特許第6377613号(P6377613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377613可撓性のある拡張可能な電極及びパルスパワーを管腔内送達する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377613
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】可撓性のある拡張可能な電極及びパルスパワーを管腔内送達する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】4
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2015-525475(P2015-525475)
(86)(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公表番号】特表2015-524310(P2015-524310A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】US2013052250
(87)【国際公開番号】WO2014022221
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】13/565,307
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バコス・グレゴリー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】プレッシャ・デビッド・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロング・ゲーリー・エル
(72)【発明者】
【氏名】シャイアーズ・ピーター・ケイ
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07770584(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0101413(US,A1)
【文献】 特表2009−500052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0222563(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0160906(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0197246(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0143293(US,A1)
【文献】 特表2010−509032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長部材と、
前記細長部材に沿って配置され、且つ軸線に沿って伸びる第1電極であって、エネルギー源に結合するように構成されている近位端部と、組織処理領域に結合し、且つアブレーションのためのエネルギーをかけるように構成されている面とを有する、第1電極と、
近位端部及び遠位端部を有し、且つ前記軸線に沿って伸びる第1拡張可能部であって、前記第1電極の第1外周を画定し、且つそれと関連付けられた前記軸線に対する第1直径を有する、第1拡張可能部と、を備え、前記第1拡張可能部は、少なくとも1つの第1枠組み部材を含む第1枠組みを含み、
前記第1枠組みは、前記第1拡張可能部を収縮した状態から拡張した状態に移行させるように選択的に拡張可能であり、且つ前記第1枠組みは、前記第1拡張可能部を前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行させるように選択的に収縮可能であり、前記第1枠組みが拡張した際には前記第1直径が拡張し、前記第1拡張可能部が前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行し、前記第1枠組みが収縮した際には前記第1直径が収縮し、前記第1拡張可能部が前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行し、
前記第1枠組みは、前記第1枠組み内の前記少なくとも1つの第1枠組み部材を結合するよう構成されている近位カプラー及び遠位カプラーをさらに含み、前記近位カプラー及び遠位カプラーは、ある距離だけ離れており、前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行させることは、前記近位カプラーと前記遠位カプラーとの間の前記距離を減らすことを含み、
前記第1枠組みは、更に、コイル状である前記少なくとも1つの第1枠組み部材の周りに設けられた導電性スリーブを含み、前記少なくとも1つの第1枠組み部材は、前記導電性スリーブの内側に配置されるようになっており、
前記近位カプラーおよび前記遠位カプラーの内の少なくとも一方に設けられたカプラーねじ山が、前記細長部材に設けられたねじ山上を回転することにより、前記カプラーねじ山が設けられた前記近位カプラーおよび前記遠位カプラーの内の前記少なくとも一方が、前記軸線に沿って移動して、前記近位カプラーと前記遠位カプラーとの間の前記距離が減らされ、前記第1拡張可能部が前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行するようになっている、電気的アブレーションデバイス。
【請求項2】
前記第1電極は第1可撓部を含み、前記第1拡張可能部の少なくとも一部分は前記第1可撓部の少なくとも一部分を含む、請求項1に記載の電気的アブレーションデバイス。
【請求項3】
前記第1枠組みは、生物学的管腔に対して前記生物学的管腔の周囲付近の2つ又は3つ以上の位置で、周方向に接触するように前記第1直径を拡張させるように拡張することが可能な、請求項1に記載の電気的アブレーションデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1枠組み部材は、それに関連付けられた記憶形状及びそれに関連付けられた維持された形状とを有し、前記少なくとも1つの第1枠組み部材は、前記第1枠組みを拡張し且つ収縮させるために、前記記憶形状と前記維持された形状との間を移行することが可能な、請求項1に記載の電気的アブレーションデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電気的アブレーション療法は、例えば、疾病組織、癌、悪性及び良性腫瘍、腫瘤、病変、並びに他の異常な組織増殖等の望ましくない組織を処置する治療に用いられている。従来のアブレーション療法用の装置、システム及び方法は、例えば、焦点式超音波アブレーション、高周波(RF)アブレーション、及び組織内レーザー凝固術を含む、高温熱療法のような電気的アブレーション療法;化学薬品が望ましくない組織に対して注入されてアブレーションを引き起こす化学療法;外科切除;凍結療法;放射線療法;光力学療法;モース顕微鏡手術;5−フルオロウラシルによる局所療法;及びレーザーアブレーションを含む場合がある。
【0002】
従来の電気的アブレーション療法の問題点には、電気的アブレーションデバイスによって生み出される熱エネルギーにさらされること及び/又はそうしたエネルギーが制御されないことによって、望ましくない組織の周りの健康な組織に永久的な損傷を与えるリスクが含まれる。それゆえ、望ましくない組織が重要な構造部に、又はその付近に発生又は由来し、且つ外科的に切除することが、当該重要な構造部への損傷に関連した死亡のリスクを高める場合には、従来の電気的アブレーション療法は、不満足な代替的選択肢となる場合がある。目標とするゾーン内の細胞をアブレートするためにエネルギーを制御しつつかける能力はしばしば、当該目標とするゾーンの1つ又は2つ以上の特質及び/又はアブレーション用電極により提供される、エネルギーをかけるべきポジションで利用可能なものによって、影響される場合がある。上記問題への解決法は、しばしば侵襲的であり、最適な外科的結果とは相容れない場合がある。したがって望まれるのは、アブレーション用電極で目標とする部位に正確に狙いをつけることを可能にし、目標とするゾーン周囲の組織の必要なインフラストラクチャを維持しながら、当該目標とするゾーン内の細胞をアブレートするためにエネルギーを制御しつつ送達することが可能な、最小限に侵襲的な電気的アブレーション療法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの一般的態様において、さまざまな実施形態が、電気的アブレーションデバイスに向けられる。電気的アブレーションデバイスの1つの実施形態は、細長部材を含み、当該細長部材は、当該細長部材に沿って配置され、軸線に沿って伸びる第1電極を有する。前記第1電極は、エネルギー源に結合するように構成されている近位端部と、組織処理領域に結合し、且つアブレーションのためのエネルギーを送達するように構成されている面と、を有する。第1拡張可能部は前記軸線に沿って伸び、前記第1電極の第1外周を画定し、且つそれと関連付けられた前記軸線に対する第1直径を有する。前記第1拡張可能部は、少なくとも1つの第1枠組み部材を含む第1枠組みを含む。前記第1枠組みは、前記第1拡張可能部を収縮した状態から拡張した状態に移行させるように選択的に拡張可能である。前記第1枠組みは、前記第1拡張可能部を前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行させるように選択的に収縮可能である。前記第1枠組みが拡張した際には前記第1直径が拡張し、前記第1拡張可能部が前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行する。前記第1枠組みが収縮した際には前記第1直径が収縮し、前記第1拡張可能部が前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行する。
【0004】
他の一般的態様においては、本明細書に記載される電気的アブレーションデバイスを用いて組織処理する方法が、前記第1電極を、生物学的管腔を含む組織処理領域に送達することと、前記第1電極を拡張することと、を含む。前記第1電極は、処理される組織の近位の前記管腔の壁に接触させられる。1つ又は2つ以上の電気的パルスのシーケンスを第1電極にかけて、不可逆的な電気穿孔により組織内の細胞死を誘発することで、組織処理される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
電気的アブレーションデバイス、システム、及びその方法のさまざまな実施形態は、後続の説明と、添付の図面とを合わせて考えることでより良く理解されるであろう。
図1】本明細書に説明されるある実施形態に係る、電気的アブレーションシステムを図示している。
図2】本明細書に説明されるある実施形態に係る、電極の拡張可能部が展開され、拡張した状態にある、図1に図示されるハンドル及び細長部材の1つの実施形態を図示している。
図3】本明細書に説明されるある実施形態に係る、細長部材の遠位部に沿って配置される電極であって、拡張可能部が展開され、拡張した状態にある電極を図示している。
図4】本明細書に説明されるある実施形態に係る、細長部材の遠位部に沿って配置される2つの電極であって、それぞれの拡張可能部が展開され、拡張した状態にある2つの電極を図示している。
図5】本明細書に説明されるある実施形態に係る、細長部材の遠位部に沿って配置される3つの電極であって、それぞれの拡張可能部が展開され、拡張した状態にある3つの電極を図示している。
図6】本明細書に説明されるある実施形態に係る、細長部材の遠位部に沿って配置される電極の可撓部を図示している。
図7】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態の電極の、展開された拡張可能部を図示している。
図8】本明細書に説明されるある実施形態に係る、シース内に画定されたチャネル内に受容された、収縮した状態にある拡張可能部の切り欠き図を示している。
図9】本明細書に説明されるある実施形態に係る、シースの遠位端部から展開され、拡張した状態にある図8に図示された拡張可能部を図示している。
図10】本明細書に説明されるある実施形態に係る、展開され、拡張した状態の拡張可能部を図示している。
図11】本明細書に説明されるある実施形態に係る、展開され、収縮した状態から拡張した状態に移行している拡張可能部を図示している。
図12】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態の拡張可能部を図示している。
図13】本明細書に説明されるある実施形態に係る、収縮した状態から拡張した状態に移行している拡張可能部を図示している。
図14】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態にある図13に図示された拡張可能部を図示している。
図15】本明細書に説明されるある実施形態に係る、収縮した状態から拡張した状態に移行している拡張可能部を図示している。
図16】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態にある図15に図示された拡張可能部を図示している。
図17】本明細書に説明されるある実施形態に係る、収縮した状態から拡張した状態に移行している拡張可能部を図示している。
図18】本明細書に説明されるある実施形態に係る、展開され、収縮した状態の拡張可能部を図示している。
図19】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態にある図18に図示された拡張可能部を図示している。
図20】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態にある図18に図示された拡張可能部の追加的1つの実施形態を図示している。
図21】本明細書に説明されるある実施形態に係る、部分的に展開され、収縮した状態の拡張可能部を図示している。
図22】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態にある図21に図示された拡張可能部を図示している。
図23】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態にある図21及び22に図示された拡張可能部の追加的1つの実施形態を図示している。
図24】本明細書に説明されるある実施形態に係る、拡張した状態の拡張可能部を図示している。
図25】本明細書に説明されるある実施形態に係る、収縮した状態にある図24に図示された拡張可能部を図示している。
図26】本明細書に説明されるある実施形態に係る、ハンドルと細長部材とを含む、電気的アブレーションデバイスを図示している。
図27】本明細書に説明されるある実施形態に係る、ハンドルと細長部材とを含む、電気的アブレーションデバイスを図示している。
図28A】本明細書に説明されるある実施形態に係る、電気的アブレーションを施された後の豚の肝臓組織の写真を含む。
図28B】本明細書に説明されるある実施形態に係る、電気的アブレーションを施された後の豚の肝臓組織の写真を含む。
図29】本明細書に説明されるある実施形態に係る、電気的アブレーションを施された後の豚の心臓組織の写真を含む。
図30】本明細書に説明されるある実施形態に係る、電気的アブレーションシステムの使用法をグラフィカルに図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は広義には、電気外科手術の分野に関する。特に本開示は、排他的にではないが、電気外科手術用デバイスに関する。とりわけ本開示は、排他的にではないが、電気的アブレーションシステム、デバイス、及び方法に関する。
【0007】
本開示は、電気的アブレーションシステム、デバイス、及びそれらの方法のさまざまな実施形態の、さまざまな構成要素、特徴、態様、及び利点を、説明する。なお、さまざまな実施形態のある説明は、開示される実施形態のより明確な理解に関わるような構成要素、特徴、及び態様のみを示すように単純化され、その一方で、他の構成要素、特徴、及び態様は、説明を短く明確にするために省略されているということは理解されるべきである。「さまざまな実施形態」、「ある複数の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの実施形態」、又は「実施形態」に言及する場合、それらの任意のものは、当該実施形態に記載された特定の構成要素、特徴及び/又は態様が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを一般に意味している。「さまざまな実施形態において」、「ある複数の実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「1つの実施形態において」、又は「実施形態において」という句は、同じ実施形態を指していない場合がある。更に、「1つのそのような実施形態においては」又は「そのようなある複数の実施形態においては」という句は、一般に、先行する実施形態を指し、その上にさらに詳しく述べるものであるが、そのような句によって導入される実施形態の構成要素、特徴、及び態様が、その直前の先行する実施形態に限定されることを示唆するようには意図されていない。むしろ、そのような句は、読者が本明細書に開示されるさまざまな構成要素、特徴、及び態様を理解することを助けるために提供されている。なお、当業者ならば、そのように導入される実施形態において提示される構成要素、特徴、及び態様は開示される複数の実施形態において提示される構成要素、特徴、及び態様の他のさまざまなコンビネーション及びサブコンビネーションと組み合わせて適用され得るということを認知できるということは理解されるべきである。当業者ならば、本明細書の説明を考慮して、さまざまな実施形態のさまざまなコンビネーション又はサブコンビネーション、他の構成要素、特徴、及び態様が、特定の実現方法及び用途においては望ましい場合もあるということを、認知するであろうということは理解されるべきである。しかしながら、そのような他の構成要素、特徴、及び態様は、当業者が本明細書の説明を考慮すれば、すぐに突き止められ得るだけでなく、開示される実施形態を完全に理解するためには必要ではないので、そのような構成要素、特徴、及び態様の説明は省略される場合がある。それゆえ、本明細書に記載される説明は、開示される実施形態を単に例示するものに過ぎず、特許請求の範囲においてのみ定義される発明の範囲を限定することを意図してはいないということは理解されるべきである。
【0008】
本明細書に記載されるすべての数量は、他に特にことわらない限りおおよそのものであり、明示的に書かれていなくても、「約」ということが暗に示されている場合があることを意味する。本明細書に開示される数量は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、他に特にことわらない限り、それぞれの数値は、記載された値及び、その値の周辺の、機能的に同等の範囲の両方を意味するのを意図されているものとする。最低限でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。本明細書に記載される数値が概数化されているとはいうものの、実際に計測された値の具体的例において記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。
【0009】
本明細書に記載されるすべての数量的範囲は、そこに含まれるすべての、それより小さい範囲を含む。例えば、「1〜10」という範囲は、挙げられた最小値1と挙げられた最大値10との間にあって、それらを含むより小さい範囲のすべてを含むように意図されている。本明細書に挙げられる、いかなる数量的上限も、それより小さい数量的上限をすべて含むように意図されている。本明細書に挙げられる、いかなる数量的下限も、それより大きい数量的上限をすべて含むように意図されている。また、いくつかの例示的実施形態において、パラメータ、測定値、転換、又は範囲が与えられる場合がある。なお、そのようなパラメータ、測定値、転換、又は範囲は、ある実施形態の1つの例示的なものとしていずれも提供されており、当該実施形態又は他の実施形態を限定することを意図されていないということは理解されるべきであろう。
【0010】
本明細書において一般に使われる場合、「近位の」及び「遠位の」という用語は、患者を治療するために用いられる器具の一方の端部を操作している臨床医を、一般に基準にしている。「近位の」という用語は、臨床医に近い位置にある、器具の部分を一般に指す。「遠位の」という用語は、臨床医から遠い位置にある、器具の部分を一般に指す。簡潔にするため、また明確にするために、「垂直」、「水平」、「上」、「下」等、空間に関する用語は、本明細書において、図示した実施形態を基準にして使用されている場合があることが更に理解できる。しかしながら、外科用器具は、多くの向き及び位置で使用され得、これらの用語は、限定的及び絶対的であることを意図したものではない。
