(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
情報伝送網を介して複数接続され、電力系統を監視制御する計算機である監視サーバに、監視制御中に又は試験における障害が発生したことを示す障害情報を取得する情報取得部と、
各監視サーバに設定された試験利用が可能か否かを示す情報に基いて、監視制御中の障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバとして、監視制御中の監視サーバを決定し、試験における障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバとして、試験利用が可能な監視サーバを決定する決定部と、
を有することを特徴とする電力系統監視装置。
前記決定部は、各監視サーバについて設定された優先順位に基いて、フェールオーバを実行する監視サーバを選定する選定部を有することを特徴とする請求項1記載の電力系統監視装置。
前記可否問合部が、最上位の監視サーバからフェールオーバの実行不可の通知を受けた場合に、当該監視サーバを優先順位から除外する優先順位変更部を有することを特徴とする請求項5記載の電力系統監視装置。
前記決定部が、監視制御中の障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバとして、監視制御中の監視サーバを決定できない場合に、いずれかの監視サーバの試験利用フラグの設定を解除する設定解除部を有することを特徴とする請求項10記載の電力系統監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
[構成]
(全体構成)
本実施形態が適用されるシステム(以下、本システムとする)の構成を、
図1に示す。本システムは、複数の監視サーバ1、2、3…が、情報伝送網4を介して接続されている。監視サーバ1、2、3…は、電力系統を監視制御する計算機である。以下、各監視サーバ1、2、3…を区別しない場合には、監視サーバSとする。また、以下の説明では、監視サーバSを、計算機と呼ぶ場合がある。特に、自分自身の監視サーバSを自計算機、他の監視サーバSを他計算機と呼ぶ。
【0014】
監視制御とは、電力系統における各種の機器の状態及び各種の検出器からの検出値等の外部からの情報に応じて、各種の制御指令を出力することにより、電力系統を制御することをいう。このため、監視サーバSは、基本的には、図示はしないが、外部からの情報を取得する取得部、取得した情報に基いて制御演算を行う演算部、演算部の演算結果に応じて制御指令を出力する出力部を有する。
【0015】
情報伝送網4は、情報のやり取りが可能なネットワークを広く含む。情報伝送網4に用いられる伝送路としては、有線若しくは無線のあらゆる伝送媒体を適用可能であり、どのようなLANやWANを経由するか若しくは経由しないかは問わない。通信プロトコルについても、現在又は将来において利用可能なあらゆるものを適用可能である。ネットワークを介した情報の送受信を行うためのインタフェースについても、現在又は将来において利用可能なあらゆる装置、プログラムを適用可能である。なお、以下の説明では、情報伝送網4を介した外部との情報のやり取りを、送信、出力、通知、受信、入力、取得等と表現する。
【0016】
さらに、本実施形態における監視サーバSは、フラグ設定部11、設定状況記憶部12、設定状況取得部13、比較部14、情報取得部15、判定部16、優先順位記憶部17、決定部18、実行部19、HMI出力部20、障害情報送信部21を有する。
【0017】
フラグ設定部11は、各監視サーバSに対し、試験利用フラグの設定及び解除を行う処理部である。本実施形態においては、フラグ設定部11は、自計算機についての試験利用フラグの設定及び解除を行う。試験利用フラグとは、各監視サーバSが、試験利用可能であることを示す情報である。試験利用可能であるとは、試験中の監視サーバSが、試験としての障害発生によりフェールオーバを実行する場合に、フェールオーバの対象とすることができることをいう。フェールオーバとは、監視サーバSに障害が発生した場合に、他の監視サーバSがその機能を引き継ぎ、処理を続行することをいう。
【0018】
監視サーバSは、少なくともオンライン、試験、停止の状態をとる。オンラインとは、実際の電力系統の監視制御のために運用されている状態、つまり監視制御中をいう。試験利用フラグが設定されていない監視サーバSは、オンラインである。試験とは、実際の電力系統における各種の情報を模擬した情報に基いて、各種の機能が正常に働くかどうかを試すことをいう。例えば、障害の試験においては、障害を模擬した障害情報により試験が行われる。なお、試験には、電力系統監視システムの運用に携わる人員が習熟度を高めるために行われる訓練も含まれる。停止とは、障害やメンテナンス等のために、作動を停止することをいう。
【0019】
本実施形態においては、各監視サーバSは、オンライン中に障害が発生した場合には、試験利用フラグが設定されていないオンラインの監視サーバSが、フェールオーバを実行する。また、各監視サーバSは、試験中に試験としての障害が生じた場合には、試験利用フラグが設定された監視サーバSがフェールオーバを実行する。
【0020】
設定状況記憶部12は、本システム内の自計算機を含む各監視サーバSの試験利用フラグの設定状況を記憶する記憶部である。設定状況取得部13は、本システム内の他の監視サーバSの試験利用フラグの設定状況を取得する処理部である。取得した設定状況は、設定状況記憶部12が記憶する。比較部14は、自計算機と他計算機のフラグ設定状況を比較して、一致するか否かを判定する処理部である。
