(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結合された3D距離マップ画像の各ポイントにおける結合ボクセル値が2mm未満に対応する位置で、前記支持材(1120)が追加される、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
口腔インプラントを患者に取り付けるために案内手術法を使用する治療ワークフローの例を提示する。
1.歯科医は患者を診察し、患者の口腔状況のX線画像またはスキャンデータを取得する。
2.口腔状況の印象を取り、それを使用して患者の顎骨および歯の石膏模型を作製する。
3.望ましい補綴物の位置、大きさ、および形状をモデリングする歯セットアップが石膏模型上で形成され、次いで患者に装着される。次いでそれは患者の口腔状況および臨床上の要求に合致するように調整かつ最適化される。
4.歯セットアップに基づいて、X線撮影ガイドが作製される。X線撮影ガイドはX線不透過マーカを含み、患者に装着するように構成される。バイトインデックスも形成され、それはX線撮影ガイドと患者の反対側の顎との間に装着され、患者の口内の正確な位置にX線撮影ガイドを保持する。
5.次いで二重スキャン手順を用いて、患者の口腔状況が撮像される。患者は最初に、X線撮影ガイドおよびバイトインデックスを所定の位置に装着した状態で、CTスキャナを用いてスキャンされる。次いでX線撮影ガイドだけがスキャンされる。最初のスキャンから、患者のコンピュータモデルが生成される。2回目のスキャンから、X線撮影ガイドのコンピュータモデルが生成される。次いで、両方のモデルは、X線不透過マーカにより結果的に得られたCTデータ内の標識点を用いて、相互に位置合わせされる。これは、骨および神経構造を示すCTデータと並んで、軟組織の表面輪郭(すなわちX線撮影ガイドの凹表面)を含め、患者の口腔状況の詳細な表現をコンピュータ上に提示することを可能にする。
6.インプラントの位置および向きは、患者の口腔状況のコンピュータ表現(表面の詳細およびCTデータを含む)を用いて計画される。同様に、必要なアンカーピンがあればその位置もこの段階で計画される。
7.X線撮影ガイドと同一形状を有するが、計画されたインプラントおよびアンカーピンの位置にドリル孔を含む、歯科スプリント(この場合、外科用テンプレートとしても知られる)が作製される。各ドリル孔に金属スリーブが設けられる。
8.歯科スプリントは患者の口に配置され、患者の顎骨の穿孔および歯科インプラントの配置を案内するために使用される。
【0003】
この治療ワークフローには幾つかの問題点があることが知られている。
【0004】
第一に、外科用テンプレートを作製するために、最初にX線撮影ガイドを作製しなければならない。X線撮影ガイドの作製は通常、外科医自身によってではなく、歯科用構成要素の作製を専門とする技工所によって行われる。これは、輸送のため治療ワークフローを複雑化しかつ遅らせる。X線撮影ガイドの作製は時間および費用も掛かる。
【0005】
第二に、患者は通常すでに早期の段階でスキャンされているので、(上記ステップ1参照)、X線撮影ガイドを用いたスキャンは患者の放射線量をさらに上昇させる。さらに、スキャン手順中にX線撮影ガイドが患者に正しく装着されていなければ、再スキャンを実行しなければならず、放射線量はさらに増加する。
【0006】
口腔外科医は、コンピュータモデリングおよび計画策定を使用せずに、従来の方法でインプラントを取り付けることによりこれらの余分な費用および複雑さを回避することを選択することができるが、現代的な治療ワークフローの向上した精度および予測性は失われる。実際には、この選択肢を選ぶ外科医は少ないようである。
【0007】
したがって、必要とされているものは、X線撮影ガイドの必要性を排除する、案内口腔手術または他の用途のための歯科スプリントを作製するための現在的な治療ワークフローである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a-1b】
図1aは、患者の口腔状況の3D表面モデルを示す。
図1bは、第2の視点から見た
図1aの3D表面モデルを示す。
【0011】
【
図2a-2b】
