が1.3kg(1.6重量%)、水が7.3kg(8.8重量%)、酢酸ブチルが0.8kg(1.0重量%)含まれていた。
【0082】
〔実施例1〕
実施例1では、製造例1の方法によって得られたハロヒダントイン化合物を含む組成物を、以下の方法で乾燥させて、ハロヒダントイン化合物を製造した。
【0083】
まず、製造例1の方法で得られた1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの湿体83.3kgを、内容量1000Lのコニカル真空乾燥機に投入し、第一工程を実施した。該湿体中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの重量は73.3kg(88.0重量%)、ヨウ素単体の重量は1.3kg(1.6重量%)、水の重量は7.3kg(8.8重量%)、酢酸ブチルの重量は0.8kg(1.0重量%)であった。
【0084】
具体的には、減圧を開始し減圧度が一定になった後、コニカル真空乾燥機を回転させると共に、熱媒をコニカル真空乾燥機のジャケットに通し、6時間乾燥した。このときの乾燥機内の温度は32.1℃〜40.5℃、乾燥機内の圧力は4.9〜6.0kPaであった。その後、窒素を用いて解圧して、第一精製品(粗乾燥体)の一部をコニカルドライヤーから取り出し、第一精製品(粗乾燥体)を分析した。その結果、第一精製品中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインは91.0重量%であり、ヨウ素単体は0.38重量%であり、酢酸ブチルは0.1重量%であり、第一工程の有機溶媒による終了基準を満たしていた。
【0085】
続いて、第二工程を実施した。具体的には、減圧を開始し減圧度が一定になった後、コニカル真空乾燥機を回転させるとともに、熱媒をコニカル真空乾燥機のジャケットに通し乾燥を再開した。乾燥開始1時間後、乾燥機内の温度は59.6℃に達し、その後、3時間乾燥した。このときの乾燥機内の温度は59.6℃〜66.8℃、乾燥機内の圧力は4.6〜6.0kPaであった。コニカル真空乾燥機のジャケットに冷却水を通水し30℃まで冷却した後、窒素を用いて解圧して、第二精製品(乾燥体)をコニカル真空乾燥機から取り出した。得られた第二精製品の重量は71.7kgであり、第二精製品中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの重量は69.5kg(97.0重量%)であり、水の重量は1.6kg(2.3重量%)であり、ヨウ素単体及び酢酸ブチルは検出されなかった。この第二精製品は淡黄色であった。また、乾式篩法により測定したところ、粒径8mm未満が100%であり、8mm以上の物は含まれていなかった。
【0086】
〔実施例2〜4〕
実施例2〜4では、製造例1と同様の方法によって得られた湿体を用いて、実施例1と同様の方法により精製を行なった。なお、実施例2〜4において変更した点は、第一工程及び第二工程における温度、圧力、乾燥時間の設定であり、各設定値及びそれにより得られた精製品の純度を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示されるように、実施例2〜4いずれの場合も、高純度の1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの精製品が得られた。また、得られた精製品の着色はいずれも少なかった。また、乾式篩法により測定したところ、いずれも粒径8mm未満が100%であり、8mm以上の物は含まれていなかった。
【0089】
〔実施例5〕
実施例5では、上記製造例1において合成したハロヒダントイン化合物を含む組成物を、以下の方法で乾燥させて、ハロヒダントイン化合物を製造した。
【0090】
まず、製造例1と同様の方法で得られた1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの湿体270.9kgを、内容量1000Lのコニカル真空乾燥機に投入し、第一工程を実施した。
【0091】
具体的には、コニカル真空乾燥機を回転させた後、減圧を開始するとともに、コニカルドライヤーのジャケットに通し、6時間乾燥した。このときの乾燥機内の圧力は2.7〜4.3kPaであった。その後、窒素を用いて解圧して、第一精製品(粗乾燥体)をコニカル真空乾燥機から取り出した。得られた第一精製品の重量は260.2kgであり、第一精製品中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの重量は236.5kg(90.9重量%)、水の重量は21.0kg(8.1重量%)であったが、酢酸ブチルは0.2kg(0.1重量%)であった。第一捕集槽にはヨウ素単体が0.1kg、第二捕集槽には水が6.9kg、酢酸ブチルが3.7kg捕集された。
【0092】
続いて、第一精製品をコニカル真空乾燥機に再度投入し、第二工程を実施した。具体的には、コニカル真空乾燥機を回転させ、さらに減圧を開始するとともに、熱媒をコニカル真空乾燥機のジャケットに通し、6.5時間乾燥した。このときの乾燥機内の圧力は2.1〜10.5kPaであった。コニカル真空乾燥機のジャケットに冷却水を通水し30℃まで冷却した後、窒素を用いて解圧して、第二精製品(乾燥体)をコニカル真空乾燥機から取り出した。得られた第二精製品の重量は239.2kgであり、第二精製品中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの重量は230.5kg(96.4重量%)であり、水の重量は2.0kg(0.8重量%)であった。得られた第二精製品は淡黄色であった。また、第一捕集槽にはヨウ素単体が2.0kg、第二捕集槽には水が19kg捕集された。第一捕集槽に捕集されたヨウ素単体はアルカリ性の亜硫酸塩水溶液で処理してヨウ化物塩類として回収し、さらに塩素酸化してヨウ素単体として回収した。
【0093】
〔実施例6〕
