(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377579
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタレート積層紙
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20180813BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20180813BHJP
B29C 47/02 20060101ALI20180813BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20180813BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20180813BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20180813BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20180813BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/10
B29C47/02
C08L67/02
C08K5/1515
C08L63/00 A
B29L9:00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-141820(P2015-141820)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-24187(P2017-24187A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591060979
【氏名又は名称】三国紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 眞悟
(72)【発明者】
【氏名】小泉 善行
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸雄
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−193210(JP,A)
【文献】
特開2012−066506(JP,A)
【文献】
特開平05−042642(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/094443(WO,A1)
【文献】
特開昭55−166247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 47/00−47/96
C08K 5/00− 5/59
C08L 63/00−63/10,
67/00−67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂に1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ有機化合物を溶融混練してマスターバッチを作製し、これをポリエチレンテレフタレート樹脂に加えてポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリブチレンテレフタレート樹脂の比率を重量比で90/10〜99.9/0.1として溶融混練し、紙基材上に押し出し積層することを特徴とする、ポリエチレンテレフタレート樹脂積層紙の製造方法。
【請求項2】
マスターバッチがポリブチレンテレフタレート樹脂65〜80重量%と1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ有機化合物20〜35重量%を高剪断下にて、ポリブチレンテレフタレート融点(228℃前後)+10℃未満の温度で均一に溶融混練したものである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート樹脂のフェノール:テトラクロロエタン=1:1混合溶媒における固有粘度が0.55〜0.90dl/gである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
溶融積層したポリエチレンテレフタレート樹脂層の結晶化度が、示差走査熱量計(DSC)分析において検出される融解エンタルピー△Hm、結晶化エンタルピー△HCLから次式(a)で求められる結晶化度χCで15%未満であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
χC=100×(△Hm−△HCL)/140.0・・・(a)
