特許第6377571号(P6377571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377571
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20180813BHJP
   F24F 6/04 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   F24F6/00 A
   F24F6/00 C
   F24F6/04
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-95475(P2015-95475)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-211781(P2016-211781A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木 和幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 直
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−057541(JP,U)
【文献】 特開2012−112587(JP,A)
【文献】 特開2009−014254(JP,A)
【文献】 実開平02−128010(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00−6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に着脱自在に装着される給水タンクと、前記給水タンクの下部に設けられた給水口と、前記給水口を介して前記給水タンクから供給された水により所定の水面が形成される水槽部と、前記水槽部の水中に下部が浸されて設置される気化フィルタと、前記水槽部の水面の高さを可変させる水面変更機構を備え、前記水面変更機構は、前記給水タンクの重量によって前記給水口の垂直方向の位置を可変させることで水面の高さを変更するものであることを特徴とする加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の乾燥を防止するための加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、水を貯えた水槽部内に気化フィルタを設置し、この気化フィルタに送風することにより加湿空気を発生させる気化式の加湿装置が提案されている。
【0003】
このような気化式の加湿装置では、水槽部には給水タンクから供給された水が一定水位貯えられていて、気化フィルタはこの水槽部内の水に一部が浸された状態で設置されている。また、気化フィルタには、例えばレーヨンやポリエステルなどの繊維からなる不織布をプリーツ状に折り曲げて形成されたものが用いられ、毛細管現象によって水槽部内の水を上方まで吸い上げることでフィルタ全体が湿潤している。そして、気化フィルタに通風することで気化フィルタの水分が気化されて加湿空気となるので、この加湿空気を室内に放出することで加湿運転が行われるようになっている。
【0004】
また通常、加湿水としては水道水が使用される。水道水中には水溶性の不純物であるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が含まれていて、加湿運転を行うことで気化フィルタの水分は気化するが、ミネラル成分は気化することができずにスケールとして気化フィルタに析出してしまう。析出したスケールは毛細管現象を妨げて、これが加湿能力の低下の原因となるため、気化フィルタには定期的な清掃が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−47963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の構成における加湿装置では、通風により気化フィルタの水分が気化すると、気化した分の水が毛細管現象によって吸い上げられるため水槽部内の水が消費されるが、消費された分の水は給水タンクから供給されるので水槽部の水位は常に一定に保たれており、いわゆる定水面が形成されている。この定水面付近は最も水が気化しやすく、また析出したスケールにより気化フィルタの水を吸い上げる能力が低下すると、スケールの析出する位置が下方に集中するようになるため、定水面の直上部近傍は他の部分に比べてスケールの析出量が多くなってしまう。さらには、水中に含まれる水垢や埃などの汚れもこの付近で気化フィルタに付着する。