【0011】
本明細書において一般に用いられる場合、「アブレーション」という用語は、電場内にエネルギーを供給し、直接又は間接的に細胞を取り除くことを一般に指し、細胞機能の喪失、細胞溶解、壊死、アポプトーシス、及び/又は不可逆的な電気穿孔により取り除くことを含む場合がある。「アブレーション」は、アブレーションにより処理された部位の創出を同様に指す場合がある。また、「望ましくない組織」、「標的細胞」、「病患組織」、「病患細胞」、「腫瘍」、「細胞集団」等の用語が、本明細書を通して、全体的又は部分的にアブレーションにより取り除かれた又は取り除かれる予定の細胞を指して、一般に用いられるが、それは、本明細書に説明されるシステム、デバイス、又は方法の用途を限定することを意図していない。例えば、そのような用語は、病患細胞及びあるその周辺の細胞の両方のアブレーションを含むが、そのような周辺の細胞が病感細胞であるということを明確に示すものはない。そのような用語は同様に、例えば、アブレーション又は他の方法により追加的に細胞を外科医が再切除するためのマージンを作り出すために、血管、導管腺、又は気管・消化管エリアのような生物学的管腔の周りに位置する細胞のアブレーションを含む。
【0012】
ある複数の実施形態によれば、アブレーションシステムは、第1電極及び第2電極を一般に含み、当該第1電極及び第2電極はエネルギー源と結合され、当該エネルギー源は、当該電極が組織に接触させられ通電された際には、第1電極と第2電極との間に電場を生成するように動作する。電場に供給される電流は、第1電極と第2電極との間を、組織を通って導電される。特定の理論にこだわらずに言えば、少なくとも部分的に電子及び/又は電場キャリアを介して、導電性のある組織を通じて電流は伝わると考えられている。電気的アブレーションデバイスは1つ又は2つ以上の電極を一般に含み得るが、当該電極は、組織処理領域(例えば、標的領域)内の望ましくない組織(例えば、標的細胞、目標とする部位、処理される部位、病患組織、病患細胞、腫瘍、細胞集団)に、又はその近くに配置されるように構成されている。一般に電極は、導電可能部(例えば、医療グレードステンレス鋼、金メッキされた部位等)を含み得るが、エネルギー源と電気的に結合するように構成され得る。電極が、望ましくない組織に、又はその近くに配置されると、電極に作動電位が印可されると、電場が形成され、望ましくない組織が当該電場に曝露される。作動電位(及び得られる電場)は周波数、振幅、パルス幅(パルス持続時間又はパルス長)、及び/又は極性等のさまざまなパラメータにより特徴付けることができる。例えば、提供される診断的又は治療的処置のような望まれる用途に応じて、特定の1つの電極がアノード(+)又はカソード(−)のいずれかとして構成されてもよく、又は少なくとも1つがアノードとして構成され、他の少なくとも1つがカソードとして構成された複数の電極を含まれてもよい。当初の極性配置に関わらず、電極の極性は、エネルギー源の出力の極性を逆転させることにより、逆転させることができる。いくつかの実施形態において、アブレーション実施に先立って導電性を上げるために、外因性電解質が組織に適用されてもよい。ある複数の実施形態において、外因性電解質の適用は、電場の強度又は有効面積を大きくする場合も小さくする場合もある。
【0013】
ある複数の実施形態において、好適なエネルギー源は電気波形生成器を含む場合がある。エネルギー源は、周波数、振幅、パルス幅及び極性に関して好適な特徴を持つ波形出力を有する電場を生成する。電極は、直流電圧により通電され、さまざまな周波数、振幅、パルス幅、及び極性を持つ電流を導電させ得る。電極は、望ましい療法を提供するために好適な、時間により変化する電圧、及び時間により振幅及び周波数が変化する電流によって通電されてもよい。好適なエネルギー源は、周波数、振幅、パルス幅、及び/又は極性により特徴づけられた直流及び/又は時間により変化する作動電位を、電極に送達することができるようになっている電気波形生成器を含み得る。電流は、電極に印加した電位(例えば電圧)に比例して、電極間及び組織を通って流れる。さまざまな実施形態において、供給される電流はエネルギー源によって提供され、組織に適用されるパルスのシーケンスを含む。例えばエネルギー源は、望ましい用途に合わせて作られる1つ又は2つ以上のパルスのシーケンスの形で、さまざまな波形を供給し得る。共同で所有されている、2011年2月28日出願「電気的アブレーションデバイス及び方法」と題された米国特許出願第13/036,908号、及び2012年1月18日出願「電気的アブレーションデバイス及び方法」と題された米国特許出願第13/352,495号は、電気的アブレーション療法のための多くのそのような波形、パルスのシーケンス、及びそれらを適用する方法を開示しており、それらの内容は本明細書に、言及することによって取り込まれる。
【0014】
1つの実施形態において、エネルギー源は、組織処理領域における細胞を加熱すること及び/又は電気的アブレーションすることに好適な、あらかじめ定められた周波数、振幅、パルス幅、及び/又は極性のRF波形を生み出すように構成されていてよい。好適なRFエネルギー源の一例は、Erbe,GmbHから入手可能なModel Number ICC 350等の、市販されている従来の双極/単極電気手術RF発生器であり得る。1つの実施形態において、エネルギー源は、組織処理領域における細胞を加熱すること及び/又は電気的アブレーションすることに好適な、あらかじめ定められた周波数、振幅、パルス幅、及び/又は極性のマイクロ波波形を生み出すようにマイクロ波エネルギー源を含み得る。Boston Scientific社から入手可能なMicroThermx等のマイクロ波電源は、周波数915MHz〜2.45GHzのマイクロ波エネルギーを提供するマイクロ波アンテナに結合されていてよい。
【0015】
1つの実施形態において、エネルギー源は、加熱及び/又は不可逆的な電気穿孔を誘導するのに好適な不安定化電位(例えば、電場)を生み出すように構成されていてよい。不安定化電位は、加熱及び/又は不可逆的な電気穿孔を誘導するのに好適な双極的/単極的単相性電気パルスの形であってよい。加熱及び/又は不可逆的な電気穿孔電場パルスを双極又は単極モードで生成するのに好適な市販のエネルギー源は、BTX Molecular Delivery Systems Boston,MAから入手可能な、Model Number ECM 830等のパルスDC発生器である。双極モードでは、第1の電極はエネルギー源の第1の極性に電気的に結合でき、第2の電極は第2の(例えば、反対の)極性に電気的に結合できる。双極的/単極的単相性電気パルスは、さまざまな周波数、振幅、パルス幅、及び/又は極性で生成されてよい。組織内に熱を供給して組織を熱的に破壊する高い電力及びエネルギーレベルを必要とするRFアブレーションシステムとは異なり、不可逆的な電気穿孔では、望ましくない組織の細胞を加熱し殺滅するためには熱よりもむしろ電場電位を用いるため、当該組織に印加するエネルギーの大きさは非常に小さいものしか必要とせずにすむ。したがって、不可逆的な電気穿孔システムは、RFアブレーションシステムによる有害な熱の影響を回避することができる。
【0016】
本明細書に説明される電気的アブレーションシステム、デバイス、及び方法のさまざまな実施形態は、電気穿孔又は電気的透過技術を、細胞の原形質膜の透過性を有意に増大するために、外部の電場(電位)を細胞膜に印加するのに用いる。不可逆的な電気穿孔(IRE)は、当該細胞膜にわたって長時間電位を上げることによって細胞を殺滅するプロセスである。IREは、熱誘導療法の引き起こすさまざまなネガティブな合併症を回避しつつ細胞を破壊するための効果的な方法を提供する。すなわち、IREは周囲の組織の温度を、サポート構造又は当該領域の血管系に恒久的損傷を起こすようなレベルにまで上げることなく、細胞を殺滅する。大きな不安定化IRE電位は、局所的電場を上げる対照の組織において印加される、約数百〜約数千ボルトの範囲である。電場の上昇により、膜の電位が例えば、比較的長い時間、約数ミリメートルの距離にわたり上昇する。不安定化電位は、細胞膜にわたる電位が、アポプトーシス及び/又は壊死として知られるプロセスによって細胞を死滅させるような臨界レベルに達する場合、当該細胞膜に孔を形成する。
【0017】
IREパルスを細胞に印加することは、周辺の健康な組織に対する有害な熱の影響をゼロ又は最小に抑えながら、望ましくない組織を大量にアブレーションするための効果的な方法であり得る。それゆえいくつかの実施形態において、1つ又は2つ以上の最小限に侵襲的な外科手術又は療法を実行するために、本明細書に開示されるさまざまな電極及び/又は他の電気的アブレーションデバイスとともに、IREが用いられることがある。特定の理論にこだわらずに言えば、IREは、熱を全く使わず又は最小限使うのみで、細胞を破壊し、それゆえに細胞のサポート構造又は当該領域の血管系を破壊しないと思われる。周囲の健康な組織に顕著な量の熱損傷を誘発することなく細胞死をもたらすのに好適ざした不可逆的電気穿孔パルスは、数百〜数千ボルトの範囲内の振幅を有してもよく、一般的には生体膜を横切って例えば約数ミリメートルの距離にわたって、1マイクロ秒〜100ミリ秒の比較的長い持続時間、印加されてよい。かくして、不安定化電場を供給して細胞壊死を急速に引き起こすことにより、望ましくない組織を、生体内でアブレーションすることができる。
【0018】
ある複数の実施形態において、エネルギー源は無線送信機を含んで、無線エネルギー輸送技術を用いて、遠隔に配置された1つ又は2つ以上のアンテナを介してエネルギーを電極に供給してもよい。当業者は、無線エネルギー輸送又は無線電力伝送が、ワイヤを相互接続することなく電気エネルギーをエネルギー源から電気負荷物(電気的load)に伝送するプロセスを指すことを理解できるであろう。一実施形態において、エネルギー源は、有線又は無線接続のいずれかにより、第1電極及び第2電極に結合できる。有線接続では、エネルギー源は、導電体を用いて電極に結合され得る。無線接続では、導電体はエネルギー源に結合された第1のアンテナと、電極に結合され、且つ第1のアンテナから遠隔に位置し得る第2のアンテナとで代替されることができる。一実施形態において、エネルギー源は無線送信機を含んで、無線エネルギー輸送技術を用いて、遠隔に配置された1つ又は2つ以上のアンテナを介してエネルギーを電極に供給してもよい。前述したように、無線エネルギー輸送又は無線電力伝送は、相互接続導電体を使用することなくエネルギー源から電気エネルギーを電気負荷物、例えば組織処置領域内の異常細胞に送信する方法である。電気変圧器は、無線エネルギー輸送の最も簡易な例である。変圧器の一次及び二次回路は直接接続されていなくてよく、エネルギーの輸送は相互誘導として公知のプロセスを介して電磁結合により行われ得る。電力は、RFエネルギーを使用して無線で輸送することもできる。
【0019】
理解できるように、電気的アブレーションデバイス、システム、及び方法は、経皮的に(例えば、体内の器官又はその他の組織へのアクセスは、皮膚に針で穴を開けることによって実現される)組織処理領域に挿入され得る部分を含んでいてよい。電気的アブレーション装置の他の部分は、小切開部を通してトロカール若しくは内視鏡のチャネルを通して内視鏡的に(例えば、腹腔鏡下及び/又は胸腔鏡下で)、又は皮膚貫通的に(例えば、電気パルスが皮膚を貫通して組織処置領域に供給される)、組織処置領域内に導入できる。
【0020】
電気的アブレーション療法のためのシステム、デバイス、及び方法は、最小侵襲性外科手技に使用されて様々な解剖学上の位置、例えば脳、肺、乳房、肝臓、胆嚢、膵臓、前立腺、並びに食道、胃、腸、結腸、動脈、静脈、肛門、膣、子宮頚部、輸卵管及び腹膜腔で画成される様々な体内又は生物学的管腔(例えば自然の人体の開口部)内の組織処置領域にアクセスするように適応させることができる。最小侵襲性電気的アブレーションデバイスは、トロカールを用いて患者の体に開けられた小さな開口部を通じて、又は、口、肛門、膣などの自然の人体の開口部を通じて、自然開口部越経管腔的内視鏡手術(NOTES)(商標)として知られる経管的アクセス技術を用いて、組織処理領域に導入され得る。後者では、電気的アブレーションデバイスが最初に自然の人体の開口部を通じて導入され、次に体内の管腔の壁に穴を開けることにより、組織処理される部位へと進むことができる。様々な実施形態において、電気的アブレーションシステムは、経皮的に、皮膚貫通的に、経管腔的に、最小侵襲的に、及び/若しくは開放外科技術を介して、又はそれらの任意の組み合わせにより配置された1つ又は2つ以上の電極を使用して、脳、肺、乳房、肝、胆嚢、膵臓又は前立腺内の望ましくない組織を処置するように適合させることができる。
【0021】
ある複数の実施形態において、システム、デバイス、及び方法は、細胞集団、腫瘤、腫瘍、又はその他の望ましくない組織を最小侵襲性アブレーション処理するために構成され得る。望ましくない組織の最小侵襲性アブレーション処理は、その外傷を減らす能力によって特徴づけられ得る。そのために、1つ又は2つ以上の生物学的管腔(例えば、人体の自然の開口部、血管系、導管系、又は器官管エリア)を通じて、望ましくない組織に正確に達し、望ましくない組織をアブレートするために電場を、制御され且つ集中された方法で印加する一方で、同時に、周辺の健康な組織の細胞的インフラストラクチャを維持するようになっている。さまざまな実施形態によれば、電極を制御された方法で生物学的管腔に送達し、管腔壁に接触させることは、電気的アブレーションをより正確なものとするため、望まれない形でアブレーション処理されてしまう部位を減らし、周辺に望ましいアブレーションゾーンが残る蓋然性を高め、及び/又は周囲の組織に必要なインフラストラクチャを維持することを可能にする。例えば、さまざまな電極及び/又はリターンによって確立された特定の電場の領域にわたる均一さ、及び/又は強度は、より正確に集中され又は、制御されうる。ある複数の実施形態において、管腔の壁に制御された方法で接触することは、処理される部位又はその近くの壁の周囲付近の管腔の壁に2つ又は3つ以上の位置で例えば、壁の周囲付近の例えば15°、30°、90°、又は180°離れた2カ所で、又は2カ所に沿って、周方向に接触することを含む。そのような接触は、2カ所を繋ぐ接触のような連続的な接触であってもよい。又は、第1の点と第2の点での接触であって、少なくとも、当該第1の点と第2の点との間の管腔壁の介在する部分に沿って接触しない、不連続な接触であってもよい。
【0022】
組織処理領域が、例えば、血管系、導管系、空洞、開口部、又は器官管エリアのような生物学的管腔に又はその近くに位置する場合、電極を含む最小侵襲性電気的アブレーションデバイスが組織処理領域に、本明細書で述べるように、人工的な管腔(例えば、内視鏡用チャネル、シース、スリーブ、トロカール)及び/又は1つ又は2つ以上の生物学的管腔を通じて送達され得る。さまざまな実施形態において、電気的アブレーションデバイス(例えば、電極、又は細長部材を含むプローブに沿って配置された電極)は、例えば内視鏡、トロカール、シース、スリーブ、又はチャネル内で生物学的管腔を通ってフィードされ得る。電気的アブレーションデバイスは、「むき出しのまま」、すなわち上記の器具の助けを借りずに、生物学的管腔を通ってフィードされるようにも構成され得る。例えば、電極は、1つ又は2つ以上の生物学的管腔を通じて柔軟に、処理領域にフィード又は処理領域に向けて導かれるように構成されていてよい。いくつかの実施形態において、複数の電極がプローブを含む細長部材の遠位部に沿って設けられてもよい。細長部材はそれによって、1つ又は2つ以上の電極を組織領域に送達するように構成され得る。細長部材における電極の近くの部位は、細長部材のある長さに沿ったそのような部位のうちの1つ又は2つ以上を動かすように指示をする臨床医から送られる信号に反応し得るようになっている。例えば、細長部材は、組織領域に送達される最中に、その長さに沿った1つ又は2つ以上の位置において曲がるように指示する信号に、反応することができる。ひとたび電気的アブレーションデバイスが(例えば、電極)が、処理領域内の望ましくない組織に又はその付近に送達又は配置された場合には、電極が管腔の組織に接触し、アブレーション処理を施すように、展開されてもよいる。上記のように曲がることができるので、電気的アブレーションデバイスを、送達、展開、又は、アブレーション処理の最中若しくはその後で、生物学的管腔を通して又はその内部に導き、及び/又は配置する助けとなり得る。
【0023】
特定の実施形態においては、電極は、例えば、展開される際に、又はひとたび組織領域内の望ましくない組織に、又はその近くに配置された場合には、周方向に拡張するように構成されていてよい。拡張は、展開の結果であってよい。あるいは、拡張、又は、いくつかの例では収縮、を引き起こす、電気的、機械的、化学的、又は熱的信号の結果であってよい。いくつかの実施形態において、電極は、少なくとも1つの次元の寸法で拡張するように構成されていてよい。例えば、電極は、直径が拡張するように構成されていてよい。電極は、電極の長さを伸ばすように、その長さが拡張するように、更に構成されていてよい。いくつかの実施形態において、長さの拡張は、直径の拡張とは独立であり得る。例えば、電極は、直径を拡張させずに長さを拡張させてもよいし、長さを拡張させずに直径を拡張させてもよい。しかし、他の実施形態においては、直径又は長さの拡張は、直径又は長さの増加又減少と同時に起こり得る。ある複数の実施形態において、電極は、直径又は長さのみが拡張するように構成されていてよい。さまざまな実施形態において、1つ又は2つ以上の次元の寸法で拡張可能な電極は、同様に、1つ又は2つ以上の次元の寸法で収縮するように構成されてもよい。そのような電極は、拡張した状態と収縮した状態との間を移行することが可能であると言えるかもしれない。いくつかの実施形態において、1つ又は2つ以上の拡張した状態と1つ又は2つ以上の収縮した状態との間を移行することは、臨床医によって提供される信号に反応して実行され得る。すなわち、いくつかの実施形態において、臨床医は電極を、所望の拡張した状態及び/又は収縮した状態に選択的に移行させることができ、手法及び/又は生物学的構造といった所望の用途に、電極をうまくフィットさせることができる。ある例においては、拡張した状態を選択すると、管腔の周囲付近への接触が増えて、例えば、より正確に電場を画定することができ、電場の電位をよりよく制御できるようになる。さまざまな実施形態において、電極は、マイクロ波アンテナのようなアンテナを含み得る。それにより、電極が拡張した状態では、収縮した状態と比べて、アンテナに隣接して、又はその近くに位置する望ましくない組織は、アブレーションのためのエネルギーにより完全に曝露され得る。例えば、望ましくない組織がアブレーションのためのエネルギーに完全に曝露されるように、アンテナを含む電極の直径、長さ、及び/又は表面積は、拡張した状態では増大し得る。
【0024】
1つの実施形態に係る、電気的アブレーションデバイス12を取り込んだ電気的アブレーションシステム10が図1に図示される。当該システム10は、コネクタ19を有する細長部材18と、ハンドル14と、第1電極21(不図示)と、及び遠位先端部28と、を含む。コネクタ19は、細長部材18に沿って配置され、エネルギー源11に結合するよう構成される。ハンドル14は、臨床医に、例えば、細長部材18を操作する及び/又は操縦するための操作点を提供するように構成される。細長部材18は、リード線17からなる導電性構造を含む。リード線を通してエネルギーが、コネクタ19と第1電極21との間を運ばれ得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、細長部材18又は電極21は、エネルギー源11に無線で結合され得る、又はエネルギー源11に、当該分野で周知のさまざまな方法で結合され得るということは理解されるべきである。ハンドル14は、ハンドル14の遠位端部から、保護スリーブ38を通って伸びるシース40を含む。図示された実施形態において、ハンドル14及びシース40は、チャネル15を画定する。当該チャネル15を通って、導電性構造は伸びる。スリーブ38は、例えば熱収縮性材料のような、絶縁性材料からなることができ、ハンドル14に固定されていてもよい。図示されるように、シース40は、非導電性材料のような可撓性のある絶縁体からなっている。シース40によって、電流は絶縁される。理解され得るように、細長部材18及び/又はシース40それぞれの長さは、通常その所望の用途により、変化する。図中に示されるそれらの長さは、実寸通りであることを意図しない。
【0025】
