特許第6377588号(P6377588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377588SCRおよびAMOXを統合した触媒システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377588
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】SCRおよびAMOXを統合した触媒システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20180813BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180813BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180813BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01J35/04 301L
   F01N3/10 AZAB
   F01N3/08 B
   B01J29/76 A
   B01J37/02 301L
   B01D53/94 222
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-187902(P2015-187902)
(22)【出願日】2015年9月25日
(62)【分割の表示】特願2011-534867(P2011-534867)の分割
【原出願日】2009年11月3日
(65)【公開番号】特開2016-73971(P2016-73971A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】12/263,871
(32)【優先日】2008年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】コードル,マシュー,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ディーテレ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】バズビー,イー.,スコット
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−538724(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0166628(US,A1)
【文献】 特開2008−284506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0286184(US,A1)
【文献】 特表2010−519020(JP,A)
【文献】 米国特許第7332135(US,B2)
【文献】 特表2010−516466(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0317999(US,A1)
【文献】 特表2010−522688(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/137675(WO,A1)
【文献】 特開平07−016462(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/094889(WO,A1)
【文献】 特開2008−279334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/08
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のディーゼルエンジンからのNOを含有する排気ガス流を処理するための触媒システムであって、
入口端と出口端を有する単一のモノリス触媒基材、
モノリス基材の出口端からコーティングされ、NH酸化を触媒するのに有効な物質組成物Aを含有する、下塗りウォッシュコート層、及び
前記下塗りウォッシュコート層を覆い、及びモノリス基材の全長にわたりコーティングされ、NOの選択的触媒還元(SCR)を触媒するのに有効な物質組成物Bを含有する、上塗りウォッシュコート層、
を含み、及び
前記下塗りウォッシュコート層は、基材長の10〜40%に塗布され、
前記モノリス基材が、前記基材の長手方向軸に沿って延在する、複数の微細な、平行のガス流路を含むフロースルー型ハニカム基材であり、及び
前記物質組成物Aと前記物質組成物Bは物理的に分離された触媒組成物として維持され、及び
物質組成物Bは、CHA結晶骨格型を有するゼオライトモレキュラーシーブを含有し、及び
前記CHA結晶骨格型を有するゼオライトモレキュラーシーブは、Cuを含有することを特徴とすることを特徴とする触媒システム。
【請求項2】
前記基材が、単一のモノリス基材であり、且つセラミックハニカム基材である請求項1に記載の触媒システム。
【請求項3】
前記下塗りウォッシュコート層が更に、NOのSCRを触媒するのに有効な物質組成物Bを含有する請求項1に記載の触媒システム。
【請求項4】
前記物質組成物Bが、CHA結晶骨格型を有するシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含有する請求項1に記載の触媒システム。
【請求項5】
前記物質組成物Aが、担持粒子上に分散された貴金属成分を含む請求項1に記載の触媒システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒システムを製造する方法であって、
単一のモノリス基材の一端を前記基材長さの10〜40%に沿って、NH酸化を触媒するのに有効な物質組成物Aを含有する下塗りウォッシュコート層でコーティングする工程、
前記コーティングされた基材を乾燥及び焼成し、前記下塗りウォッシュコート層を前記基材上に固着させる工程、
前記基材を前記基材長の全長に沿って、NOの選択的触媒還元(SCR)を触媒するのに有効な物質組成物Bを含有する上塗りウォッシュコート層で再コーティングする工程(前記SCR組成物は前記下塗り層と組成的に異なる)、及び
前記コーティングされた基材を乾燥及び焼成し、前記SCR組成物を、上流帯で前記基材上に、及び下流帯で前記下塗りウォッシュコート層上に固着させる工程、を含み、
前記モノリス基材が、前記基材の長手方向軸に沿って延在する、複数の微細な、平行のガス流路を含むフロースルー型ハニカム基材である、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記基材の全長を、SCR組成物の多層でコーティングすることをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
希薄燃焼エンジンの排気ガス流内で産生される排出物を処理する方法であって、
アンモニアまたはアンモニア前駆体を、NO、CO、及び炭化水素のうちの1種又は複数種を含有する排気ガス流に注入する工程、及び
前記排気ガス流を、請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒システムを通過させる工程、を含み、物質組成物Bが、前記システムの全帯内にあり、物質組成物Aが、下流帯内にあることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、それらの製造のための方法、および排気流内の排出物を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン排気物は、煤煙等の粒子排出物、および一酸化炭素、未燃または部分的に燃焼した炭化水素、ならびに窒素酸化物(集合的にNOxと称される)等のガス状排出物を含有する、不均一混合物である。しばしば1つもしくは複数のモノリス基板上に配置された触媒組成物は、特定の、あるいは全てのこれらの排気成分を無害の化合物に転換するために、エンジン排気物システム中に配置される。
【0003】
アンモニア選択的接触還元(SCR)は、ディーゼルおよび希薄燃焼エンジンにおける厳格なNOx排出目標を充たすため使用されるNOx低減技術である。アンモニアSCRプロセスにおいて、NOx(通常、NO+NO2からなる)は、典型的に卑金属から構成される触媒上で二窒素(N2)を形成するために、アンモニア(または尿素等のアンモニア前駆体)と反応する。この技術は、典型的なディーゼル走行サイクル中に90%より大きいNOx転換の能力があり、したがってそれは、積極的なNOx低減目標を達成するための最善のアプローチのうちの1つに相当する。
【0004】
