(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377645
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】廃熱回収装置の膨張機を加熱するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F01D 17/00 20060101AFI20180813BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
F01D17/00 J
F01D17/00 P
F01D17/08 A
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-556927(P2015-556927)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公表番号】特表2016-507694(P2016-507694A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2013051034
(87)【国際公開番号】WO2014123572
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】61/761,337
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503083889
【氏名又は名称】ボルボ トラック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(72)【発明者】
【氏名】ギブル,ジョン
【審査官】
西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102010042405(DE,A1)
【文献】
国際公開第2012/131022(WO,A2)
【文献】
特開2009−097387(JP,A)
【文献】
特公昭46−007126(JP,B1)
【文献】
特開2009−236014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00−10
F01K 25/10
F02G 5/00−04
F01D 17/00−10
F01D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃熱回収装置であって、
作動流体を循環させる作動流体循環路、前記作動流体循環路に接続されると共に、熱源から廃熱を回収するべく適合され、かつ回収した廃熱を作動流体に伝達するボイラ、
前記作動流体循環路に接続されて前記ボイラから作動流体を受け入れる膨張器、
前記膨張器と熱伝達するように接触する加熱ジャケット、
前記ボイラの出口における前記作動流体の温度を検出するべく配置されてその温度を表す信号を生じさせる温度センサ、及び、
前記温度センサからの温度信号を受け入れるべく接続されると共に前記弁を制御するべく接続され、かつ前記温度信号に応答して前記弁を制御するべく適合された制御装置、
を備え、
前記ボイラの下流の前記作動流体循環路が、前記膨張器に接続する第1の分岐及び前記加熱ジャケットに接続する第2の分岐を含み、かつ前記第1の分岐及び前記第2の分岐に対する作業流体の流れを選択的に制御する弁を有し、
前記弁は、前記加熱ジャケットを通って流れる部分と前記膨張器を通って流れる部分とに作動流体を分割することで、前記作動流体の温度を調整するべく、作動させることができる、
廃熱回収装置。
【請求項2】
前記作動流体循環路に接続されて前記膨張器及び前記加熱ジャケットから作動流体を受け入れる凝縮器、及び、
前記作動流体循環路上に接続されて前記凝縮器から作動流体を受け入れる、前記作動流体を圧縮して前記作動流体を前記ボイラに導くべく適合されたポンプ、
を備える、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
前記加熱ジャケットからの前記作動流体を受け入れると共に前記作動流体を前記凝縮器に導くべく接続された復熱器を備える、請求項2に記載の廃熱回収装置。
【請求項4】
前記膨張器からの前記作動流体を受け入れると共に前記作動流体を前記凝縮器に導くべく接続された復熱器を備える、請求項2に記載の廃熱回収装置。
【請求項5】
前記加熱ジャケットからの前記作動流体を受け入れるべく接続された復熱器を備える、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項6】