【0021】
情報取得部15は、情報伝送網4を介して、本システム内の他計算機の状況をオンラインシステム情報31として取得する処理部である。特に、本実施形態の情報取得部15は、情報伝送網4を介して、監視サーバSにおいて、オンライン中に又は試験における障害が発生したことを示す障害情報32を取得する。つまり、オンラインシステム情報31は、他の計算機における障害情報32を含む。障害情報32は、オンラインの障害情報の場合と、試験としての障害情報の場合がある。また、障害情報32は、障害の程度を区別できる情報が含まれているものとする。単純には、処理の継続が可能であるか、処理の継続が困難でフェールオーバが必要かの情報を含む。
【0022】
判定部16は、障害情報32に基いて、フェールオーバが必要か否かを判定する処理部である。つまり、判定部16は、自計算機又は他計算機に発生した障害の程度により、フェールオーバの要否を判定する。優先順位記憶部17は、フェールオーバを行う監視サーバSの優先順位を記憶する記憶部である。この優先順位は、本システム内で齟齬が生じないように、常に本システム内の全監視サーバS間で、データが等価されている。
【0023】
決定部18は、試験利用フラグの設定状況に基いて、オンライン中の障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSとして、監視制御中の監視サーバSを決定し、試験における障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSとして、試験利用可能な監視サーバSを決定する処理部である。本実施形態においては、決定部18は、比較部14が、自計算機と他計算機との試験利用フラグを比較して、一致するか否かにより、フェールオーバを実行する監視サーバSを決定する。この決定部18の詳細は後述する。
【0024】
実行部19は、自計算機がフェールオーバを行う場合に、オンラインまたは試験の監視制御を引き継ぐ処理を実行する処理部である。HMI出力部20は、フェールオーバの実行とフェールオーバを行う計算機を、運用者に知らせるために、HMIに表示通知を行う処理部である。HMI(human interface)は、図示はしないが、監視サーバSに接続された出力装置及び入力装置である。
【0025】
出力装置は、監視サーバSの各部の処理の対象となる情報を、オペレータ等が認識可能となるように出力する装置である。この出力装置としては、表示装置、プリンタ等、現在又は将来において利用可能なあらゆる出力手段を含む。
【0026】
入力装置は、監視サーバSの各部の処理に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力する装置である。この入力装置としては、キーボード、マウス等、現在又は将来において利用可能なあらゆる入力手段を含む。
【0027】
障害情報送信部21は、自計算機に障害が発生した場合又は障害を模擬した試験を実行する場合、他計算機に障害情報32を送信する処理部である。この障害情報32は、他計算機において、情報取得部15が、オンラインシステム情報31として取得する。
【0028】
(決定部)
決定部18は、
図2に示す通り、通知取得部181、比較結果取得部182、選定部183、不可通知部184、実行通知部185、HMI通知部186を有する。
【0029】
通知取得部181は、判定部16からのフェールオーバの要否の通知を取得する処理部である。比較結果取得部182は、比較部14から、自計算機と障害情報32を出力した他計算機との試験利用フラグの設定状況の比較結果を取得する処理部である。
【0030】
不可通知部184は、比較結果において、試験利用フラグの設定状況が一致しないと判定された場合に、フェールオーバ不可通知を出力する処理部である。フェールオーバ不可通知は、自計算機が、障害が発生した計算機との関係では、フェールオーバを実行できないことを示す情報である。
【0031】
選定部183は、各監視サーバSについて設定された優先順位に基いて、フェールオーバを実行する監視サーバSを選定する処理部である。本実施形態における選定部183は、比較部14による比較結果が一致すると判定された場合に、優先順位に基いて、自計算機又は他の計算機を選定する。
【0032】
この選定部183は、優先順位取得部1831、優先順位判定部1832、可否問合部1833、優先順位変更部1834、実行可否判定部1835、計算機決定部1836、通知出力部1837を有する。
【0033】
優先順位取得部1831は、優先順位記憶部17に記憶された優先順位データを取得する処理部である。優先順位判定部1832は、取得した優先順位データに基づいて、最上位の優先順位にある計算機が、自計算機であるか否かを判定する処理部である。
【0034】
可否問合部1833は、優先順位判定部1832が、自計算機が最上位でないと判定した場合に、最上位の計算機にフェールオーバの実行が可能か否かの問い合わせを行う処理部である。優先順位変更部1834は、可否問合部1833が、最上位の計算機からフェールオーバの実行不可の通知を取得した場合、優先順位から当該計算機を除外する処理部である。この場合、優先順位判定部1832は、次の順位の計算機を、最上位の計算機として判定する。
【0035】
実行可否判定部1835は、監視サーバSがフェールオーバを実行可能か否かを判定する処理部である。本実施形態においては、自計算機が優先順位の最上位にある場合、フェールオーバを実行できる否かを判定する。計算機決定部1836は、可否問合部1833が、最上位の計算機からフェールオーバの実行が可能である通知を受けた場合、当該計算機をフェールオーバを実行する計算機として決定する処理部である。計算機決定部1836は、実行可否判定部1835が、自計算機がフェールオーバを行えると判定した場合にも、当該計算機をフェールオーバを実行する計算機として決定する。