幾つかのアンモニアSCR触媒物質の特性は、典型的走行サイクルの低温部分間に、触媒表面上のLewisおよびBronsted酸性部位上において多量のアンモニアを保持する傾向である。排気温度のその後の上昇は、アンモニアが、アンモニアSCR触媒表面から脱着し、車両の排気管から排出することを引き起こし得る。NOx転換比率を高めるためにアンモニアを過剰に供給することは、アンモニアがアンモニアSCR触媒から脱離し得る別の潜在的なシナリオである。
【0005】
アンモニアSCR触媒からのアンモニアのスリップは、幾つかの問題を提示する。NH3に対する臭気閾値は、空気中で20ppmである。眼および咽喉刺激は100ppmを越えると顕著であり、400ppmを越えると皮膚刺激が生じ、IDLHは空気中で500ppmである。NH3は、特にその水性形態において腐食性である。排気触媒の排気ライン下流の冷却領域中のNH3および水の縮合は、腐食性の混合物をもたらすであろう。
【0006】
したがって、アンモニアが排気管中を通過し得る前に、アンモニアを除去することが望ましい。選択的アンモニア酸化(AMOx)触媒は、この目的のために、過剰のアンモニアをN2に転換する目標と共に採用される。アンモニアスリップが車両の走行サイクル中に生じるときの広範な温度でアンモニアを転換することができ、かつ最小限の窒素酸化物副生成物を産生し得る、選択的アンモニア酸化のための触媒を提供することが望ましいであろう。また、AMOx触媒は、強力な温室効果ガスである最小限のN2Oを産生する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様は、排気ガス流を処理するための触媒システム、およびかかるガスの処理のために触媒を調製する方法を含む。本明細書で使用されるとき、「触媒システム」という用語は、1つの基材上または1つを超える別個の基材上の2つ以上の化学的触媒機能を含むものとする。
【0008】
本発明の一態様に従って、NOxを含有する排気ガス流を処理するための触媒システムは、少なくとも1つのモノリス触媒基材と、モノリス基材の一端にコーティングされ、NH3酸化を触媒するのに有効な物質組成物Aを含有する下塗りウォッシュコート層と、少なくとも下塗りウォッシュコート層の一部を覆うのに十分なモノリス基材の長さにわたりコーティングされ、NOxの選択的触媒還元(SCR)を触媒するのに有効な物質組成物Bを含有する上塗りウォッシュコート層とを含む。
【0009】
一実施形態では、基材は、単一のモノリス基材である。モノリス基材は、この基材の長手方向(縦軸)に沿って延在する、複数の微細な、実質的に平行のガス流路を含むフロースルー型ハニカム基材であってもよい。
【0010】
一実施形態では、下塗りウォッシュコート層は、基材を全長の約5%〜100%の範囲で被覆し、上塗りウォッシュコート層は、基材を全長の約5%〜100%の範囲で被覆する。1つもしくは複数の実施形態では、下塗りウォッシュコート層はまた、NOxのSCRを触媒するのにさらに有効な物質組成物を含む。
【0011】
一実施形態では、物質組成物Aは、約225℃を超える温度、およびモノリス基材にわたって約300,000/時間未満のガス空間速度でNH3を約10%超転換してアンモニアを除去するのに有効である。
【0012】
一実施形態では、物質組成物Aは、支持粒子上に分散された貴金属成分を含む。これらの支持粒子は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、および原子的にドープされた組み合わせを含むそれらの物理的混合物または化学的組み合わせを含有する、耐火性金属酸化物を含んでもよい。1つもしくは複数の実施形態では、貴金属成分は、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、または金、および原子的にドープされた組み合わせを含むそれらの物理的混合物もしくは化学的組み合わせ含有する。
【0013】
一実施形態では、組成物Bは、約300℃を超える温度、およびモノリス基材にわたって約300,000/時間未満のガス空間速度で、約50%を超えてNOを転換、および約50%を超えてN2を選択して、NOおよびNH3を同時に除去するのに有効である。
【0014】
1つもしくは複数の実施形態では、物質組成物Bは、約350℃を超える温度、モノリス基材にわたって約300,000/時間未満のガス空間速度、および約0.10未満のNO/NH3分子比で、少なくとも10%のNH3を転換、および少なくとも50%のN2を選択してアンモニアを除去するのに有効である。
【0015】
1つもしくは複数の実施形態では、物質組成物Bは、ゼオライトまたは非ゼオライトモレキュラーシーブを含む。このモレキュラーシーブは、International Zeolite Association(IZA)により発行された、Database of Zeolite Structuresにおける指定の通り、結晶骨格型FAU、MFI、MOR、BEAのうちの1つを有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブであってもよい。
【0016】
特定の実施形態では、物質組成物Bは、CHA結晶骨格型を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを含む。さらに特定の実施形態では、物質組成物Bは、CHA結晶骨格型を有するシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む。
【0017】
本発明の実施形態に従うモレキュラーシーブは、モレキュラーシーブ上またはモレキュラーシーブ内に分散される周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族のうちの1つからの金属を含有し、該金属は、モレキュラーシーブの0.1質量%と10質量%との間の量で存在する。該金属は、Cu、Fe、およびそれらの混合物または組み合わせから選択されてもよい。
【0018】
本発明の別の態様は、NOxを含有する排気流の処理のための触媒システムを調製する方法に関し、該方法は、基材長の少なくとも約5%に沿ったモノリス基材の一端を、NH3の酸化を触媒するのに有効な物質組成物を含有する下塗りウォッシュコート層でコーティングすることと、下塗りウォッシュコート層を、基材上に固着させるために、コーティングされた基材を乾燥させ、焼成することと、下塗り層と組成的に異なるSCR組成物である、下塗りウォッシュコート層の少なくとも一部を覆う、SCR組成物を含む1つの長手方向の帯域(縦方向の帯およびSCR組成物を含む第2の長手方向の帯域(縦方向の帯を形成するために、基材長の少なくとも約50%に沿った基材を、NOxの選択的触媒還元を触媒するのに有効な物質組成物を含有する下塗りウォッシュコート層で再びコーティングすることと、SCR組成物を、上流帯における基材上、および下流帯における下塗りウォッシュコート層上に固着させるために、コーティングされた基材を乾燥させ、焼成することとを含む。一実施形態では、方法は、基材の全長を、SCR組成物の多層でコーティングすることを含む。
【0019】
本発明の別の態様は、希薄燃焼エンジンの排気ガス流内で産生される排出物を処理する方法に関し、該方法は、アンモニアまたはアンモニア前駆体を、NOx、CO、または炭化水素のうちの1つもしくは複数を含有する排気ガス流に注入することと、排気ガス流を、モノリス基材上にコーティングされたウォッシュコート層内のNOxの選択的触媒還元を触媒するのに有効な物質組成物を含有する上流帯である、触媒システムの上流帯を通過させることと、排気ガス流を、NH3の酸化を触媒するのに有効な物質組成物を含有する下塗りウォッシュコート層を含む下流帯である、触媒システムの下流帯を通過させることとを含む。
【0020】
排出物を処理する方法の一実施形態では、アンモニア、または上流帯において未反応のアンモニア前駆体は、触媒システムの下流帯においてN2に選択的に酸化される。一実施形態では、下流帯は、基材をその全長の約5%〜100%の範囲で被覆する。1つもしくは複数の実施形態では、モノリス基材は、基材の縦軸に沿って延在する、複数の微細な、実質的に平行のガス流路を含むフロースルー型ハニカム基材である。
【0021】
1つもしくは複数の実施形態では、触媒システムの下流帯は、約225℃を超える温度で、少なくとも10%のNH3転換、および少なくとも50%のN2選択性を用いて、アンモニアを除去するのに有効である。一実施形態では、上流帯におけるSCR組成物は、約350℃を超える温度、モノリス基材にわたって約300,000/時間未満のガス空間速度、および約0.10未満のNO/NH3分子比で、少なくとも10%のNH3転換、および少なくとも50%のN2選択性を用いて、アンモニアを除去するのに有効である。方法の態様で使用される、触媒のための特定の触媒組成物は、システムに関連する上述の触媒を含んでもよい。
【0022】
