(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は第1実施形態のカード処理装置1の概略構成を示す説明図、
図2はカード処理装置1のカード挿入口2の周辺を
図1におけるA方向から見て要部構成を拡大して概略的に示す説明図である。このカード処理装置1は、上位装置であるATMやCDに実装され、ATMやCDと電気的に接続される。カード処理装置1は、磁気カードCに記録された磁気情報(詳しくは、磁気ストライプに書き込まれた磁気データ)を読み取り、その読み取った磁気情報をATMやCDに送信する。
【0011】
図示するように、カード処理装置1は、筺体1aと、筺体1aの端部に設けられたカード挿入口2と、カード挿入口2から筺体1aの内部に到る搬送経路Cpと、磁気ヘッド3と、ストライプ検知センサー4と、シャッター5と、第1〜第3の搬送ローラー対6a〜6cと、第1〜第3のカード位置センサー8a〜8cと、カード挿入センサー9と、コイルユニット14と、傾斜ユニット15(
図2参照)と、妨害用磁界発生部16と、金属異物検知回路部17と、後述の制御装置200とを有する。カード挿入口2を取り囲む挿入口ボディー部2vは、上位装置の前面パネルFPに組み込まれ、カード挿入口2を開放させると共に、後述のコイルユニット14を収容する。
【0012】
搬送経路Cpは、カード挿入口2から磁気ヘッド3に到るまでのカード搬送経路となる。カード挿入口2は、磁気情報が記憶された磁気カードCが挿入される挿入口であり、磁気ヘッド3は、補助ローラー6dで搬送案内される磁気カードCに記憶された磁気情報を読み取り、読み取った磁気情報を後述の制御装置200に出力する。詳しくは、磁気ヘッド3は、搬送される磁気カードCの磁気ストライプと接する位置に配置され、磁気カードCの磁気ストライプから磁気データを読み込む。この際、磁気ヘッド3は、内蔵するコアとコイルによって磁気ストライプの磁力の変化を検出してそれを電圧の変化に変え、その電圧の変化を内蔵するアンプによって増幅して、制御装置200に出力する。この磁気ヘッド3は、
図1に示すように、後述の磁界発生コイル14cと大きく離れた筐体奥側、即ち搬送経路Cpの経路末端側に位置することから、磁界発生コイル14cが発生させる妨害用磁界の磁力線がこの磁気ヘッド3にまで及ぶことはない。よって、磁気ヘッド3は、搬送されてきた磁気カードCの磁気情報を支障なく読み取る。
【0013】
ストライプ検知センサー4は、例えば磁気ヘッドから構成され、カード挿入口2への磁気カードCの挿入の有無を検出し、その検出結果を制御装置200に出力する。シャッター5は、ストライプ検知センサー4にて磁気カードCが検出されない期間に亘って搬送経路Cpを閉鎖し、ストライプ検知センサー4に磁気カードCの挿入が検出されると、
図1に示す位置に退避して、搬送経路Cpにおける第1の搬送ローラー対6aへの磁気カードCの受渡を許可する。
【0014】
第1〜第3の搬送ローラー対6a〜6cは、それぞれ、搬送経路Cpを挟んで上下一対に設けられており、制御装置200にて駆動制御されるカード搬送用モーター25の駆動力を受けて回転する。第1〜第3の搬送ローラー対6a〜6cは、カード搬送用モーター25の正転駆動により、磁気カードCをカード挿入口2から磁気ヘッド3に向かう往路方向Fに搬送し、カード搬送用モーター25の逆転駆動により、磁気カードCを磁気ヘッド3からカード挿入口2に向かう復路方向Bに搬送する。
【0015】
第1〜第3のカード位置センサー8a〜8cは、例えば、フォトインタラプターであり、搬送経路Cpにおける磁気カードCの位置を検出する。第1のカード位置センサー8aは、磁気カードCに対するデータの読み取りを行う前に磁気カードCを待機させておく読み取り準備位置に配置されていて、磁気カードCが復路方向Bへ搬送されてこの位置に来ると、磁気カードCの後端部を検知する。第2のカード位置センサー8bは、磁気ヘッド3によって磁気カードCに対するデータの読み取りを開始する読み取り開始位置に配置されていて、磁気カードCが往路方向Fへ搬送されてこの位置に来ると、磁気カードCの先端部を検知する。第3のカード位置センサー8cは、磁気ヘッド3による磁気カードCに対するデータの読み取りを終了する読み取り終了位置に配置されていて、磁気カードCが往路方向Fへ搬送されてこの位置に来ると、磁気カードCの先端部を検知する。
【0016】
なお、往路方向Fへ搬送される磁気カードCに対して情報の読み取りを行う際には、読み取り開始位置は、情報の読み取りを開始する読み取り開始位置となり、読み取り終了位置は、情報の読み取りを終了する読み取り終了位置となる。復路方向Bへ搬送される磁気カードCに対して情報の読み取りを行う際には、読み取り開始位置は、情報の読み取りを開始する読み取り開始位置となり、準備位置は、情報の読み取りを終了する読み取り終了位置となる。
【0017】
カード挿入センサー9は、磁気カードCの挿入側端を検知して、磁気カードCがカード挿入口2に挿入されたことを検出するセンサーであり、第1〜第3のカード位置センサー8a〜8cと同様に、フォトインタラプターから構成される。このカード挿入センサー9は、後述の不正対処制御にて用いられる。なお、カード挿入センサー9を、メカニカルなスイッチとして構成してもよい。
【0018】
コイルユニット14は、
図1に示すように、カード挿入口2の近傍に位置し、
図2に示すように、磁界発生コイル14cとコイルホルダー14hとを備える。磁界発生コイル14cは、カード挿入口2から磁気ヘッド3に到る磁気カードCの搬送経路Cpをカード挿入口2の側において取り囲むように巻回されており、この状態でコイルホルダー14hに収容されて、樹脂にて固定されている。この他、コイルユニット14は、コイルホルダー14hの
図2における左右端、即ち、カード挿入口2の左方側および右方側に、回転軸14sを突出して備え、この回転軸14sが、
図1に示すように、搬送経路Cpと重なるようにして、挿入口ボディー部2vに組み込まれている。こうしたコイルユニット14の組込に当たり、回転軸14sは、挿入口ボディー部2vの側の軸支部14jにて軸支される。
【0019】
このように保持されたコイルユニット14は、搬送経路Cpを取り囲んだ磁界発生コイル14cを、搬送経路Cpに沿った鉛直面(
図1における紙面、或いは
