(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377660
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】多層プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 S
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-55514(P2016-55514)
(22)【出願日】2016年3月18日
(62)【分割の表示】特願2013-507719(P2013-507719)の分割
【原出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2016-149564(P2016-149564A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-75529(P2011-75529)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】立岡 歩
(72)【発明者】
【氏名】小畠 真一
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊行
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6093694(JP,B2)
【文献】
特開2016−167601(JP,A)
【文献】
特開2010−222657(JP,A)
【文献】
特開2006−240074(JP,A)
【文献】
特開2005−101137(JP,A)
【文献】
特開2010−118635(JP,A)
【文献】
特開2000−043188(JP,A)
【文献】
特開2002−033581(JP,A)
【文献】
特開2007−307767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 3/38
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア箔付銅箔を用いてコアレスビルドアップ法で多層プリント配線板を製造する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
キャリア箔付銅箔の準備工程: 少なくとも銅箔層/剥離層/耐熱金属層/キャリア箔の4層を備え、且つ、[キャリア箔の厚さ]>[銅箔層の厚さ]の関係を満たすキャリア箔付銅箔を準備する。
支持基板製造工程: 当該キャリア箔付銅箔の前記キャリア箔表面に絶縁層構成材を張り合わせ、当該キャリア箔付銅箔と絶縁層構成材とで構成される支持基板を得る。
ビルドアップ配線層形成工程: 当該支持基板のキャリア箔付銅箔の銅箔層表面に、ビルドアップ配線層を形成してビルドアップ配線層付支持基板を得る。
ビルドアップ配線層付支持基板分離工程: 当該ビルドアップ配線層付支持基板を、前記キャリア箔表面に前記絶縁層構成材が張り合わされた状態で、前記支持基板の前記剥離層において分離して、当該ビルドアップ配線層付支持基板から前記剥離層/前記耐熱金属層/前記キャリア箔/前記絶縁層構成材の層構成を有する分離基板を除去し、前記銅箔層(但し、前記剥離層の付着がないものとする)を表面に備え、当該銅箔層上に前記ビルドアップ配線層が形成された多層積層板を得る。
多層プリント配線板形成工程: 前記多層積層板において、めっき工程、めっきレジスト工程、銅箔層のエッチング工程の少なくともいずれか一つの工程を経た上で、多層プリント配線板を得る。
【請求項2】
前記ビルドアップ配線層形成工程において、前記キャリア箔付銅箔の前記銅箔層をビルドアップ配線層形成用材料として用い、前記ビルドアップ配線層を形成する請求項1に記載の多層プリント板の製造方法。
【請求項3】
前記多層プリント配線板形成工程において、前記銅箔層を回路形成用材料として用い、回路を形成する請求項1又は請求項2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記多層プリント配線板形成工程において、前記銅箔層を含む回路を形成する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記キャリア箔付銅箔は、当該銅箔層、キャリア箔の少なくとも一面に粗化処理、防錆処理、カップリング剤処理の1種以上を施したものを用いる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記キャリア箔付銅箔の耐熱金属層は、モリブデン、タンタル、タングステン、コバルト、ニッケル及びこれらの金属成分を含有する合金を用いて形成したものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記キャリア箔付銅箔の剥離層は、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、カルボン酸の中から選択される1種又は2種以上の有機剤を用いたものである請求項1〜請求項6のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記キャリア箔の厚さが7μm〜35μmである請求項1〜請求項7のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、多層プリント配線板の製造方法及びその方法で得られる多層プリント配線板に関する。