特許第6377532号(P6377532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377532
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】欠陥抵抗性音響ポリマー中間層
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180813BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20180813BHJP
   C08F 16/38 20060101ALN20180813BHJP
【FI】
   B32B27/30 102
   C03C27/12 D
   !C08F16/38
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-561138(P2014-561138)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-515396(P2015-515396A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】US2013029782
(87)【国際公開番号】WO2013134602
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/609,092
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/781,859
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ルー
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/081191(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/081190(WO,A1)
【文献】 特開2006−264289(JP,A)
【文献】 特開2011−042552(JP,A)
【文献】 特開2007−331959(JP,A)
【文献】 特開平06−321586(JP,A)
【文献】 特開平09−295839(JP,A)
【文献】 特表2008−531770(JP,A)
【文献】 特表2008−532817(JP,A)
【文献】 特開平06−000926(JP,A)
【文献】 特開2001−226152(JP,A)
【文献】 特表2010−525967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C03C 1/00−29/00
C08F 16/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第一のポリマー層、
分子量が140,000ダルトンを超える可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第二のポリマー層、
分子量が140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第三のポリマー層、
を含み、前記第二のポリマー層は前記第一のポリマー層と前記第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及びコア層を有するポリマー中間層となっており、
前記第一のポリマー層および前記第三のポリマー層は25℃超、55℃以下のTgを有し、前記第二のポリマー層は−15℃超、10℃以下のTgを有し、
前記第一のポリマー層および前記第三のポリマー層は前記スキン層に対応し、前記第二のポリマー層は前記コア層に対応する、ポリマー中間層。
【請求項2】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層の前記ポリ(ビニルブチラール)は分子量が130,000ダルトン未満である、請求項1記載のポリマー中間層。
【請求項3】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層の前記ポリ(ビニルブチラール)は分子量が120,000未満である、請求項1記載のポリマー中間層。
【請求項4】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層の前記ポリ(ビニルブチラール)は分子量が110,000ダルトン未満である、請求項1記載のポリマー中間層。
【請求項5】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はDF135により測定して、フローが約0.19mm〜約0.37mmの範囲にある、請求項1記載のポリマー中間層。
【請求項6】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は加熱後エンボス加工表面粗さ(embossed post heat surface roughness)Rzが約25〜約55ミクロンの範囲にある、請求項1記載のポリマー中間層。
【請求項7】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は応力緩和弾性率G'(t)が約100パスカル未満である、請求項5記載のポリマー中間層。
【請求項8】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はDF135により測定して、流動度が約0.19mm〜約0.26mmの範囲にある、請求項1記載のポリマー中間層。
【請求項9】
前記第一のポリマー層及び前記第三のポリマー層の各々は約30〜約60phrの総可塑剤を含む、請求項7記載のポリマー中間層。
【請求項10】
分子量が140,000ダルトン未満であるポリ(ビニルブチラール)を含む第一のポリマー層、
分子量が140,000ダルトンを超えるポリ(ビニルブチラール)を含む第二ポリマー層、ここで、前記第二のポリマー層は前記第一のポリマー層と接触している、及び、
分子量が140,000ダルトン未満であるポリ(ビニルブチラール)を含む第三のポリマー層、ここで、前記第三のポリマー層は前記第二のポリマー層と接触しており、前記第二ポリマー層は前記第一のポリマー層と前記第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及びコア層を有するポリマー中間層となっており、
ここで、前記スキン層の各々はDF135により測定して流動度が約0.19mm〜約0.37mmであり、
前記第一のポリマー層および前記第三のポリマー層は25℃超、55℃以下のTgを有し、前記第二のポリマー層は−15℃超、10℃以下のTgを有し、
前記第一のポリマー層および前記第三のポリマー層は前記スキン層に対応し、前記第二のポリマー層は前記コア層に対応する、ポリマー中間層。
【請求項11】
前記スキン層の各々はDF135により測定して、流動度が0.19〜0.26mmである、請求項10記載のポリマー中間層。
【請求項12】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は加熱後エンボス加工表面粗さ(embossed post heat surface roughness)Rzが約25〜約55ミクロンの範囲にある、請求項10記載のポリマー中間層。
