【実施例1】
【0019】
以下、本発明の一実施例としての加湿装置を図面により説明する。
【0020】
図1は加湿装置の外観斜視図である。加湿装置の本体1の上面には、加湿装置の動作を指示するためのスイッチや運転状態を表示するランプ等が複数設けられた表示操作部2、加湿空気を吹き出す吹出口3が設けられている。また、本体1の背面には室内の空気を本体1に取り入れるための吸込口4が設けられ、後述する水槽部6に水を供給する給水タンク5が本体1に着脱自在に設けられる。
【0021】
図2は加湿装置の縦断面構成図、
図3は横断面構成図である。本体1の底部には給水タンク5から水が供給されて一定量の水を貯える水槽部6と、この水槽部6内に吸水性を有する気化フィルタ7が配置されていて、気化フィルタ7は一部が水槽部6内の水に浸漬されており、この水を吸い上げることにより湿潤している。
【0022】
水槽部6は天面が開口した形状であり、給水タンク5を取り外すと本体1から引出せるように摺動可能に設けられている。また、水槽部6は給水タンク5を装着する給水タンク装着部6aと、気化フィルタ7を装着する気化フィルタ装着部6bに区画されており、給水タンク装着部6aには水槽部6の水位に応じて回動して水槽部6内の水位を検出するフロート8と、後述する給水キャップ13の給水口15を開放するピン部9が設けられている。
【0023】
さらに、給水タンク装着部6aには
図4の拡大図に示すように、バネ体10と支持板11から構成される水面変更機構12が設けられていて、バネ体10が給水タンク5の重量によって伸び縮みすることで、給水タンク5の位置が上下に変動するようになっている。また、給水タンク5の先端には、給水キャップ13が取り付けられており、この給水キャップ13には常閉弁からなる弁機構14を組み付けた給水口15が設けられている。これにより、給水タンク5を水槽部6に立設させると、水槽部6のピン部9が給水キャップ13の弁機構14のバネを押し上げて給水口15を開放する。
【0024】
したがって、給水タンク5を本体1に装着すると、給水口15が開放されて給水タンク5内の水が水槽部6に供給される。そして、水槽部6の水面が上昇して給水口15の先端に到達すると、給水タンク5から水槽部6への水の供給が停止するので水面は一定に保たれ、いわゆる定水面が形成されるようになっている。
【0025】
そして、気化フィルタ7の上部には送風機16が設けられており、この送風機16の駆動により吸込口4から吹出口3にいたる通風路に送風が行われる。また、通風路中の気化フィルタ7の上流には、吸込口4から導入された空気を加熱して温風とするための温風用ヒータ(図示せず)が設けられている。
【0026】
次に、上述の構成からなる加湿装置の動作について説明する。
【0027】
給水タンク5に水を入れて本体1に装着し、表示操作部2の運転スイッチを操作して運転開始の指示を行うと送風機16が駆動される。送風機16の駆動によって、室内の空気は吸込口4から本体1内に取り入れられ、取り入れられた空気は温風用ヒータを通過する間に温風となって、さらに温風は気化フィルタ7を通過する際に加湿空気となって吹出口3から排出されて加湿運転が行われる。
【0028】
このように加湿運転が行われると、気化フィルタ7を通過する温風により気化フィルタ7の水分が気化する。気化した分の水は気化フィルタ7の毛細管現象によって水槽部6から吸い上げられるため水槽部6内の水が消費されるが、消費された分の水は給水タンク5から供給されるので水槽部6の水位は常に一定に保たれている。このとき、給水タンク5内の水が所定量以上あれば、
図5に示すようにバネ体10は給水タンク5の重量によって縮んだ状態となっていて、このとき水槽部6には水面Aが形成されることになる。
【0029】
また、加湿運転が行われると、送風機16からの送風により気化フィルタ7に含まれる水分は気化するが、水中に含まれるミネラル成分は気化することができずにスケールとして気化フィルタ7に析出する。なお、水面付近は最も水が気化しやすいため、水面の直上部近傍は他の部分に比べてスケールが多く析出することになる。また、水面付近にはスケールだけでなく水垢や埃などの汚れも付着する。
【0030】
そして加湿運転を継続し、給水タンク5の水が少なくなって所定量以下となるとバネ体10の抗力により給水タンク5の位置が上方に移動する。