図1において、第1電極21(不図示)は、撤収された又は展開されていない位置にあり、シース40内に受容されている。さまざまな実施形態において、細長部材18の、シース40を含む遠位部は、そこから第1電極21が巧みな操作によって処理領域に送達され、更に処理される部位に対して展開される、送達用プラットフォームとして構成されてよい。したがって、ハンドル14は、第1電極(不図示)を展開するように構成されたアクチュエータを含んでよい。図示された実施形態において、ハンドル14は、開口部32を通って摺動可能に構成され、摺動アセンブリ34に結合されている摺動部材30を備えるアクチュエータを含む。摺動アセンブリは、ピストン35を含み、ピストン35は、ハンドル14内で画定されるシリンダ36を通って移動可能である。摺動アセンブリ34は、摺動部材30の動きが、細長部材18の遠位部をハンドル14の遠位端部に対して相対的に、後退させたり前進させたりするように、細長部材18に結合されて動作するようになっている。この実施形態において、シース40は、ハンドル14の遠位端部に対して固定されている。しかし、ある複数の実施形態において、シース40は、ハンドル14の遠位端部に対して、例えば摺動部材30のようなアクチュエータを用いて、相対的に動くことが可能になっている。細長部材18の遠位部は、例えば、細長部材18を物理的に前進させることによって、組織処理領域に送達されることが可能であり得る。例えば、細長部材18をシース40の内部で、患者の人工的管腔、自然の開口部、又は生物学的管腔内に、フィードすることができる。その1つが図2に示されるいくつかの実施形態において、細長部材18は前進して、ハンドル12、シース40、内視鏡(不図示)、又は他の送達デバイス(例えば、チャネル)の遠位端部を超えて、第1電極21を展開し、表にさらすことができる。ある複数の実施形態において、細長部材18は、ハンドル14、シース40、内視鏡(不図示)、又は他の送達デバイスの遠位端部に対して交替させることもできる。図1及び2に示すように、細長部材18を選択的に、シース40の遠位端部に対して相対的に伸ばしたり後退させたりするために、臨床医は摺動部材30の位置を変えることができる。例えば、摺動部材30を遠位に位置させると、細長部材18が、シースの遠位端部に対して相対的に伸び、第1電極21が外部にさらされる。その後、摺動部材30の位置を近位に変えると、細長部材18が、シースの遠位端部に対して相対的に後退し、第1電極21はシース40内に受容される。
【0026】
図1に図示される電気的アブレーションシステム10は、エネルギー源11に結合される第2電極22を更に含む。この特定の実施形態において、第2電極22は、リターンパッドを備える。さまざまな実施形態において、第2電極22は、リターンパッド、針、クランプ具、第2細長部材、又は細長部材18の遠位部に沿って配置される第2電極であってよい。とりわけ、最適のタイプの第2電極22が、システム10の所望の用途によって一般に異なるということを、当業者は理解するであろう。
【0027】
いくつかの実施形態において、電極21、22は、電場パルスを望ましくない組織に送達する。そのような電場パルスは、さまざまなパラメータによって特徴づけられ得る。そのようなパラメータには、例えば、パルスの形、振幅、周波数、パルス幅、極性、パルスの総数、及び継続時間がある。さまざまな実施形態において、電場パルスは、望ましくない組織に不可逆的な電気穿孔を誘導することなく、望ましくない組織を加熱するに十分である場合があり得る。ある複数の実施形態において、電場パルスは、不可逆的な電気穿孔を望ましくない組織に誘導するのに十分であり得る。誘導される効果は、例えば、組織のタイプ、細胞のサイズ、及び電場パルスのパラメータのような、さまざまな条件によって異なり得る。例えば、具体的なタイプの組織の膜電位は、主として、電場の振幅とパルス幅とによって異なる。
【0028】
1つの実施形態において、エネルギー源11に対する入力は、プラグ(不図示)により市販の電源に接続してもよい。エネルギー源11の出力は電極21、22に結合され、ハンドル14上の起動スイッチ(不図示)、又は足起動ペダル(不図示)上に装備された起動スイッチを用いて電極21、22に通電してもよい。エネルギー源11は、処理領域における望ましくない組織に加熱を誘導するのに好適な、又は、処理領域における望ましくない組織の相当量をアブレートするための不可逆的な電気穿孔を誘導するのに好適な、あらかじめ定められた周波数、振幅、パルス幅、及び/又は極性の電気パルスを発生させるように構成されていてよい。DCパルスの極性を、正から負へ又は負から正へ所定の回数で逆転又は反転させて不可逆的穿孔を誘導し、処置領域内の望ましくない組織の相当な量をアブレーションすることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、電気的パルスの1つ又は2つ以上のシリーズが、IREを誘導するために印加されうる。1つの実施形態において、エネルギー源11の出力にタイミング回路を結合して、電気パルスを発生させることができる。タイミング回路は1つ又は2つ以上の好適なスイッチング要素を備え、電気パルスを生成できる。例えば、エネルギー源11は、一連のm個の電気的パルス(ここで、mは任意の正の整数である)を発生させることができるが、当該m個の電気的パルスは、それが印可された際には、壊死閾値より小さいが、望ましくない組織に加熱を誘導するためには十分な振幅及び継続時間を有する。また、エネルギー源11は、一連のn個の電気的パルス(ここで、nは任意の正の整数である)を発生させることができるが、当該n個の電気的パルスは、それが印可された際には、組織をアブレーションするために好適な不可逆的な電気穿孔を誘導するのに十分な振幅及び継続時間を有する。さまざまな実施形態において、電気的パルスは一定の又は可変のパルス幅、振幅、及び/又は周波数を有することができる。
【0030】
電気的アブレーションデバイス12は、例えば、複数の電極が、比較的互いに近くに存在する、双極的モード、又は、例えば、電極どうしが遠く離れた位置にあり、1つの電極が通常、はるかに大きな表面積を有する単極的モードのいずれか一方で動作し得る。例えば電極21、22は、第1電極21が他方の電極22に対して正の極性を有する、双極的電気的アブレーションシステムにおいて用いられてもよい。単極的モードにおいて、例えば、図1に図示されるような接地パッドが、電極21、22の一方に代替されてもよい。いくつかの実施形態において、第2電極22は、細長部材18に沿って配置される電極、第2細長部材に沿って配置される電極、針電極、又はクランプ具の1つからなる。いくつかの実施形態において、電極21、22は、電極21、22それぞれの極性が後退する、二相性電気的アブレーションシステムにおいて用いられてもよい。二相性モードにおいて、第1電極21は、第1極性と電気的に接続されてよく、第2電極22は、反対の極性と電気的に接続されてよい。単極的モードにおいては、第1電極21は、規定電圧に結合され、第2電極22は接地に設定され得る。エネルギー源11は、二相性モード又は単相性モードの一方で、電気的アブレーションシステム10とともに動作するように構成されていてよい。双極的モードにおいて、第1電極21は、1つの極性の規定電圧に電気的に接続されてよく、第2電極22は、反対の極性の規定電圧に電気的に接続されてよい。3つ以上の電極が用いられる場合には、任意の2つの隣り合う電極が、同じ又は反対の極性を持つように、電極の極性が交代させられるとよい。
【0031】
図2を再び参照すると、第1電極21は、少なくとも1つの次元の寸法において拡張可能な拡張可能部20を含む。特に、図2に図示する拡張可能部20は、当該拡張可能部20がシース40内に受容されている際の直径に比べて、拡張した直径を有している。拡張可能部20がシース40内に受容されている場合には、シース40は、受容した拡張可能部20の直径よりも大きい直径を有するチャネルを画定する。しかしながら、図2に示すように、拡張可能部20がシース40から展開され、拡張される際には、拡張可能部20は、その直径が、シース40内に画定されたチャネルの直径よりも大きくなるように拡張される。すなわち、受容された場合には、拡張可能部20は収縮した状態にあり、展開され及び/又は拡張した場合には、拡張可能部20は拡張した状態にある。
【0032】
さまざまな実施形態において、細長部材18はその全長又はその全長の一部が、可撓性を有し得る。そのような可撓性のある部位は、例えば屈曲可能であり、変形可能であり、又は弾力性がある。可撓性のある部位は、例えば、ある条件下で可撓性のあるもの、又はある条件下では剛性のあるもの、であってもよい。いくつかの実施形態において、細長部材18は可撓性のある部位を含み、細長部材18の当該部位は、信号に反応して回動するように、又は他の形で操作できるように、機械的に屈曲可能であってよい。いくつかの実施形態において、細長部材18は、ハンドル14に対して相対的に近づくように、及び/又は遠ざかるように進ませることが可能である。例えば、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に遠位側に細長部材18が進むことは、ハンドル14の近位端部に対して、相対的に遠位側に細長部材18が進むことと一致してよい。ある複数の実施形態において、細長部材18を前進させることが、ハンドル14の遠位端部の遠位側に細長部材18の長さを長くする場合、その長さが長くなることは、細長部材18の長さが、ハンドル14の近位端部の近位側に短くなることと一致する。さまざまな実施形態において、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に近位側に細長部材18が進むことは、ハンドル14の近位端部に対して相対的に細長部材18が近位側に進むことに一致する。ある複数の実施形態において、細長部材18が前進することが、ハンドル14の遠位端部の遠位側に細長部材18の長さを短くする場合、その長さが短くなることは、細長部材18の長さが、ハンドル14の近位端部の近位側で長くなることと一致する。図1に図示される細長部材18は、一般的な円筒形状を有するように描かれているが、細長部材18は、任意の好適な形状又は断面を有してよいことは理解されるべきである。例えば、細長部材18の又はその一部の断面は、幾何学的に等辺等角のものであろうと、そうでなかろうと、一般に、円形、三角形、長方形、五角形、六角形、又は任意の好適な、境界線で囲まれた形状であってよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、細長部材18の1つ又は2つ以上の部位が、コイル上にされ、入れ子状にされ、又はその他の方法でハンドル14内又は細長部材18の遠位部内に包摂される。そのような実施形態のいくつかにおいては、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に遠位側に細長部材18が進むことは、ハンドル14の近位端部に対して相対的に細長部材18が遠位側に進むことと一致しない。そのような実施形態の1つにおいて、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に細長部材18が近位側に進むことは、ハンドル14の近位端部に対して相対的に細長部材18が近位側に進むことと一致しない。ある複数の実施形態において、細長部材18を前進させることが、ハンドル14の遠位端部の遠位側に細長部材18の長さを長くする場合、細長部材18の長さは、ハンドル14の近位端部の近位側で、変化しない。そのような実施形態の1つにおいて、細長部材18を前進させることが、ハンドル14の遠位端部の遠位側に細長部材18の長さを短くする場合、細長部材18の長さは、ハンドル14の近位端部の近位側で、変化しない。
【0034】
ある複数の実施形態において、電気的アブレーションシステム10比較的可撓性のある細長部材18を備えており、シース40内で、導入され、方向づけられ、組織処理領域に送達され得る。シース40は、例えば、チューブのような中空の穴部材である。いくつかの実施形態において、シース40は半剛体であり、第1電極21を組織処理領域に正確に送達するために用いることができる。細長部材18は、1つ又は2つ以上の電極21、22又はその部分を、交互に撤収させたり又は展開したりするように中空の穴部材を通って移動可能である。いくつかの実施形態において、細長部材18は、長さ方向に伸びることが可能な部位のような、伸びることが可能な部位を含む。その長さは、例えば、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に、細長部材18が遠位側に長くなるように細長部材18遠位側に伸ばすことにより伸びることが可能であってよく、そうして第1電極21又はその一部を前進させ、又は展開させる。同様に、摺動アセンブリ34のようなアクチュエータが、細長部材18を伸ばすために提供されてもよい。例えば、細長部材18は、細長部材18の長さを遠位側で、追加的長さをフィードすることで、第1電極21又はその一部を、前進させ又は展開させ得る。なお、細長部材18を伸ばすことは、ハンドル14から遠位側に追加的細長部材18をフィードすることに限られないということは、理解されるべきである。いくつかの実施形態において、細長部材18の第1部分を細長部材18の第2部分に対して相対的に動かすことによって、細長部材18の一部分は伸びることができる。細長部材18の第1部分及び第2部分は、入れ子になっている部位の両側の側面に位置してよい。細長部材18の第1部分と第2部分との間の相対的動きは、細長部材18の長さの一部を望遠鏡のように伸ばし又は後退させ、細長部材18の全体的な長さを長くし、又は短くすることによって生じ得る。細長部材18の第1部分及び第2部分は、細長部材18の折り畳まれる部分の両側の側面に位置してよい。細長部材18の第1部分と第2部分との間の相対的動きは、折り畳まれる部分を折り畳んだり広げたりすることによって生じ得るが、その結果、細長部材18の長さの一部がアコーディオン状に伸びる又は後退することになる。第1部分と第2部分との間の相対的動きは、例えば、プーリ、往復する伸び部材、摺動するマウント、ギア、及び/又は軌道のような任意の既知の機構によって実現されてよい。いくつかの実施形態において、細長部材18の付勢力を漸進的に解放することにより、細長部材18は第1電極21を前進させ、又は展開させることができる。図1に図示される実施形態において、アクチュエータが、シース40の遠位端部から、第1電極21を展開するように構成されている。しかしながら、他の実施形態においては、シース40は設けられなくてもよく、臨床医が、第1電極21を内視鏡、トロカール、又は細長部材18を受容するように構成されている他の人工的管腔の遠位端部から前進させて、第1電極21を展開し、第1電極21を標的領域に送達する場合がある。これら及びその他の実施形態において、シース40又は人工的管腔が、第1電極21又はその一部を外にさらすように前進させる又はそれらを受容させるように後退させることにより、第1電極21又はその一部を展開する又は撤収させるように構成されていてよい。
【0035】
既に述べたように、細長部材18は、遠位側に位置する先端部28を含んでいてよい。ある複数の実施形態において、先端部28は、電流の流れに抵抗するように構成されている絶縁体を含んでいてよい。なお、特定の用途に適するように、さまざまな次元の寸法の複数の先端部28が設けられることもできるということは理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、先端部28の長さは第1電極21よりも長くてよいが、他の実施形態においては、先端部28の長さは第1電極21より短くてよい。さまざまな長さの複数の先端部28は、アブレーション中の第1電極21の安定性を有利に高め、又は、例えば、細長部材18の操縦性を高めることにより、第1電極21の送達を補助する。さまざまな実施形態において、先端部28の直径は、収縮した状態の第1電極21の直径より大きくても小さくてもよい。そのような実施形態のいくつかにおいて、先端部28は複数の直径を持ち得る。複数の直径を持つ先端部28は、第1電極21の送達、配置、及び/又は位置決めをアシストするように構成されていてよい。例えば、先端部28複数の直径の周りにある輪郭部が、第1電極21を処理される部位に又はその付近にしっかり固定する、又はぴったりと位置決めしてもよい。そのような輪郭部は、処理される部位又はその近くの組織にしっかりと係合するように構成された1つ又は2つ以上の表面部をも含んでいてよい。さまざまな実施形態において、先端部28は、第1電極21の送達、配置及び/又は位置決めをアシストするように構成されている遠位端部を含む。例えば、先端部28の遠位端部は、例えば、図1に図示されるような、鋭く尖っていない、鈍な端部を含み得る。いくつかの実施形態において、先端部28の遠位端部は、細長部材18を表面に沿って及びチャネル内で、方向づけるように構成されている比較的鋭く尖った先端を含む。図3は、そのような先端部28を備える1つの実施形態を図示している。特に、図3は、細長部材18の遠位部に沿って配置された第1電極21を図示している。細長部材18の遠位端部は、先端部28を有する。先端部28は、比較的鋭く尖った先端に向かってテーパー状になっている。テーパー角は、図1又は3に描かれているものより大きい場合も小さい場合もあり、それは所望の用途が何であるかによって変わるということが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、先端部28は、組織に穴を開ける及び/又は第1電極21をしっかり固定するように構成されている鋭い先端であり得る。先端部28は、例えば、液体を排出するように構成されている細いカテーテルを含んでいてもよい。詳しくは後述するように、ある複数の実施形態において、先端部28は、センサ機能(例えば、光、温度、位置等)及び/又は電解質の輸送のような、任意の数の機能を果たすことが可能である。なお、いくつかの実施形態において、電極21は先端部28を含むことができ、電流を送り又は受けることが可能なように構成されてよいということは理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、先端部28は、針電極であってよい。
【0036】
さまざまな実施形態において、摺動部材30の第1方向への動きが、ハンドル14の遠位端部に対して相対的にシース40を前進させ、摺動部材30の第2方向への動きが、ハンドル14の遠位端部に対して相対的にシース40を後退させるように、摺動アセンブリ34はシース40に動作可能に決されている。いくつかの実施形態において、第1電極21を外にさらし、又は処理される部位の又はその近くの展開位置に送達するために、シースは、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に後退させられ得る。いくつかの実施形態において、第1電極21を収納する、又は撤収位置に撤収させるために、シース40は、ハンドル14の遠位端部に対して相対的に前進させられ得る。なお、細長部材18は、例えば、レバー、引き金、アクチュエータ、ボタンのような、摺動部材30以外の仕組みによって前進させることが可能であり、前進又は後退は、例えば、手動によって、電気的に、及び/又は機械的に実行されてよいということは理解されるであろう。1つの実施形態において、細長部材18は、細長部材18の長さを長くしたり短くしたりすることによって、前進又は後退させることができる。例えば、1つ又は2つ以上の電極21又は細長部材18の他の部位は、弾力性があるか又はそうでなければ伸びることが可能な若しくは圧縮可能な材料からなる伸縮自在の長さ部分を含み得る。細長部材18を前進、又は後退させることにより、上記長さの調整が実行される。いくつかの実施形態において、細長部材18を遠位側に前進させることで第1電極21が標的組織に対して展開され、細長部材18を近位側に後退させることで第1電極21が標的組織から撤収される。いくつかの実施形態において、1つ又は2つ以上のアクチュエータは、第1電極21を処理領域に展開し、第1電極21を処理領域から撤収するように、第1電極21を伸ばす又は屈曲させるように、及び/又は収縮した状態と拡張した状態との間で拡張可能部20を移行させるように構成されていてよい。いくつかの実施形態において、複数種類の移行が同一又は別個のアクチュエータにより作動され得る。例えば、収縮した状態と拡張した状態との間を移行させるための作動信号は、第1電極21を撤収する又は展開する作動信号と結合されてもよい。
【0037】