図2aは、患者の口腔状況の3D表面データの距離マップの水平スライスを示す。
図2bは、患者の口腔状況の3D表面データのコロナルスライス(左右断面)を示す。
【0012】
【
図3a-3b】
図3aは、透明な支持構造モデルおよびその下の
図1bの3D表面モデルを示す。
図3bは、透過性の無い
図3aの支持構造モデルを示す。
【0013】
【
図4】
図4は、歯列弓の指示を含む患者の口腔状況の3D表面データの距離マップの水平スライスを示す。
【0014】
【
図5a-5c】
図5aは、距離マップ画像のパノラマ最大値投影像を示す。
図5bは、
図5aに3D表面モデルの上縁を描くハイポイントラインを加えた図を示す。
図5cは、支持構造の頬側で使用されるカットオフラインを形成するために、一定距離だけ下げた
図5bのハイポイントラインを示す。
【0015】
【
図5d-5f】
図5dは、平滑化後の
図5cのカットオフラインを示す。
図5eは、支持構造の舌側で使用される直線状カットオフラインを示す。
図5fは、支持構造上の頬側または舌側ボクセル位置の決定を示す。
【0016】
【
図6a-6b】
図6aは、頬側のカットオフが
図5dのカットオフラインに基づいて施され、かつ舌側のカットオフが
図5eのカットオフラインに基づいて施された、
図3aの支持構造モデルを示す。
図6bは、第2の視点から見た
図6aの支持構造モデルを示す。
【0017】
【
図7a-7c】
図7aは、カットオフラインが引かれた第2患者の距離マップ画像のパノラマ最大値投影像を示す。
図7bは、計画されたアンカーピン部位の付近でさらに下げられた、
図7aのカットオフラインを示す。
図7cは、平滑化後の
図7bのカットオフラインを示す。
【0018】
【
図8】
図8は、カットオフラインの平滑化プロセスのプロセス流れ図を示す。
【0019】
【
図9a-9b】
図9aは
図7bのカットオフラインが施された、第2患者用のレンダリングされた支持構造モデルを示す。
図9bは、
図7cのカットオフラインが施された、第2患者用のレンダリングされた支持構造モデルを示す。
【0020】
【0021】
【0022】
【
図11a-11c】
図11aは、支持構造モデル材およびスリーブ支持材を接合する前の支持構造モデルを示す。
図11bは、ガイド孔の周りに支持構造モデル材およびスリーブ支持材を接合した後の
図11aの支持構造モデルを示す。
図11cは、支持構造における2つの隣接するガイド孔の周りの支持材の接合を示す。
【0023】
【0024】
【
図12a-12c】
図12a〜12cは、表面に対しブール演算を使用して支持構造モデルに加算または減算される仮想構成要素を示す。
【0025】
【0026】
【
図14a-14c】
図14aは、口腔状況の歯の断面図を示す。
図14bは、支持構造モデルが施された
図14aの歯を示し、かつ除去すべきアンダーカットボクセルの決定を示す。
図14cは、アンダーカットボクセルが除去された、
図14bの支持構造モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は多くの異なる形で具現することができ、本書に記載する実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものになると共に、本発明の範囲が当業者に充分に伝わるように、提供するものである。添付の図面に示す実施形態の詳細な説明に使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。図面において、同様の数字は同様の要素を指す。
【0028】
以下の説明は、口腔インプラントの設置を案内するための外科用テンプレートを適用可能な本発明の実施形態に重点を置いている。しかし、本発明は外科用テンプレートの使用に限定されず、歯科スプリント、例えば保護マウスガードの作製、または他の同様の用途にも適用することができることは理解されるであろう。
【0029】
以下は、本発明の好適な実施形態の説明であり、それは、X線撮影ガイドを使用せずに外科用テンプレートを作製する方法である。同じ技術は、様々な歯科スプリントタイプを作製するために使用することができる。第一に、患者の口腔状況の表面を記述する1組の3D表面データを取得する。第二に、3D表面データならびに計画されたインプラントおよびアンカーピンの位置に基づいて、仮想外科用テンプレートモデルを生成する。第三に、仮想外科用テンプレートモデルから物理的外科用テンプレートを作製する。
