(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝集パルプ層には、針葉樹パルプ、コットンリンターパルプ、非木材パルプの少なくとも一種を、該凝集パルプ層のパルプ全量に対して30〜100質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の模様紙。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の模様紙は、パルプを主成分とする2以上の層からなる模様紙であって、最外層の少なくとも一方の層が凝集パルプ層であり、該凝集パルプ層と、該凝集パルプ層に接する層との色彩が異なるものであり、該凝集パルプ層表面の任意の10点の箇所におけるJIS Z 8722により測定したL
*の値が最大となる箇所と最小となる箇所とのΔE
*が0.6以上であることを特徴とする模様紙である。
【0015】
本発明の模様紙の構成例が
図1に示されている。同図には、1は凝集パルプ層、2は該凝集パルプ層に接する層として裏打層を有する模様紙を示した。凝集パルプ層に接する層の構成は特に限定するものではなく、多層紙で用いられる各種公知の紙層とすることができる。ただし、凝集パルプ層の色彩とは異なるものとしなければならない。本発明においては、例えば、色彩を異なるものとし斑模様の濃淡を強調させるとともに、形状を安定させる、いわゆる裏打層とする形態とできる。また、同図において各層の厚みは実際の比率を表すものではない。
【0016】
図1(a)に示される構成例は、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層として裏打層とを1層ずつ設けた構成例である。この場合、凝集パルプ層と凝集パルプ層に接する層とは、それぞれ色彩の異なるものとする。このような構成とすれば、一方の面が凝集パルプ層により形成される斑模様を有する模様紙とすることができる。ここで、凝集パルプ層に接する層の構成は特に限定するものではなく、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、多層紙で用いられる各種公知の紙層とすることができる。本発明においては、例えば、色彩を異なるものとし斑模様の濃淡を強調させるとともに、形状を安定させる、いわゆる裏打層とする形態とできる。また、用途に応じて裏打層の表面(模様紙としての表出面)には更に顔料塗工層などを設けることも可能である。尚、同図において、裏打層は1層の構成を示しているが、2層以上の構成としてもよい。また、裏打層とは構成の異なる任意の紙層を、裏打層の凝集パルプ層と接する面の反対側に設けてもよい。
【0017】
次いで、
図1(b)に示される構成例は、凝集パルプ層を該凝集パルプ層に接する層としての裏打層の両側に1層ずつ設けた構成例である。ここで、裏打層の構成は特に限定されるものではなく、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、多層紙で用いられる各種公知の紙層とすることができる。この場合、凝集パルプ層と裏打層とは、それぞれ色彩の異なるものとする。このような構成によれば、両方の面が凝集パルプ層により形成される斑模様を有する模様紙とすることができる。尚、裏打層の両側に設けられた凝集パルプ層同士は色彩が同様のものであっても異なるものであってもよいが、裏打層との色彩をそれぞれ異なるものとしなければ、両方の面が凝集パルプ層により形成される斑模様を有する模様紙とはできない。また、同図において、裏打層は1層の構成を示しているが、2層以上の構成としてもよい。更には、裏打層を2層とし、その中間に任意の層を設けてもよい。すなわち、凝集パルプ層/裏打層/1層以上の任意の層/裏打層/凝集パルプ層の順に積層した模様紙としてもよい。また、凝集パルプ層/裏打層/任意の層の順に積層した模様紙としてもよい。
【0018】
本発明の模様紙において、各層に用いるパルプとしては、特に限定するものではなく、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)に代表される木材漂白化学パルプを使用することができる。また、必要に応じて、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、GP(砕木パルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、BCTMP(晒ケミサーモメカニカルパルプ)等の機械パルプ、古紙パルプを適宜配合することもできる。更には、木材パルプ以外に、コットンリンターパルプや楮、三椏、雁皮、麻、バガス、ケナフ、竹などの非木材パルプ、合成パルプ、合成繊維などを用いてもよい。
【0019】