【0036】
計算機決定部1836は、フェールオーバを実行する計算機を自計算機に決定した場合、実行計算機情報33(
図4参照)を実行通知部185に出力する。通知出力部1837は、実行可否判定部1835が、フェールオーバを行えないと判定した場合に、不可通知部184に実行不可の通知を出力する処理部である。
【0037】
実行通知部185は、計算機決定部1836から、実行計算機情報33が入力された場合に、その情報を他計算機に送信する処理部である。これと同時に、実行通知部185は、実行計算機情報33を、実行部19に通知する。一方、計算機決定部1836が、他計算機がフェールオーバを行うことを決定した場合には、実行通知部185は実行部19に対する通知を行わない。HMI通知部186は、自計算機、他計算機のいずれがフェールオーバを行う場合であっても、フェールオーバを実行する計算機の情報を、HMI出力部20に通知する。
【0038】
なお、上記のような監視サーバSは、計算機、つまりコンピュータを所定のプログラムで制御することによって実現できる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェハを物理的に活用することで、上記のような各部の処理を実現するものである。ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。
【0039】
さらに、図示はしないが、監視サーバSは、上記の設定状況記憶部12、優先順位記憶部17に加えて、各部の処理に必要な各種情報を記憶する記憶部を有している。たとえば、記憶部は、各監視サーバSが、フェールオーバが実行可能か否かの情報を記憶する。その他、記憶部は、演算式、パラメータ、しきい値等、各種の設定に関する情報も記憶する。記憶部における各情報の記憶領域は、それぞれ各情報の記憶部として捉えることができる。
【0040】
設定状況記憶部12、優先順位記憶部17を含む記憶部としては、現在又は将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を利用可能である。演算に用いるレジスタ等も、記憶部として捉えることができる。記憶の態様も、長時間記憶が保持される態様のみならず、処理のために一時的に記憶され、短時間で消去又は更新される態様も含む。
【0041】
[作用]
以上のような本実施形態の処理手順を、
図1、
図2に加えて、
図3〜
図6を参照して説明する。
図3、
図4は、情報を入出力する処理部をブロックで、入出力される情報の流れを方向を矢印で示す点線で併記した、フローチャートである。
【0042】
(全体処理)
本実施形態において、他計算機で障害が生じた場合に、自計算機でフェールオーバを実行するか否かを判断する処理を説明する。なお、自計算機で障害が発生した場合には、障害情報送信部21が、障害情報32を情報伝送網4を介して送信し、これを受信した他の計算機である監視サーバSにおいて、当該計算機でフェールオーバを実行するか否かを判断する処理を実行することになる。
【0043】
各監視サーバSは、自計算機が試験利用可能である場合には、フラグ設定部11が、自計算機に試験利用フラグを設定する。このような試験利用フラグを設定した場合、従来の監視サーバSにおける試験モードと同様に、系統装置や発電所、変電所、連携システムへの制御情報を送信しない状態となる。一方、自計算機がオンラインの監視サーバSである場合には、試験利用フラグは設定しない。
【0044】
設定状況取得部13は、情報伝送網4を介して、本システム内の他の監視サーバSの試験利用フラグの設定状況を取得する。設定状況記憶部12は、取得した試験利用フラグの設定状況を記憶する。
【0045】
情報取得部15が他計算機の障害情報32を取得すると、判定部16は、障害情報32に含まれる障害の程度を区別する情報に基いて、フェールオーバが必要か否かを判定する。判定部16が、フェールオーバが必要と判定した場合、フェールオーバの実行を決定したことを示すフェールオーバ通知を、決定部18へ出力する。判定部16が、フェールオーバが不要と判定した場合、フェールオーバを行わない。
【0046】
決定部18は、判定部16からフェールオーバ通知を受けた場合に、自計算機がフェールオーバを実行するか否かを決定する。決定部18が、自計算機がフェールオーバを実行することを実行部19に通知すると、実行部19はフェールオーバを実行する。つまり、障害が発生した計算機がオンラインである場合には、オンラインの監視制御を引き継いで実行する。試験における障害である場合には、試験における引き継ぎ処理を実行する。
【0047】
HMI出力部20は、自計算機がフェールオーバを実行することを示す情報、自計算機がフェールオーバを実行しないことを示す情報を、HMIに出力する。HMIにおける出力装置に、この情報が表示等されることにより、オペレータが、自計算機がフェールオーバを実行するか否かを知ることができる。
【0048】
(監視サーバ決定処理)
以下、決定部18による決定処理の詳細を、
図3のフローチャートを参照して説明する。まず、通知取得部181は、判定部16からフェールオーバ通知を受ける(ステップS101)。比較結果取得部182は、障害情報32を出力した計算機と自計算機の試験利用フラグの設定状況が一致している否かの比較結果を、比較部14から取得する(ステップS102)。
【0049】
