(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
図1は、本発明に係る梯子状織物の第1実施形態の平面図である。
図1において、梯子状織物Aは、所定巾を有する2条の帯部分A′と、これら左右の帯部分A′の間に適宜間隔で架橋状に配されてその間に開口部aを形成する架橋部分A″と、を有する。
【0016】
図2は、梯子状織物Aの組織を説明するため、
図1中の丸囲みの部分を拡大して示す図である。
さらに
図3は、
図2の要部を拡大して示す図である。
【0017】
帯部分A′は、経糸1と緯糸2から織成されている。
経糸1および緯糸2はフィラメント糸であって、例えば、ポリエステル繊維等の引張り強度に優れたフィラメントを複数束ねたものを使用するのが好ましい。
ここで、
図4は、
図2中のIV−IV線における断面図である。
図5は、
図2中のV−Vにおける線断面図である。
帯部分A′の組織は、
図4、
図5からも明らかなように、緯糸2がニードルにより送られるため2本ずつ1組みとなった状態で経糸1に織り込まれた組織となっている。
なお、緯糸2がシャトルにより送られる織機では、経糸1と1本ずつ織成することが可能となる。
【0018】
図6は、
図2中のVI−VI線における断面図である。
上記架橋部分A″は、上記帯部分A″の緯糸2を8本(4組)ずつ絞り込んで、その間に穴(開口部)aを形成するようになっている。
図7は、
図3中のVII―VII線における断面図である。
【0019】
該緯糸2の絞り込みは、
図3および
図7からも明らかなように、上記帯部分A′の内側に沿って織り込んだ4本の絞用経糸3と、該絞用経糸3に絡むように織り込まれた搦糸4と、により行われる。
絞用経糸3に一番内側のものから順に符号31、32、33、34を付ける。
4本の絞用経糸3のうち、真ん中の二本32、33は、8本(4組)ずつの緯糸2を一単位として跨ぐように緯糸2に織り込まれている。
言い換えると、連続8本(4組)の緯糸2が絞用経糸32、33の上(または下)を亘ったあと、絞用経糸32、33の上下を組み換えて連続8本(4組)の緯糸2が絞用経糸3の下(または上)を亘る。
【0020】
4本の絞用経糸3のうち、両端の二本31、34は、4本(2組)ずつの緯糸2を一単位として跨ぐように緯糸2に織り込まれている。
言い換えると、連続4本(2組)の緯糸2が絞用経糸31、34の上(または下)を亘ったあと、絞用経糸31、34の上下を組み換えて連続4本(2組)の緯糸2が絞用経糸3の下(または上)を亘る。
【0021】
搦糸4は、これらの4本の絞用経糸3に対してレノ織りになっている。
搦糸4は、8本(4組)ずつの緯糸2を一単位とし、4本の絞用経糸3に対して左右に交差している。
図3でいうと、搦糸4は、4本の絞用経糸3の右側で連続8本(4組)の緯糸2の上を亘り、その後、4本の絞用経糸3の裏を通って、次は、4本の絞用経糸3の左側で連続8本(4組)の緯糸2の上を亘る。このように搦糸4を入れることにより、架橋部分を構成する連続8本(4組)の緯糸2を集束して上下方向に穴aを広げ、穴aが十分に広がるようにする。(
図3中の白抜き矢印により緯糸2の移動方向を示した。)また、搦糸4により、連続8本(4組)の緯糸2が集束した状態をしっかりと維持し、穴が塞がらないようにする。さらに、搦糸4により、4本の絞用経糸3が横方向にずれないようにしている。
【0022】
搦糸4をレノ織りとするのは、4本の絞用経糸3の横方向のずれを規制しておくためである。
搦糸4をレノ織りで入れておくことにより、絞用経糸3が横にずれて穴が塞がるのを規制している。
【0023】
搦糸4はモノフィラメントとすることが好ましい。
