特許第6377534号(P6377534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377534
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】センサ制御装置およびセンサ制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20180813BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20180813BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   F02D45/00 368H
   F02D45/00 312G
   G01N27/409
   G01N27/41 325Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-4291(P2015-4291)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130461(P2016-130461A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小松 大祐
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−207924(JP,A)
【文献】 特開2010−032275(JP,A)
【文献】 特開2011−069835(JP,A)
【文献】 特開2008−256707(JP,A)
【文献】 特開2010−237000(JP,A)
【文献】 特開2005−308719(JP,A)
【文献】 特開2010−117131(JP,A)
【文献】 特開平04−359142(JP,A)
【文献】 特開2003−148206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 〜 45/00
G01N 27/409 〜 27/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスに含まれる特定ガスを検出する検出素子および該検出素子を加熱するヒータを備えたガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、
前記内燃機関の停止後、予め定められた通電期間にわたり、前記ヒータへの通電制御を行う停止後通電部を備えており、
前記ガスセンサは、前記排気ガスが通過する通過孔を有するとともに前記検出素子を覆うプロテクタを備えており、
前記停止後通電部は、前記プロテクタの温度が露点温度以上となり、前記検出素子の温度が300℃以下となるように、前記ヒータへの通電制御を行う、
センサ制御装置。
【請求項2】
前記プロテクタは、内部プロテクタと外部プロテクタとを備えており、
前記停止後通電部は、前記内部プロテクタおよび前記外部プロテクタの両方の温度が露点温度以上となり、前記検出素子の温度が300℃以下となるように、前記ヒータへの通電制御を行う、
請求項1に記載のセンサ制御装置。
【請求項3】
内燃機関の排気ガスに含まれる特定ガスを検出する検出素子および該検出素子を加熱するヒータを備えたガスセンサを制御するセンサ制御方法であって、
前記内燃機関の停止後、予め定められた通電期間にわたり、前記ヒータへの通電制御を行う停止後通電ステップを有しており、
前記ガスセンサは、前記排気ガスが通過する通過孔を有するとともに前記検出素子を覆うプロテクタを備えており、
前記停止後通電ステップでは、前記プロテクタの温度が露点温度以上となり、前記検出素子の温度が300℃以下となるように、前記ヒータへの通電制御を行う、
センサ制御方法。
【請求項4】
前記プロテクタは、内部プロテクタと外部プロテクタとを備えており、
前記停止後通電ステップでは、前記内部プロテクタおよび前記外部プロテクタの両方の温度が露点温度以上となり、前記検出素子の温度が300℃以下となるように、前記ヒータへの通電制御を行う、
請求項3に記載のセンサ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスに含まれる特定ガスを検出する検出素子および該検出素子を加熱するヒータを備えたガスセンサを制御するセンサ制御装置およびセンサ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスに含まれる特定ガスを検出するためのガスセンサを制御するセンサ制御装置が知られている。
ガスセンサは、例えば、特定ガスを検出する検出素子と、検出素子を加熱するヒータと、を備えている。ガスセンサは、内燃機関の排気管への設置時には、検出素子が排気管の内部に配置される状態で、排気管に設置される。