【0007】
そして、このように気化フィルタの定水面の直上部近傍で多量にスケールが析出したり汚れが付着したりすると、それより上方への水の吸い上げが阻害されてしまうことになる。そのため、定水面の直上部近傍より上の部分にはスケールがそれほど析出しておらず十分に吸水が可能な状態であるにもかかわらず、気化フィルタは湿潤することができなくなって加湿能力が低下してしまう虞があった。また、気化フィルタの洗浄頻度も高くなるため、フィルタ寿命の低下を招いてしまっていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、気化フィルタの部分的なスケールの析出等を抑え、長期にわたって加湿能力を維持するとともに気化フィルタの長寿命化を図ることのできる加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体に着脱自在に装着される給水タンクと、前記給水タンクの下部に設けられた給水口と、前記給水口を介して前記給水タンクから供給された水により所定の水面が形成される水槽部と、前記水槽部の水中に下部が浸されて設置される気化フィルタと、前記水槽部の水面の高さを可変させる水面変更機構を備え、前記水面変更機構は、前記給水タンクの重量によって前記給水口の垂直方向の位置を可変させることで水面の高さを変更するものであることを特徴とする加湿装置である。
【発明の効果】
【0012】
上述のように構成することにより、スケールが多量に析出したり汚れが付着する位置が一定ではなくなるため、気化フィルタの一部分に集中的にスケールが析出したり汚れたりすることが抑えられ、加湿能力を長期にわたって維持するとともに気化フィルタの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】加湿装置の外観斜視図である。
図2】実施例1の加湿装置の縦断面構成図である。
図3】実施例1の加湿装置の横断面構成図である。
図4】実施例1の水タンク装着部の拡大図である。
図5】実施例1の水面変更機構が縮んだ状態での水面位置を説明する図である。
図6】実施例1の水面変更機構が最も伸びた状態での水面位置を説明する図である。
図7】実施例2の水面変更機構を説明する図であって、(a)は錘よりも給水タンクの重量が重い場合、(b)は錘よりも給水タンクの重量が軽い場合を表している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0015】
本発明は、水槽部内に気化フィルタを設置し、この気化フィルタに送風することにより加湿空気を発生させる気化式の加湿装置であって、水槽部に形成される水面の位置が変化する構成としたものである。
【0016】
このような加湿装置においては、水槽部には一定の水が貯えられていわゆる定水面が形成されるようになっているが、気化フィルタの水面直上付近には他の部分と比べてスケールが多く析出する傾向があるため、水面の高さが常に一定であるとその部分に集中的にスケールが析出してしまう。また、水面付近にはスケールだけでなく水垢や埃などの汚れも付着する。そしてスケールや汚れが蓄積して気化フィルタが目詰まりを起こすと、それより上方への水の吸い上げを阻害して加湿能力の低下を引き起こすことになる。そこで、水面の高さが変化する構成とすることにより、スケールの析出や汚れが付着しやすい位置を変えることができるため、気化フィルタの一部分に集中的にスケールが析出したり汚れたりしてしまうことが抑えられる。また、水面が高い位置に変更されると、低い位置の水面のときに気化フィルタに析出したスケールは水中に没することになり、スケールは水に溶ける性質があるため、この低い位置でのスケールは水中に溶解する。よって、気化フィルタの目詰まりは解消されて加湿能力の低下を防止することができる。さらには、気化フィルタの清掃頻度が少なくなるので、気化フィルタの寿命を延ばすことも可能となる。
【0017】
また、水面の高さを変更するための手段としては、給水口の垂直方向の位置を変更することで、給水口の高さと同じ高さに水面を形成することができる。
【0018】
また、給水タンクの重量によって給水口の垂直方向の位置を可変とするため、加湿運転を継続することで給水タンクの水が消費されれば必ず給水口の位置が変更されることになり、時間の経過に伴って確実に水面の高さを変更させることができる。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の一実施例としての加湿装置を図面により説明する。