さまざまな実施形態において、第1電極21及び第2電極22は、細長部材18の遠位部に沿って配置され、例えば、隣接の組織の筋肉の収縮を減らしながら、望ましくない組織をアブレートするために、より正確に処理エリアを画定するために用いられ得る。図4は、図1に描かれた電気的アブレーションデバイス12及びシステム10の実施形態を図示し、細長部材18の遠位部に沿って配置された第1電極21と第2電極22とが含まれている。第1電極21が正の電極として構成され、第2電極22が負電極として構成されてよい。第1電極21は、エネルギー源11の正の端子と接続され得る導電性構造部に、電気的に結合されてよい。第2電極22は、エネルギー源11の負の端子と接続され得る導電性リード線又はワイヤのような導電性構造部に、電気的に結合されてよい。導電性構造部は、互いに及び、電極21、22それぞれへの電気的接続以外は、周辺の構造部から電気的に絶縁されていてもよい。第1電極21及び第2電極22は、第1電極21に関して説明したのと類似の作動方法により展開され得る。例えば、第1電極21は、摺動部材(不図示)の位置を変えることで、又は、その他のアクチュエータによって、撤収又は前進され得る。第2電極22は、同様に、同じ又は別個の摺動部材(不図示)の位置を変えることで、又は、その他のアクチュエータによって、撤収又は前進され得る。いくつかの実施形態において、第1電極21又は第2電極22を前進させることによって、それぞれの電極21、22をシース40の遠位端部から展開する。電極21、22の一方又は両方が、摺動部材に結合され得る。あるいは、電極21、22を前進及び/又は撤収させるため、及び/又は電極21、22を展開するために、追加的な摺動部材が設けられてもよい。また、ある複数の実施形態において、第1電極21及び第2電極22は、選択的に展開することができるということは理解されるべきである。それゆえに、臨床医は、第1電極21のみ又は第2電極22のみを選択的に展開することで、第1電極21又は第2電極22を任意選択で用いることができる。このように、臨床医は、第1電極21及び/又は第2電極22に電力を印加する前又は後で、追加的な電極を独立させて配置することができ、そうすることで、電気的アブレーションデバイス12を1回挿入する間に、さまざまな電場を作り出せるような柔軟性を実現する。いくつかの実施形態において、何を第1電極21、第2電極22、又は追加的な電極とするかを、選択的に変更する又は入れ替えることができるということは、理解されるべきである。例えば、1つの実施形態において、第1電極21の機能は停止され、第2電極22を、それまで第1電極21が果たしてきた役割に入れ替えて用いてもよい。
【0038】
細長部材が複数の電極を含むいくつかの実施形態において、電極間の距離「d」は調節可能である。再び図4を参照すると、図示されている実施形態は、第1電極21と第2電極22との間の、調整可能な距離を含む。そのような調節可能な距離は、例えば、2mmと25mmとの間で調節可能であり、処理ゾーンをその範囲に柔軟に収められるように用いてよい。したがって臨床医は、例えば、1つ又は2つ以上の延長部材又は挿入部材を電極21、22間に挿入して、電極21、22間の距離「d」を使用前に調節してよい。臨床医が電極21、22間の距離をカスタマイズし、所望の用途に適した長さにできるように、好適な長さを有する複数の延長部材又は挿入部材が提供され得る。いくつかの実施形態において、電極21、22間の距離は、ハンドル14上に配置されている1つ又は2つ以上の摺動部材又はアクチュエータを作動することによって、電極21を第2電極22に対して相対的に前進又は回転させることによって調節できる。例えば、電極21、22は、細長部材に沿って配置されるが、その際、ねじ切りがされた電極21、22がねじ切りされた細長部材上に、又は摺動可能な電極21、22が他の軌道の上に設けられてもよい。さまざまな実施形態において、細長部材の、電極21、22間に介在する長さ部分が拡張して、その距離を伸ばしてもよい。
【0039】
図5は、図1に描かれた電気的アブレーションデバイス12及びシステムの追加的な実施形態を図示しており、細長部材18の遠位部に沿って配置された第1電極21及び第2電極22が含まれている。電極21、22は、さまざまなレベルに拡張した状態で図示されている。例えば、第1電極21も第2電極22もともに、軸線周りに拡張されている。しかしながら、第2電極22は、軸線に沿っても伸びており、第1電極21よりも長くなっている。いくつかの実施形態において、電極21、22が拡張すると、電極21、22が、さまざまな方向に発散的な次元の寸法を含むように非対称の電極が設けられてもよい。しかしながら、他の実施形態においては、対称的な電極が設けられ得る(例えば、複数の電極は同じ又は実質的に類似の次元の寸法を含む)。上記発散的な次元の寸法とは、例えば、図5に図示されているように、さまざまに異なる直径及び/又は長さを含む。2つ又は3つ以上の電極21、22に対する最適な発散的な次元の寸法の選択は、一般に、所望の用途によって決まる。とりわけ、詳しくは後述するように、第1電極21及び第2電極22は、選択的拡張の結果として、拡張方法の副産物として、又はその構造によって、1つ又は2つ以上の次元の寸法において異なり得る。例えば、第1電極21が収縮した状態での長さは、第2電極22が収縮した状態の長さと同じでも同じでなくてもよい。しかしながら、電極21、22はそれぞれが拡張した状態では、それでもなお同じ長さになるようになっていてもよい。図5に図示される実施形態は、細長部材18の遠位部に沿って配置される第3電極23を含む。第3電極23は、第1電極21の遠位側にあり、いくつかの実施形態において、細長部材18の遠位先端部28の若しくはその付近の接続部で、又は、第1電極21の若しくはその付近の接続部で、第1電極21に付着し得るようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、第3電極23は、リターンとして構成され、又は第1電極21及び/又は第2電極22とは異なる極性を有している。しかしながら、他の実施形態においては、第3電極23は、第1電極21及び第2電極22の電気的アイデンティティを延長するように構成されている。
【0040】
本明細書に開示される電気的アブレーションシステム、デバイス、及び方法のさまざまな実施形態によると、複数の電極21は可撓性のある及び/又は拡張可能な部位を含み得る。いくつかの例において、そのような可撓性のある及び/又は拡張可能な部位は、可撓性のある及び/又は拡張可能な部位にその構造体を提供する1つ又は2つ以上の枠組み部材を備える枠組みを含む場合がある。さまざまな実施形態において、枠組みは、選択的に拡張可能な、拡張可能部の外周及び/又は直径を画定する。また、枠組みは、組織と接触しアブレーションのためのエネルギーを送達するように構成されている、1つ又は2つ以上のエネルギー送達面を含み得る。以下では、拡張可能な及び/又は可撓性のある部位の一般的形状及び周辺部の表面を、一般的にバスケットと呼ぶ場合がある。図2〜5及び7の電極には、1つ又は2つ以上の一般化されたバスケットの描写が含まれ、それゆえに、枠組みの外見や内部の構造に関して本開示を制限することを意図していないことは、理解されるべきである。とりわけ、以下で明らかになるが、可撓性のある及び/又は拡張可能な部位は、さまざまな枠組み構造を含むバスケットを含み得る。また、さまざま枠組み構造はさまざまな外周及び断面を有し、そこには例えば、それが等辺等角のものであろうとなかろうと、らせん形、円形、三角形、長方形、五角形、六角形、又は任意の若しくは好適な形状、が含まれる。更に、いくつかの実施形態において、枠組みは、例えば、アブレーションのためのエネルギーをかけるように構成されているエネルギー送達面を有する、導電性スリーブを含み得る。導電性スリーブは、その内部の枠組み部材の周りに設けられてもよく、設けられなくてもよい。他方、他のさまざまな実施形態において、バスケットは連続する面を有している必要はない。例えば、ある複数の実施形態において、1つのバスケットは、2つ又は3つ以上の枠組み部材の枠組みにより画定される、1つの不連続な面を含む。当該2つ又は3つ以上の枠組み部材は、組織に接触しアブレーションのためのエネルギーを送達するように構成されている、エネルギー送達面を有する組織接触領域を含む。複数の電極21及びその部分の複数の実施形態が、拡張可能な又は、可撓性のあるものとして言及されるが、その2つは互いに排他的ではないということも理解されるべきである。実際、ある複数の実施形態において、電極21は、1つの可撓性のある部位と、1つの拡張可能な部位とを含み、拡張可能な部位の少なくとも一部分は、可撓性のある部位の少なくとも一部分を含んでいる。すなわち、電極21の、拡張可能な部位の少なくとも一部分と可撓性のある部位とは重なり合う。しかしながら、いくつかの実施形態において、拡張可能な部位及び可撓性のある部位は、重なり合わない場合がある。あるいは、電極21が収縮した状態でのみ、又は拡張した状態でのみ重なりあうという場合もある。
【0041】
枠組み部材は、1つ又は2つ以上の方向に曲がる又は屈曲するように構成されていてよく、且つ、弾力性及び/又は曲がりやすい性質を示す可撓性のある材料を含み得る。例えば、枠組み部材は、プラスチック、ポリマー、合金、金属、又は、超弾力性材料を含むその他の弾力性がある材料をはじめとする材料を含み得る。枠組み部材は、同様に、剛性のある、又は例えば、接合部又はソケットの周りで曲がる又は屈曲するように構成されている、条件付きで剛性のある材料を含み得る。いくつかの実施形態において、可撓性のある電極21を用いて臨床医は、電極を曲がりくねった生物学的管腔を通して導くことに関連付けられた外傷を減らすことができる。可撓性のある電極21は、他の方法では手術不可能であると思われる標的領域内の望ましくない組織にうまく到達する。さまざまな実施形態において、可撓性のある電極21は、可撓性のある電極21の組織接触領域と望ましくない組織との間の接触面積を増やすことも可能である。可撓性のある電極21は、例えば、望ましくない組織が部分的に生物学的管腔を塞いでいるような場合に、その適用に際してより制御ができるのを可能にするのでとりわけ有益であり得るということを、当業者ならば認識するであろう。
【0042】
図6は、ある実施形態に係る可撓性のある部位16を図示している。可撓性のある部位16は、細長部材18の遠位部に沿って配置され、且つ円筒状の枠組み50を含み、枠組み50はコイル状の枠組み部材52(例えば、ばね)を含む。枠組み50は、可撓性のある部位16によって画定される長手方向の軸線に沿って伸びる。枠組みは、近位カプラー54及び遠位カプラー56を更に含む。近位カプラー54及び遠位カプラー56は、枠組み部材52を細長部材23と先端部28とに結合するように構成されている。図示された実施形態において、先端部28は、尖っていない、丸みのある終端部を有し、可撓性のある部位16は、例えば、生物学的管腔の湾曲に対応して、曲がる又は屈曲することができるように、当該管腔内に挿入できるように可撓的に構成されている。電極21は、組織処理領域に送達される間、内視鏡若しくはトロカールのような人工的送達チャネル、又は例えば管腔を通り、うまく曲がり屈曲することができる。あるいは、電極21はむき出しで、(すなわち外部にさらされて、又は人工的送達チャネルの内部ではなく)うまく曲がり屈曲することができる。このように、可撓性のある部位16は、その侵襲性を最小限に抑えつつ、可撓的に標的領域に送達されることができる。
【0043】
さまざまな実施形態において、電極21は、例えば、幅や高さのような、任意の物理的次元の寸法において拡張可能であってよい。例えば、いくつかの実施形態において、電極21が拡張することは、電極21の直径が拡張することとして説明される。本明細書で一般に用いられるように、「直径」という用語は、一般に拡張可能部20の外周に位置する2点間の直線的距離であって、当該直線が、拡張可能部20の軸線を通るようになっている距離を意味する。拡張可能部20の外周は、拡張可能部20の周辺部、又は外周面を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、枠組み50は拡張可能部20の外周を画定し、直径は、枠組みの両対向面に位置する2つの組織接触領域間の距離であり得る。直径は特定の幾何学的形状に限られないこと、及び断面には、それが等辺等角のものであろうとなかろうと、らせん形、円形、三角形、長方形、五角形、六角形、又は任意の若しくは好適な形状、が含まれることが理解されるべきである。
【0044】
拡張可能性及び/又は可撓性を有していることに加えて、電極21は、伸びることが可能でもある。すなわち、電極21のある長さ部分は、電極21の可動部位を電極21の固定部位に対して相対的に伸びることにより、伸びることが可能であり得る。例えば、図6に図示される、可撓性のある電極21の1つの実施形態において、臨床医は、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きを、可撓性のある部位16の長さが長くなるように作動することによって、可撓性のある電極21を伸ばすことができる。そのような伸びは、可撓性のある部位16の可撓性を減らす場合もあれば減らさない場合もある。本明細書に開示される電極のさまざまな実施形態において、本発明によらなければ、複数回のアブレーション処理が必要となるその結果として生じ得る外傷を有利に減らすために、臨床医は、伸びることが可能な長さ部分を用いて、適用エリアを増やすことができることは、当業者ならば認識できるであろう。
【0045】
さまざまな実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は、1つ又は2つ以上の拡張可能な電極21を含む。例えば、図2、3、及び4に図示されるような拡張可能な電極21は、1つ又は2つ以上の枠組み部材52を含む枠組み50を含み得る。枠組み部材52が、その関連付けられた第1形状と関連付けられた第2形状とを有することができるということは理解されるべきである。いくつかの実施形態において、第1形状は、記憶形状からなり、且つ第2形状は、維持された形状からなる。維持された形状は、記憶形状以外の形状の枠組み部材52の配置及び配向を含み得る。例えば、維持された形状において、例えば、維持構造体による操作によって、枠組み部材52は変形され、遅らせられ、又は、ひずませられ得る。操作には、拡張可能部20がその直径を増やす又は減らすような、トルクのような応力、圧縮力、及び/又は1つ又は2つ以上の枠組み部材52にかかる張力が含まれる。いくつかの実施形態において、操作は、塑性変形を結果としてもたらし得る。ある複数の実施形態において、枠組み部材52が維持された形状にある場合、枠組み部材52を維持された形状に維持している維持構造体を解放又は取り除くことによって、そのような枠組み部材52は記憶形状へ移行させることができる。ある複数の実施形態において、維持された形状の枠組み部材52は、拡張可能部20及び/又は枠組み50が、その直径を増やす又は減らすような操作によって記憶形状に復帰させることも可能である。なお、当該操作には、トルクをかけること、圧縮すること、枠組み部材52の1つ又は2つ以上に引張り応力をかけることがある。
【0046】
拡張可能部20の次元の寸法が拡張される程度としては、当該次元の寸法の当初の値を多数倍したものでありうる。例えば、第1状態にある拡張可能部20のある次元の寸法は、値1を持ちうる。第2状態にある拡張可能部20のある次元の寸法の値は、2、3、10、20、又はさらに大きい、例えば40であり得る。ある複数の実施形態において、拡張の度合いは、第1状態にある拡張可能部20の長さによってのみ制限される。いくつかの実施形態において、可変的拡張機能が提供される。可変的拡張機能によって、臨床医は、電極21がどの程度拡張されるべきかを調節することが可能になる。例えば、臨床医は、拡張の度合いをあらかじめ定められた直径に、手術の前、又は最中に調節することができる。可変的拡張機能は、1つの手術に適応させる、又は拡張の度合いが調整され得るように、フィードバックを臨床医に提供するように構成されていてもよい。例えば、拡張への外部的抵抗が、あらかじめ定められた閾値に、又はその近くにある場合、例えば、壁又は構造体がフルに拡張するのを妨げている場合、拡張の度合いが制限されるように、特定の拡張の度合いが実現されたあとでは、拡張する力の大きさは有限であり得る、及び/又はごくわずかであり得る。そのようの可変的拡張機能は、具体的な用途に合わせて適合させるように更に調節可能であり得る。例えば、導電性バルーンを含む電極21が管腔に挿入され、制御可能な圧力で、実質的に管腔の形状に沿うように膨張させられる場合がある。そのような補完的形状は、組織に対して侵襲的な力をかけずに、管腔周りに周方向の接触を増やすことを可能にする。同様に、さまざまな実施形態において、拡張可能部20が拡張した状態にあっても、枠組み部材52は、少なくとも部分的にその可撓性を残している。例えば、枠組み部材52は、軸線に向かって内向きに及び/又は軸線から外向きには可撓性を有している場合がある。細長部材18及び/又は拡張可能部20は、同様に、さまざまな角度及び方向で軸線から離れる方向に可撓性を有している場合がある。いくつかの実施形態において、適応可能機能は、拡張可能部20の長さが調節可能であり得る電極21を含む。例えば、いくつかの実施形態において、拡張可能部20が拡張した状態に選択的に移行された際に、拡張可能部20のうち展開されたままの部分だけが拡張されているように、拡張可能部20は撤収され又はシース40内に受容されている場合がある。
【0047】
図7は、さまざまな実施形態に係る、細長部材18に沿って配置された拡張可能部20の、1つの実施形態を図示している。拡張可能部20は、シース40から展開され、拡張した状態で図示されている。枠組み50が、拡張可能部20の軸線周りに大まかな外周(例えば、バスケット)を画定し、且つ、軸線から約50度の角度で拡散する第1テーパー長24aと、実質的に軸線と平行に伸びている第2長24bと、軸線に向かって約50度の角度で収束している第3テーパー長24cと、を含む。さまざまな実施形態において、バスケットは、金属のバルーン、金属のカバー、又は拡張の度合いが、第1テーパー長及び/又は第3第1テーパー長、並びに軸線に対して両テーパー長が拡散する角度、の関数である、例えば、図9、13、又は24に類似の実施形態を代表している。細長部材18は、鋭い先端に向かってテーパー状の終端部を有する遠位先端部28を更に含む。拡張可能部20が収縮した状態(不図示)では、拡張可能部20がシース40内で画定されるチャネル内に受容され得るように、拡張可能部20の直径は、少なくとも8分の1に短くなっている。シース40の遠位端部から展開された場合には、拡張可能部20は、任意の開示された方法で拡張することができる。理解できるように、拡張の度合いは、第1テーパー長24a及び/又は第3第1テーパー長24c並びに軸線に対して両テーパー長24a、24cが拡散又は収束する角度の関数であってよい。例えば、第1テーパー長24a及び/又は第3第1テーパー長24cの拡散又は収束する角度を増加する又は減少と、それぞれ拡張の度合いが増加又は減少するが、その一方で、やはりそれぞれ拡張可能部20の長さは減少又は増加する。また、第1テーパー長24a及び/又は第3第1テーパー長24cの長さをそれぞれ増加又は減少させると、それぞれ拡張の度合いが増加又は減少する。例えば、第1テーパー長24a及び/又は第3第1テーパー長24cが伸びることが可能な、実施形態においては、拡張した状態と収縮した状態との間を移行している間は拡張可能部20の長さが増加も減少もしない場合がある。しかしながら、第1テーパー長24a及び/又は第3第1テーパー長24cが伸びない実施形態においては、拡張すれば、拡張可能部20の長さが減少する場合がある。
【0048】
さまざまな実施形態によれば、複数の電極21又は複数の電極21の複数の拡張可能部20は、収縮した状態と1つ又は2つ以上の拡張した状態との間を選択的に移行させられ得る。図8〜25は、枠組み50及び枠組み部材52を含む、電極21の拡張可能部20のさまざまな非限定的実施形態を示し、拡張可能部20を拡張及び/又は収縮させる方法のさまざまな非限定的実施形態を示す。しかしながら、これらの実施形態を取り上げる前に、当業者がこれらのさまざまな実施形態を理解するのをアシストするために、これらの又は他の実施形態の有利な態様の数々を紹介しておく。
【0049】
いくつかの実施形態において、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させることは、そのための拡張力によって駆動され得る。拡張力は1つ又は2つ以上の枠組み部材52にかかり、拡張を実現する。拡張力は、例えばトルク、圧縮力、又は張力のような任意の既知の力を含み得る。1つの実施形態において、例えば、枠組み50内に画定された空洞内に注入又はそこから解放する固体、液体、又は気体のような、注入可能な物質を用いて、内圧を変化させることで移行が駆動される。内圧を増加させると、枠組み50の1つ又は2つ以上の領域内の圧力が均衡するところまで、枠組み50は拡張し得る。あるいは、枠組み50の空洞周りの張力を増加させると、更なる拡張を駆動することができる。同様に、収縮力は1つ又は2つ以上の枠組み部材52にかかり、拡張した状態とより少なく拡張した状態との間の収縮のような、収縮を駆動する。収縮力は、例えばトルク、圧縮力、又は張力のような、1つの寸法を減少させるための任意の既知の力を含み得る。例えば、1つの実施形態において、枠組み50内に画定された空洞内に注入又はそこから解放する固体、液体、又は気体のような、注入可能な物質を用いて、内圧を変化させることで移行が駆動される。注入可能な物質を解放するなどして、内圧を減少させると、空洞まわりの張力を緩めることにより、枠組み50の1つ又は2つ以上の領域内の圧力が均衡するところまで、収縮枠組み50が収縮し得る。あるいは、注入可能な材料を更に追加的に解放することにより、外圧が枠組み50を圧縮するのを可能にし、空洞を占めるのを可能にして、更なる収縮を駆動することができる。