凝集パルプ層に用いるパルプとしては、前述したパルプの中でも、針葉樹パルプ、コットンリンターパルプ、非木材パルプの少なくとも一種を用いることが好ましい。詳細は後述するが、本発明においては凝集パルプ層が斑模様を形成できるようにパルプを凝集させる。このパルプの凝集において、これら針葉樹パルプ、コットンリンターパルプ、非木材パルプは、繊維長が長いため、より大きい凝集を形成しやすい。本発明においては、針葉樹パルプ、コットンリンターパルプ、非木材パルプの少なくとも一種を、凝集パルプ層のパルプ全量に対して30〜100質量%含有させることが好ましく、55〜100質量%含有させることがさらに好ましい。また、斑模様の濃淡をより強調するためには、針葉樹パルプ、コットンリンターパルプ、非木材パルプの少なくとも一種を、凝集パルプ層のパルプ全量に対して80〜100質量%含有させてもよい。
【0020】
本発明においては、凝集パルプ層に用いるパルプを凝集させる。パルプを凝集させることにより、紙層中の局所的な密度に隔たりを生じさせ、密度の高い箇所と低い箇所とで光の透過性に差が生じ、凝集パルプ層に斑模様が生じているように見える。言い換えれば、本発明においては、意図的に地合の悪い紙層とすることで斑模様を形成する。ここで、凝集パルプ層の1層のみではこの斑模様の視認性は高くないが、本発明においては、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層(例えば、裏打層)とを積層し、互いの層の色彩を異なるものとすることで斑模様の視認性が高くさせる。すなわち、凝集パルプ層の局所的な光の透過性の隔たりを、該凝集パルプ層に接する層の色彩を利用して視認しやすくするものである。
【0021】
凝集パルプ層に用いるパルプを凝集させる方法は、特に限定するものではないが、凝集剤を使用することが好ましい。凝集剤としては、所望の斑模様の濃淡を得るために適宜選択することができ、例えば、有機高分子凝集剤、ならびに、硫酸バンド、塩化鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄など無機系凝集剤を単独でまたは併用して用いても良い。更に凝集を強くするために、凝集パルプ層に用いるパルプの一部又は全部を、有機高分子凝集剤により凝集処理したものとしてもよい。このような構成とすることでパルプの凝集を強くすることができ、模様紙表面の斑模様の濃淡をより強調することができる。有機高分子凝集剤としては特に限定するものではなく、アニオン性、カチオン性又は両性のポリアクリルアミド系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂等を用いることができる。凝集処理の方法としては、特に限定するものではないが、事前にパルプと有機高分子凝集剤とを混合して凝集パルプスラリーを調整し、この凝集パルプスラリーを他の原料スラリーと混合する方法があり、この場合、パルプの凝集が起こりやすいという点でカチオン性ポリアクリル酸系樹脂を好適に用いることができる。また、別の方法としては、パルプスラリーに填料、サイズ剤、硫酸バンド等の製紙薬品を添加して原料スラリーを調整した後、この原料スラリーにポリアクリルアミド系樹脂を添加することによりパルプを凝集処理することも可能である。このような場合、原料スラリーの電位にもよるが、硫酸バンドを用いる原料スラリー系であれば、アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂を用いて凝集処理を行った方がパルプを凝集させやすくなる。凝集処理に用いるポリアクリルアミド系樹脂などの有機高分子凝集剤の添加量としては、パルプに対して0.05〜3質量%とすることが好ましく、0.1〜2質量%とすることがより好ましい。また、アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂としては分子量が比較的高いものが凝集効果の点で好ましく、分子量が1000万以上、例えば、分子量が1000万〜3000万のアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂が好ましい。また、無機系凝集剤の添加量としては、パルプに対して0.1〜3質量%、例えば、0.5〜2質量%とすることが好ましい。
【0022】
凝集パルプ層に用いるパルプの濾水度は特に限定するものではないが、カナダ標準濾水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、500〜750mlCSFとすることが好ましい。より好ましくは550〜700mlである。濾水度を比較的高くすることで模様紙表面の斑模様の濃淡をつけやすくなる。濾水度が低いと繊維の絡みが強くなり、凝集が大きくなる為、濃淡がつきにくくなる。一方、濾水度が高くなりすぎると強度面での問題が生じるおそれがある。
【0023】
凝集パルプ層に接する層(例えば、裏打層)を含む凝集パルプ層以外の層に用いるパルプとしては、LBKPを用いることが好ましい。LBKPを用いることで紙層の地合を整えやすくなり、凝集パルプ層とは異なるもう一方の最表層とした際の表面の色のムラを小さくすることができ、更にはオフセット印刷適正及び活版印刷適正を向上させることができる。本発明においては、凝集パルプ層以外の紙層には、該紙層に用いるパルプ全量に対してLBKPを45〜100質量%、例えば、50〜100質量%、さらに60〜100質量%含有させることが好ましい。
