【実施例1】
【0019】
始めに、実施例1の回転止め機構20の構成について、
図1〜
図11を用いて説明する。本実施例の回転止め機構20は、
図1に示すように、自動車のシート1(座席)に設けられた足乗せとなるオットマン5の回転止めを行うための機構として構成されている。上記シート1は、着座者の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れとなるヘッドレスト4と、足載せとなるオットマン5と、を備えた構成となっている。
【0020】
上記シートバック2は、その下端部がシートクッション3の後端部に連結されて設けられている。シートクッション3は、車両のフロア上に図示しない左右一対のスライドレールを間に介して前後スライド可能な状態に連結されて設けられている。ヘッドレスト4は、シートバック2の上部に装着されて設けられている。オットマン5は、シートクッション3の前部に展開格納可能な状態に連結されて設けられている。
【0021】
詳しくは、上述したオットマン5は、
図2に示すようにシートクッション3の前側部に沿った形に畳み込まれた格納状態と、
図4に示すようにシートクッション3の前側部から足載せとして使用可能となる前下がりの斜めの角度位置まで起こし上げられた展開状態と、の間で展開格納することのできる構成とされている。上述したオットマン5の展開格納の動作は、オットマン5とシートクッション3の前部との間に介在する展開機構10のリンク運動に伴って行われるようになっている。
【0022】
上述した展開機構10は、手動操作による1自由度のリンク運動によってオットマン5を上記展開位置(
図4参照)と格納位置(
図2参照)との間で移動させるようになっている。上記展開機構10は、常時は、後述する引張ばね19のばね力によって、展開方向にリンク運動するように附勢力が掛けられた構成とされている。しかし、上記展開機構10は、常時は、
図4の紙面向かって左側のリンク連結部に設けられた回転止め機構20によって、そのリンク運動が止められた状態に保持されるようになっている。
【0023】
上記回転止め機構20による回転止めにより、展開機構10は、オットマン5に着座者の足が乗せられることによる負荷を受けても押し下げられるがことなく、定位置に安定して保持されるようになっている。また、上記展開機構10は、上記回転止め機構20による回転止めにより、上述したオットマン5に引張ばね19の附勢力や意図しない外部からの荷重によって展開方向の負荷が掛けられても、これらの力によって展開方向に押し上げられることがなく、定位置に安定して保持されるようになっている。このように、展開機構10は、上述した回転止め機構20によって、正逆双方向に負荷が掛けられても押し動かされることのない強い回転止め力が掛けられて回転止めされるようになっている。
【0024】
上述した展開機構10は、
図3に示すように、シートクッション3の紙面向かって右側の側部に設けられた解除レバー3Aが引き上げられる操作によって、上述した展開機構10による回転止め状態が解除されて、展開格納の各方向にリンク運動することができる状態に切り換えられるようになっている。上記解除操作によって、展開機構10は、オットマン5に足乗せ等による上方側からの負荷が掛けられていない状態では、上述した引張ばね19の附勢力によって展開方向に動かされるようになっている。その際、展開機構10は、
図4の紙面向かって右側のリンク連結部に設けられた粘性のダンパ30によって、展開速度が高くなりすぎないように抑制されながら展開されていくようになっている。
【0025】
以下、上述した展開機構10及び回転止め機構20の具体的な構成について、詳しく説明する。先ず、展開機構10の構成について説明する。展開機構10は、
図4に示すように、固定板11と、支持板12と、メインリンク13と、可動アーム14と、第1サブリンク15と、第2サブリンク16と、第1ロッド17と、第2ロッド18と、引張ばね19と、によって構成されている。上述した展開機構10は、機構全体が左右一対で構成された左右対称な形に組まれた構成とされている。
【0026】