特に、プリント配線板の多層化に採用されるコアレスビルドアップ法で多層プリント配線板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げ、小型化するために、プリント配線板の多層化が広く使用されるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化、小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚みの低減、配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満足させる技術として、コアレスビルドアップ法を用いた製造方法が採用されてきた。そして、このコアレスビルドアップ法の中で、支持基板と多層プリント配線板との剥離にキャリア箔付銅箔を使用することが行われてきた。このコアレスビルドアップ法に関する技術としては、以下のような技術が存在する。
【0004】
特許文献1には、パッケージ基板とその製造方法の改良を目的として、特許文献1の図面から理解できるように、「コア基板は、プリプレグ2の両側に銅張積層板のキャリア銅箔3を接着した構成を有する。このコア基板を第1の回路基板10とし、極薄銅箔4上に配線導体を形成して第2の回路基板20とする。この配線導体上に絶縁樹脂層を形成して第3の回路基板30とし、コンフォーマルマスクを形成して第4の回路基板40とし、非貫通孔を形成して第5の回路基板50とする。非貫通孔を銅メッキして導通し、その上に配線をエッチングして第6の回路基板とする。キャリア銅箔を含む支持基板を除去して第7の回路基板とし、極薄銅箔を除去して第8の回路基板を得る。」との開示があり、この製造方法の中でキャリア銅箔付極薄銅箔が使用され、その極薄銅箔層の表面にビルドアップ層を形成する旨が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、加熱温度による剥離強度の変化が小さく、樹脂基材と積層後に支持体銅箔が容易に剥離し、剥離強度が安定している複合銅箔の提供を目的として、「支持体銅箔と極薄銅箔との間に、支持体銅箔と極薄銅箔との間の熱による銅の拡散を抑制するための熱拡散防止層及び支持体銅箔と極薄銅箔を機械的に分離するための剥離層を有する複合銅箔。」が開示されている。そして、この特許文献2の明細書の段落0007には、「熱拡散防止層としてNi−P合金層を用いた場合、好ましい厚さは0.01〜5μmである。更に好ましくは0.05〜1μmである。この厚さが0.01μm未満であるとピンホール発生し、剥離強度が不安定になる傾向があり、5μmを超えると生産性が悪化する傾向がある。」との熱拡散防止層の記述がある。そして、この特許文献2の実施例をみると、薄いものでも厚さ0.1μmの耐熱金属層を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−101137号公報
【特許文献2】特開2002−292788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の複合銅箔のように銅箔層側に耐熱金属層が設けられ、且つ、耐熱金属層が厚さが0.01μm以上である場合には、
図4〜
図6の製造プロセスを経ると、
図6(D)から分かるように、支持体とビルドアップ層とを分離した後でも、ビルドアップ層の表面に、厚い耐熱金属層が残存している。このような厚い耐熱金属層が、ビルドアップ層の表面に残存すると、その後、銅箔層に必要な加工を行う際に、耐熱金属層を除去する工程が必要であった。
【0008】
従って、市場では、コアレスビルドアップ法の中で、厚い耐熱金属層を備えるキャリア箔付銅箔を用いて多層プリント配線板を製造しても、耐熱金属層の除去が不要な技術の提供が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に述べる概念を採用することで、上述の課題を解決するに到った。
【0010】
多層プリント配線板の製造方法: 本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法は、キャリア箔付銅箔を用いてコアレスビルドアップ法で多層プリント配線板を製造する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0011】
キャリア箔付銅箔の準備工程: 少なくとも銅箔層/剥離層/耐熱金属層/キャリア箔の4層を備え、且つ、[キャリア箔の厚さ]>[銅箔層の厚さ]の関係を満たすキャリア箔付銅箔を準備する。
支持基板製造工程: 当該キャリア箔付銅箔の前記キャリア箔表面に絶縁層構成材を張り合わせ、当該キャリア箔付銅箔と絶縁層構成材とで構成される支持基板を得る。
