特許第6377543号(P6377543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377543
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】磁石埋込型回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501K
   H02K1/27 501M
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-13993(P2015-13993)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-105679(P2016-105679A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-236149(P2014-236149)
(32)【優先日】2014年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】笠井 信吾
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−330060(JP,A)
【文献】 特開2001−086675(JP,A)
【文献】 特開2010−279215(JP,A)
【文献】 特開平10−174323(JP,A)
【文献】 特開2011−091911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2組の永久磁石が内部に埋め込まれたロータコアを有する回転子と、
前記回転子に対して対向配置される固定子と、
を有し、
前記2組の永久磁石の各々は、前記回転子の周方向に沿って隣接配置された一対の同極の磁石からなり、
前記ロータコアには、前記同極の磁石を収容する磁石嵌め込み穴が前記同極の磁石毎に形成されており、
前記ロータコアにおいて、互いに同じ組の前記同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する前記磁石嵌め込み穴同士の間の部分を同極間部分、互いに異なる組の前記同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する前記磁石嵌め込み穴同士の間の部分を異極間部分とすると、前記回転子の周方向において、前記同極間部分の厚みは、前記異極間部分の厚みよりも薄く、
前記磁石嵌め込み穴の各々は、前記回転子の周方向において前記同極の磁石の両側に空隙が形成されるように前記同極の磁石を収容しており、
前記回転子は一方向に回転し、
前記一対の同極の磁石のうち、前記回転子の回転方向の下流側に位置する方は、前記回転子の回転方向の上流側に位置する方よりも、前記回転子の周方向に沿った長さが短いことを特徴とする磁石埋込型回転電機。
【請求項2】
前記同極の磁石の各々は、前記固定子に対向する面が、前記固定子側に凸の湾曲面にされていることを特徴とする請求項1に記載の磁石埋込型回転電機。
【請求項3】
前記一対の同極の磁石における前記ロータコアの中心に対向する面同士の角度が90°以上180°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁石埋込型回転電機。
【請求項4】
前記磁石嵌め込み穴の各々は、前記回転子の周方向において前記同極の磁石の両側に空隙が形成されるように前記同極の磁石を収容しており、
異なる組の前記同極の磁石に隣接する側の空隙が、同じ組の前記同極の磁石に隣接する側の空隙よりも広くなるように、前記磁石嵌め込み穴の各々に前記同極の磁石が収容されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の磁石埋込型回転電機。
【請求項5】
前記回転子の周方向において、前記同極の磁石の重心位置が、異なる組の前記同極の磁石の方に寄っていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の磁石埋込型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石が内部に埋め込まれたロータコアを有する回転子と、当該回転子に対して対向配置される固定子とを備える磁石埋込型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、回転電機とは、電動機、発電機、電動機兼発電機の総称のことである。本発明を電動機として利用した場合、その電動機はIPM(Interior Permanent Magnet)モータと呼ばれる。これに対して、永久磁石がロータコアの表面に貼り付けられた回転子を有する電動機はSPM(Surface Permanent Magnet)モータと呼ばれる。また、IPMモータとSPMモータとを合わせてPMモータと呼ばれる。
【0003】
IPMモータではなくSPMモータに関する発明ではあるが、特許文献1には、永久磁石の表面側に保持環を配置した回転電機が開示されている。
【0004】
回転子が回転すると、ロータコアの表面に貼り付けられた永久磁石に遠心力が作用する。遠心力は角速度の2乗に比例するため、回転子が高速で回転する回転電機においては、永久磁石が飛散するという問題が生じる。そこで、特許文献1では、永久磁石の表面側に保持環を配置することで、永久磁石をロータコアに強固に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−149572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、永久磁石に作用する遠心力を小さくするために、ロータコアのサイズを小さくするという設計方法がある。この設計方法においては、以下の理由により、永久磁石をロータコアに埋め込むIPM構造よりも、永久磁石をロータコアの表面に貼り付けるSPM構造を採用する場合が多かった。
(1)ロータコアのサイズが小さいため、永久磁石をロータコアに埋め込むIPM構造では、従来の4極の回転電機のように、一対の磁石をロータコアの外周側に向かって互いの間隔が広がるように配置するのが難しい。