【請求項13】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は応力緩和弾性率G'(t)が約100パスカル未満である、請求項11記載のポリマー中間層。
【請求項14】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は加熱後エンボス加工表面粗さ(embossed post heat surface roughness)Rzが約25〜約55ミクロンの範囲にある、請求項13記載のポリマー中間層。
【請求項15】
前記第二のポリマー層は、約9〜約18質量%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含む、請求項14記載のポリマー中間層。
【請求項16】
分子量が140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第一のポリマー層、
前記第一のポリマー層と接触している、分子量が140,000ダルトンを超える可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第二のポリマー層、及び、
前記第二のポリマー層と接触している、分子量が140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第三のポリマー層、
を含み、前記第二のポリマー層は前記第一のポリマー層と前記第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及びコア層を有するポリマー中間層となっており、
少なくとも1つのスキン層は応力緩和弾性率G'(t)が約100パスカル未満であり、
前記第一のポリマー層および前記第三のポリマー層は25℃超、55℃以下のTgを有し、前記第二のポリマー層は−15℃超、10℃以下のTgを有し、
前記第一のポリマー層および前記第三のポリマー層は前記スキン層に対応し、前記第二のポリマー層は前記コア層に対応する、ポリマー中間層。
【請求項17】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はDF135により測定して、流動度が約0.19mm〜約0.26mmの範囲にある、請求項16記載のポリマー中間層。
【請求項18】
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は約30〜約55phrの可塑剤を含む、請求項16記載のポリマー中間層。
【請求項19】
前記第二のポリマー層は、約9〜約18質量%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含む、請求項16記載のポリマー中間層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年3月9日に出願した米国仮出願番号第60/609092号の優先権を主張し、その開示の全体を参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
発明の分野
本開示は多層ガラスパネルのためのポリマー中間層、及び、少なくとも1つのポリマー中間層シートを有する多層ガラスパネルの分野に関する。具体的には、本開示は、光学的欠陥の形成に抵抗性の複数の熱可塑性層を含むポリマー中間層の分野に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図面の簡単な説明
図1図1は3層中間層中の気泡の開始及び膨張を描く。
【0004】
図2図2は多層中間層を含むガラスパネル中に一般に見られる欠陥の例を描く。
【0005】
図3図3はアイスフラワー試験により、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム内に形成されたアイスフラワーの例を描く。
【0006】
図4図4は従来の多層中間層ラミネート中の曲げ応力、及び、本開示の中間層中のこのような応力の低下を描く。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好ましい実施形態の説明
本開示は多層ガラスパネルのためのポリマー中間層、及び、少なくとも1つのポリマー中間層シートを有する多層ガラスパネルの分野に関する。具体的には、本開示は、光学的欠陥の形成に抵抗性の複数の熱可塑性層を含むポリマー中間層の分野に関する。
【0008】
一般に、多層ガラスパネルは、2つのガラスパネルの間に挟まれた中間層を含むラミネートを指す。ラミネート化多層ガラスパネルは、一般に、建築窓用途、及び、自動車及び航空機の窓に利用される。これらの用途品は、一般に、ラミネート化安全ガラスと呼ばれている。ラミネート化安全ガラスにおける中間層の主な機能は、ガラスに加えられる衝撃又は力から生じるエネルギーを吸収すること、力が加わり、ガラスが破壊された場合でもガラスの層が結合している状態を維持すること、及び、ガラスが鋭い片に分解するのを防止することである。また、中間層は、一般に、ガラスにはるかに高い遮音等級を与え、UV及び/又はIR光透過を低減し、結合している窓の審美的な魅力を高める。
【0009】
ガラスパネルの所望の、最適な遮音性を達成するためには、2つの剛性「スキン」層の間に挟まれた少なくとも1つの柔軟「コア」層を含む多層中間層を利用することが一般的な実施方法となっている。中間層のこれらの層は、一般に、当業者に知られている任意の応用可能なプロセス又は方法によって、ポリ(ビニルブチラール)などのポリマー樹脂を1種以上の可塑剤と混合し、ミックスをシートに溶融加工することによって製造され、該プロセス又は方法としては、限定するわけではないが、押出が挙げられ、層は同時押出及びラミネーションなどのプロセスによって組み合わされる。他の追加の成分は、必要に応じて、さまざまな他の目的のために添加されてよい。中間層シートが形成された後に、それは、典型的には、輸送及び貯蔵のために、また、後述するように、多層ガラスパネルにおける後の使用のために、収集されそしてロール巻きされる。
【0010】
以下に、多層ガラスパネルが音響中間層との組み合わせで一般に生産される方法を簡単に説明する。まず、多層中間層を2つの基材の間に配置し、余分な中間層を縁からトリミングして、アセンブリを形成する。その後、当業者に知られている応用可能なプロセス又は方法、例えば、ニップローラー、真空バッグ又は他の脱気機構によってアセンブリから空気を除去する。また、中間層は当業者に知られた任意の方法によって基材に部分的に圧着されている。最終的な一体構造を形成するために、この予備的結合は、その後、当業者に知られている高温高圧ラミネーションプロセスにより、より恒久的なものとされ、該プロセスとしては、限定するわけではないが、オートクレーブ処理が挙げられる。
【0011】
これらの多層音響中間層を含むガラスパネルは、極端な条件の下で、中間層中に過度に残留した捕捉された空気の存在下及びガラス中の応力で開始するアイスフラワー(スノーフレークとしても知られる)として一般に知られている欠陥を発生することがある。具体的には、ラミネート化多層ガラスパネル構造物の製造工程の間に、空気及び他の気体は、しばしば、基材と中間層との間、又は、多層中間層の個々の層が一緒に積層されて多層中間層を形成しているときには、これらの個々の層どうしの間の隙間空間内に捕捉される。上述したように、この捕捉された空気は、一般に、構造物を真空又はニップロールで脱気することによりグレージング又はパネル製造工程で除去される。しかしながら、これらの技術は基材間の隙間空間に捕捉された空気をすべて除去するのに常に有効なわけではない。空気のこれらのポケットは、ミスマッチしたガラス(例えば、強化ガラス、耐熱強化ガラス、及び、厚いアニール処理したガラス)、及び、ガラス曲率が一般に空気のギャップを生じる風防において特に顕著である。風防における空気のこれらのギャップは一般に「曲げギャップ」と呼ばれている。さらに、曲げギャップがオートクレーブ処理中に存在する場合に、熱及び圧力は中間層に適合しそしてギャップを狭くするようにガラスを圧縮し、元のギャップ領域内におけるガラスに高い応力が生じる。