【0024】
また、凝集パルプ層以外の紙層に用いるパルプの濾水度は特に限定するものではないが、カナダ標準濾水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、400〜650mlCSFとすることが好ましい。より好ましくは450〜600mlである。濾水度をこの範囲とすることで地合いを整えることが容易となり、オフセット印刷や活版印刷に適した紙面を得やすくなる。
【0025】
本発明の模様紙においては、前述の通り、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層(例えば、裏打層)との色彩を異なるものとする。色彩が異なることにより、凝集パルプ層のパルプの凝集によって形成された斑模様の視認性を向上させる。ここでいう色彩が異なるとは、色彩の差異が視認可能であればよいが、例えば、以下に述べる(a*
max−a*
min)
2または(b*
max−b*
min)
2が少なくとも0とならなければよい。色彩を異にする方法としては、特に限定するものではなく、主原料となるパルプに色彩の異なるパルプを用いる方法や、着色材を使用する方法がある。例えば、凝集パルプ層に用いるパルプを比較的白色度の高い(白系)晒クラフトパルプ(BKP)、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とし、該凝集パルプ層に接する層に用いるパルプを比較的白色度の低い(茶系)未晒クラフトパルプ(UKP)、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)とすると、着色材を用いずとも、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩を異なるものとできる。また、着色材を使用する場合は、凝集パルプ層か該凝集パルプ層に接する層のどちらか一方にのみ任意の着色材を添加するか、両層に異なる色彩の着色材を添加するなどすればよい。両層に同一の着色材を、添加量を異にして添加し、両層の色彩を異なるものとすることも可能である。ここで用いる着色材としては、特に限定するものではなく、その目的に応じて染料、顔料等の各種公知の製紙用着色材を用いることが可能である。着色材は単体で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。着色材に使用する顔料としては、所望の色の顔料を使用すればよく、例えば、パルプに対して0.01〜3質量%の量で添加すればよい。本発明の模様紙の一実施形態においては、例えば、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層の紙層の地合の違い、特に凝集パルプ層の凝集による斑模様、および、色彩の違いを適宜調整することよって、所望の色調や模様等を得ることができる。
【0026】
本発明の模様紙においては、凝集パルプ層表面の任意の10点の箇所におけるJIS Z 8722:2009「色の測定方法−反射及び等価物体色」に準拠して測定したL
*の値が最大となる箇所と最小となる箇所とのΔE
*が0.6以上である。ここで、L
*とはL
*a
*b
*表色系における明度L
*である。本発明の模様紙は、前述したように、凝集パルプ層のパルプの凝集によって斑模様を形成し、また、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩を異なるものとすることによって斑模様の視認性を向上させるものである。しかしながら、斑模様の形成性はパルプの凝集度合いによって異なり、また、斑模様の視認性は凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩がどの程度異なるのかによっても変化する。従って、凝集パルプ層のパルプの凝集度合いが弱すぎる場合や、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩の差が僅かであると本発明の目的とする意匠性の高い模様紙とすることができない。そこで、本発明においては、斑模様の形成性と視認性との総合的な評価として、前述のΔE
*を用いる。ここでΔE
*は下記の(式1)で算出されるものである。
(式1)ΔE
*=[(L*
max−L*
min)
2+(a*
max−a*
min)
2+(b*
max−b*
min)
2)]
1/2
【0027】
ΔE
*の算出についてより詳細に説明する。まず、凝集パルプ層表面の任意の10点の箇所において、それぞれL
*a
*b
*表色系における明度指数L
*、知覚色度指数a
*及びb
*を測定し、L
*の最大値の箇所と最小値の箇所とを特定する。そして、それぞれの箇所のL
*a
*b
*の値を上記(式1)に当てはめ、ΔE
*を算出する。ここで(式1)において、L
*max、a
*max、b
*maxは、L
*の最大値の箇所のL
*、a
*、b
*値であり、L
*min、a
*min、b
*minはL
*の最小値の箇所のL
*、a
*、b