【0050】
さまざまな実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は、電極21又は拡張可能部20を収縮した状態と拡張した状態との間で移行させるために、圧縮力、張力、及び/又は回転を用いる場合がある。いくつかの実施形態において、枠組み部材52の圧縮力は、拡張可能部20の長さを短くすることができるが、その一方で、同時に拡張可能部20の直径を長くする。例えば、圧縮された枠組み部材52は、圧縮応力を緩和するため、ひずみ、たわみ、又は軸線から外側に向かって屈曲する場合がある。圧縮力は、拡張可能部20の長さを短くすることなく、拡張可能部20の直径を長くするような移行を実現するような、枠組み50内部での枠組み部材52の位置の変更も駆動し得る。例えば、1つ又は2つ以上の枠組み部材52又はその部分は、軸線から外側に向けて又は細長部材18に沿って付勢され得るが、上記の又は他の枠組み部材52の位置の変更をもたらし、且つ拡張可能部20の寸法の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、枠組み部材52の張力は、拡張可能部20の長さを長くすることができるが、その一方で、同時に拡張可能部20の直径を短くする。例えば、そうでなければたわみ外向きに伸びるであろう枠組み部材52が引っ張られて、ひずみ、伸展し、又は軸線に向かって内向きに真っ直ぐになり、引張応力を緩和しようとする。張力は、拡張可能部20の長さを短くすることなく、拡張可能部20の直径を長くするような移行を実現するような、枠組み50内部での枠組み部材52の位置の変更も駆動し得る。例えば、1つ又は2つ以上の枠組み部材52又はその部分は、軸線に向かって内側に又は細長部材18に沿って引っ張られ得るが、上記の又は他の枠組み部材52の位置の変更をもたらし、且つ拡張可能部20の寸法の減少をもたらす。いくつかの実施形態において、枠組み部材52どうし、又はそれらの部分どうしの相対的動きを実現する操作に結合するよう構成されている第1カプラーを、第2カプラーに対して相対的に回転させると、枠組み部材52どうし、又はそれらの部分どうしの間の距離を増加又は減少させ得る。例えば、距離の減少は、1つ又は2つ以上の介在する部分又は他の枠組み部材52を圧縮させ得るが、その一方で、距離の増加は、1つ又は2つ以上の介在する部分又は他の枠組み部材52を引っ張り得る。
【0051】
さまざまな実施形態において、枠組み部材52は、記憶材料からなる。記憶材料は、反射性の及び/又は弾力性がある材料であって、それを変形させるような応力を取り除くと、記憶されている向き又は配置に戻るように構成されている材料を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、枠組み部材52は、その弾力性限界より大きい又は小さい、変形させるような応力により変形させられ、そのような変形させるような応力を取り除いた後で及び/又は変形させる圧力をかけた後にさらに温度を変化させる等の操作をした後で、記憶形状に戻るように構成されている。ある複数の実施形態において、記憶材料には、一方向及び/又は両方向の記憶効果を有する、形状記憶材料が含まれている。記憶材料は、変形可能で且つ操作によって再度その形を作ることが可能な材料も含まれ得る。例えば、コイルの2つの部分間の第1反回転は、部分的にコイルの巻きをほどくことになるが、第1反回転とは逆の第2反回転は、コイルを再び巻くことになり得る。そのような特性を有する材料が、当該分野では知られているが、そのような材料には、記憶性フォームのようなポリマー、プラスチック、エラストマー、及びゴム、が含まれるが、金属及び合金も含まれる。そのような材料には、超弾力性材料及び形状記憶材料が含まれ、形状記憶材料には例えば、合金(例えば、NiTi)、セラミックス、並びにゲル、フォーム、及び固体のポリマーのようなものが含まれるということは理解されるべきである。とりわけ、枠組み部材52が、導電性の乏しい形状記憶材料からなる場合、導電性材料がアブレーションのためのエネルギーが、組織へ運搬され送達される電気的経路を確立するために用いられてよい。例えば、導電性材料によるコーティング、ワイヤ、スリーブ、及び/又は組織接触領域が、エネルギーを組織に運搬し送達するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、枠組み部材52の配置及び/又は向きにより、枠組み部材52の弾力性限界が高められ得る。例えば、枠組み部材52は、例えば、ひずみを分配することによって高められた弾力性限界を有するコイル又は編組部の構成を含み得る。
【0052】
さまざまな実施形態において、枠組み部材52は、操作され得る記憶形状を有する。当該記憶形状は、変形しうるが、維持力をかけることで変形したまま維持できる。当該維持力を取り除くと、当該材料は、少なくとも部分的に記憶形状に戻る。記憶形状を有する枠組み部材52は、維持力を取り除くと、又は操作によって、枠組み部材52が記憶形状に戻るような任意の好適なあり方で、拡張可能部20内に配置され得る。例えば、導電性コーティングを備え、及び発泡性ポリマーからなる枠組み部材52を含む枠組み50は、維持力を取り除くと少なくとも1つの寸法が拡張し、維持力をかけると少なくとも1つの寸法が収縮するように構成されていてよい。ある複数の実施形態において、維持力は、拡張可能部20がその内部に受容されるチャネル(例えば、内視鏡、トロカール、シース内部に画定される人工的チャネル)によって提供される。他の維持構造体を用いて、維持力をかけてもよい。ある実施形態において、枠組み部材52を維持し、及び/又は枠組み部材52が、1つ又は2つ以上の記憶形状に移行するのを妨げるために、例えば、フック、ラッチ、締め付け可能なループ、又はその他の維持メカニズムが用いられてよい。
【0053】
枠組み部材52は、個別に又は集合的に1つ又は2つ以上の記憶形状及び/又は維持された形状を有する。例えば、枠組み部材52は、維持力に反応して変形し、当該維持力が取り除かれると、記憶形状に戻ることができる。あるいは、枠組み部材52は、第1記憶形状及び第2記憶形状を含み得る。1つ又は2つ以上の枠組み部材52が第1記憶形状である場合、拡張可能部20は拡張した状態にあり、1つ又は2つ以上の枠組み部材52が第2記憶形状である場合、拡張可能部20は収縮した状態にある。ある複数の実施形態において、記憶形状は拡張した状態に対応し、それゆえ、維持された形状と比較してより大きな直径を有する。あるいは記憶形状は収縮した状態に対応し、それゆえ、維持された形状と比較してより小さな直径を有する。もちろん、いくつかの実施形態において、維持力が、別の力、第3の力、又は複数の追加的な力と結合されて、収縮した状態と拡張した状態との間の能動的移行を実現するようになっていてもよい。
【0054】
枠組み部材52が軸線に向かって圧縮された際に、又は他の状態に維持された際に、枠組み部材52が拡張可能部20の直径を減らすように変形又は歪むように構成されていてよい。このように、電極21は、収縮した状態の人工的チャネル内部で、組織処理領域に方向づけられていてよく、組織処理される部位に又はその付近に展開されると、及び/又は維持力が取り除かれたのに反応して、拡張可能なようになっていてよい。1つの実施形態において、ばね、フォーム、又はその他の記憶材料のような付勢部材を有する第1枠組み部材52は、放射状のように、軸線から外側に向けて付勢されている。拡張した状態の拡張可能部20の直径よりも小さい直径を有するチャネル内で拡張可能部20が押され、引かれ、回転されると、当該チャネルは第1枠組み部材52を軸線に向けて圧縮し、同部材52をその維持された形状に保つ。しかしながら、拡張可能部20がチャネルから押し出され、引き出され、回転しながら出されると、第1枠組み部材52はもはやチャネルによって維持されていないので、展開されると記憶形状に移行し、軸線から外側に向かって伸びる。更なる1つの実施形態において、拡張可能部20が展開され、拡張した状態にある時には、第2枠組み部材52は、チャネルに向かって近位側に伸びる。第2枠組み部材52は、近位側の縁と遠位側の圧縮面を含み、第1枠組み部材52の軸線から外側に伸びる部分と結合する。拡張可能部20がチャネル内に受容される時、近位側の縁が徐々にチャネル内に引き込まれ、遠位側圧縮面を軸線に向けてテコ入れをし、第1枠組み部材52を圧縮し、拡張可能部20の直径を減らす。
【0055】
図8は、細長部材の遠位部18に沿って配置される拡張可能部20を図示している。拡張可能部20は収縮した状態で、シース40内に画定される人工的チャネル内にある。チャネルは、拡張した状態の拡張可能部20の直径より小さい直径を有し、枠組み部材52を維持された形状に維持する。シース40は、ハンドル14(不図示)に動作可能に接続されている。ハンドルはアクチュエータ(不図示)を含むが、当該アクチュエータは、図1に図示された摺動部材30と類似のものでよく、拡張可能部20をシース40の遠位端部から展開し、当該端部に撤収するように構成されていている。いくつかの実施形態において、拡張可能部20をシース40に対して遠位側に前進させることによって、拡張可能部20は展開され得る。したがって、拡張可能部20前進させることは、シース40を近位側に撤収すること、又は拡張可能部20をハンドル14に対して相対的に遠位側に前進させることを含み得る。拡張可能部20がシース40内に受容されている時には、維持力が拡張可能部20にチャネルによってかけられている。そのため、拡張可能部20は収縮した状態に維持されている。しかしながら、図9に図示されるように、拡張可能部20がシース40から展開されると、枠組み部材52はもはやチャネルによって維持されないので、記憶形状に移行する。この実施形態において、記憶形状は、拡張可能部20の拡張した状態に対応している。
【0056】
なおも図9を参照すると、拡張可能部20をチャネル内に撤収することにより、拡張可能部は、収縮した状態に移行させられ得る。チャネル内部に拡張可能部20が受容されている場合、チャネルが維持力を枠組み部材52に対してかけている。そうすることで、枠組み部材52を維持された形状に維持している。拡張可能部20を撤収及び/又は展開させるために、圧縮力、張力、及び/又はトルクのような能動的力が用いられてよい。例えば、拡張可能部20は、チャネルから押し出され、引き出され、又は回転しながら出されるようになっていてよい。また、チャネル内に押し込まれ、引き込まれ、又は回転しながら入るようになっていてよい。拡張可能部20を押すこと、引くこと、又は回転させることは、図8に図示されるように枠組み部材52を軸線に向けて変形させるため、及び拡張可能部20を収縮した状態に移行させるために、チャネルによってかけられる圧縮力と更に組み合わされてもよい。いくつかの実施形態において、拡張可能部20を収縮した状態に移行させることは、張力を1つ又は2つ以上の枠組み部材52にかけることを含む。張力は、例えば回転と組み合わされてもよい。いくつかの実施形態において、近位側への張力は、枠組み部材52を軸線に向けて変形させ得るが、当該張力は、枠組み部材52の遠位側への圧縮力と組み合わせてもよい。
【0057】
図9に図示されている拡張可能な状態の拡張可能部20は枠組み部材52を含み、当該枠組み部材52は、直線部分25bを含み、遠位側テーパー部分25c及び近位側テーパー部分25aがその両側面をなしている。記憶形状において、近位側テーパー部分25aは、第1角度で軸線から拡散する、遠位側テーパー部分25cは、第2角度で軸線に向かって収束する。理解できるように、拡張の度合いは、テーパー部分25a、25cの長さと、拡散及び収束の度合いとの関数である。例えば、テーパー部分25a、25cの長さを長くすると、拡張可能部20の直径が長くなる。また、拡散及び収束の度合いが90度の角度に近づくにつれて、拡張の度合いが増加する。いくつかの実施形態において、そのような直径の拡張は、拡張可能部20の長さが短くなることも伴う。図8及び9は、バスケット配置されている4つの枠組み部材52を含む、枠組み50を図示しているが、枠組み50は、任意の数の枠組み部材52を含んでいてよい。例えば、いくつかの実施形態において、枠組み50は、軸線に沿って伸びる2つの枠組み部材52を含む。所望の用途にしたがって、拡散及び収束するテーパー部分の長さと、それによって定められる角度は、拡張の度合いを増やすために増加させることが可能であり、拡張の度合いを減らすために減らすことも可能である。ある複数の実施形態において、複数の、すなわち5、10、20、又はより多くの枠組み部材52が、軸線に沿って伸びることができ、あらかじめ定められた直径に拡張可能である場合がある。ある複数の実施形態において、枠組み部材52は、枠組み用材料のシート又はチューブから形成されていてもよい。例えば、例えばレーザーでカットされてエッチングされてもよい。また、シート又はチューブを含む枠組み50が、拡張可能部20が拡張した状態になった時に1つ又は2つ以上の枠組み部材52又はその部分が軸線から離れるように伸びることが可能になっていてもよい。ある複数の実施形態において、枠組み50は合金のチューブを含み、当該チューブは、本体に沿ってレーザーエッチングされた、1つ又は2つ以上の長手方向枠組み部材52を含み、拡張可能部20が拡張した状態にある時、1つ又は2つ以上の枠組み部材52が軸線から外側に向かって伸びるようになっている。
【0058】
図8及び9に図示された枠組み部材52は、超弾性材のような記憶材料を含み得る。形状記憶材料のような超弾性材を含む記憶材料は、維持力が解放されると、又は操作されると、記憶形状に拡張又は収縮するように構成されていてよい。超弾性材を取り込んだ枠組み部材52は、それゆえ関連付けられた記憶形状及び関連付けられた維持された形状を有する場合がある。維持された形状はマルテンサイト形態に対応する場合があり、他方、記憶形状はオーステナイト形態に対応する場合がある。例えば、オーステナイト温度において、枠組み部材52は、例えばチャネル内部でマルテンサイト形態に圧縮されて、維持構造体によって維持され得る。また、枠組み部材52は、枠組み部材52は、例えば、シース40の遠位端部から展開されて、維持構造体によって維持されなくなると、より大きな直径を有するオーステナイト形態に戻る。同様に、マルテンサイト温度において、枠組み部材52は、より小さい直径のマルテンサイト形態に塑性変形され得るが、オーステナイト遷移温度に上昇すると、拡張した直径のオーステナイト形態に戻ることができる。同様に、枠組み部材52は、オーステナイト形態において、シース40のチャネル内に受容され、次に、そのオーステナイト形態で、シースの遠位端部から展開される場合がある。ひとたび展開されると、枠組み部材52どうしの間又はその部分どうしの間の距離の相対的減少を含む維持力、又は枠組み部材52又はその部分を軸線から外側に向かうように伸ばす内部の伸びが、枠組み部材52を、より大きな直径を有するマルテンサイト形態に圧縮する又は引っ張ることがある。オーステナイト温度で維持力が取り除かれると、枠組み部材52は、より小さい直径のオーステナイト形態に戻る。マルテンサイト温度で維持力が取り除かれる場合には、変形するような応力をかけるか、オーステナイト温度に上昇させることで枠組み部材52はより小さい直径に戻ることができる。いくつかの実施形態において、枠組み部材52は両方向の記憶を有する。例えば、枠組み部材52は少なくとも2つの記憶形状を含むことがあり、当該少なくとも2つの記憶形状どうしの間を、操作に反応して、移行することができる。例えば、いくつかの実施形態において、枠組み部材52は、低温時の記憶形状及び高温時の記憶形状を有する。それゆえに、枠組み部材52は、温度を関連付けられた遷移温度の上下に変化させることを含む操作を通じて、当該2つの記憶形状の間を移行させることができる。もちろん、当業者ならば本開示から推測できるように、単方向及び両方向の形状記憶には無数のバリエーションがあり、それらは、本明細書で説明した拡張可能部20に所望の移行を実現させるために用い得る。それゆえ、更なる説明を、あらゆる可能なバリエーションについて行うことは必要ない。
【0059】
いくつかの実施形態において、枠組み部材52は、拡張可能部の一部分を占める、ループ状コイル、編組部、又は折畳部が、規則的又は不規則的にグループ化したものとして配置される。さまざまな実施形態において、枠組み部材52は、材料と、向きと、及び/又は荷重が、関連付けられた弾性限界内である場合に、枠組み部材52に記憶形状を与えるための配置と、を有することができる。例えば、枠組み部材52は、関連付けられた記憶形状と関連付けられた弾性限界とを有するばね(例えば、弓形ばね、圧縮ばね、ねじりばね、又は引張ばね)を含み得る。ばねは、荷重をかけたり取り除いたりすることに反応して、1つの次元の寸法を増やしたり減らしたりする。ばねが、軸線周りに巻かれたコイル又はらせん状のものである場合には、拡張可能部20が収縮した状態では、枠組み部材52は、少なくとも部分的に巻きがほどけた状態になり、拡張可能部20が拡張した状態では、枠組み部材52は巻きなおされた状態になり得る。コイル又はらせん状のものを含む枠組み部材52は、例えば、荷重がばねを長手方向に引っ張るような場合に、荷重をかけたりとりのぞいたりすると変化する直径も含み得る。このように、例えば、臨床医は、圧縮ばねを圧縮したり、引張ばねにかかっていた張力を解放したりして、枠組み部材52の直径を大きくすることが可能である。同様に、例えば、臨床医は、圧縮ばねに係っていた圧縮荷重を解放したり、引張ばね張力をかけたりして、枠組み部材52の直径を小さくすることが可能である。このように、枠組み部材52は維持された形状において、例えば直線的又はねじれた、変形性のひずみを受けるが、荷重又は力が取り除かれたり、逆転されたりすると、記憶形状に移行する。
【0060】
図10は、細長部材の遠位部18に沿って配置され、先端部28を有する拡張可能部20を図示している。拡張可能部20は、シース40から展開され、拡張した状態で図示されている。ばねを含むコイル状の枠組み部材52は、軸線周りにループしており、より大きな直径を有する記憶形状で描かれている。なお、図10中、拡張可能部20の直径は、コイルどうしの間のピッチの関数として増加するように構成されていてよいということは理解されるであろう。例えば、ピッチが短くなって、ばねの長さがその密着高さに近づくと、ばねの直径は減少する。図10の拡張可能部20は、枠組み部材52をシース40内で画定されたチャネル(又は別のチャネル)内に撤収させることによって、拡張した状態の拡張可能部20の直径よりも小さい直径を有する収縮した状態に移行させ得る。例えば、近位側への張力が拡張可能部20にかかると、拡張可能部20はチャネル内に受容され、枠組み部材52を長手方向に伸ばし、それにより、ばねの直径が小さくなり、枠組み部材52が維持された形状に移行する。枠組み部材52がチャネル内に維持されると、拡張可能部20の長さは長くなり、拡張可能部20の直径は小さくなる。臨床医は、必要に応じてその後、拡張可能部20をシース40の遠位端部から展開して、拡張可能部20を収縮した状態から(図9に図示されるような)拡張した状態に移行させることができる。拡張可能部20が展開すると、維持力が解放され、枠組み部材52は維持された形状から記憶形状に移行することが可能になる。いくつかの実施形態において、チャネルには、例えば、間を空けた複数の溝、ねじ山、路状物、を設けてもよく、正確なばねの長さ又は正確な数のコイルをチャネルから展開することができるように構成されてもよい。
【0061】
さまざまな実施形態において、枠組み部材52は編組まれて、拡張可能部20の長さ方向に沿って1つ又は2つ以上のバスケットを形成してもよい。1つの実施形態において、枠組み部材52は編組まれて、図11に図示されるような、おおむね円筒状、又はチューブ状の構成になっている。拡張可能部20は、収縮した状態から拡張した状態に移行しながら、同時にシース40の遠位端部から展開しようとするプロセスにあるのが図示されている。枠組み部材52は、導電性編組部を備えるが、当該導電性編組部は、それに関連付けられた、維持された形状と記憶形状とを有する。枠組み部材52は、維持力が取り除かれると記憶形状に拡張し、それにより拡張可能部20を、収縮した状態から拡張した状態に移行させるように構成されている。例えば、拡張可能部20が拡張した状態にある場合には、近位側に撤収され、より小さい直径を有するチャネル内に受容され、収縮した状態に移行され得る。拡張可能部20が近位側、直径の小さいチャネル内に撤収されると、編組部の長さを長く、直径を小さくするような引張応力が編組部にかかる。その後、チャネルの小さい直径が圧縮力を編組部にかけつづけ、編組部内の引張応力を維持する。拡張可能部20が収縮した状態では、拡張可能部20はチャネル内を通り組織処理領域に送達されることが可能である。ひとたび拡張可能部20が組織処理領域に送達されると、拡張可能部20はシース40の遠位端部から展開され、それによって編組部の圧縮が解け、引張応力が低減される。その結果、編組部はその長さを短くし、その直径周りに拡張し、編組部は維持された形状から記憶形状に移行する。このように、維持力を取り除くと編組部内の引張応力が低減し、編組部の長さの減少と編組部の直径の増加が結果として起こる。このようにして、維持力を取り除くと、拡張可能部20は収縮した状態から拡張した状態に移行する。