図2における紙面と直交する面)において搬送経路Cpに対して傾斜するように揺動可能に保持することになり、コイルユニット14の揺動に伴い磁界発生コイル14cの姿勢は変更される。この関係を回転軸14sと関係付けて説明すると、コイルユニット14は、搬送経路Cpを取り囲んだ磁界発生コイル14cを、上記の鉛直面と交差する回転軸14sにより保持することで、搬送経路Cpに沿った鉛直面において搬送経路Cpに対して傾斜するように揺動可能に保持する。第1実施形態では、カード処理装置1は、コイルユニット14を、
図1に示すように、鉛直面において30度から40度の範囲の揺動角θmで揺動可能に保持する。そして、電源オフの期間、或いはカード挿入待機の間において、カード処理装置1は、コイルユニット14を、
図1のコイル初期姿勢に示すように、コイル法線14chが搬送経路Cpと一致、もしくは平行となるように保持している。
【0020】
傾斜ユニット15は、モーター15aと、減速用のギヤヘッド15bと、エンコーダー15cとを備え、ギヤヘッド15bをコイルユニット14の回転軸14sと直結させている。そして、この傾斜ユニット15は、後述の制御装置200の制御を受けてモーター15aを正逆転駆動することで、コイルユニット14の磁界発生コイル14cを搬送経路Cpに沿った鉛直面において搬送経路Cpに対して傾斜するように揺動させたり傾動させる。また、傾斜ユニット15は、エンコーダー15cからの回転位置情報を得た制御装置200の制御を受けてモーター15aを回転並びに停止することで、磁界発生コイル14cの揺動或いは傾動を停止して、磁界発生コイル14cを停止時点の傾斜姿勢に保持する。こうしたことから、傾斜ユニット15は、後述の制御装置200と共同して、本願における姿勢変更部やコイル姿勢保持部を構成する。
【0021】
図1に示すように、妨害用磁界発生部16と金属異物検知回路部17とは、制御装置200の制御下で駆動するスイッチ21を介して、コイルユニット14(詳しくは磁界発生コイル14c)から延びたリード配線20と接続されている。妨害用磁界発生部16は、発振器16v(
図3参照)を備え、この発振器16vで発振させた周波数に応じた読取妨害用の磁界(妨害用磁界14a)をコイルユニット14の磁界発生コイル14cに発生させる。金属異物検知回路部17は、発振器17v(
図3参照)を備え、この発振器17vで発振させた高周波域に属する一定の周波数の磁界(高周波磁界14b)をコイルユニット14の磁界発生コイル14cに発生させる。なお、妨害用磁界14aと高周波磁界14bは、磁力が相違するものの、磁力線の延び方はさほど相違ないので、図においては、同一軌跡で表している。
【0022】
次に、カード処理装置1における電気的な構成について説明する。
図3はカード処理装置1の電気的な構成を概略的に示すブロック図である。図示するように、カード処理装置1は、制御装置200に、既述した磁気ヘッド3やストライプ検知センサー4、第1〜第3のカード位置センサー8a〜8cを含むカード検知部の他、妨害用磁界発生部16や金属異物検知回路部17、スイッチ21等を接続して備える。制御装置200は、論理演算を実行するCPUやROM、RAMを備えたいわゆるコンピューターとして構成され、カード処理装置1におけるカード搬送用モーター25やシャッター駆動用のシャッターソレノイド5s等を統括制御する。具体的には、制御装置200は、ストライプ検知センサー4のセンサー信号に基づいたシャッター5の駆動制御、第1〜第3のカード位置センサー8a〜8cのセンサー信号に基づいたカード搬送用モーター25の制御によるカード搬送制御や、コイルユニット14と傾斜ユニット15を用いた不正対処制御を行う。また、制御装置200は、通信部210を介してATM等の上位装置HCと接続され、磁気ヘッド3の読み込んだ磁気カードCの磁気データを上位装置HCに送信する。
【0023】
次に、カード処理装置1の制御装置200にて実行される不正対処制御について説明する。
図4は不正対処制御の前半の制御手順を示すフローチャートである。この不正対処制御は、所定時間ごとに繰り返し実行するようにできるほか、磁気カードCでの取引を所望するユーザーを
図1の前面パネルFPの前方側で検知する都度に実行するようにできる。不正対処制御が実行されると、制御装置200は、まず、金属異物検知回路部17を用いた高周波域での一定の周波数(以下、単に高周波数と称する)の高周波磁界14bの発生と、コイルユニット14の傾動とを行う(ステップS100)。高周波磁界14bの発生に際しては、制御装置200は、スイッチ21を金属異物検知回路部17の側に切り替えて、金属異物検知回路部17に磁界発生コイル14cを接続すると共に、金属異物検知回路部17の発振器17vに駆動信号を出力して、この発振器17vにて高周波域の発振を起こす。これにより、コイルユニット14の磁界発生コイル14cは、高周波磁界14bを発生させ、この高周波磁界14bをカード挿入口2の前方側にも延ばす。コイルユニット14の傾動に際しては、制御装置200は、傾斜ユニット15のモーター15aに駆動信号を出力し、例えば、コイルユニット14を、
図1に示すコイル初期姿勢を揺動の中心位置として、揺動の一端側に向けて定速で傾動させた後、この一端側から他端側に向けて定速で傾動させる。これにより、磁界発生コイル14cは、高周波磁界14bを発生しつつ、搬送経路Cpに沿った鉛直面において搬送経路Cpに対して揺動角θm(
図1参照)の範囲で傾動する。
【0024】
ステップS100により、高周波磁界14bを発生させている磁界発生コイル14cを搬送経路Cpに沿った鉛直面において搬送経路Cpに対して傾動させている状況下において、カード挿入口2の外部に不正読取機器が装着されていなければ、磁界発生コイル14cに高周波磁界14bを発生させている発振器17vの発振状況は、定常状態にある。この定常状態は、コイルユニット14の周辺にカード処理装置1が本来有するストライプ検知センサー4やシャッター5といった金属部品を有する磁界減衰材が配設済みであることを想定した状態である。ところが、カード挿入口2の外部に不正読取機器が装着されていると、発振器17vの発振状況は、次のようになる。
図5はカード挿入口2の前方に不正読取機器FSが装着された場合を想定して説明する説明図、
図6は不正読取ヘッドFHの配設位置が異なる不正読取機器FSがカード挿入口2の前方に装着された場合を想定して説明する説明図、
図7はステレオスキマータイプの不正読取機器FSが装着された場合を想定して説明する説明図、