(2)IPM構造では、遠心力に耐える強度をロータコアに持たせるために、ロータコアの外周と磁石との間の部分である磁束短絡路のロータコアの半径方向における幅を広くする必要がある。しかし、磁束短絡路の幅を広くすると、ロータコア内を流れる短絡磁束が増加するので、固定子と回転子との間の空隙部において磁束が減少し、トルクが低下する。
(3)極数が多いほど出力を大きくできるが、極数を多くするほど駆動周波数が大きくなり、巻線に生じる誘起電圧が大きくなる。
【0007】
しかしながら、SPM構造は、永久磁石をロータコアの表面に貼り付けているので、永久磁石をロータコアに埋め込むIPM構造に比べて、渦電流損失が大きい。また、IPM構造ではリラクタンストルクを利用することができるが、SPM構造ではリラクタンストルクを利用することができない。
【0008】
本発明の目的は、サイズの小さなロータコアへの永久磁石の配置が容易で、且つ、誘起電圧を抑えることができるとともに、トルクの低下を最小限に抑えることが可能な磁石埋込型回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2組の永久磁石が内部に埋め込まれたロータコアを有する回転子と、前記回転子に対して対向配置される固定子と、を有し、前記2組の永久磁石の各々は、前記回転子の周方向に沿って隣接配置された一対の同極の磁石からなり、前記ロータコアには、前記同極の磁石を収容する磁石嵌め込み穴が前記同極の磁石毎に形成されており、前記ロータコアにおいて、互いに同じ組の前記同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する前記磁石嵌め込み穴同士の間の部分を同極間部分、互いに異なる組の前記同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する前記磁石嵌め込み穴同士の間の部分を異極間部分とすると、前記回転子の周方向において、前記同極間部分の厚みは、前記異極間部分の厚みよりも薄く、前記磁石嵌め込み穴の各々は、前記回転子の周方向において前記同極の磁石の両側に空隙が形成されるように前記同極の磁石を収容しており、前記回転子は一方向に回転し、前記一対の同極の磁石のうち、前記回転子の回転方向の下流側に位置する方は、前記回転子の回転方向の上流側に位置する方よりも、前記回転子の周方向に沿った長さが短いことを特徴とする。


【発明の効果】
【0010】
本発明によると、永久磁石をロータコアに埋め込むIPM構造とすることで、永久磁石をロータコアの表面に貼り付けるSPM構造に比べて、永久磁石がロータコアの内側に入るので、渦電流損失を低減させることができる。また、永久磁石をロータコアに埋め込むIPM構造とすることで、リラクタンストルクを利用することができる。また、2組の永久磁石をロータコアに埋め込む、即ち、2極の回転電機にすることで、駆動周波数が下がるので、誘起電圧を小さくすることができる。また、一対の同極の磁石を回転子の周方向に沿って隣接配置することで、従来の4極の回転電機のように、一対の同極の磁石をロータコアの外周側に向かって互いの間隔が広がるように配置するのに比べて、サイズが小さいロータコアに永久磁石を配置しやすくすることができる。
【0011】
このとき、ロータコアに強度を持たせるために、ロータコアの外周面と磁石嵌め込み穴との間の部分である磁束短絡路の、ロータコアの半径方向における幅を広くすると、ロータコア内を流れる短絡磁束が増加する。その結果、固定子と回転子との間の空隙部において磁束が減少し、トルクが低下する。そこで、ロータコアにおいて、互いに同じ組の同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴同士の間の部分を同極間部分、互いに異なる組の同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴同士の間の部分を異極間部分とすると、回転子の周方向において、同極間部分の厚みを、異極間部分の厚みよりも薄くする。
【0012】
このような構成において、同極の磁石に作用する遠心力を、ロータコアの中心から異極間部分を通る方向に平行な成分と、ロータコアの中心から同極間部分を通る方向に平行な成分とに分解すると、ロータコアの中心から同極間部分を通る方向に平行な成分は、ロータコアの中心から異極間部分を通る方向に平行な成分よりも大きい。よって、ロータコアにおける磁石嵌め込み穴の周囲の部分で同極の磁石の遠心力を受け止めた際に、磁石嵌め込み穴の異極間部分側に作用する曲げ応力が大きくなるので、磁石嵌め込み穴の異極間部分側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力が大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴の異極間部分側に応力が集中するが、異極間部分は厚みが厚いので、この応力を吸収することができる。また、磁石嵌め込み穴の異極間部分側に応力が集中した結果、磁石嵌め込み穴の同極間部分側に作用する曲げ応力が小さくなるので、厚みが薄い同極間部分でこの応力を吸収することができる。これにより、ロータコアの強度を維持することができる。
【0013】
そして、同極間部分の厚みを薄くすることで、同じ組の同極の磁石の間を流れる短絡磁束を減少させることができる。また、同極間部分の厚みを薄くするほど、異極間部分の厚みを厚くすることができるので、異極間部分を構成する鉄に作用する吸引力が、同極間部分を構成する鉄に作用する吸引力よりも強くなる。これにより、マグネットトルクとは異なるトルクを得ることができる。また、同極間部分の厚みを薄くするほど、異極間部分の厚みを厚くすることができて、2組の永久磁石同士の間隔が広くなるので、大きなリタクタンストルクを得ることができる。その結果、トルクの低下を最小限に抑えることができる。
【0014】
よって、本発明の磁石埋込型回転電機は、サイズの小さなロータコアへの永久磁石の配置が容易で、且つ、誘起電圧を抑えることができるとともに、トルクの低下を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】磁石埋込型回転電機の断面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】機械角度とトルクとの関係を電磁界解析した結果を示す図である。
図4図2の要部Bの拡大図である。
