(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377568
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】立体織物
(51)【国際特許分類】
D03D 11/00 20060101AFI20180813BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20180813BHJP
E04H 15/64 20060101ALI20180813BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
D03D1/00 Z
E04H15/64
E04H15/54
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-89959(P2015-89959)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-204793(P2016-204793A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】595054213
【氏名又は名称】株式会社オルセン
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 悠三
【審査官】
春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−506304(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0270389(US,A1)
【文献】
特開平08−337940(JP,A)
【文献】
実開平01−161279(JP,U)
【文献】
登録実用新案第368596(JP,Z2)
【文献】
特表2012−507640(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0105269(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3143373(JP,U)
【文献】
実開平01−030376(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
E04H15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅を有する長尺状に経糸と緯糸とで織られたフランジ部と、
前記フランジ部の経糸方向に長さを有し、かつ、前記フランジ部の幅方向途中からヒレ状に分岐するように設けられたバーチカル部と、を有する立体織物において、
緯糸方向に沿って当該立体織物を見たとき、前記フランジ部とバーチカル部との間に穴がある
ことを特徴とする立体織物。
【請求項2】
請求項1に記載の立体織物において、
前記フランジ部の幅方向の両端には、縦方向に沿って押え紐が緯糸に織り込まれ、
前記穴に対応する位置においては緯糸が連続して押え紐の下を渡り、押え紐とフランジ部との間に輪っかが設けられている
ことを特徴とする立体織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体織物に関する。具体的には、所定幅を有するフランジ部の幅方向途中からバーチカル部をヒレ状に一体的に分岐させて構成される立体織物に関する。
【背景技術】
【0002】
テント布SをパイプPに固定するあたり、テント布Sに取付けた取付布Tをパイプに固定する方法がとられる。例えば、
図1に示すように、テント布Sのパイプ取付部分に取付布Tを縫いつけ、該取付布Tを点線で示すようにパイプPに紐等で結束して取り付けるものがある。または、
図2に示すように、取付布Tの中央部に所定幅の粗目部分を織成し、この粗目部分を溶着性シート等によりテント布Sに溶着し、点線で示すように該取付布TをパイプPに取り付けるものがある。
【0003】
ここで、後の説明のため、取付布TをパイプPに留め付けする留付構造について簡単に紹介しておく。
なお、取付布TをパイプPに留め付ける構造自体は、出願人により既に提案されているものである(例えば特許3101756号)。
ここでは、テント等の布シートSを、取付布Tと梯子状織物Aと止着具Bとを用いてポールPに固定する構造を説明する。
【0004】
まず、
図3に示すように、梯子状織物Aの一端部付近の開口部aに止着具Bのボス部B2を通す。次に、
図4に示すように、梯子状織物Aの一端部を上記取付布Tの穴T″に通してから折り曲げて、さらに、梯子状織物Aの端部の開口部aに止着具Bのボス部B2を通す。そして、該ボス部B2に止着環B3を嵌め込み固定する。
【0005】
次に、上記梯子状織物Aの他側を上記取付布Tの穴T″に通して(
図4参照)から梯子状織物Aを折り返えし、前記一端部の外側に重ね合わせると共に絞り込んだ状態で、