図8はこれら不正読取機器FSが装着された際の発振器17vの発振状況推移を模式的に示す説明図である。
【0025】
図5に示す不正読取機器FSは、不正読取ヘッドFHを前面パネルFPから距離L1だけ隔てて備え、
図6に示す不正読取機器FSは、不正読取ヘッドFHを前面パネルFPから距離L1より大きな距離L2だけ隔てて備える。このように、不正な情報読取を意図する不正行為者が用いる不正読取機器FSは、一律ではなく、往々にして不正読取ヘッドFHの位置が異なる。既存の読取妨害手法では、こうした点についての配慮に欠けるのに対し、第1実施形態のカード処理装置1では、以下に説明するように、不正読取ヘッドFHの位置の相違を考慮した妨害対処が可能となる。
【0026】
図5や
図6に示す不正読取機器FSが有する不正読取ヘッドFHは、金属部品を有する磁界減衰材であることから、高周波磁界14bの磁界に晒されて渦電流を発生させる。不正読取ヘッドFHで発生した渦電流は、不正読取ヘッドFHが晒される高周波磁界14bのエネルギー損失を招き、この損失が起きるタイミングは、不正読取ヘッドFHの位置(距離L1,L2)に依存して定まる。こうしたエネルギー損失により、発振器17vの発振の所定以上の含水が起きて発振が減衰または停止するので、発振器17vにおける発振回路のインピーダンスが変化する。制御装置200は、発振器17vにおけるインピーダンス変化を、ステップS100の実行後から監視し、得られたインピーダンス変化は、渦電流の発生に伴うエネルギー損失のタイミングと合致する。
図8の各図では、こうしたインピーダンス変化を搬送経路Cpに対するコイル角度と関連付けて示されている。なお、
図8において定常状態を直線軌跡で示しているが、これは、ストライプ検知センサー4等がカード挿入口2の周辺に配設済みであることを想定して、規格化した事に起因する。
【0027】
図6の不正読取機器FSは、不正読取ヘッドFHを大きな距離L2だけ前面パネルFPから離して備えるので、コイルユニット14の磁界発生コイル14cが小さな角度θ2で傾くことにより、インピーダンスの減衰が見られる。これに対し、不正読取ヘッドFHを前面パネルFPに近づけて備える
図5の不正読取機器FSでは、コイルユニット14の磁界発生コイル14cが角度θ2より大きな角度θ1で傾いてから、インピーダンスの減衰が見られる。
図8(A)では、距離L2の不正読取ヘッドFHを有する不正読取機器FS(
図6参照)については、角度θ21で減衰が止み角度θ22で減衰が改善するので、その中間値の角度をθ2とした。距離L1の不正読取ヘッドFHを有する不正読取機器FS(
図5参照)について同様である。
【0028】
図7に示すステレオスキマータイプの不正読取機器FSは、カード処理装置1のカード挿入口2に挿入される磁気カードCに対して上下に対向配置した上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを有する。よって、上下の不正読取ヘッドを有するステレオスキマータイプの不正読取機器FSは、これら両読取ヘッドが高周波磁界14bに晒されて発生する渦電流の様子が、
図5や
図6に示す不正読取機器FSと明らかに相違する。
図8(B)と
図8(C)には、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを高周波磁界14bに晒した場合のインピーダンス変化の一例を示している。制御装置200は、
図8に示したインピーダンス変化の各パターンを記憶しているので、高周波磁界14bを発生される金属異物検知回路部17の発振器17vの回路インピーダンス変化を監視することで、不正に装着されている不正読取機器FSが一つの不正読取ヘッドFHを有するタイプか、ステレオスキマータイプのものかを識別できる。なお、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSでありながら、
図8(B)と
図8(C)のようにインピーダンス変化が相違するのは、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdの大きさや配置の相違による。
【0029】
こうした知見に立ち、第1実施形態のカード処理装置1では、制御装置200は、ステップS100に続くステップS110において、発振器17vにおける発振の減衰または停止の有無をインピーダンス変化に基づいて判定する。そして、インピーダンス変化がない、即ち発振器17vの発振状況が定常状態であると否定判定すれば、制御装置200は、何の処理も行うことなく本ルーチンを一旦終了する。その一方、ステップS110にて発振器17vにおける発振の減衰または停止が起きたと肯定判定すると、制御装置200は、観察された発振の減衰または停止がステレオスキマータイプの不正読取機器FSが装着されたことに起因するか否かを判定する(ステップS115)。ここで、肯定判定すると、制御装置200は、後述のステレオスキマー対処処理に移行し、否定判定すると、傾斜ユニット15のモーター15aへの駆動信号の出力を停止して当該モーターを停止し、コイルユニット14における磁界発生コイル14cの傾斜姿勢を保持する(ステップS120)。これにより、コイルユニット14の磁界発生コイル14cは、ステップS110にて発振の減衰または停止を観察した時点での傾斜姿勢に停止する。つまり、
図5に示す不正読取機器FSが装着されていたとすると、コイルユニット14の磁界発生コイル14cは、図示する角度θ1だけ傾斜して停止する。
図6に示す不正読取機器FSが装着されていれば、コイルユニット14の磁界発生コイル14cは、図示する角度θ2だけ傾斜して停止する。これにより、傾斜姿勢が保持された磁界発生コイル14cは、不正読取機器FSの不正読取ヘッドFHの位置が相違しても、不正読取ヘッドFHを最大磁界強度で磁界に晒すことができる向きを向くことになる。
【0030】
次いで、制御装置200は、妨害用磁界発生部16により磁界発生コイル14cから妨害用磁界14aを発生させる(ステップS130)。
図9は
図6に示す不正読取機器FSが装着されていた場合の妨害用磁界14aの発生の様子を示す説明図である。図示するように、制御装置200は、妨害用磁界14aの発生に当たり、スイッチ21を妨害用磁界発生部16の側に切り替えて、磁界発生コイル14cを妨害用磁界発生部16に接続し、この妨害用磁界発生部16により磁界発生コイル14cから妨害用磁界14aを発生させる。こうすることで、それまで磁界発生コイル14cから発生されていた磁界が、高周波磁界14bから妨害用磁界14aに切り替わる。