上述した固定板11は、L字板によって形成されている。上記固定板11は、そのL字の天板部がシートクッション3の図示しないフレームの前上側の端部に結合されて、そこから折れ曲がるL字の折板部が前下側に延び出す形となって設けられている。支持板12は、井桁状に組まれた板部材によって形成されている。上記支持板12は、オットマン5の背裏部に結合されて、オットマン5を背裏側から支える構成となっている。
【0027】
メインリンク13は、第1サブリンク15や第2サブリンク16よりも長尺な真っ直ぐな板材によって形成されている。上記メインリンク13は、その上端部が、上述した固定板11の折板部の上端部に対して、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P1によって回転可能に連結されている。可動アーム14は、上述したメインリンク13よりも短尺な略真っ直ぐな板材によって形成されている。上記可動アーム14は、その上端部が、上述した固定板11の折板部の下端部に対して、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P2として機能する前述した回転止め機構20(図示向かって左側の連結構造)又はダンパ30(図示向かって右側の連結構造)を介して回転可能に連結されている。上記可動アーム14は、その左右一対で設けられた中間部間に第1ロッド17が一体的に架橋されて補強された構成となっている。
【0028】
第1サブリンク15は、上述したメインリンク13よりも短尺な真っ直ぐな板材によって形成されている。上記第1サブリンク15は、その下端部が、上述したメインリンク13の下端部に対して、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P3によって回転可能に連結されている。また、上記第1サブリンク15は、その上端部が、上述した支持板12の横側部の高さ方向の中央部に対して、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P4によって回転可能に連結されている。上述した第1サブリンク15は、その左右一対の中間部間に第2ロッド18が一体的に架橋されて補強された構成となっている。上記第2ロッド18の幅方向の中央部には、後述する引張ばね19の下端部を引掛けるためのU字状の形をした掛ワイヤ18Aが両端部を結合された状態となって設けられている。
【0029】
第2サブリンク16は、上述した第1サブリンク15よりも長尺な真っ直ぐな板材によって形成されている。上記第2サブリンク16は、その下端部が、上述した可動アーム14の下端部に対して、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P5によって回転可能に連結されている。また、第2サブリンク16は、その上端部が、上述した支持板12の横側部の上端部に対して、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P6によって回転可能に連結されている。また、第2サブリンク16は、そのメインリンク13と交差するリンク長方向の中間部が、シート幅方向に軸方向を向ける連結軸P7によってメインリンク13のリンク長方向の略中央部に回転可能に連結されている。
【0030】
上記第2サブリンク16には、その左右一対の中央部間に、後述する引張ばね19の上端部を引掛けるためのU字状の形をした掛ワイヤ16Aが一体的に架け渡されて設けられている。また、上記第2サブリンク16には、そのリンク長方向の中央部の前面部に、展開機構10が格納状態とされた際に支持板12の背裏面に柔らかくあてがわれて支持板12を受け止めるクッションゴム16Bが取り付けられている。
【0031】
引張ばね19は、上述した掛ワイヤ16A,18A間に引掛けられて設けられている。上記引張ばね19は、両掛ワイヤ16A,18A間に互いを引き寄せる方向のばね附勢力をかけることで、展開機構10に対して常に展開させる方向の附勢力を作用させる構成となっている。上記のように構成された展開機構10は、上述した各リンクの協働した1自由度のリンク運動によって、パンタグラフのように屈伸する形でリンク運動をして、オットマン5を