搦糸4には、穴を広げるように緯糸2を束ねてくる役割がある。搦糸4が緯糸2と同じフィラメント糸であると、両者の間に大きな摩擦が働き、緯糸2がスムースに動かない。すると、穴aが上下方向に十分に広がらないという問題が生じる。フィラメント糸は交差点で平面的に潰れて互いの接触面積が大きくなり、両者の間に大きな摩擦が生じる。この性質は組織を維持する織物としては大切であるが、梯子状織物の穴を広げるという搦糸4の特殊な役割を考えると、緯糸2は搦糸4に対して容易に滑ることが必要である。
従って、フィラメント糸である緯糸2との間に大きな摩擦が働かないように、搦糸4はフィラメント糸ではなくモノフィラメントとすることが好ましい。
【0024】
さらに、摩擦を少なくするには、搦糸4の断面形状を円形にして接触面積ができる限り小さくなるようにするのが好ましい。
【0025】
また、搦糸4の直径φを0.25mm程度とすることが好ましい。
これは、マルチフィラメント糸の直径φが例えば0.32mm程度であることに対し、0.5倍以上である。
搦糸4は、穴を広げるように緯糸2を束ねてきて、さらに、緯糸2を集束した状態を維持しておく強度が求められる。
したがって、搦糸4は、十分な強度を持つようにポリエステル等のモノフィラメントであって太い方が良い。
(ちなみに、単純に通常のフィラメント糸では、複数本の緯糸2を束ねてくる力が得られない。)
連続8本(4組)の緯糸2が集束した状態をしっかりと維持できる強度が搦糸4の径の下限を規定する。
【0026】
ただし、搦糸4はレノ織りで織り込まれるのであるから、搦糸4の径の上限はレノ織りできる限界の太さによって規制される。搦糸4をレノ織りで織り込むには、搦糸を宙に吊りながら左右に転(捻)じなければならず、搦糸を操る綜絖にはかなりの負担がかかる。モノフィラメントが太くなると織機を構成する金属よりも強度が強くなるので、織機の綜絖の方に大きな負担が掛かり、糸(モノフィラメント)が上手く送られないと織機の綜絖の方が破損する。経験的に、直径1mmを超えるモノフィラメントをレノ織りするのは不可能である。
【0027】
緯糸2を集束できる強度があることと、レノ織りできることと、の二条件により搦糸4の径には下限と上限がある。
そこで、搦糸4は、ポリエステル等のモノフィラメントであって、直径が0.1mmから1.0mmとすることが好ましく、さらには、0.2mmから0.7mmとすることがより好ましく、さらには、0.2mmから0.4mmとすることがより好ましい。
【0028】
このような構成により、十分に広い穴を形成し、さらに穴を維持する梯子状織物を得ることができる。
【0029】
(梯子状織物の使用例)
梯子状織物の使用例を簡単に説明しておく。
ここでは、テント等の布シートSを、取付布Tと梯子状織物Aと止着具Bとを用いてポールPに固定する構造を説明する。
【0030】
まず、
図8に示すように、梯子状織物Aの一端部付近の開口部aに止着具Bのボス部B2を通す。次に、
図9に示すように、梯子状織物Aの上記一端部を上記取付布Tの穴T″に通してから折り曲げて、さらに、梯子状織物Aの端部の開口部aに止着具Bのボス部B2を通す。そして、該ボス部B2に止着環B3を嵌め込み固定する。
【0031】
次に、上記梯子状織物Aの他側を上記取付布Tの穴T″に通して(
図9参照)から梯子状織物Aを折り返えし、上記一端部の外側に重ね合わせると共に絞り込んだ状態で、
図10に示すように、梯子状織物Aの他端部の開口部aに上記止着具Bのボス部B2を差し込む。最終的に、
図11に示すように、ボス部B2に他方の止着環B4を嵌め込んで固定する。なお、梯子状織物Aの開口部aにボス部B2を通す際には、図示(
図11)のように梯子状織物Aの端部を折り返しておくのが、結束強度の観点から好ましい。