図5に示すように、梯子状織物Aの他端部の開口部aに止着具Bのボス部B2を差し込む。最終的に、
図6に示すように、ボス部B2に他方の止着環B4を嵌め込んで固定する。
なお、梯子状織物Aの開口部aにボス部B2を通す際には、図示(
図6)のように梯子状織物Aの端部を折り返しておくのが、結束強度の観点から好ましい。
【0006】
しかし、テント布Sに取付布Tを縫い付けると、縫い目に針穴が開いてしまうので、縫い目から漏水してくる恐れがある。また、テント布Sに取付布Tを溶着する方法では、僅かな溶着部分に引っ張り力が集中し、溶着部分が剥がれやすいという問題が生じる。
【0007】
そこで、本出願人は、所定幅のフランジ部(取付布T)の幅方向途中からヒレ状にバーチカル部が分岐するように織成した立体織物を提案している(特許3318668号)。このバーチカル部をテント布Sに溶着するようにすれば、バーチカル部の広い面積でテント布Sとフランジ部(取付布T)とが接合するので、テント布Sからフランジ部(取付布T)が剥がれるような心配は無くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3101756号
【特許文献2】特許3318668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フランジ部に梯子状織物Aを通す長穴T″をあける必要がある。長穴は、立体織物を織り上げたあとでパンチによって打ち抜かれる。さらに、穴の周囲がほつれないよう、穴の周囲に熱を掛けて融着するなどの処理が必要になる。一つのテントを設置するには数百箇所を留付構造で固定しなければならないため、穴開け作業も数百箇所に亘って必要になってくる。これは、手間が掛かり、コストにも影響する。穴開け処理を必要としない立体織物が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の立体織物は、
所定幅を有する長尺状に経糸と緯糸とで織られたフランジ部と、
前記フランジ部の経糸方向に長さを有し、かつ、前記フランジ部の幅方向途中からヒレ状に分岐するように設けられたバーチカル部と、を有する立体織物において、
緯糸方向に沿って当該立体織物を見たとき、前記フランジ部とバーチカル部との間に穴がある
ことを特徴とする。
【0011】
本発明では、
前記フランジ部の幅方向の両端には、縦方向に沿って押え紐が緯糸に織り込まれ、
前記穴に対応する位置においては緯糸が連続して押え紐の下を渡り、押え紐とフランジ部との間に輪っかが設けられている
ことが好ましい。
【0012】
本発明の留付具は、
前記穴に通される梯子状織物と、
前記梯子状織物の穴に挿通されるボス部、および、前記ボス部に外嵌してボス部に係着する止着環を有する止着具と、を具備した
ことを特徴とする。
【0013】
本発明のテント等の設営方法は、
テント等の布シートに前記バーチカル部を取り付け、
前記留付具により、前記フランジ部をポールに取り付ける
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図8】
図7中のVIII−VIII線における端面図。
【
図10】分岐位置Kにおいて、立体織物を縦方向(経糸方向)に切断した端面図。
【
図12】留付構造を用いてフランジ部をパイプに留め付けた状態を示す図
【
図15】分岐位置Kにおいて、立体織物1を縦方向(経糸方向)に切断したときの構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の立体織物に係る第1実施形態について説明する。
図7は、第1実施形態の斜視図である。
立体織物1は、所定の幅W(例えば500〜600mm)を有する長尺状のフランジ部1a(1a′、1a″)と、該フランジ部1aの幅方向途中(分岐位置K)から経糸方向に沿って各々別の方向にヒレ状に分岐された2枚のバーチカル部1b(1b′、1b″)と、を有する。
【0016】
尚、立体織物1の長さ、フランジ部1aの幅W、バーチカル部1bの幅U、バーチカル部1bの分岐位置Kなどは、立体織物1の使用目的に応じて適宜設定される。
【0017】
図8と
図9とに、立体織物1を幅方向(緯糸方向)に切断した端面図を示す。
図8は、
図7中のVIII−VIII線における端面図である。
図9は、
図7中のIX−IX線における端面図である。すなわち、
図8の切断線と
図9の切断線とでは、縦方向の位置が異なる。
【0018】
図8における切断面おいては、フランジ部1aとバーチカル部1bとは分岐位置Kにおいて綴糸Rにより織成されて一体的につながっている。一方、
図9における切断面においては、綴糸Rがフランジ部1aとバーチカル部1bとに亘っておらず、フランジ部1aとバーチカル部1bとの間に穴101があいている。
【0019】
図10は、分岐位置Kにおいて、立体織物1を縦方向(経糸方向)に切断した端面図である。