【0012】
上述したように、脱気技術はガラスパネルアセンブリから空気の全てを除去するのに常に有効なわけではない。その結果、ガラスと中間層の間に存在する残留空気がある。オートクレーブ処理の間に、残留空気は熱及び圧力の下で、中間層中に溶解し、大部分はスキン層中に溶解する。スキン層内にある残留空気はコア層又はスキン−コア層間に移動することができ、それが最終的にスキン層とコア層との間を分割し、平衡状態に到達する。多量の残留空気(例えば、過剰の残留空気)が中間層中に存在するときには、気泡は、特に高温で、核形成することができる。というのは、中間層が柔らかくなりそして核形成に対する抵抗が低くなるからである。
【0013】
従来の音響中間層では、核形成がより低い粘性媒体で有利に働くので、気泡は、一般に、軟質コア層内に最初に形成する。夏期の間のように、暖かい〜暑い気候では、ガラスの温度は、建物及び乗り物に設置されたラミネート化ガラスで50℃〜100℃に上昇することができる。これらの高温で、ガラスパネル又は風防内の応力に起因する力は元の状態に復元しようとして互いにガラスパネルを引き離し、ガラスの面に垂直で反対方向にガラスに圧力を及ぼす。応力は、空気が核形成及び膨張を起こすことに対する抵抗力を低減し、気泡をコア層内で成長させる。
【0014】
図1は三層中間層内の気泡の開始及び拡大を示している。どこで気泡が最初に高温(例えば、50℃〜100℃)で形成するかに関係なく、曲げギャップ又はガラスのミスマッチから生じる応力は気泡にコア層内でランダムな放射状方向の最小抵抗経路で膨張を起こさせる。欠陥が放射状方向の拡張を継続すると、枝及び樹状様特徴部が形成し、アイスフラワーの望ましくない光学的外観を与える。設置された風防に形成された、このような欠陥の例を図2に示す。さらに、コア層内のアイスフラワーの形成は、典型的には、層間の分離をもたらし、パネルの構造的一体性を減じる。
【0015】
したがって、従来の多層中間層の他の光学的、機械的及び音響特性を低下させることなく、これらの光学的欠陥の形成に抵抗する多層中間層の開発の必要性が当該技術分野で存在する。より具体的には、ガラス内の応力を低減し、空気がガラスパネルの製造の間に除去されうる多層中間層の開発の必要性が当該技術分野に存在する。
【0016】
当該技術分野におけるこれら及び他の問題のために、層の分子量及び組成を変えることによって形成される異なるレオロジー特性を有する層を含む多層中間層を、とりわけ、本明細書中に記載する。1つの実施形態において、これらの多層中間層は、分子量が約140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第一のポリマー層、分子量が約140,000ダルトンを超える可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第二のポリマー層、及び、分子量が約140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第三のポリマー層を含む。第二のポリマー層は第一のポリマー層と第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及び中央のコア層をもたらす。
【0017】
本開示のより低い分子量を有するスキン層の使用により、従来の多層中間層の他の有利な/所望の特性を犠牲にすることなく、オートクレーブ処理温度で、中間層の流動性を増加させることができる。換言すれば、本開示のより低い分子量のスキン層の使用は、音響透過損失、光学特性、機械強度及び耐衝撃性によって測定されるような従来の多層中間層のすべての他の特性を維持しつつ、オートクレーブ処理中に、その流動性に影響を与える。同様に、可塑剤装填量、2種以上の可塑剤の混合物、残留ヒドロキシル含有量、又はそれら3つの特性の任意の組み合わせ又はバランスは高流動性スキン層を達成するのをさらに補助するように操作されうる。その結果、風防及びラミネート化ガラスアセンブリに固有の応力レベルは、高流動性スキン層で空隙領域内を部分的に充填することによって低減し、それにより、多層中間層に一般的な光学欠陥を低減することができる。
【0018】
さらに、多層中間層の表面は、一貫した表面粗さ、及び、脱気プロセス中に空気を逃がすためのチャネルを生成するようにエンボス加工されてもよい。このようにして、気泡の核形成及び膨張のために利用できる空気の量は大幅に低減され、それにより、欠陥がさらに低減される。
【0019】
有利なことに、開示された中間層は、従来の多層中間層の音響的及び光学的特性を維持しながら、捕捉空気及び多層パネルを曲げることにより生じる空隙及び応力(一般に「曲げギャップ」と呼ぶ)を効果的に低減し又は無くす。多層パネルに固有の捕捉空気及び曲げギャップが低減されるので、アイスフラワー(又はスノーフレーク)などの光学的欠陥の形成も、それによって低減され又は無くされる。
【0020】
本明細書中に開示された高流動性スキン層を含む中間層のより包括的な理解を容易にするために、本出願は、光学欠陥の形成を低減するために高流動性スキン層を中間層に導入することを議論する前に、いくつかの定義を有する用語、製造プロセス概観及び中間層(一般的及び本開示の中間層の両方)に見られる一般的構成要素の概要、及びそれらの形成から始める。
【0021】
用語「ポリマー中間層シート」、「中間層」及び「ポリマーメルトシート」は、本明細書中に使用されるときに、単層シート又は多層中間層を指すことができる。名称が意味するように「単層シート」は、1層として押出された単一のポリマー層である。他方、多層中間層は、別個に押出された層、同時押出された層、又は、別個に押出された層及び同時押出された層の任意の組み合わせを含む複数の層を含むことができる。したがって、多層中間層は、例えば、2層以上の単一層シートを組み合わせたもの(「複数層シート」)又は2層以上を同時押出されたもの(「同時押出シート」)、2層以上の同時押出シートが組み合わされたもの、少なくとも1つの単層シートと少なくとも1つの同時押出シートの組み合わせ、及び、少なくとも1つの複数層シートと少なくとも1つの同時押出シートの組み合わせを含むことができる。本発明のさまざまな実施形態において、多層中間層は、互いに直接接触して配置された少なくとも2つのポリマー層(例えば、単一層又は複数層を同時押出したもの)を含み、各層は、下記に詳述するように、ポリマー樹脂を含む。この点に関して、本明細書中に使用されるときに、「スキン層」は、一般に、中間層の外側層を指し、「コア層」は、一般に、内側層を指す。このように、1つの例示的な実施形態はスキン層//コア層//スキン層であろう。しかしながら、さらなる実施形態は、3層よりも多くの層(例えば、4、5、6又は10層までの個々の層)を有する中間層を含む。
【0022】