【0032】
(変形例1)
図12に例示するように、搦糸4を、4本の絞用縦糸3の両側に入れるようにしてもよい。
絞用縦糸3の横ずれを規制する作用についても、緯糸を集束する作用についても、2倍の効果が得られる。
また、搦糸4を絞用縦糸3の両側に入れるとすれば、一本の搦糸4の強度を弱くしてもよい。
この場合、一本の搦糸4は、ポリエステル等のモノフィラメントであって、その直径を0.15mm〜0.25mm程度にしてもよい。
太い搦糸4をレノ織りにするのは織機に負担が大きいので、搦糸4を小さくできるのは大きなメリットである。
ただし、レノ織りが多くなるので織り作業自体はやや複雑化するのであるが、織機の負担が軽くなるのはやはりメリットが大きい。
【0033】
(変形例2)
穴aは一列だけに限定されない。例えば、
図13に示すように、穴aが2列以上設けられてもよい。
【0034】
このような梯子状織物の利用方法としては、上記固定構造の他、例えば吊り下げ具としての利用も考えられる。この梯子状織物を壁等に吊しておき、そして、梯子状織物の穴にフックやハンガーを引っ掛けて、小物や洗濯物を吊す、といった利用が例として挙げられる。
従来の梯子状織物は、穴が小さかったり時間が経つと穴が徐々に小さくなってきたりといった変化があったため、このような吊り下げ具としての利用はやや難しかった。(上記固定構造であれば、一旦固定してしまえば穴が塞がっても問題が無い。)この点、本発明によれば、十分に穴が開き、さらに、穴が長期に亘って維持されるので、引っ掛けたり取り外したりといった繰り返しの利用にも十分に耐えられる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
搦糸4をモノフィラメントではなく、マルチフィラメント糸としてもよい。
この場合、撚りを強くかけて、潰れにくくしておくことが望ましい。
マルチフィラメント糸の直径が0.2mmから0.6mmであり、撚りを80〜240ターン/m程度にすることが好ましい。さらに好ましくは、100〜150ターン/mであり、120ターン/m程度とするのがより好ましい。
【0036】
架橋部分A″は、上記帯部分A″の緯糸2を8本(4組)ずつ絞って構成するとしたが、数字は例示に過ぎず、架橋部分は20本(10組)や30本(15組)の緯糸2で構成されてもよい。
【0037】
上記第1実施形態において、絞用経糸3(31、32、33、34)を緯糸2に織り込むにあたり、真ん中の二本32、33は緯糸2を8本(4組)ずつ跨ぐようにし、両端の二本31、34は、緯糸2を4本(2組)ずつ跨ぐようにした。
例えば、
図14に示すように、両端の二本31、34についても緯糸2を8本(4組)ずつ跨ぐようにしてももちろんよい。
【0038】
ただ、
図14のようにすべての絞用経糸3(31、32、33、34)が緯糸2を8本(4組)ずつ跨ぐと、搦糸4が一本のときは良いが、変形例1のように搦糸4を絞用縦糸3(31−34)の両側に入れるとなるとうまくいかない。
搦糸4が絞用経糸3および緯糸2を絞ったり押えたりするには、搦糸4と絞用経糸3とがクロス(交差)しなければならない。
(交差していないと、搦糸4が絞用経糸3を乗り越えてしまって、絞用経糸3および緯糸2に力を掛けられない。)
変形例1のごとく搦糸4を絞用経糸3の両側にいれるとして、絞用経糸3も搦糸4も同じピッチで緯糸2を跨いでいると、どちらかの側で交差(クロス)しないところがでてくる。
したがって、変形例1のように搦糸4を絞用経糸3の両側にいれる場合には、少なくとも搦糸4に隣り合う絞用経糸3については搦糸4と異なるピッチで緯糸に織り込み、架橋部分を絞り込めるように搦糸4と絞用経糸3とが交差するようにする。