特許第6377597号(P6377597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377597
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ダイプレート及び型締装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/64 20060101AFI20180813BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B29C45/64
   B22D17/26 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-237164(P2015-237164)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-100410(P2017-100410A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】505139458
【氏名又は名称】U−MHIプラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 俊彦
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−210295(JP,A)
【文献】 特開2001−001381(JP,A)
【文献】 特開平10−58455(JP,A)
【文献】 特表2010−516502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/64−45/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型又は可動金型が取り付けられ、相手側のダイプレートとともに締結力を受けることにより、前記固定金型と前記可動金型の間に型締力を生じさせる型締装置のダイプレートであって、
前記ダイプレートは、
前記締結力を受ける受力体と、
前記受力体の一方の面側に取り付けられ、かつ、前記固定金型又は前記可動金型が取り付けられる金型支持体と、を備え、
前記受力体は、
リブが延びる軸方向の両端部に前記締結力を受ける受力部を有する、別体で互いに組合せ可能な一対のクロスリブモジュールを備え、
一対の前記クロスリブモジュールを互いに交差させて組み付けられる、
ことを特徴とするダイプレート。
【請求項2】
前記クロスリブモジュールの前記受力部は、前記締結力を付与する油圧シリンダ用のシリンダを備える、
請求項1に記載のダイプレート。
【請求項3】
前記クロスリブモジュールの前記受力部は、前記締結力を付与する電動アクチュエータの要素を備える、
請求項1に記載のダイプレート。
【請求項4】
一対の前記クロスリブモジュールのそれぞれは、互いに重ね合わされる前記リブが延びる軸方向の中央部に中央連結部を備え、
前記中央連結部は、他の部分よりも窪んでいる、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のダイプレート。
【請求項5】
前記受力体と前記金型支持体は分離可能である、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のダイプレート。
【請求項6】
一対の前記クロスリブモジュールの一方と前記金型支持体とが一体的に形成される、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のダイプレート。
【請求項7】
前記金型支持体は、
前記受力体に取り付けられる前記一方の面側であって、一対の前記クロスリブモジュールを避けた領域に、面外方向への曲げを規制する単数又は複数の前記リブを備える、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のダイプレート。
【請求項8】
固定金型が取り付けられる固定ダイプレートと、前記固定ダイプレートに進退移動が可能であるとともに可動金型が取り付けられる可動ダイプレートと、を有し、
前記可動ダイプレートと前記固定ダイプレートの間に締結力を加えることで、前記可動金型と前記固定金型を型締する型締装置であって、
前記固定ダイプレート及び前記可動ダイプレートの少なくとも一方が、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のダイプレートからなる、