図2で示した格納状態と
図4で示した展開状態との間で移動させるようになっている。
【0032】
次に、回転止め機構20の構成について説明する。回転止め機構20は、
図4で上述したように、展開機構10の図示向かって左側の可動アーム14を固定板11に対して回転可能かつ回転止めも可能な状態に連結する継手装置(回転軸装置)としての機能を備えた構成となっている(
図5参照)。具体的には、上記回転止め機構20は、
図6〜
図7に示すように、ドラム21と、ベース22と、プレート23と、スペーサ24と、ねじりばね25A,25Bと、ワッシャ26と、解除部材27A,27Bと、リターンばね28と、軸ピン29と、によって構成されている。ここで、上記固定板11が本発明の「二部材の一方」に相当し、上記可動アーム14が本発明の「二部材の他方」に相当し、プレート23が本発明の「結合部材」に相当する。
【0033】
上述したドラム21は、金属製の円筒型部材によって形成されている。上記ドラム21は、
図5及び
図9に示すように、その円筒内に、上述したベース22、プレート23、スペーサ24、及びねじりばね25A,25Bを軸方向の一端側(紙面左端側)から収め入れた状態にセットされる構成とされている。上記ドラム21は、
図6〜
図7に示すように、その軸方向の他端(紙面右端)に、上記円筒内に収め入れられたねじりばね25Bの外部への張り出しを防止するための内側フランジ部21Aが、半径方向の内側にフランジ状に張り出した形となって形成されている。また、上記ドラム21の軸方向の一端(紙面左端)には、半径方向の外側にフランジ状に張り出した形の外側フランジ部21Bが形成されている。
【0034】
上記ドラム21は、上述した外側フランジ部21Bが、上述した可動アーム14の対応する取り付け箇所の周縁に沿って形成された複数の嵌合爪14Aの間の領域にセットされた状態で、上記各嵌合爪14Aが外側フランジ部21Bの所々の箇所から切り起こされた爪部21Cに同爪部21Cを可動アーム14との間に軸方向に挟み込む形にかしめることにより、可動アーム14に対して強固に一体的に結合された状態とされている。
【0035】
ベース22は、金属製の円筒容器型部材によって形成されている。上記ベース22は、その底板の付いた軸方向の一端(紙面左端)の中心部に、軸方向の一端側(紙面左端側)に向かって円筒状に張り出す筒部22Aを有する形状とされている。また、上記ベース22は、その底板のない軸方向の他端(紙面右端)に、円周方向の複数箇所から軸方向に断片的な円筒形状を形作るように張り出す嵌合片22Bを有する形状とされている。前者の筒部22Aは、前述した可動アーム14と固定板11とに貫通して形成された丸孔内に軸方向に貫通して差し込まれた状態で、固定板11に差し込まれた嵌合部分が溶接されることで固定板11に一体的に結合された状態とされている。この連結により、可動アーム14が固定板11に対して上述した筒部22Aを軸として回転することができる形に連結された状態とされている。
【0036】
後者の嵌合片22Bは、後述するプレート23の外周部に凹んで形成された圧入溝23Aとスペーサ24の外周部に凹んで形成された圧入溝24Dとにそれぞれ軸方向に圧入されて、プレート23とスペーサ24とをベース22の円筒内に一体的に嵌め込んだ状態としている。また、上記ベース22の底板の外周縁には、後述する一方側の解除部材27Bの解除片27B1を軸方向に貫通して差し込めるようにする通し孔22Cが形成されている。
【0037】
プレート23は、
図6〜
図7に示すように、上述した円筒形状のベース22と略同一の外径を有する金属製の円板状部材によって形成されている。上記プレート23は、その外周部の円周方向の複数箇所に、上述したベース22の嵌合片22Bを軸方向に圧入することのできる圧入溝23Aが半径方向の内側に凹んだ形となって形成されている。上記プレート23は、上記圧入溝23Aにベース22の嵌合片22Bが圧入されてベース22の円筒内に嵌め込まれることにより、円筒形状のベース22と略面一状の外周面を形成した形となってベース22と一体的な状態に組み付けられている(
図9参照)。
【0038】