【0030】
患者の口腔状況の決定
患者の口腔状況の表面は典型的には、頬側、咬合面側、および舌側の軟組織および歯を含む、患者の上または下の咬合歯列弓である。
【0031】
患者の口腔状況の3D表面データは、多数の公知の光学または放射線撮像技術を用いて得ることができる。例えば、患者の口に使用される口腔内光学スキャナは、この方法に使用するのに適した3D表面データを生成する。代替的方法として、患者の口腔状況の印象の光学スキャン(口腔状況のネガティブインプリントである印象を補償するために必要に応じて処理される)、患者の口腔状況のダイカスト模型の光学スキャン、表面検出アルゴリズムと組み合わされた口腔状況の高解像度3DX線コンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴撮影(MRI)画像がある。
【0032】
印象またはダイカスト模型の口腔内光学スキャンおよび光学または触覚スキャンは両方とも、患者の最小限の放射線被曝および高解像度の表面スキャンという利点を有する。CTおよびMRIスキャナは、内部解剖学的構造を可視化するという利点をも提供する。
【0033】
本発明は、CTデータ無しのデジタルモデルベースの手法を使用するか、CTデータと融合されたデジタルモデルベースの手法を使用するか、あるいは表面検出アルゴリズムと組み合わされたCT/MRI画像だけを使用する案内インプラント配置に使用することができる。
【0034】
患者の口腔状況の3D表面データ110は、
図1aおよび1bに示されるトライアンギュレイテッドサーフェス(triangulated surface)を記述する頂点および三角形として格納することが好ましい。
【0035】
支持構造モデルの生成
患者の口腔状況の3D表面データから仮想外科用テンプレートモデルを生成するために、多数の技術を使用することができる。仮想支持構造モデルは、このプロセスの中間ステップとして使用することができる。
【0036】
3D表面データを処理して仮想外科用テンプレートモデルを形成するために、距離マップ画像化方法を使用することが好ましい。
【0037】
患者の口腔状況の3D表面データを処理して、3D距離マップ画像200が形成される。これは、3D表面データによって記載される3D表面と同一の基準フレームを有する空のボクセル画像から始めることによって行われる。距離マップ画像の各ボクセルには、3D表面データによって記述される3D表面までのボクセルの最小距離に対応する値が割り当てられる。
図2aは、患者の口腔状況の距離マップの水平スライス、および3D表面210の輪郭線を示す。
図2bは、患者の口腔状況の距離マップのコロナルスライス、および3D表面210の輪郭線を示す。
【0038】
一実施形態では、下顎の場合、3D表面またはそれより下(すなわち患者の組織を表す3D表面データの体積内)のボクセルに正の値が割り当てられる。3D表面より上のボクセルには負の値が割り当てられる。ボクセルの位置が3D表面から遠くなるほど、ボクセルに割り当てられる値(負または正)は大きくなる。他の実施形態は代替的ボクセル値構成を含むことができる。
【0039】
距離マップ画像が生成されると、距離マップ画像の特定の範囲内の値を有する全てのボクセルを含む支持構造モデルが生成される。一実施形態では、支持構造を形成するために、3D表面に近い位置を表す第1値と、3D表面から遠く離れた位置を表し、大きさが第1値より大きい第2値との間の値を有する(したがって3D表面から特定の距離にある)全てのボクセルが選択される。第1値は、支持構造モデルの表面が始まる位置の3D表面からの距離を選択するように選ばれる。第2値は、支持構造の厚さを画定するように選ばれ、厚さは第1値と第2値との間の差によって決まる。結果的に得られる支持構造モデルは3D表面と合致し、患者の口腔状況に適合する。第1値が大きければ大きいほど、3D表面と支持構造との間の許容差は大きくなる。許容差によってわずかな量の遊びがもたらされる。好適な実施形態では、許容差は0.1mmから0.5mmの間である。