ことを特徴とする型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に用いられるのに好適なダイプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定金型を保持する固定ダイプレートと、可動金型を保持する可動ダイプレートと、可動ダイプレートを固定ダイプレートに対して進退移動させる移動手段と、可動ダイプレートと固定ダイプレートとをタイバーを介して結合加圧する型締手段と、を備える射出成形機の型締装置がある。
射出成形機でより大型の製品を成形することに対する需要が高まっており、大型の製品を成形するには成形機を大型にする必要があり、さらに、大型成形機においては、金型が取り付けられるダイプレートは非常に大きく重いものになる。例えば、型締力が4000トンクラスの射出成形機だとダイプレートの幅寸法は4mを超え、重量は約45〜50トンに及ぶものもある。したがって、成形機を据え付ける工場に繋がる輸送用の道路幅が狭かったり、道路の地盤が弱く地耐力が低かったりすると、ダイプレートを工場に輸送できない場合がある。
【0003】
特許文献1は、大型の射出成形機に対応し、ダイプレートの運搬性、取扱性の向上が図られるとともに、固定金型と可動金型とを確実に締結できる型締装置を提案している。特許文献1の型締装置は、図13に示すように、可動ダイプレートが、上盤102と下盤103に分離可能な受力盤101と、受力盤101の一方の面側に着脱可能に取り付けられるとともに可動金型が取り付けられる金型支持体105と、からなることを特徴とする。特許文献1は、ダイプレートを、受力盤101と金型支持体105の二つの部材に区分し、さらに、受力盤101を上盤102と下盤103の二つの部材に区分して、あわせて三つの部材に区分したので、それぞれの部材の重量を軽く抑えることができる。これにより、特許文献1は、ダイプレートの運搬性、取扱性の向上を図っている。
なお、特許文献1による三つの部材への型締装置は、固定金型、固定ダイプレートに適用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3886670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の型締装置は、破線の矢印で示すように、上盤102と下盤103が接合された受力盤101が金型支持体105と相互に組み付けられる。型締めの際に、受力盤101には曲げが生ずるので、この曲げに伴って上盤102と下盤103の接合界面を剥離、破断させる力が生ずる。この破断を避けるためには、上盤102と下盤103の接合強度を大きくするために、接合部周辺の肉厚を増大させたり、接合界面の面積を大きくしたりするなどの方策をとる必要があるために、上盤102と下盤103のそれぞれの重量は一体物のダイプレートよりは低減できるが、ダイプレートを単純に上下に分割したものより随分重くなってしまい、上盤102と下盤103と金型支持体105を組み付けて構成したダイプレートは、元々の一体物のダイプレートに比べ大きくコストアップしてしまう。
【0006】
以上より、本発明は、型締めによる曲げに対する強度を確保しつつ、運搬性、取扱性、コストに優れたダイプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固定金型又は可動金型が取り付けられ、相手側のダイプレートとともに締結力を受けることにより、固定金型と可動金型の間に型締力を生じさせる型締装置のダイプレートに関する。
本発明のダイプレートは、締結力を受ける受力体と、受力体の一方の面側に取り付けられ、かつ、固定金型又は可動金型が取り付けられる金型支持体と、を備える。
本発明の受力体は、リブが延びる軸方向の両端部に締結力を受ける受力部を有するクロスリブモジュールを備え、別体で互いに組合せ可能な一対のクロスリブモジュールを直接あるいは間座などの中間部材を介して互いに交差させて組み付けられることを特徴とする。
【0008】
本発明における受力体は、一対のクロスリブモジュールが互いに交差して組み付けられるものであるから、射出成形機が据え付けられる場所まで、一対のクロスリブモジュールを分離した状態で個別に運搬することができる。分離された一対のクロスリブモジュールは、受力体全体に比べると軽量であるから、運搬性、取扱性に優れる。特に、一対のクロスリブモジュールのそれぞれは、両端の受力部を結ぶ軸方向の寸法は大きいが、該軸方向に直交する方向の寸法は軸方向に比べて小さい。4000トンクラスの射出成形機のダイプレートを想定したとしても、軸方向に直交する方向の寸法は4m以下にすることもできる。またそれぞれのクロスリブモジュールの長さにおいても10m以下とすることができるから、大型トラックで無理なく運搬できる。