図5】磁束のベクトル図である。
図6】機械角度とトルクとの関係を解析した結果を示す図である。
図7図1のA−A断面図である。
図8図1のA−A断面図である。
図9図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の磁石埋込型回転電機は、車載用の電動機、航空機に搭載される発電機など、様々な機械の電動機、発電機、電動機兼発電機として利用することができる。
【0017】
[第1実施形態]
(IPMモータの構成)
本発明の第1実施形態による磁石埋込型回転電機は、IPMモータである。IPMモータ1は、断面図である図1、および、図1のA−A断面図である図2に示すように、回転子(ロータ)2と、回転子2の径方向外側において回転子2に対して対向配置される筒状の固定子(ステータ)3と、回転子2の外周面に取り付けられた保護管4と、を有している。回転子2は、その軸心が固定子3の軸心に一致するように(同軸になるように)固定子3内に配置される。また、回転子2と固定子3とは、図示しないケーシング内に収納されている。
【0018】
(回転子)
回転子2は、筒状のロータコア11と、ロータコア11の内部に埋め込まれた2組の永久磁石12,13とを有している。即ち、本実施形態のIPMモータ1は2極である。回転子2は、図2に示すC方向、および、その逆方向に回転可能である。
【0019】
ロータコア11は、例えば、リング板状の電磁鋼板(35H300など)が軸心方向に積層されることによって形成されている。ロータコア11の中心には、軸心(回転軸)方向に貫通する穴11aが形成されている。この穴11aには、回転子2の回転を外部に取り出す出力軸(シャフト)5が挿通される。ロータコア11は、平行キー14で出力軸5に固定される。出力軸5は軸受(図示せず)によって回転可能に支持される。なお、ロータコア11の一部を凸状とし、出力軸5の一部を凹状にして、これらを係合させることで、ロータコア11を出力軸5に固定してもよい。
【0020】
図1に示すように、回転子2の両端には、エンドプレート16がそれぞれ設けられている。一対のエンドプレート16は、ロータコア11を貫通するボルト17によって、回転子2に固定されている。エンドプレート16を介してロータコア11の熱を外気に放出することで、ロータコア11の放熱特性が向上する。また、このような構造とすることで、ロータコア11を形成する電磁鋼板として、高張力ではない通常のものを使用することができる。これにより、ロータコア11による鉄損を低減させることができるので、回転子2で発生する損失を低減させて、モータ効率を向上させることができる。
【0021】
図2に示すように、永久磁石12は、回転子2の周方向に沿って隣接配置された一対の同極の磁石12a,12bからなる。また、永久磁石13は、回転子2の周方向に沿って隣接配置された一対の同極の磁石13a,13bからなる。
【0022】
ロータコア11には、同極の磁石を収容する磁石嵌め込み穴11bが同極の磁石毎に形成されている。具体的には、ロータコア11の外周部には、永久磁石12を構成する一対の同極の磁石12a,12bの各々を収容する2つの磁石嵌め込み穴11bと、永久磁石13を構成する一対の同極の磁石13a,13bの各々を収容する2つの磁石嵌め込み穴11bとがそれぞれ形成されている。各磁石嵌め込み穴11bは、ロータコア11を軸心方向に貫通している。4つの磁石嵌め込み穴11bには、一対の同極の磁石12a,12b、および、一対の同極の磁石13a,13bがそれぞれ嵌め込まれる。
【0023】
2組の永久磁石12,13は、ネオジム磁石等であって、ロータコア11の磁石嵌め込み穴11bに嵌め込まれることによって、回転子2(ロータコア11)の磁極を形成する。永久磁石12と永久磁石13とは、回転子2の周方向に隣り合う磁極が互いに反対の磁極となるように(即ち、ロータコア11の外周面においてS極とN極とが周方向に交互に並ぶように)、各磁石嵌め込み穴11bに嵌め込まれる。
【0024】
同じ組の一対の同極の磁石12a,12bにおけるロータコア11の中心に対向する面は、それぞれS極であって、その形状は平面にされている。一方、同じ組の一対の同極の磁石12a,12bにおける固定子3に対向する面は、それぞれN極であって、その形状は固定子3側に凸の湾曲面にされている。よって、同極の磁石12a,12bを収容する磁石嵌め込み穴11bにおけるロータコア11の中心に対向する面は平面にされ、固定子3に対向する面は湾曲面にされている。これにより、ロータコア11の外周面と磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である磁束短絡路11cにおける、ロータコア11の半径方向の幅が、回転子2の周方向に一定にされている。ここで、磁束短絡路11cは、ロータコア11内で磁束が短絡する部分である。なお、磁束の短絡とは、N極から出た磁束が固定子3と回転子2との間の空隙部6に到達することなくそのままロータコア11を通ってS極に入ることを意味する。
【0025】
また、同じ組の一対の同極の磁石13a,13bにおけるロータコア11の中心に対向する面は、それぞれN極であって、その形状は平面にされている。一方、同じ組の一対の同極の磁石13a,13bにおける固定子3に対向する面は、それぞれS極であって、その形状は固定子3側に凸の湾曲面にされている。よって、同極の磁石13a,13bを収容する磁石嵌め込み穴11bにおけるロータコア11の中心に対向する面は平面にされ、固定子3に対向する面は湾曲面にされている。これにより、ロータコア11の外周面と磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である磁束短絡路11cにおける、ロータコア11の半径方向の幅が、回転子2の周方向に一定にされている。
【0026】
磁束短絡路11cの幅を周方向に一定にすることで、同極の磁石12a,12b,13a,13bに作用する遠心力を磁束短絡路11cで受け止めた際に、磁束短絡路11cに作用する応力を周方向に均一にすることができる。
【0027】