図5に示す不正読取機器FSが装着されていた場合も同様である。これにより、磁界発生コイル14cは、不正読取機器FSの不正読取ヘッドFHの位置が
図5と
図6に示すように相違しても、不正読取ヘッドFHを最大磁界強度で妨害用磁界14aに晒すことになる。この場合、制御装置200は、不正読取ヘッドFHにて不正な情報読取がなされると想定される時間に亘って、磁界発生コイル14cから継続して妨害用磁界14aを発生させる。こうして妨害用磁界14aを発生させるに当たり、妨害用磁界14aの周波数パターンや波形については、既存手法と同じく、正弦波波形や矩形等とできる。
【0031】
次いで、制御装置200は、不正読取機器FSが装着されたという不正行為があった旨を上位装置HCに報告(送信)して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。なお、上記した不正行為対処制御は、不正読取機器FSが装着されただけで磁気カードCの挿入が行われていない場合にも、磁気カードCが実際に挿入された場合にも実行される。前者の場合には、ステップS140では、不正読取機器FSの装着検知の旨の報告に止め、後者の場合には、不正読取機器FSの装着検知の旨の報告に加え、不正読取機器FSが装着された上で実際に磁気カードCがカード挿入口2に挿入されたために不正読取の行為が実際になされた旨の報告をするようにしてもよい。
【0032】
次に、ステップS110にて観察された発振の減衰または停止がステレオスキマータイプの不正読取機器FSが装着されたことに起因すると肯定判定した場合について説明する。
図10はステレオスキマータイプの不正読取機器FSに対する不正対処制御の後半の制御手順を示すフローチャートである。図示するように、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSへの対処を図るに当たっても、制御装置200は、まず、傾斜ユニット15のモーター15aへの駆動信号の出力を停止して当該モーターを停止し、コイルユニット14における磁界発生コイル14cの傾斜姿勢を保持する(ステップS200)。これにより、コイルユニット14の磁界発生コイル14cは、ステップS110にて発振の減衰または停止を観察した時点での傾斜姿勢に停止して、
図7に示す不正読取機器FSが装着されていた場合の角度θ3(
図8(A)、
図8(B)参照)で傾斜して停止する。これにより、傾斜姿勢が保持された磁界発生コイル14cは、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdの両不正読取ヘッド、もしくは、少なくとも一方の不正読取ヘッドを最大磁界強度で妨害用磁界14aに晒すことができる向きを向くことになる。また、傾斜姿勢が保持された磁界発生コイル14cは、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを、搬送経路Cpに対して磁力線の延びる方向が傾斜した妨害用磁界14aに晒す。
【0033】
次いで、制御装置200は、妨害用磁界発生部16により磁界発生コイル14cから妨害用磁界14aを発生させる(ステップS210)。
図11は
図7に示すステレオスキマータイプの不正読取機器FSが装着されていた場合の妨害用磁界14aの発生の様子を示す説明図である。図示するように、制御装置200は、妨害用磁界14aの発生に当たり、スイッチ21を妨害用磁界発生部16の側に切り替えて、磁界発生コイル14cを妨害用磁界発生部16に接続し、この妨害用磁界発生部16により磁界発生コイル14cから妨害用磁界14aを発生させる。こうすることで、それまで磁界発生コイル14cから発生されていた磁界が、高周波磁界14bから妨害用磁界14aに切り替わる。これにより、磁界発生コイル14cは、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdの両不正読取ヘッド、もしくは、少なくとも一方の不正読取ヘッドを最大磁界強度で妨害用磁界14aに晒すことになる。
【0034】
次いで、制御装置200は、カード挿入センサー9の出力に基づいて、磁気カードCがカード挿入口2に挿入されたか否かを判定する(ステップS220)。ここで、磁気カードCの挿入がないと否定判定すると、制御装置200は、上位装置HCに不正行為があった旨の報告をして(ステップS240)、本ルーチンを終了する。ステップS220での否定判定は、
図4のステップS110にて発振の減衰または停止を観察した時点から所定時間に亘りカード挿入センサー9の出力がオフのままであると、下される。この場合の所定時間は、不正読取機器FSへの磁気カードCの挿入に伴い、その挿入された磁気カードCが当然にカード処理装置1のカード挿入口2に到達すると予想される時間として規定されている。そして、ステップS220の否定判定に続くステップS240での不正行為報告は、不正読取機器FSの装着が検知された旨の報告となる。
【0035】
一方、ステップS220にてカード挿入があったと肯定判定すると、制御装置200は、それまで
図11の角度θ3で傾斜していたコイルユニット14の磁界発生コイル14cを、回転軸14sを中心にして揺動させて傾斜姿勢を変更する(ステップS230)。
図12はカード挿入があったと肯定判定した場合における不正読取機器FSの読取ヘッドと磁気カードCとの関係を妨害用磁界14aと合わせて示す説明図、
図13は磁界発生コイル14cの傾斜姿勢が変更された状態での不正読取機器FSの読取ヘッドと磁気カードCとの関係を妨害用磁界14aと合わせて示す説明図である。
【0036】
図12に示すように、カード挿入口2へのカード挿入があると、その挿入された磁気カードCの挿入端側たるプリアンブルゾーンは、既に不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdを通過している。よって、不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdは、プリアンブルゾーンの磁気情報を読込済みであるが、この読込は、最大磁界強度で妨害用磁界14aに両不正読取ヘッドが晒された状態でなされる。磁気カードCは、