さらに、本明細書中に記載されるとおりのポリマー中間層シートは多層パネルにおいて使用されることが可能であるポリマー中間層シートを製造する技術の当業者に公知の任意の適切な方法によって製造することができるものと考えられる。例えば、ポリマー中間層シートは、溶液キャスティング、圧縮成形、射出成形、溶融押出、同時押出、メルトブロー成形、又は、当業者に公知のポリマー中間層シートの生産及び製造のための任意の他の手順により形成されうるものと考えられる。さらに、多層ポリマー中間層を利用する実施形態においては、これらの多層ポリマー中間層は、同時押出、ブロー成形フィルム、浸漬コーティング、溶液コーティング、ブレード、パドル、エアナイフ、プリンティング、粉体コーティング、スプレーコーティング、又は、当業者に公知の他のプロセスにより形成されうることが考えられる。
【0023】
最終の中間層は、押出又は同時押出のいずれにより形成されても、一般に、ポリマー溶融物が押出ダイを出るときにポリマー溶融物の溶融破壊により形成されるランダム粗面トポグラフィーを有し、また、当業者に知られている任意のエンボス加工方法によって片側又は両側(例えば、スキン層)上でランダム粗面上がさらにエンボス加工されうる。そのようなエンボス加工方法の1つの例は、米国特許第4,671,913号明細書(その全開示を参照により本明細書中に取り込む)に開示されている。エンボス加工は、脱気プロセスを改善し、気泡の発生を低減するのに有効であることが示されている、ポリマー中間層の表面に微細凹凸部を作成する。例えば、今回、25〜50ミクロンの表面粗さ(Rz)を有するエンボス加工された中間層は、100℃で5分間加熱した後に、非常によくニップロール及び真空脱気の両方で作用し、非エンボス加工中間層と比較したときに、アイスフラワー欠陥形成に対して優れた耐性を示すことが発見された。本発明の他の実施形態では、100℃で5分間加熱後の表面粗さ(Rz)の範囲は25〜66ミクロン、25〜60ミクロン、そして25〜65ミクロンである。
【0024】
任意の多層中間層は、層の組成、厚さ又は位置などを操作することによって変化させることができる。したがって、多層中間層シートのスキン層及びコア層は同一の熱可塑性材料又は異なる熱可塑性材料を含むことができることが考えられる。典型的なポリマーとしては、限定するわけではないが、ポリ(ビニルブチラール)(「PVB」)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、上記の組み合わせなどが挙げられる。PVB、ポリ塩化ビニル及びポリウレタンは中間層のために一般的に好ましいポリマーであり、PVBは特に好ましい。例えば、多層中間層は、スキン層としてPVB、及び、コア層としてポリ塩化ビニル又はポリウレタンからなることができる。他の例では、スキン層としてポリ塩化ビニル又はポリウレタン、及び、コア層としてPVBを含む。あるいは、同一又は異なる出発樹脂を用いて、スキン層及びコア層のすべてがPVBであってよい。
【0025】
さまざまな接着制御剤(「ACA」)を本開示の中間層に用いることができる。中間層配合物中のACAはガラスに対するシートの接着性を制御し、それにより、ガラスラミネートの衝撃時のエネルギー吸収性を提供する。本開示の中間層のさまざまな実施形態において、中間層は、100部の樹脂あたりに約0.003〜約0.15部のACAを含み、100部の樹脂あたりに約0.01〜約0.10部のACAを含み、100部の樹脂あたりに約0.01〜約0.04部のACAを含むことができる。このようなACAとしては、限定するわけではないが、米国特許第5,728,472号明細書(その開示全体を参照により本明細書中に取り込む)に開示されているACA、残留酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、マグネシウムビス(2−エチルブチレート)及び/又はマグネシウムビス(2−エチルヘキサノエート)が挙げられる。
【0026】
最終製品においてその性能を向上させ、そして中間層に特定の追加的な特性を付与するために、他の添加剤を中間層中に組み込むことができる。このような添加剤としては、限定するわけではないが、染料、顔料、安定剤(例えば、紫外線安定剤)、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、IR吸収剤又は遮断剤(例えば、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、六ホウ化ランタン(LaB)及びセシウムタングステン酸化物)、加工助剤、流動性向上剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、核生成剤、熱安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、補強添加剤及び充填剤が、当業者に公知の添加剤の中で挙げられる。
【0027】
本開示の中間層のさまざまな実施形態において、中間層は約30〜60phr(100部の樹脂あたりの部)の総可塑剤を含むであろう。総可塑剤の含有量は上記に示されているが、スキン層又はコア層中の可塑剤の含有量は総可塑剤の含有量と異なることができる。さらに、スキン層及びコア層は、米国特許第7,510,771号明細書(その全開示を参照により本明細書中に取り込む)に開示されているように、平衡状態におけるそれぞれの層の可塑剤含有量は、そのそれぞれの残留ヒドロキシル含有量によって決定されるように、異なる可塑剤含有量を有することができる。例えば、約54.3phrの中間層の総可塑剤量では、スキン層の合計厚さがコア層の厚さと等しいときに、中間層は、平衡状態で、各々38phrの可塑剤を含む2つのスキン層及び75phrの可塑剤を含むコア層を含む。より厚い又はより薄いスキン層では、中間層の総可塑剤量はそれに応じて変化するであろう。
【0028】
スキン層の流動性は適切に可塑剤のタイプを選択することによって、オートクレーブ処理温度で上昇させることができる。周囲温度でのPVBなどの熱可塑性ポリマーと相溶性が低い可塑剤は、従来の多層中間層の特性を達成するために高い装填量を必要とする。しかしながら、高い装填量の可塑剤は高温でより相溶性となり、高可塑剤装填がポリマー鎖の「自由体積」を増大させるので、オートクレーブ処理流動性が増加することになる。このような相溶性がより低い可塑剤としては、限定するわけではないが、ポリマー可塑剤などのより高い分子量の可塑剤(分子量が2,000ダルトン未満のポリアジペート)、大豆油及びエポキシ化大豆油が挙げられる。異なる相溶性の2種以上の可塑剤の混合物もスキン層のオートクレーブ処理流動性を増加させるために使用されてよい。スキン層は、一般に、従来の多層中間層の特性に影響を与えることなく、約30〜約55phrの可塑剤を含み、より好ましくは約35〜約50phrの可塑剤を含む。もちろん、特定の用途に適切であるときには、他の量を使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、従来の可塑剤は20個未満、15個未満、12個未満又は10個未満の炭素原子の炭化水素セグメントを有する。これらの中間層で使用するのに好適な従来の可塑剤としては、とりわけ、多塩基酸又は多価アルコールのエステルが挙げられる。好適な可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)(「3−GEH」)、テトラエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、ポリマーアジペート、大豆油及びエポキシ化大豆油、ならびにそれらの混合物が挙げられる。より好ましい可塑剤は3−GEHである。さらに、高温で相溶性のある可塑剤は中間層の流動性をさらに増加させるために好ましいことがある。