前記膨張器からの前記作動流体を受け入れるべく接続された復熱器を備える、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項7】
前記弁が前記加熱ジャケットに取り付けられ、かつ前記第1の分岐及び前記第2の分岐が前記弁から延びている、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項8】
前記第1の分岐が、前記膨張器の入口に接続している第1のライン及び前記膨張器を迂回する第2のラインを有すると共に、前記第1のライン及び前記第2のラインのうちの一つを通る流れを選択的に制御する弁を有している、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項9】
前記膨張器が第1の膨張器であり、
かつ前記膨張器の下流で前記作動流体循環路に接続された第2の膨張器、及び、
前記第2の膨張器に関連付けられた第2の加熱ジャケット、を備え、
前記第1の膨張器の下流の前記作動流体循環路が、前記第2の膨張器に接続する第3の分岐と前記第2の加熱ジャケットに接続する第4の分岐を有すると共に、前記第3の分岐及び前記第4の分岐への作業流体の流れを選択的に制御する第2の弁を有している、請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項10】
前記第3の分岐が、前記第2の膨張器の入口に接続している第1のライン及び前記第2の膨張器を迂回する第2のラインを有すると共に、前記第1のライン及び前記第2のラインを通る流れを選択的に制御するライン弁を有している、請求項9に記載の廃熱回収装置。
【請求項11】
前記ライン弁は、前記第1のライン及び前記第2のラインに対する作業流体の流れを比例的に制御する、請求項10に記載の廃熱回収装置。
【請求項12】
前記第1の分岐が、前記膨張器の入口に接続している第1のライン及び前記膨張器を迂回する第2のラインを有すると共に、前記第1のライン及び前記第2のラインのうちの一つを通る流れを選択的に制御する第3の弁を有している、請求項9に記載の廃熱回収装置。
【請求項13】
前記第3の弁は、前記第1のライン及び前記第2のラインに対する作業流体の流れを比例的に制御する、請求項12に記載の廃熱回収装置。
【請求項14】
前記第2の弁は、前記第3の分岐及び前記第4の分岐に対する作業流体流れを比例的に制御する、請求項9に記載の廃熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の廃熱からエネルギーを回収する、例えばランキンサイクル装置といったボトミングサイクル装置に関し、より詳しくは、そのような装置の膨張機に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトミングサイクル装置、例えばランキンサイクルベースの装置におけるシステム効率は、直接的に稼働時間、すなわち廃熱の回収が生じる作動時間に関係している。非作動時間は、多くの場合、利用可能な熱の蒸気質量率が低い(廃熱が充分でない)こと、あるいは構成要素の暖機時間(ボイラ及び膨張機が暖機中である)ことに起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、蒸気質量率による熱の利用度が低い期間の間における温度管理を改善すること、及び作動状態に戻るときの装置の暖機時間を減少させることにより、作動時間を増加させる解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、例えばランキンサイクル、エリクソンサイクル、及び他の廃熱回収サイクルといった、ボトミングサイクルに適用できる。
【0005】
本発明によると、ボトミングサイクル装置の膨張機が作動流体循環路に接続されて、例えばボイラ、蒸発器あるいは熱交換器といった廃熱回収用の熱交換器から作動流体を受け入れる。膨張機に導かれた作動流体は膨張機において膨張し、利用可能な仕事あるいはエネルギーを発生させる。膨張機はまた、作動流体を受け入れて膨張機を加熱するように接続された加熱ジャケットを有している。バイパス弁は、作動流体が膨張機の入口に導かれるかあるいは加熱ジャケットに導かれるかを制御する。
【0006】
バイパス弁の制御は、(ボイラの出口において、測定し得る)作動流体の温度及び(都合の良い位置で測定し得る)膨張器の温度に基づく。バイパス弁は、他の条件、例えば、それには限定されないが、膨張機の回転速度の制御、作動流体の温度の調整、あるいは膨張機のトルク要求(例えばエンジンブレーキモードの間に発電を停止する要求)に基づいて調整することもできる。
【0007】