註)ポリエチレンテレフタレートの結晶の平衡融解熱(△HM=140.0J/g)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの製造方法で積層紙を製造し、この積層紙を130〜200℃で加熱処理したポリエチレンテレフタレート樹脂層の示差走査熱量計(DSC)分析および前式(a)で求められる結晶化度χCが、15%以上であることを特徴とする積層紙の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの製造方法で積層紙を製造し、その際にスリット除外した端部ロス、および溶融積層工程時の条件出しのために吐出させた塊状ロスである樹脂組成物を回収し、該樹脂組成物の100重量部に対して、1分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基をもつ前記の有機化合物0.1〜0.7重量部を再配合し、多層式の溶融押出機を用いて、紙基材積層面に該再生樹脂組成物、他面にポリブチレンテレフタレート樹脂に1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ有機化合物を溶融混練してマスターバッチを作製し、これをポリエチレンテレフタレート樹脂に加えてポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリブチレンテレフタレート樹脂の比率を重量比で90/10〜99.9/0.1として溶融混練した樹脂組成物を、押し出し積層することを特徴とする積層紙の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの製造方法において、紙基材上に押し出し積層する工程時の条件出しのために吐出させた塊状ロスを回収粉砕した樹脂組成物の65〜80重量%に対して、1分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基をもつ前記の有機化合物20〜35重量%を再配合して高剪断下にて、ポリエチレンテレフタレート融点(≒260℃前後)+10℃未満の温度で均一に溶融混練し、これをポリエチレンテレフタレート樹脂に加える第2のマスターバッチとして使用することを特徴とする積層紙の製造方法。
【請求項8】
マスターバッチをポリエチレンテレフタレート樹脂に加えて溶融混練し、紙基材上に押し出し積層する工程において、紙基材の表面にポリイミン系のラミネートアンカー剤が予め塗布されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
マスターバッチをポリエチレンテレフタレート樹脂に加えて溶融混練し、紙基材上に押し出し積層する工程におけるダイの内部にディッケルを設け(インナーディッケル)、ネックイン幅に相当する吐出を制限し、溶融樹脂成分の端部ロスを最小限として積層することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂組成物を紙基材上に溶融押出ラミネートする積層紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙容器は食品の直接容器として、多種多様に亘って常用されている。これらの紙容器の内面には、耐水性の付与やヒートシールによる製函ができるようにポリオレフィン樹脂層、とりわけポリエチレン樹脂層を配した積層体が多用されている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂は、食品中に含まれる芳香性の高い成分や脂溶性の成分を吸着、収着し易く、味や香りの一部が失われるという性質があるため、保香性が必要な食品容器には用いることはできなかった。さらにポリオレフィン樹脂は、融点が最も高いポリプロピレン樹脂においても160℃近傍であり、これを越える高温域での使用(たとえば200℃前後のオーブン加熱)はできなかった。
【0004】
保香性、耐熱性および耐油性に優れ、且つ廉価な材料の1つとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)樹脂が挙げられ、内面にPET樹脂が積層された紙容器も上市されている。
【0005】
しかし溶融状態になると著しく粘度が低下する性状をもつPET樹脂を紙基材と溶融積層する場合、下記の問題点があった。
(1)ネックインやドローダウンと呼ばれる製品フィルム幅がダイ出口幅より狭くなる現象が生じ、採取製品収率が低下していた。
(2)また商業生産を考えた場合、積層工程の高速化が必要となるが、高速化は前述のネックインやドローダウンがより顕著となるため、低速で加工せざるを得なかった。
【0006】
本発明者らは、このネックインやドローダウンを解決する手段として、PET樹脂に、(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル、エポキシ化大豆油等の鎖延長剤を添加して紙層上に押し出してPET樹脂積層紙を製造する方法を開発した(特許文献1)。
【0007】
また、PET樹脂と同様にネックインやドローダウンの問題があるポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと記す。)樹脂についてもエポキシ化大豆油やエチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などの1分子内に2個以上のエポキシ基をもつ有機化合物を配合して紙基材上に押し出してPBT樹脂積層紙を製造する方法も開発した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5180272号公報
【特許文献2】特開2013−193210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法では、積層体のPET樹脂は結晶化度が15%未満でPET樹脂層間のヒートシールが可能である。しかし、鎖延長剤は一般に液状や粉状をしており、その均一分散性を高めるためにPET樹脂を用いてマスターバッチを作製すると、鎖延長剤は、PET樹脂との反応性にとんでいてその間にも反応が進行してしまうため、使用量が増加して経済的に好ましくないという問題があった。また、積層体を積み重ねて長時間放置すると、それが原反状である場合も容器に形成されている場合もブロッキングを起こして個々に分離しにくくなるという問題もあった。