また、磁石嵌め込み穴11bの各々は、回転子2の周方向において同極の磁石12a,12b,13a,13bの両側に空隙15が形成されるように同極の磁石を収容している。これにより、回転子2の周方向において、同極の磁石12a,12b,13a,13bの各々の両側には、空隙15がそれぞれ形成されている。これら空隙15により、ロータコア11内で短絡する磁束を減少させることができる。なお、空隙15が形成されていない構成であってもよい。また、空隙15内は空気の代わりに非磁性体や接着剤で満たされていてもよい。
【0028】
(固定子)
固定子3は、筒状のステータコア21と、ステータコア21の内周面に巻回された巻線22とを有している。
【0029】
ステータコア21は、例えば、複数の電磁鋼板(ケイ素鋼板など)が軸心方向に積層されることによって形成されている。ステータコア21の内周面には、周方向に沿ってスロット21aと歯21bとが交互に連続して形成されており、歯21bには巻線22が巻回されている。複数の歯21bにそれぞれ巻回された巻線22に対して所定の位相差の電流が供給されることにより、回転磁界が形成される。これにより、回転子2にマグネットトルクとリラクタンストルクとが発生して、回転子2が回転する。ここで、リラクタンストルクとは、磁気抵抗が小さくなろうとする箇所に発生するトルク、即ち、磁気が流れ難いところに磁束を流そうと回転子2が固定子3に対して回転することにより発生するトルクである。
【0030】
(保護管)
保護管4は、絶縁体からなる。このような保護管4をロータコア11の外周面に焼き嵌め等によって装着することで、ロータコア11の強度が向上するとともに、永久磁石の飛散が防止される。なお、保護管4は、金属、磁性材、低透磁率の磁性材等からなるものであってもよい。
【0031】
このように、本実施形態では、永久磁石12,13をロータコア11に埋め込むIPM構造とすることで、永久磁石をロータコアの表面に貼り付けるSPM構造に比べて、永久磁石12,13がロータコア11の内側に入るので、渦電流損失を低減させることができる。また、永久磁石12,13をロータコア11に埋め込むIPM構造とすることで、リラクタンストルクを利用することができる。また、2組の永久磁石12,13をロータコア11に埋め込む、即ち、2極のIPMモータ1にすることで、駆動周波数が下がるので、誘起電圧を小さくすることができる。また、一対の同極の磁石12a,12b、および、一対の同極の磁石13a,13bを回転子2の周方向に沿って隣接配置することで、従来の4極のIPMモータのように、一対の同極の磁石をロータコアの外周側に向かって互いの間隔が広がるように配置するのに比べて、サイズが小さいロータコア11に永久磁石12,13を配置しやすくすることができる。
【0032】
(同極間部分および異極間部分の厚み)
ここで、ロータコア11の半径方向における磁束短絡路11cの幅を異ならせたときの機械角度とトルクとの関係を電磁界解析した結果を図3に示す。機械角度は、図2において、直線Lを0°としてC方向に180度変化させている。なお、直線Lは、ロータコア11(回転子2)の中心Oを通り、永久磁石12と永久磁石13との中間に位置する仮想線である。
【0033】
回転子2が20000rpm程度で高速回転するIPMモータ1においては、ロータコア11に強度を持たせるために、ロータコア11の半径方向における磁束短絡路11cの幅を広くする必要がある。しかし、磁束短絡路11cの幅を広くするほど、ロータコア11内の短絡磁束が増加し、固定子3と回転子2との間の空隙部6において磁束が減少する。よって、図3に示すように、磁束短絡路11cの幅を広くするほど、トルクが低下する。
【0034】
そこで、図2に示すように、ロータコア11において、互いに同じ組の同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴11b同士の間の部分を同極間部分18、互いに異なる組の同極の磁石をそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴11b同士の間の部分を異極間部分19とすると、回転子2の周方向において、同極間部分18の厚みaは、異極間部分19の厚みbよりも薄くされている。具体的には、回転子2の周方向において、同極の磁石12aを収容する磁石嵌め込み穴11bと同極の磁石12bを収容する磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である同極間部分18の厚みaは、同極の磁石12aを収容する磁石嵌め込み穴11bと同極の磁石13bを収容する磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である異極間部分19の厚みb、および、同極の磁石12bを収容する磁石嵌め込み穴11bと同極の磁石13aを収容する磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である異極間部分19の厚みbよりも薄くされている。また、回転子2の周方向において、同極の磁石13aを収容する磁石嵌め込み穴11bと同極の磁石13bを収容する磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である同極間部分18の厚みaは、同極の磁石12aを収容する磁石嵌め込み穴11bと同極の磁石13bを収容する磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である異極間部分19の厚みb、および、同極の磁石12bを収容する磁石嵌め込み穴11bと同極の磁石13aを収容する磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である異極間部分19の厚みbよりも薄くされている。即ち、ロータコア11には、異極間部分19の厚みbよりも、同極間部分18の厚みaの方が薄くなるように、4つの磁石嵌め込み穴11bがそれぞれ形成されている。
【0035】
ここで、同極間部分18の厚みaと異極間部分19の厚みbとが同じの場合、同極の磁石の各々においてロータコア11の中心Oに対向する面がそれぞれロータコア11の半径方向に直交する。そのため、一対の同極の磁石12a,12bおよび一対の同極の磁石13a,13bにおいて、ロータコア11の中心Oに対向する面同士の角度θは90°となる。これに対して、本実施形態では、一対の同極の磁石12a,12bの各々を収容する2つの磁石嵌め込み穴11b,11b、および、一対の同極の磁石13a,13bの各々を収容する2つの磁石嵌め込み穴11b,11bを、図2に示す直線Lからそれぞれ離隔させることで、一対の同極の磁石12a,12bおよび一対の同極の磁石13a,13bにおいて、ロータコア11の中心Oに対向する面同士の角度θを90°以上180°以下にしている。本実施形態において、この角度θは120°である。これにより、回転子2の周方向において、異極間部分19の厚みbを、同極間部分18の厚みaよりも好適に厚くしている。