上記プレート23には、更に、その円周方向の対向する2箇所の位置に、クランク状に屈曲した形に細く貫通した嵌合溝23Bが形成されている。これら嵌合溝23Bには、後述する2本のねじりばね25A,25Bのクランク状に曲げられた一端ずつが、それぞれ軸方向に圧入されて組み付けられている(
図8参照)。また、上記プレート23の円周方向の複数箇所には、後述するスペーサ24の軸方向の一端側(
図7の紙面左端側)の面部に突出して形成された丸ピン状の突起24C(
図7参照)を軸方向に差し込んで嵌合させることのできる小孔23Cが形成されている。また、上記プレート23の中心部には、丸孔状に貫通した貫通孔23Dが形成されている。上記貫通孔23Dには、後述する軸ピン29の先端部が差し込まれて一体的にかしめられている。
【0039】
スペーサ24は、
図6〜
図7に示すように、インジェクション成形された樹脂部材によって形成されている。上記スペーサ24は、その外周部の円周方向の複数箇所に、上述したプレート23の圧入溝23Aと同じようにベース22の嵌合片22Bを軸方向に圧入することのできる圧入溝24Dが形成されている。上記スペーサ24は、上記圧入溝24Dにベース22の嵌合片22Bが圧入されてベース22の円筒内に嵌め込まれることにより、そのベース22の嵌合片22Bの円周方向の配置間領域に露出する各部分が、円筒形状のベース22よりもひとまわり大きな断片的な円筒形状を形作るように張り出した状態となってベース22と一体的に組み付けられている。これにより、上記スペーサ24は、ベース22の外周部に巻かれた状態に組み付けられる後述するねじりばね25A,25Bの内周面をその摺動摩擦抵抗の少ない外周面によってスムーズに摺動させられる形に受け止められるようになっている。
【0040】
上記スペーサ24は、
図7に示すように、その軸方向の一端側(紙面左端側)の面部上の円周方向の複数箇所に、丸ピン状に突出した突起24Cが形成されている。上記スペーサ24は、上記突起24Cが上述したプレート23の小孔23C内に嵌め込まれることでプレート23と回転方向に一体的な状態に組み付けられている。上記スペーサ24は、
図6に示すように、その軸方向の他端側(紙面右端側)の面部に凹んで形成された凹部24Eや上述した圧入溝24D内に、後述する解除部材27A,27Bの各解除片27A1,27B1がそれぞれ軸方向に差し込まれた状態に組み付けられている。上記凹部24Eと圧入溝24Dには、それらの円周方向の端部面(図示下側の端部面)に、各解除部材27A,27Bが解除操作方向に回転操作された際に各解除片27A1,27B1を回転方向に当接させて係止させることのできる係止面24A,24Bが形成されている。また、上記スペーサ24の中心部には、丸孔状に貫通した貫通孔24Fが形成されている。上記貫通孔24Fには、後述する軸ピン29の軸部が貫通した状態に差し込まれている。
【0041】
ねじりばね25A,25Bは、
図6〜
図7に示すように、それぞれ、上述した円筒形状のドラム21の内径よりもひとまわり大きな外径を有するコイル形状に巻かれた構成となっている。上記ねじりばね25A,25Bは、互いに逆向きに巻かれた構成とされており、互いの間に上述したプレート23が位置するように軸方向に並んで配置されている。上記ねじりばね25A,25Bは、互いの軸方向に対向する側の一端がそれぞれクランク状に折り曲げられた形状とされており、上述したプレート23に形成された対応する各嵌合溝23B内に軸方向に圧入されてプレート23に一体的に結合されている。
【0042】
上記ねじりばね25A,25Bは、上述したプレート23のベース22への組み付けにより、同プレート23に固定された一端から巻き出された部分が、ベース22の嵌合片22Bの配置間の隙間から外部に出されて、コイル状に巻かれた部分がベース22の外周部に巻かれた状態に組み付けられている。そして、上記ねじりばね25A,25Bは、それぞれ、互いの軸方向の反対側を向く他端がそれぞれ捩り込まれて形状全体が縮径された状態で、ドラム21の内部に収め入れられた状態に組み付けられている。上記組み付けにより、ねじりばね25A,25Bは、常時はそれらの自由状態に復元する拡径変形によって、それらの外周面がドラム21の内周面全体に強く押し付けられた状態に保持されるようになっている(