次の図面は、本発明の実施形態を例示する。図は、原寸に比例することが意図されておらず、モノリスチャネル等のある種の特徴は、本発明の実施形態に従った特徴を示すために、寸法が拡大され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】触媒モノリス、および下塗りでコーティングされた後の、個々のモノリスチャネルにおけるウォッシュコート形状の概略図を示す。
図1B】触媒モノリス、および図1Aの全基材を上塗りでコーティングした後の、個々のモノリスチャネルにおけるウォッシュコート形状の概略図を示す。
図2】1つもしくは複数の実施形態に従った触媒システムにおける、NH3のN2への転換を例示する概略図である。
図3】本発明の一実施形態に従った、エンジン排出物処理システムの概略図である。
図4A】γ−アルミナ上に担持された0.58質量%のPtと、銅(II)−交換菱沸石ゼオライトとの物理的な混合物からなる、均一の触媒HのSEM画像を示す。
図4B】γ−アルミナ上に担持された0.58質量%のPtを有する底部のウォッシュコート層、および銅(II)−交換菱沸石ゼオライトを有する最上部のウォッシュコート層からなる、層状触媒BのSEM画像を示す。
図5A】最上部のウォッシュコート装填量の関数として、触媒B〜Fについての、アンモニア酸化のためのN2選択性を示す。
図5B】最上部のウォッシュコート装填量の関数として、触媒B〜Fについての、アンモニア酸化のためのNH3着火温度T50を示す。
図6A】最上部のウォッシュコート装填量の関数として、触媒J〜Mについての、アンモニア酸化のためのN2選択性を示す。
図6B】最上部のウォッシュコート装填量の関数として、触媒J〜Mについての、アンモニア酸化のためのNH3着火温度T50を示す。
図7】層状触媒CおよびLについて、ならびに均一の触媒HおよびNについての、アンモニア酸化のためのN2選択性を示す。
図8】比較のための触媒YおよびZについての、温度の関数としての、SCR反応のためのNOxおよびNH3の転換の割合を示す。
図9】触媒層状触媒F〜Iについての、温度の関数としての、アンモニア酸化のためのアンモニア転換割合を示す。
図10】SCRおよびAMOxを統合した触媒P(白丸印)、および比較のためのSCRのみの触媒Q(黒丸印)によって触媒される、アンモニア酸化のためのNH3転換(実線)およびN2選択性(破線)を示す。
図11】入口NH3/NO=1である条件下で、SCRおよびAMOxを統合した触媒P(白丸印)、および比較のためのSCRのみの触媒Q(黒丸印)によって触媒される、SCR反応のためのNOx転換(実線)およびNH3転換(破線)を示す。
図12】入口NH3/NO>1である条件下で、SCRおよびAMOxを統合した触媒P(白丸印)、および比較のためのSCRのみの触媒Q(黒丸印)によって触媒される、SCR反応のためのNOx転換(実線)およびNH3転換(破線)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の幾つかの例示的実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスのステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態および様々な様式で実践または実行され得る。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「a」、「and」、および「the」は、文脈が明確に別途示唆しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「触媒」への言及は、2つ以上の触媒等の混合物を含む。本明細書で使用されるとき、「低減する」という用語は、量が低下することを意味し、「低減」は、あらゆる手段によって引き起こされた量の低下を意味する。「排気流」および「エンジン排気流」という用語が本明細書に出現する場合、「排気流」および「エンジン排気流」という用語は、エンジンアウト流出物、ならびにディーゼル酸化触媒および/または煤煙フィルターを含むが、それらに限定されない流出物下流の1つもしくは複数の他の触媒システム成分を指す。
【0026】
本発明の一態様は、触媒に関する。1つもしくは複数の実施形態に従って、触媒は、ウォッシュコート層としてモノリス基板上に配置され得る。本明細書で使用され、またHeck,Ronald and Robert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley−Interscience,2002,pp.18−19に記載されるように、ウォッシュコート層は、モノリス基板または下層のウォッシュコート層の表面上に配置される物質の組成的に特異的な層からなる。触媒は1つもしくは複数のウォッシュコート層を含有でき、各ウォッシュコート層は独特の化学的触媒機能を有することができる。
【0027】
1つもしくは複数の実施形態では、二元機能触媒が提供される。本発明の一態様に従って、SCR機能およびNH3酸化機能のための、物理的に別個の組成物を備えるモジュラー触媒システムを含む、二元機能触媒が提供される。1つもしくは複数の実施形態に従って、かかるモジュラー触媒システムは、2つの機能の反応速度を独立して調製するための、より高い柔軟性を可能にする。これを行うことによって、触媒の物理的構造は、化学的触媒作用の順番を制御し、NOxおよびNH3の転換を増加させ、N2に対する選択性を増加させるために使用され得る。SCR機能およびNH3酸化機能のための触媒組成物は、基材上の分離したウォッシュコート層に存在し得るか、代替的に、SCRおよびNH3酸化機能のための組成物は、基材上の分離した縦帯に存在し得る。
【0028】
本明細書で、「SCR機能」という用語は、化学量論反応式1によって記載される化学的プロセスに言及するために、使用される。
【0029】
4NOx+4NH3+(3−2x)O2→4N2+6H2O 反応式1
【0030】
より一般的には、それはNOxおよびNH3が混合され、好ましくはN2を産生する、あらゆる化学的プロセスに言及する。「SCR組成物」という用語は、SCR機能を触媒するのに有効な物質組成物に言及する。本明細書で、「NH3酸化機能」という用語は、反応式2によって記載される化学的プロセスに言及するために使用される。
【0031】
4NH3+5O2−>4NO+6H2O 反応式2
【0032】
より一般的には、それは、NH3が酸素と反応させられ、NO、NO2、N2O、または好ましくはN2を産生するプロセスに言及する。「NH3酸化組成物」という用語は、NH3酸化機能を触媒するのに有効な物質組成物に言及する。
【0033】
本明細書に別途記載される通り、本発明の1つもしくは複数の実施形態は、NOxの選択的触媒還元に有効な組成物を含有する上塗りウォッシュコート層を含む上流帯と、アンモニアの酸化に有効な組成物を含有する下塗りウォッシュコート層、およびNOxの選択的触媒還元に有効で、下塗り層の少なくとも一部を被覆する、別個の上塗りウォッシュコート層を含む下流帯とを有する触媒を提供する。
【0034】
基材
1つもしくは複数の実施形態に従って、触媒のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるそれらの材料のいずれでもあり得、金属またはセラミックのハニカム構造を典型的に含むであろう。通路が流体流動に対して開くように、基材の入口面から出口面へと延在する、複数の微細で平行のガス流路を有するモノリスフロースルー型基材等の、あらゆる好適な基材が用いられ得る。それらの流体入口からそれらの流体出口まで本質的に直線路である通路は、壁によって画定され、通路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように、触媒材料は「ウォッシュコート」としてコーティングされる。一体化基板の流路は、台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、長円形、円形等のいずれの好適な断面形状でもあり得る薄壁チャネルである。かかる構造は、断面積の1平方インチにつき約60〜約1200以上のガス入口開口部(すなわち、「セル」)(cpsi)を含有し得る。代表的な市販のフロースルー型基材は、Corning400/6菫青石物質であり、それは菫青石から構築され、400cpsiおよび6ミルの壁厚を有する。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、物質、または幾何学構造に限定されないことが理解されるであろう。
【0035】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性物質、例えば、菫青石、菫青石−αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナシリカ苦土、ジルコンケイ酸塩、珪線石、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸塩等から作製され得る。