試験利用フラグの設定状況が一致している場合には、障害が発生した計算機の処理を引き継ぐことができる。試験利用フラグの設定状況が一致していない場合には、障害が発生した計算機の処理を引き継ぐことができない。つまり、オンラインの計算機に障害が起きた場合に、その処理は試験利用フラグが設定されていないオンラインの計算機でなければ、引き継ぐことができない。一方、試験における障害が発生した計算機の処理は、試験利用フラグが設定された計算機でなければ、引き継ぐことができない。
【0050】
試験利用フラグの設定状況が一致していない場合、不可通知部184は、他計算機に、フェールオーバを実行できないことを示すフェールオーバ不可通知を送信する(ステップS104)。この場合、自計算機は、フェールオーバを実行する計算機の候補から除外される。
【0051】
選定部183は、試験利用フラグの設定状況が一定している場合、実際にフェールオーバを実行する計算機として、自計算機又は他計算機を選定する(ステップS105)。このような選定部183による選定処理の詳細は後述する。
【0052】
選定部183が、フェールオーバを実行すると計算機として自計算機を選定した場合(ステップS106のYES)、実行通知部185は、自計算機がフェールオーバを実行するという情報を他計算機に通知する(ステップS107)。同時に、実行通知部185は、自計算機がフェールオーバを実行する通知を実行部19に出力する。
【0053】
一方、選定部183が、他計算機がフェールオーバを実行することを選定した場合は(ステップS106のNO)、不可通知部184は、他計算機に、自計算機のフェールオーバ不可通知を送信する(ステップS104)。HMI通知部186は、自計算機、他計算機いずれがフェールオーバを行う場合でも、フェールオーバを実行する計算機の情報をHMI出力部20に通知する(ステップS108)。
【0054】
(監視サーバ選定処理)
上記の選定部183による計算機の選定処理の詳細を、
図4のフローチャートを参照して説明する。まず、優先順位取得部1831が、優先順位記憶部17に保存された優先順位データを取得する(ステップS201)。優先順位判定部1832は、取得した優先順位データに基いて、最上位の優先順位にある計算機を判定する(ステップS202)。
【0055】
優先順位判定部1832が、優先順位中の最上位の計算機が、自計算機でないと判定した場合(ステップS202)、可否問合部1833は、優先順位最上位の計算機がフェールオーバを実行可能か否かの問い合せを行う。
【0056】
可否問合部1833は、最上位の優先順位にある計算機からのフェールオーバの実行が可能か否かの通知を受信する(ステップS203)。受信した通知が、フェールオーバの実行が可能である通知である場合(ステップS204のYES)、計算機決定部1836は、フェールオーバを実行する計算機を、当該計算機に決定する(ステップS205)。
【0057】
可否問合部1833が受信した通知が、フェールオーバの実行が不可である通知である場合(ステップS204のNO)、優先順位変更部1834は、該当する計算機を除外し、次の順位の計算機を最上位の計算機とする(ステップS206)。優先順位変更処理は、フェールオーバを実行する計算機を選定する上で、優先順位判定部1832が判定する計算機を変更するための処理である。このため、優先順位変更部1834は、優先順位記憶部17に記憶されたフェールオーバの実行優先順位データそのものを書き換えるわけではない。
【0058】
優先順位判定部1832は、変更後の最上位の計算機が自計算機か否かを判定する(ステップS202)。最上位の計算機が自計算機でない場合、上記と同様の処理を行う(ステップS203〜S206)。
【0059】
一方、優先順位判定部1832が、自計算機が最上位にあると判定した場合(ステップS202のYES)、実行可否判定部1835は、自計算機がフェールオーバを行えるか否かを判定する。フェールオーバが行えない場合とは、例えば、自計算機が軽度の障害を持った状況や、計算機負荷が高く安定した系統監視制御を行えない状況を含む。この状況は、例えば、記憶部にフェールオーバ可否の情報として記憶されていて、これに基いて判定が行われてもよい。
【0060】
実行可否判定部1835が、自計算機がフェールオーバを行えないと判定した場合(ステップS207のNO)、通知出力部1837が、自計算機が実行不可の通知を、不可通知部184に出力する(ステップS209)。
【0061】
実行可否判定部1835が、自計算機がフェールオーバが可能であると判定した場合(ステップS207のYES)、計算機決定部1836は、自計算機を、フェールオーバを実行する計算機に決定し(ステップS205)、フェールオーバを実行する実行計算機情報33を、実行通知部185に出力する。
【0062】
(具体例)
以上のようなフェールオーバ計算機の決定処理の具体例について、
図5〜
図7を参照して説明する。
図5は、監視サーバSA〜SEについて、フェールオーバを行う場合の優先順位、障害発生又は試験実施のタイミングにおける試験利用フラグの設定状況、フェールオーバ実行可否の情報を表す。
【0063】
図6は、監視サーバSXがオンライン運転を行っていた場合に、他の計算機がフェールオーバを実行する例を示す。
図7は、監視サーバSXが試験を実施している場合に、他の計算機がフェールオーバを実行する例を示す。
【0064】
図6に示すように、監視サーバSがオンライン運転を行っていた場合、実際に障害が発生すると、フェールオーバを実行する計算機として選定される計算機は、試験利用フラグを設定していない計算機に限定される。