図10参照)。
【0043】
したがって、これらねじりばね25A,25Bの押し付け力によって、ドラム21のベース22に対する正逆双方向の回転が押し止められた状態となり、上述した可動アーム14の固定板11に対する回転が止められた状態となる。上記の回転止め力は、互いに逆向きに巻かれた2本のねじりばね25A,25Bがドラム21の内周面に押し付けられることで発揮される摺動摩擦抵抗力によって発揮されるようになっている。そのため、上記の回転止め力を発揮する各ねじりばね25A,25Bには、例えば、上記の回転止め状態において、
図4で前述した引張ばね19の附勢力による展開方向の回転力やオットマン5に足が乗せられることによる押し下げ方向の回転力が伝達されることにより、そのどちらか(ねじりばね25A又はねじりばね25B)に押し付け力を弱める捩り込み方向の負荷が掛けられてしまう(
図9参照)。
【0044】
しかしながら、
図9に示すように、上記2本のねじりばね25A,25Bは、互いに逆向きに巻かれた構成となっていることから、ドラム21に対して正逆どちらの回転方向に負荷が入力されても、常にどちらか一方が、捩り込み方向とは反対方向の負荷、すなわち拡径変形を起こす方向の負荷を受けて、回転止め力を強める態様で負荷を受け止めるようになっている。したがって、もう一方に対して掛けられる捩り込み方向の負荷が軽減されることから、これら2本のねじりばね25A,25Bによってベース22とドラム21との間に強い回転止め力を作用させることができる。
【0045】
上記2本のねじりばね25A,25Bは、
図6〜
図7に示すように、上記プレート23に固定された側とは反対側の他端が、それぞれ、自由端として、半径方向の内側に折り曲げられた形状とされて、上述した円筒形状のベース22の軸方向の一端側(紙面左端側)と他端側(紙面右端側)とにそれぞれ外れた位置で、ベース22の円筒部分よりも半径方向の内側に張り出した形に設けられた状態とされている(
図10参照)。そして、上記ねじりばね25A,25Bの折り曲げられた各自由端には、それぞれ、上述したスペーサ24の凹部24Eや圧入溝24D内に差し込まれて設けられる各解除部材27A,27Bの解除片27A1,27B1が回転方向に隣り合った状態にセットされていて、各解除部材27A,27Bが解除操作方向に回転操作されることによって、それぞれ捩り込まれる方向に回転操作されるようになっている(
図11参照)。上記の回転操作によって、ねじりばね25A,25Bのドラム21の内周面に押し付けられていた力が弱められて、ねじりばね25A,25Bによるドラム21の回転止め状態が解除される。
【0046】
ワッシャ26は、
図9に示すように、ベース22の外周部の軸方向の一端側(紙面左端側)に巻かれたねじりばね25Aと可動アーム14との間に軸方向に介在して設けられている。これにより、上記ワッシャ26は、可動アーム14が展開格納の各方向に回転する際にねじりばね25Aに相対移動に伴う摺動摩擦力が掛けられないように保護して、ねじりばね25Aに回転止め力を弱めるような負荷が掛けられたり、可動アーム14の回転がねじりばね25Aとの擦れによって阻害されたりしないようにしている。
【0047】
解除部材27A,27Bは、
図6〜
図7に示すように、それぞれ、金属製の略L字板状の部材によって形成されている。各解除部材27A,27Bは、ドラム21の軸方向の他端側(紙面右側)から、それらのL字の底板部に貫通して空けられた丸孔状の貫通孔27A3,27B3内に軸ピン29が軸方向の他端側(紙面右側)から貫通して差し込まれて、同軸ピン29が更に上述したスペーサ24の貫通孔24Fとプレート23の貫通孔23Dとにも差し込まれて、その先の端部がプレート23にかしめられることにより、ベース22に対して軸ピン29を中心に回転することができるように軸方向に重ねられた状態に組み付けられた状態とされている。上記組み付けによって、軸ピン29の頭部と軸ピン29の先端部が一体にかしめられたプレート23との間に、スペーサ24と両解除部材27A,27Bとが軸方向に挟み込まれて抜け止めされた状態に組み付けられている。
【0048】