【0036】
本発明の1つもしくは複数の実施形態に従った、触媒に有用な基材はまた、本質的には金属であり得、1つもしくは複数の金属または金属合金から成り得る。例示的金属担持体は、チタンおよびステンレス鋼等の耐熱金属および金属合金、ならびに鉄が実質的なまたは主要な成分である他の合金を含む。かかる合金は、ニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムうちの1つもしくは複数を含有し得、これら金属の総量は、少なくとも15質量%の合金、例えば、10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウム、および最大20質量%のニッケルを含み得る。これらの合金はまた、小量または微量の1つもしくは複数の他の金属(マンガン、銅、バナジウム、チタン等)を含有し得る。金属基材は、波板またはモノリシック型等の様々な形で用いられ得る。代表的な市販の金属基材はEmitecによって製造される。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、物質、または幾何学構造に限定されないことが理解されるであろう。金属基材の表面は、基材の表面上に酸化物層を形成するため、例えば、1000℃およびさらに高い高温で酸化され得、合金の耐食性を改善する。かかる高温誘導型酸化はまた、耐火性金属酸化物支持および触媒的に促進する金属成分の、基材への付着を強化し得る。
【0037】
SCR組成物
本発明の1つもしくは複数の実施形態に従って、SCR機能を触媒するのに有効な成分(本明細書で「SCR成分」と称される)は、NOx低減触媒組成物の一部として、ウォッシュコートにおいて活用される。典型的に、SCR成分は、ウォッシュコート内に他の成分を含む組成物の一部である。しかしながら、1つもしくは複数の実施形態では、NOx低減触媒組成物は、SCR成分のみを含んでもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、本発明は、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族のうちの1つからの金属が、外部表面上の骨格外部位上、またはモレキュラーシーブのチャネル、空洞、もしくはケージ内に堆積させられている部分である、微多孔性無機骨格またはモレキュラーシーブからなるSCR成分を活用する。金属は、ゼロ価金属原子もしくはクラスター、単離カチオン、単核もしくは多核オキシカチオン、または拡張金属酸化物としての形態を含むが、それらに限定されない複数の形態のうちの1つをとってもよい。特定の実施形態では、これらの金属には、鉄、銅、およびそれらの混合物または組み合わせが含まれる。
【0039】
ある実施形態では、SCR成分は、外部表面上の外部骨格部位、またはモレキュラーシーブのチャネル、空洞、もしくはケージ内に位置するVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族の金属の約0.10質量%〜約10質量%の範囲で含有する。好ましい実施形態では、外部骨格金属は、約0.2質量%〜約5質量%の範囲の量で存在する。
【0040】
微多孔性無機骨格は、International Zeolite Association(IZA)により発行された、Database of Zeolite Structuresに記載される骨格構造のうちのどれでも1つを有する、微多孔性アルミノケイ酸塩またはゼオライトからなってもよい。該骨格構造には、CHA、FAU、BEA、MFI、およびMOR型の構造が含まれるが、それらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例としては、菱沸石、フージャサイト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ベータゼオライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、およびZSM−5が挙げられる。幾つかの実施形態は、有用な範囲が約10〜200であるが、少なくとも約5以上、好ましくは少なくとも約20以上のシリカ/アルミナ分子比(SiO2/Al23として定義され、SARと略される)を有するアルミノケイ酸塩ゼオライト活用する。
【0041】
特定の実施形態では、SCR成分は、CHA結晶骨格型、約15を超えるSAR、および約0.2質量%を超える銅含量を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを含む。さらに特定の実施形態では、SARは、少なくとも約10、および銅含量は、約0.2質量%〜約5質量%である。CHA構造を有するゼオライトには、天然菱沸石、SSZ−13、LZ−218、Linde D、Linde R、Phi、ZK−14、およびZYT−6が含まれるが、それらに限定されない。他の好適なゼオライトはまた、PCT国際公開第WO2008/106519号として発行された、米国特許出願第12/038,423号、表題「Copper CHA Zeolite Catalysts」に記載され、当該出願に記載された全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本発明の1つもしくは複数の実施形態に従って、非ゼオライトモレキュラーシーブを含むSCR組成物が提供される。本明細書で使用されるとき、「非ゼオライトモレキュラーシーブ」という用語は、四面体部位の少なくとも一部が、シリコンまたはアルミニウム以外の要素によって占められる、頂点共有四面体骨格を指す。かかるモレキュラーシーブの非限定的例には、アルミノリン酸塩および金属−アルミノリン酸塩が挙げられ、この場合の金属は、シリコン、銅、亜鉛、または他の好適な金属を含み得る。かかる実施形態は、CHA、FAU、MFI、MOR、およびBEAから選択される結晶骨格型を有する、非ゼオライトモレキュラーシーブを含んでもよい。
【0043】
非ゼオライト組成物は、本発明の実施形態に従って、SCR成分において活用されてもよい。特定の非限定的な例としては、シリカアルミノリン酸塩SAPO−34、SAPO−37、SAPO−44が挙げられる。SAPO−34の合成型の合成については、米国特許第7,264,789号に記載され、当該内容は、参照により本明細書に組み込まれる。SAPO−44である菱沸石構造を有する、さらに別の合成非ゼオライトモレキュラーシーブを作製する方法については、米国特許第6,162,415号に記載され、当該内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、およびそれらの組み合わせ等の耐火性金属酸化物上に担持されたバナジウムからなるSCR組成物もまた周知であり、自動車用途において商用で広範に使用される。典型的な組成物は、米国特許第4,010,238号および第4,085,193号に記載され、当該出願に記載された全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。商用、特に自動車用途で使用される組成物には、WO3およびV25が、それぞれ5〜20質量%および0.5〜6質量%の範囲の濃度で当該化学物質上に分散される、TiO2が含まれる。これらの触媒には、結合剤および促進剤として作用する、SiO2およびZrO2等の他の無機物質が含まれてもよい。
【0045】
NH3酸化組成物
本発明の1つもしくは複数の実施形態に従って、NH3酸化機能を触媒するのに有効な組成物(本明細書で「NH3酸化成分」と称される)は、NOx低減触媒において活用される。排気ガス流内に含まれるアンモニアは、NH3酸化成分上の酸素と反応させられ、反応式1に従う触媒上でN2を形成する。
【0046】
1つもしくは複数の実施形態に従って、NH3酸化成分は、アンモニアを排気ガス流から除去するのに有効な、担持貴金属成分であってもよい。1つもしくは複数の実施形態では、これらの貴金属成分には、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、または金が含まれる。特定の実施形態では、貴金属成分には、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、および金の物理的混合物、ならびに化学的および原子的にドープされた組み合わせが含まれる。さらに特定の実施形態では、これらの貴金属成分には、白金が含まれる。さらにより特定の実施形態では、白金は、Pt担持装填量に基づき、約0.008質量%〜約2質量%(金属)の範囲の量で存在する。