図12に示す状態から更にカード挿入口2の奥に挿入されることになる。そうなると、
図13に示すように、不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdは、角度θ3から角度θ4に傾斜姿勢を変えた磁界発生コイル14cが発生する妨害用磁界14aに晒されることになり、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdの両不正読取ヘッドが受ける磁界強度は、磁気カードCがカード挿入口2に挿入されまでの磁界強度と変わることになる。傾斜姿勢の変更(ステップS230)に先立つステップS210で妨害用磁界14aを発生させるに当たっては、妨害用磁界発生後のステップS230で磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の揺動変更がなされるので、既存手法と同じく、正弦波波形や矩形等とできる。
【0037】
ステップS230に続き、制御装置200は、不正読取機器FSが装着されたという不正行為があった旨を上位装置HCに報告(送信)して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。ステップS230に続くステップS240での不正報告は、不正読取機器FSが装着された上で実際に磁気カードCがカード挿入口2に挿入されたために不正読取の行為が実際になされた旨の報告となる。
【0038】
以上説明した構成を備える第1実施形態のカード処理装置1によれば、次の効果が得られる。第1実施形態のカード処理装置1は、搬送経路Cpを取り囲むコイルユニット14の磁界発生コイル14cから高周波磁界14bを発生させる(ステップS100;
図5〜
図7)。その上で、第1実施形態のカード処理装置1は、高周波磁界14bを発生させている磁界発生コイル14cを、搬送経路Cpに沿った鉛直面において搬送経路Cpに対して傾動させる(ステップS100;
図5〜
図7)。このように高周波磁界14bを発生させている磁界発生コイル14cを傾動させている状況下において、カード挿入口2の外部に不正読取機器が装着されていなければ、磁界発生コイル14cに高周波磁界14bを発生させている発振器17v(
図3)の発振状況は、コイルユニット14の周辺にストライプ検知センサー4やシャッター5といった金属部品を有する磁界減衰材が配設済みであることを想定した定常状態にある。
【0039】
ところが、カード挿入口2の外部に
図5〜
図7に示す不正読取機器FSが装着されていると、金属部品を有する磁界減衰材である不正読取ヘッドFHや、上側不正読取ヘッドFHuおよび下側不正読取ヘッドFHdは、高周波磁界14bに晒されて渦電流を発生させるので、発振器17v(
図3)の発振状況に影響を及ぼす。渦電流による影響は、高周波磁界14bにおいて延びる磁力線と不正読取ヘッドFH、或いは、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとの干渉の状態に応じて変化するので、不正読取ヘッドFHの位置が異なっていたり、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとが搬送経路Cpを挟んで対向配置していれば、渦電流による影響の現れ方も相違する。
【0040】
こうした事象に着目し、第1実施形態のカード処理装置1は、発振器17v(
図3)の発振状況の推移に合致したインピーダンス変化を監視する(ステップS110;
図8)。そして、発振器17v(
図3)の発振の減衰または停止をもたらすインピーダンス変化が不正読取ヘッドFHの位置が異なる事に起因していれば(
図8(A))、発振器17v(
図3)の発振の減衰または停止を検出した時点で、磁界発生コイル14cの傾動を停止して、この磁界発生コイル14cを不正読取ヘッドFHの位置に応じた傾斜姿勢に保持する(ステップS120;
図5〜
図6)。こうした傾斜姿勢保持により、第1実施形態のカード処理装置1は、磁界発生コイル14cを、不正読取機器FSの不正読取ヘッドFHの位置が相違しても、不正読取ヘッドFHを最大磁界強度で磁界に晒すことができる向きに向かせる。その上で、第1実施形態のカード処理装置1は、傾斜姿勢の保持済みの磁界発生コイル14cから妨害用磁界14aを発生させる(ステップS130)。この結果、第1実施形態のカード処理装置1によれば、不正読取ヘッドFHをその配設位置に拘わらず最大磁界強度で妨害用磁界14aに晒すことができるので(
図5〜
図6)、不正読取ヘッドFHを一つしか備えない不正読取機器FSに対しての情報読取の妨害の効果を高めると共に、不正読取ヘッドFHの配設位置が相違する不正読取機器FSに対して、高い汎用性で情報読取の妨害効果を確保できる。
【0041】
第1実施形態のカード処理装置1は、発振器17v(
図3)の発振の減衰または停止をもたらすインピーダンス変化が上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとが対向配置されていることに起因していれば(
図8(B)、
図8(C))、発振器17v(
図3)の発振の減衰または停止を検出した時点で、磁界発生コイル14cの傾動を停止して、この磁界発生コイル14cを、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを対向して備えるステレオスキマータイプの不正読取機器FSに対する傾斜姿勢に保持する(ステップS200;
図11)。こうした傾斜姿勢保持とその後の妨害用磁界14aの発生により、第1実施形態のカード処理装置1は、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdの両不正読取ヘッド、もしくは、少なくとも一方の不正読取ヘッドを、搬送経路Cpに対して磁力線の延びる方向が傾斜した妨害用磁界14aに最大磁界強度で晒す。
【0042】
これに加え、第1実施形態のカード処理装置1は、妨害用磁界14aを発生させている磁界発生コイル14cを、回転軸14sを中心にして揺動させて傾斜姿勢を変更するので(ステップS230;