本発明によると、膨張器は、タービン機械、ピストン機械、スクロール、スクリュー、あるいは作動流体を膨張させることにより有用な仕事を取り出すことができる他の装置とすることができる。多段膨張器の構成を本発明の装置に用いることができ、一つあるいは複数の段のバイパスが選択的に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明によると、加熱ジャケットはウォータジャケットの形態とすることができる。
【0009】
【
図1】
図1は、従来技術の代表的なランキンサイクル装置の概略図である。
【
図2】
図2は、作動流体が膨張機を迂回するバイパス回路を有したランキンサイクル装置の概略図である。
【
図3】
図3は、膨張機を加熱するべく作動流体を受け入れる加熱ジャケットを膨張機が有している、本発明の一実施形態によるボトミングサイクルの概略図である。
【
図5】
図5は、本発明による膨張器の代替実施形態である。
【
図6】
図6は、作動流体加熱ジャケットを有する、複数の膨張器を有する代替装置を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から判るように、代表的なボトミングサイクル廃熱回収装置は、例えば内燃機関の排気、エンジン冷却液、エンジンオイルクーラあるいは他の供給源といった熱源(図示せず)からの熱を回収して作動流体を加熱する、蒸発器あるいはボイラ10を備えている。作動流体は、作動流体循環路12により装置を通って移動する。加熱されてボイラ10を出た作動流体は、作動流体循環路ライン12aを通り、作動流体の膨張により仕事を発生させる膨張機あるいは膨張器14に導かれる。この膨張器は、タービン、ピストンエンジン、スクロール、スクリューあるいは他の機械とすることができる。発生した仕事は、軸15によって、伝達できると共に、例えば発電機を駆動するために、あるいは内燃機関の駆動軸に追加される機械的な動力として用いることができる。膨張した作動流体は、循環路ライン12bを通り、作動流体から熱を取り出して凝縮させる凝縮器16に導かれる。凝縮した流体は循環路ライン12cにより、作動流体を圧縮するポンプ18に導かれる。循環路ライン12cは、ポンプ18からボイラ10に作動流体を移動させて廃熱回収サイクルを反復させる。
【0011】
図2から判るように、また当技術分野で知られているように、ボトミングサイクル廃熱装置は、膨張器14を周って作動流体を凝縮器16に導くための、バイパス弁20及びバイパス循環路22を備えることができる。バイパス弁20は、作動流体が作動状態にあるときにはライン24を介して、あるいは作動流体の蒸気質量率が膨張にとって充分でないとき、すなわち、例えば過熱蒸気としての作動温度まで作動流体を加熱するためにボイラ10において、利用可能な廃熱が充分でないときに、膨張器14を迂回するライン22を介して作動流体を膨張器14に導くべく制御できる。凝縮器16はバイパス回路から受け入れた作動流体を冷却し、冷却された流体はポンプ18により蒸発器/ボイラ10にポンプ送りされる。
【0012】
バイパス弁20は、作動流体を膨張器14に導くか、あるいは膨張器機の周りのバイパス回路22に導くかを制御する。作動流体が作動温度にあるときに、バイパス弁20は、バイパス回路22を閉じ、ライン24を介して作動流体を膨張器14に導く。作動状態にある(すなわち蒸気としての)作動流体の、相対的に冷たい膨張機に対する流入は、膨張器に熱衝撃を生じさせ得る。加えて、作動流体は機械構造へと熱を失うことにより凝縮温度に冷却されて、腐食、孔食あるいは他のダメージを生じさせ得る。
【0013】
図3は、本発明の一実施形態を図示している。
図3の装置は、膨張器14に構造的に結合された加熱ジャケット30を備えている。
図2のバイパス弁及びバイパス回路に対し、作動流体循環路ライン12aの第1の分岐40が膨張器14に接続され、かつ第2の分岐42が加熱ジャケット30に接続されている。弁44は、作動流体を第1の分岐40に流すか、あるいは第2の分岐42に流すかを制御する。加熱ジャケット30は、作動流体を加熱流体として膨張器機の周りに循環させて、作動温度になる前の作動流体を加熱し、あるいは作動段階の間の温度を維持する。
【0014】
加熱ジャケット30は、当技術分野において知られているエンジン部品を冷却するためのウォータジャケットとして構成できる。加熱ジャケットは、膨張機の構造と熱伝達するように接触させつつ作動流体を移動させるべく形成された、一つあるいは複数の通路とすることができる。
【0015】
加熱ジャケット30及び膨張器14の出口の逆止弁52、54は、加熱ジャケット及び膨張器に流体が逆流することを防止している。加熱ジャケット30を通って導かれて加熱ジャケット30から出る作動流体は、破線12bcで示すように、選択的に凝縮器16を迂回できる。