図2aおよび2bは第1値220および第2値230の輪郭線を示す。
【0040】
一実施形態では、第1値および第2値は、3D表面から上の距離が0.1mmから2.1mmの間の全てのボクセルを含む支持構造モデルを生成するように選択される。結果的に得られる支持構造モデルは、2.0mmの一貫した厚さを有する。
図3aおよび3bは、患者の口腔状況の3D表面320を覆う支持構造モデル310の実施形態を示す。支持構造モデル310は先端縁330を有する。
図3aでは、支持構造モデルは、下にある3D表面が分かるように部分的に透明に描かれている。
【0041】
このように支持構造モデルを自動的に生成する利点は、それが正確であり、かつコンピュータを用いて頑健に生成されることである。患者の口腔状況の3D表面データだけを前提として、この技術を用いて、整合する支持構造モデルを迅速かつ正確に作製することができる。
【0042】
支持構造モデルはまた歯列弓に沿って制限しなければならないので、患者の口の奥の大臼歯までずっとは伸びない。むしろ後方限界が画定される。
図4において、限界線420は歯列弓に沿った支持構造モデルの後方または後側限界を示す。
【0043】
代替実施形態では、患者の口腔状況の3D表面データから仮想外科用テンプレートモデルを生成するために、減法的技法が使用される。この技法では、歯科スプリントに近似する形状を有する予め定められた形状がもたらされる。患者の口腔状況より大きい形状であって、しかも支持構造モデルとして使用されるのに充分小さければ、どんな形状でも適切であろう。予め定められた形状は3D表面上に、それらが重なるように被せられる。次いで、予め定められた形状から3D表面データの3D表面を減算するように、ブール演算が実行される。結果的に得られる形状は、予め定められた形状と略同一の形状を有するが、表面は3D表面と整合する。結果的に得られるこの形状は、支持構造のための適切な土台となる。
【0044】
別の代替実施形態では、患者の口腔状況の3D表面データから仮想外科用テンプレートモデルを生成するために、拡張技法が使用される。これは、3D表面の二値画像を形成するステップを含み、ここで3D表面内部のボクセルは1の値を有し、3D表面の外側のボクセルは0の値を有する。結果的に得られる画像は次いで拡張され、3D表面の拡大二値画像が作製される。オリジナル二値3D表面は次いで拡張画像から減算されて、拡張画像が3D表面に対して拡張された程度に基づく厚さを有する、結果としての支持構造が形成される。
【0045】
別の代替実施形態では、患者の口腔状況の3D表面データから仮想外科用テンプレートモデルを生成するために、zトランスファ技法が使用される。これは、Z軸でシフトされた3D表面データの第2モデルを上に被せられた3D表面のモデルを使用することを含む。次いで、2つの3D表面間の幾何学的空間を使用して、支持構造を形成することができる。これは、患者の口腔状況に合致する表面を持ち、かつ一貫した厚さを有する支持構造モデルをもたらす。
【0046】
支持構造モデルのカスタマイズ
本発明の好適な実施形態によれば、支持構造モデルが生成された後、特定の特性または特徴を含むようにそれをさらに洗練させることができる。
【0047】
最終的に得られる外科用テンプレートは支持構造モデルから作製されるので、支持構造モデルの特性の変更は、結果的に最終的外科用テンプレートの特性も変化させる。
【0048】
支持構造モデルのカットオフライン
好適な実施形態では、支持構造モデルは、患者の既存の歯または歯茎表面の冠状部分だけを被覆するように構成される。支持構造モデルを先端方向に制限するカットオフラインが使用される。これは次の方法で達成される。
1.最初に、
図4に示すように、距離マップ画像400に対して歯列弓410が決定される。代替実施形態では、歯列弓は患者の口腔状況の3D表面データに従って決定される。別の実施形態では、歯列弓はユーザによって指示される。
2.次いで、距離マップ画像400の最大値投影像が歯列弓410に沿って生成され、典型的に歯科医によって使用されるオルソパントモグラムと同様の下顎の
図5aに示すパノラマ画像が形成される。隆線500がはっきりと分かる。
3.