【0047】
1つもしくは複数の実施形態に従って、貴金属成分は、高表面積耐火性金属酸化物担持体に堆積される。好適な高表面積耐火性金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、およびジルコニア、ならびにそれらの物理的混合物、化学的組み合わせおよび/または原子的にドープされた組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、耐火性金属酸化物には、シリカ−アルミナ、非晶質または結晶質アルミノケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−ランタナ、アルミナ−クロミア、アルミナ−バリア、アルミナ−セリア等の混合酸化物が含まれてもよい。例示的な耐火性金属酸化物としては、約50〜約300m2/gの特定の表面積を有する、高表面積γ−アルミナが挙げられる。
【0048】
本明細書で別途言及されるように、NH3酸化成分は、ゼオライトまたは非ゼオライトモレキュラーシーブを含んでもよく、International Zeolite Association(IZA)により発行された、Database of Zeolite Structuresに記載される骨格構造のうちのどれでも1つを有してもよい。該骨格構造には、CHA、FAU、BEA、MFI、およびMOR型の構造が含まれるが、それらに限定されない。一実施形態では、モレキュラーシーブ成分は、酸化物担持白金成分と、物理的に混合されてもよい。代替的な実施形態では、白金は、外部表面上に、またはモレキュラーシーブのチャネル、空洞、もしくはケージ内に分散されてもよい。
【0049】
NH3酸化組成物には、アンモニアSCR機能に活性な成分が含まれてもよい。SCR成分は、前項目に記載されるSCR成分のうちのどれでも1つからなってもよい。ひとつの実施形態では、NH3酸化成分は、酸化物担持白金成分およびSCR成分の物理的な混合物からなる。代替的な実施形態では、白金は、外部表面上に、またはSCR成分のチャネル、空洞、またはケージ内に分散されてもよい。
【0050】
ウォッシュコート層
1つもしくは複数の実施形態に従って、SCR成分およびNH3酸化成分は、ウォッシュコート層内に適用され得、この層は基材上にコーティングされ、基材に付着させられる。
【0051】
例えば、NH3酸化成分を含有する組成物のウォッシュコート層は、好適な溶媒中、例えば、水中で、白金前駆体の混合物または溶液を調製することによって、形成されてもよい。一般的に、経済および環境側面の観点から、白金の可溶性化合物または複合体の水溶液が好ましい。典型的に、白金前駆体は、担持体上で前駆体の分散を達成するため、化合物または複合体の形態で活用される。本発明の目的に対して、「白金前駆体」という用語は、焼成、またはその使用の初期相において分解、さもなければあるいは触媒的に活性な形態に転換される任意の化合物、複合体等も意味する。好適な白金複合体または化合物には、白金塩素イオン(例えば、[PtCl42-、[PtCl62-の塩)、白金水酸化物(例えば、[Pt(OH)62の塩)、白金アミン(例えば、[Pt(NH342+、[Pt(NH344+の塩)、白金水和物(例えば、[Pt(OH242+の塩)、白金ビス(アセチアセトネート)、および混合化合物または複合体(例えば、[Pt(NH32(Cl)2])が含まれるが、それらに限定されない。代表的な市販の陽イオン白金供給源は、Strem Chemicals,Inc.からの99%のアンモニウムヘキサクロロ白金酸塩であり、それは微量の他の貴金属を含有し得る。しかしながら、本発明が特定のタイプ、組成物、または純度の白金前駆体に制限されないことは理解されるであろう。白金前駆体の混合物または溶液は、複数の化学的手段のうちの1つによって、担持体に添加される。これらは、白金前駆体の溶液の、担持体上への含浸を含み、これに酸性成分(例えば、酢酸)または塩基性成分(例えば、水酸化アンモニウム)を組み込む固着ステップが続いてもよい。この湿潤固体は、化学的に還元もしくは焼成され得るか、またはそのままで使用され得る。代替的に、担持体は、好適な媒体(例えば水)中に再懸濁され、溶液中で白金前駆体と反応させられ得る。この後者の方法は、担持体がゼオライトである場合に、より典型的であり、白金前駆体を、ゼオライト骨格内のイオン交換部位に固着させることが望ましい。さらなるプロセスステップは、酸性成分(例えば、酢酸)もしくは塩基性成分(例えば、アンモニウム水酸化物)、化学還元、または焼成による固着化を含み得る。
【0052】
SCR組成物のウォッシュコート層を活用する1つもしくは複数の実施形態では、該層は、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族のうちの1つからの金属がその上に分散される、ゼオライトまたは非ゼオライトモレキュラーシーブを含有することができる。この系列の例示的な金属は、銅である。例示的モレキュラーシーブは、次の結晶構造CHA、BEA、FAU、MOR、およびMFIのうちの1つを有するゼオライトを含むが、それに限定されない。金属をゼオライト上に分散する好適な方法は、最初に好適な溶媒中、例えば、水中で、金属前駆体の混合物または溶液を調整することである。一般的に、経済および環境側面の観点から、金属の可溶性化合物または複合体の水溶液が好ましい。本発明の目的のために、「金属前駆体」という用語は、触媒的に活性な金属成分を得るために、ゼオライト担持体上に分散され得るあらゆる化合物または複合体等を意味する。例示的IB族金属銅について、好適な複合体または化合物には、無水および水和銅硫酸塩、硝酸銅、酢酸銅、アセチルアセトン銅、銅酸化物、水酸化銅、ならびに銅アミンの塩(例えば、[Cu(NH342+)が含まれるが、それらに限定されない。代表的な市販の銅源は、Strem Chemicals,Inc.からの97%酢酸銅であり、それには微量の他の金属、特に鉄およびニッケルが含まれてもよい。しかしながら、この発明は、特定の型、組成、または純度の金属前駆体に制限されないことは理解されよう。モレキュラーシーブは、懸濁液を形成するために、金属成分の溶液に添加され得る。この懸濁液は、銅成分がゼオライト上に分散されるように、反応させられ得る。これは、細孔チャネル内、ならびにモレキュラーシーブの外面上に分散されている銅をもたらし得る。銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオン、または銅酸化物として分散されてもよい。銅がモレキュラーシーブ上に分散された後、これらの固体は、懸濁液の液相から分離され、洗浄され、乾燥させられ得る。得られた銅含有モレキュラーシーブはまた、銅を固着させるために、焼成されてもよい。
【0053】
本発明の1つもしくは複数の実施形態に従ってウォッシュコート層を塗布するため、SCR成分、NH3酸化成分、またはそれらの混合物からなる触媒の微細に分割された粒子は、スラリーを形成するため適切な媒体(例えば、水)中に懸濁される。他の促進剤および/または安定剤および/または界面活性剤は、水または水混和性媒体中で、混合物または溶液としてそのスラリーに添加され得る。1つもしくは複数の実施形態では、このスラリーは、結果的に全ての固体の平均直径が約10ミクロン未満、すなわち約0.1〜8ミクロンの範囲の粒子サイズを有するように、粉末状にされる。粉砕は、ボールミル、連続的アイガーミル、または他の同様の装置において達成され得る。1つもしくは複数の実施形態において、懸濁液またはスラリーは、約2〜約7未満のpHを有する。スラリーのpHは、十分な量の無機または有機酸のスラリーへの添加によって、必要であれば調整され得る。スラリーの固体含有量は、例えば、約20〜60質量%、およびより具体的には約35〜45質量%であり得る。触媒層の所望の装填量が基材上に堆積されるように、基材は、次いでスラリーに浸漬され得、あるいはスラリーが別様に基材上にコーティングされ得る。その後、コーティングされた基材は約100℃で乾燥させられ、例えば、300〜650℃で約1〜約3時間、加熱によって焼成される。乾燥および焼成は、典型的には空気中で行われる。コーティング、乾燥、および焼成プロセスは、担持体上で触媒ウォッシュコート層の最終的な所望の質量測定量を達成するため、必要であれば繰り返され得る。幾つかの場合において、液体および他の揮発性成分の完全除去は、触媒が使用に配置され、操作中に遭遇する高温に供されるまで、生じ得ない。
【0054】
焼成後、触媒ウォッシュコート装填量を、基材のコーティングされた、およびコーティングされていない質量の差異の算出を通して決定することができる。当業者にとって明らかであろうが、触媒装填量は、コーティングするスラリーの固体含量およびスラリー粘度を変化させることによって、修正され得る。代替的に、コーティングするスラリーへの基材の反復浸漬を行うことができ、これに上述の通り過剰のスラリーの除去が続く。