【0010】
特許文献2の方法では、PBT樹脂は、元来ヒートシール性がないため、その積層紙は密封が要求される用途には使えないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、PET樹脂積層時のネックインやドローダウンを解決し、樹脂層間でヒートシールでき、保香性、耐熱性、耐油性に優れ、ブロッキングの問題のない紙容器にすることができるPET樹脂積層紙を安価に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの問題を解決するべく鋭意検討の結果、鎖延長剤として機能させる1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ有機化合物をマスターバッチにする樹脂にPBTを用いると反応性がPET程高くないため有機化合物の消費を抑えて使用量を削減できることを見出した。そして、マスターバッチ用の樹脂にPBTを用いるとブロッキングの問題も解消できることを見出した。これは、PBT樹脂の結晶化温度がPET樹脂よりも高いため、積層後の冷却において、まずPBT樹脂の結晶化が始まることによると考えられる。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、ポリブチレンテレフタレート樹脂に1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ有機化合物を溶融混練してマスターバッチを作製し、これをポリエチレンテレフタレート樹脂に加えて溶融混練し、紙基材上に押し出し積層することを特徴とする、ポリエチレンテレフタレート樹脂積層紙の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、マスターバッチを製造する樹脂にPBTを用いたことにより、マスターバッチ製造時の1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ有機化合物の反応を抑制して使用量を節減することができ、さらに、このマスターバッチを用いて積層したPET樹脂層のブロッキング問題も解消させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】発明のPET樹脂積層紙を用いて形成した紙容器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で製造されるPET樹脂積層紙の基本構成は、紙基材上にPET樹脂層が溶融積層されてなっている。
【0017】
基材に用いられる紙は、紙容器の種類等に応じて任意のものを選択できるが、典型的には、クラフト紙、晒クラフト紙等で、坪量が20〜400g/m
2のものが用いられる。
【0018】
この紙基材の少なくとも一面にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を主成分とする樹脂組成物層を設ける。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールを縮合反応させて得られるものであるが、本発明の機能を損なわない範囲で第三成分を含む共重合体であってもよい。この第三成分には、アジピン酸、イソフタル酸等のジカルボン酸、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物などが含まれる。PET樹脂には固有粘度が0.55〜0.90dl/g、好ましくは0.65〜0.88dl/gのものを用いる。
【0019】
この固有粘度はフェノール:テトラクロロエタンが容積比で1:1の混合溶媒を用い、JISK7367−5に従って測定したものである。PET樹脂の固有粘度が0.55dl/g未満になると、基材上へ溶融積層する際に、ドローダウンやネックインと呼ばれる膜の拡がりが不十分となり、一方、0.90dl/gを越えると、PBT樹脂の粘度が著しく増加して積層厚みが不必要に厚くなるとともに、柔軟性や屈曲性が乏しくなるので好ましくない。
【0020】
PET樹脂層は、PET樹脂100重量部に対し1分子内に2個以上のエポキシ基を持つ有機化合物を0.1〜1.0重量部、特に0.4〜0.7重量部を配合することが好ましい。この化合物を配合することによって、PET樹脂の溶融粘度と溶融張力を適正に保ち、積層時のドローダウンやネックインを抑制する効果がある。0.1重量部未満であると、この効果の発現が期待できず好ましくない。一方、1.0重量部を越えると、P
ET樹脂の溶融粘度が過剰に増大して積層厚みを薄くすることができず、柔軟性や屈曲性が乏しくなるので好ましくない。
【0021】
2個以上のエポキシ基を持つ有機化合物(以下、エポキシ基含有有機化合物と記す。)の例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられるが、多官能エポキシ基を有する有機化合物であれば特に限定されない。
【0022】
PET樹脂層を形成する樹脂組成物には、その性質を損わない範囲で第三成分を含有させることができる。その例としてはポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等の他のポリエステル、ポリオレフィンなどの樹脂成分や、ステアリン酸カルシウムやオレイン酸アミド等の滑剤、炭酸カルシウムやタルク等の充填材を挙げることができる。