図5bに示すように、隆線500の頂部に沿った最高点(または冠状縁)は記録され、3D表面データの上部境界を画定する線510が形成される。最高点は、パノラマ画像の各垂線で歯質を示す画素から空の空間を示す画素への遷移点(例えば負の値と正の値との間の遷移)として決定される。
4.次いで、
図5cで線510は(咬合平面から遠ざかるように)下降される。この新しい線は、歯列弓410に沿った支持構造モデルの頬側カットオフライン520を画定する。対応する上顎の場合、線510は下降されるのではなく、(やはり咬合平面から遠ざかるように)上昇され、カットオフライン520を形成する。
5.
図5dに示すように、カットオフラインは平滑化される。一実施形態では、カットオフラインを平滑化するために、移動平均アルゴリズムが使用される。
6.
図3aおよび3bの支持構造モデルは次いで、頬側カットオフラインに対応する頬側縁を有するように修正される。
【0049】
好適な実施形態では、頬側カットオフラインは1mmないし4mm下降される。対応する上顎の場合、頬側カットオフラインは下降されるのではなく、上昇されることを理解されたい。
【0050】
好適な実施形態では、2つのカットオフラインが使用される。頬側では、上述したカットオフラインが使用される。舌側では、
図5eに示すように、カットオフライン530は一定の高さの直線である。この直線は結果的に支持構造モデルの舌側を大きくし、追加強度をもたらす。
図5fに示すように、支持構造モデルのどちら側が頬側580であり、どちら側が舌側590であるかを自動的に決定するために、3D表面から画像が生成され、そこで各ボクセル位置が舌側かそれとも頬側かが決定される。一実施形態では、ボクセルの舌側面または頬側面を決定するステップは、歯列弓のどちら側にボクセルが位置するかを決定することによって実行される。
【0051】
結果的に得られた支持構造モデルの実施例を
図6aおよび6bに示す。
【0052】
最終外科用テンプレートが患者の顎に挿置されたアンカーピンによって支持される、
図7aに示す一実施形態では、頬側のカットオフラインは、アンカーピン部位の周りに追加の材料を提供するように修正される。一実施形態では、
図7bに示すように、これは、距離マップ画像のパノラマ最大値投影像のアンカーピン配置部位750の周りの円740によって画定される領域を含むように、カットオフラインを下げることによって行われる。このステップは、アンカーピンが位置する側、例えば頬側または舌側で実行されるだけである。
【0053】
図7cに示す一実施形態では、
図7bのカットオフラインは、
図8に示す次のプロセスに従って平滑化される。
− ステップ810に示す通り、カットオフラインに沿って移動平均を算出する。
− ステップ820で、各記録ポイントでカットオフラインの曲率を算出し、凹部および凸部を画定する。
− ステップ830で、下顎の場合にはラインの凸部だけを維持し、上顎の場合には凹部だけを維持する。
【0054】
平滑化されていないカットオフラインに基づく頬側縁を有する支持構造モデルを
図9aに示し、平滑化されたカットオフラインに基づく頬側縁を有する支持構造モデルを
図9bに示す。審美上および強度上の理由から二番目の方が明らかに好ましく、かつ患者を傷つける危険性を低下させる。
【0055】
支持構造モデルのガイド孔