【0016】
バイパス弁44は、ボイラ10から出る作動流体の検出温度に基づいて作動させることができる。ボイラ10の出口あるいはボイラの出口側の作動流体循環路12aにある温度センサ46は、バイパス弁44を制御するべく接続されている制御装置48に接続して温度信号をもたらすことができる。
【0017】
バイパス弁44は、他の作動条件に基づいて調整することもできる。例えば、第1の分岐40に対する作動流体の流れは、膨張機の回転速度を制御するべく分割できる。速度センサ60を膨張器の出力軸15に設けるとともに、速度信号を制御装置48にもたらすべく接続できる。加えて、あるいはそれに代えて、バイパス弁44は、例えば加熱ジャケット30を通って流れる部分と膨張機14を通って流れる部分とに作動流体を分割することで、作動流体の温度を調整するべく、作動させることができる。膨張器の出口側(あるいは凝縮器の入口側)にある温度センサ62は、流出する、膨張した作動流体の温度を監視して、制御装置に信号をもたらすことができる。更に他の代替案として、作業流体の流れは、(例えば、エンジンブレーキモードの間における発電停止要求といった)膨張機の出力トルク要求に応じて制御できる。本発明のこの態様による制御装置48は、例えば内燃機関(図示せず)あるいは発電機/バッテリ装置(図示せず)の駆動軸といった、膨張器の出力トルクを受け取る装置からの信号を受信するべく接続される。
【0018】
図4に示されている、この装置の代りの実施形態は、ボイラ10の上流に復熱器70を備えることができる。加熱ジャケット30から流出する作動流体は、ボイラに流入する作動流体にエネルギーを伝達して効率を改善するべく、ライン12eによって、復熱器70に移動させることができる。復熱器70から流出する作動流体は、ライン12fにより凝縮器16に移動する。このことは、凝縮器16の負荷を軽減すると共に、蒸気を発生させるためにボイラ10が流体に追加しなければならないエネルギー量を減少させる。膨張器14から出る作動流体循環路は、破線12gで示すように、凝縮器16に導く前に復熱器70に導くこともできる。
【0019】
図5に示すように、加熱ジャケット30あるいは膨張器14に流入する作動流体を制御する弁装置80、並びに作動流体出口の逆止弁82、84は、装置を単純化するために加熱ジャケットと一体化できる。図示のように、入口側の弁80及び出口86は、加熱ジャケット30のマニホールドとして形成できる。
【0020】
図6は、2つの膨張器114a、114bが直列に接続された装置を図示している。第1の膨張器114a及び第2の膨張器114bの両方が、加熱ジャケット130a、130bと共に示されている。各膨張器段114a、114bは、バイパス弁144a、144bを有していて、仕事を発生させるべく第1の分岐140a、140bに通して膨張機に導くか、あるいは膨張器を加熱するべく第2の分岐142a、142bに通して各加熱ジャケット130a、130bに導くかを制御する。各装置において、第1の分岐140a、140bは、膨張器114a、114bに作動流体を供給するための第1のライン150a、150bと、膨張器を迂回する第2のライン152a、152bとに更に分かれている。第2の弁146a、146bは、作動流体が第1の回路150a、150bを通過するか、あるいは第2の回路152a、152bを通過するかを制御する。
【0021】
図6の装置は、
図3及び
図4の実施形態に示すように、弁を制御するべく同様に接続された制御装置を備えることができる。
【0022】
本発明を、好ましい原理、実施形態及び構成要素の観点から説明してきた。添付の請求の範囲に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で、図示の構成要素を置き換え得ることは、当業者が認めるところである。
【符号の説明】
【0023】
10 ボイラ
12 作動流体循環路
14 膨張器
14 膨張機
15 出力軸
16 凝縮器
18 ポンプ
20 バイパス弁
22 バイパス循環路
24 ライン
30 加熱ジャケット
40 第1の分岐
42 第2の分岐
44 バイパス弁
46 温度センサ
48 制御装置
52 逆止弁
54 逆止弁
60 速度センサ
62 温度センサ
70 復熱器
80 弁
82 逆止弁
84 逆止弁
86 出口
114a 第1の膨張器
114b 第2の膨張器
130a 加熱ジャケット
130b 加熱ジャケット
140a 第1の分岐
140b 第1の分岐
142a 第2の分岐
142b 第2の分岐
144a バイパス弁
144b バイパス弁
146a 第2の弁
146b 第2の弁
150a 第1のライン
150b 第1のライン
152a 第2のライン
152b 第2のライン