【0062】
追加的な実施形態において、枠組み部材52は、枠組み部材52の1つ又は2つ以上の同心コイル(例えば、ループ又はラップコイル)が、軸線周りに配置されたものであってよい。コイルの外側の束は、コイルの内側の束に対して、相対的に回転可能であってよく、そうすることで、コイルの束が相対的回転することによって拡張可能部20が、収縮した状態と拡張した状態との間を移行するようになっていてよい。そのような枠組み部材52は、関連付けられた記憶形状と関連付けられた維持された形状とを更に有していてよい。そうすることで、コイルの束が相対的回転することが維持力を有し、拡張可能部20を拡張した状態から収縮した状態に移行させる。維持力を解放すると、拡張可能部20は、収縮した状態から拡張した状態に移行するようになる。しかしながら、他の実施形態においては、コイルの束どうしの相対回転は、移行させる拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させる場合があり、維持力を解放すると、拡張可能部20は拡張した状態から収縮した状態に移行する。理解されるべきである互いに相対回転可能な複数の束を複数のコイルが含むことと、拡張可能部20の長さに沿って存在するさまざまな直径を、拡張可能部20の直径がさまざまな用途を満たすように調整するために用いられ得るということとは理解されるべきである。
【0063】
さまざまな実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は可動部位を含む。可動部位は、枠組みカプラー及び/又は可動要素を含み得る。また可動要素は、細長部材18の周りに又はそれに沿って配置されたリング、ブロック、又はカラーを含む。可動部位は、例えば、路状物に沿って摺動可能であってよく、ねじ山の周りに回転可能であってよく、又は距離細長部材18の距離に沿って移動可能であってよい。細長部材18及び/又は拡張可能部20は、調節可能な距離を更に有していてよいが、可動部位が実際に細長部材18に沿って物理的に移動するのではなく、むしろ、当該可動部位と他の可動部位との間の相対距離、当該可動部位と細長部材18に沿ったある位置との間の相対距離、又は、当該可動部位の軸線に対する相対距離の増減の結果として動くようになっている。例えば、細長部材18は、距離を調節すると、第1可動部位が第2可動部位に対して相対的に移動する結果になるような調節可能な距離を含み得る。ある複数の実施形態において、可動部位間の距離は、例えば、調節可能な距離の折り畳まれている、又は入れ子になっている部位を伸ばしたり後退させたりすることで調節され得る。伸ばす又は後退させることは、例えば、相対的回転、付勢力の解放、及び/又は2つの部位の間に逆向きの又は相対的な力をかけることにより実現され得る。1つの実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は、ブロック、リング、カプラー、又は当接面を有するその他の要素のような可動部位を備える当該要素は、細長部材18に沿って移動可能であり、枠組み部材52に当接するように構成されていてよい。いくつかの実施形態において、当該要素の移動により、圧縮応力が枠組み部材52にかかり、又は圧縮ひずみが緩和されるようになっている。さまざまな実施形態において、プーリ又はギアも、可動部位を動かすために用いてよい。例えば、可動部位は、細長部材18に沿って画定されているトラックに沿って乗っていてもよい。可動部位を動かすように、又は、例えば、細長部材18の一部分を入れ子にすることで、可動部位どうしの間の細長部材18の長さを調節するように構成されているギアを、上記のトラックは含んでいてもよい。
【0064】
さまざまな実施形態において、枠組み部材52は、細長部材18に対して動くことができるようになっていてよい。1つ又は2つ以上の枠組み部材52又はその複数の部分が、細長部材18に沿って摺動する、又は細長部材18に対して回動するように構成されていてよい。例えば、枠組み部材52の第1部分が細長部材18に第1位置で固定又は回動可能に固定され、枠組み部材52の第2部分が細長部材18に第2位置で固定又は回動可能に固定されていてよい。図12は、拡張した状態の拡張可能部20の1つの実施形態を図示している。拡張可能部20は、細長部材18の遠位部に沿って配置された、複数の経線的枠組み部材52を備える。簡略化のため、2本の経線的枠組み部材52のみが図示されている。経線的枠組み部材52は、近位カプラー54を含む近位可動部位と、先端部28に隣接した遠位カプラー56との間を軸線に沿って伸びる。近位カプラー54は、回転可能部位を含む。当該回転可能部位は、細長部材18の周囲に設けられたねじ山60の上を回転しながら、細長部材18に沿って移動することができる。近位カプラー54が第1方向に回転すると、近位カプラー54を近位側に動かす。近位カプラー54が第2方向に回転すると、近位カプラー54を遠位側に動かす。近位カプラー54の、近位側への動きと遠位側への動きは、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きに対応する。1つの実施形態において、近位カプラー54が遠位側に動くと、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の距離が短くなり、圧縮応力が、経線的枠組み部材52にかかる。圧縮応力は変形性ひずみを引き起こすが、それは、経線的枠組み部材52を軸線の外側に向かって弓形に曲げることによって見ることができる。かくして、拡張可能部20の直径が大きくなる。あるいは、近位カプラー54が近位側に動くと、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の距離が長くなり、圧縮応力が軽減される。圧縮応力が軽減されると、経線的枠組み部材52が内側に向けて緩み、軸線に沿って長手方向に整列する。かくして拡張可能部20の直径が小さくなる。他の実施形態において、近位カプラー54が近位側に動くと、引張応力が経線的枠組み部材52にかかり、変形性ひずみを引き起こすが、それは、経線的枠組み部材52が内側に位置を取ることによって見ることができる。かくして、拡張可能部20の直径は小さくなる。あるいは、近位カプラー54が遠位側に動くと、引張応力が軽減され、経線的枠組み部材52は軸線の外側に向かって緩むことができる。かくして拡張可能部20の直径が大きくなる。いくつかの実施形態において、圧縮応力は維持力を含み、近位カプラー54は維持構造体を備える。このように、記憶形状にある時、経線的枠組み部材52は内側に向かって伸びることができ、又は軸線の外側に向かって弓形に曲がることができる。維持された形状にある時は、経線的枠組み部材52は、軸線の外側に向かって弓形に曲がるように圧縮され、又は真っ直ぐになり、軸線に向かって内側に径方向に整列するように引っ張られ得る。いくつかの実施形態において、枠組み部材52は、近位カプラー54又は遠位カプラー56の回転に対応して、回転することはない。例えば、カプラーは、枠組み部材52の第1部分を枠組み部材52の第2部分に対して圧縮するように構成されている当接面を含み得る。ある複数の実施形態において、カプラーは、その上では枠組み部材52の第1部分が、枠組み部材52の第2部分に対して軸方向の位置を保つことができるようなトラックを含み得る。同様に、カプラーは、枠組み部材52の第1部分がその上に結合されるスリーブを含み得る。スリーブは、ベアリング上のカプラーの内側部分の周りに回転可能であり、枠組み部材52の第1部分は、カプラーの内側部分の動きに対応する軸方向の位置を維持することが可能になる。
【0065】
近位側及び遠位側という方向は、本明細書に開示されるシステム、デバイス、及び方法の理解を助けるために与えられているということは理解されるべきである。ある実施形態において、拡張可能部を移行させるという目標が同じであるように、方向及び/又は配置を逆にすることが可能である。例えば、遠位カプラー56は、例えば遠位カプラー56の近くに設けられたねじ山の上を、回転しながら動くようになっていてもよい。そのような方向に関するバリエーションは、本開示から逸脱しない。実際、1つの実施形態において、近位カプラー54及び遠位カプラー56は、細長部材18の表面上に設けられたねじ山上を回転することが可能になっている。同様に、他の実施形態においては、遠位カプラー56が細長部材18に沿って、カチカチと音をさせながら動くことができるようになっている。更なる実施形態においては、枠組み50の配列及び/又は拡張可能部20のシリーズが、細長部材18の遠位部に沿って配置され得る。枠組み50の配列及び/又は拡張可能部20のそのようなシリーズは、望ましい用途のために構成されており、生物学的管腔内又は処理される部位内に、カスタム化したアブレーションゾーンを提供することができる。
【0066】
図13は、4つの部材からなるバスケットを備える拡張可能部20の実施形態を図示している。枠組み部材52は、近位カプラー54及び遠位カプラー56で結合されている。近位カプラー54は遠位カプラー56に対して相対的に動くことが可能であるが、カプラー54、56間の距離が短くなると、図14に示すように、拡張可能部20の直径が大きくなり、カプラー54、56間の距離が長くなると、図13に示すように、拡張可能部20の直径が小さくなる。図14に図示するように、枠組み部材52が拡張した状態では、枠組み部材52は、その有する近位側テーパー部分26a及び遠位側テーパー部分26bがなす劣角の大きさが約80度である。いくつかの実施形態において、拡張の度合いは、長さ26a、26b及びそれらがなす角度の関数である。例えば、長さ26a、26bを長くすると、拡張の度合いが大きくなり、長さ26a、26bがなす角の大きさを小さくすると、拡張の度合いが小さくなる場合がある。いくつかの実施形態において、細長部材18を近位カプラー54に対して後退させると、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の距離が短くなり、細長部材18を近位カプラー54に対して前進させると、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の距離が長くなるように、細長部材18の一部分が近位カプラー54を通じて移動可能であり、遠位カプラー56に対しては固定されていてよい。したがって、細長部材18が近位側に撤収された場合、遠位カプラー56は近位側に動き、枠組み部材52は圧縮され外側に向かって弓形に曲がり、拡張可能部20の拡張した状態に対応する、維持された形状になる。同様に、枠組み部材52は、拡張可能部20の拡張した状態に対応する記憶形状を有することができる。その場合には、細長部材18が近位側に撤収された際に、遠位カプラー56が近位側に動き、枠組み部材52が内側に引っ張られ真っ直ぐになり、拡張可能部20の収縮した状態に対応する維持された形状になる。枠組み部材52が、図14に図示されるように圧縮されると、その結果枠組み部材52は径方向に軸線の外側に向かって弓形に曲がるようになり、拡張可能部20の直径が大きくなる。所望の用途によって、1本の軸線に沿って配列された、複数の枠組み部材52の多くの構成は、応力に反応して、曲がる、屈曲する、変形する、またそうでなければゆがむように構成されていてよい。例えば、枠組み部材52は、図9に示されたのと類似のバスケットを形成するように、2箇所以上の位置で曲がる、屈曲する、変形する、またそうでなければゆがむように構成されていてよいいくつかの実施形態において、5、6、8、15、又はそれより多くの枠組み部材52が設けられて、例えば、複数の位置で、曲がる、屈曲する、変形する、またそうでなければゆがみ、拡張した状態で特別な形をとるようになっている。
【0067】
図15は、拡張可能部20のさらに他の実施形態を図示している。この実施形態において、枠組み部材52どうしの間の相対的動きにより、笠のように拡張可能部20が拡張される。特に、延長部材53を備える1つ又は2つ以上の枠組み部材52が設けられる。延長部材53の第1端部53aは、近位カプラー54に回動可能に結合され、細長部材18の長さに沿って位置することができる。延長部材53の第2端部53bは、リブ51を含む1つ又は2つ以上の追加的な枠組み部材に回動可能に結合されている。リブ51は可撓性のある材料(例えば、弾力性がある、接合された枠組み部材のシリーズ、又は、可撓性のあるカバーの一部)からなり、又はいくつかの実施形態においては、剛性のある材料からなっていてよい。延長部材53が伸びると、リブ51の一部分が軸線の外側に向かって伸びるように、リブ51は、遠位先端部28に隣接する遠位カプラー56で細長部材18に固定的に結合されていてよい。延長部材53は好ましくは、例えば、リブ51を軸線の外側に向かって、屈曲させる、曲げる、又はスイングさせることによって、リブ51を伸ばすのに十分な剛性を有している。図示された実施形態において、収縮した状態と拡張した状態との間を移行することは、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きを含む。例えば、収縮した状態から拡張した状態に移行することは、カプラー54、56間の距離が短くなることを含む。カプラー54、56間の相対的動きは、任意の好適なやり方で実現されてよい。例えば、1つの実施形態において、臨床医は、細長部材18の入れ子になっていて、遠位カプラー56を含む部位を近位側に、ハンドル(不図示)上に設けられたアクチュエータを用いて引っ張ることで、近位カプラー54を遠位側に位置させることができる。図16は、図15に描かれた拡張可能部20が拡張した状態の実施形態を図示している。理解できるように、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きに反応して、延長部材53がリブ51に対して、つっかえ棒のようになって、リブ51を軸線の外側に向かって伸びる。この実施形態において、近位カプラー54は回転可能部位を含み、当該部位は、細長部材18の隣接する表面周りに設けられたねじ山60上を回転する。延長部材53は、近位カプラー54を遠位側に回転させることにより伸びることが可能であり、且つ近位カプラー54を近位側に回転させることにより縮ませることが可能である。さまざまな実施形態において、近位カプラー54は、近位側に又は遠位側にカプラー52を細長部材18に沿って摺動させることによって、位置を変更することが可能になっている。追加的な実施形態において、第2延長部材又は第3延長部材が、第1延長部材53に関連付けられていてよい。例えば、第2延長部材は、第1延長部材の中央部分に回動可能に結合されている第1端部とリブ51のような追加的な枠組み部材に回動可能に結合されている第2端部と、を有していてよい。第3延長部材は、同様に構成されていてよい。第2延長部材及び第3延長部材は、追加的な構造体を提供し、及び/又は拡張可能部20へのサポートを提供し、より大きく拡張させることができる。他の実施形態においては、延長部材53は、リブ51と係合し、それを支えて上げるように構成された係合面を有するくさびであってよい。例えば、くさびと遠位カプラー56との距離が短くなるにつれて、くさびは次第にリブ51の下側に沿って動くようになり、リブ51を軸線の外側に向かってスイングさせて、拡張可能部20の直径を拡張させる。
【0068】
図18は、2つの回動可能に結合した枠組み部材52a、52bを備える拡張可能部20のさらに追加的な実施形態を図示している。拡張可能部20は、わずかに拡張した状態で描かれている。枠組み部材52a、52b隣接する端部で、接合部62(例えば、蝶番、ピン、又は可撓性のある部位)の周りを回動可能に結合されている。それぞれの枠組み部材52a、52bは、それぞれ近位カプラー54及び遠位カプラー56で細長部材18に、追加的な接合部62の周りを回動可能に結合されている。近位カプラー54及び遠位カプラー56は、互いに対して相対的に動くことが可能である。この実施形態において、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させることは、近位カプラー54及び遠位カプラー56を相対的に動かすことを含み、且つ細長部材18の介在する部分を入れ子にすることを含む。例えば、細長部材18の遠位部を近位部内に入れ子にすると、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の距離が短くなり、枠組み部材52a、52bの隣接する端部が外側に回動し、拡張可能部20の直径が大きくなり、それにより拡張可能部20が拡張される。逆に、細長部材18の遠位部を近位部内から出すと、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の距離が長くなり、枠組み部材52a、52bの隣接する端部が内側に回動し、拡張可能部20の直径が小さくなり、それにより拡張可能部20が収縮される。簡略化のため、図18には2つの結合された枠組み部材52a、52bしか含まれていないが、しかしながら、追加的な枠組み部材も枠組み部材52a、52bと同様に結合してよい。例えば、第3枠組み部材が、図18に図示されている2つの枠組み部材52a、52bの間に、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的な動きが、第3枠組み部材を軸線の外側に向かって、比較的軸線と平行に伸展させるように、結合されてもよい。同様に簡略化のため、図18は、結合される枠組み部材52a、52bのセットを2つだけ示しているが、追加的な実施形態において、結合される枠組み部材52a、52bのセットを、細長部材18の周囲周りに3つ以上設け、拡張した状態での拡張可能部20の直径を更に大きくすることができる。
【0069】
ある複数の実施形態において、枠組み部材52は、細長部材18に第1位置で動作可能に結合されたコイルを含んでいてよい。そのような実施形態において、第1位置と第2位置との間の相対的な逆回転は、少なくとも部分的にコイルの巻を緩め、拡張可能部20の直径が大きくなることに対応する。例えば、枠組み部材52が、右巻きのコイル又はらせん構造である場合、近位位置が遠位位置に対して時計回りに回転すると、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させ、その一方で、近位位置が遠位位置に対して反時計回りに回転すると、拡張可能部20を拡張した状態から収縮した状態に移行させる。同様に、枠組み部材52が、左巻きのコイル又はらせん構造である場合、遠位位置が近位位置に対して時計回りに回転すると、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させ、その一方で、遠位位置が近位位置に対して反時計回りに回転すると、拡張可能部20を拡張した状態からより収縮した状態に移行させる。同様の実施形態において、近位位置と遠位位置との間の長手方向の距離も調節可能になっている。例えば、近位位置は、遠位位置に向かって摺動可能になっていてよく、そうすることで両者の距離を短くすることができる。1つの実施形態において、2つの位置のうち一方又は両方が、細長部材18周りで、ねじ山上を回転可能になり、それぞれの位置が回転することで、近位位置と遠位位置との間の距離を長くしたり短くしたりできるようになっている。他の実施形態においては、2つの位置のうち一方又は両方が、カチッと音を立てながら又は滑りながら、細長部材18に沿って位置することができるようになっている。拡張可能部20の長さに沿ったさまざまな直径が調節されて、さまざまな用途を満足するように、コイルは多くの位置で回転可能であることは理解されるべきである。
【0070】
図18は、コイル状の枠組み部材52を備える、収縮した状態の拡張可能部20の1つの実施形態を図示している。コイルは、遠位先端部28に隣接する遠位カプラー56で細長部材18に結合されているが、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させることは、図19に図示されるように、遠位カプラー56と枠組み部材52の近位位置58との間の逆回転を含む。コイルは、シース40に対して近位側に結合又は固定されてよいということ、又は近位側に、遠位カプラー56の回転とは独立に、結合又は固定されてよいということは、理解されるべきである。図19は、図18に図示した拡張可能部20の、遠位カプラー56がコイルの近位部58に対して複数回時計回りに回転した後の、拡張した状態の実施形態を図示している。本実施形態によれば、遠位カプラー56がコイルの近位部58に対して反時計回りに回転すると、拡張可能部20は拡張した状態からより少なく収縮した状態に移行する。図20は、図18及び19に描かれた拡張可能部20の、拡張可能部20の拡張の度合いを、その長さを短くすることで、大きくする方法を含む更なる実施形態を図示している。例えば、臨床医は細長部材18の一部分をシース40内に撤収することができる一方で、その遠位端部から展開された、枠組み部材52の長さを維持することができる。このようにして、拡張可能な寸法は多くの所望の用途の任意のものに適応するように、更にカスタマイズすることができる。