図13)、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdの両不正読取ヘッドを、傾斜姿勢を変えた磁界発生コイル14cが発生する妨害用磁界14aに晒すことで、両不正読取ヘッドが受ける磁界強度に変化を起こす。このため、妨害用磁界14aによる妨害作用が上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとで相違するようにすることが可能となるので、妨害用磁界による妨害作用を上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとで相殺し難くできる。この結果、第1実施形態のカード処理装置1によれば、ステレオスキマーの形態の不正読取機器FSがカード挿入口2の外部に装着されても、この不正読取機器FSによる不正な磁気情報の読み取りを防止できる。
【0043】
第1実施形態のカード処理装置1は、妨害用磁界14aを発生している磁界発生コイル14cを、カード挿入センサー9がカード挿入口2へのカード挿入を検出したことを契機に、搬送経路Cpに対して揺動し、磁界発生コイル14cの傾斜姿勢を変えて磁界強度に変化を起こす。よって、次の利点がある。ステレオスキマータイプの不正読取機器FSに誤って磁気カードCが挿入されて、その磁気カードCがカード挿入口2に挿入された時点では、磁気カードCの挿入端側たるプリアンブルゾーンの磁気情報は、既に不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdにて読込済みであり、この読込は、最大磁界強度で妨害用磁界14aに両不正読取ヘッドが晒された状態でなされる。よって、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSは、プリアンブルゾーンの磁気情報読取に伴う磁気による読取妨害の相殺を、最大磁界強度の妨害用磁界14aで行う。磁気カードCは、
図12に示す状態から更にカード挿入口2の奥に挿入されることになるので、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報の上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとによる情報読込は、カード挿入検出を契機にした磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の変更に伴って磁界強度が変化した妨害用磁界14aの読取妨害の相殺を伴ってなされる(
図13参照)。そうすると、プリアンブルゾーンの磁気情報読取に伴う読取妨害の相殺と、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報読取に伴う読取妨害の相殺とは、異なる磁界強度での相殺となるので、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報読取の正確性を狂わすことができ、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとによる情報読込の情報読取確度を低下させることができる。このことは、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSによる情報読取の妨害を図る上で、有益である。
【0044】
第1実施形態のカード処理装置1は、磁界発生コイル14cをコイルホルダー14hに収容し、磁界発生コイル14cを、搬送経路Cpに沿った鉛直面と交差する回転軸14sにてコイルホルダー14hごと揺動可能に保持し、傾斜ユニット15にて揺動させる。よって、第1実施形態のカード処理装置1によれば、磁界発生コイル14cを、揺動角θmの範囲で、確実、且つ、簡便に任意の傾斜姿勢に揺動保持できる。
【0045】
次に、他の実施形態のカード処理装置1について説明する。
図14はステレオスキマータイプの不正読取機器FSに対する第2実施形態のカード処理装置1Aでの不正対処制御の制御手順を示すフローチャートである。
【0046】
第2実施形態のカード処理装置1Aでは、第1実施形態と同様、コイルユニット14における磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の保持(ステップS200)と磁界発生コイル14cからの妨害用磁界14aの発生(ステップS210)とを行い、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを、搬送経路Cpに対して磁力線の延びる方向が傾斜した妨害用磁界14aに最大磁界強度で晒す(
図11参照)。
【0047】
次いで、制御装置200は、磁気カードCがカード挿入口2に挿入されたか否かを判定し(ステップS220)、カード挿入があったと肯定判定すると、それまで
図11の角度θ3で傾斜していたコイルユニット14の磁界発生コイル14cを、回転軸14sを中心にして繰り返し揺動させて傾斜姿勢を継続して変更する(ステップS230)。
図15は磁界発生コイル14cの傾斜姿勢を継続して揺動変更する状態での不正読取機器FSの読取ヘッドと磁気カードCとの関係を妨害用磁界14aと合わせて示す説明図である。
図15に示すように、ステップS230では、磁界発生コイル14cは、揺動角θmの範囲に含まれる角度θ5で、揺動を繰り返すので、不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdを、磁界発生コイル14cの傾斜角度の繰り返しの変更により、磁界強度が繰り返し変更されるようにして妨害用磁界14aに晒す。
図16は磁界発生コイル14cを繰り返し揺動させる際の第1の揺動パターンを示す説明図である。図示するように、磁界発生コイル14cの傾斜角度を正弦波の波形に倣って一定周期(定速)で繰り返し変更したり(
図16(A))、磁界発生コイル14cの傾斜角度を異なる角度変更速度で変えながら繰り返し変更する(
図16(B))。こうして傾斜角度の継続変更を行った後、不正行為があった旨を上位装置HCに報告(送信)して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。
【0048】