図6はバネ体10が最も伸びた状態を表した図であって、給水タンク5の位置が上方に移動すると給水口15先端の位置も高くなるため水面の高さが上昇して水面Bを形成し、気化フィルタ7の水に浸かる位置が上昇する。つまり、給水タンク5の重量によって水面の高さが変化し、これによりスケールの析出や汚れの付着しやすい位置も徐々に上方に移動していくので、気化フィルタ7のある一部分に集中的にスケールが析出したり汚れたりして目詰まりを起こしてしまうことが抑えられる。その結果、水の吸い上げが阻害されてしまうことが抑えられるので、気化フィルタ7は全体に水を吸い上げて湿潤することが可能となり、加湿能力の低下を抑えることができる。
【0031】
また、水面がAのときに水面の直上部近傍で気化フィルタ7に析出したスケールは、水面が上昇すると水中に没することになる。スケールは水に溶ける性質があるため、水面がAのときに析出したスケールは水に溶解することとなり、この部分での気化フィルタ7の目詰まりは解消されて加湿能力の低下を防止することができる。さらには、気化フィルタ7の清掃の頻度が少なくなるので、気化フィルタ7の寿命を延ばすことも可能となる。
【0032】
そして給水タンク5の水がなくなると、水槽部6の水が消費されても給水タンク5から水が供給されなくなるため、水槽部6の水位は徐々に低下していく。そして所定水位以下になるとフロート8が作動するので、表示操作部2には給水サインを出すことで水がなくなったことを報知して使用者に給水タンク5への水の補給を促す。そして、使用者が給水タンク5に水を補給して本体1に装着すると、その重さによりバネ体10が縮むため給水タンク5は
図5の位置に戻り、給水口15先端の高さまで水が供給されて再び水槽部6には水面Aが形成される。
【0033】
このように水槽部6に形成される水面の高さがAからBの間を変化することで、水面が一定の場合に比べてスケールの析出や汚れの付着が起こりやすい部分が広範囲になるため、気化フィルタ7の一部分に集中的にスケールが析出したり汚れたりすることが抑えられる。加えて、水面が上昇すると水面が低いときに気化フィルタ7に析出したスケールは水中に溶解するのでこの位置での気化フィルタ7の目詰まりは解消されることになる。
【0034】
また、給水タンク5の重量により給水タンク5の位置が移動するので、加湿運転を継続することによって給水タンク5の水が消費されれば確実に水面の高さが変化することになり、長時間同じ水面の状態で加湿運転が行われてしまうこともない。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の実施例2について
図7を用いて説明する。なお、実施例1と同じ構成部品については同じ符号を付し説明を省略する。
【0036】
図7は実施例2の水面変更機構12を模式的に表したものであって、水面変更機構12は、支点17と、支持部材18と、支持部材18の一端に取り付けられた錘19から構成されている。この錘19は、満水にしたときの給水タンク5よりも軽く、空の給水タンク5よりも重い任意の重量を設定することができる。また、支持部材18の錘19とは反対の端部はピン部9に繋がっていて、給水タンク5を本体1に装着すると、支点17を介して支持部材18がシーソーの動作をするようになっている。
【0037】
給水タンク5に所定量以上の水が入っていて錘の重量よりも重いときは
図7(a)に示すように給水タンク5が下がり、給水口15先端の高さに水面Aが形成される。そして加湿運転を継続し、給水タンク5の水が少なくなって所定量以下となると、錘19の重量と給水タンク5の重量が逆転するので、
図7(b)に示すように給水タンク5が上がり、水面Aよりも高い位置に水面Bが形成される。
【0038】
つまり、給水タンク5の重量によって水面の高さが2段階に変化し、これによりスケールの析出や汚れの付着が起こりやすい位置も2箇所に分散されるので、気化フィルタ7の一部分にのみ集中的にスケールが析出したり汚れたりすることが抑えられる。そして、水面がAのときに水面の直上部近傍で気化フィルタ7に析出したスケールは、水面がBに変化すると水中に没することになる。スケールは水に溶ける性質があるため、水面がAのときに析出したスケールは水に溶解することとなり、この部分での気化フィルタ7の目詰まりが解消される。
【0039】
なお、水面がBのときに気化フィルタ7に析出したスケールは溶解しないためそのまま蓄積されることになるが、スケールが析出しやすい位置が分散されたことにより、水面の高さが一定の場合よりも1箇所に蓄積する量は減少するので、従来と比べて加湿能力の低下を防止することができるとともに、気化フィルタ7の寿命を延ばすことが可能となる。