図5において、試験利用フラグを設定していない計算機は、監視サーバSB、SC、SDである。このため、フェールオーバ候補の計算機は監視サーバSB、SC、SDとなる。
【0065】
これらの監視サーバSB、SC、SDの中で、優先順位が高いのは監視サーバSBである。監視サーバSBは、フェールオーバ可能であるため、フェールオーバを行う計算機は、監視サーバSBに決定される。
【0066】
一方、
図7に示すように、監視サーバSXが試験利用フラグを設定し、試験を行っていた場合、試験での障害が発生すると、フェールオーバを実行する計算機は、試験利用フラグを設定している計算機に限定される。
図5において、試験利用フラグを設定している計算機は、監視サーバSA、SEである。この2計算機を比較した場合、優先順位の高い計算機は監視サーバSAである。しかし、監視サーバSAは、フェールオーバ不可となっている。このため、フェールオーバを行う計算機は、監視サーバSEに決定される。
【0067】
[効果]
(1)本実施形態は、情報伝送網4を介して複数接続され、電力系統を監視制御する計算機である監視サーバSにおいて、監視制御中に又は試験における障害が発生したことを示す障害情報32を取得する情報取得部15と、各監視サーバSに設定された試験利用が可能か否かを示す情報に基いて、監視制御中の障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSとして、監視制御中の監視サーバSを決定し、試験における障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSとして、試験利用が可能な監視サーバSを決定する決定部18と、を有する。
【0068】
このため、試験利用が可能か否かを示す情報により、監視制御中、つまりオンライン中における障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSと、試験における障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSを区別して決定することができる。従って、試験における障害発生が、実際の障害と混同されることがなく、実際の電力系統の監視制御において運用に支障を与えることないため、フェールオーバを含むオンライン連係機能等の試験の実施が可能となる。また、実際に運用している電力系統監視システムと同等のデバッグシステムを用意する必要がなくなり、コストが節約できる。
【0069】
(2)決定部18は、各監視サーバSについて設定された優先順位に基いて、フェールオーバを実行する監視サーバSを選定する選定部183を有する。
このため、多数の監視サーバSの中から、適切な監視サーバSを選定して、フェールオーバを実行させることができる。
【0070】
(3)選定部183は、監視サーバSがフェールオーバを実行可能か否かをを判定する実行可否判定部1835を有する。
このため、軽度の障害を有したり、不安定な監視サーバSを回避して、フェールオーバを実行させることができる。
【0071】
(4)各監視サーバSは、情報取得部15と、自らの監視サーバSについて、試験利用が可能か否かを示す情報として、試験利用フラグを設定するフラグ設定部11と、自らの監視サーバSの試験利用フラグの設定状況と、他の監視サーバSの試験利用フラグの設定状況とが一致するか否かを判定する比較部14とを有する。そして、決定部18は、比較部14による比較結果が一致しないと判定された場合に、自らの監視サーバSがフェールオーバを実行しないことを示す情報を出力する不可通知部184と、比較部14による比較結果が一致すると判定された場合に、監視サーバSに設定された優先順位に基いて、自らの監視サーバS又は他の監視サーバSを、フェールオーバを実行する監視サーバSとして選定する選定部183とを有する。さらに、選定部183は、自らの監視サーバSが選定された場合に、フェールオーバを実行する実行部19とを有する。
【0072】
このため、各監視サーバSが、同時並行に自らの試験利用フラグの設定状況との比較によって、自らの監視サーバSがフェールオーバを実行するか否かを決定することにより、負荷を分散して処理の高速化を図ることができる。
【0073】
(5)選定部183は、自らの監視サーバSが優先順位の最上位にあるか否かを判定する優先順位判定部1832と、優先順位判定部1832が、自らの監視サーバSが優先順位の最上位にないと判定した場合に、最上位の監視サーバSにフェールオーバの実行が可能か否かを問い合わせる可否問合部1833を有する。そして、選定部183は、優先順位判定部1832が、自らの監視サーバSが優先順位の最上位にあると判定した場合に、自らの監視サーバSがフェールオーバを実行可能か否かを判定する実行可否判定部1835と、可否問合部1833による問い合わせに対する応答又は実行可否判定部1835による判定結果に基いて、フェールオーバを実行する監視サーバSを決定する計算機決定部1836を有する。
【0074】
このため、共通の優先順位を設定することにより、多数の監視サーバSが同時並行にフェールオーバを実行する監視サーバSを決定する場合に、監視サーバSが重複することを防止できる。
【0075】
(6)可否問合部1833が、最上位の監視サーバSからフェールオーバの実行不可の通知を受けた場合に、当該監視サーバSを優先順位から除外する優先順位変更部1834を有する。
このため、各監視サーバSの状況に応じて、フェールオーバの実行ができない監視サーバSを除外することにより、優先順位を柔軟に適用することができる。
【0076】
[第2の実施形態]
[構成]
本実施形態の構成を、