【0030】
本明細書中に使用されるときに、中間層中の可塑剤又は任意の他の成分の量は、質量/質量基準で、100部の樹脂あたりの部(phr)として測定することができる。例えば、もし30gの可塑剤を100gのポリマー樹脂に添加した場合には、得られる可塑化ポリマーの可塑剤含有量は30phrであろう。本明細書中に使用されるときに、中間層の可塑剤含有量が与えられた場合に、可塑剤含有量は、中間層を製造するために使用される溶融物中の可塑剤のphrを参照して決定される。
【0031】
可塑剤は、ポリマーの鎖の間に可塑剤自体を埋め込み、空間をもって離散させ(「自由体積」を増加させる)、このようにして、ポリマー樹脂のガラス転移温度(Tg)を有意に下げる(典型的には、0.5〜4℃/phr)ことにより作用し、柔らかい材料とする。この点で、中間層中の可塑剤の量はガラス転移温度(Tg)に影響を与えるように調整されうる。ガラス転移温度(Tg)は中間層のガラス状態からゴム状態への転移を認める温度である。一般に、より多量の可塑剤の装填量はより低いTgをもたらす。従来の以前から利用されている中間層は、一般に、音響用(騒音低減)のために0℃〜ハリケーン及び航空機中間層用途のために約45℃の範囲のTgを有するであろう。
【0032】
ガラス転移温度(Tg)は動的機械分析(DMA)により決定される。DMAは試料のパスカルでの貯蔵弾性率(弾性)(G’)、パスカルでの損失弾性率(粘性)(G”)、損失(減衰)係数(LF)(tanδ)を、所与の周波数及び温度掃引速度で、温度の関数として測定する。サンプルの温度を2℃/分の速度で−20℃から70℃まで増加させるときに、1Hzの振動周波数にてせん断モードでポリマーシートサンプルを試験する。Tgは、その後、℃の温度スケールでの損失係数ピークの位置によって決定される。
【0033】
中間層のガラス転移温度は、中間層の剛性とも相関があり、より高いガラス転移温度ほど、中間層の剛性が高い。一般に、30℃以上のガラス転移温度の中間層は風防強度及びねじれ剛性を増加させる。軟質中間層(一般に30℃未満のガラス転移温度を有する中間層を特徴とする)は、他方、音響減衰効果(すなわち、音響特性)に寄与する。本開示の多層中間層は、より軟質のコア層にラミネート化した、より硬い又は剛性のスキン層(例えば、剛性//軟質//剛性)を用いることにより、これら二つの有利な特性(すなわち、強さと音響)を組み合わせ、スキン層がオートクレーブ処理温度での流動性を増加する。さまざまな実施形態において、多層中間層は、一般に、約30℃〜約55℃のガラス転移温度のスキン層及び約0℃〜約10℃のガラス転移温度のコア層を含む。例えば、いくつかの好ましい多層構成は以下のとおりである。
(Tg>25℃)//(Tg<10℃)//(Tg>25℃)
(25℃<Tg<55℃)//(Tg<10℃)//(25℃<Tg<55℃)及び
(25℃<Tg<55℃)//(Tg>−15℃)//(25℃<Tg<55℃)
これらの構成は単なる例示であり、本開示によって考えられる多層構成のタイプに限定を加えることを意図するものでは決してない。しかし有利なことには、オートクレーブ処理温度における流動性が増加したスキン層では、多層中間層はアイスフラワー欠陥を減少させるであろう。
【0034】
PVB樹脂は、酸触媒の存在下でのブチルアルデヒドとポリビニルアルコール(「PVOH」)の反応、樹脂の分離、安定化及び乾燥により、公知の水性又は溶媒アセタール化法によって製造される。このようなアセタール化法は、例えば、米国特許第2,282,057号及び同第2,282,026号明細書ならびにB.E. WadeによるVinyl Acetal Polymers, Encyclopedia of Polymer Science & Technology, 3rd edition, Volume 8, p381-399,(2003)(その全開示を参照により本明細書中に取り込む)に開示されている。樹脂はさまざまな形態で、例えば、Solutia Inc.からButvar(登録商標)樹脂として市販されている。
【0035】
本明細書中に使用されるときに、残留ヒドロキシル含有量(PVOHとして計算)は、処理が完了した後にポリマー鎖上に残っているヒドロキシル基の量を指す。例えば、PVBはポリ(酢酸ビニル)をPVOHへと加水分解し、その後、ブチルアルデヒドとPVOHを反応させて、PVBを生成することにより製造できる。ポリ(酢酸ビニル)を加水分解するプロセスにおいて、典型的には、すべてのアセテート側基がヒドロキシル基に転化されるわけではない。さらに、ブチルアルデヒドとの反応は、典型的には、すべてのヒドロキシル基がアセタール基へと転化されるわけではない。結果的に、任意の最終ポリビニルブチラール)では、典型的には、残留アセテート基(酢酸ビニル基として)及び残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)がポリマー鎖上に側基として存在するであろう。本明細書中に使用されるときに、残留ヒドロキシル含有量は、ASTM1396により、質量%基準で測定される。
【0036】
さまざまな実施形態において、スキン層及びコア層のためのポリ(ビニルブチラール)樹脂の残留ヒドロキシル基含有量は異なる。コア層のための樹脂は、例えば、約9〜約18質量%(wt%)の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基、約9〜約16wt%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基、約9〜約14wt%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含むことができる。スキン層のための樹脂は、例えば、約13〜約35質量%(wt%)の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基、約13〜約30wt%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基、又は、約15〜約22wt%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含むことができ、そして最も好ましくは、特定の実施形態において、約17.25〜約22.25wt%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含むことができる。コア層又はスキン層あるいはスキン層とコア層との両方のための樹脂は、また、20質量%未満の、ポリビニルエステル、例えば、酢酸エステルとして計算した残留エステル基、15wt%未満、13wt%未満、11wt%未満、9wt%未満、7wt%未満、5wt%未満、又は、1wt%未満の残留エステル基を含むことができ、残部はアセタールであり、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、必要に応じて、少量の他のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナール基を含むことができる(例えば、米国特許第5,137,954号明細書を参照されたい。その全開示を参照により本明細書中に取り込む)。
【0037】