以上説明した構成を備える第2実施形態のカード処理装置1Aは、妨害用磁界14aを発生している磁界発生コイル14cを、カード挿入センサー9がカード挿入口2へのカード挿入を検出したことを契機に、搬送経路Cpに対して繰り返し揺動して、磁界強度が繰り返し変化するように、妨害用磁界14aに不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを晒す。よって、第2実施形態のカード処理装置1Aによれば、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報読取に伴う読取妨害の相殺を繰り返し異なる磁界強度での相殺とするので、データゾーンの磁気情報読取の正確性をより確実に狂わすことができ、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとによる情報読込の情報読取確度をより一層低下させることができる。こうしたことから、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSによる情報読取の妨害の実効性をより高めることができる。しかも、
図16に示すように、磁界発生コイル14cの傾斜角度を周期を変えながら繰り返し変更すれば(
図16(B))、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSによる情報読取の妨害の実効性は、更に高まる。なお、磁界発生コイル14cを繰り返し揺動するに当たり(
図15参照)、揺動角度θ5についても、繰り返し広狭変更するようにしてもよい。
【0049】
図17はステレオスキマータイプの不正読取機器FSに対する第3実施形態での不正対処制御の制御手順を示すフローチャートである。第3実施形態では、第1実施形態と同様、コイルユニット14における磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の保持し(ステップS200)、これに続くステップS210での磁界発生コイル14cからの妨害用磁界14aの発生に当たり、発振器16v(
図3参照)での磁界発生のための発振を、磁界の強度または磁界発生周波数の少なくとも一方が異なるようにする。
図18は磁界強度と磁界発生周波数とインターバルとを一定とした磁界発生第1パターンを示す説明図、
図19は磁界強度と磁界発生周波数とを一定としインターバルを変更した磁界発生第2パターンを示す説明図、
図20は磁界発生周波数を一定とし磁界強度と波数およびインターバルを変更した磁界発生第3パターンを示す説明図、
図21はインターバルを一定とし磁界強度と磁界発生周波数と変更した磁界発生第4パターンを示す説明図である。第3実施形態では、
図18〜
図21に示すいずれかの磁界発生パターンにて、磁界発生コイル14cから妨害用磁界14aを発生させ、これら磁界発生パターンの妨害用磁界14aに、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを最大磁界強度で晒す(
図11参照)。これにより、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとは、磁界発生パターンに従って磁界強度や磁界発生周波数が種々変更する妨害用磁界14aに、異なる最大磁界強度で晒されることになる。その後は、第1実施形態と同様に、カード挿入の有無(ステップS220)に応じた磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の変更(ステップS230)、不正行為報告(ステップS240)を行う。なお、ステップS230での磁界発生コイル14cの傾斜姿勢変更を、第2実施形態と同様に、継続して変更するようにしてもよい。
【0050】
以上説明した構成を備える第3実施形態では、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとを、磁界強度や磁界発生周波数が種々変更する妨害用磁界14aに晒す。よって、第3実施形態のカード処理装置によっても、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報読取に伴う読取妨害の相殺を繰り返し異なる磁界強度での相殺とするので、データゾーンの磁気情報読取の正確性をより確実に狂わすことができ、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとによる情報読込の情報読取確度をより一層低下させることができる。こうしたことから、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSによる情報読取の妨害の実効性をより高めることができる。なお、磁界発生コイル14cの発生パターン変更は、不正読取ヘッドFHを一つしか持たない不正読取機器FS(
図5、
図6参照)に対しても行うようにしてもよい。
【0051】
図22はステレオスキマータイプの不正読取機器FSに対する第4実施形態での不正対処制御の制御手順を示すフローチャートである。第4実施形態は、磁界発生コイル14cから発生させる妨害用磁界14aの発生パターンを、カード挿入センサー9によるカード挿入検出前後で異なるものとする点に特徴がある。この第4実施形態では、第1実施形態と同様、コイルユニット14における磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の保持し(ステップS200)、これに続くステップS210での磁界発生コイル14cからの妨害用磁界14aの発生を、初期パターン、例えば、
図18に示した初期パターンに従って行う。その後は、第1実施形態と同様に、カード挿入の有無を判定し(ステップS220)、カード挿入があったと肯定判定すると、第4実施形態のカード処理装置は、磁界発生コイル14cから発生させていた妨害用磁界14aの発生パターンを、ステップS210での初期パターンとは異なるパターン、例えば
図20や
図21に示すパターンに変更し(ステップS225)、磁界発生コイル14cの傾斜姿勢の変更(ステップS230)、不正行為報告(ステップS240)を行う。なお、ステップS230での磁界発生コイル14cの傾斜姿勢変更を、第2実施形態と同様に、継続して変更するようにしてもよい。
【0052】