図8を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様の構成を有する。但し、本実施形態は、各監視サーバSが、識別子付加部22、識別子確認部23、取込判定部24を有する。識別子付加部22は、他の監視サーバSへ送信する障害情報32に、自計算機に試験利用フラグが設定されていることを示す試験利用識別子を付加する処理部である。障害情報送信部21が送信する障害情報32は、識別子付加部22により試験利用識別子が付加されて、オンラインシステム情報31として送出される。
【0077】
識別子確認部23は、他計算機から取得したオンラインシステム情報31に含まれる障害情報32に、試験利用識別子が付加されているか否かを確認する処理部である。取込判定部24は、自らの監視サーバSに試験利用フラグが設定されておらず、取得した障害情報32に試験利用識別子が付加されている場合には障害情報32を取り込まず、これ以外の場合には障害情報32を含むオンラインシステム情報31を取り込む処理部である。取り込まれた障害情報32は、判定部16がフェールオーバが必要か否かを判定するために用いる。
【0078】
[作用]
以上のような本実施形態では、例えば、自計算機に障害が発生した場合又は障害を模擬した試験を実施する場合、第1の実施形態と同様に、障害情報送信部21が、障害情報32を送出する。その際、識別子付加部22は、設定状況記憶部12に記憶された自計算機の試験利用フラグの設定状況に従い、障害情報32に試験利用識別子を付加するか否かを判別する。識別子付加部22は、自計算機が試験利用フラグ設定状態である場合のみ、障害情報32に試験利用識別子を付加する。
【0079】
他計算機の障害情報32を含むオンラインシステム情報31は、第1の実施形態と同様に、システム情報取得部15が受信する。識別子確認部23は、受信したオンラインシステム情報31に含まれる障害情報32に、試験利用識別子が付加されているか否かを確認する。取込判定部24は、識別子確認部23の確認結果に基づき、受信したオンラインシステム情報31を自計算機に取り込むか否かを判定する。
【0080】
つまり、取込判定部24は、自計算機が試験利用フラグを設定しておらず、オンラインで運転している場合、試験利用識別子を付加されたオンラインシステム情報31は、取込対象外とする。これ以外の場合、取込判定部24は、オンラインシステム情報31を取り込む。つまり、自計算機が試験利用フラグを設定していない場合でも、試験利用識別子を付加されていないオンラインシステム情報31を取り込む。また、自計算機が試験利用フラグを設定している場合は、試験利用識別子の有無に関わらず、オンラインシステム情報31を取り込む。判定部16は、取り込まれたオンラインシステム情報31に基いて、フェールオーバの要否を判定する。その他の処理は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0081】
[効果]
本実施形態は、各監視サーバSが、他の監視サーバSへ送信する障害情報32に、自らの監視サーバSに試験利用フラグが設定されていることを示す試験利用識別子を付加する識別子付加部22と、情報取得部15が他の監視サーバSから取得した障害情報32に、試験利用識別子が付加されているか否かを確認する識別子確認部23と、自らの監視サーバSに試験利用フラグが設定されておらず、取得した障害情報32に試験利用識別子が付加されている場合には障害情報32を取り込まず、これ以外の場合には障害情報32を取り込む取込判定部24とを有する。
【0082】
このため、各監視サーバSが、他の監視サーバSのフラグ設定状況を保持し、等価しなくても、フェールオーバの要否を判定できる。このため、情報伝送網4のトラフィックを削減し、伝送遅延によるデータ等価への影響を考慮せずに、第1の実施形態と同様に、オンライン系の運用に支障を与えないフェールオーバの試験が可能となる。
【0083】
[第3の実施形態]
[構成]
本実施形態の構成を、
図9及び
図10を参照して説明する。本実施形態は、
図9に示すように、各監視サーバSに、情報伝送網4を介して管理サーバ5が接続されている。そして、管理サーバ5は、上記の第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の設定状況記憶部12、情報取得部15、判定部16、優先順位記憶部17、決定部18を有する。
【0084】
さらに、管理サーバ5は、設定状況収集部25、実行指令送信部26、フェールオーバ情報通知部27を有する。設定状況収集部25は、本システム内の全計算機のフラグ設定状況を収集する処理部である。収集されたフラグ設定状況は、設定状況記憶部12が記憶する。
【0085】
実行指令送信部26は、フェールオーバを実行する計算機に対して、フェールオーバの実行指令36を送信する処理部である。フェールオーバ通知部27は、本システム内の全計算機に対して、フェールオーバが行われることを通知する処理部である。
【0086】
一方、
図10に示すように、各監視サーバSは、上記の第1の実施形態又は第2の実施形態と同様に、フラグ設定部11、システム情報取得部15、実行部19、HMI出力部20及び障害情報送信部21を有する。但し、上記の第1の実施形態又は第2の実施形態では監視サーバSが有し、本実施形態ではシステム管理サーバ5が有する上記の各処理部は、各監視サーバSにおいては省略されている。
【0087】
[作用]
以上のような本実施形態においては、管理サーバ5の設定状況収集部25は、全計算機のフラグ設定状況を収集し、設定状況記憶部12に保存する。いずれかの監視サーバSにて障害が発生した場合又は障害を模擬した試験を実施する場合、システム情報取得部15が、オンラインシステム情報31として障害情報32を取得する。