注目すべきことには、所与のタイプの可塑剤では、ポリマー中の可塑剤の相溶性は、主に、ポリマーのヒドロキシル含有量によって決定される。大きな残留ヒドロキシル含有量を有するポリマーは、典型的には、低減された可塑剤の相溶性又は容量と相関する。逆に、より低い残留ヒドロキシル含有量を有するポリマーは、典型的には、増加した可塑剤の相溶性又は容量をもたらすであろう。一般に、ポリマーの残留ヒドロキシル含有量と可塑剤の相溶性/容量との間のこの相関関係を操作し、ポリマー樹脂への可塑剤の適切な量の添加を可能にし、複数の中間層の間の可塑剤含有量の差を安定に維持するために利用することができる。
【0038】
従来の単層中間層及び多層中間層におけるスキン層中に見られる標準的なPVB樹脂は、典型的には、低角レーザ光散乱を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって測定して、約150,000ダルトンを超える分子量を有する。本明細書中に使用されるときに、用語「分子量」は重量平均分子量を意味する。しかしながら、驚くべきことに、今回、低分子量のスキン層(すなわち、約140,000ダルトン未満)は中間層の他の特性に悪影響を及ぼすことなく、PVB中間層中での流動性を増加させるために使用することができることが発見された。具体的には、より高温下で得られる中間層の流動性は、有効に増加され、特に、製造の間にPVBがガラスに結合する温度、例えば、後述するようにオートクレーブ処理での温度で増加される。結果として、中間層が風防組み立て(例えば、脱気)及びオートクレーブ処理の間に空隙領域を部分的に充填するので、風防及びラミネート化ガラス内の応力レベルは低減される。また、より低い分子量の結果として増加した流動性はガラス転移温度又は常温での層の剛性に影響を与えない。本開示の高流動性中間層は、約140,000ダルトン未満、約135,000ダルトン未満、約130,000ダルトン未満、約125,000ダルトン未満、約120,000ダルトン未満、約115,000ダルトン未満、約110,000ダルトン未満の分子量を有し、140,000ダルトン未満から110,000ダルトンを超える範囲の分子量を有するスキン層を有し、一般に約140,000ダルトンを超え、又は、150,000ダルトンを超え、又は、300,000ダルトンを超える分子量を有するコア層を含む。本発明の別の実施形態において、本開示の高流動性中間層は、分子量が約140,000ダルトン未満、約130,000ダルトン未満、約120,000ダルトン未満、約110,000ダルトン未満であるスキン層を有し(分子量が一般に140,000ダルトンを超えるコア層を含む)。これらの中間層は、アイスフラワー形成の速度又は過酷度の50%以上の低減を示した。しかしながら、驚くべきことに、音響透過損失、機械的及び光学的特性はスキン層の増加した流動性によって悪影響を受けない。
【0039】
上述及び全体で記載されるとおり、本開示の多層中間層は、しばしば、多層パネル中に組み込まれ、最も一般的には、ガラス又はアクリルなどの2つの基材、好ましくはガラスシート対の間に配置される。そのような構築物の例は以下のとおりである:(ガラス)//(多層中間層)//(ガラス)であり、ここで、スキン層は低分子量の高装填量の可塑剤を有し、2種以上の可塑剤の混合物を有し、及び/又は、エンボス加工表面粗さを有し、それはコア層の組成及び特性とは異なる。多層パネルのこれらの例は限定することを決して意図せず、上記の構造物以外に多くの構造物が本開示の中間層を用いて製造されうることを当業者は容易に認識するであろうとおりである。
【0040】
本開示の中間層を使用したガラスラミネートは公知の手順によって調製することができる。ある実施形態では、ポリマー中間層及びガラスを組み立て、約25℃〜約60℃のガラス温度に加熱し、その後、捕獲された空気を排出するために一対のニップロールを通して通過させ、アセンブリを形成する。圧縮されたアセンブリは、その後、例えば、赤外線によって又は対流炉内で、約70℃〜約120℃の温度に加熱される。加熱されたアセンブリをニップロールの第二の対を通過させ、次いで、約30分間、約130℃〜約150℃で、約1,000〜2,000キロパスカル(kPa)でアセンブリをオートクレーブ処理する。米国特許第5,536,347号明細書(その開示の全体を参照により本明細書中に取り込む)に開示されているような非オートクレーブ法も有用である。さらに、ニップロールに加えて、当該技術分野で知られており、そして商業上使用されている、中間層−ガラス界面の脱気に使用するための他の手段としては、真空バッグ及び真空リングプロセスが挙げられ、ここで、真空を用いて空気を除去する。
【0041】
本開示の中間層の理解を助けるためには、ポリマー中間層シートに関連する特性及び特徴ならびにポリマー中間層シートのこれらの特性及び特徴が測定される式を理解していることも有用である。「流動度」は、その用語が本明細書中に使用されるときに、特定の点負荷圧(すなわち、4.5psi)がサンプル表面上に厚さ方向に適用され、サンプルが10℃/分の加熱速度で40℃から135℃に加熱されるときの変形(0.76mmの標準中間層厚さに従って正規化されたサンプルの厚さの減少)として測定される。別の言い方をすれば、負荷圧力がサンプルに適用されるときに、PVBは側方に「広がる」か又は流れ、負荷が適用された点は薄くなり(又は一定量だけ変形し)、その点でPVBの厚さがより薄くなり、したがって、試験温度で、より高い変形(すなわち、より大きな数値)はより高い流動度に等しい。流動度は、一般に、熱機械分析装置により、DF135として測定される。1つの例として、上記の試験下で、0.242mmの流動度とは、0.76mmの厚さの中間層は負荷圧力が適用される点で厚さ方向に0.242mm変形することを意味する。多層中間層の標準的な従来のスキン層は約0.18mm未満の流動度を有する。本開示のスキン層は、一方、約0.18mmを超え、約0.19mmを超え、約0.20mmを超え、約0.22mmを超え、約0.23mmを超え、約0.24mmを超える流動度を有し、0.19〜約0.26、そして約0.19mm〜約0.37mmの流動度を有する。
【0042】
ポリマー応力緩和測定は、オートクレーブ処理温度などの高温での流動性を定量化するための別の手段を提供する。動的機械分析器を利用する、本開示のスキン層についての応力緩和測定値は、瞬間的にスキン層サンプルに150℃で20%せん断ひずみを適用し、歪みを一定に保持し、その間に、応力−例えば、応力緩和弾性率(G’(t))−を時間の関数として測定することにより決定される。100秒後に測定される応力緩和弾性率を、その後、使用し、相対オートクレーブ処理流動性(パスカルで)を決定する。応力緩和弾性率が低いほど、ポリマー流動性が高く、逆もまた同様である。多層中間層の標準的な従来のスキン層は応力緩和弾性率が約110パスカルより大きい。本開示のスキン層は、一方、応力緩和弾性率が約100パスカル未満、約70パスカル未満、約50パスカル未満、約25パスカル未満である。
【0043】
上述のとおり、アイスフラワーとして知られている光学的欠陥は、一般的に三層ラミネート中に見出される。三層音響PVBラミネートにおけるアイスフラワーの形成は、風防ガラス、及び、大きな曲げギャップと低い脱気性の組み合わせが場におけるアイスフラワー発生の根本的な原因の1つであることが知られている他の窓ガラスにおける実世界状況をシミュレートすることによって試験することができる。まず、中央に配置したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムリング(7.5cm内径、14cm外径、0.10mm〜0.18mmの厚さ)を含む30cm×30cm三層中間層は2つの30cm×30cmのガラス片の間に挟まれている。その後、構造物を、事前ラミネートし、オートクレーブ処理する。得られたラミネートを48時間、室温で状態調節し、従来の炉内(80℃)で、48時間焼き、その後、冷却する。ラミネートを、その後、目視で検査してラミネート中のアイスフラワー形成の割合(例えば、アイスフラワー欠陥を発生するラミネートの百分率)及びアイスフラワー欠陥のPETリング内の面積百分率を決定し、その例を図3に示す。さらに、ラミネートを視覚的に検査して、全ラミネート(PETフィルム領域の内側及び外側を含む)内のアイスフラワー形成の百分率を決定する。