以上説明した構成を備える第4実施形態では、磁界発生コイル14cから発生させた妨害用磁界14aの発生パターンを、カード挿入センサー9がカード挿入口2へのカード挿入を検出したことを契機に、切り替える。よって、次の利点がある。ステレオスキマータイプの不正読取機器FSに誤って磁気カードCが挿入されて、その磁気カードCがカード挿入口2に挿入された時点では、磁気カードCの挿入端側たるプリアンブルゾーンの磁気情報は、既に不正読取機器FSの上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdにて読込済みであり、この読込は、初期パターンで発生した妨害用磁界14aに両不正読取ヘッドが晒された状態でなされる。磁気カードCがカード挿入口2に挿入された後では、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報の上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとによる情報読込は、カード挿入検出を契機に発生パターンが切り替わった妨害用磁界14aの読取妨害の相殺を伴ってなされる。そうすると、プリアンブルゾーンの磁気情報読取に伴う読取妨害の相殺と、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報読取に伴う読取妨害の相殺とは、異なるパターンで発生した妨害用磁界14aでの相殺となるので、プリアンブルゾーンに続くデータゾーンの磁気情報読取の正確性をより確実に低下させることができ、上側不正読取ヘッドFHuと下側不正読取ヘッドFHdとによる情報読込の情報読取確度をより一層、低下させることができる。このことは、ステレオスキマータイプの不正読取機器FSによる情報読取の妨害を図る上で、有益である。
【0053】
図23は第4実施形態のコイルユニット14Aの概略構成を示す説明図である。図示するように、このコイルユニット14Aは、軸支部14jに軸支された一方の回転軸14sをボイスコイルユニット30に連結させている。ボイスコイルユニット30は、回転軸14sと接続された回転プレート31と、当該プレート端部に埋設されたボイスコイル32と、金属ヨーク34とを備える。金属ヨーク34は、回転プレート31を取り囲むよう形成され、ボイスコイル32を、対向する磁石33の間に位置させる。ボイスコイルユニット30は、制御装置200の制御を受けてボイスコイル32に電流を流し、その電流値を変更することで、コイルユニット14の磁界発生コイル14cの傾斜角度を変更する。なお、回転軸14sの回転角度、即ち磁界発生コイル14cの傾斜角度は図示しないエンコーダーにて検出される。この第4実施形態のコイルユニット14Aを、コイルユニット14に代えて用いることで、不正読取機器FSに対する既述した不正対処効果を得ることができる。
【0054】
図24は第5実施形態のカード処理装置1Bの概略構成をA方向から見たカード挿入口2の要部構成と共に概略的に示す説明図である。このカード処理装置1Bは、コイルユニット14Bを、先の実施形態におけるコイルユニット14と同様、カード挿入口2の側に備え、コイルユニット14Bを挿入口ボディー部2vに固定された保持バネ19aにて搬送経路Cpの上側および下側で保持し、コイルユニット14Bを搬送経路Cpに対して傾動可能とする。コイルユニット14Bは、磁界発生コイル14cをコイルホルダー14hに収容すると共に、磁界発生コイル14cの両側に、傾動駆動用コイル19bもコイルホルダー14hに収容する。傾動駆動用コイル19bは、カード挿入口2に対して位置決め固定された磁石19cを取り囲んでおり、制御装置200からの通電を受けてコイル傾動用の磁界を発生する。よって、傾動駆動用コイル19bへの通電を制御することで、コイルユニット14Bの磁界発生コイル14cを、既述したコイルユニット14と同様に、搬送経路Cpに対して傾斜角度が異なるように揺動させる。この第5実施形態のコイルユニット14Bを、コイルユニット14に代えて用いることで、不正読取機器FSに対する既述した不正対処効果を得ることができる。また、第5実施形態のコイルユニット14Bによれば、モーター15aと云った駆動機器が不要となるので、軽量化や小型化が可能となる。なお、傾動駆動用コイル19bと磁石19cについては、カード挿入口2の一方の側にだけ配設するようにしてもよい。
【0055】
図25は第6実施形態のコイルユニット14Cの構成を概略的に示す説明図である。このコイルユニット14Cを、先の実施形態におけるコイルユニット14Bと同様、磁界発生コイル14cと傾動駆動用コイル19bとをコイルホルダー14hに収容する。そして、コイルユニット14Cは、磁石19cを取り囲む傾動駆動用コイル19bの外側で、保持プレート20aにて保持される。保持プレート20aは、可撓性を有する薄板であり、挿入口ボディー部2vに固定された状態で捻れることで、その捻れの軸を中心にコイルユニット14Cを揺動可能に保持する。よって、コイルユニット14Cにあっても、傾動駆動用コイル19bへの通電を制御することで、コイルユニット14Cの磁界発生コイル14cを、既述したコイルユニット14と同様に、搬送経路Cpに対して傾斜角度が異なるように揺動させる。この第6実施形態のコイルユニット14Cを、コイルユニット14に代えて用いることで、不正読取機器FSに対する既述した不正対処効果を得ることができる。また、第6実施形態のコイルユニット14Cによっても、モーター15aと云った駆動機器が不要となるので、軽量化や小型化が可能となる。なお、傾動駆動用コイル19bと磁石19cについては、カード挿入口2の一方の側にだけ配設するようにしてもよい。
【0056】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0057】
上記の各実施形態では、一つの磁界発生コイル14cから初期磁界と妨害用磁界を発生させたが、同心に巻かれた二つのコイルのうちの一方のコイルを初期磁界発生用のコイルとし、他方のコイルを妨害用磁界の発生用コイルとしてもよい。
【0058】
上記の各実施形態では、磁界発生コイル14cを搬送経路Cpを取り囲むようカード挿入口2の近傍に形成したが、カード挿入口2の近傍において磁界発生コイル14cを搬送経路Cpを取り囲むことなく搬送経路Cpに対して傾斜角度が異なるようにコイル姿勢を変更できるように形成してもよい。また、妨害用磁界発生部16と金属異物検知回路部17とを異なる機器構成としたが、妨害用磁界14aの発生用の第1発振器と高周波磁界14bの発生用の第2発振器とを有する磁界発生部としてもよく、この磁界発生部において、第1発振器と第2発振器とを切り替えるようにしてもよい。