*値である。凝集パルプ層表面のL
*の最大値の箇所と最小値の箇所とは、すなわち明度の差が最も大きい2点の箇所である。凝集パルプ層のパルプの凝集度合いが小さいと、この明度の差は生じないか、あるいは極めて小さくなる。仮に凝集パルプ層の地合が均一であれば、凝集パルプ層の光の表面反射も均一となると考えられるからである。また、明度の差が最も大きい2点の箇所のL
*a
*b
*値により算出したΔE
*値は、その数値が大きいほどこの2点の箇所の視覚的な色差が大きいことを意味する。凝集パルプ層のパルプの凝集度合いが小さく、仮に凝集パルプ層の地合が均一であれば、凝集パルプ層の光の表面反射も均一となると考えられ、その結果、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩の差が大きくとも、ΔE
*の数値は小さくなる。また、凝集パルプ層のパルプの凝集度合いが大きく、地合が不均一であり、本発明の模様紙として好適な凝集パルプ層の構成であっても、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩の差が小さすぎるとΔE
*の数値は小さくなる。ΔE
*の数値が一定以上であれば凝集パルプ層のパルプの凝集度合いが比較的大きく、かつ、凝集パルプ層と該凝集パルプ層に接する層との色彩の差が比較的大きいこととなり、本発明においてはΔE
*を0.6以上とすることで意匠性の高い模様紙とすることができる。ΔE
*は1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることが更に好ましい。ΔE
*の値が大きいほど斑模様の視認性が高い模様紙とすることができる。尚、前述したL
*a
*b
*の値の測定の際は、測定面積が大きすぎると(又は小さすぎると)模様紙の模様の大きさによっては、模様の視認性が高いにもかかわらずΔE
*の値が小さくなりやすいため、1点あたりの測定面積は直径で1〜20mm程度とすることが好ましい。
【0028】
本発明において各層には、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、填料、サイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤、等の各種製紙用資材を含有させることができる。填料としては、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、焼成クレー、硫酸バリウム、合成樹脂填料などの公知の填料を1種以上使用することができる。また、サイズ剤としては、内添で良好なサイズ性を発揮するものが好ましく、例えば、パラフィンワックス系サイズ剤、マイクロクリスタリンワックス系サイズ剤、カルナウバ(カルナバワックス)系サイズ剤、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸サイズ剤等を1種以上使用することができる。紙力剤としては、澱粉、カチオン化澱粉、その他変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ゴム系ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂などを1種以上使用することができる。紙力剤としては、これらの中でも表面強度と層間強度との向上に効果の高いカチオン化澱粉を用いることが好ましい。また、必要に応じて模様紙の表面にサイズプレスで各種助剤を塗布することもできる。例えば、オフセット印刷に耐える印刷強度を付与するためにサイズプレスで澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の紙力剤を塗布することができ、また、サイズ性を向上させる目的でスチレンアクリル系樹脂、アルキルケテンダイマー等の表面サイズ剤を塗布してもよい。更には、インクジェット記録適性を付与するためにインク定着剤を塗布してもよい。
【0029】
本発明の模様紙の米坪は特に限定するものではなく、例えば50〜2000g/m
2であり、例えば、120〜300g/m
2である。ただし、凝集パルプ層は、米坪が大きくなるにつれて凝集パルプ層に接する層の色彩を隠蔽しやすくなり、逆に小さくなるにつれて模様の視認性が低下するため、凝集パルプ層の米坪は15〜140g/m
2、さらに、20〜120g/m
2とすることが好ましく、より好ましくは30〜100g/m
2である。
【0030】
本発明の模様紙は各層を抄き合わせて抄紙することができる。抄紙方法としては、特に限定するものではなく、円網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機、これらの抄紙機のコンビネーション抄紙機など従来から周知の抄紙機を使用して、抄合わせにて抄造できる。抄合わせでは抄合わせ各層の層間剥離を防止するために層間用澱粉等の紙力剤をスプレー塗布しても良い。また、各層を貼り合わせて積層してもよい。
【実施例】