【0023】
該PET樹脂層の厚みは、5μm以上40μm未満であることが好ましく、より好ましくは12〜20μmである。5μm未満であると膜に欠陥性を生じやすくなり、一方40μm以上になると柔軟性や屈曲性が悪くなり、後工程のハンドリングに支障を生じ、欠陥製品も生じやすくなるとともに、不必要に製造原価の上昇原因となるため好ましくない。
【0024】
本発明で、PET樹脂層を溶融積層する際に、まずエポキシ基含有有機化合物のマスターバッチを作製するが、その際にマスターバッチ用の樹脂としてPBTを用いるところに特徴がある。
【0025】
マスターバッチは、PET樹脂層の主体であるPET樹脂にエポキシ基含有有機化合物を混練することも考えられるが、該化合物はPET樹脂との反応性に富み、高温溶融によるマスターバッチの作製工程において後述の積層工程で期待する反応以外にあずかる消費量が多く、経済的に好ましくない。
【0026】
一方、PBT樹脂はPETに比べて融点が低く、且つ該エポキシ化合物との反応性が緩慢であるためマスターバッチに配合する有効量が少なく経済的にも好ましい。
【0027】
P
BT樹脂は、テレフタル酸とし、4−ブタンジオールを縮合反応させて得られるものであるが、本発明の機能を損なわない範囲で第三成分を含んでよいことはPET樹脂と同様である。固有粘度も0.55〜0.90dl/g、好ましくは0.65〜0.88dl/gのものを用いる。マスターバッチにおけるエポキシ基含有有機化合物の濃度は2〜35重量%、好ましくは10〜30重量%、更に好ましくは15〜25重量%、PBT樹脂濃度は65〜98重量%、好ましくは70〜90重量%、更に好ましくは75〜85重量%程度とするのがよい。
【0028】
エポキシ基含有有機化合物濃度が2重量%未満では、溶融押出時のマスターバッチ比率が大きくなり、このマスター作製に係るコストが過剰に上乗せとなるため好ましくない。一方、有機化合物濃度が35重量%を越えると、溶融押出時のマスターバッチ比率が少なくなり、樹脂組成物層の均一性が低下するため好ましくない。
【0029】
マスターバッチ比率は、形成されるPET樹脂層におけるPET樹脂とPBT樹脂の比率も考慮して定めるのがよい。PET/PBTの比率が
重量比で90/10以下になるとヒートシール性が不十分となり好ましくない。99.9/0.1以上になると過剰に反応するため好ましくない。好ましい比率は90/10〜99.9/0.1程度、特に95/5〜95.5/4.5程度である。
【0030】
マスターバッチの作製は、PBT樹脂とエポキシ基含有有機化合物を10〜100sec
―1の高剪断速度の下に、PBT融点(228℃前後)+10℃未満の温度で均一に溶融混練することが好ましい。
【0031】
マスターバッチ作製時の混練温度がPBT樹脂融点より10℃を越えると、両者(PBTと有機化合物)の反応性が著しく高まり、溶融押出時に必要な増粘性が失活し所望の効果を得ることができず好ましくない。一方、PBT融点未満では溶融混練ができない。
【0032】
マスターバッチを製造するその他の条件は周知の方法に従えばよい。
【0033】
樹脂組成物が溶融積層される紙基材の表面あるいは印刷面にはラミネートアンカー剤を予め塗布しておくことが好ましい。使用するラミネートアンカー剤としては、ポリイミン系のものが好ましい。ポリイミンの分子鎖末端に存在する第二級アミンが、溶融したPET樹脂の分子鎖末端に存在する水酸基やカルボキシル基と共有結合するため、紙基材との積層接着強度が強化される。樹脂組成物にエポキシ基含有有機化合物が配合されており、該エポキシ基が未反応のまま存在している場合は、第二級アミンがエポキシ基との共有結合により積層接着強度はさらに強化される。最も好ましいポリイミンとしてポリエチレンイミンが挙げられる。これを主成分とするラミネートアンカー剤が市販されている。
【0034】
PET樹脂は、樹脂組成物を溶融積層する際に予備乾燥してから他成分との混合を行い、乾燥させたPET樹脂とPBTマスターバッチをブレンダーで混合して、押出ラミネート加工用の押出機に投入して溶融押出する。予備乾燥は含水率が50ppm程度以下になるようにするのがよい。溶融押出温度は広範囲で、230〜340℃程度が通常であり、270〜300℃程度が好ましい。230℃未満ではPET樹脂の融点以下となって溶融押出ができず、一方、340℃を越えるとPET樹脂の熱劣化や著しい溶融粘度低下が起こるので好ましくない。
【0035】
押出機のTダイスから溶融押出しされた樹脂組成物は紙基材上に積層される。この工程においてTダイスから基材表面までのエアーギャップはなるべく短くし、積層後のニップロールは冷却ロールであることが好ましい。PET樹脂の結晶化速度は速いので、可能な限り急冷することが好ましい。これにより、PET樹脂の結晶化度を小さくして、柔軟性および屈曲性を良好に保つことができる。PET層の結晶化度を15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは8%未満にすることができる。最低は特に制限されず、0%であってもよい。
【0036】
本明細書における結晶化度とは、示差走査熱量計(DSC)分析において検出される融解エンタルピーΔH
m、結晶化エンタルピーΔH
CLから式(a)でχ
Cとして求められる値である。