また、本発明における受力体は、軸方向の両端部に受力部を有するクロスリブモジュールが、交差して組み付けられる。したがって、本発明のダイプレートを用いて型締装置に締結力を生じさせると、例えば対角線に沿って連なる一対のクロスリブモジュールのそれぞれが梁のように機能して曲げに対向するので、曲げモーメントに強く且つコンパクトなモジュール設計が可能になる。このときクロスリブモジュールは分離可能に連結されてもよいし、溶接や接着接合などによって分離できないように連結されてもよい。特に、分離可能に連結できる場合は、型締装置の製造工場にて一旦仮組みして連結状態、組み立て精度、型締め機能において正常であることを確認した後、分解して出荷できるので、型盤としての品質、信頼性を確保することに有効である。好ましくは、分離可能にも分離不可能にもどちらの連結方式によっても組み付け可能で、かついずれの連結方式によって組み付けられても、固定側金型と可動側金型を締結する型締装置として機能することができる連結構造であることが好ましい。
また、一対のクロスリブモジュールを交差させて組み付ける際に、連結部を直接あるいは間座などの中間部材を介して組み付けることができる。特に、間座などの中間部材を介して組み付けると、本発明のダイプレートを用いて型締装置に締結力が生じて、クロスリブモジュールの変形によって連結部において互いにズレが発生した際に、間座が連結部で滑ることでズレによる歪みや過大な面圧を開放して不要な凝着摩耗などの不具合の発生を防止できる。このため、間座の表面にメッキや蒸着などによって高摺動性膜を形成する表面処理をしておくことが好ましい。
【0009】
本発明のダイプレートにおいて、クロスリブモジュールの受力部に、締結力を付与する油圧シリンダ用のシリンダを形成することができる。
このようにダイプレートに油圧シリンダの要素であるシリンダを形成すれば、その要素を別途設ける必要がないので、型締装置をコンパクトにできるとともに、その組み付けの手間を省くことができる。
また、同様に、クロスリブモジュールの受力部に、締結力を付与する電動アクチュエータの要素を設けることもできる。
【0010】
本発明のダイプレートにおいて、一対のクロスリブモジュールのそれぞれが、互いに重ね合わされるリブが延びる軸方向の中央部に中央連結部を備える場合に、この中央連結部を他の部分よりも窪ませることができる。この窪んだ中央連結部分を重ね合わせれば、ダイプレートとしての厚さを薄くできる。
【0011】
本発明のダイプレートにおいて、受力体と金型支持体は分離可能にすることができる。これは、一対のクロスリブモジュール及び金型支持体の三つの要素を個別に作製することを意味し、それぞれの要素の重量を軽くできる。
また、本発明のダイプレートにおいて、一対のクロスリブモジュールの一方と金型支持体とを一体的に形成することができる。金型支持体は、クロスリブモジュールに比べて重量が軽いので、一対のクロスリブモジュールの一方と金型支持体を一体的に形成しても重量の増加を抑えることができる。一方でこの一体成形によれば、成形の手間を省くことができるのに加え、一対のクロスリブモジュールの一方と金型支持体の組み付けの手間を省くことができる。
【0012】
本発明のダイプレートにおいて、金型支持体は、受力体に取り付けられる一方の面側であって、一対のクロスリブモジュールを避ける領域に、面外方向への曲げを規制する単数又は複数のリブを備える、ことができる。
これにより、金型支持体を合わせたダイプレートの全体としての剛性を向上して、曲げに対抗できる。しかも、リブは、受力体に取り付けられる一方の面側であって、一対のクロスリブモジュールを避ける領域に設けられるので、リブを設けるための格別な領域を用意する必要がない。
【0013】
本発明は、固定金型が取り付けられる固定ダイプレートと、固定ダイプレートに進退移動が可能であるとともに可動金型が取り付けられる可動ダイプレートと、を有し、可動ダイプレートと固定ダイプレートの間に締結力を加えることで、可動金型と固定金型を型締する型締装置を提供し、この型締装置は、固定ダイプレート及び可動ダイプレートの少なくとも一方が、以上説明したダイプレートから構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、別体で互いに組合せ可能な一対のクロスリブモジュールを互いに交差させて組み付けられるものであるから、運搬性、取扱性、コストに優れる。また、本発明によれば、受力体は例えば対角線に沿って連なる一対のクロスリブモジュールのそれぞれが梁のように機能して曲げに抵抗するので、コンパクトなモジュール設計が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に型締装置を示す部分側断面図である。
図2図1の型締装置に用いられるダイプレートを示す斜視図である。
図3図2のダイプレートを示す分解斜視図である。