【0031】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ固形分換算での質量部又は質量%を示す。
【0032】
(実施例1)
<凝集パルプ層用紙料の調製>
NBKP(フリーネス650mlCSF)100部を水中に分散してパルプスラリーとし、該パルプスラリーに紙力剤として両性澱粉(商品名:ネオタック110M/日本食品化工株式会社製)0.4部、サイズ剤としてロジン系エマルジョンサイズ剤(商品名:AL1300/星光PMC株式会社製)0.22部、硫酸バンド(テクノ北越製)1部をそれぞれ添加し、更に有機高分子凝集剤として分子量1,200万のアニオン性ポリアクリルアミド(商品名:ハイモロックSS−100/株式会社ハイモ製)を0.25部添加してパルプの凝集処理を行い、凝集パルプ層用の紙料とした。
【0033】
<裏打層用紙料の調製>
NBKP40部、LBKP60部とからなるパルプ(フリーネス500mlCSF)を水中に分散してパルプスラリーとし、該パルプスラリーに紙力剤として両性澱粉(商品名:ネオタック110M/日本食品化工株式会社製)0.4部、サイズ剤としてロジン系エマルジョンサイズ剤(商品名:AL1300/星光PMC株式会社製)0.22部、硫酸バンド(テクノ北越製)1部、着色料として赤色顔料(商品名:SPレッドFTY/御国色素株式会社製)0.09部、黒色顔料(商品名:サンダイDPブラックCN/山陽色素株式会社製)0.02部をそれぞれ添加して攪拌し、凝集パルプ層に接する層としての裏打層用の紙料とした。
【0034】
<非凝集パルプ層用紙料の調製>
NBKP40部、LBKP60部とからなるパルプ(フリーネス500mlCSF)を水中に分散してパルプスラリーとし、該パルプスラリーに紙力剤として両性澱粉(商品名:ネオタック110M/日本食品化工株式会社製)0.4部、サイズ剤としてロジン系エマルジョンサイズ剤(商品名:AL1300/星光PMC株式会社製)0.22部、硫酸バンド(テクノ北越製)1部をそれぞれ添加して攪拌し、非凝集パルプ層用の紙料とした。
【0035】
<模様紙の抄紙>
これらの3種類の紙料を用いて、円網式抄紙機にて凝集パルプ層/裏打層/非凝集パルプ層の順に積層された構成となるように3層抄き合わせで湿紙を抄紙し、プレスにて脱水後、多筒式シリンダードライヤーに凝集パルプ層が接触するようにして乾燥させた。その後、2本ロールサイズプレスにてポリアクリルアミド系紙力剤(商品名:ST5000/星光PMC株式会社製)8%水溶液を、用紙の両面あたり50cc/m
2塗布した後、シリンダードライヤーにて乾燥し、米坪180g/m
2、水分7%の模様紙を得た。各層の米坪は、凝集パルプ層を40g/m
2、裏打層を70g/m
2、非凝集パルプ層を70g/m
2とした。
【0036】
(実施例2)
凝集パルプ層用紙料の調製において、パルプの配合を、NBKP60部、LBKP40部とからなるパルプ(フリーネス610mlCSF)とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0037】
(実施例3)
凝集パルプ層用紙料の調製において、パルプの配合を、NBKP40部、LBKP60部とからなるパルプ(フリーネス590mlCSF)とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0038】
(実施例4)
凝集パルプ層用紙料の調製において、パルプの配合を、NBKP30部、LBKP70部とからなるパルプ(フリーネス580mlCSF)とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0039】
(実施例5)
凝集パルプ層用紙料の調整において、有機高分子凝集剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0040】
(実施例6)
凝集パルプ層用紙料の調製において、パルプの配合を、NBKP50部、コットンリンター50部とからなるパルプ(フリーネス680mlCSF)とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0041】
(実施例7)
裏打層用紙料の調製において、着色料の添加量を、赤色顔料(商品名:SPレッドFTY/御国色素株式会社製)0.05部、黒色顔料(商品名:サンダイDPブラックCN/山陽色素株式会社製)0.01部に変更した以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0042】
(実施例8)
裏打層用紙料の調製において、着色料の添加量を、赤色顔料(商品名:SPレッドFTY/御国色素株式会社製)0.025部、黒色顔料(商品名:サンダイDPブラックCN/山陽色素株式会社製)0.005部に変更した以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0043】
(実施例9)
裏打層用紙料の調製において、着色料を黄色顔料(商品名:SPエロー30DS/御国色素株式会社製)0.16部、青色顔料(商品名:SPブルー5131/御国色素株式会社製)0.01部、黒色顔料(商品名:サンダイDPブラックCN/山陽色素株式会社製)0.01部に変更した以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0044】