触媒を調製する方法
【0055】
図1で示される通り、本発明の1つもしくは複数の実施形態に従った触媒は、2ステップのプロセスで調製され得る。図1Aで示される最初のステップでは、特定の実施形態で、約100チャネル/in2〜1000チャネル/in2の範囲の寸法のチャネル110を含有する担体基材100は、NH3の除去を触媒するのに有効な組成物を有する下塗りウォッシュコート層200でコーティングされる。ウォッシュコートの例示を簡略化するために、単一のチャネル110のみが示される。下塗りウォッシュコート層200は、前項目に記載される通り、基材100の一端に適用され、分散され、乾燥させられ、焼成されられる。図1Aで示される基材は、上流つまり入口帯140、および下流つまり出口帯130を有する。一実施形態では、層200内のNH3酸化成分は、基材長の約5%〜約100%の範囲で適用される。特定の実施形態では、NH3酸化成分は、基材長の10〜40%に塗布される。
【0056】
第2のステップでは、SCR成分を含有するSCR組成物は、上塗りウォッシュコート層300として塗布され、それは図1Bで示される通り、基材100の全長に対する上塗り層として示される。SCR成分に特定される必要とされる装填量に到達するためには、SCR組成物の多層のコーティングを形成するために、第2のコーティングするステップが反復され、上塗り層300を集合的に形成してもよい。上塗り層は、前項目に記載される通り、乾燥させられ、焼成される。これらの2つのステップは、SCR組成物のみを含む、上流つまり入口帯140を有する触媒をもたらす(本明細書の以上で「SCR帯」と称される)。下流つまり出口帯130(本明細書の以上で「AMOx帯」と称される)は、NH3酸化成分を含有する下塗りウォッシュコート層200、およびSCR成分を含有する上塗りウォッシュコート層300を含む。NH3酸化成分およびSCR成分を物理的に分離させる二層出口帯の生成は、触媒の性能に影響する重要な特徴であり、SCRおよびAMOxを統合した触媒の調製のためのこの特定の方法を区別する。
【0057】
一実施形態では、上流帯は、担体上に配置されるSCR触媒ウォッシュコート層を含み、下流帯は、担体上に配置されるNH3酸化成分を含有する下塗り層、および下塗り層の少なくともの一部の上に配置されるSCR触媒ウォッシュコート層を含む。特定の実施形態に従って、前部帯長の、基材全長に対する比率は、少なくとも約0.4である。さらに特定の実施形態では、前部帯長の、基材全長に対する比率は、約0.5〜約0.9の範囲にある。さらにより特定の実施形態では、前部帯長の、基材全長に対する比率は、約0.6〜約0.8の範囲にある。
【0058】
下塗りウォッシュコート層が塗布された後、最終的な触媒は、SCR帯が触媒の上流位置140内に配置されるように配向を計りながら、排気システム内に配置される。代替的な実施形態では、さらなる層が上塗り層に塗布されもよい。
【0059】
代替的な実施形態では、NH3酸化成分は、第1のステップで、基材の全長にわたる下塗り層として塗布される。第2のステップでは、SCR成分が、基材の全長にわたる上塗り層として塗布される。これは、AMOx帯200が基材の全長を被覆する触媒をもたらす。この触媒は、本明細書の以上で「独立型AMOx」と称される。
【0060】
排出物を処理する方法
本発明の別の態様は、エンジンの排気ガス流内で産生される排出物を処理する方法を含む。排気ガス流は、NOx、CO、炭化水素、およびアンモニアのうちの1つもしくは複数を含み得る。1つもしくは複数の実施形態では、この方法は、アンモニアまたはアンモニア前駆体を排気ガス流に注入することと、次いで排気ガス流を、SCR機能によってNOxを除去するために、本明細書に記載される上流SCR帯を最初に通過させることとを含む。かかる実施形態では、排気ガス流は、NH3酸化機能によってアンモニアを除去するために、次いで下流AMOx帯を通過させられる。下流触媒帯はまた、アンモニアに加えて、CO、炭化水素のうちの1つもしくは複数を酸化させる機能を果たしてもよい。
【0061】
一実施形態では、上流SCR帯および下流AMOx帯は、単一の触媒基材上に配置される。SCR帯は、基材長の約50%〜約90%の範囲で含まれ、SCR成分のみからなる。AMOx帯は、基材長の約5%〜約50%の範囲を含み、NH3酸化成分を含有する下塗り層およびSCR成分を含有する上塗り層からなる。
【0062】
方法の代替的な実施形態では、上流SCR帯は、1つの担体基材上に配置され、下流AMOx帯は、別個の担体基材上に配置される。この実施形態では、AMOx帯は、上述の通り、独立型AMOxとして調製される。下流独立型AMOx触媒の容量は、上流SCR触媒の容量の約10%〜約100%の範囲にあり、NH3酸化成分を含有する下塗り層およびSCR成分を含有する上塗り層からなる。
【0063】
以上の両実施形態では、AMOx帯は、2つの組成的および機能的に特異的な層からなる。下塗り層は、担持貴金属成分からなり、反応式2に従ってアンモニアを酸化させる機能を果たす。上塗り層は、貴金属がなく、NOxおよびアンモニアの二窒素への転換に有効な触媒組成物からなる。図2は、これらの2つの層機能が共に、AMOx触媒における、NH3酸化のためのN2選択性を増加させる機能を果たす様子を例示する。アンモニア分子が、NOxの分子によってすぐに消費され得ないような条件下(例えば、熱的脱着作用下)で、SCR触媒から脱着されるアンモニア分子は、SCR触媒を含む上流帯140内のウォッシュコート層300と衝突しながら、チャネル110を下向する。該分子は、ウォッシュコート層300内部へ、およびウォッシュコート層から外部へ拡散し得るが、該分子は、それが下流帯130に入り、NH3酸化成分を含む組成物を含む下塗り層200に接触するまでは、触媒によって他の方法で転換されない。下塗り層200において、アンモニアは、最初にNOに転換され、それは後に上塗り層300へ拡散し得る。SCR触媒組成物を含有する上塗り層において、該NOは、NH3と反応し、N2を形成し得、それによってN2に対する純選択性を増加させる。
【0064】
担持貴金属を、上塗り層内のSCR成分の下部にある、底部のウォッシュコート層内に配置することは、NOが下塗り層内のみで生成されることを制限する。これは、触媒ウォッシュコート層内の、NOの平均滞留寿命を延長させる効果を有する。NOの滞留時間が増加するにつれて、NOは、SCRウォッシュコート層内のアンモニアの分子と衝突し、N2を産生するより高い可能性を有し、N2は最終的に触媒から放出される。
【0065】
使用中に、触媒の上流SCR帯140は、アンモニア選択的触媒還元反応によって、排気物からNOx排出物を除去することに主に関与する。下流AMOx帯は、アンモニア酸化機能に主に関与する。本明細書に別途記載される通り、SCR組成物の被覆層を有する下流帯130は、SCR活性を有し、NOx低減においてさらなる機能を果たすことができる。このように、AMOx帯は、純NOx除去に寄与することができる。さらに、上昇した温度で、幾つかのSCR組成物、特に銅系SCR触媒はまた、貴金属成分の非存在下であっても、大幅なアンモニア酸化活性を有し得る。さらに、銅系SCR触媒組成物は、350℃を超える温度で、高選択性でNH3をN2に転換させることができる。1つもしくは複数の実施形態では、SCR帯は、それによって過剰のアンモニアの低減に寄与することができる。
【0066】
本発明の別の態様は、ディーゼル排気ガス状排出物の処理のための、1つもしくは複数のさらなる成分を含む排出物処理システムに関する。ディーゼルエンジン排気物は、一酸化炭素、未燃炭化水素、およびNOx等のガス状排出物だけでなく、粒子つまり粒子状物質を構成する縮合相物質(液体および固体)をも含有する、不均一混合物である。組成物がその上に配置される触媒組成物および基材は、特定の、または全てのこれらの排気成分を無害の成分に転換するために、しばしばディーゼルエンジン排気物システムにおいて提供される。例えば、ディーゼル排気システムは、NOxの低減のための触媒に加えて、ディーゼル酸化触媒および煤煙フィルターのうちの1つもしくは複数を含み得る。本発明の実施形態は、当技術分野で既知のディーゼル排気ガス処理システムに組み込まれ得る。1つのかかるシステムは、米国特許第7,229,597号に開示され、当該内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