【0071】
図21は、細長部材18の遠位部に沿って伸びる、チューブ状の編組部に適応されている枠組み部材52を備える拡張可能部20を図示している。拡張可能部20は、部分的に展開された位置及び収縮した状態で図示されている。編組部の近位端部は、近位カプラー54に結合されている(切り欠き図で示す)。編組部の遠位端部は、遠位先端部28に隣接する遠位カプラー56に結合されている。この実施形態において、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きによって、拡張可能部20が収縮した状態と拡張した状態との間を移行する。とりわけ、いくつかの実施形態において、シース40が設けられてよく、ある例においては、少なくとも部分的に、シース40は近位カプラー54として用いられている。例えば、図22に図示されるように、遠位カプラー56が、近位カプラー54に対して相対的に、近位側に動くと、編組部が圧縮される。枠組み部材52を編組部に適応させたので、圧縮応力に反応して、編組部内の枠組み部材52の個々の重なり合いどうしの間の距離を大きくするようにして、編組部を緩めることが可能になっている。展開された編組部の長さは、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きほどは減らないので、拡張可能部20のある寸法、この例では直径は増加する。あるいは、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きの結果、カプラー54、56間の距離が長くなった場合、枠組み部材52にかかる張力が編組部を緩め、拡張可能部20の直径を小さくして、より少なく拡張した状態にする。いくつかの実施形態において、拡張した状態から収縮した状態に完全に移行することは、編組部にかかる引張応力が、あらかじめ定められた直径まで編組部を収縮させるのに十分であるように、近位カプラー54と遠位カプラー56との間の相対的動きが、2つのカプラー間の距離を長くすることを含む。
【0072】
図23は、図21及び22に図示した拡張可能部20の、拡張の度合いをカスタム化するための追加的な特徴を含む更なる実施形態を図示している。この実施形態において、臨床医は、近位カプラー54と遠位カプラー54との間の距離を調節することによって、拡張可能部20が拡張する程度を選択的に制御又は選択することができる。理解できるように、カプラー54、56間の距離が短くなると、拡張可能部20の直径が長くなり、カプラー54、56間の距離が長くなると直径が短くなる。このように、臨床医は、拡張可能部20の直径を有利に制御することができる。更に、少なくとも部分的に近位カプラー54として用いられるシース40が提供された場合には、臨床医は、展開された拡張可能部20の長さが短くなったのを、拡張可能部20の直径を長くするように圧縮されることができる(枠組み部材52のような)追加的な拡張可能部20を展開することで補完することができる。
【0073】
既に述べたように、近位カプラーのような枠組み部材50の近位部を含む第1可動部位と、遠位カプラーのような枠組み部材52の遠位部を含む第2可動部位との間の相対的動きを実現するために、1つ又は複数の方法が用いられてよい。例えば、いくつかの実施形態において、臨床医は作動させるための信号を送るためのインターフェイスを用いても、又は第1部分と第2部分との間の相対的動きに直接関与してもよい。作動信号は、機械的及び/又は電気的要素によって実現される移行のトリガーとなる。ある複数の実施形態において、アクチュエータは、枠組み部材52の位置及び/又は細長部材18の部分を、手動で伸ばす又は後退させるように構成されている操作子を含む。信号は、例えば、図12に示したように、ねじ切りをされたトラック周りにカプラーが回転するという結果をもたらす場合がある。あるいは、信号は、例えば図14に示したように、第1可動部位が第2可動部位に対して相対的に摺動するという結果をもたらす場合がある。細長部材18は、長手方向にトラック又はレールが設けられていてもよい。そうすると、当該トラック又はレール上を第1及び/又は第2可動部位が移動することができる。いくつかの実施形態において、例えば図17に示したように、第1可動部位と第2可動部位との間に介在する細長部材18の部分の長さを、望遠鏡のように隣接する長さ部分と入れ子にしたり、折り畳んだりして、短くすることができる。このように細長部材18の介在する部分の長さを短くすることは、介在する部分を伸ばす又は後退させるように構成されている付勢部材を用いることで容易になる。ある複数の実施形態において、枠組み部材52及び/又は細長部材18には、それらの部分を相対的に動かすように構成されているギアが設けられる場合がある。
【0074】
図24は、さまざまな実施形態に係る、拡張した状態の拡張可能部20を図示している。拡張可能部20は、バスケットを画定する熱応答性形状記憶材料を含む複数の枠組み部材52を備える。枠組み部材52は軸線に沿って伸びる。各々の枠組み部材52は、直線部分27bと、その両側部をなす、遠位側テーパー部分27c及び近位側テーパー部分27aを含む。図示されているように、それぞれの枠組み部材52の近位側テーパー部分27aは、第1角度で軸線から拡散する。それぞれの枠組み部材52の遠位側テーパー部分27cは、第2角度で軸線に向かって収束する。理解できるように、拡張の度合いは、テーパー部分27a、27cの長さと、それぞれが軸線から拡散又は軸線に向かって収束する程度との関数である。例えば、テーパー部分27a、27cの長さを長くすると、拡張可能部20の直径が長くなる。また、拡張の度合いは、拡散及び収束の度合いが角度90度に接近するにつれて大きくなる。いくつかの実施形態において、そのような直径の拡張は、拡張可能部20の長さが短くなることも伴う。図25に図示されるように、拡張可能部20が収縮した状態にあるとき、拡張可能部20は、シース40内で画定されたチャネルによって受容されうるように、近位テーパー部分27a、直線部分27b、及び遠位テーパー部分27cは、比較的直線的に軸線に沿って伸びる。
【0075】
図24及び25に図示される実施形態においては、枠組み部材52は両方向記憶性を示す。すなわち、枠組み部材52は少なくとも2つの記憶形状を含み、当該少なくとも2つの記憶形状どうしの間を、温度の変化に反応して、移行することができる。低い遷移温度以下では、枠組み部材52は低温時形状をしている。高い遷移温度以下では、枠組み部材52は高温時形状をしている。所望の用途によって、低温時形状は拡張した状態又は収縮した状態の一方に対応し、高温時形状は拡張した状態又は収縮した状態の一方に対応する。臨床医は、ハンドル(不図示)の上に位置するアクチュエータを介して、温度を変化させることを含む信号を送り移行作業を作動させることができる。作動すると、その結果として、枠組み部材52の温度を上昇させるのに十分な、振動のようなエネルギーが、枠組み部材52へと運搬され得る。こうして、高温時形状への移行が実現される。いくつかの実施形態において、作動することは、生物学的環境に展開をすることを含み得る。例えば、遷移温度は、生体温度以下に設定されると良い。そうすることで、枠組み部材52が生体温度にさらされると、拡張可能部20が移行を実行する。
【0076】
いくつかの実施形態において、シース40が設けられず、電極21は標的領域に、その他の送達デバイスの中で送達され得る。そのような実施形態のいくつかにおいて、電極21は、むき出し、すなわち人工的チャネルの中以外で、標的領域に送達され得る。これら及びその他の実施形態において、電極21は、細長部材18を生物学的開口部又は管腔を通じて前進させることにより、標的領域に送達され得る。ひとたび標的領域に送達されると、作動信号に反応して、電極21が拡張され得る。図26に図示される電気的アブレーションデバイス12は、標的領域に、人工的送達チャネル内又はむき出しで送達され用いられるように構成されている。デバイス12は、ハンドル14を含み、当該ハンドル14を通って導電性細長部材18が伸びる。細長部材18は、ハンドル14の近位端部の近くに、細長部材18を電源(不図示)につなぐためのコネクタ19を備える。細長部材18は、ハンドル14の遠位端部から遠位側に伸びる。細長部材18は、その長さの遠位部に沿って配置される電極21と、遠位先端部28とを含む。電極21は、拡張可能部20を含み、拡張可能部20は、図24に図示された実施形態と同様のバスケット状に配列された複数の枠組み部材52を含む。ハンドル14は、拡張可能部20を収縮した状態と拡張した状態との間で、任意の好適な方法により移行させるように構成されている、アクチュエータ31を備える。
【0077】
さまざまな実施形態において、細長部材18はその全長又はその全長の一部が、可撓性を有し得る。そのような可撓性のある部位は、例えば屈曲可能であり、変形可能であり、又は弾力性がある。可撓性のある部位は、ある条件下で可撓性のあるもの、又はある条件下では剛性のあるもの、であってもよい。いくつかの実施形態において、細長部材18は可撓性のある部位を含み、細長部材18の当該部位は、信号に反応して回動するように、又は他の形で操作できるように、機械的に屈曲可能であってよい。1つの実施形態において、細長部材18は操縦可能部を含む。操縦可能部は、例えば、血管系、導管系、空洞、開口部、又は器官管エリア、のような生物学的管腔内で操作して、電極21を目標とする部位に送達するように構成されている。1つの実施形態において、心臓用カテーテルのプラットフォームは1つ又は2つ以上の電極21を備える。電極21は、可撓性のある及び/又は操縦可能な細長部材18の遠位部に沿って配置されている。細長部材18は、1つ又は2つ以上の電極21を心房・心室内、血管内、又は心臓の表面に送達し、例えば心房性細動の治療のために処理するスポットを心内膜的にアブレートするように構成されている。1つ又は2つ以上の電極21は、収縮した状態と拡張した状態との間で、選択的に拡張可能であってよい。いくつかの実施形態において、複数の電極21が細長部材18の遠位部に沿って距離を空けて配置され、心臓組織に、厳密に制御された電場内でエネルギーを送達するようになっている。そのような実施形態のいくつかにおいて、細長部材18の遠位部に沿った電極21間の距離は、特定の手術に適するように調節可能である。
【0078】
図27を参照して、さまざまな実施形態に係る心臓カテーテルのプラットフォームが図示されている。当該プラットフォームはカテーテルアセンブリを備える。当該アセンブリは、細長部材18の遠位部に沿って配置された電極21を備える。当該プラットフォームはハンドル14を更に備え、当該ハンドル14は、映像を見ながら、細長部材18及び電極21を操縦して心臓内に至らせ、心房性細動治療のための処理として、心臓のさまざまな点領域を心内膜的にアブレートするように構成されている。図示された実施形態において、細長部材18は、細長部材18の遠位端部に位置する、長い絶縁された先端部28を装備している。先端部28は、細長部材18及び電極21を、組織処理領域に、誘導し、舵を取り、巧みに通り抜けて到達させる臨床医の能力を有利に高めるように構成されていてよい。さまざまな実施形態において、心臓カテーテルのプラットフォームは拡張可能部20を備え得る。当該拡張可能部20は、ある他の実施形態と比べて、その長さが長くなっている。長さが長いことはある処理の用途において、臨床医が所望の焼灼線に沿って、アブレーションする点を接続するのがより容易にできるという点で、有利となり得る。いくつかの実施形態において、既に述べたように、拡張可能部20は調節可能な長さを有し、拡張可能部20を特定の外科的用途に柔軟に適合させるように、カスタム化するようになっている。いくつかの実施形態において、長さは、組織処理される部位で又はその付近で便利に調節できるようになっている場合もある。こうした特徴により、臨床医が、電極21を拡張した長さを調節することを可能にして、アブレーションするポイントを繋いでいくのに際して、手術中に長さを適合させつつ行うことを可能にし、カテーテルを完全に引き抜いてしまう必要性をなくしたので、処理にかかる時間が有利に短縮される。再び図27を参照すると、図示される心臓カテーテルを備えるシステムは、エネルギー源(不図示)と結合される第2電極22(不図示)を更に備えていてよい。第2電極22は、リターンパッド、針、クランプ具、第2プローブ、又は、細長部材18の遠位部に沿って配置される第2電極であってよい。
【0079】
図28Aは、さまざまな実施形態に係る、アブレーション療法を行った後の、アブレーションゾーンの写真を含む。本明細書に説明される血管内アプローチを用いて、電極21が豚の肝臓の導管系内に配置され、リターン電極である第2電極22は、皮膚上に配置された。図から分かるように、アブレーション処理の後では、アブレーションゾーン80が、血管を囲んでいた。リターン側のサイトの周辺の組織に、病変化した部分又はやけどは見られなかった。図28Bは、さまざまな実施形態に係る、アブレーション療法を行った後の、アブレーションゾーン80の写真を含む。本明細書に説明される血管内アプローチを用いて、電極21が豚の肝臓の導管系内に配置され、第2の針電極22が、肝実質組織内に配置された。図から分かるように、アブレーション処理の後では、アブレーションゾーン80が、血管を囲んでいた。図29は、さまざまな実施形態に係る、アブレーション療法を行った後の、心内膜アブレーションゾーン80の写真を含む。本明細書に説明される血管内アプローチを用いて、電極21豚の心臓組織に接触させられた。アブレーション処理の後で、心臓の組織に沿った処理部位の線を含む、アブレーションゾーン80が観察できた。
【0080】
さまざまな実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は、光学機器類、アプリケータ類、センサ類のようなアクセサリー類も含む。例えば、変換器又はセンサが、ハンドル14に、先端部28に、又はその他の例えば、電極21を拡張するのに必要な力を検知するのに好適な位置に、配置されてよい。このフィードバック情報は、電極21が生物学的管腔内の、組織処理される部位に又はその付近に、適切に配置されたかどうかを判定するために有益であり得る。拡張可能部20を手動操作で作動させることは、同様に、拡張可能部20を完全に拡張するのにどのくらいの力が必要かについて、臨床医にフィードバックを提供しうるものである。このように、臨床医は、拡張可能部20を完全に拡張することが不要であり、又は無用な外傷を引き起こしかねないと判断する場合もある。その場合には、拡張の度合いを調節することができる。ある複数の実施形態において、臨床医が、いつ電極21が、組織処理される部位に又はその付近に配置されたかを物理的に知覚できるように、フィードバックが提供される。いくつかの実施形態において、トランスデューサ又はセンサにより提供されるフィードバック情報は、エネルギー源11の内部又は外部のいずれかに位置した回路により処理され表示されることができる。センサの値は、例えば、電極21が組織処理される部位に又はその付近に適切に配置されたかどうかを判定するために用いられてよい。そうすることで、電極21を配置するにあたり、好適な誤差の範囲が確保できるようになった。センサの値は、例えば、所望の結果を得るために、患者の筋肉の収縮の強度を落とす等、パルスのパラメータを調節することが必要かどうかを判定するために用いられてもよい。
【0081】
1つの実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は、電解質アプリケータを備えるアクセサリー類を含む。電解質アプリケータは、外因性電解質を組織処理される部位に又はその付近に塗布又は送達するように構成されていてよい。電解質アプリケータは、送達部及びリザーバ部を含んでいてよい。いくつかの例において、送達部は、リザーバ部を含んでいてよい。リザーバ部は送達される電解質を収容するように構成されていてよい。送達部は、組織処理される部位に又はその付近に、電解質を送達するように構成されていてよい。いくつかの実施形態において、送達部は、細長部材18又はシース40に隣接する、又は内部に存在するチャネルを含む。1つの実施形態において、送達部は先端部28を備える。臨床医は、例えば送達部から電解質を送り出すために、ハンドル14上に配置されたアクチュエータを作動させることができる。ある複数の実施形態において、送達部は、管腔又は人工的チャネルから、電極21とは独立に展開され得るようになっていてよい。いくつかの実施形態において、送達部、リザーバ部、又は電解質アプリケータが、電気的アブレーションシステム10とは別体になっていてよい。さまざまな実施形態において、電解質アプリケータの送達部は、電解質の水溶液を処理エリアに、処理に先立って又は処理の最中に、導電性を高めるために塗布してよい。しかしながら、他の実施形態においては、液体が加えられるのではなく、又は別の若しくは同じアクセサリー類が、処理エリアに、例えば、処理に先立って又は処理中に流体を取り除くように、吸引を適用するように構成されていてよい。
【0082】
ある複数の実施形態において、温度センサ及び圧力センサのうち少なくとも1つが、電気的アブレーションシステム10内又はその近くに配置されていてよい。温度センサ及び/又は圧力センサは、ハンドル14、保護スリーブ38、シース40、又は細長部材18の内部に配置されていてよい。あるいは、先端部28のような、細長部材18の遠位端部に、又は1つ又は2つ以上の電極21内部に配置されてもよい。ある複数の実施形態において、温度センサ及び/又は圧力センサは、電気的アブレーションシステム10とは別体になっている温度センサ及び圧力センサは、電場パルスを望ましくない組織に当てるために、操作者、外科医、又は臨床医に対してフィードバックを提供してもよい。圧力及び/又は温度に関する情報は、周辺の健康な組織に有害な熱の影響を全く与えずに又はできるだけ少なく与えながら、望ましくない組織が処理できているかどうかを判定するのに有益であり得る。ある実施形態によれば、温度センサは、組織処理領域の温度、望ましくない組織の温度、又は1つ又は2つ以上の電極の周辺エリアの温度を、手術に先立って、手術中に、及び/又は手術が終わってからも計測してよい。例えば、電気的パルスの第1シーケンス及び/又は第2のシーケンスが組織に送達される前及び/又はその後で温度を計測してもよい。ある実施形態によれば、圧力センサは、組織処理領域の圧力、電極間の空間の圧力、及び/又は1つ又は2つ以上の電極の周辺エリアの圧力を、手術に先立って、手術中に、及び/又は手術が終わってからも計測してよい。例えば、電気的パルスの第1シーケンス及び/又は第2のシーケンスが組織に送達される前及び/又はその後で圧力を計測してもよい。
【0083】
電気的アブレーションシステム10は、デリケートなゾーン、又は重要な構造部の近くにある望ましくない組織をアブレートするために用いられ得る。また電気的アブレーションシステム10は、血管系、導管系、器官管エリアといった生物学的管腔を通じて展開され得る。電気的アブレーションシステム10は、電気的エネルギーを用いて、組織処理領域内の、転移性の病変、腫瘍、骨折、感染部位、及び炎症を起こした箇所を含む、多くの病変及び骨病部位を処理するように構成されていてよい。電気的アブレーションデバイス12は、例えば、口、肛門、及び膣のような、患者の人体の自然の開口部内に位置させるように構成されてもよい。及び/又は、電気的アブレーションデバイス12は、例えば、食堂、胃、腸、結腸、子宮頚部、及び尿道といった、体内の管腔又は空洞を通って進み、組織処理領域に到達するように構成されていてよい。例えば、細長部材18は、トロカールを使用して、患者の皮膚又は腹壁を通して形成された小切開部又はキーホールを通して配置及び通過させ、組織処置領域に到達するように構成してもよい。組織処置領域は、脳、肺、乳房、肝、胆嚢、膵臓、前立腺内、食道、胃、腸、結腸、動脈、静脈、肛門、膣、子宮頚部、輸卵管及び腹膜腔により画成される様々な体内管腔内に位置し得る。電気的アブレーションシステム10は、内視鏡、腹腔鏡、胸腔鏡、小切開部若しくはキーホールを介した開放外科手技、経皮的手法、皮膚貫通的手法、及び/若しくは外部非侵襲的手法、及びそれらの任意の組み合わせと共に使用してもよい。
【0084】