図4】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図5】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図6】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図7】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図8】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図9】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図10】クロスリブモジュール及び金型支持体の変形例を示す図である。
図11】本発明によるダイプレートの他の実施形態を示す平面図である。
図12図1の型締装置を固定ダイプレートの側から視た概略図である。
図13】従来の固定ダイプレートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態にかかる型締装置1は、図1に示すように、ベースフレーム2の上に固設されるとともに固定金型3が取り付けられた固定ダイプレート5と、移動シリンダ13の作動によってレール7上を図の左右方向に進退移動するとともに可動金型9が取り付けられた可動ダイプレート11と、固定ダイプレート5と可動ダイプレート11とを連結する複数のタイバー15と、を備えている。
なお、説明の便宜上、固定ダイプレート5が設けられる側を前と定義し、可動ダイプレート11が設けられる側を後と定義する。
【0017】
固定ダイプレート5には、各タイバー15と同軸にシリンダ37とラム19とから成る型締め用の油圧シリンダ17が設けられており、各タイバー15の一端は油圧シリンダ17のラム19に接続されている。また、各タイバー15の他端には雄ネジ21が形成されており、雄ネジ21は可動ダイプレート11に設けられる半割りナット23と噛合する。
【0018】
固定ダイプレート5は、図1図3に示すように、四隅にシリンダ37が形成された受力体30と、受力体30の一方の面側に着脱可能に取り付けられるとともに、固定金型3が取り付けられる金型支持体40と、を備える。受力体30と金型支持体40とは、図示を省略するボルトにより締結される。また、受力体30の中央には、図示を省略する射出ユニットの先端部を収容するための収容孔33が形成され、金型支持体40の中央には、射出ユニットから射出された溶融樹脂を固定金型3のキャビティ内に導くための貫通孔45が形成されている。なお、固定金型3の金型支持体40への取り付けは、ボルト締め等により行えばよい。
ここでは、固定ダイプレート5を例にして説明するが、可動ダイプレート11を固定ダイプレート5と同様の構成にすることができる。
【0019】
受力体30は、図2及び図3に示すように、二つのクロスリブモジュール31を十字状に組み付けて作製される。
それぞれのクロスリブモジュール31は、中央連結部32と、中央連結部32の外周面にそれぞれの一端部34Aが接続され径方向に延びる一対のリブ34,34と、それぞれのリブ34,34の他端部34Bに接続される型締め用のシリンダ37,37と、を備える。クロスリブモジュール31は、中央連結部32、一対のリブ34,34及び一対のシリンダ37,37が、一直線状に配置される。クロスリブモジュール31は、好ましくは鋳造により一体的に作製するが、個別に作製された各要素を例えば溶接により接合して作製してもよい。
【0020】
中央連結部32は、円筒状の形態を有しており、中空部分が射出ユニットの先端部を収容する収容孔33を構成する。なお、ここでは中央連結部32は円筒状を有しているが、リブ34,34を支持する機能及び射出ユニットの先端部を収容する機能を有している限りその形態は任意であり、例えば角筒状、錐筒状であっても構わない。
それぞれのリブ34は、偏平な板状の形態を有しているが、中央連結部32との接続に供される一端部34Aは、高さ(H)が中央連結部32に向けて減ずるテーパ状とされている。これにより、応力集中を緩和する。なお、テーパ状の部分は、R形状としても同様の効果を奏する。他端部34Bを含めて一端部34Aを除く部分は、他端部34Bも含めて高さ(H)が一定とされており、中央連結部32は高さ方向Hの一方に偏位して薄肉とされた窪み35をなしている。リブ34の厚さ(T)は一定とされている。
それぞれのシリンダ37は、円筒状の形態を有しており、中空部分が油圧シリンダ17の油室38を構成する。また、それぞれのシリンダ37には、タイバー15を貫通させるための貫通孔39(図1参照)が形成されている。
【0021】