【0003】
なお、内燃機関の始動直後には、排気管の内部にたまった水滴(凝縮水など)が排気ガスと共に移動して、ガスセンサに付着する場合がある。このとき、高温の検出素子に水滴が付着すると、検出素子と水滴との温度差による熱衝撃によって検出素子が破損する虞がある。
【0004】
これに対して、内燃機関の始動後、特定ガスの検出前までの所定期間にわたり、検出素子の温度が、被水の熱衝撃による検出素子の破損が生じない温度範囲となるように、ヒータの通電制御(以下、ガス検出前通電制御ともいう)を行うセンサ制御装置が提案されている(特許文献1〜4)。このようなセンサ制御装置を用いることで、内燃機関の始動直後に、被水の熱衝撃によってガスセンサの検出素子が破損することを抑制できる。
【0005】
また、ガスセンサとして、排気ガスが通過する通過孔を有するとともに検出素子を覆うプロテクタを設けて、水滴が検出素子に到達するのをプロテクタによって抑制する構成のガスセンサも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−308719号公報
【特許文献2】特開2010−117131号公報
【特許文献3】特開2010−032275号公報
【特許文献4】特開2010−237000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のようなプロテクタを備えるガスセンサにおいては、内燃機関の停止後に、プロテクタ内部にも水滴(凝縮水など)が発生した場合には、次回の内燃機関の始動時において、内燃機関の始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなる虞がある。
【0008】
つまり、プロテクタは、外部から内部(検出素子)への水滴の移動を制限する構造であるため、自身の内部に発生した水滴を外部に排出することが容易ではない構造ともなっている。このため、上記のガス検出前通電制御を実行する場合、プロテクタ内部の水滴を除去するために要する時間が長くなり、内燃機関の始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなる虞がある。
【0009】
そこで、プロテクタを有するガスセンサを制御するにあたり、内燃機関の始動から特定
ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水による検出素子の破損を抑制するセンサ制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの局面におけるセンサ制御装置は、内燃機関の排気ガスに含まれる特定ガスを検出する検出素子および該検出素子を加熱するヒータを備えたガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、停止後通電部を備える。
【0011】
ガスセンサは、排気ガスが通過する通過孔を有するとともに検出素子を覆うプロテクタを備える。
停止後通電部は、内燃機関の停止後、予め定められた通電期間にわたり、ヒータへの通電制御を行う。また、停止後通電部は、プロテクタの温度が露点温度以上となり、検出素子の温度が300℃以下となるように、ヒータへの通電制御を行う。
【0012】
このようなセンサ制御装置は、内燃機関の停止後、直ぐにヒータへの通電制御を停止するのではなく、停止後通電部が、内燃機関の停止後、通電期間にわたり、ヒータへの通電制御を行う。
【0013】
とりわけ、停止後通電部は、ガスセンサのプロテクタの温度が露点温度以上となるように、ヒータへの通電制御を行うため、内燃機関の停止後に、プロテクタ内部温度が急激に低下して水滴(凝縮水など)が発生することを抑制できるとともに、プロテクタ内部の湿度を低下できる。
【0014】
これにより、内燃機関の停止後、次回の内燃機関の始動時までに、プロテクタ内部に水滴が溜まることを抑制できるため、次回の内燃機関の始動時において、始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水の熱衝撃による検出素子の破損を抑制できる。
【0015】
また、停止後通電部は、検出素子の温度が300℃以下となるように、ヒータへの通電制御を行うため、内燃機関の停止直後に、何らかの要因で水滴が検出素子に付着したとしても、検出素子と水滴との温度差による熱衝撃を抑制できるため、検出素子の破損を抑制できる。
【0016】
よって、このセンサ制御装置によれば、プロテクタを有するガスセンサを制御するにあたり、内燃機関の始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水による検出素子の破損を抑制することができる。
【0017】