【0044】
ラミネートの厚さプロファイルは、また、ガラスの応力を決定するために測定することができる。PETフィルムリングの存在はラミネートにギャップを形成し、それはオートクレーブ処理の熱及び圧力の下で、ガラスがガラスの縁からフィルムリングの周囲に内側に押圧されることをもたらす。さらに、ガラスはリング領域内の内側に曲げられ、図4に破線の曲線で示されるように、たるみ効果を形成する。リング領域内のたるみ効果はガラス中の高度に局在化された応力をもたらす。有利なことに、開示の中間層はスキン層をオートクレーブ処理温度下にリング領域内に流入させることができ、かつ、たるみを低減し、そして図4で実線の曲線で示すように、ガラス内の応力を最小にする。両方のラミネートは2.3mm透明ガラスを用いて作製した。
【実施例】
【0045】

本開示の例示的なスキン層(「開示の層」として指定し、下記の表1にDL1-9として示す)及び従来のスキン層(「従来の層」として指定し、下記の表1にCL1-3として示す)を、下記の表1に示すとおりの異なる組成(例えば、分子量及びPVOH含有分)を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂100部と、種々の量の可塑剤と、他の一般的な添加剤(上記のとおり)を混合しそして溶融押出することにより製造した。その後、スキン層を、上記の方法によりオートクレーブ流動特性について測定した。さらに、その後、表1に示すスキン層を用いて、表2及び表3に示しそして下記により詳細に記載されるとおりのさまざまな多層中間層を構成した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1が示すとおり、開示の中間層を従来の中間層と比較したDF135及び応力緩和の結果により示されるとおり、開示の層は従来の層と比較して、有意に改良された流動性を有する。さらに、表1は分子量の減少とともに流動性が増加することを示す。例えば、開示の層1〜3及び7、及び、従来の層3は同一のPVOH含有量、可塑剤装填量及びガラス転移温度を有するが、異なる分子量を有し、そして、開示の層の分子量が低下するときに、流動性は増加する。さらに、開示の層5〜7は、それぞれ、従来の層1〜3と同一のPVOH含有量、可塑剤含有量及びガラス転移温度を有するが、開示の層5〜7はずっと低い分子量を有する。理解されるとおり、PVOHレベル、可塑剤含有量及びTgを同一に維持しながら分子量を低下させることは、開示の層の流動性を有意に増加させる。
【0048】
表1は、また、可塑剤装填量はガラス転移温度だけでなく、流動性にも影響を及ぼすように調節することができ、室温でなおも非常に剛性である、非常に流動性の高い層とすることができることを示す。例えば、開示の層5〜7は同一のPVOH含有量及び分子量を有するが、可塑剤装填量が異なる。理解されるとおり、可塑剤装填量が増加すると、ガラス転移温度は低下し(しかし、層は「剛性」のままであり、すなわち、Tgが約30℃を超える)、流動性は増加する。
【0049】
最後に、表1は、また、層のPVOH含有量を低下させることにより流動性を増加させることができることを示す。例えば、開示の層8は従来の層3と同一の分子量及び可塑剤含有量を有するが、開示の層8はより低いPVOH含有量を有する。結果として、開示の層8は従来の層3と比較したときに、有意に流動性が増加する。
【0050】
現在開示されている例示的な中間層(「開示の層」として指定し、下記の表2及び表3でDI 1-16として示す)の欠陥の抵抗性の改善は先行技術の従来の多層中間層(「従来の層」として指定し、下記の表2及び表3でCI 1-4として示す)と比較することにより最も容易に理解されうる。上述のとおり、表1に示すスキン層を用いて、表2及び表3に示すとおりのさまざまな多層中間層を構築し、得られた多層中間層を用いてラミネートを構築した。多層中間層はスキン層/コア層/スキン層の一般構成を有し、2つのスキン層は一般に同一の組成及び厚さを有する。中間層の厚さは、一般に、0.81mmであり、コア層の厚さは0.13mmである。上記のように、表2のラミネートは、中央に0.13mmのPETフィルムリングを有する2.3mmの透明ガラスを用いて製造された。ラミネートを、また、脱気のためにニップロールした。ランダム粗面中間層の平均表面粗さ(Rz)は約29ミクロンであった。エンボス加工された表面の中間層の平均表面粗さ(Rz)は約38ミクロンであった。表3中のラミネートは、また、2.3mmの透明ガラスを用いて作製した。PETフィルムリングの厚さは、ここでも、ニップロールを脱気するために使用したサンプルでは0.13mmであったが、脱気のために真空バッグを用いたサンプルでは0.18mmであった。表面粗さ(Rz)は表3に示すとおりに変化した。加熱後表面(Rz)は上述のとおり、100℃で5分間加熱した後に残る表面を指す。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表2及び表3で理解されるとおり、高流動性スキン層の結果として、アイスフラワー形成の有意な低減が起こる。具体的には、アイスフラワー試験(実世界の曲げギャップをシミュレートする)の間のリングの中央において、標準流動性ラミネート(従来の中間層を含む)にオートクレーブ処理圧力によりガラスをプレスし、ラミネートの総厚プロファイルでリング内にたるみを形成する。開示の高流動性中間層を用いるときには、たるみは有意に低減され、0.18mmPETフィルムリング及び真空バッグ脱気を用いてアイスフラワー欠陥形成が32%〜86%低減となり、0.13mmPETフィルムリング及びニップロール脱気を用いて80%〜100%低減となった。別の言い方をすると、流動性が高いほど、たるみが少なくなり、このため、アイスフラワー形成が低減し又はなくなる。高流動性と減少したたるみ(すなわち、アイスフラワーの低減)とのこの関係は上述のとおり、図4にさらに示されている。
【0054】
結論として、本明細書中に記載した高流動性スキン層を含む多層中間層は当該技術分野で以前から使用されている従来の多層中間層に対して多くの利点を有する。一般に、当該技術分野で以前から使用されている多層中間層と比較して、本明細書中に記載の高流動性スキン層を含む多層中間層は当業者が流動性の増加とともに期待するであろう他の特性の犠牲なしに、多層パネルに一般的な欠陥の形成を低減する流動性の増加を有する。他の利点は当業者に容易に明らかであろう。
【0055】
本発明を、現在好ましい実施形態であると考えられているものを含む特定の実施形態の記載と組み合わせて開示してきたが、詳細な説明は例示的であることを意図し、本開示の範囲を限定するものと理解されるべきでない。当業者に理解されるとおり、本明細書中に詳細に記載された実施形態以外の実施形態は本発明に包含される。記載の実施形態の変更及び変形は本発明の精神及び範囲を逸脱することなく行うことができる。
【0056】