各解除部材27A,27Bは、それぞれ、上記L字の底板部から軸方向の一方側(紙面左方側)に垂直に折り曲げられた解除片27A1,27B1を有する。上記のうち、一方側の解除片27B1は、上述したドラム21の円筒内に軸方向の他方側(紙面右側)から通されて、スペーサ24の外周部に形成された圧入溝24Dとベース22の底板部に形成された通し孔22Cとを通って、その先にある前述した軸方向の一方側(紙面左側)に配置されたねじりばね25Aの自由端側の端部に捩り込み方向(回転方向)に隣り合った状態に組み付けられた状態とされている(
図10参照)。また、他方側の解除片27A1は、上述したドラム21の円筒内に軸方向の他方側(紙面右側)から通されて、スペーサ24の外周部に形成された凹部24E内に差し込まれて、同凹部24E内に張り出す前述した軸方向の他方側(紙面右側)に配置されたねじりばね25Bの自由端側の端部に捩り込み方向(回転方向)に隣り合った状態に組み付けられた状態とされている(
図10参照)。
【0049】
上記各解除部材27A,27Bは、それぞれ、互いの間に掛着されたリターンばね28の附勢力によって、常時は、上述したねじりばね25A,25Bの各自由端から離れる方向に回されて、前述したスペーサ24に形成された各係止面24A,24Bに当接した状態に保持された状態とされている(
図10参照)。上記各解除部材27A,27Bは、これらの外周部に形成された各掛部27A2,27B2に跨って掛着された操作ケーブルCAが、
図3で前述した解除レバー3Aの操作によって牽引操作されることにより、一斉にねじりばね25A,25Bの各自由端を捩り込む方向に回転操作されるようになっている(
図11参照)。
【0050】
具体的には、上記操作ケーブルCAは次のような構成となっている。すなわち、操作ケーブルCAは、可撓性を有する管状のアウタケーブルCA1の内部に線状のインナケーブルCA2が挿通された2重のケーブル構造となっている。上記操作ケーブルCAは、上記アウタケーブルCA1の一端が解除部材27Aの掛部27A2に引掛けられて固定され、同アウタケーブルCA1の一端から繰り出されたインナケーブルCA2の一端が解除部材27Bの掛部27B2に引掛けられて固定されている。また、上記操作ケーブルCAは、
図3に示すように、そのアウタケーブルCA1の他端が解除レバー3Aを支えるブラケットBに引掛けられて固定され、同アウタケーブルCA1の他端から引き出されたインナケーブルCA2の他端が解除レバー3Aに引掛けられて固定されている。
【0051】
上記操作ケーブルCAは、このような構成となっていることにより、解除レバー3Aの操作によって他端側でインナケーブルCA2がアウタケーブルCA1から引き出される操作が行われることにより、上述した各解除部材27A,27Bに繋がれた一端側においてインナケーブルCA2がアウタケーブルCA1内に相対的に引き込まれる操作が行われる。その際、インナケーブルCA2は、上記他端側での牽引操作によって、そのアウタケーブルCA1のブラケットBに固定された他端側から一端側までの周長が縮められて湾曲の形が変えられるが、アウタケーブルCA1は、そのブラケットBに固定された他端側から一端側までの周長が変化しない。そのため、上記インナケーブルCA2の周長変化に伴う湾曲形状の変化によって、アウタケーブルCA1が周長を変化させることなく湾曲形状を変化させることとなり、この相対的な動きによって、インナケーブルCA2がアウタケーブルCA1の内部に引き込まれると同時にアウタケーブルCA1が一端側をインナケーブルCA2の一端側に向けて押し出すように操作されるようになっている。
【0052】
なお、仮に、アウタケーブルCA1の一端が固定された解除部材27Aが動かない構成を考えた場合には、解除レバー3Aの操作が行われてもアウタケーブルCA1の両端は動けないため、インナケーブルCA2が解除レバー3Aによって他端側で牽引操作された移動量分だけ一端側で大きく牽引操作されることとなる。
【0053】