次に、本発明の他の局面におけるセンサ制御方法は、内燃機関の排気ガスに含まれる特定ガスを検出する検出素子および該検出素子を加熱するヒータを備えたガスセンサを制御するセンサ制御方法であって、停止後通電ステップを有している。
【0018】
ガスセンサは、排気ガスが通過する通過孔を有するとともに検出素子を覆うプロテクタを備えている。
停止後通電ステップでは、内燃機関の停止後、予め定められた通電期間にわたり、ヒータへの通電制御を行う。また、停止後通電ステップでは、プロテクタの温度が露点温度以上となり、検出素子の温度が300℃以下となるように、ヒータへの通電制御を行う。
【0019】
このようなセンサ制御方法では、内燃機関の停止後、直ぐにヒータへの通電制御を停止するのではなく、停止後通電ステップにて、内燃機関の停止後、通電期間にわたり、ヒータへの通電制御を行う。
【0020】
とりわけ、停止後通電ステップでは、ガスセンサのプロテクタの温度が露点温度以上となるように、ヒータへの通電制御を行うため、内燃機関の停止後に、プロテクタ内部温度が急激に低下して水滴(凝縮水など)が発生することを抑制できるとともに、プロテクタ内部の湿度を低下できる。
【0021】
これにより、内燃機関の停止後、次回の内燃機関の始動時までに、プロテクタ内部に水滴が溜まることを抑制できるため、次回の内燃機関の始動時において、始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水の熱衝撃による検出素子の破損を抑制できる。
【0022】
また、停止後通電ステップでは、検出素子の温度が300℃以下となるように、ヒータへの通電制御を行うため、内燃機関の停止直後に、何らかの要因で水滴が検出素子に付着したとしても、検出素子と水滴との温度差による熱衝撃を抑制できるため、検出素子の破損を抑制できる。
【0023】
よって、このセンサ制御方法によれば、プロテクタを有するガスセンサを制御するにあたり、内燃機関の始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水による検出素子の破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセンサ制御装置およびセンサ制御方法によれば、プロテクタを有するガスセンサを制御するにあたり、内燃機関の始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水による検出素子の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】センサ制御装置を備える内燃機関の概略構成図である。
図2】ガスセンサの全体構成を表した断面図である。
図3】センサ制御処理の処理内容を表したフローチャートである。
図4】内燃機関のON/OFF状態およびヒータ温度のそれぞれの変化状態を示したタイムチャートである。
図5】第2ガスセンサの全体構成を表した断面図である。
図6】第2検出素子の概略構造を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0027】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
第1実施形態として、自動車などの内燃機関に備えられる制御装置であって、ガスセンサを制御するセンサ制御装置10について説明する。図1は、センサ制御装置10を備える内燃機関1の概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の内燃機関1は、エンジン本体部11の吸気管62のうち最上流部に設けられて異物の吸入を避けるためのエアクリーナ63と、このエアクリーナ63の下流側に設けられて吸入空気量を検出するエアフローメータ64と、を備える。
【0029】
内燃機関1は、エアフローメータ64の下流側に設けられてモータ65によって開度調
節されるスロットルバルブ66と、このスロットルバルブ66の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ67と、を備える。
【0030】
内燃機関1は、スロットルバルブ66の下流側に設けられるサージタンク68と、このサージタンク68の下流側に設けられてエンジン本体部11に空気を導入する吸気マニホールド70と、を備える。
【0031】
吸気マニホールド70の吸気ポート近傍には、燃料を噴射する燃料噴射弁71が取り付けられている。また、エンジン本体部11のエンジンヘッドには、点火プラグ72が取り付けられ、各点火プラグ72の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0032】
内燃機関1は、冷却水系統(図示省略)に備えられて冷却水の温度を検知する水温センサ77と、エンジン回転数を検知する回転数センサ78と、を備える。