【0020】
図1は加湿装置の外観斜視図である。加湿装置の本体1の上面には、加湿装置の動作を指示するためのスイッチや運転状態を表示するランプ等が複数設けられた表示操作部2、加湿空気を吹き出す吹出口3が設けられている。また、本体1の背面には室内の空気を本体1に取り入れるための吸込口4が設けられ、後述する水槽部6に水を供給する給水タンク5が本体1に着脱自在に設けられる。
【0021】
図2は加湿装置の縦断面構成図、図3は横断面構成図である。本体1の底部には給水タンク5から水が供給されて一定量の水を貯える水槽部6と、この水槽部6内に吸水性を有する気化フィルタ7が配置されていて、気化フィルタ7は一部が水槽部6内の水に浸漬されており、この水を吸い上げることにより湿潤している。
【0022】
水槽部6は天面が開口した形状であり、給水タンク5を取り外すと本体1から引出せるように摺動可能に設けられている。また、水槽部6は給水タンク5を装着する給水タンク装着部6aと、気化フィルタ7を装着する気化フィルタ装着部6bに区画されており、給水タンク装着部6aには水槽部6の水位に応じて回動して水槽部6内の水位を検出するフロート8と、後述する給水キャップ13の給水口15を開放するピン部9が設けられている。
【0023】
さらに、給水タンク装着部6aには図4の拡大図に示すように、バネ体10と支持板11から構成される水面変更機構12が設けられていて、バネ体10が給水タンク5の重量によって伸び縮みすることで、給水タンク5の位置が上下に変動するようになっている。また、給水タンク5の先端には、給水キャップ13が取り付けられており、この給水キャップ13には常閉弁からなる弁機構14を組み付けた給水口15が設けられている。これにより、給水タンク5を水槽部6に立設させると、水槽部6のピン部9が給水キャップ13の弁機構14のバネを押し上げて給水口15を開放する。
【0024】
したがって、給水タンク5を本体1に装着すると、給水口15が開放されて給水タンク5内の水が水槽部6に供給される。そして、水槽部6の水面が上昇して給水口15の先端に到達すると、給水タンク5から水槽部6への水の供給が停止するので水面は一定に保たれ、いわゆる定水面が形成されるようになっている。
【0025】
そして、気化フィルタ7の上部には送風機16が設けられており、この送風機16の駆動により吸込口4から吹出口3にいたる通風路に送風が行われる。また、通風路中の気化フィルタ7の上流には、吸込口4から導入された空気を加熱して温風とするための温風用ヒータ(図示せず)が設けられている。
【0026】
次に、上述の構成からなる加湿装置の動作について説明する。
【0027】
給水タンク5に水を入れて本体1に装着し、表示操作部2の運転スイッチを操作して運転開始の指示を行うと送風機16が駆動される。送風機16の駆動によって、室内の空気は吸込口4から本体1内に取り入れられ、取り入れられた空気は温風用ヒータを通過する間に温風となって、さらに温風は気化フィルタ7を通過する際に加湿空気となって吹出口3から排出されて加湿運転が行われる。
【0028】
このように加湿運転が行われると、気化フィルタ7を通過する温風により気化フィルタ7の水分が気化する。気化した分の水は気化フィルタ7の毛細管現象によって水槽部6から吸い上げられるため水槽部6内の水が消費されるが、消費された分の水は給水タンク5から供給されるので水槽部6の水位は常に一定に保たれている。このとき、給水タンク5内の水が所定量以上あれば、図5に示すようにバネ体10は給水タンク5の重量によって縮んだ状態となっていて、このとき水槽部6には水面Aが形成されることになる。
【0029】
また、加湿運転が行われると、送風機16からの送風により気化フィルタ7に含まれる水分は気化するが、水中に含まれるミネラル成分は気化することができずにスケールとして気化フィルタ7に析出する。なお、水面付近は最も水が気化しやすいため、水面の直上部近傍は他の部分に比べてスケールが多く析出することになる。また、水面付近にはスケールだけでなく水垢や埃などの汚れも付着する。
【0030】
そして加湿運転を継続し、給水タンク5の水が少なくなって所定量以下となるとバネ体10の抗力により給水タンク5の位置が上方に移動する。図6はバネ体10が最も伸びた状態を表した図であって、給水タンク5の位置が上方に移動すると給水口15先端の位置も高くなるため水面の高さが上昇して水面Bを形成し、気化フィルタ7の水に浸かる位置が上昇する。つまり、給水タンク5の重量によって水面の高さが変化し、これによりスケールの析出や汚れの付着しやすい位置も徐々に上方に移動していくので、気化フィルタ7のある一部分に集中的にスケールが析出したり汚れたりして目詰まりを起こしてしまうことが抑えられる。その結果、水の吸い上げが阻害されてしまうことが抑えられるので、気化フィルタ7は全体に水を吸い上げて湿潤することが可能となり、加湿能力の低下を抑えることができる。