以上をまとめると、本実施例の回転止め機構20は、次のような構成となっている。、展開機構10の固定板11(二部材の一方)と可動アーム14(二部材の他方)との相対回転を止める回転止め機構20であって、固定板11に取り付けられるベース22と、可動アーム14に取り付けられるドラム21と、ベース22とドラム21とを相互に軸回転可能な状態に連結する連結構造(プレート23、スペーサ24及び軸ピン29から成る連結構造)と、ベース22に一端が固定されてドラム21の内周面に外周面が押し付けられる摩擦力よりドラム21の回転を止める2本のねじりばね25A,25Bと、を有する。2本のねじりばね25A,25Bは、互いに逆向きに巻かれて、それぞれが自由状態においてベース22に固定された一端を支点に拡径する方向に復元してドラム21の内周面に押し付けられる構成とされている。
【0054】
このように、ベース22に対するドラム21の回転を止める2本のねじりばね25A,25Bが、互いに逆向きに巻かれた構成となっていることにより、ドラム21に対してどちらの回転方向に負荷が掛けられても、常にねじりばね25A,25Bの一方が捩り込まれる方向とは反対方向の負荷を受けて強い回転止め力を発揮できる状態となる。したがって、回転止め機構20を双方向に強い回転止め力を発揮できる構成とすることができる。
【0055】
また、2本のねじりばね25A,25Bは、それらの自由端側となる各他端が、これらを縮径させる方向に捩り込む個別の解除部材27A,27Bに連結されている。各解除部材27A,27Bが、アウタケーブルCA1からインナケーブルCA2が繰り出された2重のケーブル構造を備える操作ケーブルCAのアウタケーブルCA1の一端とインナケーブルCA2の一端とにそれぞれ連結されている。上記操作ケーブルCAが他端側でインナケーブルCA2の繰り出し量が変えられるように操作されることで、各解除部材27A,27Bが一斉に各ねじりばね25A,25Bの他端を捩り込む方向に操作される。
【0056】
このような構成となっていることにより、2本のねじりばね25A,25Bを互いに逆向きに巻いて双方向に強い回転止め力を発揮できる構成としながらも、2重のケーブル構造を備えた操作ケーブルCAを用いることで各ねじりばね25A,25Bの解除操作をひとまとめに簡単に行えるようにすることができる。
【0057】
また、2本のねじりばね25A,25Bの固定端側となる各一端が、ベース22に結合される1つのプレート23(結合部材)に結合されている。このような構成となっていることにより、2本のねじりばね25A,25Bの一端を固定する構造を合理化して、構成全体を簡素かつコンパクトにすることができる。
【0058】
また、回転止め機構20が、シートクッション3の前部に回転による展開格納が行える状態に設けられたオットマン5の回転止めをする機構として構成されている。このような構成となっていることにより、回転止め状態において足乗せとして押下げ方向の負荷を受けたり常時展開方向の附勢力を受けたりして双方向の回転負荷を受けるオットマン5の回転止めを適切に行うことができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「回転止め機構」は、二部材の相対回転を止めるための機構として機能するものであればよく、必ずしも上記実施例で示したような、二部材を相対回転可能に連結する継手装置(回転軸装置)として機能するものでなくてもよい。また、上記「回転止め機構」は、ベースが回転する可動側、ドラムが回転しない固定側に取り付けられるものであってもよい。また、「回転止め機構」は、ベースもドラムもそれぞれ回転する部材に取り付けられるものであってもよい。
【0060】
また、「回転止め機構」は、座席の回転部として、シートバックの背凭れ角度を変化させるリクライナや、リンクの回転運動によりシートの着座位置を昇降させるシートリフタ等の回転部に適用されていてもよい。また、「回転止め機構」を座席の回転部に適用する場合において、座席は、家具の座席の他、乗物の座席、すなわち自動車や鉄道等の車両又は航空機、船舶等の様々な乗物用に供される座席に適用されるものであってもよい。
【0061】
また、2本のねじりばねをそれぞれ縮径させる方向に捩り込む解除部材は、必ずしも一斉に解除操作される必要はなく、個別に順に解除されるようになっていてもよい。また、2本のねじりばねの各一端を固定する結合部材は、ねじりばね毎に個別に設けられていてもよい。