【0036】
図2の要部Bの拡大図を図4に示す。同極の磁石12bに作用する遠心力Fを、ロータコア11の中心Oから異極間部分19を通る方向に平行な成分Faと、ロータコア11の中心Oから同極間部分18を通る方向に平行な成分Fbとに分解すると、ロータコア11の中心Oから同極間部分18を通る方向に平行な成分Fbは、ロータコア11の中心Oから異極間部分19を通る方向に平行な成分Faよりも大きい。よって、ロータコア11における磁石嵌め込み穴11bの周囲の部分で同極の磁石12bの遠心力を受け止めた際に、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に作用する曲げ応力が大きくなるので、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力が大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力が集中するが、異極間部分19は厚みが厚いので、この応力を吸収することができる。また、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力が集中した結果、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力が小さくなるので、厚みが薄い同極間部分18でこの応力を吸収することができる。これにより、ロータコア11の強度を維持することができる。他の同極の磁石12a,13a,13bについても同様である。
【0037】
磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側において、応力の最大値は49.9MPa程度であるのに対し、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、応力の最大値は317MPa程度である。このように、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力が集中することで、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力が小さくなっているのがわかる。
【0038】
そして、同極間部分18の厚みを薄くすることで、同じ組の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束を減少させることができる。これにより、トルクの低下を抑えることができる。同じ組の同極の磁石13a,13bについても同様である。
【0039】
さらに、一対の同極の磁石12a,12bにおけるロータコア11の中心Oに対向する面同士の角度を120°にすることで、同極の磁石12a,12bに作用する遠心力Fのうち、ロータコア11の中心Oから同極間部分18を通る方向に平行な成分Fbを、ロータコア11の中心Oから異極間部分19を通る方向に平行な成分Faよりも好適に大きくすることができる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力を好適に集中させることができるので、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力を好適に小さくすることができる。よって、同極間部分18の厚みaを好適に薄くすることができて、一対の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束を好適に減少させることができるので、トルクの低下を好適に抑えることができる。一対の同極の磁石13a,13bについても同様である。
【0040】
磁束のベクトル図を図5に示す。同極間部分18の厚みaを薄く設定することで、一対の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束、および、一対の同極の磁石13a,13bの間を流れる短絡磁束をそれぞれ減少させることができることがわかる。
【0041】
また、図2に示すように、同極間部分18の厚みaを薄くするほど、異極間部分19の厚みbを厚くすることができるので、異極間部分19を構成する鉄に作用する吸引力が、同極間部分18を構成する鉄に作用する吸引力よりも強くなる。これにより、マグネットトルクとは異なるトルクを得ることができる。
【0042】
また、同極間部分18の厚みaを薄くするほど、異極間部分19の厚みbを厚くすることができて、2組の永久磁石12,13同士の間隔が広くなるので、大きなリタクタンストルクを得ることができる。
【0043】
以上のように、同極間部分18の厚みaを、異極間部分19の厚みbよりも薄くすることで、トルクの低下を最小限に抑えることができる。
【0044】
同極間部分18の厚みaを異ならせたときの機械角度とトルクとの関係を解析した結果を図6に示す。同極間部分18の厚みaを狭くすることで、トルクが向上することがわかる。
【0045】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)1によると、永久磁石12,13をロータコア11に埋め込むIPM構造とすることで、永久磁石をロータコアの表面に貼り付けるSPM構造に比べて、永久磁石12,13がロータコア11の内側に入るので、渦電流損失を低減させることができる。また、永久磁石12,13をロータコア11に埋め込むIPM構造とすることで、リラクタンストルクを利用することができる。また、2組の永久磁石12,13をロータコア11に埋め込む、即ち、2極のIPMモータ1にすることで、駆動周波数が下がるので、誘起電圧を小さくすることができる。また、一対の同極の磁石12a,12bおよび一対の同極の磁石13a,13bを回転子2の周方向に沿って隣接配置することで、従来の4極の回転電機のように、一対の同極の磁石をロータコアの外周側に向かって互いの間隔が広がるように配置するのに比べて、サイズが小さいロータコア11に永久磁石12,13を配置しやすくすることができる。