エンジン本体部11の排気ポート69に接続された排気管73には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒74が設けられている。
【0033】
排気管73のうち触媒74よりも上流側には、排出ガス中の酸素濃度を検出するガスセンサ14が設けられる。ガスセンサ14は、空燃比センサや酸素センサ等として内燃機関1に備えられている。
【0034】
図2に、ガスセンサ14の全体構成を表した断面図を示す。
ガスセンサ14は、ジルコニア(ZrO)を主成分とする固体電解質体により先端が閉じた有底筒状に形成された検出素子17と、検出素子17の有底孔に配置された軸状のセラミックヒータ16(以下、ヒータ16ともいう)と、ガスセンサ14の内部構造物を収容すると共にガスセンサ14を排気管等の取付部に固定するケーシング18と、を備えて構成されている。
【0035】
ケーシング18の下端側(図における下方)外周には、検出素子17の突出部分(検出部19)を覆うと共に、排気ガスを導入するための複数の孔部を有する金属製の二重のプロテクタ20,21が溶接によって取り付けられている。
【0036】
このガスセンサ14は、検出素子17の検出部19の外側が排気ガスに晒される一方、検出素子17の検出部19の内側が基準となる酸素濃度を有する基準ガス(大気)に晒される。これにより、ガスセンサ14では、排気ガスの酸素濃度に応じた起電力が生じ、この起電力は理論空燃比近傍で急変するため、ガスセンサ14は、結果として理論空燃比近傍でセンサ出力(起電力)が急変する酸素センサとして機能する。
【0037】
図1に戻り、内燃機関1は、ガスセンサ14を制御するセンサ制御装置10と、各部の状態を示す信号に基づいて内燃機関の運転状態を制御する制御部12(ECU12)と、を備える。センサ制御装置10および制御部12は、それぞれ、いわゆるマイクロコンピュータで構成されており、詳細は図示しないが、公知の構成を有し、演算を行うマイクロプロセッサ、プログラムやデータを一時記憶するRAM、プログラムやデータを保持するROM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを含んで構成されている。センサ制御装置10および制御部12は、互いに各種情報(各種信号)を送受信できるように、信号経路13を介して接続されている。
【0038】
[1−2.センサ制御処理]
次に、センサ制御装置10で実行される制御処理の1つであって、ガスセンサ14を制御するためのセンサ制御処理について説明する。
【0039】
なお、センサ制御装置10は、センサ制御処理により得られた特定ガスの検出結果を、制御部12に対して送信する。そして、制御部12は、各部の状態を示す信号に基づいて内燃機関の運転状態を制御するための制御処理として、空燃比制御処理や触媒劣化判定処理などの各種処理を実行する。
【0040】
ここで、センサ制御装置10で実行されるセンサ制御処理について説明する。図3は、センサ制御処理の処理内容を表したフローチャートである。図4は、内燃機関1のON/OFF状態およびヒータ16の温度のそれぞれの変化状態を示したタイムチャートである。
【0041】
なお、センサ制御処理は、内燃機関1(詳細には、センサ制御装置10)が起動されるとともに処理が開始され、内燃機関1の停止後、予め定められた通電期間が経過すると、処理が終了する。
【0042】
センサ制御処理が起動されると、まず、S110(Sはステップを表す。以下同様。)では、RAM動作の初期化などを含む初期設定処理を行う。
なお、S110での初期設定処理では、センサ制御処理の中で用いる各種パラメータの値や各種フラグの状態を初期値に設定する処理を行う。
【0043】
次のS120では、始動後ヒータ制御を実行する。
始動後ヒータ制御は、ガスセンサ14のヒータ16の制御モード(ヒータ制御モード)の1つであり、内燃機関1の始動直後に実行するヒータ制御モードである。
【0044】
始動後ヒータ制御では、まず、水温センサ77で検出した冷却水温度Twと所定のプレヒート判定温度Twp(例えば、0℃)とを比較する。なお、内燃機関1の各部の情報(水温センサ77で検出した冷却水温度Twなど)は、信号経路13を介して制御部12から受信する。
【0045】
そして、この比較の結果、冷却水温度Twがプレヒート判定温度Twpよりも低い場合には、ヒータ16の温度が検出前ヒータ保護温度H1となるようにヒータ16への通電制御を開始し(図4の時刻t1)、その後、予め定められたプレヒート期間W1(例えば、60[sec])が経過すると、S120を終了する。
【0046】
また、始動後ヒータ制御の開始時に、冷却水温度Twがプレヒート判定温度Twp以上である場合には、排気管73の温度が高く、排気管73の内部に水滴(凝縮水など)が発生していないと判断できるため、何も処理を行わず、S120を終了する。