好適な実施形態では、支持構造モデルは、口腔インプラントを患者の顎骨に挿置することができるように、ボアホールの穿孔を案内するための外科用テンプレートを形成するために使用される。したがって、支持構造モデルにはガイド孔が形成される。ガイド孔には適合するガイドスリーブを装着してもよく、それは一般的により硬質の材料を含み、かつ金属ドリルガイドを案内する機能を果たす。ガイド孔の周りの支持構造モデルの材料は、外科医の器具との相互作用によるある程度の力に耐える必要があるので、支持構造モデルはガイドスリーブを支持するために補強する必要がある。補強は、仮想材料を支持構造に追加することによって行われる。さらに、患者の歯列への支持構造モデルの密嵌は、支持構造モデルの頂面が非常に多様であることを意味する。
【0056】
各ガイド孔に対し、次の手順によってガイドスリーブ支持材が支持構造モデルに追加される。
1.患者の顎にこれから穿孔されるボアホールの意図される位置、および対応する設置されるインプラントまたはアンカーピンの位置に基づいて、支持構造モデルにおけるガイド孔の位置を決定する。
2.支持構造モデル310(その実施形態を
図10bに示す)の距離マップ画像1010(
図10aに示す)を提供する。
3.スリーブ支持形状1030(その実施形態を
図10dに示す)の距離マップ画像1020(
図10cに示す)を提供する。
4.パンチ形状1040(その実施形態を
図10eに示す)の画像を提供する。
5.スリーブ支持形状の距離マップ画像を、支持構造モデルにおけるガイド孔の長手軸1110に対応する位置で支持構造モデルの距離マップ画像上に重ね合わせて、距離マップ画像の合算値は閾値を越える場所で、支持構造モデル材1120を追加する。オリジナル支持構造モデルの一例を
図11aに示す。スリーブ支持形状を追加した後の修正支持構造モデルの一例を
図11bに示す。
6.複数のスリーブ支持形状の距離マップ画像が重複する場合、距離マップ画像の合算値が閾値を越える場所で、支持構造モデル材1120を追加する。2つのスリーブ支持形状をつなぐ支持構造モデル材の一例を
図11cに示す。
7.パンチ形状1040の画像を、支持構造モデルにおけるガイド孔の頂部に対応する位置で、支持構造モデルの距離マップ画像上に重ね合わせ、パンチ画像内の全てのポイントで支持構造モデル材を除去する。パンチ材を除去した後の
図11bの支持構造モデルの一例を
図11dに示す。
8.ガイド孔の各々に対し上記ステップが全部完了すると、支持構造モデル画像は3D表面モデルに変換される。このプロセスはマーチングキューブアルゴリズムを用いて行うことができる。
9.その後、スリーブ支持体(
図12a)の頂面の3D表面モデル1240は、ガイド孔の頂部に対応する位置で支持構造モデルの3D表面モデルに再び追加される。これは、ドリルガイドと界接するガイド孔の頂部にきれいな水平の頂面をもたらす。
10.次いで、スリーブ支持空間1220(
図12b)の3D表面モデルは減算され、穿孔およびインプラントの挿置用の孔がもたらされる。
図12bに示すスリーブ支持空間はまた、最終的外科用テンプレートとスリーブとの間の界接をもたらし、かつ2つの間の接着剤保持用の空間をもたらす部分1210をも含む。
11.最後に、スリーブをテンプレートに固定するために、最終的外科用テンプレートとスリーブとの間に接着材を挿入することができるように、接着剤チューブ1230(
図12c)の3D表面が減算される。
12.