【0046】
このとき、ロータコア11に強度を持たせるために、ロータコア11の外周面と磁石嵌め込み穴11bとの間の部分である磁束短絡路11cの、ロータコア11の半径方向における幅を広くすると、ロータコア11内の短絡磁束が増加する。その結果、固定子3と回転子2との間の空隙部6において磁束が減少し、トルクが低下する。そこで、ロータコア11において、互いに同じ組の同極の磁石12a,12bをそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴11b同士の間の部分、および、互いに同じ組の同極の磁石13a,13bをそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴11b同士の間の部分を同極間部分18、互いに異なる組の同極の磁石12a,13bをそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴11b同士の間の部分、および、互いに異なる組の同極の磁石12b,13aをそれぞれ収容して隣接する磁石嵌め込み穴11b同士の間の部分を異極間部分19とすると、回転子2の周方向において、同極間部分18の厚みaを、異極間部分19の厚みbよりも薄くする。
【0047】
このような構成において、同極の磁石に作用する遠心力Fを、ロータコア11の中心Oから異極間部分19を通る方向に平行な成分Faと、ロータコア11の中心Oから同極間部分18を通る方向に平行な成分Fbとに分解すると、ロータコア11の中心Oから同極間部分18を通る方向に平行な成分Fbは、ロータコア11の中心Oから異極間部分19を通る方向に平行な成分Faよりも大きい。よって、ロータコア11における磁石嵌め込み穴11bの周囲の部分で同極の磁石の遠心力Fを受け止めた際に、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に作用する曲げ応力が大きくなるので、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力が大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力が集中するが、異極間部分19は厚みが厚いので、この応力を吸収することができる。また、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力が集中した結果、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力が小さくなるので、厚みが薄い同極間部分18でこの応力を吸収することができる。これにより、ロータコア11の強度を維持することができる。
【0048】
そして、同極間部分18の厚みを薄くすることで、同じ組の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束、および、同じ組の同極の磁石13a,13bの間を流れる短絡磁束を減少させることができる。また、同極間部分18の厚みを薄くするほど、異極間部分19の厚みを厚くすることができるので、異極間部分19を構成する鉄に作用する吸引力が、同極間部分18を構成する鉄に作用する吸引力よりも強くなる。これにより、マグネットトルクとは異なるトルクを得ることができる。また、同極間部分18の厚みを薄くするほど、異極間部分19の厚みを厚くすることができて、2組の永久磁石12,13同士の間隔が広くなるので、大きなリタクタンストルクを得ることができる。その結果、トルクの低下を最小限に抑えることができる。
【0049】
よって、本発明のIPMモータ1は、サイズの小さなロータコア11への永久磁石12,13の配置が容易で、且つ、誘起電圧を抑えることができるとともに、トルクの低下を最小限に抑えることができる。
【0050】
また、一対の同極の磁石12a,12bにおけるロータコア11の中心に対向する面同士の角度、および、一対の同極の磁石13a,13bにおけるロータコア11の中心に対向する面同士の角度を90°以上180°以下にすることで、同極の磁石に作用する遠心力Fのうち、ロータコア11の中心Oから同極間部分18を通る方向に平行な成分Fbを、ロータコア11の中心Oから異極間部分19を通る方向に平行な成分Faよりも好適に大きくすることができる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に応力を好適に集中させることができるので、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力を好適に小さくすることができる。よって、同極間部分18の厚みを好適に薄くすることができて、一対の同極の磁石の間を流れる短絡磁束を好適に減少させることができるので、トルクの低下を好適に抑えることができる。
【0051】
また、同極の磁石12a,12b,13a,13bの各々の固定子3に対向する面を、固定子3側に凸の湾曲面にすることで、磁束短絡路11cの幅を周方向に一定にすることができる。これにより、同極の磁石12a,12b,13a,13bに作用する遠心力を磁束短絡路11cで受け止めた際に、磁束短絡路11cに作用する応力を周方向に均一にすることができる。
【0052】
[第2実施形態]
(回転子)
次に、本発明の第2実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)201について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態のIPMモータ201が第1実施形態のIPMモータ1と異なる点は、図1のA−A断面図である図7に示すように、回転子2がC方向にのみ回転し、一対の同極の磁石のうち、回転子2の回転方向の下流側に位置する方は、回転子2の回転方向の上流側に位置する方よりも、回転子2の周方向に沿った長さが短い点である。
【0053】
具体的には、一対の同極の磁石12a,12bのうち、回転子2の回転方向の下流側に位置する同極の磁石12bは、回転子2の回転方向の上流側に位置する同極の磁石12aよりも、回転子2の周方向に沿った長さが短い。同様に、一対の同極の磁石13a,13bのうち、回転子2の回転方向の下流側に位置する同極の磁石13bは、回転子2の回転方向の上流側に位置する同極の磁石13aよりも、回転子2の周方向に沿った長さが短い。