【0047】
なお、検出前ヒータ保護温度H1は、ヒータ16の温度のうち、検出素子17の温度が被水の熱衝撃で破損が生じない温度(検出前素子保護温度TS2。例えば、300℃。)となるときのヒータ16の温度である。検出前素子保護温度TS2は、検出素子17の温度のうち、ガス検出時の制御目標温度(検出時素子温度TS1)よりも低い温度である。
【0048】
このため、始動後ヒータ制御の実行時には、被水の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制できる。なお、ヒータ16の温度は、例えば、ヒータ16への通電電流をPWM制御して、通電電流のデューティ比を調整することにより、任意の温度に制御することができる。
【0049】
つまり、始動後ヒータ制御では、水滴(凝縮水など)の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制するために、検出素子17の温度が検出時素子温度TS1よりも低い検出前素子保護温度TS2となるように、ヒータ16の温度を制御する。
【0050】
S120が終了してS130に移行すると、S130では、ガス検出用ヒータ制御を開始する。
ガス検出用ヒータ制御は、ガスセンサ14のヒータ16の制御モード(ヒータ制御モード)の1つであり、ガスセンサ14による特定ガス(酸素)の検出時において、検出素子17を活性化状態(特定ガスを検出できる状態)にするために実行するヒータ制御モードである。
【0051】
ガス検出用ヒータ制御では、ヒータ16の温度が検出時ヒータ温度H2となるようにヒータ16への通電制御を実行する(図4の時刻t2)。なお、検出時ヒータ温度H2は、ヒータ16の温度のうち、検出素子17の温度が検出時素子温度TS1となるときの温度である。
【0052】
ガス検出用ヒータ制御が開始されてS140に移行すると、S140では、ガス検出制御を開始する。
ガス検出制御は、特定ガス濃度に応じて変化する検出素子17のセンサ出力(起電力)に基づいて、特定ガスを検出する制御処理である。具体的には、ガス検出制御では、検出素子17のセンサ出力(起電力)に基づいて、排気ガスに含まれる特定ガス(酸素)が理論空燃比時の高濃度であるか低濃度であるかを判定して、特定ガス(酸素)を検出する。
【0053】
なお、ガス検出制御での検出結果(酸素濃度の判定結果)は、信号経路13を介して制御部12に対して送信され、制御部12で実行される内燃機関の空燃比制御などに用いられる。
【0054】
ガス検出制御が開始されてS150に移行すると、S150では、内燃機関1が停止したか否かを判定しており、肯定判定するとS160に移行し、否定判定すると同ステップを繰り返し実行して待機する。
【0055】
S150で肯定判定されてS160に移行すると、ガス検出制御を停止する。
次のS170では、停止後ヒータ制御を開始する。
停止後ヒータ制御は、ガスセンサ14のヒータ16の制御モード(ヒータ制御モード)の1つであり、内燃機関1の停止直後に実行するヒータ制御モードである。
【0056】
停止後ヒータ制御では、ヒータ16の温度が検出後ヒータ保護温度H3となるようにヒータ16への通電制御を開始する(図4の時刻t3)。
なお、検出後ヒータ保護温度H3は、ヒータ16の温度のうち、検出素子17の温度が被水の熱衝撃による破損が生じない温度となるときのヒータ16の温度であるとともに、プロテクタ20,21が露点温度以上となるときのヒータ16の温度(検出後素子保護温度TS3。例えば、300℃。)である。なお、本実施形態では、検出後ヒータ保護温度H3は、検出前ヒータ保護温度H1と同一温度である。
【0057】
このため、始動後ヒータ制御の実行時には、被水の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制できるとともに、プロテクタ20,21の内部で水滴(凝縮水など)が発生するのを抑制できる。
【0058】
つまり、停止後ヒータ制御では、水滴(凝縮水など)の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制し、かつ、プロテクタ20,21の内部での水滴(凝縮水など)の発生を抑制するために、検出素子17の温度が検出時素子温度TS1よりも低い検出後素子保護温度TS3となるように、ヒータ16の温度を制御する。
【0059】
停止後ヒータ制御が開始されてS180に移行すると、S180では、停止後ヒータ制御の経過時間を計測するためのタイマTのカウントを開始する。
次のS190では、タイマTと予め定められた判定値Tthとを比較しており、タイマTが判定値Tth以上の場合には肯定判定してS200に移行し、タイマTが判定値Tthよりも小さい場合には否定判定して同ステップを繰り返し実行して待機する。