【0088】
判定部16は、障害の程度に応じて、フェールオーバを実施するか否かを判定する。決定部18は、設定状況記憶部12に記憶されたフラグ設定状況に基いて、障害情報32を通知した計算機とフラグ設定状況が同じである計算機の中から、実行優先順位記憶部17に記憶された実行優先順位に従って、フェールオーバを実行する計算機を決定する。
【0089】
実行指令送信部26は、フェールオーバを実行する計算機に対して、実行指令36を送信する。フェールオーバ情報通知部27は、全計算機に対して、フェールオーバが行われるフェールオーバ情報35を通知する。
【0090】
監視サーバSの情報取得部15は、通常の他計算機のオンラインシステム情報31だけでなく、管理サーバ5がフェールオーバの実行を決定した場合、フェールオーバを行う計算機の情報も取得する。実行部19は、管理サーバ5がフェールオーバを実行する計算機を、自計算機に決定した場合、その実行指令36を受信したのち、オンラインまたは試験の監視制御を引き継ぐ処理を実行する。
【0091】
[効果]
本実施形態は、情報伝送網4に接続された管理サーバ5が、情報取得部15と、決定部18と、全監視サーバSのフラグ設定状況を収集する設定状況収集部25と、フェールオーバを実行する監視サーバSに対して、フェールオーバの実行指令36を送信する実行指令送信部26と、全監視サーバSに対して、フェールオーバが行われたことを通知するフェールオーバ通知部27とを有する。
【0092】
このため、管理サーバ5が、本システム内の全ての監視サーバSの状態を取得し、運転状態を一括管理することができ、フェールオーバを実行する監視サーバSを決定するまでに、各監視サーバS間での実施可否判定の送受信を行う必要がない。このため、より迅速なフェールオーバが可能となる。
【0093】
[第4の実施形態]
[構成]
本実施形態の構成を、
図11び
図12を参照して説明する。本実施形態の監視サーバSは、基本的には、上記の第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の構成である。但し、
図11に示すように、本実施形態の監視サーバSは、系統情報取得部28a、系統情報選択部28b、系統情報記憶部28c、を有する。
【0094】
系統情報取得部28aは、外部から入力された系統情報37を取得する処理部である。系統情報37は、系統において計測等により得られる各種のデータであり、電力系統監視装置の分野において極めて一般的なデータである。この系統情報37には、連係する他のシステムの機器、監視制御サーバS等からの情報も含まれる。
【0095】
系統情報選択部28bは、自計算機の試験利用フラグの設定に応じて、系統情報37を選択する処理部である。系統情報記憶部28cは、系統情報選択部28bが選択した系統情報37を記憶する処理部である。
【0096】
本実施形態における系統情報選択部28bは、自計算機の試験利用フラグの設定と、系統情報取得部28aから受け取った系統情報37に付加された試験利用フラグの設定とを比較して、一致している系統情報37を選択する。
【0097】
さらに、
図12に示すように、監視サーバSには、情報伝送網4aを介して、系統情報37を伝送する複数のゲートウェイ(以下、GWとする)装置6が接続されている。GW装置6は、情報伝送網4aにおける情報の伝送を中継する中継装置である。情報伝送網4aは、上記の情報伝送網4と同様に、情報のやり取りが可能なネットワークを広く含む。
【0098】
各GW装置6は、CPU7、ラインバッファ(以下、LBとする)8、設定状況記憶部12を有し、TC模擬装置9に接続されている。CPU7は、GW装置6の制御部である。LB8は、TC模擬装置9からの系統情報37を保持し、設定状況記憶部12からのフラグ設定状況を付加する処理部である。
【0099】
TC模擬装置9は、監視サーバSにおいて試験を行うために、系統情報37を模擬的に生成して出力する装置である。TC10は、テレコンと呼ばれる遠方監視制御装置の意味であり、各種の系統情報37を収集して制御所等に出力する装置である。
【0100】
[作用]
以上のような本実施形態において、TC模擬装置9にて生成された系統情報37が、監視サーバSの系統情報記憶部28cに記憶されるまでの動作について説明する。まず、TC模擬装置9が模擬的に系統情報37を生成する。生成された系統情報37には、LB8によって、設定状況記憶部12に記憶されている試験利用フラグを付加する。
【0101】
試験利用フラグを付加された系統情報37は、LB8からCPU7を経由して監視サーバSへ同報送信される。各監視サーバSにおける系統情報取得部28aは、試験利用フラグを付加された系統情報37を取得し、系統情報選択部28bへ出力する。
【0102】
系統情報選択部28bは、系統情報37に付加されている試験利用フラグと比較部14から取得した試験利用フラグとの比較を行う。系統情報選択部28bは、比較した結果、同じ試験利用フラグが立っている系統情報37を選択して出力する。系統情報記憶部28cは、系統情報選択部28bにより選択された系統情報37を記憶する。
【0103】
上記の動作は、各GW装置6から送信された系統情報37を受信した複数の監視サーバSにおいて、同様に実施される。その結果、監視サーバSに試験利用フラグが設定されていれば、常に同じ系統情報37が保存される。つまり、監視サーバSにおいては、試験利用フラグが設定された監視サーバSでしか、試験利用フラグが付加された系統情報37を取り込まない。
【0104】
[効果]