排出物処理システムの一例は、図3を参照することによってより容易に理解され得、当該図は、本発明のこの実施形態に従って、排出物処理システム400の概略的図を描写する。排気ガス流は、含有するガス状汚染物質(例えば、未燃炭化水素、一酸化炭素、およびNOx)および粒子状物質は、ライン510を介して、エンジン500からディーゼル酸化触媒(DOC)600へと運ばれる。DOCにおいて、未燃ガス状および不揮発性炭化水素、ならびに一酸化炭素は、主に燃焼され、二酸化炭素および水を形成する。さらに、NOx成分のうちのNOの部分は、DOC内でNO2に酸化され得る。排気流は次に、ライン610を介して、触媒された煤煙フィルター(CSF)700へと運ばれ、当該フィルターは排気ガス流内に存在する粒子状物質を捕らえる。CSFは、受動的再生成のために、任意に触媒される。CSF700を介した粒子状物質の除去後、排気ガス流は、NOxおよびアンモニアの処理および/または転換のために、明細書に記載される実施形態に従って、ライン710を介して、下流触媒800へと運ばれる。
【0068】
いずれの様式でも本発明を限定することを意図せず、本発明の実施形態を以下の実施例によってより完全に説明する。
【0069】
試料1A〜1Iの調製
表1に記載される通り、一連の触媒1A〜1Iを調製した。触媒の全ては、400cpsiのチャネル寸法および6ミルの壁厚を備える、円筒形1.0インチOD×3.0インチ長の菫青石ハニカムモノリス上に配置された粉末からなる。Pt(OH)62-のpH9.5での初期湿潤含浸によって、最初にPt(IV)をγ−アルミナ(SBA−150)上に固定化することによって、これらの触媒を調製し、続いて酢酸を用いて固着化を行った。得られた黄色の固体は、不揮発性の固体ベースで、約0.58質量%のPtを含有した。固体を、脱イオン水中で懸濁させ、粒径を縮小させるために、連続的ミルを通過させた。モノリス基材を得られたスラリーに浸漬し、排水し、過剰のスラリーを、チャネルを通して圧縮空気を吹き付けることによって除去した。モノリス試料を乾燥させ、450〜600℃で焼成した。Al23上のPtのみからなる、比較試料1Aおよび1Bを、この時点で取り置いた。鉄または銅交換ゼオライトを脱イオン水中で懸濁し、粒径を縮小させるために、懸濁液を粉砕した。上述の通り、担持Ptウォッシュコートがすでに適用されているモノリスを、得られたスラリーに浸漬し、排水し、過剰のスラリーを圧縮空気によって除去した。モノリス試料を乾燥させ、450℃で焼成し、層状触媒1C〜1Gおよび1K〜1Mを得た。SBA−150スラリー上のPtと、適切な金属交換ゼオライトスラリーとを所望の割合で混合させること、および新鮮なモノリスを混合されたスラリーに浸漬することによって、均一の触媒1H、1I、および1Nを作製した。コアを乾燥させ、次いで450℃で焼成した。
【0070】
【表1】
【0071】
試料1K〜1Nの調製
表1に記載される通り、一連の触媒1K〜1Nを調製した。触媒の全ては、400cpsiのチャネル寸法および6ミルの壁厚を備える、円筒形1.0インチOD×3.0インチ長の菫青石ハニカムモノリス上に配置された粉末からなる。上述の方法と全く同一の方法で、γ−アルミナ下塗り層上のPtを調製し、1K〜1Nに塗布した。不揮発性固体ベースで1.5質量%のFeを含有し、SAR=30を有するFeBEAを、CuCHA物質で置換したことを除いて、上述の通り、被覆層をCuCHA被覆層のために1K〜1Mに塗布した。SBA−150スラリー上のPtと、FeBEAスラリーとを所望の割合で混合させることによって、均一の触媒1Nを作製し、新鮮なモノリスを混合されたスラリーに浸漬し、続いて乾燥させ、450℃で焼成した。
【0072】
試料1A〜1Zのエージング
表1で別様に指摘される場合を除いて、分析または評価の前に、触媒の全てを、750℃の空気中で5時間熱エージングした。熱触媒のエージングは、箱形炉内で行われた。エージングプロトコルは、二重目的を果たす。最初に、触媒活性が、複数の評価の実施にわたって変化しないような条件下でのみ、有意義な評価結果を獲得することができる。熱アニーリングは、触媒が熱変化に対して定常状態にあることを保証する。第2に、長期間の実地使用後の触媒活性が十分であることを保証するために、車両の耐用期間の妥当な割合をモデル化した熱的条件下で、触媒を評価した。
【実施例1】
【0073】
SEMを用いて、触媒の組成的構造を可視化した。図4Aは、比較触媒1Hの走査電子顕微鏡写真を示し、ウォッシュコートの深部にわたって均一に分散されたγ−アルミナの粒子を明らかに示している。均一の触媒内で所望の触媒装填を達成するために、粉末スラリーを3つのコーティングステップで塗布し、これは、各層の間の境界において明白である。しかしながら、これらは、異なる組成物間の境界を構成せずおよびしたがって、触媒1Hは、層状触媒の本定義に適合しない。図4Bは、代表的触媒1Cの顕微鏡写真を示し、当該触媒は、1Hに匹敵するバルク組成物および総ウォッシュコート装填量を有する。しかしながら、触媒Cにおいて、Pt/Al23物質は、本質的に最上部ウォッシュコート層内にγ−アルミナを備えずに、モノリス表面の薄層内で局所化される。SEM画像は、Ptが触媒ウォッシュコートの深部で堆積され、単離された場合、所望の組成的層化効果が達成され得ることを示す。
【実施例2】
【0074】
次のようなガス供給条件で操作された、研究室モデルのガス反応装置内でのアンモニア酸化活性について、表1の触媒を評価した;NH3=500ppm、O2=10%(屋内空気として送達した)、H2O=5%、平衡=N2。長さ3インチ(7.62cm)のコア上で、2.11m/秒の直線流速を用いて、GHSV=100,000/時間で、全ての評価を行った。炉が層流動様式で作動するように、チャネル寸法は1.27mm、およびT=300℃とし、本システムについては9.1のReynolds番号であった。
【0075】
図5Aのデータは、最上部のウォッシュコート組成物が、2.9質量%のCuである、銅(II)交換菱沸石ゼオライトからなる場合の、試料1B〜1FのためのN2選択性を示す。選択性を250℃(四角印)および400℃(丸印)で評価した。N2選択性は、特に400℃におけるCuCHA含有の機能である。Al23上でPtのみを含有する触媒1Cは、15%にすぎないの選択性をもたらす一方で、Pt/Al23層の最上部に被覆層として存在する、1.4g/in3を超えるCuCHAを有する試料は、N2に対して90%を超える選択性をもたらす。250℃においてN2選択性のCuCHAへの依存は、それほど強くないが、CuCHAはゼロから1.4g/in3に増加されることから、55%から75%へのN2選択性増加が依然として存在する。これらのデータは、N2選択性をより高い値に調整するにあたってのSCR共触媒被覆層の値を示す。さらに、図5Bのデータは、着火温度T50が、明らかな傾向なしに、220℃〜235℃にあることを示し、上塗りの存在に起因する不利なNH3活性が実質的にないことを示している。
【実施例3】
【0076】
上述の通り、研究室モデルのガス反応装置でのNH3酸化について、表1の触媒1J〜1Nを評価した。図6Aは、最上部のウォッシュコート装填量の関数として、触媒J〜MについてのN2選択性を示す。N2選択性は、特に400℃でのFeBEA含有量の関数であるが、FeBEA装填量の関数としての選択性における傾向は、CuCHAベースの触媒についての傾向よりも勾配が平坦である。このデータは、CuCHA共触媒を用いたときのN2選択性と同一のN2選択性を達成するためには、FeBEA共触媒の大幅に高めの装填量が必要であることを示す。250℃においてN2選択性は、FeBEA装填量を3.0g/in3にまで高めたときでさえも、FeBEA装填量の関数として本質的に不変である。図6Bのデータは、着火温度T50が、触媒1J〜1Nの全てについて、明らかな傾向なしに、220℃〜230℃にあることを示し、再び上塗りの存在に起因する不利なNH3活性が実質的にないことを示している。
【実施例4】
【0077】
図7は、触媒組成的微細構造の関数として、および共触媒の関数として、エージング後のAMOx触媒のN2選択性を比較する。選択性を400℃で評価した。層状触媒1Cおよび1Lについて、それぞれCuCHAおよびFeBEAに基づき、データは、下塗り層内に担持Pt成分を備えた層状構造が、担持Pt機能が共触媒と物理的に混合される、組成的に同等の均一の触媒1Hおよび1Nよりも高いN2選択性をもたらすことを示す。したがって、N2選択性に関して、組成的に層状の微細構造には、均一の触媒を超える利点が存在する。図7はまた、層状微細構造または混合触媒のいずれについても、CuCHA共触媒が、FeBEA共触媒よりも高いN2選択性をもたらすことを示す。これは、反応式1のSCR反応についての、CuCHA物質のはるかに高い活性の結果である。
【0078】