【0037】
χ
C=100×(ΔH
m−ΔH
CL)/140.0・・・(a)
このPET樹脂積層紙を用いた紙容器の用途は特に限定されないが、食品容器として好ましく用いることができる。箱形の容器の例を
図1に示す。同図において右側面はフラッグ部分に糊付して貼合している。
【0038】
その場合、PETを主成分とする樹脂組成物層のある面を内面として所望する紙容器のブランクに打ち抜き、カートン、カップ類等のそれぞれ専用の製函機で製函する。
【0039】
紙容器が耐熱性を必要としない用途であれば、製函した紙容器をそのまま使用できる。容器内面が保香性に優れるPET樹脂で形成されているので多種多様の食品を収容することができる。
【0040】
耐熱性を必要とする用途では、予め加熱して結晶化度を高めておいてもよく、加熱調理時の熱で結晶化が促進され耐熱性が高まるのを利用してもよい。例えば、食品が収容された容器をオーブン加熱調理時に、130〜200℃で30分以上加熱すると、PET樹脂の結晶化度が高まって200℃以上の耐熱性が発現する。結晶化度(χ
C)は15%以上とすることができる。上限は特に制限されないが実用的に70%程度までである。
【0041】
天面が開口形態の紙容器の封緘(ヒートシール)は、ヒートシール性を有するPET層等を内面に配したアルミ箔ラミネートフィルム等を天面に置き、カップであればフランジ部分のリング状の熱シール板で押さえ、230〜240℃程度でヒートシールする。PETとヒートシールできオーブン加熱に耐えられる材料はPET、PET共重合体などが挙げられる。
【0042】
溶融押出による積層工程では、積層前に押出条件を整えるために、Tダイスから樹脂組成物の垂れ流しを行い、その結果、塊状の工程ロスが生じる。本発明では、該塊状のロス材料を回収・粉砕し、樹脂組成物の65〜80重量%に対して、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ前記の有機化合物20〜35重量
%を再配合して高剪断下にて、PET融点(260℃前後)+10℃未満の温度で均一に溶融混練したマスターバッチとして再生利用できる。
【0043】
同様にPET樹脂積層紙から正製品を採取するために、両端部をスリットして除外するときにも樹脂組成物のロスが生じる。積層紙端部から除外したロス、前記の塊状ロスである樹脂組成物を回収・粉砕したもの100重量部に対して、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基をもつ前記の有機化合物0.1〜0.7重量部を配合し、多層式の溶融押出機を用いて、紙基材積層面に該再生樹脂組成物、他面に本発明で述べたバージン原料からなる樹脂組成物が積層されてもよい。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、溶融押出工程でのネックイン抑制性に優れるが、ネックイン率はゼロではない。製造時の両端部ロスを最小限とするため、Tダイスの内部にディッケルを設け(インナーディッケル)、ネックイン幅に相当する吐出を制限し、溶融樹脂成分の端部ロスを最小限として積層することも有用である。
【0045】
本発明の樹脂組成物を用いた積層体は、溶融押出時のネックインが著しく解消されるため、積層工程速度を最高200m/分まで高めることが可能となる。
【0046】
本発明で得られた積層紙は、ヒートシール性がなく、且つPET樹脂に比べて結晶化温度が高いPBT樹脂が配合されているため、積層工程の冷却時において最初にPBT(副材)の結晶化が起こり、次いで結晶化温度が低いPET(主材)の結晶化が起こる。このため、ヒートシール性は維持されるが、ブロッキングしにくい積層体となる。
【実施例】
【0047】
本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
<検体の作製>
【実施例1】
【0048】
PBT樹脂「500FP」(ポリプラスチックス(株)製、固有粘度=0.875dl/g)70重量%とエポキシ化大豆油「O−130P」(旭電化(株)製)30重量%を攪拌混合した樹脂組成物を、直径=40mm、L/D=32のスクリューを備えた同方向回転の二軸押出機を用いて押出温度235℃、剪断速度=21sec
−1なる条件で溶融混練して「マスターバッチV」を造粒作製した。
【0049】
PET樹脂「CR8816」(華潤製、固有粘度=0.810dl/g)100重
量部と前記「マスターバッチV」1.7重量部を攪拌混合した樹脂組成物を、日立造船(株)製の同方向回転の二軸押出機「HMT100」(L/D=38、Tダイス幅=1600mm)に投入し、押出温度=280℃で溶融混練させながら、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤(日本触媒製「エポミン」)を予め紙基材上に0.1g/m
2(乾燥後の固形分換算量)で塗布した。70g/m
2の晒クラフト紙の上にPET樹脂層の厚みが20μmになるように溶融積層した後、速やかに25℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して積層紙を得た。この積層紙の樹脂組成物層の結晶化度は10.8%であった。
【実施例2】
【0050】
実施例1検体を作製する際の条件出しに垂れ流した塊状ロス70重量%とエポキシ化大豆油「O−130P」(旭電化(株)製)30重量%を攪拌混合した樹脂組成物を、直径=40mm、L/D=32のスクリューを備えた同方向回転の二軸押出機を用いて押出温度235℃、剪断速度=21sec