1つの実施形態において、電気的アブレーションデバイス12は、人工的チャネル(例えば、Olympus Corporationから入手可能なGIF−100モデル等の、可撓性の内視鏡、剛性の内視鏡、腹腔鏡又は胸腔鏡)と共に使用することができる。一実施形態において、内視鏡は、結腸を通して経肛門的に、食道及び胃を通して経口腔的に、子宮頚部を通して経膣的に、皮膚貫通的に、又は腹部内に形成された外部切開部若しくはキーホールを介して、トロカールと共に組織処置領域に導入できる。それによって、電極21は、内視鏡を用いて、組織処理領域に又はその近傍に挿入され導かれて、組織処理領域に送達され得る。そのような送達もまた、他のさまざまな人工的チャネルを用いて実現できる。内視鏡又は他の人工的チャネルが、光源やビューイングポートのような追加的デバイスを受け入れるための1つ又は2つ以上のチャネルを画定してもよい。ビューングポートの視野内の画像は、通常内視鏡内に位置した電荷結合素子(CCD)を有する、例えばカメラ等の光学装置により受信されてよく、患者外部の表示モニター(図示せず)に伝送される。他の実施形態においては、内視鏡は用いられず、電気的アブレーションデバイス12が、例えば光源及び/又はビューングポートを備える。更に追加的な実施形態は、適切な器具の配置を判定するための、例えば超音波又はコンピューター断層撮影(CT)スキャンのような、その他の技術を採用する。
【0085】
1つの実施形態によれば、電気的アブレーションを組織に施す方法は、第1電極21を組織処理領域に送達することを含む。第1電極21は、エネルギー源と結合し、且つ管腔内又はその近傍に位置する組織処理領域と結合するように構成されていてよい。1つの実施形態において、第1電極21は、人工的チャネルのような空洞を通じて、組織処理領域の又はその近傍の管腔内に送達され、導かれる。第1電極21は、次に、組織処理される部位に又はその付近に展開されてよい。ひとたび展開されると、第1電極21の拡張可能部20が、少なくとも1つの次元の寸法に関して(例えば、直径又は長さ)拡張されて、管腔の壁に接触させられてよい。第2電極22が第1電極21及び患者と結合されてよい。第2電極22が第1電極21と患者を通じて導電的に接続され、第1電極21に対してその電位における差を代表する。例えば、いくつかの実施形態において、第2電極22は接地されるか、又はリターンパッド、針電極、若しくは患者と接触しているか、導電的に接続されているかしている医療用クランプ具であってよい。さまざまな実施形態において、第2電極22は、離して配置された電極であってよく、例えば、導電性材料、リターンパッド、針、又はクランプ具であってよく、近傍又は隣接する組織、表面、又は管腔に配置されてよい。ひとたび組織処理領域に送達されると、第1電極21は、望ましくない組織をアブレートするために作動されてよい(例えば、展開され、拡張され、そして通電される)。
【0086】
いくつかの実施形態において、第1電極21の拡張可能部20を拡張することは、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させることを含む。電極21を収縮した状態から拡張した状態に移行させることは、電極21の少なくとも1つの次元の寸法を大きくすることを含み得る。ある複数の実施形態において、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させると、拡張可能部20の直径は、比例的に短くなる。しかしながら、他の実施形態においては、拡張可能部20の直径は、長さの減少に対して比例的には拡張はしない。
【0087】
いくつかの実施形態において、第1電極21は、収縮した状態と拡張した状態との間を、交互に又は選択的に移行させられ得る。ある複数の実施形態において、収縮した状態から拡張した状態に移行させることは、枠組み又は枠組み部材52の2つ点の間の相対的動きを含む。相対的動きは、回転的でも、長手方向の動きでもよい。例えば、距離枠組み又は枠組み部材52の2つ点の間の距離が減少することは、拡張可能部20を収縮した状態から拡張した状態に移行させ得る。相対的動きは結果として、1つ又は2つ以上の枠組み部材52が軸線の外側に向かって伸びることをもたらす場合がある。外側に向かっての伸びは、1つ又は2つ以上の枠組み部材52が弓形に曲がった結果であり得る。枠組み部材52が軸線の外側に向かって伸びることは同様に、他の枠組み部材52を支え、伸ばし、又は軸線の外側に向かってその位置を変更させる。枠組み部材52のさまざまな記憶性材料及び方向性が、拡張可能部20を収縮した状態と拡張した状態の間で移行するのをアシストするために用いられてよい。例えば、枠組み部材52は、ばね、コイル、編組部、複数の部材からなるバスケット、傘、注入可能な空洞、として配列されうる。また枠組み部材52は、剛性のある、接合された、又は形状記憶超弾性材を含む記憶性の材料を含み得る。例えば、枠組み部材52は、金属、合金、ゴム、プラスチック、ポリマー、及びさまざまな導電性材料を含み得る。
【0088】
さまざまな実施形態において、電極を拡張することは、拡張可能部の直径又は半径を収縮した状態の電極のそれらの何倍にも拡張することを含む。所望の用途によって、電極は、その直径又は半径が2倍、5倍、10倍、20倍、40倍、又はもっと大きく、例えば喉頭のような生物学的管腔を含む組織処理領域の直径に一致する直径まで、拡張され得る。さまざまな実施形態において、第1電極の直径は、第2電極の直径と異なっていてもよい。同様に、いくつかの実施形態において、第1電極は、第2電極の長さとは異なる長さを有していてよい。再び所望の用途によって、このようなバリエーションは本開示の範囲内であると考えてよい。理解され得るように、複数の電極が細長部材の遠位部に沿って配置される際に、さまざまな電極間の間隔の取り方が望ましい。そのような実施形態のいくつかにおいて、第1電極から第2電極までの距離は、0.5cm〜3cmに調整されてよく、例えば、1cm、1.5cm、2.0cm、及び3cmであってよい。しかしながら、他の用途に置いては、第1電極と第2電極との間の距離を、例えば大いに広げて、特定の用途にあった電場を作るようにすることが望ましい。
【0089】
電極21は、上記の方法のうちの任意のものにより導入され、送達され、展開され、及び拡張されてよく、そして管腔の壁に接触させられるとよい。管腔の壁への接触は、好ましくは少なくとも部分的に周方向のものである。続いて電流が、例えば単相性矩形波、二相性矩形波、RF変調高圧、又は、ナノセカンド継続パルス、等さまざまなパルスパワー出力により印加されてよい。印加される電流及び波形は、細胞溶解、アポプトーシス、又は不可逆的な電気穿孔のような、さまざまな組織への効果を発揮するように、所望の用途及び臨床的目標に合わせてカスタム化され得る。
【0090】
図30は、さまざまな実施形態に係る、電気的アブレーションシステム及びデバイスの代表的な使用方法である。細長部材18が拡張可能部20を管腔82(例えば、肝静脈)を含む組織領域に、本明細書で開示された方法を用いて送達する。細長部材18の代替的送達配置が、点線の輪郭により追加的に示されている。次に拡張可能部20が、シース40の遠位端部から、目標とする部位(例えば、肝静脈を囲む腫瘍)に向けて展開される。展開されると、拡張可能部20が拡張され、例えば収縮した状態から拡張した状態に移行される。図30においては、施術前に生理食塩水が、導電性を高めるために管腔内に導入される(不図示)。拡張可能部20は、管腔の壁に接触し、アブレーション処理が適用される。図30は、処理後のアブレーション処理された細胞のアブレーションゾーン80を図示している。この図でもわかるように、いくつかの実施形態において、管腔内での拡張可能部20の寸法が、ゾーンの大きさを決定し得る。
【0091】
特定の開示された実施形態と結びつけて本明細書で装置の様々な実施形態について説明したが、それらの実施形態に対して多数の修正及び変更が実施可能である。例えば、先端部、電極、及び細長部材といった異なるタイプのエンドエフェクタが用いられてよい。また、特定のコンポーネントについて材料が開示されたが、他の材料が使用され得る。以上の説明及び以下の「特許請求の範囲」は、このような改変及び変形を全て有効範囲とするものである。
【0092】
全体又は部分において、本明細書に参照により組み込まれると称されるいずれの特許公報又は他の開示物も、組み込まれた事物が現行の画定、記載、又は本開示に記載されている他の開示物と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。このように及び必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込んだ任意の矛盾する事物に取って代わるものとする。本明細書に参照により援用するものとされているが、既存の画定、見解、又は本明細書に記載された他の開示内容と矛盾するすべての内容、又はそれらの部分は、援用された内容と既存の開示内容との間にあくまで矛盾が生じない範囲でのみ援用するものとする。
【0093】
〔実施の態様〕
(1) 細長部材と、
前記細長部材に沿って配置され、且つ軸線に沿って伸びる第1電極であって、エネルギー源に結合するように構成されている近位端部と、組織処理領域に結合し、且つアブレーションのためのエネルギーをかけるように構成されている面とを有する、第1電極と、
近位端部及び遠位端部を有し、且つ前記軸線に沿って伸びる第1拡張可能部であって、前記第1電極の第1外周を画定し、且つそれと関連付けられた前記軸線に対する第1直径を有する、第1拡張可能部と、を備え、前記第1拡張可能部は、少なくとも1つの第1枠組み部材を含む第1枠組みを含み、
前記第1枠組みは、前記第1拡張可能部を収縮した状態から拡張した状態に移行させるように選択的に拡張可能であり、且つ前記第1枠組みは、前記第1拡張可能部を前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行させるように選択的に収縮可能であり、前記第1枠組みが拡張した際には前記第1直径が拡張し、前記第1拡張可能部が前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行し、前記第1枠組みが収縮した際には前記第1直径が収縮し、前記第1拡張可能部が前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行する、電気的アブレーションデバイス。
(2) 前記第1電極は第1可撓部を含み、前記第1拡張可能部の少なくとも一部分は前記第1可撓部の少なくとも一部分を含む、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
(3) 前記第1枠組みは、生物学的管腔に対して前記生物学的管腔の周囲付近の2つ又は3つ以上の位置で、周方向に接触するように前記第1直径を拡張させるように拡張することが可能な、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
(4) 1つ又は2つ以上の第1枠組み部材は、それに関連付けられた記憶形状及びそれに関連付けられた維持された形状とを有し、前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材は、前記第1枠組みを拡張し且つ収縮させるために、前記記憶形状と前記維持された形状との間を移行することが可能な、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
(5) 前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材を、前記維持された形状に維持するように構成されている維持構造体を更に備える、実施態様4に記載の電気的アブレーションデバイス。
【0094】
(6) 前記維持構造体は、1つ又は2つ以上の第1枠組み部材を、遠位部内に受容するように構成されているチャネルを画定するシースを含み、前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材は、前記シースの前記遠位部の遠位端部から展開可能であり、前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材が前記シースの前記遠位端部から展開された際には、前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材が前記維持された形状から前記記憶形状に移行し、前記維持された形状は前記収縮した状態に対応し且つ前記記憶形状は前記拡張した状態に対応する、実施態様5に記載の電気的アブレーションデバイス。
(7) 前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材は編組部を含み、前記編組部は、前記拡張可能部の前記近位端部と遠位端部との間に伸び、前記拡張可能部は、前記編組部が前記シースの前記遠位端部から展開された際に、前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行するように構成されており、前記第1枠組みは、前記収縮した状態における長さが前記拡張した状態での長さよりも長い、実施態様6に記載の電気的アブレーションデバイス。
(8) 前記第1枠組みが前記第1拡張可能部内に空洞を画定し、前記空洞は、前記第1拡張可能部が前記収縮した状態になった際の、関連付けられた第1容積を有し、且つ前記第1拡張可能部が前記拡張した状態になった際の、関連付けられた第2容積を有し、前記第1容積は前記第2容積と実質的に同じである、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
(9) 1つ又は2つ以上の第1枠組み部材は、関連付けられた低温時形状と、関連付けられた高温時形状との間を移行することが可能であり、前記低温時形状は前記収縮した状態に対応し且つ前記高温時形状は前記拡張した状態に対応し、前記拡張可能部を前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行させることは、前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材を前記低温時形状から前記高温時形状に移行させるのに十分な温度の上昇を含む、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
(10) 前記第1枠組みは、前記第1枠組み内の1つ又は2つ以上の第1枠組み部材を結合するよう構成されている近位カプラー及び遠位カプラーをさらに含み、前記近位カプラー及び遠位カプラーは、ある距離だけ離れており、前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行させることは、前記近位カプラーと前記遠位カプラーとの間の前記距離を減らすことを含む、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
【0095】
(11) 前記近位カプラーと前記遠位カプラーとの間の前記距離を減らすことにより、前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材のうちの1つの少なくとも一部分を、前記軸線の外側に向けて回動する、実施態様10に記載の電気的アブレーションデバイス。
(12) 前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材は、前記近位カプラーと前記遠位カプラーとの間に伸びる編組部を含み、前記近位カプラーは前記編組部の近位部と結合し且つ前記遠位カプラーは前記編組部の遠位部と結合する、実施態様10に記載の電気的アブレーションデバイス。
(13) 前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行させることは、1つ又は2つ以上の第1枠組み部材の近位部と遠位部との間での相対的回転を含む、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
(14) 前記1つ又は2つ以上の第1枠組み部材はコイルを含み、前記第1枠組みは前記コイルの近位部に結合する近位カプラーと、前記コイルの遠位部に結合する遠位カプラーとを更に含み、前記近位カプラー及び遠位カプラーはある距離だけ分離され、前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行させることは、前記近位カプラーと前記遠位カプラーとの間の前記距離を減らすことを更に含む、実施態様13に記載の電気的アブレーションデバイス。
(15) 前記細長部材に沿って配置され、且つ前記軸線に沿って伸びる第2電極であって、エネルギー源に結合するように構成されている近位端部と、前記組織処理領域に結合するように構成されている面とを有する、第2電極と、
近位端部及び遠位端部を有し、且つ前記軸線に沿って伸びる第2拡張可能部であって、前記第2電極の第2外周を画定し、且つそれと関連付けられた前記軸線に対する第2直径を有する、第2拡張可能部と、を更に備え、前記第2拡張可能部は、1つ又は2つ以上の第2枠組み部材を含む第2枠組みを含み、
前記第2枠組みは、前記第2拡張可能部を収縮した状態から拡張した状態に移行させるように選択的に拡張可能であり、且つ前記第2枠組みは、前記第2拡張可能部を前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行させるように選択的に収縮可能であり、前記第2枠組みが拡張した際には前記第2直径が拡張し、前記第2拡張可能部が前記収縮した状態から前記拡張した状態に移行し、前記第2枠組みが収縮した際には前記第2直径が収縮し、前記第2拡張可能部が前記拡張した状態から前記収縮した状態に移行する、実施態様1に記載の電気的アブレーションデバイス。
【0096】
(16) 前記第1電極及び前記第2電極は、前記細長部材に沿ってある距離だけ分離されており、前記第1電極と前記第2電極との間の前記距離は選択的に調節可能な、実施態様15に記載の電気的アブレーションデバイス。
(17) 実施態様1に記載のデバイスを入手することと、
前記第1電極を、生物学的管腔を含む組織処理領域に送達することと、
前記第1電極を拡張することと、
前記第1電極を、処理される組織の近位の前記管腔の壁に接触させることと、
前記第1電極を用いて、不可逆的な電気穿孔によって組織に細胞死を誘発するのに十分な電気的パルスの1つ又は2つ以上のシーケンスを、前記処理される組織に加えて、組織処理することと、を含む、電気外科的に組織処理する方法。
(18) 前記枠組み部材は、前記拡張可能部に沿って伸びるコイルを含み、前記組織処理することは、前記管腔全体を連続的に処理するように、前記コイルを前記管腔内で第1方向に回転させることを更に含む、実施態様17に記載の電気外科的に組織処理する方法。
(19) 軸線に沿って伸び、且つエネルギー源に結合するよう構成されている近位端部と、組織処理領域に結合されアブレーションのためのエネルギーをかけるよう構成されている面とを有する、拡張可能な電極を含む電気的アブレーションデバイスであって、前記拡張可能な電極が、
関連付けられた前記軸線周りの直径を有する外周を画定する拡張可能部であって、前記拡張可能部は縮んだ状態と拡張した状態との間を移行することが可能であり、前記拡張可能部が前記縮んだ状態から前記拡張した状態に移行した際に前記直径が増加し、前記拡張可能部が前記拡張した状態から前記縮んだ状態に移行した際に前記直径が減少する、拡張可能部と、
前記拡張可能部に沿って配置される1つ又は2つ以上の枠組み部材であって、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の少なくとも1つは、形状記憶弾性材を有し、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の前記少なくとも1つは、前記拡張可能部の前記縮んだ状態に関連づけられたマルテンサイト形態に、維持構造体により維持されるように構成されており、オーステナイト温度においては、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の前記少なくとも1つは、前記維持構造体により解放された際の前記拡張可能部の前記拡張した状態に関連付けられたオーステナイト形態に復帰するように構成されている、枠組み部材と、を含んでいる、電気的アブレーションデバイス。
(20) 前記維持構造体は、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の前記少なくとも1つを、遠位部内に受容するように構成されているチャネルを画定するシースを含み、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の前記少なくとも1つは前記シースの前記遠位部から展開可能であり、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の前記少なくとも1つが前記シースの前記遠位部から展開される際には、前記1つ又は2つ以上の枠組み部材の前記少なくとも1つは、前記維持構造体によって解放される、実施態様19に記載の拡張可能な電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29
図30