【0054】
上述したように、回転子2の周方向において、同極の磁石12a,12b,13a,13bの各々の両側には空隙15がそれぞれ形成されている。そして、回転子2の回転方向の下流側に位置する同極の磁石12b,13bの回転子2の周方向に沿った長さを短くすることで、下流側に位置する同極の磁石12b,13bが他の永久磁石12,13と隣り合う側に設けられた空隙15aを、下流側に位置する同極の磁石12b,13bが上流側に位置する同極の磁石12a,13aと隣り合う側に設けられた空隙15bよりも広くすることができる。
【0055】
このように、下流側に位置する同極の磁石12b,13bが他の永久磁石12,13と隣り合う側に設けられた空隙15aを広くすることで、下流側に位置する同極の磁石12b,13bが他の永久磁石12,13と隣り合う側において、下流側に位置する同極の磁石12b,13bのN極から出た磁束が固定子3と回転子2との間の空隙部6に到達することなく2組の永久磁石12,13の間を回り込んで下流側に位置する同極の磁石12b,13bのS極に入ることによる磁束の短絡を抑えることができる。その結果、2組の永久磁石12,13の間から入り込む磁束の量を増やすことができるので、マグネットトルクの低下を抑えることができる。
【0056】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)201によると、回転子2が一方向に回転するとき、一対の同極の磁石のうち、回転子2の回転方向の下流側に位置する方の回転子2の周方向に沿った長さを、回転子2の回転方向の上流側に位置する方よりも短くする。これにより、下流側に位置する同極の磁石12b,13bにおける回転子2の周方向の両側にそれぞれ設けられた空隙15のうち、他の永久磁石12,13と隣り合う側に設けられた空隙15aを、上流側に位置する同極の磁石12a,13aと隣り合う側に設けられた空隙15bよりも広くすることができる。これにより、下流側に位置する同極の磁石12b,13bが他の永久磁石12,13と隣り合う側において、下流側に位置する同極の磁石12b,13bのN極から出た磁束が固定子3と回転子2との間の空隙部6に到達することなく2組の永久磁石12,13の間を回り込んで下流側に位置する同極の磁石12b,13bのS極に入ることによる磁束の短絡を抑えることができる。その結果、2組の永久磁石12,13の間から入り込む磁束の量を増やすことができるので、マグネットトルクの低下を抑えることができる。よって、永久磁石の量を低減させながら、トルクを同等に保つか、もしくは向上させることができる。
【0057】
[第3実施形態]
(回転子)
次に、本発明の第3実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)301について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態のIPMモータ301が第1実施形態のIPMモータ1と異なる点は、図1のA−A断面図である図8に示すように、異なる組の同極の磁石に隣接する側の空隙15aが、同じ組の同極の磁石に隣接する側の空隙15bよりも広くなるように、磁石嵌め込み穴11bの各々に同極の磁石12a,12b,13a,13bが収容されている点である。
【0058】
具体的には、同極の磁石12aにおいて、異なる組の同極の磁石13bに隣接する側の空隙15aが、同じ組の同極の磁石12bに隣接する側の空隙15bよりも広くされている。また、同極の磁石12bにおいて、異なる組の同極の磁石13aに隣接する側の空隙15aが、同じ組の同極の磁石12aに隣接する側の空隙15bよりも広くされている。一対の同極の磁石13a,13bについても同様である。
【0059】
なお、同極の磁石のずれを防止するために、磁石嵌め込み穴11bに突起を設けてもよい。
【0060】
異なる組の同極の磁石に隣接する側の空隙15aを、同じ組の同極の磁石に隣接する側の空隙15bよりも広くすることで、異なる組の同極の磁石に隣接する側の空隙15aがたわみやすくなる。よって、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に曲げ応力が生じやすくなるので、ロータコア11における磁石嵌め込み穴11bの周囲の部分で同極の磁石の遠心力を受け止めた際に、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に作用する曲げ応力がより大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力がより大きくなるので、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側により応力が集中する。その結果、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力がより小さくなるので、同極間部分18の厚みaをより薄くすることができる。そして、同極間部分18の厚みaをより薄くすることで、一対の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束、および、一対の同極の磁石13a,13bの間を流れる短絡磁束をより減少させることができるので、トルクの低下をより最小限に抑えることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、一対の同極の磁石におけるロータコア11の中心Oに対向する面同士の角度は、特に限定されない。本実施形態では、第2実施形態のように、回転子2が一方向に回転し、一対の同極の磁石のうち、回転子2の回転方向の下流側に位置する方は、回転子2の回転方向の上流側に位置する方よりも、回転子2の周方向に沿った長さが短くされていてもよい。