ビルドアップ配線層形成工程: 当該支持基板のキャリア箔付銅箔の銅箔層表面に、ビルドアップ配線層を形成してビルドアップ配線層付支持基板を得る。
ビルドアップ配線層付支持基板分離工程: 当該ビルドアップ配線層付支持基板を、前記キャリア箔表面に前記絶縁層構成材が張り合わされた状態で、前記支持基板の前記剥離層において分離して、当該ビルドアップ配線層付支持基板から前記剥離層/前記耐熱金属層/前記キャリア箔/前記絶縁層構成材の層構成を有する分離基板を除去し、前記銅箔層表面に前記ビルドアップ配線層が形成された多層積層板を得る。
多層プリント配線板形成工程: 前記多層積層板において、めっき工程、めっきレジスト工程、銅箔層のエッチング工程の少なくともいずれか一つの工程を、多層プリント配線板を得る。
【0012】
本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法において、当該銅箔層、キャリア箔の少なくとも一面に粗化処理、防錆処理、カップリング剤処理の1種以上を施したものを用いることも好ましい。
【0013】
本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法において 前記キャリア箔付銅箔の耐熱金属層は、ニッケル又はニッケル合金を用いて形成したものであることが好ましい。
【0014】
本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法において、前記キャリア箔付銅箔の剥離層は、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、カルボン酸の中から選択される1種又は2種以上を用いて形成した有機剥離層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法を採用することで、キャリア箔付銅箔を用いて、コアレスビルドアップ法で製造したビルドアップ配線層を含む多層積層板の表面には、エッチングの困難な耐熱金属層が残留しないため、耐熱金属層の除去工程が不要となる。よって、本件出願に係る多層プリント配線板の製造分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法の製造フローを説明するための図である。
【
図2】本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法の製造フローを説明するための図である。
【
図3】本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法の製造フローを説明するための図である。
【
図4】従来技術の組み合わせで考えられる多層プリント配線板の製造方法の製造フローを説明するための図である。
【
図5】従来技術の組み合わせで考えられる多層プリント配線板の製造方法の製造フローを説明するための図である。
【
図6】従来技術の組み合わせで考えられる多層プリント配線板の製造方法の製造フローを説明するための図である。
【
図7】多層プリント配線板の製造過程を例示した模式図である。
【
図8】多層プリント配線板の製造過程を例示した模式図である。
【
図9】多層プリント配線板の製造過程を例示した模式図である。
【
図10】多層プリント配線板の製造過程を例示した模式図である。
【
図11】多層プリント配線板の製造過程を例示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件出願に係る多層プリント配線板の製造形態、多層プリント配線板の形態に関して、順に述べる。
【0018】
<多層プリント配線板の製造形態>
本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法は、キャリア箔付銅箔を用いてコアレスビルドアップ法で多層プリント配線板を製造する方法であり、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0019】
キャリア箔付銅箔の準備工程: 本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法で使用するキャリア箔付銅箔10は、少なくとも銅箔層11/剥離層12/耐熱金属層13/キャリア箔14の4層を備えるものを準備する。即ち、当該キャリア箔付銅箔は、キャリア箔表面に耐熱金属層を設け、その耐熱金属層の表面に剥離層を設け、その剥離層の表面に銅箔層を設けた層構成を基本とする。そして、このとき、[キャリア箔の厚さ]>[銅箔層の厚さ]の関係を満たす。
図1(A)に、その基本層構成を示す。以下、キャリア箔付銅箔10の各構成要素に関して説明する。
【0020】