以上の構成を有するクロスリブモジュール31,31は、中央連結部32,32を同軸上にし、かつ、それぞれのリブ34,34が交差するように組み付けられるので、受力体30はクロスリブモジュール31,31が十字状をなす。これにより、それぞれのリブ34,34の交差する角度を直交あるいは任意の角度に設定することができるので、例えば自動車のバンパーなどのように横長の成形金型を搭載するのに必要な横長の型締装置を、角度を小さくしてクロスリブモジュール31を交差させて組み付けるだけで容易に構成できる。この場合、図12(a)に示すような略正方形の型盤では四隅に設けられた油圧シリンダ17によって囲まれた領域に収まらないような水平方向に長い横長の金型(固定金型3)でも、図12(b)に示すように金型(固定金型3)の全域を油圧シリンダ17によって囲まれた領域内に納めることができる。そうすると、金型の全域に対して型締力が負荷されることでバリの発生を抑制できるし、新たな横長の金型取り付け盤を設計する必要がなくなる。また、この受力体30は、クロスリブモジュール31,31がリブ34,34の窪み35,35同士を互いに重ね合せて組み付けられるので、窪み35,35以外のリブ34,34を重ね合せるのに比べて、高さ(H)を抑えることができる。また、交差するリブ34,34が両方とも金型支持体40に当接して支持されることで、金型支持体40にバックアップさせることができる。加えて、クロスリブモジュール31の曲げ剛性を支配するリブ34の高さ(H)を、互いのクロスリブモジュール31において同一としたまま、つまり固定ダイプレート5のリブ構造に偏りを発生させることなく、リブ34をリブ34が延びる軸方向に連結している中央連結部32を重ね合わせることができる。これにより固定ダイプレート5の剛性を偏りなく高剛性化できる。このとき、金型支持体40とリブ34の間に間座を介して、型締装置1に締結力を生じさせると、クロスリブモジュール31の変形によって金型支持体40とリブ34の間において互いにズレが発生した際にズレによる歪みや過大な面圧を開放できるようすることが好ましい。
【0022】
次に、金型支持体40は、図1及び図2に示すように、概ね矩形の支持体本体41と、支持体本体41の四隅に設けられるシリンダ37を収容する切り欠き43と、支持体本体41の中心に形成され、溶融樹脂を固定金型3のキャビティ内に導く貫通孔45と、支持体本体41の隣接する切り欠き43,43の間の周縁に立設される四枚の支持体リブ47と、を備えている。金型支持体40は、例えば、単体で鋳造により作製してもよいし、図4に示すように、一方のクロスリブモジュール31と一体的に鋳造により作製してもよい。
支持体本体41は、図示を省略するおもて面と、四枚の支持体リブ47が立設するうら面44を備え、うら面44の側には四枚の支持体リブ47で取り囲まれる空間である受力体収容部48が設けられる。なお、支持体リブ47は、本実施形態において設けるのが好ましい要素に過ぎず、本発明において支持体リブ47を省略することもできる。逆に、図11に示すように、種々の形態で支持体リブ47を形成することもできる。
【0023】
受力体30と金型支持体40の組み付け方は任意であり、一対のクロスリブモジュール31,31及び金型支持体40を個別に作製して、図1に示す形態に組み付けることができるし、また、一対のクロスリブモジュール31,31を鋳造により一体的に作製し、個別に作製された金型支持体40と組み付けることができる。また、一方のクロスリブモジュール31と金型支持体40を鋳造により一体的に作製し、この一体成形品に個別に作製された他方のクロスリブモジュール31を組み付けてもよい。各要素の固定は、変形量の小さい中央連結部32においてボルトにより締結するのが好ましい。このとき、型締め力を負荷していない状態では、リブ34と金型支持体40の間に隙間を設けるように組み付け、型締め力を負荷した際のクロスリブモジュール31の曲げ変形により、当該隙間が消滅してリブ34,34が金型支持体40によりバックアップされるようにしてもよい。この場合、油圧シリンダ17により発生した型締力の主荷重が、金型支持体40の中央部に当接している中央連結部32を介して金型中央部、つまり樹脂が充填されて固定金型3から可動金型9を開こうとする樹脂圧力が負荷されるキャビティ部に伝達されるため、型締め力を効率よく固定金型3および可動金型9に伝達することができる。
【0024】
ここでは、可動ダイプレート11の詳細な説明は省略するが、固定ダイプレート5と同様に受力体と可動金型9が取り付けられる金型支持体とから構成できるし、他の構成にすることもできる。
【0025】
以上の構成を備える本実施形態の型締装置1は、以下のように動作する。
まず、移動シリンダ13を動作させることにより可動ダイプレート11を図1に示す型閉じの位置まで移動させて、各タイバー15を可動ダイプレート11のシリンダ37に形成された貫通孔39に通すとともに、可動金型9を固定金型3に当接させる。次いで、各タイバー15の雄ネジ21と半割りナット23とを噛合させて、可動ダイプレート11をタイバー15に固定する。そして、各油圧シリンダ17の油室38の作動油の圧力を高め、タイバー15を前方に向けて移動させる。これにより、可動ダイプレート11が固定ダイプレート5に向けて移動するので、固定金型3と可動金型9との間に型締力が生ずる。