【0060】
なお、本実施形態では、判定値Tthには、10[min]に相当する値が設定されている。
S190で肯定判定されてS200に移行すると、停止後ヒータ制御を停止して、ヒータ16への通電を停止することで、ヒータ16による加熱を終了する(図4の時刻t4)。
【0061】
これにより、停止後ヒータ制御は、判定値Tthに応じたアフターヒート期間W2にわたり、水滴(凝縮水など)の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制し、かつ、プロテクタ20,21の内部での水滴(凝縮水など)の発生を抑制するために、ヒータ16の温度を制御する。
【0062】
S200が完了すると、センサ制御処理が終了する。
つまり、センサ制御処理では、内燃機関1の始動直後のプレヒート期間W1において、水滴(凝縮水など)の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制するために、検出素子17の温度が検出時素子温度TS1よりも低い検出前素子保護温度TS2となるように、ヒータ16の温度を制御する。
【0063】
また、センサ制御処理では、内燃機関1の停止直後のアフターヒート期間W2において、水滴(凝縮水など)の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制し、かつ、プロテクタ20,21の内部での水滴(凝縮水など)の発生を抑制するために、検出素子17の温度が検出後素子保護温度TS3となるように、ヒータ16の温度を制御する。
【0064】
さらに、センサ制御処理では、プレヒート期間W1の経過後に、ガス検出制御を実行することで、検出素子17のセンサ出力(起電力)に基づいて、特定ガス(酸素)を検出する。
【0065】
[1−3.効果]
以上説明したように、本実施形態のセンサ制御装置10は、内燃機関1の排気ガスに含まれる特定ガス(酸素)を検出する検出素子17および検出素子17を加熱するヒータ16を備えたガスセンサ14を制御する。
【0066】
そして、センサ制御装置10は、センサ制御処理におけるS170〜S200において、停止後ヒータ制御を実行する。
ガスセンサ14は、排気ガスが通過する通過孔を有するとともに検出素子17を覆うプロテクタ20,21を備える。
【0067】
停止後ヒータ制御では、内燃機関1の停止後(図4の時刻t3)、アフターヒート期間W2にわたり、ヒータ16への通電制御を行う。また、停止後ヒータ制御では、プロテクタ20,21の温度が露点温度以上となり、検出素子17の温度が300℃以下となるように、ヒータ16への通電制御を行う。
【0068】
このようなセンサ制御装置10は、内燃機関1の停止後、直ぐにヒータ16への通電制御を停止するのではなく、停止後ヒータ制御を実行することで、内燃機関1の停止後、アフターヒート期間W2にわたり、ヒータ16への通電制御を行う。
【0069】
とりわけ、停止後ヒータ制御では、ガスセンサ14のプロテクタ20,21の温度が露点温度以上となるように、ヒータ16への通電制御を行うため、内燃機関1の停止後に、プロテクタ20,21の内部温度が急激に低下して水滴(凝縮水など)が発生することを抑制できるとともに、プロテクタ20,21の内部の湿度を低下できる。
【0070】
これにより、内燃機関1の停止後、次回の内燃機関1の始動時までに、プロテクタ20,21の内部に水滴が溜まることを抑制できるため、次回の内燃機関1の始動時において、始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水の熱衝撃による検出素子17の破損を抑制できる。
【0071】
また、停止後ヒータ制御では、検出素子17の温度が300℃以下となるように、ヒータ16への通電制御を行うため、内燃機関1の停止直後に、何らかの要因で水滴が検出素子17に付着したとしても、検出素子17と水滴との温度差による熱衝撃を抑制できるため、検出素子17の破損を抑制できる。
【0072】
よって、センサ制御装置10によれば、プロテクタ20,21を有するガスセンサ14を制御するにあたり、内燃機関1の始動から特定ガス検出までの所要時間が長くなるのを抑制しつつ、被水による検出素子17の破損を抑制することができる。
【0073】
[1−4.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
センサ制御装置10がセンサ制御装置の一例に相当し、ガスセンサ14がガスセンサの一例に相当し、検出素子17が検出素子の一例に相当し、ヒータ16がヒータの一例に相当し、プロテクタ20,21がプロテクタの一例に相当する。
【0074】
停止後ヒータ制御(S170〜S200)を実行するセンサ制御装置10が停止後通電部の一例に相当し、停止後ヒータ制御(S170〜S200)が停止後通電ステップの一例に相当する。