キャリア箔付銅箔10のキャリア箔14には、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ステンレス鋼箔等の使用が可能である。しかし、経済性、廃棄物としてのリサイクル性を考慮すると、銅箔を用いることが好ましい。そして、この銅箔は、電解銅箔でも、圧延銅箔でも良い。また、キャリア箔の厚さは、7μm〜35μmであることが好ましい。キャリア箔の厚さが7μm未満の場合には、キャリア箔14の表面に、耐熱金属層13、剥離層12、銅箔層11の順に積層形成するキャリア箔付銅箔の製造過程において、シワ、折れ等の発生が顕著になり好ましくない。一方、キャリア箔14の厚さが35μmを超えても、特段の問題は生じない。しかし、キャリア箔14の厚さを更に厚くしても、キャリア箔付銅箔10の製造過程におけるシワ、折れ等の発生防止する効果に大きな変化はなく、製品価格が上昇するのみであり、特段の利点がないからである。なお、本件発明におけるキャリア箔は、銅箔層よりも厚く、[キャリア箔の厚さ]>[銅箔層の厚さ]の関係が成立する。
【0021】
キャリア箔付銅箔10の耐熱金属層13は、高温又は長時間の熱間プレス成形した際に起こる「キャリア箔14と銅箔層11との間での相互拡散」を防止して、キャリア箔14と銅箔層11との焼き付きを防止して、その後のキャリア箔14と銅箔層11との間での剥離が容易に行えるようにするためのものである。この耐熱金属層13は、モリブデン、タンタル、タングステン、コバルト、ニッケル及びこれらの金属成分を含有する各種合金の群から選択して使用することが好ましい。しかしながら、ニッケル又はニッケル合金を用いて、耐熱金属層13を形成することがより好ましい。キャリア箔14の表面に皮膜を形成する際に、経済性に優れた無電解めっき法、電解めっき法等の湿式成膜法を採用することを考えると、ニッケル又はニッケル合金皮膜は、膜厚形成精度に優れ、耐熱特性も安定しているからである。なお、耐熱金属層13の形成には、スパッタリング蒸着法、化学蒸着法等の乾式成膜法を用いることも可能である。
【0022】
キャリア箔付銅箔10の剥離層12は、有機剤を用いて形成したものでも、無機材を用いて形成したものでも構わない。当該剥離層12を無機材で構成する場合には、クロム、ニッケル、モリブデン、タンタル、バナジウム、タングステン、コバルト、又は、これらの酸化物を用いる事が好ましい。しかしながら、後述するビルドアップ配線層20を形成する際のプレス加工等の加熱時間が長時間に及んだ後の剥離層12における剥離安定性を考慮すると、当該剥離層12は、有機剤を用いて形成された有機剥離層であることが好ましい。この有機剥離層は、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、カルボン酸の中から選択される1種又は2種以上を混合した有機剤で形成することが好ましい。
【0023】
また、キャリア箔と銅箔との引き剥がし強さは、5g/cm〜80g/cmであることが好ましい。引き剥がし強さが、5g/cm未満の場合、後述するビルドアップ配線層形成工程において、キャリア箔と銅箔とが剥がれてしまう恐れがあるため好ましくない。一方、引き剥がし強さが80g/cmを超えると、後述するビルドアップ配線層付支持基板分離工程において、ビルドアップ配線層付支持基板を、支持基板の剥離層で容易に分離することが困難になるため好ましくない。
【0024】
キャリア箔付銅箔10の銅箔層11は、無電解銅めっき法及び電解銅めっき法等の湿式成膜法、又は、スパッタリング蒸着法及び化学蒸着法等の乾式成膜法、或いはこれらの成膜法のうち二種以上を組み合わせて、形成することが好ましい。このときの無電解銅めっき法及び電解銅めっき法に関しては、特段の限定は無い。例えば、無電解銅めっき法で薄い銅層を形成し、その後電解銅めっき法で、所望の銅めっき厚さに成長させてもよい。電解銅めっき法の場合、硫酸銅系銅めっき液、ピロ燐酸銅系銅めっき液等の銅イオン供給源として使用可能な溶液を用いることができるが、その具体的な方法等については特に限定されるものではない。
【0025】
その他、必要に応じて銅箔層11及びキャリア箔14の表面には、用途に応じて粗化処理、防錆処理、カップリング剤処理の1種以上を施すことも好ましい。特に、絶縁層構成材15に張り合わせるキャリア箔14の表面には、十分な密着力を持たせるために、粗化処理、防錆処理、シランカップリング剤処理の少なくとも1種を施すことが好ましい。なお、このとき銅箔層11のビルドアップ配線層側の表面に関しては、ビルドアップ配線層20の形成方法に応じて、上述の表面処理を施すことが好ましい。
【0026】
支持基板製造工程: この工程では、
図1(B)に示すように当該キャリア箔付銅箔10のキャリア箔14の表面に絶縁層構成材15を張り合わせ、当該キャリア箔付銅箔10と絶縁層構成材15とで構成される支持基板16を得る。このときの張り合わせ条件及び方法に関して、通常のプリント配線板製造工程で使用する銅箔と絶縁層構成材との張り合わせに使用する全ての条件及び方法の使用が可能である。そして、絶縁層構成材としては、広く一般的に知られた絶縁樹脂基材の使用が可能であり、特段の限定は無い。なお、本件明細書及び図面においては、半硬化状態の絶縁層構成材と、加熱して硬化した後の絶縁層構成材とを明確に区別することなく、図面では同一の符号(15)を使用している。
【0027】
ビルドアップ配線層形成工程: この工程では、当該支持基板16のキャリア箔付銅箔10の銅箔層11の表面に、