−1なる条件で溶融混練して「マスターバッチR」を造粒作製した。
【0051】
PET樹脂「CR8816」(華潤製、固有粘度=0.810dl/g)100重量部と前記「マスターバッチR」1.7重量部を撹拌混合した樹脂組成物を、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤(日本触媒製「エポミン」)を予め紙基材上に0.1g/m
2(乾燥後の固形分換算量)で塗布した以外は、実施例1と同様の操作を経て積層紙を得た。この積層紙の樹脂組成物層の結晶化度は9.3%であった。
【0052】
PET樹脂「CR8816」(華潤製、固有粘度=0.810dl/g)100重量部とエポキシ化大豆油「O−130P」(旭電化(株)製)0.5重量部を撹拌混合した樹脂組成物を、日立造船(株)製の同方向回転の二軸押出機「HMT100」(L/D=38、Tダイス幅=1600mm)に投入し、押出温度=280℃で溶融混練させながら、70g/m
2の晒クラフト紙の上に樹脂組成物層の厚みが20μmになるように溶融積層した後、速やかに25℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して積層紙を得た。この積層紙の樹脂組成物層の結晶化度は8.4%であった。
【0053】
PET樹脂「CR8816」(華潤製、固有粘度=0.810dl/g)を、日立造船(株)製の同方向回転の二軸押出機「HMT100」(L/D=38、Tダイス幅=1600mm)に投入し、押出温度=280℃で溶融混練させながら、70g/m
2の晒クラフト紙の上に樹脂組成物層の厚みが20μmになるように溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して積層紙を得た。この積層紙の樹脂組成物層の結晶化度は8.2%であった。
【0054】
PET樹脂「CR8816」(華潤製、固有粘度=0.810dl/g)100重量部とエポキシ化大豆油「O−130P」(旭電化(株)製)1.0重量部を撹拌混合した樹脂組成物を、日立造船(株)製の同方向回転の二軸押出機「HMT100」(L/D=38、Tダイス幅=1600mm)に投入し、押出温度=280℃で溶融混練させながら、70g/m
2の晒クラフト紙の上に樹脂組成物層の厚みが20μmになるように溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して積層紙を得た。この積層紙の樹脂組成物層の結晶化度は8.4%であった。
【0055】
70g/m
2の晒クラフト紙の上に低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製「ノバテックLC604」を押出温度=330℃とした以外は、実施例1と同様の操作を経て、厚み20μmの積層紙を得た。
【0056】
<ネックイン指標としてのトリミングロス量の評価>
積層厚み20±4(μm)の範囲内にある積層紙を製品幅1000mmで採取できるよう、インナーディッケルを用いてTダイス吐出幅をX
0(m)に制限する。このとき紙基材に溶融積層された1m相当分の吐出樹脂量W
0(g)を、
W
0=20 × X
0 ×1×1.4(PET密度)と近似する。
製品幅1×1(m)の積層樹脂量W
1(g)は、
W
1=20×1×1×1.4=28.0(g)となる。
したがってトリミングロス量をW
0−W
1(g/m
2)で表わすこととした。
但し前述の比較例4は、
W
0=20×X
0×1×0.92(LDPE密度)と近似し、
W
1=20×1×1×0.92=18.4(g)としてトリミングロス量を計算した。
【0057】
<芳香成分の吸着耐性評価>
実施例および比較例で得られた検体を100×100mmに裁断した試験片の積層面に市販インスタントコーヒー20gを散布し、60℃に調整したオーブン内に24時間静置する。これを取出し、コーヒー粉末を除去して常温に冷却した後、試験片に残る臭気を官能評価した。
判定基準は、下記3段階とした。
S…何もにおわない
A…かすかなにおいがある
B…かなり強くにおう
【0058】
<耐熱性の評価>
実施例1,2および比較例2,3で得られた検体を100×100mmに裁断した試験片の積層面に水でペースト状に溶いた小麦粉を塗り、200℃に調温した家電用ホットプレート上で5分間加熱した。加熱後は小麦粉ペーストへの焦げ目の有無を確認するとともに、試験片の積層樹脂を剥離洗浄し、DSCにより結晶化度を測定した。
結果一覧を表1に記す。
【0059】
<ブロッキング評価>
積層体(10×10cmに裁断)を2枚重ね、10×10cm×1kgの荷重を23℃×50%RH×24hr載せた後、重ねた2枚を剥がす抵抗を指標にします。
〇:抵抗もなく剥がれる
△:少し抵抗がある
×:容易に剥がれない
【0060】
【表1】
実施例では予めPBTマスターバッチを作製して、それを成膜原料として投入している。一方、比較例は全ての製膜原料を同時投入し且つ本発明に有効なPBT成分も入っていない。したがって、後者はエポキシの反応が過剰となり結晶化度が低下し、ブロッキングが生じやすくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂組成物を紙基材に効率よく積層することができ、この積層体は、保香性、耐熱性、耐油性等に優れているので、各種容器、特に食品容器でそのまま加熱調理もできる容器に広く利用できる。