【0026】
このとき、各タイバー15には引張荷重が加わり、固定ダイプレート5は相手側のダイプレートである可動ダイプレート11とともに締結力を受ける。ところが、固定ダイプレート5と可動ダイプレート11は、その間に固定金型3と可動金型9が存在しているために、固定ダイプレート5は、図1に破線で示すように、中央部分が前方に向けて突出するように撓む。
【0027】
次に、本実施形態の型締装置1による効果を説明する。
本実施形態による固定ダイプレート5は、別体で互いに組合せ可能な二つのクロスリブモジュール31互いに交差するように組み付けられるものであるから、射出成形機が据え付けられる場所まで、二つのクロスリブモジュールを分離した状態で個別に運搬することができる。分離された二つのクロスリブモジュールは、受力体30全体に比べると軽量であるから、運搬性、取扱性に優れる。特に、二つのクロスリブモジュール31は、両端の受力体30を結ぶ軸方向の寸法は大きいが、該軸方向に直交する方向の寸法は軸方向に比べて小さい。対象とするのが4000トンクラスの射出成形機だとしても、軸方向に直交する方向の寸法は4m以下にすることもできる。また二つのクロスリブモジュール31の長さは10m以下とすることができるから、大型トラックで無理なく運搬できる。
また、本実施形態における受力体30は、それぞれが軸方向の両端部に受力部であるシリンダ37を有する一対のクロスリブモジュール31が交差して組み付けられる。したがって、固定ダイプレート5を用いて型締装置1に締結力を生じさせると、対角線に沿って連なるクロスリブモジュール31のそれぞれが梁のように機能して曲げに対向するので、曲げモーメントに強く且つコンパクトなモジュール設計が可能になる。
【0028】
また、本実施形態の受力体30は、クロスリブモジュール31にシリンダ37を形成して受力体30に油圧シリンダの機能を持たせているので、シリンダを別途設ける必要がないので、型締装置1をコンパクトにできるとともに、その組み付けの手間を省くことができる。
【0029】
また、本実施形態の受力体30は、クロスリブモジュール31のそれぞれが、互いに重ね合わされる軸方向の中央部に中央連結部32を備える。この中央連結部32は、他の部分であるリブ34及びシリンダ37よりも薄肉の窪み35とされ、この窪み35を厚さ方向の一方に偏位させるとともに、窪み35同士を重ね合わせれば、受力体30の厚さ、ひいては固定ダイプレート5としての厚さを薄くできる。
【0030】
また、固定ダイプレート5は、二つのクロスリブモジュール31と金型支持体40の三つの要素を個別に作製しているので、それぞれの要素の重量を軽くできる。したがって、固定ダイプレート5を三つの要素に分離できる実施形態によれば、運搬性、取扱性が最も優れる。
【0031】
本実施形態による金型支持体40は、受力体30に取り付けられる一方の面側であるうら面44の側であって、一対のクロスリブモジュール31を避ける領域に、面外方向への曲げを規制する複数の支持体リブ47を備えるので、金型支持体40を合わせた固定ダイプレート5の全体としての剛性が向上し、曲げに対抗できる。しかも、支持体リブ47は、クロスリブモジュール31を避ける領域に設けられるので、支持体リブ47を設けるための格別な領域を用意する必要がない。
【0032】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0033】
例えば、図5に示すように、一方(図中の上側)のクロスリブモジュール31のリブ34,34の高さ(H)を全体的に小さくするとともに、薄くした分を金型支持体40に支持体リブ49,49として設けることができる。このクロスリブモジュール31は、高さ(H)を小さくされた薄くされたリブ34,34を支持体リブ49,49と重ね合せて接合される。特に、金型支持体40に高い剛性が必要な場合に有効であるとともに、中央連結部32とリブ34の連結部の応力集中の防止に有効である。
この場合、リブ34,34とシリンダ37,37の接続部分は、応力集中を緩和するために、図6に示すように、シリンダ37,37に向けて高さ(H)が高くなるテーパ形状とするか、または、R形状とすることができる。この場合、金型支持体40の支持体リブ49,49をリブ34,34のテーパ形状に倣う形状にする。
これらの場合においても、リブ34,34と支持体リブ49の対向面の間に隙間を設ける或いは間座を介して当接させてもよい。
【0034】