図2(C)に示すようにビルドアップ配線層20を形成し、ビルドアップ配線層付支持基板21を得る。このときのビルドアップ配線層20は、図示せぬ絶縁層と内層回路とを含む配線層とを交互に積層配置したものである。本件発明において用いるコアレスビルドアップ法に関しては、特段の限定は無い。
【0028】
例えば、当該ビルドアップ配線層形成工程において、ビルドアップ配線層の第一層目は、以下のようにして形成することが可能である。例えば、支持基板15の銅箔層11の表面に、樹脂フィルムを張り合わせる手法、樹脂組成物を塗布する手法等により、銅箔層11の表面に絶縁樹脂層を形成することが出来る。そして、この絶縁樹脂層を形成する際に樹脂フィルムを用いる場合には、当該樹脂フィルムの表面に銅箔等の金属箔を同時にプレス加工等で張り合わせ、事後的に、必要に応じて層間接続用のビア等を形成し、当該金属箔をエッチング加工して、銅箔層11と層間接続された内層回路を形成することもできる。また、支持基板16の銅箔層11の表面に、樹脂フィルムのみを張り合わせ、その表面にセミアディティブ法で内層回路パターンを形成することも可能である。以上に述べたビルドアップ配線層の形成は、必要に応じて複数回繰り返すことが可能であり、この操作を繰り返すことにより、多層化されたビルドアップ配線層付支持基板21となる。
【0029】
また、当該ビルドアップ配線層形成工程では、
図7に示すような方法を採用することも可能である。
図1(B)の状態から、銅箔層11の表面に、図示せぬめっきレジスト層を設けて、必要な箇所の銅箔層11の表面をめっきアップして、銅めっき層33を形成する。その後、めっきレジストを除去し、めっきアップ箇所の銅めっき層33の間に露出した銅箔層11をフラッシュエッチングにより除去して、回路30の形成を行う。そして、その回路形成面にビルドアップ配線層20を形成し、
図7(b)の状態とすることも可能である。
【0030】
更に、当該ビルドアップ配線層形成工程では、
図9〜
図10に示すような方法を採用することも可能である。
図1(B)の状態から、
図9(a)のように銅箔層11の表面にAu−Ni層34を形成する。そして、
図9(b)のように、当該Au−Ni層34を形成した面に、銅めっき層33を形成しバンプ35とし、このバンプ形成面にビルドアップ配線層20を形成し、
図10(c)の状態とすることも可能である。
【0031】
ビルドアップ配線層付支持基板分離工程: この工程では、
図3(D)、
図8(c)、
図10(d)に示すように、当該ビルドアップ配線層付支持基板21を、前記支持基板16の剥離層12で分離して、分離基板2を剥離除去して、多層積層板1を得る。なお、ここで言う多層積層板1は、ビルドアップ配線板20と支持基板16の銅箔層11とが密着した状態の積層体のことを言う。
【0032】
多層プリント配線板形成工程: この工程では、前記多層積層板1に必要な加工を施し、図示せぬ多層プリント配線板を得る。また、ここで言う必要な加工に関して、特段の限定は無く、各種めっき、エッチング、レジスト層形成等のプリント配線板製造で用いることの出来る全ての方法を意図している。この範疇に入る加工方法が、多層プリント配線板の種類によって、多岐に亘るため、限定的な記載が困難であり、且つ、限定的記載を行っても意味をなさないことは明らかである。
【0033】
なお、上述の加工方法の一例を挙げると、
図11に示すような方法を採用することも可能である。
図3(D)の状態から、銅箔層11を全面エッチングすると、
図11(a)に示す状態となる。この
図11(a)に示す状態とした後に、種々の必要な加工を施すことで、多層プリント配線板として使用することも可能である。また、
図3(D)の状態から、銅箔層11の表面に、図示せぬめっきレジスト層を設けて、必要な箇所の銅箔層11の表面をめっきアップして、銅めっき層33を形成する。その後、めっきレジストを除去し、めっきアップ箇所の銅めっき層33の間に露出した銅箔層11をフラッシュエッチングにより除去して、回路30の形成を行い、
図11(b)に示す状態とした後に、種々の必要な加工を施して、多層プリント配線板として使用することも可能である。
【0034】
以上に述べた本件発明に係るコアレスビルドアップ法による多層プリント配線板の製造方法を用いることで、高品質且つ安価な多層プリント配線板を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法を採用することで、コアレスビルドアップ法で、キャリア箔付銅箔を用い、ビルドアップ層を含む多層積層板を製造しても、その表面には、エッチングの困難な耐熱金属層が残留しない。よって、本件出願に係る多層プリント配線板の製造方法では、耐熱金属層の除去工程を要しないため、安価に多層プリント配線板の製造が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 多層積層板
2 分離基板
10 キャリア箔付銅箔
11 銅箔層
12 剥離層
13 耐熱金属層
14 キャリア箔
15 絶縁層構成材
16 支持基板
20 ビルドアップ配線層
21 ビルドアップ配線層付支持基板
30 回路
33 銅めっき層
34 Au−Ni層
35 バンプ