図13aは、
図12a〜12cの全ての構成要素を一緒に1つの画像で示す。
図13bは、最終的外科用テンプレートにアンカーピンガイド孔を形成するために使用される同等の構成要素の集合体を示す。
13.上記ステップで支持構造モデルに加えられ、歯との密嵌に悪影響を及ぼす材料を除去するために、患者の口腔状況のオリジナル3D表面データが、支持構造モデルの3D表面モデルから減算される。一実施形態では、最終的に作製される外科用テンプレートと患者の口腔状況との間の小さい許容差度を確実にするために、患者の口腔状況のわずかに拡張された3D表面データが支持構造モデルの3D表面モデルから減算される。
【0057】
上記ステップ5またはステップ6の一実施形態では、距離マップ画像内の2つのポイントの、それぞれの表面におけるそれらのそれぞれの最も近いポイントからの合算距離が2mm未満である場合、追加の支持材が加えられる。
【0058】
支持構造モデルにガイド孔を生成するためのこの技法は、外科用テンプレートを患者の顎骨に固定するためにアンカーピンによって使用される、アンカーピンガイド孔にも適用可能である。
【0059】
側方スリーブ開口
本発明の好適な実施形態では、支持構造に側方開口が設けられる。作製される歯科スプリントにおける対応する開口は、ガイドスリーブおよび/またはガイドツール(すなわち、外科的処置中にガイド孔開口に嵌合して、ドリルビットまたは他の器具を支持する構成要素を持つツール)をガイド孔に側方から挿入することを可能にする。側方開口は、支持構造からボックス形状をブール減算することによって、支持構造モデルに形成される。減算は、ガイド孔から支持構造の外面までの連続開口をもたらす。開口は支持構造モデルの冠状縁から始まり、ガイド孔の長さより大きいか、それと等しいか、あるいはそれより短い高さを持つ開口と平行に延びる。遠心−近心方向の幅は、構成要素をガイド孔に保持嵌合するために、ガイド孔の直径に等しいか、それよりわずかに小さい。支持構造の頬側または舌側のいずれかに側方開口を設けることができるが、両方に設けることはできない。
【0060】
別の実施形態では、側方開口は、頬側または舌側のいずれかで支持構造モデルに間隙をもたらすようにカットオフラインを調整することによって、形成される。そのような実施形態では、上述と同じ寸法が使用される。
【0061】
支持構造モデルのアンダーカット除去
好適な実施形態では、支持構造モデルは、それを患者の歯列上に容易に嵌合できることを確実にするために修正される。
図14aおよび14bに示すように、支台歯1400は歯冠1405の幅がより広く、歯頸1406および歯根に向かって狭くなる。上記の方法に従って形成された支持構造モデル1410は、歯の形状と一致する湾曲形状を有する。したがって、カットオフポイント1420における支持構造モデルの開口は、歯の幅が最も広い位置より狭くなると考えられる。これは、歯科医が支持構造モデルに対応する外科用テンプレートを、外科用テンプレートを損傷することなく取り付けることを、不可能とは言わないまでも、難しくする。
【0062】
好適な実施形態では、支持構造モデルは、支持構造モデルのアンダーカットを形成する部分1420を除去するように修正される。一実施形態では、これは次の手順で達成される。
1.距離マップ画像の歯列弓410に沿って、患者の歯の最も広い幅の位置が算出される。この最も広い幅の位置の高さも、距離マップ画像のパノラマ最大値投影像で決定される。
2.支持構造モデルで歯列弓410により近くかつ歯の最も広い幅の位置の高さより下の部分は、
図14cに示すように除去される。
【0063】
物理的外科用テンプレートの作製
最後に、物理的外科用テンプレート(または歯科スプリント)は仮想外科用テンプレートモデルに基づいて作製される。物理的外科用テンプレートは加法的製造技法を用いて製造することができる。この技法の利点は、物理的外科用テンプレートを作製することのできる速度である。好ましくは、物理的外科用テンプレートは、ステレオリソグラフィを用いて、仮想外科用テンプレートモデルの物理的複製品として作製される。使用できる他の加法的製造技術として、インクジェット3DプリンタまたはSLSプリンタがある。代替的に、仮想外科用テンプレートモデルの物理的複製はブロック状の材料からフライス加工することができる。