この後者の事実は、図8のデータによって支持され、それはアルミナ下塗り上にPtを有さない比較触媒Y(白丸印、2.6g/in3CuCHA、2.9質量%Cu)およびZ(黒丸印、3.0g/in3FeBEA、1.5質量%Fe)のSCR活性を示している。SCR評価条件は:NH3=500ppm、NO=500ppm、O2=10%(空気として送達した)、H2O=5%、平衡=N2、GHSV=100,000/時間であった。触媒を10%H2O/空気中で、750℃で5時間、エージングさせた。このデータは、SCR関連条件下でのCuCHAのみの触媒についてのNOおよびNH3転換が、同等に装填されたFeBEAのみの触媒についての転換よりも大幅に高いことを示す。この差異は、CuCHA共触媒上のより高い反応率に直接関連し、それはCuCHA共触媒上のSCR反応が、担持Pt成分上のアンモニア酸化率と動力学的に競合することを意味する。かかる条件下で、反応式2によって産生されるNOを、残留NH3と迅速に混合させ、N2を産生することができ、それによってNH3のN2への純転換を増加させることができる。
【実施例5】
【0079】
層状および混合CuCHAベースのAMOx触媒の熱安定性ならびに水熱安定性を、NH3酸化条件下で精査し、データを図9で示した。触媒を、空気中で、750℃で5時間(黒丸印)、または10%H2O/空気中で、750℃で5時間(白丸印)熱エージングさせた。このデータは、層状触媒1Fおよび1G(丸印)、ならびに均一の触媒HおよびI(四角印)の両方が、新たに調製された触媒と比較して活性を失うことなく、空気中で、750℃で5時間の熱エージングに対して好安定性を有することを示す。データは、層状触媒について、10%H2O/空気中における750℃での5時間の水熱エージング後に、活性が失われていないことを示す。しかしながら、均一の触媒について、活性は、水熱エージング後に実質的に失われる。これらのデータは、触媒混合物における水熱安定性を達成するにあたっての、Pt成分および銅含有成分のより大きい物理的分離の利点を例示する。
【0080】
試料1Pおよび1Qの調製
図2で例示される図表に基づき、SCRおよびAMOxを統合した触媒1Pを産生した。簡潔に言えば、400cpsiおよび6ミルの壁厚を有する1.0インチOD×6.0インチ長ハニカムモノリス基材を、一端上に1.25インチ長帯として、SBA−50上に担持された0.57質量%のPtを含有するスラリーでコーティングし、続いて450℃での乾燥および焼成を行った。スラリー調製プロセスは、上述の通りであった。この帯における標的ウォッシュコート装填量は、0.5g/in3であったが、これはこの帯における5g/ft3の標的Pt装填量をもたらす。図2Aで示される通り、得られた部分は、一端のγ−アルミナ帯上にPtを有する。次いでこの同一の部分を、上述のスラリー調製およびコーティングプロセスを用いて、反対端からCuCHAを含有するスラリーでコーティングし、この部分全体で2.5g/in3のCuCHAの装填量を得た。この部分を乾燥させ、次いで450℃で焼成し、CuCHA触媒をこの部分に固定した。図2bで示される通り、このプロセスにより、2つの帯を有する部分を得た:1)2.5g/in3のCnCHAのみを有する、長さ4.75インチのSCRのみの帯;2)下塗り層としてSBA−150上に0.5g/in3のPt、および上塗り層として2.5g/in3のCuCHAを有する、長さ1.25インチのAMOx帯。この部分は、統合コーティングプロセスによって生成されるSCR+AMOx触媒についての研究室規模のモデルとして機能する。1.0インチOD×6.0インチ長のハニカムモノリス基材を、γ−アルミナ下塗り帯上にPtを有することなく、この部分の全長にわたり2.5g/in3のCuCHAでコーティングすることによって、比較触媒Qを生成した。触媒組成および幾何学構造の詳細については表2を参照されたい。
【0081】
【表2】
【実施例6】
【0082】
新鮮な状態の触媒Pを、自動車SCR用途に関連すると見なされる次の条件下で、アンモニア酸化について評価した:NH3=200ppm、O2=10%(屋内空気として送達した)、H2O=5%、平衡=N2、GHSV=80,000/時間。この部分全体のバルク容量を用いて空間速度を設定した。この部分上のAMOx帯は、総容量の20%にずぎず、したがってAMOx帯についての有効な空間速度が400,000/時間であることは認識されるべきである。結果として、NH3の純転換は、以上のAMOxのみの部分の試験における転換より低いことが予想される。この部分を、下流(出口)位置内に配置されるAMOx帯で評価した。図10は、温度の関数として、部分PのNH3転換割合およびN2選択性活性割合を示し、比較部分Qに対してこれらの線を重ね合わせる。このデータは、SCRのみの触媒Qが、高温(T50=330℃)でアンモニアを酸化させ得るが、SCRおよびAMOxを統合した触媒Pにおいは、NH3着火についてのT50が約250℃に移動することを示す。全ての温度についてN2選択性が90%を超えることから示される通り、両方の場合においても、NH3酸化は、N2をほぼ独占的に生成する。
【実施例7】
【0083】
触媒Pを、自動車SCR用途に関連すると見なされる次の条件下で、SCR活性について評価した:NH3=200ppm、NO=200ppm、O2=10%(屋内空気として送達した)、H2O=5%、平衡=N2、GHSV=80,000/時間。図11のデータは、SCRのみの比較試料Q、ならびにSCRおよびAMOxを統合した触媒Pが、本質的に同等のNO転換およびNH3転換をもたらすことを示す。このデータは、Pt含有下塗りをSCR触媒の後方20%部分上に配置することが、触媒システムのSCR NOx転換に負の影響を与えないことを示す。
【実施例8】
【0084】
SCRおよびAMOx性能を同時に評価するために、SCRおよびAMOxを統合した触媒システムを、NH3が過剰であるSCR条件下で最終的に評価した。この評価についての条件は次の通りである:NO=200ppm、O2=10%(屋内空気として送達した)、H2O=5%、平衡=N2、GHSV=80,000/時間;NH3=200ppm(T=200℃)、226ppm(250℃)、257ppm(350℃)、828ppm(450℃)。対照のSCRのみの触媒Qの出口で50ppmのNH3を得るために、各温度点についてのNH3レベルを選択した。次いでガス流をSCRおよびAMOxを統合した触媒Pに切り替え、それを同一条件下で評価した。これらのデータは、図12で示される。PおよびQの両方は、250℃以上でほぼ100%のNO転換をもたらす。触媒Qは、200℃でやや高いNO転換をもたらす。NH3転換に関しては、最大350℃の温度について、SCRおよびAMOxを統合した触媒が、過剰のアンモニアの条件下で高いNH3転換、また故に低いNH3スリップをもたらすことが明らかである。CuCHA触媒による450℃でのアンモニアの効率的な酸化に起因して、その温度で50ppmのNH3スリップを、SCRのみの比較触媒から得ることはできなかった。
【0085】
図10〜12のデータは、触媒Pが、SCRおよびAMOxを統合した触媒についての3つの重要な目標を達成することを示す:1)アンモニア酸化成分は、NOの非存在下でアンモニアを酸化させる;2)下塗り層および後方帯内に配置される場合、アンモニア酸化成分は、SCR NOx転換に負の影響を与えない;3)NH3を過剰に有する関連SCR条件下で、SCRおよびAMOxを統合した触媒は、NOxおよび過剰のアンモニアを同時に除去する。我々はまた、同一の組成物に基づき、組成的に層状のAMOx帯が、水熱エージングに対して、従来の均一の触媒構造よりも安定していることを示した。
【0086】
本明細書を通して「一実施形態」、「ある実施形態」、「1つもしくは複数の実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される具体的な特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所で「1つもしくは複数の実施形態では」、「ある実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」等のフレーズが登場するが、必ずしもすべてが本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。さらに、具体的な特徴、構造、物質、または特性は、1つもしくは複数の実施例においてあらゆる好適な方法で組み合わされてもよい。
【0087】
本明細書において本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態が本発明の原則および適用の単なる例示であることを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に種々の修正および変形をもたらし得ることが当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内である修正および変形を含むことを意図する。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12