【0031】
また、水面がAのときに水面の直上部近傍で気化フィルタ7に析出したスケールは、水面が上昇すると水中に没することになる。スケールは水に溶ける性質があるため、水面がAのときに析出したスケールは水に溶解することとなり、この部分での気化フィルタ7の目詰まりは解消されて加湿能力の低下を防止することができる。さらには、気化フィルタ7の清掃の頻度が少なくなるので、気化フィルタ7の寿命を延ばすことも可能となる。
【0032】
そして給水タンク5の水がなくなると、水槽部6の水が消費されても給水タンク5から水が供給されなくなるため、水槽部6の水位は徐々に低下していく。そして所定水位以下になるとフロート8が作動するので、表示操作部2には給水サインを出すことで水がなくなったことを報知して使用者に給水タンク5への水の補給を促す。そして、使用者が給水タンク5に水を補給して本体1に装着すると、その重さによりバネ体10が縮むため給水タンク5は図5の位置に戻り、給水口15先端の高さまで水が供給されて再び水槽部6には水面Aが形成される。
【0033】
このように水槽部6に形成される水面の高さがAからBの間を変化することで、水面が一定の場合に比べてスケールの析出や汚れの付着が起こりやすい部分が広範囲になるため、気化フィルタ7の一部分に集中的にスケールが析出したり汚れたりすることが抑えられる。加えて、水面が上昇すると水面が低いときに気化フィルタ7に析出したスケールは水中に溶解するのでこの位置での気化フィルタ7の目詰まりは解消されることになる。
【0034】
また、給水タンク5の重量により給水タンク5の位置が移動するので、加湿運転を継続することによって給水タンク5の水が消費されれば確実に水面の高さが変化することになり、長時間同じ水面の状態で加湿運転が行われてしまうこともない。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の実施例2について図7を用いて説明する。なお、実施例1と同じ構成部品については同じ符号を付し説明を省略する。
【0036】
図7は実施例2の水面変更機構12を模式的に表したものであって、水面変更機構12は、支点17と、支持部材18と、支持部材18の一端に取り付けられた錘19から構成されている。この錘19は、満水にしたときの給水タンク5よりも軽く、空の給水タンク5よりも重い任意の重量を設定することができる。また、支持部材18の錘19とは反対の端部はピン部9に繋がっていて、給水タンク5を本体1に装着すると、支点17を介して支持部材18がシーソーの動作をするようになっている。
【0037】
給水タンク5に所定量以上の水が入っていて錘の重量よりも重いときは図7(a)に示すように給水タンク5が下がり、給水口15先端の高さに水面Aが形成される。そして加湿運転を継続し、給水タンク5の水が少なくなって所定量以下となると、錘19の重量と給水タンク5の重量が逆転するので、図7(b)に示すように給水タンク5が上がり、水面Aよりも高い位置に水面Bが形成される。
【0038】
つまり、給水タンク5の重量によって水面の高さが2段階に変化し、これによりスケールの析出や汚れの付着が起こりやすい位置も2箇所に分散されるので、気化フィルタ7の一部分にのみ集中的にスケールが析出したり汚れたりすることが抑えられる。そして、水面がAのときに水面の直上部近傍で気化フィルタ7に析出したスケールは、水面がBに変化すると水中に没することになる。スケールは水に溶ける性質があるため、水面がAのときに析出したスケールは水に溶解することとなり、この部分での気化フィルタ7の目詰まりが解消される。
【0039】
なお、水面がBのときに気化フィルタ7に析出したスケールは溶解しないためそのまま蓄積されることになるが、スケールが析出しやすい位置が分散されたことにより、水面の高さが一定の場合よりも1箇所に蓄積する量は減少するので、従来と比べて加湿能力の低下を防止することができるとともに、気化フィルタ7の寿命を延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
5 給水タンク
6 水槽部
7 気化フィルタ
12 水面変更機構
15 給水口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7