図10に示されるように、横から見たときに、フランジ部1aとバーチカル部1bとの間に所定ピッチで穴が開いている。
【0020】
また、
図7に戻って、フランジ部1aの幅方向の両端には、縦方向に沿って押え紐200が織り込まれている。押え紐200は、緯糸Y1に織り込まれることによって固定されるのであるが、前記穴に対応する位置においては緯糸が連続して押え紐200の下を渡り、結果として、押え紐200とフランジ部1aとの間に輪っか(浮帯)201が設けられている。
【0021】
このような立体織物1のバーチカル部1bとフランジ部1aとの間に設けられた穴101の役割について説明する。
まず
図11を参照されたい。
図11は、
図9に対応する図であるが、バーチカル部1bの裏面にテント布Sを溶着し、さらに、穴101に梯子状織物Aを通したところである。梯子状織物Aは、穴101を通り、さらに、押え紐200の下をくぐって輪っか(浮帯)201を通っている。次に、
図12を参照されたい。
図12は、前述した留付構造を用いてフランジ部1aをパイプPに留め付けた状態を示す図である。このように、立体織物1のバーチカル部1bとフランジ部1aとの間に穴101があることにより、フランジ部1aに穴をパンチングする必要は無くなる。
【0022】
図13、
図14、
図15を参照して、立体織物1の織成方法を説明する。
図13は、
図7中のXIII−XIII線における端面図であって、
図9に対応している。
図14は、
図7中のXIV−XIV線における端面図であって、
図8に対応している。
なお、図が分かりやすいように、経糸X1、X2の本数を少なくしてデフォルメしている。
図13、
図14に示すように、上下2段のニードルN(N1およびN2)により、フランジ部1a(1a′、1a″)とバーチカル部1b(1b′、1b″)をそれぞれ織成していく。上側に位置するニードルN1の先端に掛留された緯糸Y1は、バーチカル部1bの経糸X1に織り込まれていき、バーチカル部1bの端において該緯糸Y1自身によるループ結びQを行って折り返され初期位置に戻る。ニードルN1がその初期位置に戻ったら、経糸X1の上下の開きを動かしてから、ニードルN1を往復移動させて、緯糸Y1を経糸X1に織り込む。(
図13、
図14では綾織りとして図示しているが、織り方は限定されない。)
【0023】
下側に位置するニードルN2も上記ニードルN1と同時に往復移動して、その緯糸Y2と下側の経糸X2とを織成してフランジ部1aを構成する。
【0024】
ニードルN1、N2によって二層の織物が織成されていくと同時に、分岐位置Kに綴糸Rを織り込んで、バーチカル部1bとフランジ部1aとを縫合するわけであるが、穴101に対応する部分においては綴糸Rは一層だけに縫い込まれ、二層を通らないことになる。
【0025】
図15は、分岐位置Kにおいて、立体織物1を縦方向(経糸方向)に切断したときの構造を示す図である。
綴糸は二本R1、R2であり、綴糸R1、R2は、穴101に対応する部分においては、バーチカル部1bの緯糸に織り込まれるだけで、フランジ部1aの緯糸には交差しない。
一方、穴101以外の部分、つまり、バーチカル部1bとフランジ部1aとが縫合される部分では、綴糸R1、R2はバーチカル部1bおよびフランジ部1aの緯糸Y1、Y2に交差する。
これは、穴101に対応する部分においては綴糸R1、R2が通された綜絖301、302が上で留まっているのに対し、バーチカル部1bとフランジ部1aとが縫合される部分では前記綜絖301、302がバーチカル部1bとフランジ部1aとの間で上下動することで実現される。
【0026】
このような本実施形態によれば、織り上げ時に穴101も同時にできるのであるから、穴開け処理を別途に行う必要はない。
したがって、作業工程の画期的な削減、作業効率向上およびコスト削減を図ることができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
ここまでの説明では、フランジ部1aとバーチカル部1bとの間に穴101があいていると表現した。
これは、例えば、
図10のU1で示すように、穴101を中心に見て、穴101の両隣の接合部があると見ると、穴101があいていると見える。
別の見方もできるので付言しておく。例えば、
図10のU2に示すように、接合部を中心に見て、両隣の穴101の中心にある範囲を一つの単位(ユニットU2)とみる。すると、略X字の単位が連続しているように見える。両者は単なる表現上の差異に過ぎない。
【0028】
織り組織そのものは特段限定されず、朱子織り、綾織り、平織りなど、適宜選択すればよい。
【符号の説明】
【0029】
1…立体織物、1a…フランジ部、1b…バーチカル部、101…穴、200…押え紐、301、302…綜絖、A…梯子状織物、B…止着具、B2…ボス部、B3…止着環、B4…止着環、K…分岐位置、N1…ニードル、N2…ニードル、P…パイプ(ポール)、R、R1、R2…綴糸、S…テント布、T…取付布、X1…経糸、X2…経糸、Y1…緯糸、Y2…緯糸。