実施例6では、製造例1と同様の方法によって得られたハロヒダントイン化合物を含む組成物を、以下の方法で乾燥させて、ハロヒダントイン化合物を製造した。
【0094】
まず、製造例1と同様の方法で得られた1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの湿体265.29kgを、内容量1000Lのコニカル真空乾燥機に投入し、第一工程を実施した。該湿体中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの重量は236.8kg(87.4重量%)、水の重量は27.9kg(10.3重量%)、酢酸ブチルの重量は3.7kg(1.4重量%)であった。
【0095】
具体的には、コニカル真空乾燥機を回転させた後、減圧を開始するとともに、熱媒をコニカル真空乾燥機のジャケットに通し、6時間乾燥した。このときの乾燥機内の圧力は3.8〜7.1kPaであった。その後、窒素を用いて解圧して、第一精製品(粗乾燥体)の一部をコニカル真空乾燥機から取り出し、第一精製品(粗乾燥体)を分析した。その結果、第一精製品中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインは90.9重量%、水は8.1重量%、酢酸ブチルは0.1重量%であった。第一捕集槽にはヨウ素単体が0.1kg、第二捕集槽には水が6.9kg、酢酸ブチルが3.7kg捕集された。
【0096】
続いて、第二工程を実施した。具体的には、コニカル真空乾燥機を回転させ、さらに減圧を開始するとともに、熱媒をコニカル真空乾燥機のジャケットに通し、6時間乾燥した。このときの乾燥機内の圧力は3.7〜9.4kPaであった。コニカル真空乾燥機のジャケットに冷却水を通水し30℃まで冷却した後、窒素を用いて解圧して、第二精製品(乾燥体)をコニカル真空乾燥機から取り出した。得られた第二精製品の重量は239.2kgであり、第二精製品中に含まれる1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの重量は230.5kg(96.1重量%)であり、水の重量は2.0kg(0.8重量%)であった。得られた第二精製品は淡黄色であった。また、第一捕集槽にはヨウ素単体が2.0kg、第二捕集槽には水が19kg捕集された。第一捕集槽に捕集されたヨウ素単体は、アルカリ性の亜硫酸塩水溶液で処理してヨウ化物塩類として回収し、さらに塩素酸化してヨウ素単体として回収した。
【0097】
〔実施例7〕
実施例7では、製造例1と同様の方法によって得られたハロヒダントイン化合物を含む組成物を、実施例1と同様の方法により精製を行ない、第二精製品を得た。得られた第二精製品は1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの純度が96.9重量%であり、水は0.4重量%であった。また、この第二精製品をNMRにて分析したところ、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン:1−ヨード−5,5−ジメチルヒダントイン:3−ヨード−5,5−ジメチルヒダントイン:5,5−ジメチルヒダントインが96.9:1.1:2.0:0.0の重量比で含まれている事がわかった。
【0098】
〔比較例1〕
比較例1では、まず、製造例1と同様の方法で得られた純度88.7%の1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン17.6kgを内容量200Lのコニカル真空乾燥機に仕込んだ。そして、コニカル真空乾燥機を回転させ、さらに減圧を開始し、72〜74℃に制御された温水をコニカル真空乾燥機のジャケットに通水し、9時間乾燥した。このときの乾燥機内の圧力は7.2〜8.2kPaであった。乾燥終了後、コニカル真空乾燥機のジャケットに冷却水を通水し30℃まで冷却し、その後、窒素を用いて減圧を解除した。コニカル空乾燥機から1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの乾燥品を取り出した。コニカル真空乾燥機のマンホール入り口付近またはバタフライ弁の内側に茶褐色に着色した固体が得られ、また、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインが分解して生成したと考えられる黒いヨウ素単体も確認された。当該茶褐色の固体を分析したところ、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの含有量は91.1重量%であった。この乾燥品を乾式篩法により測定したところ、粒径8mm未満が80%、8〜15mmが9%、15mmより大きいものが11%であった。
【0099】
このように、比較例1では、湿体を初めから減圧下で高温乾燥するため、ハロヒダントイン化合物が分解したと考えられる。
〔比較例2〕
比較例2では、製造例1と同様の方法によって得られたハロヒダントイン化合物を含む組成物を、比較例1と同様の方法により精製を行ない、乾燥品を得た。この得られた乾燥品は、比較例1同様に茶褐色に着色した固体及び黒いヨウ素単体を不均一に含むものであり、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの純度は91.0重量%であった。また、この乾燥品をNMRにて分析したところ、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン:1−ヨード−5,5−ジメチルヒダントイン:3−ヨード−5,5−ジメチルヒダントイン:5,5−ジメチルヒダントインが82.3:4.5:12.4:0.8の重量比で含まれている事がわかった。低純度品の分析では各分析値に不整合が生じているものの、実施例との比較により明らかに乾燥中に1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインが分解している事が確認できた。