【0062】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)301によると、異なる組の同極の磁石に隣接する側の空隙15aを、同じ組の同極の磁石に隣接する側の空隙15bよりも広くすることで、異なる組の同極の磁石に隣接する側の空隙15aがたわみやすくなる。よって、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に曲げ応力が生じやすくなるので、ロータコア11における磁石嵌め込み穴11bの周囲の部分で同極の磁石の遠心力を受け止めた際に、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に作用する曲げ応力がより大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力がより大きくなるので、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側により応力が集中する。その結果、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力がより小さくなるので、同極間部分18の厚みをより薄くすることができる。そして、同極間部分18の厚みをより薄くすることで、一対の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束、および、一対の同極の磁石13a,13bの間を流れる短絡磁束をより減少させることができるので、トルクの低下をより最小限に抑えることができる。
【0063】
[第4実施形態]
(回転子)
次に、本発明の第3実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)401について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態のIPMモータ401が第1実施形態のIPMモータ1と異なる点は、図1のA−A断面図である図9に示すように、回転子2の周方向において、同極の磁石の重心位置が、異なる組の同極の磁石の方に寄っている点である。
【0064】
具体的には、同極の磁石12aの重心位置は、異なる組の同極の磁石13bの方に寄っている。また、同極の磁石12bの重心位置は、異なる組の同極の磁石13aの方に寄っている。同極の磁石13a,13bについても同様である。
【0065】
断面視において、同極の磁石12a,12b,13a,13bは、異極間部分19側から同極間部分18側に向かって滑らかに細くなっていく形状にされている。このように、異極間部分19側が太くされることで、同極の磁石の重心位置が、異なる組の同極の磁石の方に寄るようにされている。なお、同極の磁石の形状はこれに限定されず、異なる組の同極の磁石の方に重心位置が寄るような形状であればよい。
【0066】
同極の磁石の重心位置を、回転子2の周方向に沿って異なる組の同極の磁石の方に寄せることで、ロータコア11における磁石嵌め込み穴11bの周囲の部分で同極の磁石の遠心力を受け止めた際に、重心位置に近い側である、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に作用する曲げ応力がより大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力がより大きくなるので、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側により応力が集中する。その結果、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力がより小さくなるので、同極間部分18をより狭く設定することができる。そして、同極間部分18をより狭く設定することで、一対の同極の磁石の間を流れる短絡磁束をより減少させることができるので、トルクの低下をより最小限に抑えることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、一対の同極の磁石におけるロータコア11の中心Oに対向する面同士の角度は、特に限定されない。本実施形態では、第2実施形態のように、回転子2が一方向に回転し、一対の同極の磁石のうち、回転子2の回転方向の下流側に位置する方は、回転子2の回転方向の上流側に位置する方よりも、回転子2の周方向に沿った長さが短くされていてもよい。また、第3実施形態のように、異なる組の同極の磁石に隣接する側の空隙15aが、同じ組の同極の磁石に隣接する側の空隙15bよりも広くなるように、磁石嵌め込み穴11bの各々に同極の磁石が収容されていてもよい。
【0068】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るIPMモータ(磁石埋込型回転電機)401によると、同極の磁石の重心位置を、回転子2の周方向に沿って異なる組の同極の磁石の方に寄せることで、ロータコア11における磁石嵌め込み穴11bの周囲の部分で同極の磁石の遠心力を受け止めた際に、重心位置に近い側である、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側に作用する曲げ応力がより大きくなる。これにより、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側において、曲げ応力と引張応力とを合わせた応力がより大きくなるので、磁石嵌め込み穴11bの異極間部分19側により応力が集中する。その結果、磁石嵌め込み穴11bの同極間部分18側に作用する曲げ応力がより小さくなるので、同極間部分18の厚みをより薄くすることができる。そして、同極間部分18の厚みをより薄くすることで、一対の同極の磁石12a,12bの間を流れる短絡磁束、および、一対の同極の磁石13a,13bの間を流れる短絡磁束をより減少させることができるので、トルクの低下をより最小限に抑えることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
1,201,301,401 IPMモータ(磁石埋込型回転電機)
2 回転子
3 固定子
4 保護管
5 出力軸
6 空隙部
11 ロータコア
11a 穴
11b 磁石嵌め込み穴
11c 磁束短絡路
12,13 永久磁石
12a,12b 同極の磁石
13a,13b 同極の磁石
14 平行キー
15,15a,15b 空隙
16 エンドプレート
17 ボルト
18 同極間部分
19 異極間部分
21 ステータコア
21a スロット
21b 歯
22 巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9