本実施形態における監視サーバSは、監視サーバSは、外部から入力された系統情報37を取得する系統情報取得部28aと、自らの監視サーバSの試験利用フラグの設定に応じて、系統情報37を選択する系統情報選択部28bと、系統情報選択部28bが選択した系統情報37を記憶する系統情報記憶部28cとを有する。そして、系統情報選択部28bは、自らの監視サーバSと試験利用フラグの設定が一致している系統情報37を選択する。
【0105】
このため、監視サーバSのうち、試験利用フラグが設定された計算機は、本システム内の他計算機の情報だけでなく、連係するシステムにおける監視サーバSの情報を、系統情報37として取得、保持することが可能となる。従って、他システムと連携した試験等が実行可能となる。また、系統情報37として、自計算機と試験利用フラグの設定が一致するもののみを記憶するため、記憶容量を節約できる。
【0106】
[第5の実施形態]
[構成]
本実施形態の構成を、
図13を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第4の実施形態と同様である。但し、本実施形態においては、監視サーバSにおける系統情報選択部28bは、自計算機に試験利用フラグが設定されていれば、系統情報取得部28aが取得した系統情報37を、試験利用フラグの設定の有無にかかわらず記憶する。また、本実施形態では、GW装置6は、模擬装置でないTC10に接続されたLB8も有する。
【0107】
[作用]
以上のような本実施形態において、TC模擬装置9又はTC10において生成された系統情報37が、監視サーバSの系統情報記憶部30に保存されるまでの動作について説明する。まず、TC模擬装置9又はTC10が、系統情報37を生成する。なお、TC模擬装置9からの系統情報37は、上記のように模擬的なものである。一方、TC10の系統情報37は、模擬的なものではなく、オンラインから得られるリアルタイムの情報である。
【0108】
TC模擬装置9からの系統情報37には、LB8において、設定状況記憶部12に保存されている試験利用フラグが付加される。TC10からの系統情報37には、試験利用フラグが付加されない。このような系統情報37は、CPU7を経由して、各監視サーバSへ同報送信される。
【0109】
系統情報取得部28aは、上記の系統情報37を取得し、系統情報選択部28bに送信する。系統情報選択部28bは、自計算機の試験利用フラグの設定を、比較部14から取得する。そして、系統情報選択部28bは、自計算機に試験利用フラグが設定されていれば、系統情報37を、全て系統情報記憶部30に記憶する。
【0110】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、試験系の監視サーバSでありながら、オンラインの系統情報37を取得でき、リアルタイムの系統状態を保持しながら、監視サーバSのフェールオーバの試験や訓練を行うことが可能となる。監視サーバSが、試験系からオンライン系に移行する場合があっても、オンライン系の系統情報37の透過性が確保されているので、短時間でスムーズに移行できる。
【0111】
[第6の実施形態]
[構成]
本実施形態の構成を、
図14を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、
図9及び
図10に示した第3の実施形態と同様である。但し、本実施形態の管理サーバ5は、設定解除部29を有する。設定解除部29は、決定部18が、監視制御中つまりオンラインの障害に対してフェールオーバを実行する計算機として、オンラインの計算機を決定できない場合に、いずれかの計算機の試験利用フラグを解除する処理部である。
【0112】
[作用]
以上のような本実施形態では、まず、オンラインの計算機であって、オンラインのフェールオーバを実行可能な計算機が存在しない場合、決定部18は、フェールオーバを実行する監視サーバSを決定できなくなる。この場合、設定解除部29は、全計算機において、試験利用フラグ設定中にある計算機の試験利用フラグを強制的に解除する。
【0113】
例えば、設定解除部29は、優先順位記憶部17に記録されたフェールオーバ優先順位が最も高い計算機に対し、試験利用フラグの解除指令38を送信する。これにより、対象となる計算機においては、フラグ設定部11が、自計算機の試験利用フラグの設定を解除する。管理サーバ5は、解除指令38を送信した後、再度、上記のようなフェールオーバ対象を決定する処理フローを実施し、フェールオーバを実行させる。
【0114】
[効果]
本実施形態は、決定部18が、監視制御中の障害に対してフェールオーバを実行する監視サーバSとして、監視制御中の監視サーバSを決定できない場合に、いずれかの監視サーバSの試験利用フラグの設定を解除する設定解除部29を有する。
【0115】
オンライン系のフェールオーバを実施可能な計算機が存在しない状況下でも、試験利用フラグ設定中の計算機について強制的に試験利用フラグの設定を解除し、オンライン系のフェールオーバを行い、オンライン運転の冗長性を高めることが可能となる。この場合、上記の第5の実施形態のように、オンライン系の系統情報37の透過性が確保されていれば、短時間でスムーズに移行できる。
【0116】
[他の実施形態]
実施形態における監視サーバS、管理サーバ5等の数は、特定の数には限定されない。上記の実施形態における各部は、共通のコンピュータにおいて実現してもよいし、情報伝送網4で接続された複数のコンピュータによって実現してもよい。電力系統監視装置は、上記の実施形態のように各部を有する監視サーバSとしても、管理サーバ5としても構成できる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。