(実施例10)
裏打層用紙料の調製において、パルプの配合を、NUKP100部(フリーネス500mlCSF)とし、さらに着色料を添加しないで裏打層用の紙料とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0045】
(実施例11)
凝集パルプ層用紙料の調製において、硫酸バンドの添加後で有機高分子凝集剤の添加前に、着色料として赤色顔料(商品名:SPレッドFTY/御国色素株式会社製)0.09部、黒色顔料(商品名:サンダイDPブラックCN/山陽色素株式会社製)0.02部をそれぞれ添加して攪拌し凝集パルプ層用の紙料とし、さらに裏打層用の紙料の調整において、着色料を添加しなかった以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0046】
(実施例12)
模様紙の抄紙において、凝集パルプ層の米坪を20g/m
2とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0047】
(実施例13)
模様紙の抄紙において、凝集パルプ層の米坪を120g/m
2とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0048】
(実施例14)
実施例1において使用した凝集パルプ層用紙料、裏打層用紙料、および非凝集パルプ層用を用いて、円網式抄紙機にて凝集パルプ層/裏打層/裏打層/非凝集パルプ層の順に積層された構成となるように4層抄き合わせで湿紙を抄紙し、プレスにて脱水後、多筒式シリンダードライヤーに凝集パルプ層が接触するようにして乾燥させた。その後、2本ロールサイズプレスにてポリアクリルアミド系紙力剤(商品名:ST5000/星光PMC株式会社製)8%水溶液を、用紙の両面あたり50cc/m
2塗布した後、シリンダードライヤーにて乾燥し、米坪250g/m
2、水分7%の模様紙を得た。各層の米坪は、凝集パルプ層を40g/m
2、2つの裏打層を70g/m
2、非凝集パルプ層を70g/m
2とした。
【0049】
(比較例1)
凝集パルプ層用紙料の調製において、パルプの配合を、NBKP20部、LBKP80部とからなるパルプ(フリーネス570mlCSF)とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0050】
(比較例2)
凝集パルプ層用紙料の調製において、有機高分子凝集剤を添加しなかった以外は実施例3と同様にして模様紙を得た。
【0051】
(比較例3)
裏打層用紙料の調製において、着色料の添加量を赤色顔料(商品名:SPレッドFTY/御国色素株式会社製)0.018部、黒色顔料(商品名:サンダイDPブラックCN/山陽色素株式会社製)0.002部に変更した以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0052】
(比較例4)
模様紙の抄紙において、凝集パルプ層の米坪を150g/m
2とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0053】
(比較例5)
模様紙の抄紙において、凝集パルプ層の米坪を15g/m
2とした以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0054】
(比較例6)
裏打層用紙料の調製において、着色料の添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして模様紙を得た。
【0055】
各実施例及び比較例で得られた模様紙の構成の概要と評価結果とを表1に示す。尚、評価については以下の方法で行った。
【0056】
【表1】
【0057】
<ΔE
*の測定>
色彩色差計(CR−300/コニカミノルタ株式会社製)を用い、凝集パルプ層表面の任意の10点の箇所における色相(L
*、a
*、b
*)を測定(D65光源使用、測定径8mm)し、L
*の値が最大である箇所と最小である箇所のL
*、a
*、b
*値を下記式(1)に当てはめてΔE
*を算出した。
(式1)ΔE
*=[(L*
max−L*
min)
2+(a*
max−a*
min)
2+(b*
max−b*
min)
2)]
1/2
【0058】
ここで(式1)において、L
*max、a
*max、b
*maxは、L
*の値が最大の箇所のL
*、a
*、b
*値であり、L
*min、a
*min、b
*minはL
*の値が最小の箇所のL
*、a
*、b
*値である。
【0059】
<凝集パルプ層表面から見た濃淡>
凝集パルプ層から見た濃淡を視覚で判断し、4段階で評価した。4段階中、濃淡が非常に良好なものを◎とし、濃淡が良好なものを○とし、濃淡が弱いものを△とし、濃淡がほぼ無いものを×とした。◎と○のものを視認性が良いものとして合格、△と×のものを視認性が悪いものとして不合格とした。