本開示の任意の単一成分に与えられる任意の範囲、値又は特徴は、適用可能な場合には、本開示の任意の他の成分に与えられる任意の範囲、値又は特徴と相互互換的に使用され、本明細書中に全体に与えられるとおりの成分の各々の規定値を有する実施形態を形成しうることはさらに理解されるであろう。例えば、適切な場合には、樹脂の分子量に対して与えられる任意の範囲に加えて与えられる任意の範囲の可塑剤を含むポリマー層を形成して、本発明の範囲内にあるが、列挙してはいない多くの置換物を形成することができる。(態様)
(態様1)
分子量が140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第一のポリマー層、
分子量が140,000ダルトンを超える可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第二のポリマー層、
分子量が140,000ダルトン未満である可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第三のポリマー層、
を含み、前記第二のポリマー層は前記第一のポリマー層と前記第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及びコア層を有するポリマー中間層となっている、ポリマー中間層。
(態様2)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は分子量が130,000ダルトン未満である、態様1記載のポリマー中間層。
(態様3)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は分子量が120,000未満である、態様1記載のポリマー中間層。
(態様4)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は分子量が110,000ダルトン未満である、態様1記載のポリマー中間層。
(態様5)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はDF135により測定して、フローが約0.19mm〜約0.37mmの範囲にある、態様1記載のポリマー中間層。
(態様6)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は加熱後エンボス加工表面粗さ(embossed post heat surface roughness)Rzが約25〜約55ミクロンの範囲にある、態様1記載のポリマー中間層。
(態様7)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は応力緩和弾性率G'(t)が約100パスカル未満である、態様5記載のポリマー中間層。
(態様8)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はDF135により測定して、流動度が約0.19mm〜約0.26mmの範囲にある、態様1記載のポリマー中間層。
(態様9)
前記第一のポリマー層及び前記第三のポリマー層の各々は約30〜約60phrの総可塑剤を含む、態様7記載のポリマー中間層。
(態様10)
ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン及びポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む第一のポリマー層、
ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン及びポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む第二ポリマー層、ここで、前記第二のポリマー層は前記第一のポリマー層と接触している、及び、
ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン及びポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む第三のポリマー層、ここで、前記第三のポリマー層は前記第二のポリマー層と接触しており、前記第二ポリマー層は前記第一のポリマー層と前記第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及びコア層を有するポリマー中間層となっており、
ここで、前記スキン層の各々はDF135により測定して流動度が約0.19mm〜約0.37mmである、ポリマー中間層。
(態様11)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第二のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はポリ(ビニルブチラール)を含む、態様10記載のポリマー中間層。
(態様12)
前記スキン層の各々はDF135により測定して、流動度が0.19〜0.26mmである、態様11記載のポリマー中間層。
(態様13)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は加熱後エンボス加工表面粗さ(embossed post heat surface roughness)Rzが約25〜約55ミクロンの範囲にある、態様10記載のポリマー中間層。
(態様14)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は応力緩和弾性率G'(t)が約100パスカル未満である、態様12記載のポリマー中間層。
(態様15)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は加熱後エンボス加工表面粗さ(embossed post heat surface roughness)Rzが約25〜約55ミクロンの範囲にある、態様14記載のポリマー中間層。
(態様16)
前記第二のポリマー層は、約9〜約18質量%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含む、態様15記載のポリマー中間層。
(態様17)
可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第一のポリマー層、
前記第一のポリマー層と接触している、可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第二のポリマー層、及び、
前記第二のポリマー層と接触している、可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む第三のポリマー層、
を含み、前記第二のポリマー層は前記第一のポリマー層と前記第三のポリマー層との間に配置されており、2層のスキン層及びコア層を有するポリマー中間層となっており、
少なくとも1つのスキン層は応力緩和弾性率G'(t)が約100パスカル未満である、ポリマー中間層。
(態様18)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層はDF135により測定して、流動度が約0.19mm〜約0.26mmの範囲にある、態様17記載のポリマー中間層。
(態様19)
前記第一のポリマー層及び/又は前記第三のポリマー層は約30〜約55phrの可塑剤を含む、態様17記載のポリマー中間層。
(態様20)
前記第二のポリマー層は、約9〜約18質量%の、PVOHとして計算した残留ヒドロキシル基を含む、態様17記載のポリマー中間層。
図1
図2
図3
図4