【0075】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0076】
例えば、上記実施形態では、ガスセンサ14が、排気管73のうち触媒74よりも上流側に設けられているが、ガスセンサは、排気管73のうち触媒74よりも下流側に設けられていてもよいし、触媒74よりも上流側および下流側の両方に設けられていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、始動後ヒータ制御(S120)でのヒータの制御目標温度である検出前ヒータ保護温度H1と、停止後ヒータ制御(S170〜S200)でのヒータの制御目標温度である検出後ヒータ保護温度H3と、が同じ温度に設定されているが、始動後ヒータ制御と停止後ヒータ制御とでヒータの制御目標温度を異なる値に設定してもよい。
【0078】
さらに、プレヒート期間W1やアフターヒート期間W2の長さは、上記数値に限られることはなく、内燃機関の用途や使用環境などの各種条件に応じて、適切な値を設定してもよい。
【0079】
また、上記実施形態は、ガスセンサとして、有底筒状に形成された検出素子17を備え
るガスセンサ14を備える構成であるが、板状形状に形成された検出素子を備えるガスセンサを備える構成であってもよい。
【0080】
そこで、板状形状に形成された検出素子を備える第2ガスセンサ22について説明する。図5に、第2ガスセンサ22の全体構成を表した断面図を示す。
第2ガスセンサ22は、排気管に固定するためのネジ部103が外表面に形成された筒状の主体金具102と、軸線方向(図中上下方向)に延びる板状形状をなす板型検出素子23と、を備えている。
【0081】
主体金具102の先端側(図における下方)外周には、板型検出素子23の突出部分(検出部26)を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)の二重の外部プロテクタ27および内部プロテクタ28が、溶接等によって取り付けられている。
【0082】
ここで、板型検出素子23の概略構造を表す斜視図を、図6に示す。なお、図6では、軸線方向における中間部分を省略して板型検出素子23を表している。
板型検出素子23は、軸線方向(図6における左右方向)に延びる板状形状に形成された素子部24と、同じく軸線方向に延びる板状形状に形成されたヒータ部25とが積層されて、長方形状の軸断面を有する板状形状に形成されている。また、板型検出素子23は、測定対象となるガスに向けられる先端側(図中左側)に保護層(図示省略)に覆われた検出部26が形成され、後端側(図中上方)の外表面のうち表裏の位置関係となる第1板面38および第2板面39に電極端子部30,31,32,34,36が形成されている。なお、酸素濃度を検出するためのガス検出素子として用いられる板型検出素子23は、酸素ポンプセル及び酸素濃度検出セルを中空の測定室を有する絶縁層を介して積層した素子部24に対して、絶縁層間に発熱抵抗体を挟持したヒータ部25を積層した公知の構成を有するものであるため、その内部構造等の詳細な説明は省略する。なお、酸素ポンプセル及び酸素濃度検出セルは、ジルコニアを主成分とする固体電解質層の表裏面に一対の電極が設けられて構成されている。
【0083】
そして、板型検出素子23は、センサ制御装置に設けられる制御回路部によって、酸素濃度検出セルの出力が一定の値となるように酸素ポンプセルに流すポンプ電流が制御されることで、測定室内に導入される排気ガス中の酸素を汲み入れたり、汲み出したりするように機能する。そして、板型検出素子23の酸素ポンプセルに流れるポンプ電流の大きさは、排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに変化するため、第2ガスセンサ22は、排気ガス中の酸素濃度に応じてリニアに出力が変化する酸素センサとして機能する。
【0084】
ここで、特許請求の範囲と第2ガスセンサ22とにおける文言の対応関係について説明する。第2ガスセンサ22がガスセンサの一例に相当し、板型検出素子23の素子部24が検出素子の一例に相当し、板型検出素子23のヒータ部25がヒータの一例に相当し、外部プロテクタ27および内部プロテクタ28がプロテクタの一例に相当する。
【符号の説明】
【0085】
1…内燃機関、10…センサ制御装置、11…エンジン本体部、12…制御部(ECU)、14…ガスセンサ、16…セラミックヒータ、17…検出素子、20,21…プロテクタ、22…第2ガスセンサ、23…板型検出素子、24…素子部、25…ヒータ部、27…外部プロテクタ、28…内部プロテクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6