また、本発明は、図7に示すように、クロスリブモジュール31,31の一方の中央連結部32が他方の中央連結部32の内部に嵌装されるようにお互いの径を設定することができる。このように、中央連結部32,32をインロー構造にして嵌め合わせることで、クロスリブモジュール31,31の相対的な位置決めを容易にできる。なお、高さ方向の寸法を合わせるために、径が小さくされた中央連結部32の背を高くし、径が大きくされた中央連結部32の背を低くする。
このインロー構造を採用する場合にも、図8に示すように、リブ34,34の高さ(H)を小さくし、薄くした分を金型支持体40に支持体リブ49,49として設けるとともに一方のクロスリブモジュール31を金型支持体40と一体的に鋳造により作製してもよい。
さらに、このインロー構造を採用する場合にも、図9に示すように、シリンダ37,37に向けて高さ(H)が高くなるテーパ形状とするか、または、R形状とすることができる。この場合、金型支持体40の支持体リブ49,49をリブ34,34のテーパ形状に倣う形状にする。また、この場合においても、型締装置に締結力を生じさせた際の中央連結部32の変形によるズレを開放するために径を大きくされた中央連結部32の内径と径を小さくされた中央連結部32の外径の間に図示しないブッシュなどの嵌合部材を挿入してもよい。
【0035】
また、本発明は、図10に示すように、リブ34,34に直交するリブ39,36を中央連結部32から延ばして形成することにより、クロスリブモジュール31,31を十字状に構成することができる。そうすれば、クロスリブモジュール31,31のそれぞれが、交差する方向に対して曲げモーメントに強くなるとともに中央連結部32とリブ34の連結部の応力集中の防止に有効である。
【0036】
以上の実施形態では、二つのクロスリブモジュール31と金型支持体40の三つの要素を個別に作製して組み付けているが、二つのクロスリブモジュール31の一方と金型支持体40とを一体的に形成することができる。金型支持体40は、クロスリブモジュール31に比べて重量が軽いので、クロスリブモジュール31の一方と金型支持体40を一体的に形成しても重量の増加を抑えることができる。一方で、クロスリブモジュール31の一方と金型支持体40を一体的に成形すれば、それぞれを例えば鋳造により成形するのと比べて、成形の手間を省くことができる。しかも、クロスリブモジュール31の一方と金型支持体40とを組み付ける手間を省くことができる。
【0037】
また、本実施形態のクロスリブモジュール31は軸方向の両端にシリンダ37,37を備えるが、本発明はこれに限定されず、シリンダ37,37を設けることなく、単にタイバー15が貫通するボスを設け、このボスを本発明の受力部とすることもできる。この場合には、シリンダを別途設ける必要がある。
あるいは、固定ダイプレート5と可動ダイプレート11の間に締結力を付与する手段として、油圧シリンダ17の他に電動アクチュエータとしての電動モータを用いることができるので、この電動モータ駆動に関与する要素をクロスリブモジュール31の軸方向の両端に備えることもできる。例えば、電動モータの回転運動を直線運動に変換可能なアクチュエータがこれに該当する。具体的には、タイバー15にボールねじ軸を形成するとともに、クロスリブモジュール31の軸方向の両端に電動モータ駆動で回転可能なボールネジナットを備えることができる。または、ボールねじ駆動の公知のトグル式型締装置などをそれぞれ備えて、タイバー15を牽引することで締結力を付与することもできる。これにより高効率でエネルギーロスを抑えて型締力を金型に負荷することができる。
なお、回転運動を直線運動に変換可能な機構、トグル機構などの機械的な要素だけを、クロスリブモジュール31の軸方向の両端に設けることができるし、さらに電動モータも合わせて設けることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 型締装置
2 ベースフレーム
3 固定金型
5 固定ダイプレート
7 レール
9 可動金型
11 可動ダイプレート
13 移動シリンダ
15 タイバー
17 油圧シリンダ
19 ラム
21 雄ネジ
23 ナット
30 受力体
31 クロスリブモジュール
32 中央連結部
33 収容孔
34 リブ
34A 一端部
34B 他端部
35 窪み
36 リブ
37 シリンダ
38 油室
39 貫通孔
40 金型支持体
41 支持体本体
43 切り欠き
44 うら面
45 貫通孔
47 支持体リブ
48 受力体収容部
49 支持体リブ
101 受力盤
102 上盤
103 下盤
105 金型支持体
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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